説明

チャネル付き反応器

反応器(10)が、内部に第1及び第2の流れチャネル(16,17)を構成するよう配置された金属シート(12,14,15)のスタックを有し、第1の流れチャネルと第2の流れチャネルは、スタック内で交互に配置され、取り外し可能な触媒担持ガス透過性の非構造要素(22,24)が、反応が行われるべき各流れチャネル内に設けられ、第1の流れチャネルは、発熱反応用であり、第2の流れチャネルは、吸熱反応用である。スタックの各端部のところに位置するチャネル(20)は、これらチャネル内で熱が生じないようなものである。これらチャネルは、非流れチャネルであるのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での化学反応、例えばフィッシャー・トロプシュ合成又は水蒸気メタン改質を行うためのチャネル付き反応器及び反応器を形成するために使用可能な反応器ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
第1及び第2の流れチャネルを構成する金属シート(板)のスタックから成る触媒反応器であって、触媒が流れチャネル内の取り外し可能なインサート、例えば波形箔に施されている触媒反応器を用いることは、例えば、国際公開第03/006149号パンフレットに記載されており、この国際公開パンフレットは、水蒸気メタン改質を含む種々の化学反応を実施するかかる反応器の使用を記載している。かかる反応器では、チャネルは、凹み付き(castellated )プレートにより互いに間隔を置いて配置された扁平なプレート、スペーサバーにより互いに間隔を置いて設けられた扁平なプレート又は溝付きプレートによって構成される場合がある。別の形式の反応器は、管を利用している。水蒸気メタン改質は、高い温度、典型的には750℃を超える温度を必要とする吸熱反応であり、必要な熱は、燃焼反応が触媒反応器内の他方の組をなすチャネル内で起こることにより提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/006149号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方式は効果的であるが、反応器内の温度勾配を減少させることが望ましい。というのは、かかる温度勾配により、反応器を構成している材料に応力が生じるからである。同様な反応器は、フィッシャー・トロプシュ合成にも使用可能である。フィッシャー・トロプシュ合成は、発熱反応であり、従って、この場合、合成反応のためのチャネルに隣接して位置するチャネルは、冷却剤を運ぶ場合がある。
【0005】
反応器内の温度勾配は、反応器を構成している材料中に応力を生じさせる傾向があるだけでなく、熱暴走という別の危険がある。幾つかの発熱触媒反応では、反応速度は、温度が増大するにつれて増大する場合があり、かかる場合、反応器内における反応速度と温度との間に正のフィードバックが存在する。これにより、熱暴走と呼ばれる急激な温度の上昇が生じる場合があり、この結果、触媒若しくは反応器又はこれら両方が損傷する場合があると共に反応器の有効寿命が短くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、反応器であって、反応器内に第1及び第2の流れチャネルが形成されており、第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、反応器の各端部のところに位置するチャネルは、該チャネル内で熱が生じないようなものであることを特徴とする反応器が提供される。
【0007】
第1及び第2の流体について第1及び第2の流れチャネルが設けられている場合について説明するが、反応器は、3種類以上の互いに異なる流体のための流れチャネルを備えても良いことが理解されよう。
【0008】
好ましくは、熱が生じないチャネルは、流れチャネルではなく、即ち、流体の流れのないチャネルである。というのは、これらチャネルは、これらの端のうちの一方又は両方が閉鎖されているからである(「非流れチャネル」)。確かに、反応器の端部のところには複数本の、例えば2本又は3本のかかる非流れチャネルが設けられるのが良い。好ましくは、反応器の各端部の最も近くに位置する流れチャネルは、第2の流れチャネルであり、反応器内の他の第2の流れチャネルよりも小さな断面積のものであるのが良い。
【0009】
かかる反応器は、ブロックで構成されるのが良く、各ブロックは、複数本の第1及び第2の流れチャネルを構成し、第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、1つのブロックに隣接して位置するブロックの各端部のところに位置するチャネルは、第2の流れチャネルである。この場合、これらチャネルは、高さ(熱伝達方向における高さ)が低いということによって、ブロック内の他の第2の流れチャネルよりも小さな断面積のものである。これらチャネルには一方の側にのみ熱が与えられるので、これらチャネルは、好ましくは、ブロック内の他の第2の流れチャネルよりも僅か50%しか高くない。
【0010】
変形例では、反応器は、各々が複数本の第1及び第2の流れチャネルを構成するブロックで作られるのが良く、第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、1つのブロックに隣接して位置するブロックの各端部のところに位置するチャネルは、第1の流れチャネルであり、高さ(熱伝達方向における高さ)が低いということによって、ブロック内の他の第1の流れチャネルよりも小さな断面積のものである。これらチャネルは、好ましくは、ブロック内の他の第1の流れチャネルよりも僅か50%しか高くない。
【0011】
熱除去流体は、吸熱反応を生じる流体であるのが良い。変形例として、熱除去流体は、冷却剤であっても良い。
【0012】
反応器が反応器ブロックの端と端を突き合わせた状態で組み合わせることにより構成されている場合、連続して位置する反応器ブロック相互間には、熱伝達を阻止する僅かな隙間が存在することになる。この隙間は、好ましくは、幅が5mm未満である。
【0013】
好ましくは、各反応器ブロックは、第1及び第2の流れチャネルを構成するよう配置されている金属シートのスタックを有し、第1の流れチャネルと第2の流れチャネルは、スタック内で交互に配置され、反応が行われるべき各流れチャネル内には取り外し可能な触媒担持ガス透過性の非構造要素が設けられている。
【0014】
各反応器ブロック内において、第1及び第2の流れチャネルがスタックとして配置されたプレートに設けられている溝によって或いはスタック内の離隔用ストリップ及びプレートによって構成されるのが良く、この場合、スタックは、互いに結合される。変形例として、流れチャネルは、凹みが付けられると共に扁平なシートと交互に積み重ねられた薄い金属シートにより構成されても良く、流れチャネルの縁部は、封止ストリップにより構成されるのが良い。反応器を形成するプレートのスタックは、例えば拡散接合、ろう付け又は熱間静水圧圧縮成形によって互いに結合される。
【0015】
所要の良好な熱的接触を保証するためには、第1の流れチャネルと第2の流れチャネルの両方は、高さ(断面で見て)が20mm〜1mmであるのが良く、各チャネルは、約1.5mm〜25mmの幅のものであるのが良い。一例を挙げると、プレート(平面図で見て)は、0.05mから最大1mまでの範囲の幅及び0.2mから最大2mまでの範囲の距離のものであり、流れチャネルは、好ましくは、2mm〜10mmの高さのものである(化学反応の性状に応じて)。例えば、プレートは、幅0.5m長さ1.0mであり又は幅0.6m長さ0.8mのものであり、これらプレートは、例えば、高さ7mm幅6mm若しくは高さ3mm幅10mm又は高さ10mm幅5mmのチャネルを構成するのが良い。第1の流れチャネルと第2の流れチャネルをスタック内で交互に位置するよう配置することは、これらチャネル中の流体相互間の良好な熱伝達を保証するのを助ける。例えば、第1の流れチャネルは、燃焼(熱を発生させるため)のための流れチャネルであるのが良く、第2の流れチャネルは、水蒸気/メタン改質(熱を必要とする)のためであるのが良い。触媒構造体は、チャネル中に挿入され、交換のために取り出し可能であり、かかる触媒構造体は、反応器に強度を与えず、従って、反応器それ自体は、動作中の圧力又は熱応力に耐えるほど十分強固でなければならない。
【0016】
好ましくは、かかる触媒構造体は各々、流れチャネルを多数本の互いに平行な流れサブチャネルに細分するよう形作られている。好ましくは、各触媒構造体は、金属基体上に設けられていて、触媒の支持体となるセラミック支持材料を有する。金属基体は、触媒構造体に強度を与え、熱伝導によって熱伝達を促進する。好ましくは、金属基体は、加熱時に酸化アルミニウムの粘着性表面皮膜を形成する合金鋼、例えばアルミニウムを含むフェライト合金鋼(例えば、Fecralloy(商標))のものである。ただし、変形例として、金属基体は、これがさらされる温度及び化学的環境に応じて、異なる材料、例えばステンレス鋼又はアルミニウムのものであっても良い。基体は、波形にされ、窪みが付けられ又はひだが付けられるのが良い箔、ワイヤメッシュ又はフェルトシートであるのが良く、好ましい基体は、長手方向サブチャネルを構成するよう波形にされた例えば厚さが僅か200μmの薄い金属箔である。
【0017】
発熱反応が燃焼である場合、好ましくは、燃焼により火炎が燃焼チャネルに供給されている可燃性ガス混合物中に伝搬して戻ることができないようにするために各流れチャネルの入口のところにフレームアレスタ(逆火防止装置)が設けられる。これは、例えば非触媒インサートの形態をした各燃焼チャネルの入口部分内に位置するのが良く、この非触媒インサートは、この入口に隣接して位置する燃焼チャネルの一部分を火炎伝搬を阻止するために最大隙間サイズよりも幅が大きくない多数の細い又は幅の狭い流路に細分する。例えば、かかる非触媒インサートは、スタック内に位置する1枚の長手方向波形箔又は複数枚の長手方向波形箔であるのが良い。代替的に又は追加的に、可燃性ガスがヘッダを通って供給される場合、かかるフレームアレスタは、ヘッダ内に設けられるのが良い。
【0018】
チャネルは、断面が正方形であるのが良く又は幅よりも大きな又は小さな高さのものであって良く、高さは、スタックの方向、即ち、熱伝達方向における寸法を意味している。触媒要素は、例えば、単一の異形箔、例えば波形箔から成るのが良く、これは、チャネルの最小断面寸法が僅か約3mmしかない場合に特に適しているが、幅の広いチャネルにも利用できる。変形例として、特にチャネルの最小断面寸法が約2mm以上である場合、触媒構造体は、実質的に、扁平な箔により互いに離された複数枚のかかる異形箔から成っていても良い。例えば水蒸気/メタン改質反応器において所要の良好な熱伝達を保証するためには、燃焼チャネルは、好ましくは、高さが10mm未満である。しかしながら、チャネルは、好ましくは、高さが少なくとも1mmであり或いは触媒構造体を挿入するのが困難になると共に工学的許容度が厳しくなる。一例として、チャネルは、全て、高さが7mm、幅が6mmであり、いずれの場合においても、触媒要素は、単一の異形箔又は複数枚の異形箔から成っていて良い。
【0019】
次に、添付の図面を参照して本発明を詳細に且つ具体的に説明するが、これは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水蒸気/メタン改質に適した反応器ブロックの一部の部分断面概略斜視図(断面は、図2の1‐1線に沿って取られている)である。
【図1a】図1の反応器の改造例を示す図である。
【図1b】図1の反応器の改造例を示す図である。
【図2】図1の組み立て状態の反応器ブロックの側面図であり、流路を示す図である。
【図3a】組み立て中における図1の反応器ブロックの一部の平面図である。
【図3b】組み立て中における図1の反応器ブロックの一部の平面図である。
【図3c】組み立て中における図1の反応器ブロックの一部の平面図である。
【図4】図1の反応器ブロックに類似した反応器ブロックを有する反応器の部分分解組み立て斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、水蒸気改質より天然ガスから合成ガス、即ち一酸化炭素と水素の混合物を作るプロセスに利用できる。合成ガスは、例えば、次に、フィッシャー・トロプシュ合成により長鎖炭化水素を生じさせるために使用できる。水蒸気改質反応は、水蒸気とメタンを混合し、この混合物を高温で適当な触媒と接触させることにより引き起こされ、その結果、水蒸気とメタンが互いに反応して一酸化炭素と水素が生じる。水蒸気改質反応は、吸熱反応であり、熱は、例えば炭化水素及び/又は空気と混合した水素の触媒燃焼により提供でき、その結果、燃焼は、改質反応器内における隣り合う流れチャネル内で燃焼触媒上で起こる。
【0022】
今、図1を参照すると、水蒸気改質反応器として用いられるのに適した又は水蒸気改質反応器において使用するのに適した反応器ブロック10が示されている。反応器ブロック10は、触媒燃焼プロセス用のチャネル及び水蒸気メタン改質のためのチャネルを備えている。反応器10は、平面図で見て長方形のプレートのスタックから成り、各プレートは、耐腐食性で耐熱性の合金、例えばインコネル(Inconel)625、インコロイ(Incoloy)800HT又はヘインズ(Haynes)HR‐120で作られている。厚さが代表的には0.5〜4mm、この場合2.0mmの扁平なプレート12がキャストレイテッドプレート14又は15と交互に配置されており、その結果、凹みがチャネル16又は17を構成している。凹み付きプレート14,15は、スタック内で交互に配置されている。代表的には0.2〜0.3mmの範囲にある凹み付きプレート14,15の厚さは、いずれの場合においても、0.9mmである。代表的には2〜10mmの範囲にある凹みの高さは、いずれの場合においても3.9mmであり、同一厚さの中実バー18が側部に沿って設けられている。凹み付きプレート14,15の凹みの波長は、互いに異なるのが良いが、図示のように、好ましい実施形態では、これらの波長は、同一であり、従って、いずれの場合においても、連続して位置するフィン又はリガメントの相互間隔は、10mmである。凹み付きプレート14,15をフィン構造体と呼ぶことができる。
【0023】
スタックの各端部のところには扁平な端プレート19が設けられており、この端プレートは、この場合、これ又厚さ2.0mmのものである。図3cを参照して以下に説明するように、端プレート19に隣接して位置する最後の2つの凹み付きプレート14a,15a内に構成されているチャネルは、非流れチャネル20である。改造例では、端プレートは、これとは異なる厚さ、代表的には、2.0mmから最大10mmまでの範囲のこれよりも大きな厚さのものであっても良い。この例では、反応器ブロック10内における凹み付きプレート14,14a,15,15aの数は、13であり、従って、反応器ブロック10の全高は、78.7mmである。
【0024】
図1では各凹み付きシート14又は15により構成されたものとして5つのチャネルしか示していないが、実際の反応器では、全幅が約500mmの反応器ブロック10にはこれよりも多くの数、例えば40本以上のチャネルが設けられる。
【0025】
プレートのスタックは、組み立てられた後、代表的には拡散接合、ろう付け又は熱間静水圧圧縮成形により互いに接合される。次に、チャネル16,17の各々の中にそれぞれの反応のための触媒を担持した触媒インサート22又は24(図1では各々1つしか示されていない)がそれぞれ挿入される。これらインサート22,24は、好ましくは、金属基体及び活性触媒材料のための支持体として働くセラミック被膜を有し、金属基体は、薄い金属箔であるのが良い。例えば、インサート22,24は、流れチャネル16又は17をそれぞれ占める波形箔及び扁平な箔又は単一波形箔のスタックから成るのが良く、各箔は、0.1mm未満、例えば50ミクロンの厚さのものである。(非流れチャネル20内にはかかる触媒インサートは設けられない。)
【0026】
次に図1a及び図1bを参照すると、反応器ブロック10の幾つかの改造例が示されている。反応器ブロック10のチャネル16,17は、図1a及び図1bに示されているようにこれらの高さよりも大きな幅を有するが、これとは異なり、チャネル16,17は、これらの幅よりも大きな高さを有していても良い。図1に示されたインサート22,24は、各チャネル内に設けられた単一の波形箔から成り、図1aでは、インサート22aは、この場合も又、単一波形箔のものであり、これに対し、図1bでは、インサート22bは、波形箔と扁平な箔のスタックから成る。
【0027】
次に図2を参照すると、組み立て状態の反応器ブロック10の側面図が示されている。燃焼作用を受けているガス混合物は、反応器ブロック10の一端部(図示のように頂部)のところでヘッダ30に入り、バッフルプレートフレームアレスタ(逆火防止装置)31を通過した後、流れチャネル17を辿り、流れチャネル17は、反応器10の長さの大部分に沿って真っ直ぐに延びている。反応器ブロック10の他端に向かって、流れチャネル17は、90°方向を変えて反応器10の他端部の側で(図示のように右下)ヘッダ32に連結され、この流路は、破線Cとして示されている。水蒸気メタン改質反応を受けるべきガス混合物は、反応器ブロック10の一端部の側(図示のように左上)のところでヘッダ34に入り、バッフルプレート35を通過し、次に90°方向を変えて、反応器ブロック10の長さの大部分に沿って真っ直ぐに延びる流れチャネル16を通って流れ、そして他端部(図示のように底部)のところでヘッダ36を通って出るようになっており、この流路は、一点鎖線Sとして示されている。したがって、この構成は、流れが並流であるようなものであると共に流れチャネル16,17の各々がその長さの大部分に沿って真っ直ぐであり、そして反応器ブロック10の一端のところでヘッダ30又は36と連通し、触媒インサート22,24をヘッダ30又は36の取り付け前に容易に挿入することができるようなものである。触媒インサート22,24を流れチャネル16,17の真っ直ぐな部分のうちで互いに隣接して位置する部分に沿ってのみ設けることが望ましい場合がある。
【0028】
図1に示されている扁平なプレート12の各々は、この例では、幅500mm、長さ1.0mの寸法であって結果的に反応器ブロック10の断面積を定める寸法のものである。次に図3aを参照すると、組み立て中における反応器ブロック10の一部分の平面図が示されており、この図は、凹み付きプレート15を示している(この図は、図2の平面に平行な平面内に位置している)。凹み付きプレート15は、長さ800mm、幅460mmのものであり、側部バー18は、幅20mmのものである。凹み付きプレート15の頂端部は、扁平プレート12の頂縁部と整列しており、従って、凹み付きプレートの頂端部は、開口している(ヘッダ30と連通するために)。側部バー18のうちの1つ(図示のように左側の側部バー)は、長さが1.0mであり、この側部バーは、端部を横切って延びる同じような端部バー18aに接合されている。その結果、右下側のコーナー部のところには幅180mmの隙間が生じている(ヘッダ32と連通するために)。凹み付きプレート15の底端部と端部バー18aとの間の長方形領域は、凹み付きプレートの2つの三角形部分26,27によって占められており、第1の部分26は、端部バー18aに平行なスプラインを有すると共にスタックの縁部まで延びている(ヘッダ32と連通するために)、これに対し、第2の部分27は、凹み付きプレート15のスプラインに平行なスプラインを有している。
【0029】
図3bを参照すると、図3aと同様な図が示されているが、図3bは、凹み付きプレート14を示している。この場合、凹み付きプレート14は、この場合も又、長さ800mm、幅460mmのものであり、側部バー18は、幅20mmのものである。凹み付きプレート14の底端部は、扁平プレート12の底縁部と整列しており、従って、凹み付きプレートの底端部は、開口している(ヘッダ36と連通するために)。側部バー18のうちの1つ(図示のように右側の側部バー)は、長さが1.0mであり、この側部バーは、端部を横切って延びる同じような端部バー18aに接合されている。その結果、左上側のコーナー部のところには幅180mmの隙間が生じている(ヘッダ34と連通するために)。凹み付きプレート14の頂端部と端部バー18aとの間の長方形領域には、凹み付きプレートの三角形部分26,27が設けられており、第1の部分26は、端部バー18aに平行な凹みを有すると共にスタックの縁部まで延びている(ヘッダ34と連通するために)、これに対し、他方の部分27は、凹み付きプレート14の凹みに平行な凹みを有している。
【0030】
図3cを参照すると、図3a及び図3bと同様な図が示されているが、図3cは、非流れチャネル20のうちの1つを構成する凹み付きプレート14aを示している。この場合、凹み付きプレート14aは、長さ960mmであり、この場合も又幅460mmのものである。この場合、両方の側部バー18は、長さが1.0mであり、これら側部バーは、端部バー18aの各端部に連結されている。その結果、非流れチャネル20を通る流体の流れは生じない。しかしながら、図示のように右上側のコーナー部のところ及び左下側のコーナー部のところには小さなブリード穴28が設けられており、その結果、非流れチャネル20は、周囲の圧力状態にある。
【0031】
ガス流れ方向のこの変化を達成するために凹み付きプレートの幾つかの部分について多くの他の構成を用いることができることが理解されよう。例えば、凹み付きプレート15と凹み付きプレート27の一部分は、これらが同一且つ互いに平行な凹みを有しているので互いに一体であっても良く、同様に、凹み付きプレート14と凹み付きプレート27の隣接部分は、互いに一体であっても良い。好ましくは、三角形部分26,27に設けられた凹みは、チャネルを構成する部分14又は15に設けられた凹みと同一形状のものである。
【0032】
上述したように、プレート12,14,15のスタックを組み立てた後、触媒インサート22,24を反応チャネル16,17中に挿入する。好ましくは、燃焼ガスCのためのチャネル17内において、触媒インサート24は、図3aに平面図で示されている真っ直ぐなチャネルの下側3/4を占めるよう長さ600mmのものであり、この部分は、矢印Pで示されており、矢印Qで示された残りの200mm分は、ルーズに嵌め込まれた波形箔の形態であるのが良い非触媒スペーサによって占められている。同様に、水蒸気改質ガス混合物Sのためのチャネル16内では、触媒インサート22は、長さ600mmのものであり、矢印Rで示されているように、触媒インサート22は、図3bに平面図で示されている真っ直ぐなチャネルの上側3/4を占め、矢印Qで示されている残りの200mm分は、非触媒スペーサによって占められている。触媒インサート22,24を挿入した後、ワイヤメッシュ(図示せず)を反応器ブロック10の底端部を横切って取り付けるのが良く、その結果、スペーサ及び触媒インサート22は、反応器ブロック10がその直立位置にあるとき(図2に示されている)、落ちて流れチャネル16から脱落して落ちることが無いようになっている。それ故、触媒インサート22,24は、互いにすぐ隣り合わせに位置する流れチャネル16,17の部分にのみ存在することは理解されよう。
【0033】
次に、ヘッダ30,32,34,36を反応器ブロック10に取り付けるのが良いことは理解されよう。しかしながら、大きな容量の反応器を提供することが好都合な場合があり、これは、幾つかのかかる反応器ブロックを互いに組み合わせることによって達成できる。
【0034】
次に図4を参照すると、反応器40が示されている。この反応器は、図1の反応器ブロック10とほぼ同じ幾つかの反応器ブロック10a,10bから成る。反応器40の端部のところには2つの反応器端ブロック10aが設けられている。これら端ブロック10aは、これら端ブロックが反応器40の端部を形成している端部であるスタックの一端部のところにのみ非流れチャネル20を有し、反応器ブロック10aの他端部のところには水蒸気メタン改質ガス流Sのための流れチャネル16が設けられている点で反応器ブロック10とは異なっている。これら端ブロック10a相互間には数個の内側ブロック10bが設けられ、これら内側ブロック10bは、非流れチャネル20を備えていない端ブロック10aとは異なっており、各内側ブロック10bの両端部のところには、水蒸気メタン改質ガス流Sのための流れチャネル16が設けられている。
【0035】
反応器40の組み立ての際、反応器ブロック10a又は10bを連続して位置するブロック相互間に幅2.3mmの隙間が残るよう互いに溶接し、溶接物は、ヘッダ30,32,34,36(図2も又参照されたい)が取り付けられるべき位置にある縁部周りの隙間を埋めるが、ヘッダが取り付けられない側部の部分には開口した隙間41(3つしか示されていない)が残されたままである。これは、ブロックを所望の間隔で保持し、隙間を横切って溶接するか、厚さ2.3mmのスペーサブロックを埋められるべき部分に沿ってブロック相互間に配置し、ブロックとスペーサバーを互いに溶接するかのいずれかによって達成できる。
【0036】
次に、ヘッダ30,32,34,36を反応器40に取り付ける。この例では、各ヘッダは、反応器40の全長にわたって延び、反応器40は、この場合、全長が1.0mmであり、各ヘッダ30,32,34,36は、それぞれの流体C,Sのための単一の流体入口又は出口ダクト42,43,44,45を有している。
【0037】
それ故、動作中、反応器ブロック10又は反応器40は、メタンと水蒸気の混合物から合成ガスを生じさせるプラントの一部として使用できる。可燃性ガス混合物(矢印Cを参照されたい)をヘッダ30に供給し、この可燃性ガス混合物は、これが触媒燃焼を受ける流路17に沿って流れるようにし、排気ガスは、ヘッダ32内に出て行く。メタンと水蒸気の混合物(矢印Sを参照されたい)をヘッダ34に供給し、この混合物は、代表的には約600℃の温度で供給される触媒インサート22が収納された流路16に沿って流れるようにし、この混合物は、これが反応器40を通過しているときに約770℃の温度まで昇温される。その結果得られる合成ガスは、ヘッダ36内に出て行って出口ダクト45を通って出て行く。
【0038】
ガスの流れが反応器40内で起こる最も外側の流れチャネルは、改質チャネル16である。これら最も外側のチャネルからの熱伝達は、非流れチャネル20が設けられていることにより制限される。これにより、反応器40内における温度勾配が減少し、従って、反応器40が受ける熱応力が減少する。
【0039】
改造例では、最も外側の改質チャネル16は、一方の側でのみ熱の流入を受けるので、かかる最も外側の改質チャネル16は、反応器ブロック10内の他の改質チャネル16よりも高さが小さいものであるのが良い。例えば、最も外側の改質チャネルは、他の改質チャネルの30〜70%、最も好ましくは他の改質チャネル16の45〜55%の高さのものであるのが良い。したがって、対応のインサート22も又、高さの小さいものでなければならない。
【0040】
各内側反応器ブロック10b内では、最も外側の流れチャネルは、改質チャネルなので、上述の反応器の設計は、燃焼チャネルが燃焼チャネルに隣接して位置しないようにしており、このことは、温度勾配を減少させるうえで有利である。連続して位置するブロック10a,10b相互間の空隙は、上述したように空気の循環を可能にするよう側部のところが開口しているのが良く、或いは変形例として、ブロックは、空気が封じ込められるようこれらの周囲全体に沿って互いに溶接されても良い。かかる空隙は、熱伝達を阻止する。
【0041】
反応器ブロック10及び反応器40は、本発明の範囲に含まれた状態で種々の仕方で改造できることは理解されよう。上述したように、反応器ブロック10内のチャネルの配置状態は、NNSCSCSCSCSNN(即ち、チャネルの13個の層が水蒸気改質(S)、燃焼(C)相互間で交互に位置し、最も外側は、水蒸気改質であるが、端部のところには2つの非流れ層(N)が設けられている)である。好ましさの低い変形例では、最も外側の層は、燃焼のためのものであり、従って、これらの層は、NNCSCSCSCSCNNである。同様に、各内側反応器ブロック10b内では、チャネル配置は、SCSCSCSCSCSCSである。
【0042】
変形例としての好ましさの程度の低い構成例では、最も外側の層は、燃焼のためのものであり、即ち、CSCSCSCSCSCSCであり、この状況では、最も外側のチャネルは、ブロック10内の他の燃焼チャネル17よりも高さの小さいものであり、これら最も外側のチャネルは、例えば、他の燃焼チャネルの断面積の40%〜70%、例えば50%であるのが良い。理解されるように、反応器ブロック内の層の数は、上述した数とは異なっていても良い。例えば、各内側反応器ブロックは、3つの層しか備えていなくても良く、これら層は、SCSかCSCかのいずれかの状態に配置されるのが良い。
【0043】
また、第1の流れチャネル及び第2の流れチャネルの流れ方向は、上述の反応器では互いに平行であって並流であるものとして示されているが、流れ方向は、互いに平行であるが向流であっても良く、或いは、変形例として、流れ方向は、横方向であっても良く或いは斜めの角度をなしていても良いことが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器であって、前記反応器内に第1及び第2の流れチャネルが形成されており、前記第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、前記第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、前記反応器の各端部のところに位置する前記チャネルは、該チャネル内で熱が生じないようなものである、反応器。
【請求項2】
熱が生じない前記チャネルは、非流れチャネルである、請求項1記載の反応器。
【請求項3】
前記反応器の少なくとも一端部のところに複数本の前記非流れチャネルが設けられている、請求項2記載の反応器。
【請求項4】
前記非流れチャネルは、これらチャネルの端のうちの一方又は両方が閉鎖されている、請求項2又は3記載の反応器。
【請求項5】
前記非流れチャネルの最も近くに位置する前記流れチャネルは、第2の流れチャネルである、請求項2〜4のうちいずれか一に記載の反応器。
【請求項6】
反応器ブロックのスタックを有し、各ブロックは、複数本の第1及び第2の流れチャネルを構成し、前記第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、前記第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、1つのブロックに隣接して位置するブロックの各端部のところに位置する前記チャネルは、第2の流れチャネルである、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の反応器。
【請求項7】
1つのブロックに隣接して位置するブロックの各端部のところに位置する前記チャネルは、熱伝達方向における高さが低いということによって、前記ブロック内の他の第2の流れチャネルよりも小さな断面積のものである、請求項6記載の反応器。
【請求項8】
反応器ブロックのスタックを有し、各ブロックは、複数本の第1及び第2の流れチャネルを構成し、前記第1の流れチャネルは、発熱反応を生じる流体のためのものであり、前記第2の流れチャネルは、熱除去流体のものであり、1つのブロックに隣接して位置するブロックの各端部のところに位置する前記チャネルは、第1の流れチャネルであり、熱伝達方向における高さが低いということによって、前記ブロック内の他の第1の流れチャネルよりも小さな断面積のものである、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の反応器。
【請求項9】
前記熱除去流体は、吸熱反応を生じる流体である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の反応器。
【請求項10】
前記熱除去流体は、冷却剤である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の反応器。
【請求項11】
前記第1及び前記第2の流れチャネルを構成するよう配置されている金属シートのスタックを有し、前記第1の流れチャネルと前記第2の流れチャネルは、前記スタック内で交互に配置され、反応が行われるべき各流れチャネル内には取り外し可能な触媒担持ガス透過性の非構造要素が設けられている、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の反応器。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−508150(P2013−508150A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535927(P2012−535927)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051712
【国際公開番号】WO2011/051696
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(511140725)コンパクトジーティーエル パブリック リミテッド カンパニー (4)
【Fターム(参考)】