説明

チップコンデンサ

【課題】 ESRおよびESLが十分に低減され、熱応力や機械的応力にも強いチップコンデンサを提供する。
【解決手段】 チップコンデンサ10は、ブロック状のコンデンサ本体11と、コンデンサ本体11の底面に設けられた第1の外部電極12と、コンデンサ本体の4つの側面のうち対向する2つの側面に形成された第2の外部電極13A,13Bとを備えている。コンデンサ本体11内には金属平板である第1の内部電極(奇数番目の電極)と第2の内部電極(偶数番目の電極)とが平行かつ交互に配置されており、第1の内部電極の一端は第1の外部電極12と接続されており、第2の内部電極の両端は第2の外部電極13A,13Bと接続されている。このように平板電極が誘電体を介して交互に配置されることによって積層コンデンサが構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップコンデンサに関し、より詳細には、チップコンデンサの電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のチップコンデンサは、たとえば図11に示すように、誘電体ブロック51の両端にそれぞれ外部電極52,53を有しており、さらに誘電体ブロック51の内部には積層された複数の内部電極54を有している(特許文献1参照)。この内部電極のうち例えば奇数番目の内部電極54は一方の外部電極52に接続され、偶数番目の内部電極54は他方の外部電極53に接続され、これにより奇数番目の内部電極と偶数番目の内部電極間にキャパシタンスが形成される。
【特許文献1】特開平05−082383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回路基板とチップコンデンサの接続長及びチップコンデンサ内部配線長によるESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)及びESL(Equivalent Series Inductance:等価直列インダクタンス)を低減する必要があったが、上述した従来の電極配置ではこれらの長さを十分に低減することができなかった。また、外部電極が誘電体ブロックの両端の2箇所に配置されているため、熱応力や機械的応力が2箇所に集中し、外部電極が剥れてしまうなどの問題があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ESRおよびESLを低減させることが可能であり、熱応力や機械的応力にも強いチップコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、誘電体および複数の内部電極を有するブロック状のコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の底面に形成された第1の外部電極と、前記第1の外部電極と電気的に絶縁され、前記コンデンサ本体の外周側面のうち対向する2つの側面に形成された第2の外部電極とを備え、前記内部電極は、前記第1の外部電極に接続された第1の内部電極と、前記第2の外部電極に接続された第2の内部電極とを備え、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とは前記誘電体を介して交互に配置されていることを特徴とするチップコンデンサによって達成される。
【0006】
本発明の好ましい実施形態においては、前記第2の外部電極が前記コンデンサ本体の4つの側面すべてに形成されている。
【0007】
本発明の好ましい実施形態においては、前記コンデンサ本体の上面にさらに前記第2の外部電極が形成されている。
【0008】
本発明の好ましい実施形態においては、前記コンデンサ本体の上面にさらに前記第1の外部電極が形成されている。
【0009】
本発明の好ましい実施形態においては、前記コンデンサ本体の外形をなす面のうち最も広い面に前記第1の外部電極が形成されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、前記第2の外部電極が前記コンデンサ本体の側面全体に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のチップコンデンサに比べてESRおよびESLを十分に低減することができる。また、外部電極がコンデンサ本体の対向する2つの側面のみならずコンデンサ本体の底面にも形成されているので、熱応力や機械的応力を分散させることができ、外部電極が剥れてしまうなどの問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかるチップコンデンサの構造を模式的かつ透過的に示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、このチップコンデンサ10は、ブロック状のコンデンサ本体11と、コンデンサ本体11の底面に設けられた第1の外部電極12と、コンデンサ本体の4つの側面のうち対向する2つの側面に形成された第2の外部電極13A,13Bとを備えている。なお、これら第2の外部電極13A,13Bをまとめて第2の外部電極13ということがある。
【0015】
コンデンサ本体11は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)など、誘電率の高い材料によって構成され、詳細は後述するが、コンデンサ本体11の内部には複数の内部電極が積層された状態で設けられている。
【0016】
第1の外部電極12は、たとえば銀(Ag)を主成分とする金属材料によって構成され、第2の外部電極13A,13Bとの絶縁領域が確保されるように、コンデンサ本体11の底面のうち周縁部分をわずかに除いたほぼ全面に形成されている。第1の外部電極12は、コンデンサ本体11の外形をなす六面のうち最も広い面積を有する面に設けられることが好ましい。そのようにすれば、第1の外部電極12の形成領域としてできるだけ広い領域を確保することができ、これによりESRおよびESLを十分に低減させることができるからである。
【0017】
第2の外部電極13A,13Bも第1の外部電極12と同様に、たとえば銀(Ag)を主成分とする金属材料によって構成され、コンデンサ本体11の対向する側面それぞれに形成されている。第2の外部電極13A,13Bは、側面全体に形成されていることが好ましく、これにより半田の濡れ性を高めることができる。第2の外部電極13A,13Bは、コンデンサ本体11の外形をなす六面のうち2番目に広い面積を有する面に設けられることが好ましい。そのようにすれば、第2の外部電極13A,13Bの形成領域としてできるだけ広い領域を確保することができ、これによりESRおよびESLを低減させることができるからである。
【0018】
図2は、図1に示したチップコンデンサ10のX−X線に沿った断面図である。また、図3は、図1に示したチップコンデンサ10のY−Y線に沿った断面図である。
【0019】
図2および図3に示すように、コンデンサ本体11内には金属平板である第1の内部電極(奇数番目の電極)14と第2の内部電極(偶数番目の電極)15とが平行かつ交互に配置されており、第1の内部電極14の一端は第1の外部電極12と接続されており、第2の内部電極15の両端は第2の外部電極13A,13Bと接続されている。逆に、第1の内部電極14と第2の外部電極15とは絶縁状態にあり、第2の内部電極15と第1の外部電極12もまた絶縁状態にある。このように平板電極が誘電体を介して交互に配置されることによって積層コンデンサが構成される。
【0020】
以上のように構成されたチップコンデンサ10は、コンデンサ本体の底面のほぼ全面に第1の外部電極12が形成されているので、電極面積を大きくとることがでる。また、第2の内部電極15の両端が第2の外部電極13A,13Bにそれぞれに接続されているので、一端のみが外部電極に接続されている場合に比べて、見かけ上の電流経路長を半分にすることができる。したがって、コンデンサのESRおよびESLを大幅に低減することができる。
【0021】
また、プリント配線基板上にチップコンデンサ10を実装する場合には、コンデンサの対向する2つの側面に設けられた第2の外部電極13A,13Bのみならず、底面に形成された第1の外部電極12も接続に使用され、固定箇所が全部で3箇所となるため、熱応力や機械的応力を分散させることができる。よって外部電極が剥れてしまうおそれがなく、接続信頼性を向上させることができる。
【0022】
図4は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的かつ透過的に示す斜視図である。また、図5は、図4に示したX−X線に沿ったチップコンデンサの断面図である。
【0023】
図4および図5に示すように、このチップコンデンサ20は、対向する2つの側面のみならず、側面全周にわたって第2の外部電極13が形成されている点が上述したチップコンデンサ10とは異なっている。すなわち、第2の外部電極13A,13Bが形成されている2つの側面に加えて、残りの2つの側面にも第2の外部電極13C,13Dが形成されている。その他の構成については上述したチップコンデンサ10とほぼ同様であることから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。なお、これら第2の外部電極13A,13B,13C,13Dをまとめて第2の外部電極13ということがある。
【0024】
本実施形態によれば、各側面に形成された第2の外部電極13のうち、第1の内部電極14および第2の内部電極15と平行な2つの第2の外部電極13C,13Dは、積層コンデンサを構成するための平板電極としても機能し、これら第2の外部電極13C,13Dとその直近(最も外側)に配置された第1の内部電極14との間でコンデンサが形成されるので、外形は同一のままでコンデンサ全体の静電容量を大きくすることができる。なお、外部電極13C,13Dを積層コンデンサの平板電極として機能させるためには、内部電極(14,15)の層数が奇数であることが好ましく、奇数番目の内部電極(第1の内部電極14)が第1の外部電極12に接続されていることが好ましい。また、前記実施形態と同様にESRおよびESLの低減および接続信頼性の向上が図られることは言うまでもない。
【0025】
図6は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的に示す斜視図である。また、図7は、図6に示したチップコンデンサのX−X線に沿った断面図である。
【0026】
図6および図7に示すように、このチップコンデンサ30は、対向する2つの側面のみならず、側面全周にわたって第2の外部電極13が形成されており、さらに、コンデンサ本体11の上面にも第2の外部電極13Eが形成されている点が上述したチップコンデンサ10とは異なっている。その他の構成については上述したチップコンデンサ10とほぼ同様であることから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
本実施形態によれば、チップコンデンサ10の底面を除く他の五面すべてに第2の外部電極が形成されているので、第2の外部電極全体をグランドラインと接続する場合には、確実に接地することができるとともに、シールド効果が得られるので、特に好適である。なお、前記実施形態に係るチップコンデンサ20と同様に、第1および第2の内部電極と平行な2つの第2の外部電極13C,13Dが積層コンデンサを構成するための平板電極として機能し、これら第2の外部電極13C,13Dとその直近(最も外側)の第1の内部電極14との間でコンデンサが形成されるので、外形は同一のままでコンデンサ全体の静電容量を大きくすることができることは言うまでもない。また、前記実施形態と同様にESRおよびESLの低減および接続信頼性の向上が図られることも言うまでもない。
【0028】
図8は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的に示す斜視図である。また、図9は、図8に示したチップコンデンサのX−X線に沿った断面図である。
【0029】
図8および図9に示すように、このチップコンデンサ40は、対向する2つの側面のみならず、側面全周にわたって第2の外部電極13が形成されており、さらに、コンデンサ本体11の底面のみならず上面にも第1の外部電極16が形成されている点が上述したチップコンデンサ10とは異なっている。そして、第1の内部電極14の両端はそれぞれ第1の外部電極12と第1の外部電極16の両方に接続されている。その他の構成については上述したチップコンデンサ10とほぼ同様であることから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
本実施形態によれば、チップコンデンサ10の底面および上面に第1の外部電極が形成されているので、チップコンデンサの上面や底面を意識する必要が無く、チップコンデンサを実装する際の取り扱いが容易となる。なお、前記実施形態に係るチップコンデンサ20と同様に、第1および第2の内部電極と平行な2つの第2の外部電極13C,13Dが積層コンデンサを構成するための平板電極として機能し、これら第2の外部電極13C,13Dとその直近の第1の内部電極14との間でコンデンサが形成されるので、外形は同一のままでコンデンサ全体の静電容量を大きくすることができることは言うまでもない。また、前記実施形態と同様にESRおよびESLの低減および接続信頼性の向上が図られることも言うまでもない。
【0031】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、これらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0032】
たとえば、前記実施形態においては、第2の外部電極はコンデンサ本体11の側面全体に形成されているが、これに限定されるものではなく、たとえば図10に示すように、側面の高さ方向の中央部分にのみ第2の外部電極13A、13Bを形成し、上下両側の縁部には電極部分を形成しないようにしてもよい。このような構成であっても、第2の外部電極の高さ方向の幅Wがある程度確保されていれば、半田の濡れ性を十分確保することができる。その際、図示のように、第1の外部電極12が底面全体に形成されてもよく、このようにすれば第1の外部電極12に起因するESRおよびESLをさらに低減させることができる。
【0033】
また、前記実施形態においては、コンデンサ本体11の外形をなす六面のうち最も広い面に第1の外部電極12や第1の外部電極16を形成したが、他の面に第1の外部電極12や第1の外部電極16を形成してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態にかかるチップコンデンサの構造を模式的かつ透過的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したチップコンデンサ10のX−X線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1に示したチップコンデンサ10のY−Y線に沿った断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的かつ透過的に示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に示したX−X線に沿ったチップコンデンサの断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的かつ透過的に示す斜視図である。
【図7】図7は、図6に示したチップコンデンサのX−X線に沿った断面図である。
【図8】図8は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的かつ透過的に示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示したチップコンデンサのX−X線に沿った断面図である。
【図10】図10は、本発明の他の好ましい実施形態に係るチップコンデンサの構成を模式的に示す斜視図である。
【図11】図11は、従来のチップコンデンサの構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 チップコンデンサ
11 コンデンサ本体
12 第1の外部電極
13 第2の外部電極
13A 第2の外部電極
13B 第2の外部電極
13C 第2の外部電極
13D 第2の外部電極
13E 第2の外部電極
14 第1の内部電極
15 第2の内部電極
16 第1の外部電極
20 チップコンデンサ
30 チップコンデンサ
40 チップコンデンサ
51 誘電体ブロック
52 外部電極
53 外部電極
54 内部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体および複数の内部電極を有するブロック状のコンデンサ本体と、
前記コンデンサ本体の底面に形成された第1の外部電極と、
前記第1の外部電極と電気的に絶縁され、前記コンデンサ本体の外周側面のうち対向する2つの側面に形成された第2の外部電極とを備え、
前記内部電極は、前記第1の外部電極に接続された第1の内部電極と、前記第2の外部電極に接続された第2の内部電極とを備え、前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とは前記誘電体を介して交互に配置されていることを特徴とするチップコンデンサ。
【請求項2】
前記第2の外部電極が前記コンデンサ本体の4つの側面すべてに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチップコンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ本体の上面にさらに前記第2の外部電極が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のチップコンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ本体の上面にさらに前記第1の外部電極が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のチップコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−13379(P2006−13379A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192031(P2004−192031)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】