説明

チップホルダ、ホルダジョイント、チップホルダ取付構造体及びスクライブ方法

【課題】スクライブ装置において、短時間でチップを交換できるようにすること。
【解決手段】チップホルダ10にチップ14を回転自在に取付ける。チップホルダ10を円筒形とし、その先端に取付部16を設ける。ホルダジョイントに開口部を設け、マグネットによってチップホルダ10を吸着させて取付けることによって、着脱を容易にする。又チップホルダ10の面に、チップのオフセットデータを2次元コード17として記録する。チップホルダの交換時にオフセットデータを読出してスクライブ装置に入力することにより、オフセットを打ち消す。こうすればチップホルダを着脱する際に補正に関連して必要だった操作を省いて、短時間の装置停止の間にチップを交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脆性材料基板にスクライブラインを形成するためのチップホルダ、ホルダジョイント、チップホルダ取付構造体及びスクライブ方法に関し、特にスクライブライン形成用のホイールチップ(スクライビングホイール)を保持するチップホルダに特徴を有するチップホルダ、ホルダジョイント、チップホルダ取付構造体及びスクライブ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示パネルや液晶プロジェクタ基板等のフラットパネルディスプレイ等では、製造過程においてマザーガラス基板が貼り合わされた後に所定の大きさの単個のパネルに成るように分断される。このマザーガラス基板等の脆性材料基板の分断には、スクライブ工程とブレイク工程があり、スクライブ工程ではスクライブ装置が用いられる。
【0003】
図1は、従来のスクライブ装置の一例を示す概略斜視図である。このスクライブ装置100は、移動台101が一対の案内レール102a、102bに沿って、y軸方向に移動自在に保持されている。ボ−ルネジ103は移動台101と螺合している。ボールネジ103はモータ104の駆動により回転し、移動台101を案内レール102a,102bに沿ってy軸方向に移動させる。移動台101の上面にはモータ105が設けられている。モータ105はテーブル106をxy平面で回転させて所定角度に位置決めするものである。脆性材料基板107はこのテーブル106上に載置され、図示しない真空吸引手段などにより保持される。スクライブ装置の上部には、脆性材料基板107のアライメントマークを撮像する2台のCCDカメラ108が設けられている。
【0004】
スクライブ装置100には、移動台101とその上部のテーブル106をまたぐようにブリッジ110がx軸方向に沿って支柱111a,111bにより架設されている。スクライブヘッド112はブリッジ110に設けられたガイド113に沿ってx軸方向に移動可能となっている。モータ114はスクライブヘッド112をx軸方向に沿って移動させる駆動源である。スクライブヘッド112の先端部には、ホルダジョイント120を介してチップホルダ130が取付けられている。
【0005】
次にスクライブヘッド112に取付けられる従来のホルダジョイントと、チップホルダについて説明する。図2に分解斜視図を示すように、ホルダジョイント120は上部にベアリング121を有し、下方がL字形に構成されたホルダ部122を有している。ホルダ部122の側方には位置決め用のピン123が設けられている。チップホルダ130は図3,図4に示すように円板状のホイールチップ(以下、単にチップという)131を回転可能に保持するものである。チップ131はピン(図示せず)によって下端中央の先端部に回転自在に保持され、ピンは止め金132によって脱落が防止されている。チップ131は脆性材料基板に圧接しながら転動してスクライブラインを形成するものである。このチップホルダ130は、その側面を位置決めピン123に接触させることにより、ホルダジョイント120のホルダ部122に位置決めしている。そしてチップホルダ130は固定ボルト133によってホルダ部122に固定される。スクライブヘッド112はその下部のホルダジョイント120、及びチップホルダ130を昇降動可能に保持している。スクライブヘッド112には、その内部にそうした昇降動作を可能とする昇降部、たとえば空気圧制御を用いるエアーシリンダーやリニアモータによる電動昇降部などが設けられている。その昇降部は、チップ131を脆性材料基板の表面上を適切な荷重にて圧接しながら転動させていき、スクライブラインを形成する。
【0006】
次に、スクライブ装置として組立てられた後、スクライブ動作に必要な電気的及び機械的な調整が終了しているスクライブ装置のスクライブ動作について説明する。図5A,図5Bはこの処理の手順を示すフローチャートである。スクライブ開始前には、図6に示すようにまず脆性材料基板107をテーブル106上に載置し、位置決め後に吸引し固定する(ステップS0)。その後、位置決め状況を確認するため、スクライブ装置の上方に設置された2台のCCDカメラ108を用いて、基板上の左右2ヶ所の位置決め用のアライメントマーク63a及び63bを夫々拡大して撮像し、画像処理を行う(ステップS1)。撮像された拡大画像は夫々対応するモニタに表示されるので、オペレータはその撮像された画像を確認しながら精確な位置決め作業を行うことが出来る。スクライブ装置100は画像処理により、2台のCCDカメラを結ぶ線、すなわちテーブル106の基準線Aから基板107がどれだけの角度(θ)傾いて載置されているか、また基板107がテーブル106の基準となる原点位置からどれだけずれて載置されているかを検出する(ステップS2)。その検出結果に基づき、スクライブ装置100はステップS3に進んで、モータ105の回転によりテーブル106の傾き角θが0となるように補正する。テーブル106の原点位置からのずれは、次のようにして補正することが可能である。y軸方向については、テーブル106をy軸方向に上記ずれ量のy軸方向成分に相当する量だけ移動させ、また、x軸方向についてはスクライブヘッド112の位置を上記ずれ量のx軸成分に相当する量だけ移動させる。また他の補正方法として、下記の方法がある。すなわち、スクライブ装置が上記ずれ量をx軸成分とy軸成分に分けてスクライブ動作の開始位置の位置データの各軸成分の値を補正することにより、スクライブ開始位置をずらせる。こうすれば同等の結果が得られる。
【0007】
上記ずれ量の補正作業は、スクライブ対象の基板が取替えられた場合には毎回必ず、スクライブ開始前に実行する必要がある。補正作業が終了したならば、所望の位置からスクライブ動作を開始する。スクライブ装置100はチップホルダを降下し、基板にチップを当接させながら転動させて通常スクライブを行う(ステップS5〜S7)。そしてそのスクライブラインの形成後、スクライブ装置100はチップホルダを上昇させ(ステップS8)、次いで基板を相対的に移動させて(ステップS9)、ステップS5に戻る。
【0008】
次にステップS9に示す基板の移動について、図5Bを用いて詳細に説明する。まずスクライブ装置100は制御プログラム内の制御データであるフラグFXが0かどうかを判断する(ステップS10)。このフラグFXはテーブルの回転時に立てられるフラグであり、初期化後は0となっている。フラグFXが0であれば、ステップS11に進んでx軸方向のスクライブが終了したかどうかを判別する。終了していなければスクライブ装置100はテーブル106を移動することによって基板を相対的に移動し(ステップS12)、ステップS5に戻って同様の処理を繰り返す。こうすればこのループを繰り返すことによってx軸方向のスクライブを終了させることができる。x軸方向のスクライブが終了した場合には、ステップS13に進んでスクライブ装置100はフラグFXを1にセットし、ステップS14に進んでテーブル106を右方向に90度回転させる。そしてステップS15においてy軸方向のスクライブが終了したかどうかを判別し、終了していなければステップS16に進んでテーブル106を移動し、ステップS5に戻る。x軸方向のスクライブが終了すればフラグFXが立てられているので、スクライブ装置100はステップS10からステップS15に進んで、y軸方向のスクライブが終了したかどうかを判別する。終了していない場合には、スクライブ装置100は必要な移動量だけ相対的に基板をy軸方向へ平行移動する(ステップS16)。その後、再度ステップS5へ戻って同様のスクライブ動作を繰り返す。その後、スクライブ装置100はステップS15でy軸方向のスクライブラインの形成が全て終了したと判断すると、テーブルを90度左方向に回転してスクライブ動作を終了する。スクライブ装置100はフラグFXをリセットし、基板は吸引が解除されてテーブル106から取り外される(ステップS17)。次に別の基板をテーブルに載置したときも、同様の手順にてスクライブ動作を行う。
【0009】
新しく製造したスクライブ装置100にホルダジョイント120を取付けて使用する場合とか、スクライブ装置を使用している途中でチップ131が取り付けられているチップホルダ130、スクライブヘッド112やホルダジョイント120を調整・修理の為又は交換する為に取外した後、調整後再び取り付けて使用する場合とか、交換後に別の部品を取り付けて使用する場合には、下記の方法でずれ量の補正作業を実行する必要がある。この場合に、説明を簡単にする為に次の調整が既に終了していると仮定して説明を進める。すなわち、2台のCCDカメラの内の1台の撮像画像の中心座標がスクライブラインの形成に必要な原点位置と一致するように調整されていて、更にチップホルダなどの部品の取付け後にチップによって形成されるスクライブラインは、テーブルのx軸方向の基準線と平行である様に予め調整されているとする。
【0010】
まず、スクライブ装置100の駆動系の原点位置と実際にチップ131が基板上にスクライブラインの形成を開始する開始位置とのずれを精確に検出する為に、テストスクライブを行う必要がある。テストスクライブをする場合は、オペレータは基板を通常のマザー基板とは別の、ダミー基板をテーブル106に載置し、ステップS0からS3までの前処理を実行させる。図7は、テストにてダミー基板上に形成されるスクライブラインとCCDカメラによる撮像画像のアライメントマークの中心座標P0との位置関係を示す模式図である。スクライブヘッド112やホルダジョイント120及びチップホルダ130の各オフセット量が補正処理されて相殺されているのであれば、スクライブ装置100は中心座標P0からスクライブを開始することができる。
【0011】
しかし電気的及び機械的な誤差があって、各組立て部品毎にその値が異なるので、取付け後の誤差の量を改めて測定し必要な補正処理を終了させてからでないと中心座標P0からスクライブができない。そこでオペレータはチップホルダ130を降下させ、ダミー基板にチップを当接させる(ステップS5’,S6’).そしてダミー基板に対してテストスクライブを行い一本のスクライブラインを形成させる(S7’)。その後、チップホルダを上昇させて(S8’)、ずれ量を測定する(S9’)。ここでチップのスクライブ開始位置(X,Y)が、図7に示すように位置P1(X,Y)=(4,3)であったとする。この位置はCCDカメラ108の撮像画像を用いて測定することができる。
【0012】
次にオペレータは位置P1から中心座標P0までのずれ量を測定する(S9’)。このずれ量がオフセットとして打ち消されるべき値となるため、これを補正値として補正処理する(S10’)。そしてダミー基板をテーブルから取外して補正の処理を終了する(S11’)。そしてステップS0に戻って同様の処理を繰り返す。こうすることによって、図5Aに示すステップS5以下の通常スクライブでは、中心座標P0からスクライブを開始することができる。
【0013】
このようにして補正処理をしておけば、それ以降はスクライブ対象の基板が取り換えられるたびにステップS1〜S3の前処理をしておくことで、脆性材料基板107上に形成されるスクライブラインは、予定したライン(例えば図6の線B)の位置に精確に形成され、同一の基板107に対して順次スクライブ開始位置を変えてスクライブ動作が繰り返される(ステップS5-S9)。
【0014】
チップは脆性材料基板を所定の長さだけスクライブすると磨耗して性能が劣化するため、定期的に交換する必要がある(特許文献1)。従来のスクライブ装置において、消耗品であるチップを交換する場合には、まずオペレータはスクライブヘッド112からチップホルダ130を取外す。次いで取外したチップホルダ130から磨耗したチップ131を取外して、新しいチップをチップホルダ130に取付ける。その後、オペレータは再度チップホルダ130をスクライブヘッド112に取り付けて、交換作業が終了する。そのためチップ自体、チップホルダ、スクライブヘッドのいずれかを交換した場合にも、チップの取付け位置に誤差(オフセット)が生じているので、オフセットを相殺するために、テストスクライブとその後の補正処理(ステップS5’〜S11’)が必要である。
【0015】
こうしてスクライブヘッドの周辺部品の取替えに伴うオフセット量を補正しておくことで、それ以降は通常のマザー基板に対してステップS0からS3の前処理をした後、ステップS5からS9の一連のスクライブ関連動作を繰り返して必要な数のスクライブラインを基板上に形成する。
【0016】
なお、ここではスクライブヘッドがx軸方向に移動し、テーブルがy軸方向に移動すると共に、回転するスクライブ装置100について示したが、テーブルがx軸、y軸方向に移動し、且つ回転するスクライブ装置もある(特許文献2)。又テーブルがx軸、y軸方向に移動するが、回転機構がないスクライブ装置もある。更にテーブルが固定され、スクライブヘッドがx及びy軸方向に移動するタイプのスクライブ装置もある(特許文献3)。
【0017】
図1に示したスクライブ装置の変形例として、移動台101上に回転テーブルを持たないで移動台上にそのまま脆性材料基板107を載置するタイプのスクライブ装置(装置タイプ1)がある。更に別の変形例として、図1のテーブル106が固定されており、ブリッジ110が支柱111a及び111b共々y軸方向に移動する駆動機構を備えたタイプのスクライブ装置(装置タイプ2、例えば、特許文献4)がある。この場合には、以下のスクライブ動作が必要となってくる。すなわち、図5AのステップS2において検出される基板107の傾き角θの補正は出来ないので、基板のずれ量の補正処理のみをS3にて実行する。このスクライブ装置では、θの補正の代わりとして図6を用いて説明する直線補間法によるスクライブ動作を実行する。すなわち、直線Bの位置に正規のスクライブラインを形成すると想定した場合に、スクライブヘッド112のみを単にx軸方向に移動すれば直線Aのラインが得られるだけである。そこでこのスクライブ装置では、スクライブヘッドのx軸方向の移動と同時に並行して、装置タイプ1の場合にはテーブル106を、もう一方の装置タイプ2の場合にはブリッジ110を夫々移動させる。こうすれば、傾斜したスクライブラインBを形成することが可能となる。同時並行して移動させる移動量は傾きθの大きさに依存する。傾斜したスクライブ線は、傾きθで形成される三角形の底辺と高さに相当する移動量をスクライブヘッド112とデーブル106(又はブリッジ110)が分担すること、言い換えると2方向の微小な階段状の直線移動の繰り返しにより実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許3074143号公報
【特許文献2】特許公開2000−119030号公報
【特許文献3】特許公開2000−086262号公報
【特許文献4】特許公開2000−264657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来チップホルダに取付けられたチップを交換する場合には、まずオペレータは固定ボルト133を緩めホルダジョイント120からチップホルダ130を取外す。そしてオペレータは止め金132のボルトを緩めて止め金132をピン孔からずらせて、ピンを抜き取って、チップ131を取り出す。又新しいチップに交換した後、オペレータは同様の過程でピンを挿入してチップをチップホルダ130に取付け、図4に示すようにチップホルダ130をホルダジョイント120に取付ける。次いでホルダジョイント120をスクライブヘッド112に取付ける。
【0020】
このようにチップを交換した場合には、図5のS0からS3及びS5’からS11’までの作業を実行する必要がある。つまり、この交換に伴うオフセットを補正する為に一旦ダミー基板を用いてテスト的なスクライブラインを形成させたり、オフセット量を求めてその量を補正するといった作業が必要となり、そうした処理に手間がかかるという欠点があった。
【0021】
又チップの大きさは用途により異なるが、液晶表示体用の貼り合わせ基板のスクライブ用の場合、例えば直径2.5mm程度であり、ピンは0.5mmφ程度であり、小さくて取り扱いにくい。従って従来はチップの交換作業に時間がかかるという欠点があった。又多種のチップを種々の装置に取り付けて使用するパネル加工工場内では、誤って異なった種類のチップを取付けてしまう可能性がある。その場合には、スクライブ条件が変化し、正常な安定したスクライブができなくなるが、その原因が直ぐにはわかりにくいという欠点もあった。又固定ボルトによってチップホルダをホルダジョイントに固定する際に、固定の仕方によってチップの取り付け位置が微妙にずれることから、取り付け後のチップによるスクライブラインの形成位置にばらつきが生じるという欠点もあった。
【0022】
本発明は従来のスクライブ装置やスクライブ方法の問題点に着目してなされたものであって、チップと一体化したチップホルダを用い、チップホルダにオフセットデータをコードの形で保持させておくことによって、このような欠点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この課題を解決するために、本発明のチップホルダは、一端がチップホルダを支持する支持部の開口に挿入され、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダであり、前記チップホルダは、他端に中心軸に沿った切欠きと、ホイールチップを保持するピンと、前記ピンを保持するピン溝を有し、前記ホイールチップは中心に貫通孔を有しており、前記貫通孔及び前記ピン溝に前記ピンが挿入されることにより前記切欠き内に回転自在に保持されて前記ホイールチップとチップホルダとが一体化しており、前記の一端に傾斜部を含むように一面が切欠かれた取付部を有し、前記の一端の少なくとも一部は磁性体で構成されることを特徴とするものである。
【0024】
この課題を解決するために、本発明のチップホルダは、チップホルダであり、一端にチップホルダの中心軸に沿い、かつ互いに対向する2つの内壁を有する切欠きと、前記切欠きに対して垂直方向に同軸に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンと、前記切欠きに挿入され、前記ピンにより回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、他端に傾斜部を形成するように一面が切欠かれた取付部を有し、前記他端の少なくとも一部は磁性体で構成され、前記傾斜部を含む面は前記ピン溝と平行に形成されることを特徴とするものである。
【0025】
この課題を解決するために、本発明のチップホルダは、チップホルダを支持する支持部の開口に挿入され、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダであり、前記の一端からチップホルダの側面に達するように切欠かれた取付部を有し、前記取付部は前記の一端と直線で交わり、前記の一端の少なくとも一部は磁性体で構成されることを特徴とするものである。
【0026】
この課題を解決するために、本発明のチップホルダは、円筒形のチップホルダであり、一端にチップホルダの軸と平行に形成された一対の下方平坦部と、前記下方平坦部の下端に下方平坦部の面に垂直方向に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンを中心の貫通孔に貫通させることで回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、他端にチップホルダの軸と平行な平坦部及び平坦部に続く傾斜部を形成するように一面が切欠かれた取付部を有し、前記ホイールチップはチップホルダと一体化しており、前記他端の少なくとも一部は磁性体で構成され、チップホルダの他端がスクライブ装置のホルダジョイントの開口に挿入されれば、前記チップホルダの傾斜部がホルダジョイントの開口内にホルダジョイントの開口の中心軸と垂直に設けられた平行ピンに接触して位置決めされ、前記チップホルダはホルダジョイントの開口に磁力で固定されるものである。
【0027】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ装置のホルダジョイントは、脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッドの先端に回転自在に装着されるホルダジョイントであって、下面に円形の開口が形成されており、前記開口は内側にマグネットと曲面を有する位置決め部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ装置のチップホルダ取付構造体は、ベアリングを備えてスクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイントと、一端が傾斜部を含むように一面が切欠かれた取付部を有して前記ホルダジョイントに所定方向に着脱自在に取り付けられ、他端にチップホルダの中心軸に沿い、かつ互いに対向する2つの内壁を有する切欠きと、前記切欠きに対して垂直方向に同軸に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンと、前記切欠きに挿入され、前記ピンにより回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダを備え、前記ホルダジョイントは、下面に前記チップホルダの一端が挿入される開口が形成されており、前記開口には内側にマグネットが埋設されており、開口の中心軸と垂直な平行ピンが設けられており、前記チップホルダの一端の少なくとも一部は磁性体で構成され、前記チップホルダの一端がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの傾斜部が平行ピンに接触して、前記ピン溝と前記平行ピンとが平行になるように位置決めされ、マグネットによって固定されることを特徴とするものである。
【0029】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ装置のチップホルダ取付構造体は、ベアリングを備えてスクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイントと、一端からチップホルダの側面に達するように切欠かれた取付部を有して前記ホルダジョイントに所定方向に着脱自在に取り付けられ、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダを備え、前記ホルダジョイントは、下面に前記チップホルダの一端が挿入される円形の開口が形成されており、前記開口には内側にマグネットが埋設されており、開口の中心軸と垂直な位置決め部材が設けられており、前記チップホルダの前記取付部は前記の一端と直線で交わり、前記チップホルダの一端の少なくとも一部は磁性体で構成され、前記チップホルダの一端がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの取付部が位置決め部材に線接触して位置決めされ、マグネットによって固定されることを特徴とするものである。
【0030】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ装置のチップホルダ取付構造体は、一端に傾斜部を含むように一面が切断された取付部を備え、他端に回転できるように取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備え、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダと、スクライブ装置のスクライブヘッドに装着され、かつ前記チップホルダを着脱できるように支持する支持部を備えているホルダジョイントと、前記ホルダジョイントに装着され、前記チップホルダの取付部を吸引するマグネットとを備え、前記ホルダジョイントの支持部には、前記チップホルダの取付部を挿入する開口が形成されており、その内側に前記マグネットが埋設されており、前記開口の内部には開口の中心軸から距離を置いた位置に中心軸と垂直で、前記チップホルダの取付部がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの傾斜部と接触する平行ピンが設けられており、前記ホイールチップはチップホルダと一体化しており、前記チップホルダの取付部は磁性体金属からなり、前記開口に挿入される形態であり、前記ホルダジョイントはベアリングを備え、前記スクライブヘッドに回転できるように装着されることを特徴とするものである。
【0031】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ方法は、脆性材料基板が設けられる設置手段、前記設置手段上の脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッド、前記スクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイント、及び一端が前記ホルダジョイントに着脱自在に取り付けられ、他端が回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、スクライブ時の第1のオフセットデータを記録した固有のコードを有するチップホルダを具備するスクライブ装置を用いたスクライブ方法であって、前記チップホルダを前記ホルダジョイントに取り付けたときに、前記チップホルダの前記第1のオフセットデータを読み出し、前記第1のオフセットデータに基づいて前記スクライブヘッドを相対的にx軸方向及びy軸方向に移動させて補正処理を行った後に、前記スクライブヘッド及び前記設置手段を、設置手段の面に沿ってx軸方向及びy軸方向に相対移動させて位置補正及びスクライブするものである。
【0032】
この課題を解決するために、本発明のスクライブ方法は、脆性材料基板が設けられる設置手段、前記設置手段上の脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッド、前記スクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイント、及び一端が前記ホルダジョイントに着脱自在に取り付けられ、他端が回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、スクライブ時の第1のオフセットデータを記録した固有のコードを有するチップホルダを具備するスクライブ装置を用い、前記スクライブヘッド、及び前記ホルダジョイントの少なくとも一方が交換されたときに、その取り付け部の誤差をテストスクライブによって検出して前記スクライブヘッド及びホルダジョイントからなるユニットの第2のオフセットデータを得るスクライブ方法であって、前記チップホルダを前記ホルダジョイントに取り付けたときに、前記チップホルダの前記第1のオフセットデータを読み出し、前記スクライブヘッド、及び前記ホルダジョイントの少なくとも一方が交換されたときに、その取り付け部の誤差をテストスクライブによって検出して前記スクライブヘッド及びホルダジョイントからなるユニットの第2のオフセットデータを得て、前記チップホルダより読み出したオフセットの前記第1のオフセットデータと前記ユニットの前記第2のオフセットデータとに基づいて前記スクライブヘッドを相対的にx軸方向及びy軸方向に移動させて補正処理を行った後に、前記スクライブヘッド及び前記設置手段を、設置手段の面に沿ってx軸方向及びy軸方向に相対移動させて位置補正及びスクライブするものである。
【発明の効果】
【0033】
このような特徴を有する本発明によれば、ホルダジョイントに開口部を設け、マグネットによってチップホルダを吸着させて取付けているので、チップホルダを容易に着脱し、位置決め固定することができる。又チップのオフセットデータをチップホルダにコードとして保持し、そのコードを読み取ることによって、補正データをスクライブ装置に容易に設定することができる。従ってチップホルダに固有のオフセットを測定する必要がなく、容易に所望の位置からスクライブを開始することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は従来のスクライブ装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は従来のホルダジョイント及びチップホルダを示す斜視図である。
【図3】図3は従来のチップホルダを示す斜視図である。
【図4】図4は従来のチップホルダをホルダジョイントに取付けた状態を示す図である。
【図5A】図5Aは従来のスクライブ処理を示すフローチャートである。
【図5B】図5Bは従来のスクライブ処理において基板の移動処理を示すフローチャートである。
【図6】図6はCCDカメラでアライメントマークを撮像した状態を示す図である。
【図7】図7はアライメントマークとチップのスクライブ開始位置及びオフセットデータの関係を示す図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態によるスクライブ方法を実現するスクライブ装置の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態によるチップホルダの構成を示す図である。
【図10】図10は本実施の形態によるチップホルダの斜視図である。
【図11】図11は本実施の形態によるホルダジョイントを示す図である。
【図12】図12は本実施の形態によるホルダジョイントのチップホルダ挿入時の斜視図である。
【図13】図13はチップホルダを挿入した状態を示すホルダジョイントの一部断面図である。
【図14】図14はホルダジョイントをスクライブヘッドに取付けた状態を示す図である。
【図15】図15は本実施の形態によるスクライブ方法を実現するスクライブ装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図16A】図16Aは本実施の形態によるスクライブ方法のスクライブ処理の手順を示すフロー図である。
【図16B】図16Bは本実施の形態によるスクライブ方法を実現するスクライブ装置のスクライブ処理の手順を示すフロー図である。
【図17】図17はアライメントマークとチップのスクライブ開始位置及びオフセットデータの関係を示す図である。
【図18A】図18Aはチップホルダへの2次元データの書込み処理を示す概略模式図である。
【図18B】図18Bはチップホルダへの2次元データの読取り処理を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図8は本発明の実施の形態によるスクライブ方法を実現するスクライブ装置を示す斜視図である。このスクライブ装置において、前述した従来例と同一部分は同一符号を付している。本実施の形態によるスクライブ装置1は、移動台101が一対の案内レール102a、102bに沿って、y軸方向に移動自在に保持されている。ボ−ルネジ103は移動台101と螺合している。ボールネジ103はモータ104の駆動により回転し、移動台101を案内レール102a,102bに沿ってy軸方向に移動させる。移動台101の上面にはモータ105が設けられている。モータ105はテーブル106をxy平面で回転させて所定角度に位置決めするものである。脆性材料基板107はこのテーブル106上に載置され、図示しない真空吸引手段などにより保持される。スクライブ装置1の上部には、脆性材料基板107のアライメントマークを撮像する2台のCCDカメラ108が設けられている。
【0036】
スクライブ装置1には、移動台101とその上部のテーブル106をまたぐようにブリッジ110がx軸方向に沿って支柱111a,111bにより架設されている。スクライブヘッド112はブリッジ110に設けられたガイド113に沿ってx軸方向に移動可能となっている。モータ114はスクライブヘッド112をx軸方向に沿って移動させるものである。スクライブヘッド112の先端部には、後述するチップホルダ10がホルダジョイント20を介して取付けられている。ここでモータ104と案内レール102a,102b、ボールネジ103はテーブルをy軸方向に移動させる移動部であり、ブリッジ110、支柱111a,111b、ガイド113はスクライブヘッドをx軸方向に移動させる移動部であり、モータ105はテーブルを回転させる回転部であって、これらが相対移動部を構成している。
【0037】
次に本実施の形態によるスクライブヘッドに取付けられるチップホルダ10の構成について説明する。図9は本発明の実施の形態によるチップホルダを示す図であり、図10はその斜視図である。これらの図に示すように、チップホルダ10は略円筒形の部材であって、その一端には略正方形状の平坦部11a,11bがいずれも中心軸に平行に設けられる。チップホルダ10はこの平坦部の間に中心軸に沿った切欠き12を有しており、平坦部11a,11bの下端にはその面に垂直な方向のピン溝13を有している。チップ14は例えばホイール径が2.5mm、厚さ0.5mm程度の円板状の形状を有し、円周部分の断面が円錐形に形成され、中心に貫通孔を有している。チップ14は、ピン溝13に挿入されたピン15を中心の貫通孔に貫通させることによって、回転自在に保持される。ピン15をピン溝13に挿入しチップ14を保持した後は、チップの交換を要する場合にもチップを取り外さず、チップホルダと共に交換される。一方チップホルダ10の他端には位置決め用の取付部16が設けられている。取付部16はチップホルダ10を切欠いて形成され、傾斜部16a及び平坦部16bを有する。平坦部16bはチップホルダの軸と平行であり、且つ下方の平坦部11a,11bとは垂直となっている。尚平坦部11aには、後述するように2次元コード17が印字される。又チップホルダ10はその上部の一部分が磁性体金属で構成されている。
【0038】
スクライブヘッド112はその内部に、チップを備えたチップホルダ10の昇降動作を可能とする昇降部、例えば空気圧制御を用いるエアーシリンダーやリニアモータによる電動昇降部などが設けられている。その昇降部により、チップ14を脆性材料基板の表面上を適切な荷重にて圧接し転動していきスクライブラインを形成する。
【0039】
次にホルダジョイント20について説明する。図11はホルダジョイントを示す図であり、図12はこのホルダジョイント20にチップホルダ10を挿入する状態を示す斜視図である。これらの図に示すようにホルダジョイント20は上部にベアリング21a,21bを有しており、下方がチップホルダを保持する保持部22となっている。ホルダジョイント20の保持部22には、図示のように円形の開口23が形成されており、その内側にマグネット24が埋設されている。又この開口23の内部には中心軸から隔てた位置に中心軸と垂直な平行ピン25が設けられる。平行ピン25はチップホルダ10の傾斜部16aに接してチップホルダ10を位置決めするものである。
【0040】
このチップホルダ10をホルダジョイント20に取付ける際には、図12に示すようにホルダジョイントの開口23にチップホルダ10をその取付部16から挿入する。そうすればチップホルダの先端部がマグネット24によって吸引され、更に傾斜部16aが平行ピン25に接触して位置決め固定される。図13はこの取付けられた状態を示す部分断面図、図14はホルダジョイント20が取付けられたスクライブヘッド112の一部を示す図である。チップホルダ10はマグネット24によって吸引されているだけであるため、取付けが極めて容易であり、所定の位置に固定される。取り替える場合にもチップホルダ10を引っ張るだけで容易に取り外すことができ、着脱が容易となる。
【0041】
次に本実施の形態によるスクライブ装置1の構成について、ブロック図を用いて説明する。図15はスクライブ装置1の制御系を示すブロック図である。本図において2台のCCDカメラ108からの出力は画像処理部41を介して制御部42に与えられる。又後述のユニット補正値及びチップホルダの補正データは補正値入力部43を介して制御部42に与えられる。制御部42はこれらの補正値に基づいて、X方向及びY方向のオフセットを打ち消すようにXモータ駆動部44、Yモータ駆動部45にデータを与える。これらのモータ駆動部44,45は夫々モータ114,104を直接駆動するものである。又回転用モータ駆動部46はモータ105を駆動し、テーブル106上に配置された脆性材料基板107を回転させると共に、角度ずれがあるときにその角度ずれを打ち消すものである。更に制御部42にはチップホルダ昇降駆動部47やモニタ48が接続される。チップホルダ昇降駆動部47は、チップ14の転動時にチップ14が脆性材料基板の表面上を適切な荷重にて圧接するように駆動するものである。
【0042】
次に本実施の形態の動作について図16A,図16Bのフローチャートを用いて説明する。スクライブ装置1がスクライブを開始する際には、前述した従来例の図5Aと同様に、ステップS0〜S3の処理を行う。次いでステップS4においてスクライブ装置1はテストスクライブが必要かどうかを判別し、テストスクライブが必要であればステップS5’に進んで前述した従来例とほぼ同様の処理を行う。この処理について以下に説明する。
【0043】
新規に製作した、あるいは古いチップホルダを取り替えて新たにスクライブヘッド112やホルダジョイント20をスクライブ装置1に取り付けて使用する場合には、まずスクライブ装置1の駆動系の原点位置及び走行方向と、実際にチップ14が基板上にスクライブラインの形成を開始する開始位置及び形成方向とが精確に一致するように、下記の要領で調整する必要がある。スクライブヘッド112やホルダジョイント20を交換した後でテストスクライブする場合には、オペレータはあらかじめダミー基板をテーブル上に載置する。ここであるチップホルダの補正値として、例えばX=−1,Y=−2があらかじめ入力されているものとする。尚このスクライブ装置を初めて使用する場合は、チップホルダのオフセット値はX=0,Y=0であるとする。図17はスクライブ対象となるガラス基板等に取付けられるアライメントマークと、チップホルダの実際の切り込み位置との関係を示す図である。アライメントマークの中心点を中心座標P0とすると、スクライブヘッド112やホルダジョイント20にオフセットがなければ、チップホルダ10のオフセットを打ち消す補正を行うことによって、スクライブ装置1は中心座標P0からスクライブを開始することができる。
【0044】
しかし電気的及び機械的な誤差があるため、中心座標P0からスクライブができない。そこでオペレータはチップホルダを降下させ、ダミー基板にチップを当接させる(ステップS5’,S6’).そしてダミー基板に対してテストスクライブを行い(S7’)、次にステップS8’においてチップホルダを上昇させて、切り込み開始位置を測定する。ここでチップの切り込み開始位置(X,Y)は、図17に示すように位置P2(X,Y)=(3,1)であったとする。この位置はCCDカメラ108を用いて測定することができる。この測定によってオフセットのないチップホルダを使った場合に、チップを降下させてダミー基板に対してスクライブを開始したときに、スクライブヘッド112とホルダジョイント20によるユニットに固有のオフセット(誤差)が確認されたこととなる。
【0045】
従って次に測定された位置P2から中心座標までのずれ量を測定する(S9’)。このずれ量がオフセットとして打ち消されるべき値となるため、オペレータはこれを使用してユニットの誤差を打ち消す補正値を入力する(S12)。この場合にはこのオフセットを打ち消すためのユニット補正値(第2の補正値)は、X=−3,Y=−1となる。
【0046】
さてこの処理を終えた後、又はテストスクライブが不要な場合には、スクライブ装置1はステップS21においてチップホルダ130が交換されたかどうかを判別する。チップホルダ10は図13に示すようにホルダジョイント20に取付けられ、更にホルダジョイント20が図14に示すようにスクライブヘッド112に取付けられる。従ってこれらのいずれかを交換すると、電気的な原点とスクライブ開始点との位置ずれが生じる。この位置ずれ(オフセット)の原因としては、部品精度や組立誤差等がある。スクライブヘッド112及びホルダジョイント20は交換頻度が少なく、これらをユニットの固定誤差とすることができる。一方チップホルダについては、チップが磨耗して性能が劣化する毎にチップホルダ10自体を交換するため、補正を頻繁に行う必要があった。そこで本実施の形態では、あらかじめチップホルダ10の出荷時に、チップホルダ10に固有のオフセット値を測定しておき、このオフセット値(第1のオフセット値)を後述するようにチップホルダ10自体に記録する。そしてオペレータがチップホルダを交換した場合に、ステップS22に進んで新しいチップホルダ10のオフセット値を読み出す。そしてオペレータは補正値入力部43より対応する補正データを入力する(ステップS23)。
【0047】
そして制御部42はステップS24において総補正値として、ユニット補正値とチップホルダの補正値とをX,Yについて個別に加算する。上述の例では総補正値をX=−4,Y=−3として、補正の処理を終了する。
【0048】
仮にチップホルダ10の補正データを入力せず、且つユニットの固定誤差も補正することなくそのままチップを降下させると、図17に示す位置P1(X,Y)=(4,3)にチップが降下することとなる。又ユニットの固定誤差のみの補正のみを行った場合には、図17の位置P3(X,Y)=(1,2)にチップが降下することとなる。そこでこのスクライブ装置1ではユニット補正値とチップホルダの補正データを加える。こうすることによって、図16Aに示すステップS5以下の通常スクライブでは、中心座標P0からスクライブを開始することができる。
【0049】
その後、新たな脆性材料基板に対してスクライブを行う際には、図16Aに示すフローチャートのうちステップS0からS3を実行した後でステップS5〜S9を行うことによってスクライブを行うことができる。即ち一旦スクライブヘッドのオフセットを補正した後は、脆性材料基板が変わってもその基板がテーブル上の正規の位置決め位置からどれ程ずれているかのずれ量を基板交換時に検出して、一度補正する処理を実行すればよい。
【0050】
次にこの初期補正後にチップホルダ10を交換した場合には、図16Aに示すようにステップS1〜S4、及びS21からS22に進んで新たなチップホルダ10に記録されている補正値を読み出す。更にステップS23において、読み取った新しいチップホルダ10の補正データを入力する。この後ステップS24においてスクライブ装置内で既に設定したユニット補正値と合わせてチップホルダの補正値を加算し、総補正値とするだけで、テストスクライブを実行せずに全ての補正が完了することとなる。
【0051】
従って、補正処理後の実際のスクライブの際には、図16Aに示すステップS1〜S3に続けてS5〜S9を行うことによって、通常のスクライブを行うことができる。即ち従来のようにオペレータがダミー基板をテーブルに載置し、試験的にダミー基板上にスクライブラインを形成して基板の位置決め位置と方向の両方のずれを補正した後、チップホルダの取付けオフセットに伴うオフセットを相殺するといった補正処理(ステップS5’〜S11’)を実行する必要がなくなり、補正作業を大幅に軽減させることができる。
【0052】
出荷時に行うチップホルダに固有のオフセットの測定について説明する。この場合はあらかじめユニット誤差が0の装置、又はユニット誤差が既知の装置を用いて、チップホルダのチップのスクライブ開始位置を確認する。そしてスクライブ開始位置に基づいてオフセットデータを得る。また、これを打ち消す値を補正データとする。
【0053】
次にこのオフセットデータの記録方法について説明する。本実施の形態では、図18A,図18Bに示すように、チップホルダ10の平坦部11a又は11bにコードを記録する。このコードは1次元コード、例えばバーコードを用いて記録してもよいが、記録面積が小さいため2次元コードであることが好ましい。2次元コードでは、1次元コードよりも狭い面積に多くの情報を記録することができる。また2次元コードはデータ復元機能を持ち、汚れやデータの一部に破損が生じても、それを復元して読み取り用センサによって読み取ることが可能である。図18A,図18Bはチップホルダ10への2次元コードの書込みと読出しを行う状況を模式的に示す図である。図18Aにおいてレーザマーカのコントローラ51によって記録するデータを設定して2次元コードのパターンを形成する。記録すべきデータとしては、チップの種類やあらかじめ測定したオフセットデータを2次元コードとする。そしてヘッド部52によってチップホルダ10の平坦部11a又は11bに直接印字する。図9,図10にはこうして平坦部11aに印字された2次元コード17を示している。そして、チップを交換するためにチップホルダを取り替えた場合には、新しいチップホルダの使用前に図18Bに示すように2次元データを読取器53によって読み取る。そうすれば読取ったデータからチップの種類を確認することができる。又前述したようにオフセット値をスクライブ装置の制御部へ手動操作にて又は自動的に入力させることによって、チップホルダの取替えに伴うデータ補正処理を極めて容易に実行させることができる。
【0054】
尚本実施の形態では、2次元コードをチップホルダ10に直接印字しているが、2次元コードを印字したラベルを張り付けるようにしてもよい。又本実施の形態では、チップホルダの平坦部11a又は11bに2次元コードを印字するようにしているが、傾斜部16aや平坦部16bに記録してもよく、更に円筒部分の表面に記録することもできる。
【0055】
本実施の形態では、2次元コードとしてチップの種類とオフセットデータとを記録するようにしているが、これらのデータに加えて、チップホルダの製造年月日やロット等を記録することもできる。更に2次元コードのパターンの記録器としてはレーザマーカ以外の他の記録器であってもよく、又データの読取器としてワイヤレスのハンディ型読取器を用いることもできる。
【0056】
更に本実施の形態では、チップホルダに固有のデータを2次元コードとして記録しているが、この記録媒体として密着接触型のデータキャリア等を用いてもよい。この場合にはチップホルダの平坦部16b等にデータキャリアを取付け、ホルダジョイントのデータキャリアに対向する部分に、データの読取りや書込み機能を有するリードライトユニットを配置しておく。こうすればデータの読出しを記録器や読取り用センサ等を用いることなく、コードを書込み及び読出してこれを利用することができる。
【0057】
また本実施の形態では、チップホルダに2次元のコードとしてオフセット値を記録している。これに代えてオフセット値を打ち消すためのデータをチップホルダに記録しておき、このオフセット値を打ち消す補正値をスクライブ装置に入力し、補正を行うようにしてもよい。
【0058】
次に他の形式のスクライブ装置に本発明を適用した場合について説明する。他の形式のスクライブ装置として、テーブルが回転せずx軸方向及びy軸方向にのみ移動する装置がある。又スクライブヘッドがx軸及びy軸方向に移動するスクライブ装置もある。これらの場合には、θ補正に変えてアライメントマークの確認によってθに相当する補正をする必要がある。
【0059】
移動台101上に回転テーブルを持たないで移動台上にそのまま脆性材料基板107を載置するスクライブ装置の場合には、図16AのステップS2において角度θの補正は不可能となる。このとき上記の場合と同様に補正処理をすれば、所望の位置、例えばアライメントマークの中心座標P0からスクライブが開始されるが、角度ずれも存在すると、スクライブの終了点がずれることになる。この場合は従来と同様に直線補間法によって、この角度のずれを打ち消すことができる。
【0060】
更に複数のヘッドを有するマルチスクライブ装置も用いられている。この場合には各ヘッドの使用時に補正データに合わせてオフセットを除くように位置調整することが必要となる。また、2枚の脆性材料基板が貼合わされたパネル基板の上下両面を同時にスクライブするべく上下に一対のスクライブヘッドが搭載されたスクライブ装置の場合にも、同様のチップホルダが採用可能である。単に、スクライブヘッドがx軸とy軸方向共に移動しチップホルダがxy平面内で自在に回転可能に保持されて、チップが形成するスクライブラインが曲線を描くように構成されているスクライブヘッドが搭載されたスクライブ装置についても、本発明のチップホルダを用いればチップの取替え後には、スクライブ開始位置データの補正を容易に短時間で行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は脆性材料基板にスクライブラインを形成するためのチップホルダ、ホルダジョイント、チップホルダ取付構造体及びスクライブ方法に関し、チップホルダのオフセットデータをチップホルダにコードとして保持しているため、そのコードを読み取ることによって補正データをスクライブ装置に容易に設定することができる。従ってチップホルダに固有のオフセットを測定する必要がなく、容易に所望の位置からスクライブを開始することができ、ガラス基板のスクライブ工程に有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 スクライブ装置
10 チップホルダ
11a,11b,16b 平坦部
12 切欠き
13 ピン溝
14 チップ
15 ピン
16 取付部
16a 傾斜部
17 2次元コード
20 ホルダジョイント
21a,21b ベアリング
22 保持部
23 開口
24 マグネット
25 平行ピン
41 画像処理部
42 制御部
43 補正値入力部
44 Xモータ駆動部
45 Yモータ駆動部
46 回転用モータ駆動部
47 チップホルダ昇降駆動部
48 モニタ
112 スクライブヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がチップホルダを支持する支持部の開口に挿入され、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダであり、
前記チップホルダは、他端に中心軸に沿った切欠きと、ホイールチップを保持するピンと、前記ピンを保持するピン溝を有し、
前記ホイールチップは中心に貫通孔を有しており、
前記貫通孔及び前記ピン溝に前記ピンが挿入されることにより前記切欠き内に回転自在に保持されて前記ホイールチップとチップホルダとが一体化しており、
前記の一端に傾斜部を含むように一面が切欠かれた取付部を有し、
前記の一端の少なくとも一部は磁性体で構成されることを特徴とするチップホルダ。
【請求項2】
チップホルダであり、
一端にチップホルダの中心軸に沿い、かつ互いに対向する2つの内壁を有する切欠きと、前記切欠きに対して垂直方向に同軸に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンと、前記切欠きに挿入され、前記ピンにより回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、
他端に傾斜部を形成するように一面が切欠かれた取付部を有し、
前記他端の少なくとも一部は磁性体で構成され、
前記傾斜部を含む面は前記ピン溝と平行に形成されることを特徴とするチップホルダ。
【請求項3】
チップホルダを支持する支持部の開口に挿入され、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダであり、
前記の一端からチップホルダの側面に達するように切欠かれた取付部を有し、
前記取付部は前記の一端と直線で交わり、
前記の一端の少なくとも一部は磁性体で構成されることを特徴とするチップホルダ。
【請求項4】
円筒形のチップホルダであり、
一端にチップホルダの軸と平行に形成された一対の下方平坦部と、前記下方平坦部の下端に下方平坦部の面に垂直方向に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンを中心の貫通孔に貫通させることで回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、
他端にチップホルダの軸と平行な平坦部及び平坦部に続く傾斜部を形成するように一面が切欠かれた取付部を有し、
前記ホイールチップはチップホルダと一体化しており、
前記他端の少なくとも一部は磁性体で構成され、
チップホルダの他端がスクライブ装置のホルダジョイントの開口に挿入されれば、前記チップホルダの傾斜部がホルダジョイントの開口内にホルダジョイントの開口の中心軸と垂直に設けられた平行ピンに接触して位置決めされ、前記チップホルダはホルダジョイントの開口に磁力で固定されるチップホルダ。
【請求項5】
脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッドの先端に回転自在に装着されるホルダジョイントであって、
下面に円形の開口が形成されており、前記開口は内側にマグネットと曲面を有する位置決め部材が設けられていることを特徴とするスクライブ装置のホルダジョイント。
【請求項6】
ベアリングを備えてスクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイントと、
一端が傾斜部を含むように一面が切欠かれた取付部を有して前記ホルダジョイントに所定方向に着脱自在に取り付けられ、他端にチップホルダの中心軸に沿い、かつ互いに対向する2つの内壁を有する切欠きと、前記切欠きに対して垂直方向に同軸に形成されたピン溝と、前記ピン溝に挿入されるピンと、前記切欠きに挿入され、前記ピンにより回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダを備え、
前記ホルダジョイントは、下面に前記チップホルダの一端が挿入される開口が形成されており、前記開口には内側にマグネットが埋設されており、開口の中心軸と垂直な平行ピンが設けられており、
前記チップホルダの一端の少なくとも一部は磁性体で構成され、
前記チップホルダの一端がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの傾斜部が平行ピンに接触して、前記ピン溝と前記平行ピンとが平行になるように位置決めされ、マグネットによって固定されることを特徴とするスクライブ装置のチップホルダ取付構造体。
【請求項7】
ベアリングを備えてスクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイントと、
一端からチップホルダの側面に達するように切欠かれた取付部を有して前記ホルダジョイントに所定方向に着脱自在に取り付けられ、他端に回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備える、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダを備え、
前記ホルダジョイントは、下面に前記チップホルダの一端が挿入される円形の開口が形成されており、前記開口には内側にマグネットが埋設されており、開口の中心軸と垂直な位置決め部材が設けられており、
前記チップホルダの前記取付部は前記の一端と直線で交わり、前記チップホルダの一端の少なくとも一部は磁性体で構成され、前記チップホルダの一端がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの取付部が位置決め部材に線接触して位置決めされ、マグネットによって固定されることを特徴とするスクライブ装置のチップホルダ取付構造体。
【請求項8】
一端に傾斜部を含むように一面が切断された取付部を備え、他端に回転できるように取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを備え、脆性材料基板を切断するためのスクライブライン形成用のチップホルダと、
スクライブ装置のスクライブヘッドに装着され、かつ前記チップホルダを着脱できるように支持する支持部を備えているホルダジョイントと、
前記ホルダジョイントに装着され、前記チップホルダの取付部を吸引するマグネットとを備え、
前記ホルダジョイントの支持部には、前記チップホルダの取付部を挿入する開口が形成されており、その内側に前記マグネットが埋設されており、前記開口の内部には開口の中心軸から距離を置いた位置に中心軸と垂直で、前記チップホルダの取付部がホルダジョイントの開口に挿入されれば前記チップホルダの傾斜部と接触する平行ピンが設けられており、
前記ホイールチップはチップホルダと一体化しており、
前記チップホルダの取付部は磁性体金属からなり、前記開口に挿入される形態であり、
前記ホルダジョイントはベアリングを備え、前記スクライブヘッドに回転できるように装着されることを特徴とするスクライブ装置のチップホルダ取付構造体。
【請求項9】
脆性材料基板が設けられる設置手段、前記設置手段上の脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッド、前記スクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイント、及び一端が前記ホルダジョイントに着脱自在に取り付けられ、他端が回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、スクライブ時の第1のオフセットデータを記録した固有のコードを有するチップホルダを具備するスクライブ装置を用いたスクライブ方法であって、
前記チップホルダを前記ホルダジョイントに取り付けたときに、前記チップホルダの前記第1のオフセットデータを読み出し、前記第1のオフセットデータに基づいて前記スクライブヘッドを相対的にx軸方向及びy軸方向に移動させて補正処理を行った後に、前記スクライブヘッド及び前記設置手段を、設置手段の面に沿ってx軸方向及びy軸方向に相対移動させて位置補正及びスクライブするスクライブ方法。
【請求項10】
脆性材料基板が設けられる設置手段、前記設置手段上の脆性材料基板に対向するように設けられるスクライブヘッド、前記スクライブヘッドの先端に回転自在に設置されるホルダジョイント、及び一端が前記ホルダジョイントに着脱自在に取り付けられ、他端が回転自在に取り付けられたスクライブライン形成用のホイールチップを有し、スクライブ時の第1のオフセットデータを記録した固有のコードを有するチップホルダを具備するスクライブ装置を用い、前記スクライブヘッド、及び前記ホルダジョイントの少なくとも一方が交換されたときに、その取り付け部の誤差をテストスクライブによって検出して前記スクライブヘッド及びホルダジョイントからなるユニットの第2のオフセットデータを得るスクライブ方法であって、
前記チップホルダを前記ホルダジョイントに取り付けたときに、前記チップホルダの前記第1のオフセットデータを読み出し、前記スクライブヘッド、及び前記ホルダジョイントの少なくとも一方が交換されたときに、その取り付け部の誤差をテストスクライブによって検出して前記スクライブヘッド及びホルダジョイントからなるユニットの第2のオフセットデータを得て、前記チップホルダより読み出したオフセットの前記第1のオフセットデータと前記ユニットの前記第2のオフセットデータとに基づいて前記スクライブヘッドを相対的にx軸方向及びy軸方向に移動させて補正処理を行った後に、前記スクライブヘッド及び前記設置手段を、設置手段の面に沿ってx軸方向及びy軸方向に相対移動させて位置補正及びスクライブするスクライブ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【公開番号】特開2013−75523(P2013−75523A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258836(P2012−258836)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2011−154743(P2011−154743)の分割
【原出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】