チップユニット及びモジュール基板
【課題】フリップチップ実装したICチップの実装信頼性を向上可能なチップユニット1を提供する。
【解決手段】基板2の表面に対をなす端子用導体層3が形成され、その対をなす端子用導体層3の各IC実装部3Bが予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部3Bに跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニット1である。上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けた。例えば、上記緩和手段として、対を成すIC実装部3B間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部として、補剛用の導体層を形成した。
【解決手段】基板2の表面に対をなす端子用導体層3が形成され、その対をなす端子用導体層3の各IC実装部3Bが予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部3Bに跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニット1である。上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けた。例えば、上記緩和手段として、対を成すIC実装部3B間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部として、補剛用の導体層を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップをフリップチップ実装で実装する、プリント基板などからなるチップユニット、及びそのチップユニットを装着したICカードやRFIDなどを製造する際に適用されるモジュール基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接続端子(端子用導体層)を有する端子基板上にICチップをフリップチップ実装した構造が開示されている。そして、ICチップの背面に補剛用金属板を接着配置することで、ICカードなどの状態で、通常使用の環境下の外力を受けてもICチップにクラックが生じることを防止して、信頼性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ICチップ自体の剛性を補剛用金属板で高くすることで、使用時におけるICチップの割れを防止することが開示されている。しかし、ICチップをフリップチップ実装した端子基板に曲げ応力が印加されたとき、基板の接続端子とICチップとの接合部に曲げ応力が集中する。したがって、ICチップのフリップチップ実装後からIC固定剤を固化する間において基板のハンドリングが悪いと、ICチップの接続端子(以下、バンプとも呼ぶ。)と基板の端子用導体層とが剥離して接続不良となるおそれがある。このため、固化処理が完了するまでは、上記ハンドリングをより丁寧に行う必要がある。
【0005】
ここで、ICチップを実装するための一対の端子用導体層は、所定のスリットを挟んで対向配置された状態となっていて、そのスリットを跨ぐようにして上記ICチップがフリップチップ実装される。このため、上記スリット位置に曲げ応力が集中しやすい構造となっている。
本発明は、上記のような点に着目したもので、フリップチップ実装したICチップの実装信頼性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、基板の表面に対をなす端子用導体層が形成され、その対をなす端子用導体層の各IC実装部が予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニットにおいて、上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部を設けたことを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対し、上記補剛部として1又は2以上の補剛用の導体層を基板表面に形成したことを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向と直交する方向に位置し、且つ上記ICチップの実装位置と重ならない位置に、局部的に剛性を弱くする低剛部を設けたことを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した構成に対し、上記低剛部として、上記端子用導体層にスリット若しくは空隙部を形成したことを特徴とする。
【0009】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、上記基板の外周輪郭が、長方形若しくは長方形に沿った形状である長方形形状であるチップユニットにおいて、
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向を、上記長方形の長辺と平行な方向に沿った方向に延在するように配置したことを特徴とする。
【0010】
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した構成に対し、上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分、及び上記ICチップを実装する位置を通り且つ上記隙間の延在方向と直交する方向に位置する基板部分の少なく一箇所に、基板の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成したことを特徴とする。
【0011】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した構成に対し、上記ICチップを実装する位置を通り、且つ上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板外縁部を除いた当該基板外縁部に、1又は2以上の切欠き部を形成したことを特徴とする。
次に、請求項9に記載した発明は、基材に形成された開口に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載したチップユニットが配置され、上記端子用導体層上を通過するようにして描画されたワイヤ導体が上記端子用導体層に電気的に接続されると共に、対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップが実装されたモジュール基板を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板における、上記ICチップを実装する位置への曲げ応力の集中が緩和されることで、ICチップのバンプと端子用導体層との間の剥離による端子接続不良を低減することが可能となる。
またこのようなチップユニットを採用することで、より信頼性の高いモジュール基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図3】本発明に基づく第2実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図4】本発明に基づく第2実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図5】本発明に基づく第3実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図6】本発明に基づく第3実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図7】本発明に基づく第3実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図8】本発明に基づく第4実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図9】本発明に基づく第5実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図10】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【図11】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【図12】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本実施形態のチップユニット1は、図1に示すように、板状の基板2と、基板2の少なくとも表面(上面)に形成された対をなす端子用導体層3とを備える。
基板2は、FR−4、ポリイミド、PET、PENに代表される樹脂などの非導体物質から構成される。基板2は、例えば0.3mm厚以下の厚さからなり、且つその基板2の外周輪郭は、長方形形状となっている。長方形形状とは、長方形若しくは長方形を基準とした輪郭形状となっていることを指す。上記長方形のアスペクト比は、例えば5:7若しくはそれよりも長辺が長いアスペクト比になっている。
【0015】
その基板2の表面(上面)と裏面(下面)のうち、少なくとも表面には、一対の端子用導体層3が形成されている。ここで、本実施形態で形成される各導体層は、Cu、Al等の導体物質で構成されている。
各端子用導体層3はそれぞれ、接合パッド部3AとIC実装部3Bとを備える。接合パッド部3Aは、ワイヤ導体(不図示)を接続するための部分である。ワイヤ導体は、接合パッド部3A上を通過するように描画され、熱圧着で接合パッド部3Aに固定される。IC実装部3Bは、ICチップを実装する部分である。
【0016】
本実施形態の対をなす端子用導体層3は、図1に示すように、平面視において(チップユニット1の厚さ方向からみて)、基板長辺方向で左右対称に形成され、基板2の短辺方向と平行な方向に延在するスリット4を挟んで基板長辺方向で各IC実装部3Bが対向配置し、その各IC実装部3Bの左右外側にそれぞれ長方形形状の接合パッド部3Aが形成されている。接合パッド部3Aは、上記スリット4と同方向に長辺を向けて配置された長方形形状となっている。これによって、対を成す端子用導体層3は、スリット4(以下、ICスリット4)で物理的に分離した2つの領域を形成する。
ここで、ICチップは例えば60μm角程度の矩形の小さな部品であるので、通常、上記スリット4を形成するIC実装部3Bの基板短辺方向の幅(スリット幅)は、接合パッド部3Aの幅よりも小さくなっている。
【0017】
また、図1中、符号5はICチップ実装位置(ICチップが実装される位置)である。すなわち、対向するIC実装部3Bの先端部中央位置(スリット4側の中央位置)にICチップ実装位置5が設定される。ここで、上記スリット4が、対をなすIC実装部3B間の隙間を構成し、そのスリット4の延在方向(L1方向)が上記隙間の延在方向となる。
【0018】
そして、本実施形態では、図1に示すように、スリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に位置する基板部分に補剛用の導体層6を形成している。図1では、上記スリット4を挟んだ両側に補剛用の導体層6を形成した例であるが、一方だけに補剛用の導体層6を形成しても良い。
そして、上記構成のチップユニット1に対して、フリップチップ実装によってICチップが実装される。具体的には、上記一対のIC実装部3Bに跨るようにICチップが配置されて超音波振動が付加されることでICチップのバンプが上記端子用導体層3のIC実装部3Bに接合される。
【0019】
(作用)
上記構成のチップユニット1にあっては、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が加わると、基板短辺と同方向に軸を向けた曲げモーメントが基板2に入力される。このとき、上記補剛用の導体層6が無い場合には、一対の端子用導体間のスリット4を通過する短辺と平行な位置(L1の位置)が一番曲げ剛性が低いことから、当該スリット4を通過するL1の位置を軸として当該軸位置で一番曲がり易くなる。すなわち、IC実装位置5である基板2の長辺中央付近に曲げ応力が集中し易い。
【0020】
これに対し、本実施形態では、上記スリット4を通過する基板短辺方向(L1方向)に位置する基板部分に補剛用の導体層6を形成することで、当該スリット4を通過する部分の曲げ剛性が向上する。この結果、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が加わった際に、その曲げ応力は基板長辺方向に分散して、上記スリット4を通過する軸位置(L1位置)での曲げ応力が緩和し、その位置での曲げが低減する。
この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0021】
ここで、図1示す導体層パターンでは、また、相対的に、補剛用の導体層6と接合パッド部3Aとの間で基板短辺と平行に延在する部分(L2の部分)の曲げ剛性が弱くなる。すなわち、基板長手方向において、ICチップ実装位置5よりも基板短辺側に近い位置が一番曲げ剛性が弱くなるので、この部分(L2部分)で曲げが吸収されて、よりICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和する。
ここで、基板短辺同士が近づくような基板長辺方向を軸とした曲げに対しては、ICチップ実装位置の両側に対を成す端子用導体層3が存在するので、ICチップ実装位置の曲げ剛性は高くなっている。
【0022】
また、基板短辺同士が近づくような方向の曲げに対する基板2全体の剛性よりも、基板長辺同士が近づくような曲げに対する基板2全体の剛性の方が高い。
また、補剛部を導体層6で構成する場合には、端子用導体層3を形成する際に補剛用の導体層6もパターン形成することが可能であるので、新たな工程の追加になることもない。
また補剛部は、導体層で構成する代わりに、基板の厚みを厚くするなどによって局部的に剛性を高くして構成しても良い。
【0023】
(変形例)
ここで、上記補剛用の導体層6を、図2のように、対を成す端子用導体層3の一方と一体に形成しておいても良い。作用効果は、図1の構成の場合と同様である。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様であるが、図3及び図4に示すように、局部的に剛性を弱くする1又は2以上の箇所に低剛部7を設けた点が異なる。
低剛部7は、対を成すIC実装部3B間のスリット4の延在方向と直交する方向(本実施形態では基板長辺方向)であってICチップの実装位置5と重ならない位置、つまりICチップの実装位置5よりも基板長辺方向外側位置に設けられている。
【0024】
本実施形態では、低剛部7として、少なくとも端子用導体層3に対し切欠き若しくは空隙部を形成することで、局所的に剛性を低くしている。上記切欠き若しくは空隙部からなる低剛部7は、上記スリット4と平行若しくは略平行に延びるように形成することが好ましい。
ここで、本実施形態では、形成する端子用導体層3や補剛用の導体層6の一部を切欠き若しくは空隙部を形成することで、その形成位置の剛性を低減させる例で説明した。
局所的に剛性を低くする手段はこれに限定しない。基板2自体に対して、スリット4に平行若しくは略平行に延在する溝、切欠き、空隙などを形成することで、その部分の剛性を局所的に低くして低剛部としても良い。
【0025】
(作用)
本実施形態のチップユニット1にあっては、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が当該基板2に掛かった場合、基板2の短辺方向に軸を向けた曲げモーメントが基板2に入力される。このとき、基板2の中央側である、ICチップが実装される位置5であるスリット4近傍にあっては、第1実施形態と同様に、スリット4の両側に補剛部としての補剛用の導体層6が設けられていることで、上記曲げモーメントに対する剛性が相対的に高くなっている。
さらに、本実施形態では、ICチップが実装される位置5よりも基板長辺方向外側の位置に低剛部7が形成されているため、その低剛部7を通過する基板短辺方向と平行な軸周り(L2方向)の曲げ剛性が低減する。
【0026】
以上のように、上記基板短辺方向を軸にした曲げモーメントに対し、スリット4近傍の曲げ剛性が向上すると共に、スリット4近傍よりも基板長辺方向両側にずれた位置の曲げ剛性が低減する。この結果、スリット4近傍よりも基板長辺方向両側にずれた位置で曲げが吸収され、スリット4近傍での曲げ応力の集中が緩和されることで、基板長辺方向に曲げ応力が分散する。
【0027】
これによって、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
特に、スリット4近傍よりも低剛部7を設けた位置の曲げ剛性が低くなるように設定すると、その低剛部7で曲げをより吸収することで、スリット4近傍での曲げを小さくすることが出来る。
ここで、本実施形態では、低剛部7の延在方向を基板短辺と平行な方向に沿った方向(L2方法)に設定することで、より基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して有効に曲げ剛性を低減できると共に、曲げの軸も低剛部7の延在方向に向きやすくなる。
【0028】
また、本実施形態にあっては、補剛部6と低剛部7の両方を設けているが、補剛部6を設けることなく、低剛部7だけによって、基板短辺方向を軸とした、曲げモーメントを基板長辺方向に分散して、ICチップを実装する位置であるスリット近傍の曲げ応力を緩和しても良い。
なお、低剛部7を形成する位置は、ワイヤ導体が通過する接合パッド部3Aの部分を避けることが好ましい。
ここで、上記第1及び第2実施形態においては、基板2の形状は、長方形形状に限定されない。正方形形状や円形形状などであっても本実施形態は適用可能である。
【0029】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、図5に示すように、基板2の外周輪郭形状を長方形形状とする共に、対をなす端子用導体層3のIC実装部3Bが基板2の短辺方向で対向するように配置した。つまり上記スリット4が基板長辺方向に沿った方向に延在するように配置したものである。
すなわち、基板2の左右短辺近傍にそれぞれ左右の接合パッド部3Aを形成する。
【0030】
そして本実施形態では、左側IC実装部3Bを、左側の接合パッド部3Aの上部位置から右側の接合パッド部3Aに向けて張り出すように形成すると共に、右側のIC実装部3Bを、右側の接合パッド部3Aの下部位置から左側の接合パッド部3Aに向けて張り出すように形成する。これによって、対をなすIC実装部3Bは、基板長辺方向に沿った方向に延在するスリット4を介して対向配置しており、そのスリット4を挟んで、基板短辺方向で跨るようにICチップを実装する位置が設定される。
【0031】
(作用)
基板短辺同士が近づくような曲げモーメントの入力に対し、ICチップの実装位置5は、そのICチップの実装位置5の基板短辺方向両側にはIC実装部3Bが存在する(L1の位置)。それに対し、そのICチップ実装位置よりも基板長辺方向外側に位置する、接合パッド部3AとIC実装部3Bの間(L2の位置)には、基板短辺方向に延びる導体層が形成されていない部分が存在し、その部分が一番上記曲げモーメントに対して曲げ剛性が弱くなる。この結果、基板短辺同士が近づくような曲げモーメントの入力に対し、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和することで、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0032】
ここで、長方形形状の基板2の場合、長辺側を軸にした曲げの方が、短辺側を軸にした曲げよりも曲げ難く基板2全体の曲げ剛性が高い。その曲げにくい長辺側に沿った方向にスリット4の向きを設定することで、上述のように、ICチップの実装位置が、短辺側に沿ってスリット4の向きを設定した場合に比べて曲がり難くなる。
さらに、本実施形態では、スリット4の延在方向の延長線上(L3方向)に左右の接合パッド部3Aが存在し、そのスリット4の延在方向の延長線上に位置する接合パッド部3Aの部分が補剛用の導体層6と同様な役割を有するので、長辺側を軸にした曲げに対するスリット4位置での曲げが小さく抑えられる。
【0033】
(変形例)
上記のようにIC実装部3B間のスリット4の向きを、基板長辺に沿った方向に向けると共に、図6や図7に示すように、ICチップの実装位置5の基板長辺左右両側の位置に対して、低剛部7を形成しても良い。低剛部7は、基板短辺方向に沿った方向に剛性が低くなるように設定することが好ましい。
図6及び図7では、上記第2実施形態と同様に、基板短辺方向に延在するスリット4若しくは空隙を導体層に設けることで、その部分の剛性を低下させる例を例示している。局所的に剛性を低くできれば他の手段を採用しても良い。
【0034】
このように低剛部7を設けると、基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して、ICチップ実装位置5よりもその両側に位置する低剛部7形成位置でより多く曲げが発生する結果、その分、ICチップ実装位置5に掛かる曲げ応力が緩和され、更にICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
ここで、上記全実施形態において、基板2上面(表面)に導体層を形成する場合を例示しているが、下面側にも導体層が形成されていても良い。
【0035】
この場合において、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和するように、上記低剛部7を形成することが好ましい。この場合、表裏両面に設ける低剛部7の位置が、厚さ方向からみて、重なるように形成した方が、その位置の基板2の曲げ剛性をより効果的に低減できて、その低剛部7形成位置でより有効に曲げを吸収可能となる。
なお、一対のIC実装部3B間に形成されるスリット4は、表面での向きと下面での向きとを必ずしも一致させる必要はない。
【0036】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、上記対を成すIC実装部3B間の隙間であるスリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に位置する基板部分、及び上記実装するICチップと重なる位置を通り且つ上記スリット4の延在方向と直交する方向(L3方向)に位置する基板部分の少なくとも一箇所、基板2の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成した。
【0037】
図8の例では、基板2の面に沿って外方向に突出する突起部10を形成した例である。上記突起部10の位置の基板厚さを厚くしても良い。また、図8では4箇所に突起部10を形成しているが、1箇所若しくは2,3箇所だけに突起部10を形成しても良い。但し、スリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に突起部10を設けることが好ましい。
なお、基板2の形状や、端子用導体層3の形状は、図8に示すパターン形状に限定されず、上記第1〜3実施形態で説明してきたようなパターン形状で端子用導体層3を形成しても良い。
ここで、上記突起部10は補剛部としての役割を有する。
【0038】
(作用)
ICチップ実装位置5を通る位置に上記剛性を高くする突起部10を設けることで、ICチップ実装位置5の曲げ剛性が向上して、当該ICチップ実装位置5での曲げを小さくすることが可能となる。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0039】
「第5実施形態」
次に、第5実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、図9に示すように、ICチップの実装位置5を通り、且つ上記対を成すIC実装部3B間の上記隙間であるスリット4の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板2外縁部を除いた、当該基板2外縁部に1又は2以上の切欠き部11を形成した。
【0040】
本実施形態では、基板短辺方向及び基板長辺方向に沿って対をなすように切欠き部11を形成した、
この切欠き部11は、上記低剛部7の延長線上にあることが好ましい。
なお、基板2の形状や、端子用導体層3の形状は、図8に示すパターン形状に限定されず、上記第1〜3実施形態で説明してきたようなパターン形状で端子用導体層を形成しても良い。
【0041】
(作用)
少なくとも基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対し、切欠き部11を設けた位置を通る軸(L2の軸)周りの曲げ剛性が低減する。
この結果、少なくとも基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して、切欠き部11を設けた位置を通る軸周りの曲げがその分大きくなって、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和する。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0042】
特に、切欠き部11を低剛部7の延長線上に形成すると、その部分での曲げの吸収がより大きくなって、更にICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
また、基板長辺方向を軸とした曲げモーメントについても、切欠き部11を設けた位置を通る軸(L4の軸)周りの曲げ剛性が低減する。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0043】
「モジュール基板」
上記第1〜第5実施形態で説明したチップユニット1を、基材20に形成された開口20aに配置され、そのチップユニット1の端子用導体層3上を通過するようにしてワイヤ導体21が描画されると共に熱圧着で上記端子用導体層3に電気的に接続される。また、図11に示すように、対をなすIC実装部3Bに跨るようにしてICチップ22が実装されて構成される。基材20は、平板形状になっていると共に、上質紙や樹脂など少なくとも表層が非導体物質からなる。
上記基材20の表面には、塗布等によって粘着材層としての熱可塑性樹脂24が設けられている。その基材20に形成された、上記チップユニット1と略同形の開口20a開口に対し、上述のように、チップユニット1が嵌め込まれるようにして配置される。
【0044】
そして図12のように、基材20上にワイヤ導体21が描画固定されてコイル状若しくはダイポール状のアンテナが形成される。また、そのアンテナとなるワイヤ導体21の左右両短側がそれぞれ、上記チップユニット1上の各導体層3上を通過するように描画されると共に、そのワイヤ導体21は各導体層3に熱圧着で固定されている。また、上述のように(図11参照)、一対導体層3のIC実装部3B間に跨るようにICチップが超音波によって実装される。
【符号の説明】
【0045】
1 チップユニット
2 基板
3 端子用導体層
3A 接合パッド部
3B IC実装部
4 スリット
5 チップ実装位置
6 補剛用の導体層(補剛部)
7 低剛部
10 突起部
11 切欠き部
20 基材
20a 開口
21 ワイヤ導体
22 ICチップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップをフリップチップ実装で実装する、プリント基板などからなるチップユニット、及びそのチップユニットを装着したICカードやRFIDなどを製造する際に適用されるモジュール基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接続端子(端子用導体層)を有する端子基板上にICチップをフリップチップ実装した構造が開示されている。そして、ICチップの背面に補剛用金属板を接着配置することで、ICカードなどの状態で、通常使用の環境下の外力を受けてもICチップにクラックが生じることを防止して、信頼性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ICチップ自体の剛性を補剛用金属板で高くすることで、使用時におけるICチップの割れを防止することが開示されている。しかし、ICチップをフリップチップ実装した端子基板に曲げ応力が印加されたとき、基板の接続端子とICチップとの接合部に曲げ応力が集中する。したがって、ICチップのフリップチップ実装後からIC固定剤を固化する間において基板のハンドリングが悪いと、ICチップの接続端子(以下、バンプとも呼ぶ。)と基板の端子用導体層とが剥離して接続不良となるおそれがある。このため、固化処理が完了するまでは、上記ハンドリングをより丁寧に行う必要がある。
【0005】
ここで、ICチップを実装するための一対の端子用導体層は、所定のスリットを挟んで対向配置された状態となっていて、そのスリットを跨ぐようにして上記ICチップがフリップチップ実装される。このため、上記スリット位置に曲げ応力が集中しやすい構造となっている。
本発明は、上記のような点に着目したもので、フリップチップ実装したICチップの実装信頼性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、基板の表面に対をなす端子用導体層が形成され、その対をなす端子用導体層の各IC実装部が予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニットにおいて、上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部を設けたことを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対し、上記補剛部として1又は2以上の補剛用の導体層を基板表面に形成したことを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向と直交する方向に位置し、且つ上記ICチップの実装位置と重ならない位置に、局部的に剛性を弱くする低剛部を設けたことを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した構成に対し、上記低剛部として、上記端子用導体層にスリット若しくは空隙部を形成したことを特徴とする。
【0009】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、上記基板の外周輪郭が、長方形若しくは長方形に沿った形状である長方形形状であるチップユニットにおいて、
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向を、上記長方形の長辺と平行な方向に沿った方向に延在するように配置したことを特徴とする。
【0010】
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した構成に対し、上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分、及び上記ICチップを実装する位置を通り且つ上記隙間の延在方向と直交する方向に位置する基板部分の少なく一箇所に、基板の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成したことを特徴とする。
【0011】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した構成に対し、上記ICチップを実装する位置を通り、且つ上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板外縁部を除いた当該基板外縁部に、1又は2以上の切欠き部を形成したことを特徴とする。
次に、請求項9に記載した発明は、基材に形成された開口に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載したチップユニットが配置され、上記端子用導体層上を通過するようにして描画されたワイヤ導体が上記端子用導体層に電気的に接続されると共に、対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップが実装されたモジュール基板を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板における、上記ICチップを実装する位置への曲げ応力の集中が緩和されることで、ICチップのバンプと端子用導体層との間の剥離による端子接続不良を低減することが可能となる。
またこのようなチップユニットを採用することで、より信頼性の高いモジュール基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図3】本発明に基づく第2実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図4】本発明に基づく第2実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図5】本発明に基づく第3実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図6】本発明に基づく第3実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図7】本発明に基づく第3実施形態に係る別のチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図8】本発明に基づく第4実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図9】本発明に基づく第5実施形態に係るチップユニットの構成を説明する平面図である。
【図10】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【図11】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【図12】本発明に基づく実施形態に係るモジュール基板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本実施形態のチップユニット1は、図1に示すように、板状の基板2と、基板2の少なくとも表面(上面)に形成された対をなす端子用導体層3とを備える。
基板2は、FR−4、ポリイミド、PET、PENに代表される樹脂などの非導体物質から構成される。基板2は、例えば0.3mm厚以下の厚さからなり、且つその基板2の外周輪郭は、長方形形状となっている。長方形形状とは、長方形若しくは長方形を基準とした輪郭形状となっていることを指す。上記長方形のアスペクト比は、例えば5:7若しくはそれよりも長辺が長いアスペクト比になっている。
【0015】
その基板2の表面(上面)と裏面(下面)のうち、少なくとも表面には、一対の端子用導体層3が形成されている。ここで、本実施形態で形成される各導体層は、Cu、Al等の導体物質で構成されている。
各端子用導体層3はそれぞれ、接合パッド部3AとIC実装部3Bとを備える。接合パッド部3Aは、ワイヤ導体(不図示)を接続するための部分である。ワイヤ導体は、接合パッド部3A上を通過するように描画され、熱圧着で接合パッド部3Aに固定される。IC実装部3Bは、ICチップを実装する部分である。
【0016】
本実施形態の対をなす端子用導体層3は、図1に示すように、平面視において(チップユニット1の厚さ方向からみて)、基板長辺方向で左右対称に形成され、基板2の短辺方向と平行な方向に延在するスリット4を挟んで基板長辺方向で各IC実装部3Bが対向配置し、その各IC実装部3Bの左右外側にそれぞれ長方形形状の接合パッド部3Aが形成されている。接合パッド部3Aは、上記スリット4と同方向に長辺を向けて配置された長方形形状となっている。これによって、対を成す端子用導体層3は、スリット4(以下、ICスリット4)で物理的に分離した2つの領域を形成する。
ここで、ICチップは例えば60μm角程度の矩形の小さな部品であるので、通常、上記スリット4を形成するIC実装部3Bの基板短辺方向の幅(スリット幅)は、接合パッド部3Aの幅よりも小さくなっている。
【0017】
また、図1中、符号5はICチップ実装位置(ICチップが実装される位置)である。すなわち、対向するIC実装部3Bの先端部中央位置(スリット4側の中央位置)にICチップ実装位置5が設定される。ここで、上記スリット4が、対をなすIC実装部3B間の隙間を構成し、そのスリット4の延在方向(L1方向)が上記隙間の延在方向となる。
【0018】
そして、本実施形態では、図1に示すように、スリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に位置する基板部分に補剛用の導体層6を形成している。図1では、上記スリット4を挟んだ両側に補剛用の導体層6を形成した例であるが、一方だけに補剛用の導体層6を形成しても良い。
そして、上記構成のチップユニット1に対して、フリップチップ実装によってICチップが実装される。具体的には、上記一対のIC実装部3Bに跨るようにICチップが配置されて超音波振動が付加されることでICチップのバンプが上記端子用導体層3のIC実装部3Bに接合される。
【0019】
(作用)
上記構成のチップユニット1にあっては、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が加わると、基板短辺と同方向に軸を向けた曲げモーメントが基板2に入力される。このとき、上記補剛用の導体層6が無い場合には、一対の端子用導体間のスリット4を通過する短辺と平行な位置(L1の位置)が一番曲げ剛性が低いことから、当該スリット4を通過するL1の位置を軸として当該軸位置で一番曲がり易くなる。すなわち、IC実装位置5である基板2の長辺中央付近に曲げ応力が集中し易い。
【0020】
これに対し、本実施形態では、上記スリット4を通過する基板短辺方向(L1方向)に位置する基板部分に補剛用の導体層6を形成することで、当該スリット4を通過する部分の曲げ剛性が向上する。この結果、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が加わった際に、その曲げ応力は基板長辺方向に分散して、上記スリット4を通過する軸位置(L1位置)での曲げ応力が緩和し、その位置での曲げが低減する。
この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0021】
ここで、図1示す導体層パターンでは、また、相対的に、補剛用の導体層6と接合パッド部3Aとの間で基板短辺と平行に延在する部分(L2の部分)の曲げ剛性が弱くなる。すなわち、基板長手方向において、ICチップ実装位置5よりも基板短辺側に近い位置が一番曲げ剛性が弱くなるので、この部分(L2部分)で曲げが吸収されて、よりICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和する。
ここで、基板短辺同士が近づくような基板長辺方向を軸とした曲げに対しては、ICチップ実装位置の両側に対を成す端子用導体層3が存在するので、ICチップ実装位置の曲げ剛性は高くなっている。
【0022】
また、基板短辺同士が近づくような方向の曲げに対する基板2全体の剛性よりも、基板長辺同士が近づくような曲げに対する基板2全体の剛性の方が高い。
また、補剛部を導体層6で構成する場合には、端子用導体層3を形成する際に補剛用の導体層6もパターン形成することが可能であるので、新たな工程の追加になることもない。
また補剛部は、導体層で構成する代わりに、基板の厚みを厚くするなどによって局部的に剛性を高くして構成しても良い。
【0023】
(変形例)
ここで、上記補剛用の導体層6を、図2のように、対を成す端子用導体層3の一方と一体に形成しておいても良い。作用効果は、図1の構成の場合と同様である。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様であるが、図3及び図4に示すように、局部的に剛性を弱くする1又は2以上の箇所に低剛部7を設けた点が異なる。
低剛部7は、対を成すIC実装部3B間のスリット4の延在方向と直交する方向(本実施形態では基板長辺方向)であってICチップの実装位置5と重ならない位置、つまりICチップの実装位置5よりも基板長辺方向外側位置に設けられている。
【0024】
本実施形態では、低剛部7として、少なくとも端子用導体層3に対し切欠き若しくは空隙部を形成することで、局所的に剛性を低くしている。上記切欠き若しくは空隙部からなる低剛部7は、上記スリット4と平行若しくは略平行に延びるように形成することが好ましい。
ここで、本実施形態では、形成する端子用導体層3や補剛用の導体層6の一部を切欠き若しくは空隙部を形成することで、その形成位置の剛性を低減させる例で説明した。
局所的に剛性を低くする手段はこれに限定しない。基板2自体に対して、スリット4に平行若しくは略平行に延在する溝、切欠き、空隙などを形成することで、その部分の剛性を局所的に低くして低剛部としても良い。
【0025】
(作用)
本実施形態のチップユニット1にあっては、基板2の短辺同士が近づくような曲げ力が当該基板2に掛かった場合、基板2の短辺方向に軸を向けた曲げモーメントが基板2に入力される。このとき、基板2の中央側である、ICチップが実装される位置5であるスリット4近傍にあっては、第1実施形態と同様に、スリット4の両側に補剛部としての補剛用の導体層6が設けられていることで、上記曲げモーメントに対する剛性が相対的に高くなっている。
さらに、本実施形態では、ICチップが実装される位置5よりも基板長辺方向外側の位置に低剛部7が形成されているため、その低剛部7を通過する基板短辺方向と平行な軸周り(L2方向)の曲げ剛性が低減する。
【0026】
以上のように、上記基板短辺方向を軸にした曲げモーメントに対し、スリット4近傍の曲げ剛性が向上すると共に、スリット4近傍よりも基板長辺方向両側にずれた位置の曲げ剛性が低減する。この結果、スリット4近傍よりも基板長辺方向両側にずれた位置で曲げが吸収され、スリット4近傍での曲げ応力の集中が緩和されることで、基板長辺方向に曲げ応力が分散する。
【0027】
これによって、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
特に、スリット4近傍よりも低剛部7を設けた位置の曲げ剛性が低くなるように設定すると、その低剛部7で曲げをより吸収することで、スリット4近傍での曲げを小さくすることが出来る。
ここで、本実施形態では、低剛部7の延在方向を基板短辺と平行な方向に沿った方向(L2方法)に設定することで、より基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して有効に曲げ剛性を低減できると共に、曲げの軸も低剛部7の延在方向に向きやすくなる。
【0028】
また、本実施形態にあっては、補剛部6と低剛部7の両方を設けているが、補剛部6を設けることなく、低剛部7だけによって、基板短辺方向を軸とした、曲げモーメントを基板長辺方向に分散して、ICチップを実装する位置であるスリット近傍の曲げ応力を緩和しても良い。
なお、低剛部7を形成する位置は、ワイヤ導体が通過する接合パッド部3Aの部分を避けることが好ましい。
ここで、上記第1及び第2実施形態においては、基板2の形状は、長方形形状に限定されない。正方形形状や円形形状などであっても本実施形態は適用可能である。
【0029】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、図5に示すように、基板2の外周輪郭形状を長方形形状とする共に、対をなす端子用導体層3のIC実装部3Bが基板2の短辺方向で対向するように配置した。つまり上記スリット4が基板長辺方向に沿った方向に延在するように配置したものである。
すなわち、基板2の左右短辺近傍にそれぞれ左右の接合パッド部3Aを形成する。
【0030】
そして本実施形態では、左側IC実装部3Bを、左側の接合パッド部3Aの上部位置から右側の接合パッド部3Aに向けて張り出すように形成すると共に、右側のIC実装部3Bを、右側の接合パッド部3Aの下部位置から左側の接合パッド部3Aに向けて張り出すように形成する。これによって、対をなすIC実装部3Bは、基板長辺方向に沿った方向に延在するスリット4を介して対向配置しており、そのスリット4を挟んで、基板短辺方向で跨るようにICチップを実装する位置が設定される。
【0031】
(作用)
基板短辺同士が近づくような曲げモーメントの入力に対し、ICチップの実装位置5は、そのICチップの実装位置5の基板短辺方向両側にはIC実装部3Bが存在する(L1の位置)。それに対し、そのICチップ実装位置よりも基板長辺方向外側に位置する、接合パッド部3AとIC実装部3Bの間(L2の位置)には、基板短辺方向に延びる導体層が形成されていない部分が存在し、その部分が一番上記曲げモーメントに対して曲げ剛性が弱くなる。この結果、基板短辺同士が近づくような曲げモーメントの入力に対し、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和することで、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0032】
ここで、長方形形状の基板2の場合、長辺側を軸にした曲げの方が、短辺側を軸にした曲げよりも曲げ難く基板2全体の曲げ剛性が高い。その曲げにくい長辺側に沿った方向にスリット4の向きを設定することで、上述のように、ICチップの実装位置が、短辺側に沿ってスリット4の向きを設定した場合に比べて曲がり難くなる。
さらに、本実施形態では、スリット4の延在方向の延長線上(L3方向)に左右の接合パッド部3Aが存在し、そのスリット4の延在方向の延長線上に位置する接合パッド部3Aの部分が補剛用の導体層6と同様な役割を有するので、長辺側を軸にした曲げに対するスリット4位置での曲げが小さく抑えられる。
【0033】
(変形例)
上記のようにIC実装部3B間のスリット4の向きを、基板長辺に沿った方向に向けると共に、図6や図7に示すように、ICチップの実装位置5の基板長辺左右両側の位置に対して、低剛部7を形成しても良い。低剛部7は、基板短辺方向に沿った方向に剛性が低くなるように設定することが好ましい。
図6及び図7では、上記第2実施形態と同様に、基板短辺方向に延在するスリット4若しくは空隙を導体層に設けることで、その部分の剛性を低下させる例を例示している。局所的に剛性を低くできれば他の手段を採用しても良い。
【0034】
このように低剛部7を設けると、基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して、ICチップ実装位置5よりもその両側に位置する低剛部7形成位置でより多く曲げが発生する結果、その分、ICチップ実装位置5に掛かる曲げ応力が緩和され、更にICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
ここで、上記全実施形態において、基板2上面(表面)に導体層を形成する場合を例示しているが、下面側にも導体層が形成されていても良い。
【0035】
この場合において、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和するように、上記低剛部7を形成することが好ましい。この場合、表裏両面に設ける低剛部7の位置が、厚さ方向からみて、重なるように形成した方が、その位置の基板2の曲げ剛性をより効果的に低減できて、その低剛部7形成位置でより有効に曲げを吸収可能となる。
なお、一対のIC実装部3B間に形成されるスリット4は、表面での向きと下面での向きとを必ずしも一致させる必要はない。
【0036】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、上記対を成すIC実装部3B間の隙間であるスリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に位置する基板部分、及び上記実装するICチップと重なる位置を通り且つ上記スリット4の延在方向と直交する方向(L3方向)に位置する基板部分の少なくとも一箇所、基板2の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成した。
【0037】
図8の例では、基板2の面に沿って外方向に突出する突起部10を形成した例である。上記突起部10の位置の基板厚さを厚くしても良い。また、図8では4箇所に突起部10を形成しているが、1箇所若しくは2,3箇所だけに突起部10を形成しても良い。但し、スリット4の延在方向の延長線上(L1方向)に突起部10を設けることが好ましい。
なお、基板2の形状や、端子用導体層3の形状は、図8に示すパターン形状に限定されず、上記第1〜3実施形態で説明してきたようなパターン形状で端子用導体層3を形成しても良い。
ここで、上記突起部10は補剛部としての役割を有する。
【0038】
(作用)
ICチップ実装位置5を通る位置に上記剛性を高くする突起部10を設けることで、ICチップ実装位置5の曲げ剛性が向上して、当該ICチップ実装位置5での曲げを小さくすることが可能となる。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0039】
「第5実施形態」
次に、第5実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、図9に示すように、ICチップの実装位置5を通り、且つ上記対を成すIC実装部3B間の上記隙間であるスリット4の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板2外縁部を除いた、当該基板2外縁部に1又は2以上の切欠き部11を形成した。
【0040】
本実施形態では、基板短辺方向及び基板長辺方向に沿って対をなすように切欠き部11を形成した、
この切欠き部11は、上記低剛部7の延長線上にあることが好ましい。
なお、基板2の形状や、端子用導体層3の形状は、図8に示すパターン形状に限定されず、上記第1〜3実施形態で説明してきたようなパターン形状で端子用導体層を形成しても良い。
【0041】
(作用)
少なくとも基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対し、切欠き部11を設けた位置を通る軸(L2の軸)周りの曲げ剛性が低減する。
この結果、少なくとも基板短辺方向を軸とした曲げモーメントに対して、切欠き部11を設けた位置を通る軸周りの曲げがその分大きくなって、ICチップ実装位置5での曲げ応力が緩和する。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0042】
特に、切欠き部11を低剛部7の延長線上に形成すると、その部分での曲げの吸収がより大きくなって、更にICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
また、基板長辺方向を軸とした曲げモーメントについても、切欠き部11を設けた位置を通る軸(L4の軸)周りの曲げ剛性が低減する。この結果、ICチップのバンプとIC実装部3Bとの剥離がし難くなる。
【0043】
「モジュール基板」
上記第1〜第5実施形態で説明したチップユニット1を、基材20に形成された開口20aに配置され、そのチップユニット1の端子用導体層3上を通過するようにしてワイヤ導体21が描画されると共に熱圧着で上記端子用導体層3に電気的に接続される。また、図11に示すように、対をなすIC実装部3Bに跨るようにしてICチップ22が実装されて構成される。基材20は、平板形状になっていると共に、上質紙や樹脂など少なくとも表層が非導体物質からなる。
上記基材20の表面には、塗布等によって粘着材層としての熱可塑性樹脂24が設けられている。その基材20に形成された、上記チップユニット1と略同形の開口20a開口に対し、上述のように、チップユニット1が嵌め込まれるようにして配置される。
【0044】
そして図12のように、基材20上にワイヤ導体21が描画固定されてコイル状若しくはダイポール状のアンテナが形成される。また、そのアンテナとなるワイヤ導体21の左右両短側がそれぞれ、上記チップユニット1上の各導体層3上を通過するように描画されると共に、そのワイヤ導体21は各導体層3に熱圧着で固定されている。また、上述のように(図11参照)、一対導体層3のIC実装部3B間に跨るようにICチップが超音波によって実装される。
【符号の説明】
【0045】
1 チップユニット
2 基板
3 端子用導体層
3A 接合パッド部
3B IC実装部
4 スリット
5 チップ実装位置
6 補剛用の導体層(補剛部)
7 低剛部
10 突起部
11 切欠き部
20 基材
20a 開口
21 ワイヤ導体
22 ICチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に対をなす端子用導体層が形成され、その対をなす端子用導体層の各IC実装部が予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニットにおいて、
上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けたことを特徴とするチップユニット。
【請求項2】
上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部を設けたことを特徴とする請求項1に記載したチップユニット。
【請求項3】
上記補剛部として1又は2以上の補剛用の導体層を基板表面に形成したことを特徴とする請求項2に記載したチップユニット。
【請求項4】
上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向と直交する方向に位置し、且つ上記ICチップの実装位置と重ならない位置に、局部的に剛性を弱くする低剛部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項5】
上記低剛部として、上記端子用導体層にスリット若しくは空隙部を形成したことを特徴とする請求項4に記載したチップユニット。
【請求項6】
上記基板の外周輪郭が、長方形若しくは長方形に沿った形状である長方形形状であるチップユニットにおいて、
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向を、上記長方形の長辺と平行な方向に沿った方向に延在するように配置したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項7】
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分、及び上記ICチップを実装する位置を通り且つ上記隙間の延在方向と直交する方向に位置する基板部分の少なく一箇所に、基板の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項8】
上記ICチップを実装する位置を通り、且つ上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板外縁部を除いた当該基板外縁部に、1又は2以上の切欠き部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項9】
基材に形成された開口に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載したチップユニットが配置され、上記端子用導体層上を通過するようにして描画されたワイヤ導体が上記端子用導体層に電気的に接続されると共に、対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップが実装されたモジュール基板。
【請求項1】
基板の表面に対をなす端子用導体層が形成され、その対をなす端子用導体層の各IC実装部が予め設定した隙間をあけて対向配置しており、その対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップを実装可能としたチップユニットにおいて、
上記ICチップを実装する位置の曲げ応力の集中を緩和する緩和手段を設けたことを特徴とするチップユニット。
【請求項2】
上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分に対し、剛性を高める補剛部を設けたことを特徴とする請求項1に記載したチップユニット。
【請求項3】
上記補剛部として1又は2以上の補剛用の導体層を基板表面に形成したことを特徴とする請求項2に記載したチップユニット。
【請求項4】
上記緩和手段として、対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向と直交する方向に位置し、且つ上記ICチップの実装位置と重ならない位置に、局部的に剛性を弱くする低剛部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項5】
上記低剛部として、上記端子用導体層にスリット若しくは空隙部を形成したことを特徴とする請求項4に記載したチップユニット。
【請求項6】
上記基板の外周輪郭が、長方形若しくは長方形に沿った形状である長方形形状であるチップユニットにおいて、
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向を、上記長方形の長辺と平行な方向に沿った方向に延在するように配置したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項7】
上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向の延長線上に位置する基板部分、及び上記ICチップを実装する位置を通り且つ上記隙間の延在方向と直交する方向に位置する基板部分の少なく一箇所に、基板の厚さ方向若しくは面に沿った方向に突出する突起部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項8】
上記ICチップを実装する位置を通り、且つ上記対を成すIC実装部間の上記隙間の延在方向に沿った方向及び上記延在方向と直交する方向にそれぞれ位置する基板外縁部を除いた当該基板外縁部に、1又は2以上の切欠き部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載したチップユニット。
【請求項9】
基材に形成された開口に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載したチップユニットが配置され、上記端子用導体層上を通過するようにして描画されたワイヤ導体が上記端子用導体層に電気的に接続されると共に、対をなすIC実装部に跨るようにしてICチップが実装されたモジュール基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−113650(P2012−113650A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264192(P2010−264192)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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