説明

チップ抵抗器

【課題】調整できる抵抗値の範囲を広くすることができ、かつ高精度のトリミングが行えるチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】絶縁基板1、抵抗体4、および1対の電極2、3を備えている。電極2と電極3は離間し、かつ対向して配置されている。抵抗体4の形状は、長方形に形成されている。また、抵抗体4は、電極2から電極3に渡って形成される。電極2と電極3の離間領域を覆っている抵抗体4の形状は、台形である。電極2と電極3の離間領域は、電極2と電極3が形成される延伸方向に段階的に電極間の間隔が広がるように構成されている。すなわち、電極2と電極3との間の経路の抵抗値が、抵抗体4の2辺の一方の辺から他方の辺に向かって段階的に増加するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミングによる抵抗値の調整が可能なチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来のチップ抵抗器の一例を示している。同図に示されたチップ抵抗器は、基板61の一面側に、1対の電極62および抵抗体63が形成された構造を有する。基板61は、絶縁材料からなり、平面視で矩形状である。1対の電極62は、チップ抵抗器を実装するために用いられるものであり、互いに離間して配置されている。抵抗体63は、たとえば酸化ルテニウムからなり、1対の電極92の一部ずつを覆うように形成されている。
【0003】
1対の電極62および抵抗体63は、一般的に印刷を用いた手法によって形成される。この印刷には、導電材料を含むペーストや抵抗体材料を含むペーストが用いられる。これらのペーストを1対の電極62や抵抗体63となるべき形状に印刷しても、これらのペーストのダレなどにより、その縁が局所的にずれることが避けられない。さらに、抵抗体63の厚さ分布は、中央部分に比べて端部が顕著に薄い傾向となる。
【0004】
このずれおよび厚さ分布の不均一に起因した抵抗値の誤差を修正する手法の一つとして、レーザトリミングが採用されている。この手法においては、1対の電極62および抵抗体63を形成した後に、1対の電極62間の抵抗値を測定しながら、測定抵抗が目的の抵抗値に到達するように、抵抗体63の一部をレーザによって、1対の電極62の離間方向に対し、例えば直角方向にトリミングする。この結果、抵抗体63には、スリット70が形成される。このように、トリミングは、抵抗素子の抵抗値を測定しながら、抵抗体部分を切断して断面積を減少させ、目的の値まで抵抗値を上昇させるものである。以上より、チップ抵抗器の抵抗値を調整することができる。
【0005】
しかし、図12の構成では、抵抗値を上昇させるのには限度があり、抵抗値の調整範囲が狭いという欠点があった。そこで、特許文献1に示されるように、1対の電極の一方をL字型の電極とし、L字型電極の突出部に沿って抵抗体を切り離すことで、大きく抵抗値を上げることが提案されている。これにより、調整できる抵抗値の範囲が広いチップ抵抗器を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−351991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、大きく抵抗値を上げることはできるが、微調整のトリミングについては、図12と同じ方法になる。このため、比較的抵抗値の上昇率が大きくなり、抵抗体面積が小さいチップ抵抗器では、レーザ加工により精度良く微調整することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、調整できる抵抗値の範囲を広くすることができ、かつ高精度のトリミングが行えるチップ抵抗器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、 第1の電極と、前記第1の電極とは離間し、かつ対向して配置された第2の電極と、前記第1の電極から第2の電極に渡って配置された第1の抵抗体とを備え、前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に、前記第1の電極と第2の電極の間隔が段階的に拡大又は狭まる領域を有し、前記第1の電極と第2の電極との間の経路の抵抗値が段階的に増加又は減少する構成を有することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチップ抵抗器は、第1の電極と、第1の電極とは離間し、かつ対向して配置された第2の電極と、第1の電極から第2の電極に渡って配置された第1の抵抗体とを備えとおり、第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に、第1の電極と第2の電極の間隔が段階的に拡大又は狭まる領域を有するとともに、第1の電極と第2の電極との間の経路の抵抗値が段階的に増加又は減少する構成を有している。
【0011】
このため、トリミングを行う場合は、第1の電極と第2の電極との間の経路の抵抗値が大きい側、すなわち、第1の電極と第2の電極の間隔が大きい側からトリミング溝を作製することにより、抵抗値の微調整を行うことができる。また、第1の電極と第2の電極との間の経路の抵抗値が小さい側、すなわち、第1の電極と第2の電極の間隔が小さい側からからトリミング溝を作製することにより、抵抗値の粗調整を行うことができる。これにより、調整できる抵抗値の範囲を広くすることができるとともに、高精度のトリミングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】チップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図2】図1の抵抗体にトリミング溝を作製した例を示す平面図である。
【図3】図1の抵抗体にトリミング溝を作製した例を示す平面図である。
【図4】図1の構成で電極の縁に沿って抵抗体を形成したチップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図5】チップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図6】チップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図7】抵抗体を2つ備えたチップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図8】抵抗体を2つ備えたチップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図9】抵抗体を2つ備えたチップ抵抗器の構造例を示す平面図である。
【図10】図1の構成において、トリミング溝を作製した場合の抵抗値上昇率を算出するための模式図である。
【図11】図1の構成において、トリミング溝を作製した場合の抵抗値上昇率を算出するための模式図である。
【図12】従来のチップ抵抗器とトリミング溝を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。図面は模式的なものであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
図1は、本発明に係るチップ抵抗器の構成例を示す平面図である。図1のチップ抵抗器は、絶縁基板1、抵抗体4、および1対の電極2、3を備えている。電極2と電極3は離間し、かつ対向して配置されている。
【0015】
絶縁基板1は、例えばAlなどの絶縁材料からなり、平面視で略矩形状に形成されている。また、電極2、電極3は、例えばAg等の導電体からなる。
【0016】
抵抗体4は、例えば酸化ルテニウムなどの抵抗体材料からなり、絶縁基板1上に膜状に形成されている。抵抗体4は、チップ抵抗器の抵抗値を決定する部分である。抵抗体4の両端部は、電極2及び電極3の端部を覆っている。
【0017】
抵抗体4の形状は、例えば平行な2辺を有する形状に形成される。図1の例では、抵抗体4は平行な2辺を有する形状として長方形に形成されている。また、抵抗体4の平行な2辺は、電極2から電極3に渡って形成される。電極2及び電極3は、台形形状に形成されている。ここで、電極2と電極3の離間領域を覆っている抵抗体4の形状は、図に示すように、短辺4a、長辺4b、2つの辺dで囲まれた等脚台形である。短辺4aは、この台形形状の上底を示し、長辺4bは下底を示すもので、2つの辺を比較した場合、下底の方が長くなるので、下底を長辺4bとしている。
【0018】
抵抗体4の形成は、例えば抵抗体材料を含む抵抗体ペーストをスクリーン印刷することにより行われる。電極2、3は、例えば、電極材料となるAg等を含む導体ペーストをスクリーン印刷することで形成される。なお、抵抗体4及び電極2、3ともに、他の形成方法によることも可能であり、例えばフォトレジストによる形成方法を用いることができる。また、スパッタ法により電極2、3を形成することもできる。
【0019】
ここで、電極2と電極3の離間領域は、短辺4aから長辺4bの方向に向かって段階的に電極間の間隔が広がるように構成されている。見方を変えれば、電極2と電極3の離間領域は、長辺4bから短辺4aの方向に向かって段階的に電極間の間隔が狭まるように構成されている。
【0020】
さらに、言い換えれば、電極2と電極3との間を電流が直進可能な直線経路の抵抗値が、電極2及び電極3が延びる方向に沿って段階的に減少するように構成されている。電極2及び電極3が延伸する方向とは、短辺4aから長辺4bに向かう方向又は長辺4bから短辺4aに向かう方向である。したがって、見方を変えれば、電極2と電極3との間の直線経路の抵抗値が、電極2及び電極3が延伸する方向に沿って段階的に減少するように構成されていると言える。
【0021】
図1の構造を有するチップ抵抗器の抵抗値を所望の値に調整するために、トリミング溝を作製した例を図2、3に示す。図2では、電極2及び電極3が延伸する方向、すなわち長辺4bから短辺4aに向かって直線的に切断を行い、直線状のトリミング溝41を形成している。具体的には、抵抗体4の平行な2辺に対して直角の方向に直線状のトリミング溝41を形成している。
【0022】
図2のようにトリミング溝41を作製する場合は、電極2と電極3との間の直線経路の抵抗値が、抵抗体4の平行な2辺の一方の辺(短辺4aが属する辺)から他方の辺(長辺4bが属する辺)に向かって段階的に増加するように構成されているので、トリミング溝の長さに対する抵抗値の増加率の度合いを、長辺4bから短辺4aの方に進むにつれて小さく抑えることができるので、微調整を精度良く行うことができ、高精度のトリミングが行える。
【0023】
一方、図3では、抵抗体4の平行な2辺のうち、電極2及び電極3が延伸する方向、すなわち短辺4aから長辺4bに向かって直線的に切断を行い、直線状のトリミング溝41を形成している。図3のようにトリミング溝41を作製する場合は、電極2と電極3との間の直線経路の抵抗値が、抵抗体4の平行な2辺の一方の辺(短辺4aが属する辺)から他方の辺(長辺4bが属する辺)に向かって段階的に増加するように構成されているので、トリミング溝の長さに対する抵抗値の増加率の度合いを、短辺4aから長辺4bの方に進むにつれて非常に大きくすることができるので、大きく調整したい場合には便利である。なお、1枚の抵抗体4に図2のトリミング溝と図3のトリミング溝を2つ形成するようにしても良い。
【0024】
図4は、台形状の抵抗体4Aが電極2と電極3との間に配置されている。これは、図1の構造で、抵抗体4の両端を電極2と電極3が対向する縁に沿って形成したものである。すなわち、抵抗体4Aは、電極2と電極3の離間領域に対応する抵抗体の台形形状に合わせたものである。このようにすれば、図1の抵抗体4と比較して、抵抗体材料を節約することができる。
【0025】
図5のように、電極21、31の形状を変えることもできる。電極21、31は5角形で構成される。電極21と電極31の離間領域に対応する抵抗体4の形状は台形に長方形を合わせた盃形状である。すなわち、電極21と電極31の間隔の一部は、抵抗体4の平行な2辺の一方の辺から他方の辺に向かって段階的に拡大又は狭まるように形成され、残りの部分の間隔は短辺4aの長さに等しく、一定となっている。
【0026】
図6に示されるチップ抵抗器は、図1の構造と比較して、対向する電極の形状が異なる。図6に示される電極2の形状は、図1と同じであるが、電極32の形状は長方形状であり、図1の電極3とは異なる。また、抵抗体4の形状は、図1と同じであるが、電極2と電極32の離間領域を覆う抵抗体4の形状は、等脚ではない台形である。このように、電極2と電極32との間の直線経路の抵抗値が短辺4aから長辺4bに向かって段階的に増加するように構成されている。
【0027】
ここで、本発明のチップ抵抗器において、抵抗体にトリミング溝を直線的に延ばしていったときに、抵抗値の上昇率がどのようになるかを調べた。図10は、図1の構造において、電極2と電極3の離間領域に対応する抵抗体4の部分(台形形状)を取り出して模式化したものである。
【0028】
図1の短辺4a、長辺4bで示すと図10(a)のように対応付けられる。この台形領域を電極2と電極3とを直線的に結ぶ細長い矩形領域に分割する。分割された矩形領域S1〜S7の各抵抗値が、仮に、S1が1Ω、S2が2Ω、S3が3Ω、S4が4Ω、S5が5Ω、S6が6Ω、S7が7Ωであったとする。矩形領域S1〜S7は並列接続していることになるので、図10(a)の場合の合成抵抗R1は、(1/R1)=(1/7)+(1/6)+(1/5)+(1/4)+(1/3)+(1/2)+(1/1)で算出される。上式よりR1=0.386Ωと算出される。
【0029】
次に、図10(b)のように、S1の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S1を左右に切断した場合の合成抵抗R2を算出する。この場合、矩形領域S1の抵抗値は0となるので、残りのS2〜S7で合成抵抗値R2を求めれば良い。上記と同様にして、R2=0.6278Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、62.6%である。
【0030】
次に、図10(c)のように、S1及びS2の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S1及びS2を左右に切断した場合の合成抵抗R3を算出する。この場合、矩形領域S1及びS2の抵抗値は0となるので、残りのS3〜S7で合成抵抗値R3を求めれば良い。上記と同様にして、R3=0.9150Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、137.1%である。
【0031】
次に、図10(d)のように、S1、S2及びS3の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S1、S2及びS3を左右に切断した場合の合成抵抗R4を算出する。この場合、矩形領域S1、S2及びS3の抵抗値は0となるので、残りのS4〜S7で合成抵抗値R4を求めれば良い。上記と同様にして、R4=1.3166Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、241.1%である。
【0032】
次に、図10(e)のように、S1、S2,S3及びS4の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S1〜S4を左右に切断した場合の合成抵抗R5を算出する。この場合、矩形領域S1〜S4の抵抗値は0となるので、残りのS5〜S7で合成抵抗値R4を求めれば良い。上記と同様にして、R5=1.9626Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、408.4%である。
【0033】
上記の結果からわかるように、図10(a)のトリミングを行っていない状態から、図10(e)に示す長さのトリミング溝41の形成まで、加速度的に抵抗増加率が上昇し、その上昇割合は非常に大きい。
【0034】
このように、電極間の直線経路の抵抗が小さい方からトリミング溝を形成していくと、トリミング溝の単位長当たりの抵抗増加率が、トリミング溝の深い位置ほど大きくなり、トリミング溝の長さを長くすると、最初の抵抗値に比べて非常に大きな値まで抵抗値を上昇させることができるため、抵抗値の粗調整に適している。
【0035】
次に、図11は、図10とは逆方向からトリミングを行った場合の抵抗値の変化を算出したものである。すなわち、電極間の直線経路の抵抗が大きい方からトリミング溝を形成していく場合である。
【0036】
図11(a)のように、S7の矩形領域のみに対して長辺4bに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S7を左右に切断した場合の合成抵抗R6を算出する。この場合、矩形領域S7の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S6で合成抵抗R6を求めれば良い。上記と同様にして、R6=0.408Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、5.7%である。
【0037】
次に、図11(b)のように、S7及びS6の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S7及びS6を左右に切断した場合の合成抵抗R7を算出する。この場合、矩形領域S7及びS6の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S5で合成抵抗R7を求めれば良い。上記と同様にして、R7=0.438Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、13.5%である。
【0038】
次に、図11(c)のように、S7、S6及びS5の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S7〜S5を左右に切断した場合の合成抵抗R8を算出する。この場合、矩形領域S7〜S5の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S4で合成抵抗R8を求めれば良い。上記と同様にして、R8=0.480となる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、24.4%である。
【0039】
次に、図11(d)のように、S7、S6、S5及びS4の矩形領域のみに対して短辺4aに直角にトリミング溝41を形成して矩形領域S7〜S4を左右に切断した場合の合成抵抗R9を算出する。この場合、矩形領域S7〜S4の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S3で合成抵抗R9を求めれば良い。上記と同様にして、R9=0.545Ωとなる。図10(a)のR1からの抵抗増加率は、41.3%である。
【0040】
上記の結果からわかるように、図10(a)のトリミングを行っていない状態から、図11(d)に示す長さのトリミング溝41の形成まで、加速度的に抵抗増加率が上昇し、その上昇割合は小さい。
【0041】
比較するために、図10(a)において、従来の図12のように、電極の離間幅4aと4bが等しく形成されていた場合のトリミングによる抵抗の変化を以下に算出する。矩形領域S1〜S7の電極の離間幅がすべて4bとすると、そのときの抵抗値は、矩形領域S1〜S7に対して、それぞれ1Ωである。このとき、トリミングが行われていない状態の合成抵抗R10は、R10=(1/7)で計算される。これにより、R10=0.143Ωと算出される。
【0042】
次に、S7の矩形領域のみに対して長辺4bに直角にトリミング溝を形成して矩形領域S7を左右に切断した場合の合成抵抗R11を算出する。この場合、矩形領域S7の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S6で合成抵抗R6を求めれば良い。これにより、R11=0.167Ωとなる。R10からの抵抗増加率は、16.78%である。
【0043】
次に、S7及びS6の矩形領域のみに対して長辺4bに直角にトリミング溝を形成して矩形領域S7及びS6を左右に切断した場合の合成抵抗R12を算出する。この場合、矩形領域S7及びS6の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S5で合成抵抗R12を求めれば良い。これにより、R12=0.2Ωとなる。R10からの抵抗増加率は、39.8678%である。
【0044】
次に、S7〜S5の矩形領域のみに対して長辺4bに直角にトリミング溝を形成して矩形領域S7〜S5を左右に切断した場合の合成抵抗R13を算出する。この場合、矩形領域S7〜S5の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S4で合成抵抗R13を求めれば良い。これにより、R13=0.25Ωとなる。R10からの抵抗増加率は、74.83%である。
【0045】
次に、S7〜S4の矩形領域のみに対して長辺4bに直角にトリミング溝を形成して矩形領域S7〜S4を左右に切断した場合の合成抵抗R14を算出する。この場合、矩形領域S7〜S4の抵抗値は0となるので、残りのS1〜S3で合成抵抗R14を求めれば良い。これにより、R14=0.333Ωとなる。R10からの抵抗増加率は、132.87%である。
【0046】
図12のような従来の構成のトリミングでは、トリミングを行っていない抵抗体の抵抗値からの抵抗上昇率は、順に、16.78%、39.86%、74.83%、132.87%である。これに対して、図11のトリミングでは、トリミングを行っていない抵抗体の抵抗値からの抵抗上昇率は、順に、5.7%、13.5%、24.4%、41.3%である。
【0047】
以上のように、電極間の直線経路の抵抗が大きい方からトリミング溝を形成していくと、トリミング溝の単位長当たりの抵抗増加率が、トリミング溝の深い位置ほど大きくなり、トリミング溝の長さを長くすると、最初の抵抗値に比べて抵抗値を大きくすることができる。しかし、図12の従来の場合と比較して、抵抗増加率の変化率はかなり小さく抑制されるので、抵抗値を高精度に微調整することができる。
【0048】
また、本発明の構成では、上記のように、トリミング溝を作製する場合に、トリミング溝の長さに対して、抵抗値がどの程度上昇するかを、あらかじめ予想することが可能である。
【0049】
次に、図1〜図6に示した構造を2つ組み合わせた構造としたチップ抵抗器の構成例を図7〜図9に示す。図7は、図6の構造を2つ組み合わせた構成例である。電極23と電極33は離間し、かつ対向して配置されている。さらに、電極33と電極53は離間し、かつ対向して配置されている。
【0050】
抵抗体4Aの両端部は、電極23及び電極33の端部を覆っており、抵抗体4Bの両端部は、電極33及び電極53の端部を覆っている。また、抵抗体4Aの形状は、平行な2辺を有する形状に形成され、抵抗体4Bの形状も、平行な2辺を有する形状に形成される。図7の例では、抵抗体4A及び4Bともに、平行な2辺を有する形状として長方形に形成されている。また、抵抗体4Aの平行な2辺は、電極23から電極33に渡って形成される。抵抗体4Bの平行な2辺は、電極33から電極53に渡って形成される。
【0051】
抵抗体4Aと抵抗体4Bは接続されておらず、分離して配置されている。しかし、電極23と電極53の間は、抵抗体4A、電極33、抵抗体4Bを介して電気的に接続される。
【0052】
電極23及び電極53は長方形に、電極33は平行四辺形に形成されている。ここで、電極23と電極33の離間領域に対応する抵抗体4Aの形状は、短辺4c、辺d1、長辺4d、辺d2で囲まれた台形である。他方、電極33と電極53の離間領域に対応する抵抗体4Bの形状は、短辺4e、辺d3、長辺4f、辺d4で囲まれた台形である。
【0053】
ただし、図7からわかるように、短辺4cは下側に位置し、短辺4eは上側に位置しており、抵抗体4Aと4Bでは、短辺と長辺の位置関係が逆になっている。ここで、電極23と電極33の離間領域は、短辺4cから長辺4dの方向に向かって段階的に電極間の間隔が広がるように構成されている。また、電極33と電極53の離間領域は、短辺4eから長辺4fの方向に向かって段階的に電極間の間隔が広がるように構成されている。すなわち、電極23と電極33の間隔が広がる方向と電極33と電極53の間隔が広がる方向は相互に逆方向となる。
【0054】
言い換えれば、電極23と電極33との間の直線経路の抵抗値が、抵抗体4Aの平行な2辺の一方の辺(短辺4cが属する辺)から他方の辺(長辺4dが属する辺)に向かって段階的に増加するように構成されている。かつ、電極33と電極53との間の直線経路の抵抗値が、抵抗体4Bの平行な2辺のうち抵抗体4Aの短辺4cが属する辺と同じ側にある辺(長辺4fが属する辺)から他方の辺(短辺4eが属する辺)に向かって段階的に減少するように構成されている。
【0055】
図7の抵抗体4A、4Bをトリミングする場合は、図のように抵抗体4Aにはトリミング溝41Aを、抵抗体4Bにはトリミング溝41Bを作製する。トリミング溝41Aとトリミング溝41Bは、同じ方向から切断されて作製される。トリミング溝41Bで大きく抵抗値を上昇させて粗調整を行い、トリミング溝41Aで小さく抵抗値を上昇させて微調整を行う。
【0056】
図8は、図1の構造を2つ組み合わせた構成例である。電極24と電極34は離間し、かつ対向して配置されている。さらに、電極34と電極54は離間し、かつ対向して配置されている。
【0057】
抵抗体4Aの両端部は、電極24及び電極34の端部を覆っており、抵抗体4Bの両端部は、電極34及び電極54の端部を覆っている。また、抵抗体4Aの形状は、平行な2辺を有する形状に形成され、抵抗体4Bの形状も、平行な2辺を有する形状に形成される。図8の例では、抵抗体4A及び4Bともに、平行な2辺を有する形状として長方形に形成されている。また、抵抗体4Aの平行な2辺は、電極24から電極34に渡って形成される。抵抗体4Bの平行な2辺は、電極34から電極54に渡って形成される。
【0058】
抵抗体4Aと抵抗体4Bは接続されておらず、分離して配置されている。しかし、電極24と電極54の間は、抵抗体4A、電極34、抵抗体4Bを介して電気的に接続される。
【0059】
電極24、電極34及び電極54は台形に形成される。ここで、電極24と電極34の離間領域に対応する抵抗体4Aの形状は等脚台形であり、この台形の短辺が4c、長辺が4dである。他方、電極34と電極54の離間領域に対応する抵抗体4Bの形状は等脚台形であり、この台形の短辺が4e、長辺が4fである。このように、短辺4cと短辺4eが同じ側に位置している。
【0060】
図8の構造では、電極24と電極34の離間領域に対応する抵抗体4Aにおける台形形状と電極34と電極54の離間領域に対応する抵抗体4Bにおける台形形状とは、上下の方向が同じである。
【0061】
図8の抵抗体4A、4Bをトリミングする場合は、図のように抵抗体4Aにはトリミング溝41Aを、抵抗体4Bにはトリミング溝41Bを作製する。トリミング溝41Aとトリミング溝41Bは、相互に反対の方向から切断されて作製される。トリミング溝41Bで大きく抵抗値を上昇させて粗調整を行い、トリミング溝41Aで小さく抵抗値を上昇させて微調整を行う。
【0062】
図9は、図1の構造を2つ組み合わせた構成例である。電極25と電極35は離間し、かつ対向して配置されている。さらに、電極35と電極55は離間し、かつ対向して配置されている。
【0063】
抵抗体4Aの両端部は、電極25及び電極35の端部を覆っており、抵抗体4Bの両端部は、電極35及び電極55の端部を覆っている。また、抵抗体4Aの形状は、平行な2辺を有する形状に形成され、抵抗体4Bの形状も、平行な2辺を有する形状に形成される。図8の例では、抵抗体4A及び4Bともに、平行な2辺を有する形状として長方形に形成されている。また、抵抗体4Aの平行な2辺は、電極25から電極35に渡って形成される。抵抗体4Bの平行な2辺は、電極35から電極55に渡って形成される。
【0064】
抵抗体4Aと抵抗体4Bは接続されておらず、分離して配置されている。しかし、電極25と電極55の間は、抵抗体4A、電極35、抵抗体4Bを介して電気的に接続される。
【0065】
電極25及び電極55は台形に、電極35は平行四辺形に形成される。ここで、電極25と電極35の離間領域に対応する抵抗体4Aの形状は等脚台形であり、この台形の短辺が4c、長辺が4dである。他方、電極35と電極55の離間領域に対応する抵抗体4Bの形状は等脚台形であり、この台形の短辺が4e、長辺が4fである。このように、短辺4cと短辺4eが反対側に位置している。
【0066】
図9の構造では、電極25と電極35の離間領域に対応する抵抗体4Aにおける台形形状と電極35と電極55の離間領域に対応する抵抗体4Bにおける台形形状とは、上下の方向が逆である。
【0067】
図9の抵抗体4A、4Bをトリミングする場合は、図のように抵抗体4Aにはトリミング溝41Aを、抵抗体4Bにはトリミング溝41Bを作製する。トリミング溝41Aとトリミング溝41Bは、同じ方向から切断されて作製される。トリミング溝41Bで大きく抵抗値を上昇させて粗調整を行い、トリミング溝41Aで小さく抵抗値を上昇させて微調整を行う。
【符号の説明】
【0068】
1 絶縁基板
2 電極
3 電極
4 抵抗体
4a 短辺
4b 長辺
41 トリミング溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極とは離間し、かつ対向して配置された第2の電極と、
前記第1の電極から第2の電極に渡って配置された第1の抵抗体とを備え、
前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に、前記第1の電極と第2の電極の間隔が段階的に拡大又は狭まる領域を有し、前記第1の電極と第2の電極との間の経路の抵抗値が段階的に増加又は減少する構成を有することを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
前記第1の電極と第2の電極の離間領域に対応する前記第1の抵抗体の形状は、台形を有することを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記第1の電極と第2の電極の間隔の一部は、前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に段階的に拡大又は狭まるように形成され、残りの部分の間隔は一定であることを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記第1の電極及び第2の電極の対向する2辺は前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向にハの字形状に延びて形成され、前記第1の抵抗体は前記第1の電極と第2の電極を結ぶ方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記第1の抵抗体に対して、前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向にトリミング溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記第1の抵抗体を構成する辺のうち、前記第1の電極と第2の電極を結ぶ2辺は、平行であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記第2の電極とは離間し、かつ対向して配置された第3の電極と、
前記第2の電極から第3の電極に渡って配置された第2の抵抗体とを備え、
前記第2の電極及び第3の電極が延伸する方向に、前記第2の電極と第3の電極の間隔が段階的に拡大又は狭まる領域を有し、前記第2の電極と第3の電極との間の経路の抵抗値が段階的に増加又は減少する構成を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記第1の電極と第2の電極の間隔が前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に段階的に拡大するように構成し、前記第2の電極と第3の電極の間隔が前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に段階的に拡大するように構成したことを特徴とする請求項7に記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
前記第1の電極と第2の電極の間隔が前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に段階的に拡大するように構成し、前記第2の電極と第3の電極の間隔が前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に段階的に狭くなるように構成したことを特徴とする請求項7に記載のチップ抵抗器。
【請求項10】
前記第1の電極と第2の電極の離間領域に対応する前記第1の抵抗体の形状は台形であり、前記第2の電極と第3の電極の離間領域に対応する前記第2の抵抗体の形状は台形であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に前記第1の抵抗体に形成される第1のトリミング溝と、前記第2の電極及び第3の電極が延伸する方向に前記第2の抵抗体に形成される第2のトリミング溝とは、形成方向が逆方向であることを特徴とする請求項8又は請求項10に記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記第1の電極及び第2の電極が延伸する方向に前記第1の抵抗体に形成される第1のトリミング溝と、前記第2の電極及び第3の電極が延伸する方向に前記第2の抵抗体に形成される第2のトリミング溝とは、形成方向が同方向であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のチップ抵抗器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−74029(P2013−74029A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210929(P2011−210929)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】