説明

チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体

【課題】 大型化が容易に可能であるチタン酸アルミニウム質構造体を提供すること。
【解決手段】 複数のセル22がセル壁24を隔てて長手方向に並設された柱状のチタン酸アルミニウム質ハニカム焼成体20が、セラミック粒子を少なくとも含む接着剤層14を介して複数個結束された構造を有する、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム質ハニカム(honeycomb)構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスを浄化するために、その内部に排ガスを通過させることによって、排ガスに含まれる微細なカーボン粒子等の粒子状物質を捕集するセラミックハニカムフィルタが用いられている。従来、セラミックハニカムフィルタとしては、例えば、コージェライト等のセラミック材料からなるハニカム構造体の表面に、活性アルミナ等の高比表面積材料と白金等の触媒金属とを担持したものが提案されている。
【0003】
また、ハニカム構造体を構成するセラミック材料として、近年、チタン酸アルミニウムの使用が検討されており、その産業上の利用価値が高まりつつある。
【0004】
チタン酸アルミニウムの製造方法としては、少なくともアルミニウム源粉末及びチタン源粉末を含み、必要に応じてケイ素源粉末やマグネシウム源粉末などを含む原料混合物を成形し、焼成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、原料混合物として、更に、有機バインダ、造孔材などの有機添加物を含むものを用い、この原料混合物のグリーン(unsintered(green))成形体を酸素含有雰囲気下にて150〜900℃で加熱することにより有機添加物を除去した後、1300℃以上で焼成する方法も知られている(特許文献1の段落0031〜0032)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第05/105704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、セラミックハニカムフィルタの排ガス浄化性能や排ガス処理効率の向上といった目的により、ハニカム構造体の大型化が要求される場合がある。そこで、本発明は、チタン酸アルミニウムを用いたハニカム構造体であって、大型化が容易に可能であるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のセル(cell)がセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のチタン酸アルミニウム質ハニカム焼成体が、セラミック粒子を少なくとも含む接着剤層を介して複数個結束された構造を有する、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を提供する。
【0008】
本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体においては、上記接着剤層に含まれる上記セラミック粒子の30質量%以上がチタン酸アルミニウム粒子であることが好ましい。
【0009】
また、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体においては、上記接着剤層に含まれる上記セラミック粒子の平均粒子径が0.2μm以下であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体において、上記接着剤層には無機繊維及びウィスカ(whisker)の少なくとも一方が更に含まれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大型化が容易に可能であるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1の(a)は、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の好適な一実施形態を示す斜視図であり、図1の(b)は、図1の(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
本実施形態のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体は、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のチタン酸アルミニウム質ハニカム焼成体が、セラミック粒子を少なくとも含む接着剤層を介して複数個結束された構造を有することを特徴とする。
【0015】
ここで、図1(a)は、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の好適な一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の部分拡大図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を構成する、チタン酸アルミニウム質ハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。図1(a)に示すチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体10においては、チタン酸アルミニウムからなる図2に示すような四角柱形状のハニカム焼成体20が、接着剤層14を介して複数個結束されてセラミックブロック16を構成し、このセラミックブロック16の周囲にシール材層12が形成されている。
【0016】
本実施形態のハニカム構造体10は、複数のハニカム焼成体20が接着剤層14を介して複数個結束されてなるため、大型化が容易に可能である。また、本実施形態のハニカム構造体10は熱衝撃や振動に強いという効果を有する。かかる熱衝撃や振動に強いという効果が得られる理由としては、急激な温度変化等によってハニカム構造体10に温度分布が発生した場合であっても、それぞれのハニカム焼成体20あたりに発生する温度差(1つのハニカム焼成体20内での最高温度と最低温度との差)を小さく抑えることができるとともに、熱衝撃や振動を接着剤層14によって緩和することができるためであると推察される。また、接着剤層14は、熱応力等によってハニカム焼成体20にクラック(crack)が生じた場合においても、クラックがハニカム構造体10の全体に伸展することを防ぐことができる。さらに、接着剤層14は、ハニカム構造体10のフレーム(frame)としての役割をも担い、ハニカム構造体10としての形状を保つ役割を有する。また、接着剤層14がセラミック粒子を含むことにより、接着剤層14とハニカム焼成体20との接着力が向上し、ハニカム焼成体20同士の接着強度を高めることができる。
【0017】
また、本実施形態のハニカム構造体10において、上記接着剤層14に含まれる上記セラミック粒子のうちの30質量%以上、より好ましくは40%以上がチタン酸アルミニウム粒子であることが好ましい。これにより、接着剤層14とハニカム焼成体20との接着力が向上し、ハニカム焼成体20同士の接着強度をより高めることができる。また、上記効果がより十分に得られることから、セラミック粒子が全てチタン酸アルミニウム粒子であることが最も好ましい。なお、本実施形態において、「チタン酸アルミニウム粒子」は「チタン酸アルミニウムマグネシウム粒子」を含意する。つまり、チタン酸アルミニウム粒子はマグネシウムを含有してもよい。また、チタン酸アルミニウム粒子は、ケイ素を含有してもよい。なお、接着剤層14には、チタン酸アルミニウム粒子以外のセラミック粒子として、アルミナ、炭化珪素、シリカ、ジルコニア、ゼオライト、ムライト、コージェライト等からなる粒子を用いることもできる。
【0018】
また、本実施形態のハニカム構造体10において、上記ハニカム焼成体20は多数の気孔を持つ多孔質体であり、その平均気孔径は、後述する方法で測定することができる。そして、本実施形態のハニカム構造体10においては、上記接着剤層14に含まれる上記セラミック粒子のうち、粒子径が上記ハニカム焼成体20の平均気孔径よりも大きいものの粒子数が、上記セラミック粒子の全粒子数の30%以下であることが好ましい。上記ハニカム焼成体20の平均気孔径と、上記接着剤層14に含まれる上記セラミック粒子の粒子径及び粒子数との関係を上記の範囲とすることにより、ハニカム焼成体20の表面の気孔内に多くのセラミック粒子が入り込むことができ、アンカー(anchor)効果を生じるために接着剤層14とハニカム焼成体20との接着力が強くなり、このような接着剤層14を介してハニカム焼成体20同士を強固に接着することができる。
【0019】
上記ハニカム焼成体20の平均気孔径と、上記セラミック粒子の粒子径及び粒子数との関係が上記の条件を満たすかどうかは、セラミック粒子の粒子径分布及びハニカム焼成体20の平均気孔径を測定することで判断することができる。
【0020】
セラミック粒子の粒子径分布は、レーザ回折、散乱法による粒子径分布測定法によって測定することができる。例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置によって、粒子径と頻度で表される粒子径分布を求め、粒子径が小さい方から順に数えて70%の頻度にあたる粒子径(μm)を求めて、70%粒子径を算出する。また、ハニカム焼成体20の平均気孔径は、JIS R 1655に規定する水銀圧入法による成形体気孔径分布測定法によって測定することができる。
【0021】
上記方法によって求めたセラミック粒子の70%粒子径がハニカム焼成体20の平均気孔径以下である場合は、上記セラミック粒子のうち、その粒子径が上記ハニカム焼成体20の平均気孔径よりも大きいものの粒子数は上記セラミック粒子の全粒子数の30%以下であることになり、ハニカム焼成体20の平均気孔径とセラミック粒子の粒子径及び粒子数との関係は上述した条件を満たすこととなる。
【0022】
ハニカム構造体10において、上記接着剤層14に含まれるセラミック粒子の平均粒子径は、0.2μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。接着剤層14中のセラミック粒子の平均粒子径が0.2μm以下であると、ハニカム焼成体20同士の接着強度をより強くすることができる。また、セラミック粒子の平均粒子径は、接着剤の粘度の観点から、0.001μm以上であることが好ましく、0.005μm以上であることがより好ましい。ここで、平均粒子径はBET比表面積によって求められる比表面積径である。比表面積径は、セラミック粒子が全て球形であると仮定した場合の当該セラミック粒子の粒子径であり、下記式(1)で求められる値である。
比表面積径=6/(ρ・BET) ・・・(1)
式(1)において、ρはセラミック粒子の密度であり、セラミック粒子が複合相を形成している場合は、各成分相の質量比に応じた各成分相の密度の加重平均を当該セラミック粒子の密度とする。また、BETはセラミック粒子のBET比表面積を意味する。
【0023】
ハニカム構造体10において、上記接着剤層14には、無機繊維及び/又はウィスカが更に含まれていることが望ましい。これら無機繊維及び/又はウィスカが接着剤層14に含まれていると、ハニカム焼成体20同士の接着強度をさらに向上させることができる。
【0024】
上記無機繊維やウィスカとしては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカ−アルミナ、ガラス、チタン酸カリウム又はホウ酸アルミニウム等からなる無機繊維やウィスカが望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、ホウ酸アルミニウムウィスカがより望ましい。なお、本明細書中において、無機繊維やウィスカとは、平均アスペクト(aspect)比(長さ/径)が5を超えるものをいう。また、上記無機繊維やウィスカの望ましい平均アスペクト比は、10〜1000である。
【0025】
接着剤層14は、上述したセラミック粒子、無機繊維及び/又はウィスカに加えて、バインダ成分として無機バインダ及び/又は有機バインダを含む接着剤ペーストを用いて形成されたものであることが好ましい。
【0026】
上記無機バインダとしては、無機ゾル(sol)や粘土系バインダ等を用いることができる。上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。これらの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト及びアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0027】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0028】
上記接着剤ペーストに含有される上記セラミック粒子の量は、接着剤ペースト中の固形分全量を基準として、望ましい下限は30質量%であり、より望ましい下限は40質量%である。一方、望ましい上限は80質量%であり、より望ましい上限は75質量%である。セラミック粒子の含有量が30質量%未満では、ハニカム焼成体の表面の気孔内にセラミック粒子が入り込むことによるアンカー効果が十分に得られなくなることから、ハニカム焼成体20同士の接着強度が低下する傾向にある。一方、セラミック粒子の含有量が80質量%を超えると、ハニカム焼成体20同士の接着強度が低下する傾向がある。
【0029】
上記接着剤ペーストに含有される上記無機繊維及び/又は上記ウィスカの合計量は、接着剤ペースト中の固形分全量を基準として、望ましい下限は5質量%である。一方、望ましい上限は30質量%である。無機繊維及び/又はウィスカの含有量が5質量%未満では接着剤層14の強度が低下する傾向がある。一方、無機繊維及び/又はウィスカの含有量が30質量%を超えると接着剤層14の嵩密度が低下し、ハニカム焼成体20同士の接着強度が低下する傾向がある。
【0030】
上記接着剤ペーストに含有される上記バインダ成分の量(無機バインダ及び有機バインダの合計量)は、接着剤ペースト中の固形分全量を基準として、望ましい下限は10質量%である。一方、望ましい上限は40質量%である。バインダ成分の含有量が10質量%未満ではハニカム焼成体20同士の接着強度が低下する傾向がある。一方、バインダ成分の含有量が40質量%を超えると、骨材となるセラミック粒子、無機繊維及び/又はウィスカの量が不足して接着剤層14の強度が低下する傾向がある。
【0031】
また、ハニカム構造体10において、上記接着剤層14は、ハニカム焼成体20の側面の全面にわたって形成されていなくてもよく、上記側面の一部にのみ形成されていてもよい。一部にのみ接着剤層14を形成した場合は、ハニカム構造体10全体の嵩密度が低くなり、昇温性が向上することとなる。また、排ガスがハニカム焼成体20の側面に接触することができるため、排ガスの浄化を促進することができる。
【0032】
次に、上述した本実施形態のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体について説明する。図1及び図2に示すハニカム焼成体20は、多数のセル22(22a及び22b)がセル壁24を隔てて長手方向(図2中の矢印X方向)に並設された構造を有している。これらのセル22a,22bは排気ガス等の流体の流路となるが、図1及び図2に示したハニカム焼成体20において、セル22a,22bは、その両端の開口部のうちの一方が封口されている。図2の手前側の端部では、セル22aが開口し、セル22bが封口されており、これとは反対側の端部では、セル22aが封口され、セル22bが開口している。ハニカム焼成体20においては、このようなセル22aとセル22bとが交互に配置されている。このような構造のハニカム焼成体は、ウォールフロー(wall−flow)型と呼ばれるものであり、このハニカム焼成体を通り抜ける排ガスは、その排出前に排ガス中の粒子状物質を捕捉する多孔質のセル壁24を通過することで浄化される。
【0033】
セル22a,22bの間の壁であるセル壁24の厚さは、特に限定されるものではないが、望ましい下限は0.05mmであり、より望ましい下限は0.10mmであり、特に望ましい下限は0.15mmである。一方、望ましい上限は0.35mmであり、より望ましい上限は0.30mmであり、特に望ましい上限は0.25mmである。セル壁24の厚さが0.05mm未満ではハニカム焼成体20の強度が低下する傾向がある。一方、セル壁24の厚さが0.35mmを超えると、ガス透過率が低下し、排ガス処理効率が低下する傾向がある。
【0034】
セル壁24の気孔率は、30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが特に好ましい。セル壁24の気孔率が30体積%未満であると、セル壁24をガスが流通しにくくなって圧力損失が大きくなり、浄化効率が低下する傾向がある。セル壁24の気孔率は、50体積%以下であることが好ましく、46体積%以下であることがより好ましい。セル壁24の気孔率が50体積%を超えると、排ガス浄化時のススの漏れが激しくなって浄化効率が低下する傾向がある。但し、ススの堆積量が減少するため、ススの燃焼時の発熱量が低下してハニカム焼成体20の熱膨張は抑制される。セル壁24の気孔率は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能である。セル壁24の気孔率は、水銀圧入法により測定することができる。
【0035】
セル壁24の平均気孔径は、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。ここで、セル壁24の「平均気孔径」は上述のハニカム焼成体20の「平均気孔径」と同義である。セル壁24の平均気孔径が10μm未満であると、微細粒子の堆積により細孔が容易に閉塞して圧力損失が急激に大きくなり、浄化効率が低下する傾向がある。一方、セル壁24の平均気孔径は、捕集されずにセル壁24を通過してしまう微細粒子を低減する観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましい。セル壁24の平均気孔径は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能である。セル壁24の平均気孔径は、例えば水銀圧入法により測定することができる。
【0036】
また、上記ハニカム焼成体20のセル密度は、望ましい下限が15.5個/cm(100cpsi(cells per square inch))であり、より望ましい下限が46.5個/cm(300cpsi)であり、さらに望ましい下限が62個/cm(400cpsi)である。一方、セル密度の望ましい上限は186個/cm(1200cpsi)であり、より望ましい上限は170.5個/cm(1100cpsi)であり、さらに望ましい上限は155個/cm(1000cpsi)である。セル密度が15.5個/cm未満では、上記ハニカム構造体10を、排ガスを浄化するための触媒担体として用いた際に、ハニカム焼成体20内部の排ガスと接触する壁の面積が小さくなる傾向がある。一方、186個/cmを超えると、圧力損失が高くなるとともに、ハニカム焼成体20の作製が困難になる傾向がある。
【0037】
ハニカム焼成体20は、BET比表面積が0.1〜20m/gであることが好ましい。ハニカム焼成体20のBET比表面積が0.1m/g未満であると、浄化効率が低下する傾向がある。一方、ハニカム焼成体20のBET比表面積が20m/gを超えると、後述の、触媒を担持させる際に、触媒金属の担持むらが生じる傾向がある。BET比表面積は、例えば市販のガス吸着装置を用いて測定することができる。
【0038】
また、上記ハニカム焼成体20に形成されるセル22a,22bの断面形状は特に限定されず、図2に示したような正方形以外に、例えば、三角形、長方形、六角形、八角形、円形などでもよく、また複数の形状の組み合わせでもよい。
【0039】
また、上記ハニカム焼成体20の形状は、特に限定されるものではないが、ハニカム焼成体20同士が接着剤層14を介して結束しやすい形状であることが好ましく、その長手方向に垂直な断面の形状としては、図2に示したような正方形以外に、三角形、長方形、六角形、八角形、扇状等が挙げられる。また、形状の異なる複数のハニカム焼成体20を組み合わせてハニカム構造体10を形成してもよい。
【0040】
上記ハニカム焼成体20は、少なくともチタン酸アルミニウムを含む。それ以外の構成材料は特に限定されないが、ハニカム焼成体20は、更に、無機繊維及び/又はウィスカを含有することが好ましい。ハニカム焼成体20が無機繊維及び/又はウィスカを含有することにより、ハニカム焼成体20の強度をより向上させることができる。無機繊維及び/又はウィスカとしては、上述した接着剤層14に含有される無機繊維及び/又はウィスカと同種の材料を用いることができる。なお、ハニカム焼成体20の原料として用いる無機繊維及び/又はウィスカと接着剤層14の原料として用いる無機繊維及び/又はウィスカとは、同種の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0041】
また、ハニカム焼成体20は、上記チタン酸アルミニウム以外に、無機粒子としてアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、ゼオライト等からなる粒子を含有していてもよい。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ粒子、セリア粒子が好ましい。
【0042】
本実施形態において、ハニカム焼成体20中のチタン酸アルミニウムは、マグネシウムやケイ素を含んでいてもよい。ハニカム焼成体20中のチタン酸アルミニウムにおけるアルミニウムの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム換算で40〜60モル%である。チタン酸アルミニウムにおけるチタンの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。チタン酸アルミニウムにおけるマグネシウムの含有率は酸化マグネシウム換算で1〜5質量%であることが好ましい。なお、チタン酸アルミニウムの組成は、原料混合物の組成により適宜調整すればよい。チタン酸アルミニウムは、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0043】
上記ハニカム焼成体20に含まれる上記無機繊維及び/又は上記ウィスカの合計量について、望ましい下限は3質量%であり、より望ましい下限は5質量%であり、さらに望ましい下限は8質量%である。一方、望ましい上限は70質量%であり、より望ましい上限は50質量%であり、さらに望ましい上限は40質量%であり、特に望ましい上限は30質量%である。無機繊維及び/又はウィスカの含有量が3質量%未満ではハニカム構造体10の強度が低下する傾向がある。一方、無機繊維及び/又はウィスカの含有量が70質量%を超える場合には、後述の、原料混合物を成型する際に、金型詰まりの原因となる傾向がある。
【0044】
図2に示したウォールフロー型のハニカム焼成体20を製造する場合、成形体の成形後、乾燥後又は焼成後のいずれかのタイミングで、成形体のセルの封口が行われる。封口は、セルの一端の開口部に封口材(plugging material)を充填することにより行われる。封口材の構成材料には、通常、ハニカム焼成体20の構成材料と同様の材料が用いられる。
【0045】
また、図1及び図2においては、ウォールフロー型のハニカム焼成体を示したが、ハニカム焼成体は、セル22の両端の開口部がいずれも封止されていないフロースルー(flow−through)型の構造を有するものであってもよい。
【0046】
上記ハニカム構造体10には、触媒が担持されていることが望ましい。上記触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0047】
上記貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びこれらの合金が挙げられ、白金又はパラジウムの少なくとも一方が好ましい。上記アルカリ金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。上記アルカリ土類金属としては、例えば、バリウム等が挙げられる。上記酸化物としては、ペロブスカイト(La0.750.25MnO等)、CeO等が挙げられる。また、ハニカム構造体10には、セリアやジルコニア等の助触媒が担持されていてもよい。
【0048】
なお、触媒を担持させる時期は、特に限定されるものではなく、ハニカム構造体10を作製した後に担持させてもよいし、ハニカム焼成体20の原料の段階で担持させてもよい。また、触媒の担持方法は、特に限定されるものではなく、例えば、含浸法等によって行うことができる。
【0049】
上述したようなハニカム構造体(セラミックハニカムフィルタ)10の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルター等に好適に適用することができる。
【0050】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0051】
まず、上記チタン酸アルミニウムの原料となる、アルミニウム源、チタン源、及び必要に応じて添加されるマグネシウム源やケイ素源を含む無機化合物、上記無機繊維及び/又はウィスカ、バインダ成分等を混合して原料混合物を得る。また、原料混合物には上記の他に、必要に応じて造孔材、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒等を添加することもできる。
【0052】
ここで、上記無機化合物は、チタン酸アルミニウムの原料であるが、この無機化合物にマグネシウム源を添加すると、焼成によりチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶が形成され、耐熱性がより向上されたハニカム焼成体を得ることができる。なお、チタン酸アルミニウムの原料である上記無機化合物の一部又は全部に代えて、予め結晶化されたチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムを用いてもよい。
【0053】
また、上記バインダ成分としては、上述した接着剤層14に含有されるバインダ成分と同種の材料を用いることができる。なお、ハニカム焼成体20の原料として用いるバインダ成分と接着剤層14の原料として用いるバインダ成分とは、同種の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0054】
上記原料混合物に含まれる上記バインダ成分の量は、原料混合物の固形分全量を基準として、望ましい下限は5質量%であり、より望ましい下限は10質量%であり、さらに望ましい下限は15質量%である。一方、望ましい上限は50質量%であり、より望ましい上限は40質量%であり、さらに望ましい上限は35質量%である。バインダ成分の量が上記範囲内であることにより、後述の、原料混合物を成型する際に、安定した成型ができる傾向がある。
【0055】
造孔剤としては、例えば、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイスが挙げられる。
【0056】
潤滑剤および可塑剤としては、例えば、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0057】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;水;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤が挙げられる。
【0058】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。
【0059】
上記原料混合物の調製は、特に限定されるものではないが、上述した各材料を混合及び/又は混練することで行うことが好ましい。混合は、例えば、ミキサーやアトライタ(attritor)などを用いて行うことができる。混練は、例えば、ニーダー(kneader)などを用いて行うことができる。
【0060】
次に、上記で得られた原料混合物を成型することにより、ハニカム形状の成形体(グリーン成形体)を得る。上記原料混合物を成型する方法は、特に限定されるものではないが、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0061】
次に、得られた成形体に、必要に応じて、乾燥機を用いて乾燥処理を施す。上記乾燥機としては、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機及び凍結乾燥機等が挙げられる。
【0062】
成形後又は乾燥後、成形体には封口を施してもよい。封口は、例えば、図2に示したように、セル22a,22bの一端の開口部に封口材を充填することにより行われる。この場合、封口は、例えば、複数の貫通孔が所望の位置に設けられたマスクを成形体の一端面に密着させ、そこへ封口材を供給することにより、セル22aの端部にのみ封口材を充填し、成形体の他端面に対しても同様にして22bの端部にのみ封口材を充填することにより行うことができる。これにより、図2に示したように、一端の開口部が封口されたセル22aと、セル22aとは反対側の開口部が封口されたセル22bとが交互に配置された成形体を得ることができる。
【0063】
封口材としては、通常、上記成形体と同様の材料を用いることができる。また、封口材として、上記成形体とは異なる材料を用いることもできる。
【0064】
なお、封口は、後述の焼成後に行ってもよい。その場合、封口後に再度焼成が行われる。焼成前の成形体に対して封口を行っておいた場合には、焼成工程が1回で済むため好ましい。
【0065】
次に、必要に応じて乾燥処理を施したハニカム成形体を仮焼(脱脂)および焼成する。仮焼(脱脂)は、ハニカム成形体中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程であり、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜900℃の温度範囲)になされる。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0066】
焼成は、例えば、焼成炉にグリーン成形体を置き、加熱する方法により行うことができる。焼成温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。一方、得られるハニカム焼成体を加工し易いものにする観点から、焼成温度は、通常1650℃以下であり、好ましくは1600℃以下であり、より好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。ハニカム成形体がケイ素源粉末を含む場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。これにより、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができる。
【0067】
焼成は通常、大気中で行われるが、原料混合物の成分や成分量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また焼成雰囲気中の水蒸気分圧を低くして焼成してもよい。
【0068】
焼成は通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉(roller hearth furnaces)などの通常の焼成炉を用いて行われる。焼成は回分式(batch type)で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。また焼成は静置式で行ってもよいし、流動式で行ってもよい。
【0069】
焼成時間は、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分以上300時間以下である。
【0070】
以上により、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を得ることができる。得られたハニカム焼成体は、成形直後のハニカム成形体の形状をほぼ維持した形状を有する。得られたハニカム焼成体は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0071】
次に、接着剤層14の原料である接着剤ペーストを調製する。上記接着剤ペーストは、先に説明したようなハニカム構造体の接着剤層の原料となる、少なくともセラミック粒子を含むペースト剤であり、好ましくは、セラミック粒子の30質量%以上がチタン酸アルミニウム粒子であるものである。また、上記接着剤ペーストに含まれる上記セラミック粒子のうち、その粒子径が接着対象である上記ハニカム焼成体の平均気孔径よりも大きいものの粒子数が、上記セラミック粒子の全粒子数の30%以下であることが好ましい。
【0072】
なお、後述する工程を経てハニカム構造体10とした後の接着剤層14中に含まれるセラミック粒子の粒子径分布は、接着剤層14の原料中に含まれるセラミック粒子の粒子径分布と同等である。そのため、接着剤ペーストを調製する際に配合するセラミック粒子の粒子径及び粒子数とハニカム焼成体20の平均気孔径との関係を上記範囲に制御することにより、製造されるハニカム構造体10の接着剤層14中に含まれるセラミック粒子の粒子径及び粒子数とハニカム焼成体20の平均気孔径との関係を上記範囲に制御することができる。なお、セラミック粒子の粒子径分布は、従来公知の方法、例えば分級等の方法によって調整することができる。
【0073】
なお、上記接着剤ペーストに含まれる材料及び各材料の配合量の詳細については、上述しているため、その説明を省略する。
【0074】
次に、複数のハニカム焼成体20を結束させて、所定の大きさのハニカム集合体を形成する。ハニカム集合体の形成は、例えば、各ハニカム焼成体20の側面に接着剤ペーストを塗布して接着剤ペースト層を形成し、ハニカム焼成体20を順次結束させる方法、又は、作製するセラミックブロック16の形状と略同形状の型枠内に各ハニカム焼成体20を仮固定した状態とし、接着剤ペーストを各ハニカム焼成体20間に注入する方法等によって行うことができる。そして、このハニカム集合体を加熱して接着剤ペースト層を乾燥、固化させることによって接着剤層14を介してハニカム焼成体20同士が強固に接着されたセラミックブロック16を形成する。
【0075】
なお、結束させるハニカム焼成体20の数は、目的とするハニカム構造体10の大きさに合わせて適宜決定すればよい。また、セラミックブロック16に、必要に応じて、切断、研磨等を施して図1(a)に示したような円柱形状としてもよい。
【0076】
また、上記工程により形成される接着剤層14の厚さは、0.5〜5mmであることが好ましい。接着剤層14の厚さが0.5mm未満では十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接着剤層14は触媒担体やフィルターとして機能しない部分であるため、厚さが5mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積あたりの比表面積が低下し、排ガス浄化性能や排ガス処理効率が低下する傾向がある。また、接着剤層14の厚さが5mmを超えると、圧力損失が大きくなることがある。
【0077】
次に、必要に応じて、セラミックブロック16の外周面にシール材ペーストを塗布して乾燥し、固定化させることにより、シール材層12を形成する。上記シール材層12を形成することにより、セラミックブロック16の外周面を保護することができ、その結果、ハニカム構造体10の強度を高めることができる。
【0078】
上記シール材ペーストの原料は、特に限定されず、上記接着剤ペーストと同じ原料からなるものであってもよいし、異なる原料からなるものであってもよい。また、上記シール材ペーストが、上記接着剤ペーストと同じ原料からなる場合、その構成成分の配合比は、上記接着剤ペーストと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
上記シール材層12の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1〜2mmであることが望ましい。0.1mm未満では、外周面を保護しきれず強度を高めることができないおそれがあり、2mmを超えると、ハニカム構造体10としての単位体積あたりの比表面積が低下してしまい、排ガス浄化性能や排ガス処理効率が低下する傾向がある。
【0080】
また、本製造方法では、複数のハニカム焼成体20を、接着剤層14を介して結束させた後(なお、シール材層12を設ける場合は、シール材層12を形成した後)に、仮焼することが望ましい。これにより、接着剤層14、シール材層12に有機バインダが含まれている場合などには、脱脂除去することができる。仮焼する条件は、含まれる有機物の種類や量によって適宜決定されることとなるが、おおよそ700℃で2時間程度が望ましい。
【0081】
このようなハニカム構造体の製造方法により、大型のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を容易に製造することができる。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
(接着剤の調製)
アルミナゾル−100(商品名、日産化学社製、Al:10%)を90質量%と、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミノシリケートガラスの複合相を持つ粉末(Al1.82Mg0.12Ti1.126.09−0.1SiO)10質量%とを混合し、接着剤を調製した。この接着剤中の固形分質量比は、Al:チタン酸アルミニムマグネシウムセラミックス粉末(Al1.82Mg0.12Ti1.126.09−0.1SiO)=47:53であった。この接着剤を200℃で2時間乾燥して得られたセラミック粒子のBET比表面積を測定したところ、180m/gであった。また、AlTiOの真密度は3.7g/cmであり、ベーマイトの真密度は3.05g/cmであることから、接着剤中のセラミック粒子の密度の平均値は3.36g/cmである。上記BET比表面積と密度の平均値を用いて、上述の式(1)により計算したところ、セラミック粒子の比表面積径は10nmであった。なお、Al1.82Mg0.12Ti1.126.09−0.1SiOの密度としてAlTiOの密度の値を用いた。
【0083】
(セラミックスハニカム焼成体の作製)
グリーンハニカム成形体を形成するために、チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al,TiO,MgO)、SiO、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミナとアルミノシリケートガラスとの複合相をもつセラミックス粉末(仕込み時の組成式:41.4Al−49.9TiO−5.4MgO−3.3SiO、式中の数値はモル比を表す。)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤、可塑剤、分散剤及び水(溶媒)を含む原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。
Al:37.3質量部。
TiO:37.0質量部。
MgO:1.9質量部。
SiO:3.0質量部。
セラミックス粉末:8.8質量部。
造孔剤:馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉12.0質量部。
有機バインダ:7.8質量部。
可塑剤:0.4質量部。
分散剤:4.6質量部。
水:28.3質量部。
【0084】
上記の原料混合物を混練して、押出成形することにより、隔壁により区画された複数の両端が開口したセルを有するハニカム形状のグリーン(未焼成)成形体(押出される方向に垂直な断面の1辺が50mmの角柱体)を作製した。グリーンハニカム成形体を250mmの長さで切断し、常圧下、マイクロ波で乾燥した。乾燥後のグリーンハニカム成形体が図2に示すウォールフロー型となるように、乾燥体の長手方向の両端を封口後、雰囲気の酸素濃度を3体積%以下として昇温速度10℃/時間にて600℃まで昇温し、その後1450℃で5時間焼成することで、チタン酸アルミニウム焼成体(ハニカム焼成体)を得た。得られたハニカム焼成体(焼成後の角柱体)の断面形状は、一辺が42mmの正方形であった。隔壁の厚みは0.28mmであった。
【0085】
得られた封口ハニカム焼成体4本を、ブロック上に組み接着剤により接着後、500℃で1時間加熱することで接着剤を硬化させ、1辺85mmのセラミックス(チタン酸アルミニウム)ハニカム構造体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明した通り、本発明によれば、大型化が容易に可能であるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
10…ハニカム構造体、14…接着剤層、20…ハニカム焼成体、22a,22b…セル、24…セル壁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のチタン酸アルミニウム質ハニカム焼成体が、セラミック粒子を少なくとも含む接着剤層を介して複数個結束された構造を有する、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項2】
前記接着剤層に含まれる前記セラミック粒子の30質量%以上がチタン酸アルミニウム粒子である、請求項1に記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項3】
前記接着剤層に含まれる前記セラミック粒子の平均粒子径が0.2μm以下である、請求項1又は2に記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項4】
前記接着剤層には無機繊維及びウィスカの少なくとも一方が更に含まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102003(P2012−102003A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224862(P2011−224862)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】