説明

チューナブルフィルタ装置

【課題】フィルタの使用中に、中心周波数と帯域幅を独立して制御可能なチューナブルフィルタ装置を提供する。
【解決手段】チューナブルフィルタ装置(1)は、誘電体基板(11)上に共振器パターン(12)が形成されたフィルタ(10)と、前記共振器パターンの上方に位置し、前記共振器パターンの伝送特性を調整する調整ロッド(25)と、前記フィルタ及び前記調整ロッドを収容するとともに、貫通穴(32A)が設けられた容器(32)と、前記調整ロッドを前記共振器パターンに対して垂直方向に移動させる位置調整手段(20)と、を備え、前記調整ロッドと前記位置調整手段の間がワイヤ(23)で接続され、前記ワイヤが前記貫通穴を通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューナブルフィルタ装置に関し、特に、フィルタ装置の使用中に中心周波数を帯域内特性から独立して制御可能なチューナブルフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代移動通信システムや広帯域無線アクセスなど高速・大容量のデータ通信へ移行するにともない、周波数の有効利用が必要不可欠となっている。また、最適な通信アクセスを得るために、複数のシステム、すなわち複数の周波数帯に対応する通信機器が望まれるような状況となっている。したがって、低損失で高周波数遮断特性が得られる高Q超伝導フィルタにチューナブル機能が付加されれば、周波数干渉を解決する技術として最大の候補となる。
【0003】
一般的なマイクロストリップ型の超伝導共振器フィルタは、超伝導材料で形成される直線形状、ヘアピン形状等の共振器パターンを複数配置し、複数の共振器間、および共振器−入出力フィーダ間を電磁界カップリングさせて、超伝導バンドパスフィルタを形成している。
【0004】
各共振器の共振周波数f0と共振器間結合係数k、外部Q値によって、フィルタの中心周波数や帯域幅、遮断特性、帯域外抑圧特性などが決まってくる。したがって、f0とkを何らかの手段によって可変にできれば、そのフィルタはチューナブル機能を持つ。材料物性の視点に立てば実効比誘電率εeffと実効比透磁率μeffの少なくとも一方を、また、回路の視点に立てばキャパシタンスCとインダクタンスLの少なくとも一方を変化させることができればよい。
【0005】
しかし、高Qフィルタを維持するためには、チューナブル手段による損失増大を避ける必要がある。現状では、電界制御、磁界制御、機械的(メカニカル)制御で変える3種類の手段がある。この中で、メカニカルに変える方法が最も大きいチューナビリティが得られ、低損失で維持できる手段として有望視されている。
【0006】
公知のチューニング方法として、誘電体基板上に形成されたマイクロストリップ型の共振器フィルタパターンの上方に、低損失の誘電体や磁性体のプレートを配置し、圧電素子などのアクチュエータで誘電体(又は磁性体)プレートの高さ位置を変える方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。共振器フィルタパターンと誘電体(磁性体)プレートの間の距離を変えることで、εeffもしくはμeffを変化させてチューナブル化するのである。
【0007】
しかし、この方法では、共振器フィルタパターンの上方全面をプレートで覆うため、中心周波数の可変量の増大に伴って帯域幅も変わってしまい、個々の共振器を任意にチューニングできないという問題があった。一方、誘電体ロッドや磁性体ロッドを上方から挿入することで、フィルタ帯域内の特性(帯域幅、リップルなど)を調整することは可能であったが(たとえば、特許文献2参照)、この場合は、中心周波数の可変は困難であった。

【特許文献1】特許第3535469号公報
【特許文献2】特開2002−57506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の方法では、中心周波数か帯域内特性のいずれかをチューナブルにすることはできるが、他方の特性に影響を与え、双方を個別に変化させることは困難であった。また、従来のチューニングは、もっぱら出荷前のフィルタの特性を所望の特性に設定し、或いは多段に配置された各共振器間の特性を揃えることを目的としていた。
【0009】
しかし、周波数のいっそうの有効利用を図るため、地域、時間等に応じて使用可能な周波数帯域を適宜選択、利用して通信を行うコグニティブ無線(cognitive radio)が提唱されており、動作中に中心周波数を効果的に変更できるチューナブルなフィルタ装置への要望が高まっている。
【0010】
そこで本発明は、使用中に、帯域内特性と中心周波数を独立して制御可能なチューナブルフィルタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の側面では、チューナブルフィルタ装置は、
誘電体基板上に共振器パターンが形成されたフィルタと、
前記共振器パターンの上方に位置し、前記共振器パターンの伝送特性を調整する調整ロッドと、
前記フィルタおよび前記調整ロッドを収容するとともに貫通穴が設けられた容器と、
前記調整ロッドを前記共振器パターンに対して垂直方向に移動させる位置調整手段と、
を備え、前記調整ロッドと前記位置調整手段の間がワイヤで接続され、前記ワイヤが前記貫通穴を通過することを特徴とする。
【0012】
良好な構成例では、前記共振器パターンは、複数の共振器の配列を含み、前記調整ロッドは、各共振器の上方に個別に配置される。あるいは、前記調整ロッドを、隣接する共振器と共振器の間の上方に配置する構成としてもよい。
【0013】
別の良好な構成例では、前記ワイヤ貫通穴の位置にグリス溜が形成され、ワイヤは、グリス溜の中を摺動するように構成される。
【発明の効果】
【0014】
共振器パターンに対する調整ロッドの位置をフィルタ使用中に制御して、帯域内特性と中心周波数を独立して制御することができる。また、容器の外からワイヤを介して調整ロッドの位置を制御することで、狭い空間に調整ロッドを複数配置した場合も、調整ロッドの上下位置を正確に制御することができる。また、熱流入を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の良好な実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るチューナブルフィルタ装置の概略構成図である。チューナブルフィルタ装置1は、誘電体基板11上に共振器パターン12が形成されたフィルタ10(図中ではパッケージングされている)と、共振器パターン12の上方に位置し、共振器パターン12の伝送特性を調整する調整ロッド25と、前記フィルタ10及び前記調整ロッド25を収容するとともに貫通穴32Aが設けられた真空容器32と、前記調整ロッド25を前記共振器パターン12に対して垂直方向に移動させる位置調整手段20とを備える。調整ロッド25と位置調整手段20の間はワイヤ23で接続される。ワイヤ23は、たとえば直径100μmのサファイヤワイヤであるが、線膨張率が小さい硬脆性の任意の材料を用いることができ、タングステンワイヤ等を用いてもよい。ワイヤ23は、真空容器32のたとえばゴム製の天蓋に形成された貫通穴32Aを通過する。
【0016】
図1の例では、フィルタ10は、共振器パターン12が超伝導材料で形成された高周波用の超伝導フィルタである。共振器パターン12は、複数の共振器12a、12bで構成される。各共振器12a、12bに対応して、超伝導フィルタ10の伝送特性調整用の調整ロッド25a、25bが上方に配置されている。調整ロッド25a、25bは、誘電体又は磁性体材料で形成され、たとえばサファイヤロッドを使用する。誘電体基板11の裏面にはグランド膜14が形成され、誘電体基板11及び共振器12a、12bとともにマイクロストリップ線路を構成している。マイクロストリップ構造の超伝導フィルタ10はアルミニウム等の金属パッケージに収容され、真空容器32内の冷却プレート31上に設置されて、70K程度に冷却される。
【0017】
調整ロッド25の上下位置を調整する移動調整手段20は、この例では、ワイヤ23を駆動するステッピングモータ22と、ワイヤ23を真空容器32の貫通穴32Aへと案内する滑車21を含む。滑車21及びステッピングモータ22は、調整ロッド25ごとに設けられ、この例では、6つの調整ロッド(25aと25bのみ図示)に対応して、6つの滑車(21aと21bのみ図示)と6つのステッピングモータ22a〜22fが真空容器32の外部に配置されている。各滑車21にはリミットスイッチ26が設けられ、ワイヤ23を巻き上げすぎないように制御する。各滑車21の直径は、たとえば2.5cm、滑車幅が2.0mmである。
【0018】
なお、ステッピングモータ21と滑車22の組み合わせ以外に、ピエゾ素子、MEMS等、ワイヤ32を垂直方向に引き上げ、又は引き下げることのできる任意の電気・機械的手段を採用することができる。
【0019】
真空容器32内では、冷却プレート31上に、支柱28を介してガイド板27が設置されている。ガイド板27にはガイド穴27Aが設けられている。調整ロッド25とワイヤ23の間には、アルミニウム(Al)等の連結部24が設けられ、連結部24がガイド穴27Aに案内される。調整ロッド25a、25bにそれぞれ結合される連結部24a、24bは、調整ロッド25側の端部(保持端)にフリンジ24Aを有し、連結部24a、24bのフリンジ24Aからガイド板27までの部分にコイルバネ33が挿入され、調整ロッド25と共振器パターン12の接触を防止する。
【0020】
図2Aと図2Bは、金属パッケージ内に収容される超伝導フィルタ10の構成例を示す概略図である。図2Aにおいて、たとえば単結晶MgOの誘電体基板11の裏面にグランド膜14が形成され、グランド膜14と反対側の面には、直線形状の共振器12a〜12cと、入出力フィーダ13a、13bが形成されている。共振器12a〜12c、入出力フィーダ13a、13b、及びグランド膜14は、YBCO(Y−Ba−Cu−O)などの酸化物超電導材料の薄膜で形成される。
【0021】
共振器12a〜12c上に、周波数特性等の伝送特性調整用の調整ロッド25a〜25cと、同じく伝送特性調整用の誘電体(又は磁性体)プレート16が配置される。誘電体(又は磁性体)プレート16は、支持部材18を介して上下移動可能に保持されている。誘電体(又は磁性体)プレート16には貫通穴17a〜17cが形成されており、調整ロッド25a〜25cは誘電体(又は磁性体)プレート16の対応する貫通穴17a〜17cを通って、共振器パターン12a〜12cの上方へと延びている。
【0022】
各調整ロッド25a〜25cの垂直位置は、真空容器32の外部の位置調整手段20とワイヤ23により、誘電体(又は磁性体)プレート16とは独立して調整される。したがって、超伝導フィルタ10の使用中に、超伝導フィルタ10の特性を所望の周波数帯域へと変更することができる。一方、図2Bの例では、誘電体(又は磁性体)プレート16の垂直位置は、パッケージ40の上面40Aに取り付けられたトリマ(調整手段)29により、調整ロッド25a〜25cとは独立して制御される。誘電体(又は磁性体)プレート16は、超伝導フィルタ10の設置前に、全体のフィルタ特性を設計された特性に合わせ込み、製品間のバラツキを低減するのに有効である。
【0023】
もっとも、誘電体(又は磁性体)プレート16をトリマ29で金属パッケージ40の上面40Aに取り付ける代わりに、調整ロッド25と同様に、ワイヤと、真空容器外部でワイヤに接続される第2の位置調整手段を用いて、位置調整する構成としてもよい。この場合は、金属パッケージ40の上面40Aに支持部材18を貫通させる貫通穴を設け、支持部材18が貫通穴の中を上下移動可能になるように構成する。
【0024】
超伝導フィルタ10の動作時には、図示しない伝送路(たとえば同軸ケーブル)を伝送してきた信号(電磁波)は、入力フィーダ13aから共振器パターン12へ電磁界的に結合し、所望の共振周波数成分のみが取り出されて、出力フィーダ13bから出力される。超伝導フィルタ10を、たとえば無線基地局の受信側のフィルタとして用いる場合は、出力フィーダ13bから出力された信号は、図示しない低ノイズアンプ(LNA)、ダウンコンバータ、復調器などを経て、ベースバンド部でベースバンド処理される。
【0025】
図2A及び図2Bの例では、直線型の共振器で構成される共振器パターン12を用いているが、共振器12a〜12cの形状はこの例に限定されない。例えば、図3(b)に示すように、裏面にグランド膜14を形成した誘電体基板11上に、複数のヘアピン共振器12a〜12jを配置してもよい。その場合は、ヘアピンの開口端が交互に反対向きになるように配列するのが望ましい。共振器12a〜12jの各々に対応して、調整ロッド35a〜35jが設けられ、調整ロッド35a〜35jの先端が、対応するヘアピン共振器の開口端の上方に位置するように配置される。図3(a)に示すように、金属パッケージの上面40Aに形成される貫通穴41a〜41jは、互い違いに配置される。
【0026】
ヘアピン共振器12のサイズは、目的とする共振周波数によって異なるが、たとえば、線幅を0.5mm、ヘアピンの開口端の幅を0.5mmとすると、直径1mm〜1.5mmの調整ロッド35を用いた場合、隣接する調整ロッド35間の間隔(ピッチ)は3mm以下となる。このような狭いピッチで調整ロッド35a〜35jを配置しても、調整ロッド35と位置調整手段20との間はワイヤ23で接続されるので、調整ロッド35a〜35jの上下位置を、隣接する調整ロッドに干渉することなく、個別に制御することができる。
【0027】
図4は、別の共振器パターンの例を示す。図4の共振器パターンは、多段に配列したディスク型共振器42a〜42fを含む。このようなディスク型共振器は、電流密度の集中を緩和できるので、大電力を要する送信側のフィルタに好適に用いられる。この場合も、誘電体プレート16と金属パッケージの上面40Aには、調整ロッド(不図示)を通すための貫通穴17a〜17fと、41a〜41fがそれぞれ設けられる。この例では、調整ロッドは、入力フィーダ43aと共振器42aの間、隣接する各ディスク共振器42a〜42fの間、及び共振器42fと出力フィーダ43bの間に配置される。
【0028】
なお、図示はしないが、ヘアピン共振器やディスク共振器に代えて、うずまき共振器、楕円共振器などを用いても、同様の効果が得られる。すなわち、共振器ごとに調整ロッドの配置し、調整ロッドの垂直位置をワイヤにより外部から個別に調整することで、フィルタの動作中に所望のフィルタ特性へと変更することが可能になる。
【0029】
図5は、真空容器32の天蓋に形成されたワイヤ貫通部の構成例を示す概略図である。真空容器32の外側のワイヤ23が貫通する箇所には、真空を保つために適切な量のグリスが塗布されて、グリス溜52を形成する。グリス溜52の高さは、ワイヤ23が上下に動く範囲内以上であるのが望ましい。たとえば、ワイヤ23の移動幅が5mmである場合は、グリス溜52の高さを5mm以上にする。これにより、ワイヤ23は、グリス溜52の内部のみで摺動することになり、真空容器32の真空状態を維持することができる。
【0030】
図6(a)及び図6(b)は、図1のチューナブルフィルタ装置1のフィルタ特性を示すグラフである。図1の位置調整手段20を用いて、共振器パターン12から調整ロッドの先端までの垂直距離h2を変化させて、各位置でのS21透過特性(図6(a))と、S11反射特性(図6(b))を測定した。
【0031】
図中、点線は垂直距離h2が4.0mmのとき、実線はh2が0.1mmのとき、破線はh2が0.03mmのときの特性である。調整ロッドを共振器パターンに近づけるにつれて、特性プロファイルをほぼ同じくしたまま、中心周波数が低い側へシフトすることがわかる。この例では、約4mmの調整幅により、0.2GHz以上の範囲で調整可能になっている。
【0032】
なお、測定に用いたサンプルの共振器パターンは、3段に配置した線幅が約1.1mmの櫛型の共振器パターンを使用した。
【0033】
図7は、共振器パターン12上の誘電体(又は磁性体)プレート16の位置を調整したときのフィルタ特性のグラフ、図8は、誘電体(又は磁性体)プレート16により全体の特性調整をした上で、図1のチューナブルフィルタ装置1で調整ロッド25の位置を制御してフィルタ特性を微調整したときのグラフである。誘電体プレート16の誘電率εrは39、厚さは0.5mm、共振器パターン12は、超伝導材料で形成された線幅0.5mmのヘアピン共振器を3段に配置したものである。調整ロッド25は、隣接するヘアピン共振器間の上方に配置した。
【0034】
図7において、調整ロッド25の位置を固定にしたまま、電体プレート16を金属パッケージ40の天井(高さh=16.5mm)から、徐々に共振器パターンに近づけていると、共振周波数(中心周波数)は低周波側へシフトし、同時に帯域幅が拡がっていく。これは、各共振器の実効比誘電率εeffが増大するとともに、同時に共振器間の結合係数kも増大し、外部Qが下がるためである。また、低周波数側へのシフトにつれて、リップルが増大している。
【0035】
図8は、誘電体プレート16で中心周波数の調整を行った後に、チューニングロッド25の垂直位置を位置調節機構20で調整したときの、帯域内特性の変化を示す。図中、点線は調整前の特性を、実線は調整後の特性を示す。調整ロッド25でフィルタ特性を微調整することにより、リップルを低減し、プロファイルを最適化できる。すなわち、誘電体プレート16の制御とは独立して、共振器間結合係数kや外部Qを可変にできる。
【0036】
以上述べたように、調整ロッド25と位置調整手段20との間を、調整ロッド25よりも直径の小さなワイヤ23でつないだことにより、狭い空間内に複数の調整ロッドを配置して、調整ロッドを互いに干渉させることなく位置制御することが可能になる。これにより、共振器パターンの微細化にも充分に対応することができる。また、ワイヤ23を用いた調整ロッド25の調整と、誘電体(又は磁性体)プレート16の調整を、互いに独立して行うことができるので、中心周波数と、帯域内特性を個別に制御できる。
【0037】
なお、図1の構成で多段の共振器を調整するために複数の滑車21を用いる場合、滑車21を一列に隣り合って並べる配置の他、放射状態に配置する、高さ方向に交互に配置する、水平面内で交互に配置する等、任意の配置が可能である。
【0038】
また、共振器パターン12が形成される誘電体基板11は、MgO単結晶基板に限定されず、たとえば、LaAlO3基板、サファイア基板などを用いてもよい。誘電体プレート16や調整ロッド25は、サファイア、単結晶MgO、LaAlO3、NdGaO3、LSAT板、LaSrGaO4、LaGaO3、YSZなどを用いてもよいし、磁性体材料を用いてもよい。磁性体として、YIGなどを利用することができる。
【0039】
超伝導材料としては、YBCO系の材料の他に、任意の酸化物超伝導材料を用いることができる。たとえば、RBCO(R−Ba−Cu−O)系薄膜、すなわち、R元素としてY(イットリウム)に代えて、Nd、Sm、Gd、Dy、Hoを用いた超伝導材料を用いてもよい。また、BSCCO(Bi−Sr−Ca−Cu−O)系、PBSCCO(Pb−Bi−Sr−Ca−Cu−O)系、CBCCO(Cu−Bap−Caq−Cur−Ox、1.5<p<2.5、2.5<q<3.5、3.5<r<4.5)を用いてもよい。
【0040】
以上の記載に関し、以下の付記を提示する。
(付記1)誘電体基板上に共振器パターンが形成されたフィルタと、
前記共振器パターンの上方に位置し、前記共振器パターンの伝送特性を調整する調整ロッドと、
前記フィルタ及び前記調整ロッドを収容するとともに、貫通穴が設けられた容器と、
前記調整ロッドを前記共振器パターンに対して垂直方向に移動させる位置調整手段と、
を備え、
前記調整ロッドと前記位置調整手段の間がワイヤで接続され、前記ワイヤが前記貫通穴を通過することを特徴とするチューナブルフィルタ装置。
(付記2)前記共振器パターンは、複数の共振器の配列を含み、
前記調整ロッドは、前記複数の共振器の各々の上方に配置されることを特徴とする付記1に記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記3)前記共振器パターンは、複数の共振器の配列を含み、
前記調整ロッドは、隣接する共振器と共振器の間の上方に配置されることを特徴とする付記1に記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記4)前記貫通穴の位置にグリス溜が形成され、前記ワイヤは前記グリス溜の中を摺動することを特徴とする付記1〜3のいずれか一項に記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記5)前記ワイヤの径は、前記調整ロッドの径よりも小さいことを特徴とする付記1〜4のいずれか一項に記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記6)前記グリス溜の高さは、少なくとも前記ワイヤの摺動範囲に対応することを特徴する付記4に記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記7)前記共振器パターンの上方に位置し、前記調整ロッドを貫通させる貫通穴を有する誘電体又は磁性体のプレートをさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のチューナブルフィルタ装置。
(付記8)前記誘電体又は磁性体プレートの前記共振器パターンに対する垂直位置を調整するプレート位置調整手段をさらに有することを特徴とする付記7に記載のチューナブルフィルタ装置。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るチューナブルフィルタ装置の概略構成図である。
【図2A】図1のチューナブルフィルタ装置で用いる超伝導フィルタの構成例を示す図である。
【図2B】図1のチューナブルフィルタ装置で用いる超伝導フィルタの構成例を示す図である。
【図3】超伝導フィルタの共振器パターンの例を示す図である。
【図4】超伝導フィルタの共振器パターンの例を示す図である。
【図5】ワイヤ貫通部の構成例を示す図である。
【図6】図1のチューナブルフィルタ装置のフィルタ特性のグラフである。
【図7】誘電体プレートの位置を調整することによるフィルタ特性の変化を示すグラフである。
【図8】図7によるフィルタ特性の調整の後に、図1の位置調整手段を用いて調整ロッドを制御したときのフィルタ特性の調整を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 チューナブルフィルタ装置
10 超伝導フィルタ
11 誘電体基板
12 共振器パターン
12a〜12j、42a〜42f 共振器
13a、13b 入出力フィーダ
14 グランド膜
16 誘電体(磁性体)プレート
17a〜17c 調整ロッド用の貫通穴
20 位置調整手段
21 滑車
22 ステッピングモータ
24 連結部
25 調整ロッド
27 ガイド板
27A ガイド穴
29 プレート調整トリマ
32 真空容器
32A ワイヤ貫通穴
33 コイルバネ
40 パッケージ
40A パッケージ上面
41a〜41j 調整ロッド用の貫通穴
52 グリス溜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板上に共振器パターンが形成されたフィルタと、
前記共振器パターンの上方に位置し、前記共振器パターンの伝送特性を調整する調整ロッドと、
前記フィルタ及び前記調整ロッドを収容するとともに、貫通穴が設けられた容器と、
前記調整ロッドを前記共振器パターンに対して垂直方向に移動させる位置調整手段と、
を備え、
前記調整ロッドと前記位置調整手段の間がワイヤで接続され、前記ワイヤが前記貫通穴を通過することを特徴とするチューナブルフィルタ装置。
【請求項2】
前記共振器パターンは、複数の共振器の配列を含み、
前記調整ロッドは、前記複数の共振器の各々の上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のチューナブルフィルタ装置。
【請求項3】
前記共振器パターンは、複数の共振器の配列を含み、
前記調整ロッドは、隣接する共振器と共振器の間の上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のチューナブルフィルタ装置。
【請求項4】
前記貫通穴の位置にグリス溜が形成され、前記ワイヤは、前記グリス溜の中を摺動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチューナブルフィルタ装置。
【請求項5】
前記ワイヤの径は、前記調整ロッドの径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のチューナブルフィルタ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−177349(P2009−177349A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11882(P2008−11882)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省、「超伝導フィルタ技術の研究開発」のうち、「チューナブル送信フィルタに関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】