説明

チタン含有添加剤

本発明の主題は、チタン含有添加剤、その製造方法及びその使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、チタン含有添加剤、その製造方法及びその使用である。
【0002】
チタン含有添加剤を冶金学的プロセスで使用することは従来から公知である。チタン含有添加剤の作用は、この場合、銑鉄中で温度依存性の可溶性を示す、耐高温性及び耐摩耗性のTi(C,N)化合物の形成に基づく。この溶解度限界を下回る場合に(これは特に外部への高い放熱による損傷した炉床領域において当てはまる)、銑鉄からTi(C,N)化合物が分離し、レンガ積の著しく摩耗する領域に堆積し、それにより内在性の「熱補修効果」が生じる。
【0003】
このために、多様なチタン含有材料が冶金学的プロセスにおいて又は生成物の製造のために使用される。先行技術で使用されるチタン含有添加剤は、通常ではチタン含有材料である。
【0004】
例えば、TiO2製造からの残留物(TiO2残留物)を冶金工業においてチタン含有添加剤として使用することは公知である。DE-C-4419816には、TiO2残留物及び他の材料からなるチタン含有添加剤が開示されている。
【0005】
DE-C-19705996は、TiO2含有添加剤の製造方法を開示している。この場合、TiO2残留物と鉄又は鉄化合物とからなる混合物が200〜1300℃で熱処理される。この技術的教示の欠点は、手間のかかる供給及びTiO2残留物と添加剤のそれぞれ他の成分との混合である。
【0006】
EP-A-0 611 740は、炉の耐火性のレンガ張りの耐久性を高めるために、TiO2製造からの残留物(TiO2残留物)を他の成分と共にチタン含有添加物として使用することを開示している。この場合、手間のかかる方法で前記残留物からTiO2含有の成形体、例えばブリケット、ペレット又は顆粒が製造される。しかしながらこの生成物は極めて粗大粒であり、冶金学的プロセスにおいて及び生成物の製造のために使用できないか又は使用しても悪い結果を生じてしまう。
【0007】
さらに、微細粒のチタン含有添加剤を炉床の領域に直接注入することは公知である。前記炉床の領域にチタン含有添加剤を注入することは、一連の利点を有する:
− この導入は損傷箇所に又はレンガ積張りの保護すべき領域に直接行われるため、チタン含有材料は適切にかつ比較的低い濃度で使用することができる;
− この作用時間、特に炉壁中でのホットスポットの出現の際の作用時間は比較的短い;
− 高炉シャフト中でチタン含有材料による堆積物の形成は生じない;
− 僅かな使用量及びTi(C,N)化合物へのより高い変換率は、低いTiO2含有量によりスラグ品質を改善し、それにより高炉スラグの問題のない商品化を可能にする。
【0008】
塊状イルメナイト(イルメナイト構造;FeTiO3)を必要なチタンのための天然原料として摩耗の減少のために高炉中で使用することも公知である。
【0009】
二酸化チタンを製造するために、出発物質としてチタン鉱のイルメナイト、式FeTiO3の鉱物を使用する。イルメナイトはこの目的でチタン鉱のルチル(TiO2)と組み合わせても使用される。
【0010】
このイルメナイト鉱の採掘は露天掘りで行われる。この場合、前記鉱はまず約12mmのサイズを有する小さな破片に破砕され、次いで微細な粉末に粉砕される鉱中に含まれる不純物は、費用のかかる方法で分離される。脈石の分離後に、次いで前記鉱から約50質量%(全チタン含有量から算出)の二酸化チタン割合を有するイルメナイト濃縮物が得られる。(以後、二酸化チタン割合について質量%で言及される場合には、他に記載がない限り、本発明の範囲内で、全チタン含有量から算出した割合を意味する)。
【0011】
二酸化チタンを得るための原料として、さらに二酸化チタン富有のスラグが使用される。この場合、鉱床中でイルメナイト鉱が取り崩され、粉砕される。引き続き、前記の粉砕された鉱は石炭と混合され、アーク炉中で溶融される。この場合、高品質の鉄が生じる。このプロセスの際に生じる二酸化チタン富有のスラグ、例えばいわゆるソーレルスラグ(Sorelschlacke)は、二酸化チタンを90質量%(全チタン含有量から算出)まで含有することができる。
【0012】
合成チタン含有材料とは反対に、天然チタン含有材料は、その粗大な粒状性のため又はその欠如する微細な粒状性のために、冶金学的プロセスにおける使用のために、耐火材料における使用のために、炉レンガ張りの耐久性の向上の目的で冶金学的炉中へ注入するために、製鋼の際のスラグフォーム中への注入のために、出銑口閉塞材中での使用のために、炭−/黒鉛電極中での使用のため、建築材料用の添加剤としての使用のために、炭素−/黒鉛レンガのため、炭素−/黒鉛ラミング材のため、炭素結合した製品のため、触媒として適していないか又は部分的に適しているだけで悪い結果を伴う。この天然原料の欠如する微細な粒状性及び粒子の角張った構造は、その摩耗性の特性により使用の際に、例えば高炉中へ送り込む際に、供給ノズル中で著しい侵食(腐食、摩耗…)を引き起こすため、持続的使用は不可能である。生成物の製造の際に、この反応速度は天然チタン含有材料を使用する場合にその粗大な粒状性又はその欠如する微細な粒状性のために十分ではなく、不十分な結果が生じる。従って、この形状で存在する天然チタン含有材料は本発明の範囲内でチタン含有添加剤として使用できない。
【0013】
本発明の課題は、天然をベースとするチタン含有添加剤を提供することである。
【0014】
本発明の更なる課題は、TiO2富有スラグをベースとするチタン含有添加剤を提供することである。
【0015】
「チタン含有添加剤」とは、本発明の範囲内で、プロセスにおいて又は生成物の製造の際に前記プロセス中に含まれる又は生成物の製造の際に存在する適当な反応体と耐高温性でかつ耐摩耗性のチタン化合物、例えばチタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、Ti(C,N)化合物又はこれらの化合物の混合物を形成することができる微細粒のチタン含有添加物であると解釈される。「天然をベースとする」とは、本発明の範囲内で、チタン含有添加剤のチタン含有割合が100%まで天然のチタン含有材料からなることを意味する。
【0016】
本発明の特別な課題は、
・ 冶金学的プロセスにおける使用のため、
・ 耐火材料における使用のため、
・ 炉レンガ張りの耐久性を向上させるための金属工学的炉中への注入のため、
・ 製鋼における使用のため、
・ 製鋼におけるスラッジフォーム(Schlackenschaeumen)の形成のため、
・ 出銑口閉塞材中での使用のため、
・ 注入材、ランナー材及び/又は補修材のため
・ 炭−/黒鉛電極中での使用のため、
・ 建築材料用の添加剤としての使用のため、
・ 炭素−/黒鉛レンガ中での使用のため、炭素−/黒鉛ラミング材中での使用のため、炭素結合した製品中での使用のため及び
・ 触媒としての
チタン含有添加剤を提供することである。
【0017】
本発明の場合に、前記課題は独立形式請求項の特徴部により解決される。有利な実施態様は従属形式請求項に記載されている。
【0018】
本発明の場合に、このためチタン含有材料は適当な方法で微粉化される。この微粉化は、この場合、例えばピン付ディスクミル、コロプレックスミル(Coloplexmuehle)、ジルコプレックスミル(Zirkoplexmuehle)、スチーム−又はエアジェットミル又はボールミル又は粉砕乾燥機中で行うことができる。このように得られたチタン含有材料は、100%まで5mm未満の、有利に2mm未満の、特に有利に0.5mm未満の、さらに特に有利に0.2mm未満の微粉度を有する。この平均粒径は、本発明の場合に有利に0.01μm〜2000μm、特に有利に0.1〜1000μmである。こうして得られた材料は、チタン含有添加剤として本発明の範囲内で適している。
【0019】
チタン含有出発材料として、チタン鉱、二酸化チタン富有スラグ又はこれらの材料の混合物を任意の組成で使用することができる。
【0020】
本発明によるチタン含有添加剤を製造するために使用されるチタン鉱及び二酸化チタン富有スラグは、TiO2を15〜95質量%、有利に25〜90質量%(全チタン含有量から算出)含有する。このチタン鉱は、精製されないか又は不純物並びに脈石の分離後にチタン含有添加剤の製造のために使用することができる。
【0021】
本発明による添加剤は、TiO2を20〜98質量%、有利に25〜95質量%、特に有利に30〜95質量%、さらに特に有利に40〜90質量%(全チタン含有量から算出)含有する。
【0022】
この本発明による添加剤は、チタン鉱及び/又は二酸化チタン富有スラグから選択されるチタン含有材料の他に、さらに合成二酸化チタン含有材料を含有することができる。
【0023】
本発明により考慮される合成二酸化チタン含有材料は、TiO2を20〜100質量%、有利に30〜100質量%(全チタン含有量から算出)含有する。
【0024】
この合成二酸化チタン含有材料は、次に記載された材料又はその混合物から選択することができる:
− 二酸化チタンの製造からの中間生成物、複合生成物及び/又は最終生成物。前記材料はこの場合、硫酸塩法による二酸化チタンの製造からも、塩化物法による二酸化チタンの製造から得られてもよい。前記中間生成物及び複合生成物は連続的TiO2製造から取り出すことができる。
【0025】
− 二酸化チタンの製造からの残留物。前記材料はこの場合、硫酸塩法による二酸化チタンの製造からも、塩化物法による二酸化チタンの製造からも得られていてもよく、必要な場合には、前記材料をチタン含有添加剤の製造のために使用する前に、例えば中和、洗浄及び/又は予備乾燥により前処理する。
【0026】
− 化学工業からの、例えばTiO2含有触媒、さらに例えばDENOX触媒からの残留物。
【0027】
この合成二酸化チタン含有材料は、粉末、フィルターケーク、ペースト又は懸濁液の形で使用することができる。
【0028】
本発明による添加剤の製造は、チタン含有材料の混合により行う。
【0029】
さらに、このチタン含有材料は熱処理することもできる。
【0030】
熱処理として、有利に乾燥が適用され、特に有利に100〜1200℃の温度での乾燥が適用される。
【0031】
本発明の範囲内で、チタン含有材料をまず別個に微粉化し、引き続き、ミキサー中で適用に応じて所望の割合で混合することも考えられる。さらに、本発明の場合には、チタン含有材料をまず混合し、熱処理後に適用に応じて微粉化することが考えられる。
【0032】
使用目的に応じて、本発明によるチタン含有添加剤は他の助剤及び/又は添加物、例えば炭、還元炭、及び/又は金属酸化物、例えば酸化鉄を含有することができる。
【0033】
本発明による添加剤は、本発明の場合に次のように使用される:
・ 冶金学的プロセスにおいて、
・ 耐火材料中で、
・ 炉レンガ張りの耐久性を向上させるための金属工学的炉中への注入のため、
・ 製鋼において、
・ 製鋼におけるスラッジフォームの形成のため、
・ 出銑口閉塞材中で、
・ 注入材、ランナー材及び/又は補修材中で、
・ 炭−/黒鉛電極中で、
・ 建築材料用の添加剤として、
・ 炭素−/黒鉛レンガ、炭素−/黒鉛ラミング材、炭素結合した製品の製造のため及び
・ 触媒として。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスにおいて又は生成物の製造の際に前記プロセス中に含まれる反応体又は生成物の前記の製造の際に存在する適当な反応体と耐高温性でかつ耐摩耗性のチタン化合物、例えばチタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、Ti(C,N)化合物又はこれらの化合物の混合物を形成することができるチタン含有材料を含有し、前記チタン含有材料は少なくとも部分的に、微細粒の天然のチタン含有材料からなるか及び/又は部分的に微細粒のTiO2富有スラグからなることを特徴とする、チタン含有添加剤。
【請求項2】
天然チタン含有材料として、チタン含有鉱、チタン含有スラグを単独又は混合物として使用し、チタン含有添加剤は場合により合成チタン含有材料を含有することを特徴とする、請求項1記載のチタン含有添加剤。
【請求項3】
チタン含有材料として、チタン含有鉱及び合成チタン含有材料を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載のチタン含有添加剤。
【請求項4】
チタン含有材料として、TiO2富有スラグ及び合成チタン含有材料を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載のチタン含有添加剤。
【請求項5】
チタン含有材料として、チタン含有鉱、TiO2富有スラグ及び合成チタン含有材料を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載のチタン含有添加剤。
【請求項6】
チタン含有鉱はイルメナイト、ルチルであり及びチタン含有スラグがソーレルスラグであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項7】
チタン含有材料が、TiO2を15〜95質量%、有利に25〜90質量%含有し、合成チタン含有材料がTiO2を20〜100質量%、有利に30〜100質量%(全チタン含有量から算出)含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項8】
TiO2を20〜98質量%、有利に25〜95質量%、特に有利に30〜95質量%、さらに特に有利に40〜90質量%(全チタン含有量から算出)含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項9】
合成チタン含有材料は、少なくとも1種の次に記載された材料又はその混合物:
− 二酸化チタンの製造からの中間生成物、複合生成物及び/又は最終生成物、その際、前記材料はこの場合、硫酸塩法による二酸化チタンの製造からも、塩化物法による二酸化チタンの製造からも得ることができ、かつ前記中間生成物及び複合生成物は連続的TiO2製造から取り出すことができる、
− 二酸化チタン又はその混合物の製造からの残留物、その際、前記材料はこの場合、硫酸塩法による二酸化チタンの製造からも、塩化物法による二酸化チタンの製造から得ることができる、
− 化学工業からのチタン含有残留物
から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項10】
炭、還元炭及び/又は金属酸化物の材料から選択される他の添加剤を含有し、その際、金属酸化物として酸化鉄が有利であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項11】
チタン含有添加剤が、100%まで5mm未満、有利に2mm未満、特に有利に0.5mm未満、さらに特に有利に0.2mm未満の微粉度を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項12】
前記成分の平均粒径は、有利に0.01μm〜2000μm、さらに特に有利に0.1μm〜1000μmであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤。
【請求項13】
チタン含有材料及び場合により添加物を混合し、適当な方法で微粉化することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤の製造方法。
【請求項14】
チタン含有材料を別個に微粉化し、引き続きミキサー中で、場合により添加物の添加下で、適応に応じて所望な割合で混合することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤の製造方法。
【請求項15】
チタン含有材料をまず混合し、場合により添加物の添加下で、引き続き適用に応じて微粉化することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤の製造方法。
【請求項16】
チタン含有材料を混合の前又は後で熱処理し、有利に乾燥することを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
熱処理を100〜1200℃の温度で実施することを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
チタン鉱を精製せずに使用することを特徴とする、請求項13から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
チタン鉱から、その使用の前に、不純物及び/又は脈石を除去することを特徴とする、請求項13から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
冶金学的プロセスにおける、耐火材料中での、炉レンガ張りの耐久性の向上の目的で冶金学的炉中へ注入するための、製鋼における、製鋼の際のスラグフォームの形成のための、出銑口閉塞材中での、注入材、ランナー材及び/又は補修材中での、炭−/黒鉛電極中での、建築材料用の添加剤としての、炭素−/黒鉛レンガの製造のための、炭素−/黒鉛ラミング材の製造のための、炭素結合した製品の製造のための及び触媒としての、請求項1から12までのいずれか1項記載のチタン含有添加剤の使用。

【公表番号】特表2009−545672(P2009−545672A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522282(P2009−522282)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058036
【国際公開番号】WO2008/015259
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(501082864)ザッハトレーベン ヒェミー ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】Sachtleben Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Rudolf−Sachtleben−Strasse 4, 47198 Duisburg, Germany
【Fターム(参考)】