説明

チューブ成形に適した樹脂組成物およびそれからなるチューブ

【課題】ペレット生産時の切り粉の発生が少なく、かつ、安定した押出成形性・賦形性を有し、押出成形体での、難燃性、長期高温エージング性、及び金属蒸着性にも優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良材、ホスフィン酸塩類、及び銅を含む樹脂組成物で、ポリアミドが、高粘度脂肪族ポリアミドと、低粘度ポリアミドを含む混合物であって、全ポリアミドに占める高粘度脂肪族ポリアミドの割合が55〜90質量%であり、ポリアミドの量に対する、他の成分の量比が、1.00〜1.20であり、銅の含有量が銅元素として50〜250質量ppmの範囲内である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット生産時の切り粉の発生が少なく、かつ、安定した押出成形性・賦形性を有し、押出成形体での、難燃性、長期高温エージング性、及び金属蒸着性にも優れる樹脂組成物に関する。
また本発明は、本発明の樹脂組成物を押出成形することにより得られる成形体及びその金属蒸着物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド及びポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物は、その優れた機械的特性、熱的特性、流動性等から、自動車用途を中心に幅広い用途に使用されている。
近年、自動車は、急速に電装化されており、そのため、自動車に使用され電装ケーブル類の本数が、飛躍的に増えており、これら電装ケーブル類を束ねる為の、チューブ材の需要が高まってきている。特にチューブとしてフレキシブルな構造を有する、コルゲートチューブと呼ばれる形状に賦形されたチューブ材が使用されている。
【0003】
また、これらチューブの多くは、これまでポリプロピレンといった、比較的低耐熱の材料が用いられてきていたが、電装ケーブル類の増加に伴い、これまで使用されてこなかった環境、例えば、エンジンルームの中でもより高温にさらされる部分等の環境下で使用される動きが高まっており、使用される樹脂の種類が、より高耐熱の材料へとシフトしてきている。
【0004】
また、上述のような動きとともに、近年、自動車部材においても難燃剤として、ハロゲン系難燃剤を使用せずに難燃化する要求が高まっている。
こういった市場の動きから、難燃性を有し、高い耐熱性を有し、更に、チューブ押出等の押出成形性に優れた樹脂の要求が高まってきている。
【0005】
ポリアミド/ポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物を非ハロゲン難燃剤を用いて難燃化させるための従来の技術としては、例えば、特許文献1,2及び3に、ホスフィン酸塩類を用いる技術の開示がある。
また、押出成形(シート成形)性に優れるポリアミド/ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物としては、特許文献4の技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/118698号
【特許文献2】特開2001−335699号公報
【特許文献3】国際公開第2007/55147号
【特許文献4】国際公開第2006/57254号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1〜3の技術により得られる樹脂組成物では、例えば、コルゲートチューブの押出成形において、押出したチューブをコルゲートチューブの形状に賦形する際に、コルゲーター間に樹脂が流れ込み、バリが発生したり、コルゲートチューブ状に賦形する際に、伸張粘度が不足することにより、チューブに穴が開くといった不都合があった。また、特許文献4の技術においては、難燃剤の添加を想定しておらず、近年のコルゲートチューブ要求される難燃性を満足していなかった。更に特許文献4の技術の樹脂に難燃性を付与するため難燃剤を添加した組成物は、樹脂としての可塑性が大きく低下することとなり、組成物ペレットの押出工程で多量の切り粉が発生する、押出成形工程においてチューブが縦割れを起こすといった現象が発生し、まともな押出成形ができないといった課題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、組成物ペレット生産時の切り粉の発生が少なく、押出成形工程において、安定した押出成形性・賦形性を有し、更には押出成形体として高い難燃性、長期高温エージング性、及び金属蒸着性にも優れる技術を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、特定粘度のポリアミドを特定比率で含むポリアミド混合物、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良材、ホスフィン酸塩類、及び銅化合物を少なくとも含み、連続相樹脂であるポリアミドと他の成分の質量比が特定範囲内の樹脂組成物が、上述した課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物、樹脂組成物を押出成形して得られるチューブ状成形体、樹脂組成物からなるコルゲートチューブ、更にはコルゲートチューブ表面に、アルミニウムをコートしてなる、表面装飾コルゲートチューブ等を提供する。
(1) (A)ポリアミド;(B)ポリフェニレンエーテル;(C)衝撃改良材;(D)ホスフィン酸塩類;及び(E)銅を少なくとも含んでなる樹脂組成物であって、
(A)ポリアミドが、(A1)粘度数[VN]が、200ml/g以上、300ml/g以下の脂肪族ポリアミド;及び、(A2)粘度数[VN]が100ml/g以上、200ml/g未満のポリアミドを含む混合物であり、
(A)ポリアミドを100質量%とした場合における、(A)成分中の(A1)成分の量が、55〜90質量%であり、
(A)成分の合計量に対する、(B)〜(D)成分の合計量の比が、1.00〜1.20の範囲であり、
(D)ホスフィン酸塩類が、下式(1)で表されるホスフィン酸塩、下式(2)で表されるジホスフィン酸塩及びこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種であり、
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル及び/又はアリールであり、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキレン、C〜C10−アリーレン、C〜C10−アルキルアリーレン又はC〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは1、2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。]
銅の含有量が、樹脂組成物全体を100質量%とした時に、銅元素として50〜250質量ppmである
ことを特徴とする樹脂組成物。
(2) (A1)成分の脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜35μmol/gである上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3) (A2)成分のポリアミドの末端アミノ基濃度が、20〜80μmol/gである上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4) (A1)成分の脂肪族ポリアミドがポリアミド6,6である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5) (D)成分のホスフィン酸塩類の量が、樹脂組成物全体を100質量%としたときに5〜20質量%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)(F)成分として、酸化防止剤を、樹脂組成物全体を100質量%とした際に、0.05〜2質量%含む上記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7) (A)ポリアミド及び(B)ポリフェニレンエーテルの量比が、両者の合計を100質量部としたときに(A)ポリアミドが40〜70質量部、(B)ポリフェニレンエーテルが60〜30質量部である上記(1)〜(6)のいずれかに1に記載の樹脂組成物。
(8) (C)成分の衝撃改良材が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物を含む衝撃改良材である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物を押出成形して得られるチューブ状成形体。
(10) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物からなるコルゲートチューブ。
(11) 上記(10)に記載のコルゲートチューブ表面に、アルミニウムをコートしてなる、表面装飾コルゲートチューブ
なお、本発明における「粘度数」とは、ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定された粘度数を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組成物ペレット生産時の切り粉の発生が少なく、押出成形工程において、安定した押出成形性・賦形性を有し、更には押出成形体として高い難燃性、長期高温エージング性、及び金属蒸着性にも優れる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して使用することができる。
【0015】
本発明で使用可能な(A)成分のポリアミドについて説明する。
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、特に限定されるものではない。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。
【0016】
本実施の形態において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0017】
本実施の形態において、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸等が挙げられる。
【0018】
本実施の形態において、ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、及びω−ラウロラクタム等が挙げられる。
本実施の形態において、アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。
【0019】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、及び/又はω−アミノカルボン酸を、単独又は二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類を使用することができる。また、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、及び/又はω−アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、その後、押出機等で高分子量化した共重合ポリアミドも好適に使用することができる。
【0020】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミド6C(シクロヘキサンジカルボン酸)、ポリアミド9C、ポリアミド12C、ポリアミド6C/66、ポリアミド12C/66、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン)・6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド6/12/6T、ポリアミド66/12/6T、ポリアミド6/12/6I、ポリアミド66/12/6I、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂を好適に使用することができる(例えば、ポリアミド6Iは、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重合ポリアミド樹脂を意味し、ポリアミド6/6Tは、ε−アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、及びテレフタル酸の共重合ポリアミド樹脂を意味する。)。また、これらのポリアミド樹脂を2種類以上用いて、押出機等でさらに共重合化したポリアミド類も使用することができる。
【0021】
本実施の形態において、好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミド6C、ポリアミド9C、ポリアミド12C、ポリアミド6C/66、ポリアミド12C/66、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/12/6T、ポリアミド66/12/6T、ポリアミド6/12/6I、ポリアミド66/12/6I、及びポリアミド9Tから選ばれる1種以上が挙げられ、これらの中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C/66、ポリアミド12C/66、及びポリアミド9Tから選ばれる1種以上がより好ましく、耐熱性の観点より、ポリアミド66、ポリアミド6C/66、ポリアミド12C/66、ポリアミド9Tから選ばれる1種以上が更に好ましく、PA66が最も好ましい。すべてのポリアミドをPA66とすることにより、熱時剛性を高め、高温下での変形を抑制できる。
【0022】
本実施の形態において、ポリアミドは粘度数(viscosity number:以下「VN」ともいう)の異なる2種以上の混合物である必要がある。具体的には、(A1)成分としての、粘度数[VN]が200ml/g以上、300ml/g以下の脂肪族ポリアミド(以下、高粘度脂肪族ポリアミドと呼ぶことがある)と、(A2)成分としての、粘度数[VN]が100ml/g以上、200ml/g未満の低粘度ポリアミド(以下、低粘度ポリアミドと呼ぶことがある。)とを含む混合物である。
【0023】
本実施の形態において、(A1)成分の高粘度脂肪族ポリアミドとしては、実質的に芳香環を含まないポリアミドである必要がある。ここでいう実質的とは、ポリアミド中に含まれる芳香族系モノマー(例えばテレフタル酸等)成分含有量が、5mol%以下であるということである。最も好ましい組み合わせとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、及びこれらの混合物である。(A1)成分として、高粘度芳香族ポリアミド等ではなく、高粘度脂肪族ポリアミドを用いることで、押出加工性の悪化を抑制できる。
【0024】
本実施の形態において、高粘度脂肪族ポリアミド成分の量は、ポリアミドすべてを100質量%とした場合に55〜90質量%である必要がある。より好ましい下限値は、60質量%である。また、より好ましい上限値は85質量%であり、更に好ましくは80質量%である。押出したチューブをコルゲートチューブの形状に賦形する際に、コルゲーター間に樹脂が流れ込み、バリが発生したり、コルゲートチューブ状に賦形する際に、伸張粘度が不足することにより、チューブに穴が開くといった不都合を未然に防ぐ為に、高粘度脂肪族ポリアミドの量は55質量%以上である必要があり、組成物ペレットの押出工程で多量の切り粉発生の抑制と、押出成形工程においてチューブが縦割れを起こすといった現象の予防の為には、90質量%以下であることが必要である。
本実施の形態においては、樹脂組成物中に高粘度脂肪族ポリアミド成分の量が上記の範囲内で含まれていれば、高粘度脂肪族ポリアミドの他に(A1)で定義される粘度を有する脂肪族以外のポリアミドを併用しても構わない。
【0025】
また、本実施の形態において、(A2)成分の低粘度ポリアミドとしては、いずれのポリアミドを用いても構わないが、実質的に芳香環を含まないポリアミドであることが好ましい。低粘度ポリアミドを脂肪族ポリアミドとすることにより、ポリアミド相の相溶性が向上し、得られる押出成形体の柔軟性が高まるという効果を得られる。もちろん、低分子ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドを併用することも本実施の形態の中に含まれる。
【0026】
また、(A2)成分である低粘度ポリアミドの量は、ポリアミドすべてを100質量%とした場合に10〜45質量%であることが好ましい。
【0027】
本実施の形態において、加工時の変色を抑制する観点から、(A1)成分の末端アミノ基濃度は、5〜35μmol/gの範囲内であることが好ましい。より好ましい下限値は10μmol/gであり、12μmol/gがさらに好ましく、15μmol/gがよりさらに好ましい。より好ましい上限値は、30μmol/gであり、25μmol/gがさらに好ましい。
【0028】
また、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶性を向上させ、得られる成形体の柔軟性を高めるために、(A2)成分の末端アミノ基濃度が、20〜80μmol/gの範囲内であることが好ましい。より好ましい下限値は25μmol/gであり、30μmol/gがさらに好ましい。より好ましい上限値は、70μmol/gであり、60μmol/gがさらに好ましく、50μmol/gがよりさらに好ましい。
【0029】
本実施の形態において、ポリアミドの末端カルボキシル基濃度には、特に制限はないが20μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上であることがより好ましく、150μmol/g以下であることが好ましく、100μmol/g以下であることがより好ましく、80μmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、特に限定されないが、機械的特性の観点で、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましく、0.7以下であることがよりさらに好ましい。また、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の比を0.1以上とすることにより、ペレットを安定的に得ることができる。
【0031】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等の末端調整剤を添加する方法が挙げられる。
【0032】
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、並びにこれらから任意に選ばれる複数の混合物等を挙げることができる。これらモノカルボン酸化合物としては、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び安息香酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。
【0033】
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらから任意に選ばれる複数の混合物等を挙げることができる。これらモノアミン化合物としては、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアニリンが好ましい。
【0034】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度は、H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましく、例えば、特開平7−228775号公報に開示された方法等に従うことができる。測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が好適に用いられる。H−NMRの積算回数は、充分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンすることが好ましい。
ポリアミドの末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度を測定する方法としては、特開2003−55549号公報に開示されているような滴定による測定方法に従って行うこともできる。
混在する添加剤及び潤滑剤等の影響をなくすためには、H−NMRにより定量することがより好ましい。
【0035】
本実施の形態において、用いるポリアミドの含水率は、500〜3000ppmの範囲であることが好ましく、500〜2000ppmの範囲であることがより好ましい。
ポリアミドの含水率を500ppm以上とすることにより、色調の良好なペレットを得ることができ、3000ppm以下とすることにより、樹脂の大幅な粘度低下を抑制することができる。
本実施の形態における含水率の測定方法としては、具体的には、ISO15512のB法に準拠した水分気化法である。
【0036】
本実施の形態において、(B)成分のポリフェニレンエーテルは、下記式(3)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体である。
【0037】
【化2】

(式中、Oは酸素原子を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、直鎖又は分岐のC1〜C7アルキル基、フェニル基、C1〜C7ハロアルキル基、C1〜C7アミノアルキル基、C1〜C7ヒドロカルビロキシ基、及びハロヒドロカルビロキシ基(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)よりなる群から選択される基を表す。)
【0038】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルの製造方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第3306874号明細書、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び特公昭63−152628号公報等に開示された製造方法が挙げられる。
【0039】
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体が挙げられ、例えば、2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体が挙げられる。
【0040】
ポリフェニレンエーテルとしては、商業的な入手容易性の観点で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物が好ましい。また、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率として、ポリフェニレンエーテル共重合体において10〜30質量%の2,3,6−トリメチルフェノールを構造単位として含む共重合体が好ましく、15〜25質量%であることがより好ましく、20〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:dl/g、0.5g/dl濃度のクロロホルム溶液、30℃測定)は、0.30〜0.55dl/gの範囲であることが好ましい。ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、0.40dl/g以上であることがより好ましく、0.45dl/g以上であることがさらに好ましく、0.50dl/g以上であることがよりさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテルの還元粘度が0.30dl/g以上であることにより、押出成形時の賦形性を高めることができ、0.55dl/g以下とすることにより、樹脂組成物生産時の樹脂温度を抑制できるため、ペレット等の変色を抑制することができる。
【0042】
本実施の形態において、還元粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテルを混合したものも、特に限定することなく、使用することができる。例えば、還元粘度0.40dl/g程度のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g程度のポリフェニレンエーテルとの混合物や、還元粘度0.08〜0.12dl/g程度の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g程度のポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。
還元粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテルを混合したものを用いる場合に、混合されたポリフェニレンエーテルの還元粘度は、0.30〜0.55dl/gの範囲であることが好ましい。
【0043】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルとしては、変性剤で変性されたものであってもよく、変性剤としては、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、りんご酸、クエン酸、フマル酸等の飽和又は不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル化合物等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルとして変性されたポリフェニレンエーテルを用いる場合の、変性剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して1〜5質量部である。変性されたポリフェニレンエーテル中の未反応変性剤の量を抑制するためには、変性剤の量は5質量部以下であることが好ましく、変性率を充分に高める為には変性剤の量は1質量部以上であることが好ましい。
【0044】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、50質量部までの量であれば、スチレン系樹脂を配合しても構わない。ここでいうスチレン系樹脂とは、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(一般にハイインパクトポリスチレンと称されているもの)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレンとラジカル共重合可能なビニル単量体との共重合体等が挙げられる。
【0045】
スチレンとラジカル共重合可能なビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸エチルヘキシル等のビニルカルボン酸及びそのエステル、無水マレイン酸及びN−フェニルマレイミド等の不飽和ジカルボン酸無水物及びその誘導体、並びにブタジエン及びイソプレン等のジエン化合物等が挙げられ、2種以上を組み合わせて共重合することも可能である。
【0046】
スチレン系樹脂としては、商業的な入手容易性の観点で、好ましくは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
本実施の形態における、(A)ポリアミド及び(B)ポリフェニレンエーテルの量比は、(A)及び(B)の両者の合計を100質量%としたときに(A)ポリアミドが40〜70質量%、(B)ポリフェニレンエーテルが60〜30質量%であることが好ましい。より好ましい範囲としては、(A)ポリアミドが40〜60質量%、(B)ポリフェニレンエーテルが60〜40質量%。さらに好ましい範囲としては、(A)ポリアミドが45〜55質量%、(B)ポリフェニレンエーテルが55〜45質量%である。
【0048】
コルゲートチューブを生産する際のバリの発生の抑制及び、コルゲートチューブ状に賦形する際に、チューブに穴が開くことの抑制、ペレットの押出工程で切り粉発生の抑制、及びチューブの縦割れ抑制のためには、(A)ポリアミド及び(B)ポリフェニレンエーテルの量比は、(A)及び(B)の両者の合計を100質量%としたときに(A)ポリアミドが40〜70質量%、(B)ポリフェニレンエーテルが60〜30質量%とすることが好ましい。
【0049】
本実施の形態の樹脂組成物は(C)成分として衝撃改良剤を含む。ここで用いることができる衝撃改良剤に関しては特に限定はされないが、好ましく使用できるものとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体と略記する場合がある。)、及びエチレン/α−オレフィン共重合体の中から目的に応じて選ばれる少なくとも1種である。より好ましくは、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物である。
【0050】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
【0051】
本実施の形態において、ブロック共重合体中には、重合体ブロックが共重合体ブロックであってもよく、ランダム共重合部分の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。
該共重合体ブロックには、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよく、さらに、共重合体ブロックには、芳香族ビニル化合物含有量の異なる部分が複数個共存していてもよい。この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0052】
この芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体としては、一般に下記構造を有するブロック共重合体が例示される。
(A−B)、A−(B−A)−B、B−(A−B)n+1、[(A−B)k]m+1−Z、[(A−B)−A]m+1−Z、[(B−A)m+1−Z、[(B−A)−B]m+1−Z
(上式において、Zはカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5である。)
【0053】
これらの中でも、該ブロック共重合体の好ましい結合形式は、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型の中から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、A−B−A型、A−B−A−B型であることがより好ましく、A−B−A型であることがさらに好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0054】
本実施の形態において、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体に用いる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上が選択でき、スチレンが好ましい。そして、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体中に占める芳香族ビニル化合物の割合は通常1〜70質量%の中から好適に選ぶことが可能であり、好ましくは5〜55質量%であり、より好ましくは10〜55質量%である。
【0055】
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ブロック共重合体に用いる共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0056】
本実施の形態において、ブロック共重合体は水素添加されたブロック共重合体であってもよい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族ニ重結合の量(即ち、水素添加率)を、0を超えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0057】
具体的な水素添加方法の例としては、炭化水素溶媒中で、水素添加触媒及び水素ガスを添加し、水素添加反応を行うことにより、ブロック共重合体中に存在する共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を低減することにより、水素添加されたブロック共重合体を得ることができる。水素添加反応は、ブロック共重合体に存在する共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を低減化できるものであれば、その製法において、特に限定されるものではない。
【0058】
本実施の形態において、これらブロック共重合体をさらに官能基(例えば、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)を有する不飽和化合物と反応させて得られる官能基を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及びその水素添加物である官能基を有する水添ブロック共重合体等も使用することが可能である。
【0059】
本実施の形態においては、ブロック共重合体は、水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
本実施の形態においては、国際公開第02/094936号パンフレットに記載されているような、全部又は一部が変性されたブロック共重合体や、オイルがあらかじめ混合されたブロック共重合体も好適に使用することができる。
【0060】
本実施の形態において、エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が好ましい。
エチレン/α−オレフィン系共重合体に占めるα−オレフィンの割合は、好ましくは1〜30モル%であり、より好ましくは2〜25モル%であり、さらに好ましくは3〜20モル%である。
【0061】
本実施の形態において、さらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1’−プロペニル)−2−ノルボルネン等の非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
【0062】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、一般に、これらエチレン/α−オレフィン共重合体をさらに官能基(例えば、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)を有する不飽和化合物と反応させて得られる官能基を有するエチレン/α−オレフィン共重合体や、エチレンと官能基含有(例えば、エポキシ基、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)モノマーとの共重合体及びエチレン/α−オレフィン/官能基含有モノマーの共重合体等としても使用できる。
【0063】
本実施の形態において、衝撃改良剤の好ましい含有量は、ポリフェニレンエーテルとポリアミドの合計100質量部に対して、1〜15質量部であり、より好ましくは3〜12質量部である。
含有量が1質量部以上であれば、得られる成形体の靱性が向上し、含有量が15質量部以下において、機械的強度及び耐熱性に優れる。
【0064】
本実施の形態において、(D)成分としてのホスフィン酸塩類を含む。
ホスフィン酸塩類としては、下記式(1)又は式(2)で表されるホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩及び/又は、これらの縮合物(以下、単に「ホスフィン酸塩類」と略記する場合がある。)である。
【0065】
【化3】

【0066】
[式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル及び/又はアリールであり、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキレン、C〜C10−アリーレン、C〜C10−アルキルアリーレン又はC〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは1、2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。]
【0067】
本実施の形態におけるホスフィン酸塩類は、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平8−73720号公報に開示されているような、公知の方法によって製造することができる。例えば、ホスフィン酸塩は水溶液中においてホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物と反応させることにより製造することができるが、この方法に限定されるものではなく、ゾル−ゲル法等によって製造することもできる。ホスフィン酸塩類は、一般にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
【0068】
本実施の形態において、ホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0069】
金属成分としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上が挙げられ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0070】
ホスフィン酸塩類としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
【0071】
本実施の形態において、ホスフィン酸塩類としては、難燃性、モールドデポジットの抑制の観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましく、これらの中でも、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0072】
本実施の形態において、樹脂組成物を得られる成形体の機械的強度、成形品外観の観点から、ホスフィン酸塩類の平均粒子径(d50%)は、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、ホスフィン酸塩類の平均粒子径は、40μm以下であることが好ましく、20μmであることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることがよりさらに好ましい。
【0073】
本実施の形態において、ホスフィン酸塩類の数平均粒子径が0.5μm以上であることにより、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい樹脂を得ることができる。また、ホスフィン酸塩類の平均粒子径が40μm以下であることにより、成形体の機械的強度が発現し易くなり、かつ成形体の表面良外観が向上するといった効果が得られる。
【0074】
これらホスフィン酸塩類の粒子径分布として、粒子径の小さい方から25%の粒子径(d25%)と75%の粒子径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0を超え5.0以下であることが好ましい。1.2〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることがさらに好ましい。d75%/d25%の値が1.0を超え5.0以下であるホスフィン酸塩類を使用することで、成形体の面衝撃強度を著しく向上させることが可能となる。
【0075】
本実施の形態において、平均粒子径(d50%)及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径に基づいている。また、ホスフィン酸塩類の分散媒として3%イソプロパノール水溶液を用いて測定される値である。具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%〜70%)になるように入れて測定することにより求めることができる。なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
本実施の形態におけるホスフィン酸塩類には、本実施の形態の効果を損なわなければ、未反応物あるいは副生成物が残存していても構わない。
【0076】
本実施の形態においては、(D)成分のホスフィン酸塩類の量の好ましい量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに5〜20質量%の範囲内である。より好ましい下限は、8質量%であり、さらに好ましくは10質量%である。また、より好ましい上限値は18質量%であり、さらに好ましくは15質量%である。
難燃剤含有量の下限を5質量%とすることにより、本実施の形態により得られるチューブ状成形体の難燃性を高めることが可能となる。また、上限を20質量%とすることにより、チューブ成形体の押出加工性、及び得られるチュ−ブ状成形体の柔軟性を高めることができる。
【0077】
また、本実施の形態において、上記ホスフィン酸塩類を用いる場合には、周期律表第2族元素、アルミニウムから選ばれる1種以上の元素の水酸化物(以下、金属水酸化物という場合がある。)及び、周期律表第2族元素、アルミニウムから選ばれる1種以上の元素の酸化物(以下、金属酸化物という場合がある)から選ばれる1種以上の金属類を含ませることができる。
【0078】
長期間押出加工した際のスクリュー、シリンダー、ダイスの金属腐食性を抑制する観点より、金属水酸化物及び金属酸化物から選ばれる1種以上の金属類を配合する場合の好ましい配合量は、ホスフィン酸金属塩100質量部に対し、0.5〜20質量部の範囲内である。下限として、より好ましくは1質量部であり、さらに好ましくは3質量部であり、よりさらに好ましくは5質量部である。上限として、より好ましくは15質量部であり、さらに好ましくは12質量部であり、よりさらにこのましくは10質量部である。
【0079】
これら金属水酸化物及び金属酸化物から選ばれる1種以上の金属類の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウムから選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、水酸化マグネウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムから選ばれる1種以上が好ましく、水酸化マグネウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムからえらばれる1種以上がより好ましく、水酸化カルシウムがよりさらに好ましい。
【0080】
本実施の形態においては、(A)成分の量に対する、(B)〜(D)成分の合計量の比が、1.00〜1.20の範囲である必要がある。より好ましい上限は、1.18であり、さらに好ましくは1.15である。
【0081】
押出チューブの賦形時のバリの抑制、チューブの穴開きの防止の為には、(A)成分の量に対する、(B)〜(D)成分の合計量の比を、1.00以上とする必要がある。また、組成物ペレットの押出工程で多量の切り粉発生の抑制や、チューブの縦割れの抑制のためには、1.20以下とする必要がある。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリアミドが連続相を形成し、(B)ポリフェニレンエーテル及び(D)ホスフィン酸塩が連続相中にそれぞれ独立して分散して分散相を形成し、(C)衝撃改良剤が、(B)ポリフェニレンエーテルの分散相中に存在するような分散形態を示す。
【0083】
本実施の形態においては、(E)成分として、銅を含む必要がある。組成物中に存在させる銅の存在形態としては、金属銅、銅イオン、銅化合物のいずれの形態でも構わないが、銅イオン又は銅化合物の形態がより好ましい。また、銅は、(A)ポリアミド中に存在することが好ましい。
また、本実施の形態では、銅は下記の式(6)で表される化合物として添加されることが望ましい。
Cu (6)
(上式中、Cuは銅を表し、Xは、OH、CHCOO、SO、CN、酸素又はハロゲンを表す。aは、1以上の整数であり、bは0〜7の整数を表す。)
【0084】
具体例としては、金属銅、酸化銅、酢酸銅、硫酸銅、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅等が挙げられ、これらは混合物であっても良い。より好ましくは、酢酸銅、ヨウ化銅、塩化銅から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、ヨウ化銅、塩化銅、もしくはこれらの混合物である。
【0085】
本実施の形態において、銅の量としては、樹脂組成物全体を100質量%とした時に、銅元素として50〜250質量ppmの範囲内で含むことが必要である。より好ましい下限は70質量ppmであり、さらに好ましくは100質量ppmである。また、より好ましい上限は、200質量ppmであり、さらに好ましくは150質量ppmである。銅元素量として50質量ppmを下回ると、高温条件下での耐熱エージング特性が大幅に低下する。また、250質量ppmを超えると、押出機の金属部分に銅の析出等が起こる可能性が高くなる。
【0086】
本実施の形態において、銅は、分散剤と銅または銅化合物をあらかじめ混合させたマスターバッチ(以下、MBともいう)の形態や、ポリアミド中に銅または銅化合物をあらかじめ存在させたマスターバッチの形態で添加することが、より望ましい。マスターバッチで添加することにより、銅の組成物中の分散性が大幅に改良され、耐熱エージング性が大幅に向上する。
本実施の形態において、分散剤と銅または銅化合物をあらかじめ混合させたマスターバッチの形態を取る場合の分散剤としては、例えば脂肪酸の金属塩、エチレンビスアミド化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0087】
ここでいう脂肪酸の金属塩とは下記の式(7)で表されるものであり、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、アラギン酸、ベヘニン酸、モンタン酸などの高級脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、ステアリン酸カルシウムが、組成物にした際のへの分散性に優れ、入手が容易なため好ましい。
CH(CHCOOY (7)
(式中、Yは周期律表第I〜III族の金属原子を示し、nは9〜30の整数を示す。)
【0088】
さらに、エチレンビスアミド化合物は下記の式(8)で表されるものであり、例えば、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミドなどを挙げることができる。これらの中でも、エチレンビスステアリルアミドが、組成物にした際のへの分散性に優れ、入手が容易なため好ましい。
CH(CHCONH(CHNHCO(CHCH (8)
(式中、m及びnは9〜30の整数を示す。)
【0089】
上述のマスターバッチは取り扱い性を高める上で、混合した粉体状の形態よりも、ペレット状に圧縮した形態であることが好ましい。ペレット状に圧縮する場合における好ましい分散剤としては、長期保存時のペレットの崩壊性が低いこと、及び組成物への銅及び銅化合物の分散性に優れることより、エチレンビスステアリルアミドが挙げられる。
【0090】
圧縮されたペレット状に成形されたマスターバッチの最適な構成としては、ヨウ化銅、ヨウ化カリウム及び、エチレンビスステアリルアミドから構成されるがマスターバッチが挙げられる。このマスターバッチペレット中に占めるそれぞれの好ましい割合は、ヨウ化銅が、10〜30質量%であり、ヨウ化カリウムが、50〜85質量%であり、エチレンビスステアリルアミドが、5〜20質量%の割合である。ペレットへの圧縮性を高める為には、エチレンビスステアリルアミドの含有量を、5〜20質量%の範囲内に制御することが望ましい。
【0091】
本実施の形態において、ポリアミド中に銅または銅化合物をあらかじめ存在させたマスターバッチの形態を取る場合の、好ましい方法としては、例えばポリアミド原料と銅及びまたは銅化合物とを配合し、次いでポリアミドの重合を行う方法、ポリアミドの重合工程のいずれかの段階で銅及びまたは銅化合物を配合する方法、銅及びまたは銅化合物を溶融混練法によりポリアミドに配合する方法、銅及びまたは銅化合物をポリアミドペレット表面に付着させる方法等が挙げられる。
中でも好ましい方法はポリアミド原料と銅及びまたは銅化合物とを配合し、次いでポリアミドの重合を行う方法、銅及びまたは銅化合物を溶融混練法によりポリアミドに配合する方法であり、最も好ましくはポリアミド原料と銅及びまたは銅化合物とを配合し、次いでポリアミドの重合を行う方法である。
【0092】
ポリアミドとして、ポリアミド原料と銅及びまたは銅化合物とを配合し、次いでポリアミドの重合を行う方法により得られたポリアミド/銅マスターバッチを使用する場合の、ポリアミド中に占める銅及びまたは銅化合物の好ましい割合は、10ppm以上150ppm以下であることが好ましい。また、銅及びまたは銅化合物を溶融混練法によりポリアミドに配合する方法により得られたポリアミドを使用する場合の、ポリアミド中に占める銅及びまたは銅化合物の好ましい割合は、100質量ppm以上1500質量ppm以下であることが好ましい。
【0093】
本実施の形態においては、(F)成分として酸化防止剤を含ませても構わない。
ここでいう酸化防止剤としては、立体障害フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤が挙げられる。これらの中で、立体障害フェノール系酸化防止剤がより好ましい。立体障害フェノール系酸化防止剤を具体的に示すと、例えばチバスペシャルティーケミカルズから入手可能なイルガノックス(登録商標)1098又はイルガノックス(登録商標)1076等が挙げられる。
【0094】
また、本実施の形態における酸化防止剤は、ポリフェニレンエーテル及び衝撃改良剤からなる分散相中に意図的に存在させることが好ましい。ここでいう意図的に存在させるとは、実際に選択的に存在しているかどうかではなく、例えばポリフェニレンエーテル及び/または衝撃改良剤とあらかじめ乾式混合させたり、あらかじめ溶融混合させるなどして、分散相中に意図的に添加することを指す。
【0095】
本実施の形態における酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物全体を100質量%とした際に、0.05〜2質量%の範囲内である必要がある。より好ましい下限量は0.1質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%であり、よりさらに好ましくは、0.5質量%である。より好ましい上限量は、1.8質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%である。熱エージング後のチューブの伸びの低下を抑制する為には、酸化防止剤の含有量の下限は、0.05質量%であることが必要であり、耐熱性の低下を抑制するためには上限は2質量%とする必要がある。
【0096】
本実施の形態においては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶性を向上させるための相溶化剤を用いても構わない。相溶化剤の種類としては、国際公開第01/81473号に記載されているものは、すべて使用可能である。
これらの相溶化剤の中でも、マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びこれらの混合物から選ばれる1種以上が好ましく挙げることができる。特に好ましいのがマレイン酸及び/又はその無水物である。特に相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択することで、樹脂組成物のウェルド強度といった付加的な特性を大幅に向上させることが可能となる。
【0097】
本実施の形態における、相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、0.01〜8質量部の範囲である。より好ましい下限量は0.05質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部である。また、より好ましい上限量は5質量部であり、さらに好ましくは3質量部である。樹脂組成物としての耐衝撃性及び、押出成形体としての柔軟性を低下させないためには、相溶化剤の量は、0.01以上であることが望ましく、射出成形を行った際の金型内流動性(スパイラルフロー距離)の悪化を抑制する為には、8質量部を超えないことが好ましい。
【0098】
本実施の形態においては、上記した成分のほかに、必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
本発明で使用できる付加的成分としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維など、)、無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、及び三酸化アンチモン等の難燃助剤、各種過酸化物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
これらの成分は、ポリフェニレンエーテルおよびポリアミドの合計量100質量部に対して、合計で50質量部を越えない範囲で添加しても構わない。
【0099】
本実施の形態における樹脂組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が最も好ましい。
【0100】
具体的な樹脂組成物の製造方法の代表的な例としては、以下が挙げられる。具体例の例示であって、種々の製法が取りうる事は、当業者であれば周知のことである。
1.上流側に1カ所及び下流側に1カ所の供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、必要に応じて相溶化剤、スチレン系樹脂、酸化防止剤等を供給し、溶融混練した後、下流側供給口よりポリアミド、ホスフィン酸塩類、銅を添加した後、溶融混練する方法。
2.上流側に1カ所及び下流側に2カ所の供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、必要に応じて相溶化剤、スチレン系樹脂、酸化防止剤等を供給し、溶融混練した後、下流側にある第一供給口よりポリアミド、銅を添加した後、最も下流側にある下流側第二供給口より、ホスフィン酸塩類を添加して溶融混練する方法。
3.上流側に1カ所及び下流側に2カ所の供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、必要に応じて相溶化剤、スチレン系樹脂、酸化防止剤等を供給し、溶融混練した後、下流側にある第一供給口より低分子ポリアミド、銅を添加した後、最も下流側にある下流側第二供給口より、高分子脂肪族ポリアミド、ホスフィン酸塩類、及び必要により銅を添加して溶融混練する方法。
これらの製法の中でも、3.の製法が、加工時の樹脂温度を大幅に低減させる事ができ望ましい。
【0101】
押出機における上述の下流側供給口の好ましい位置は、第一の下流側供給口が押出機の上流側供給口の位置を起点とし、シリンダー長さを100とした際に、約30〜約70の範囲内の位置である。
また、第二の下流側供給口を設置する必要があれば、約40〜約90の範囲内の位置(第一の下流側供給口よりは下流側に位置する)に存在させることが望ましい。具体的には例えばL/Dが40の押出機の場合、好ましい第一の下流側供給口の位置は、L/Dが約12〜約28の位置であり、第二の下流側供給口の位置はL/Dが約16〜約36の位置である。
【0102】
溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常約240〜約360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。好ましくは約260℃〜約320℃の範囲内であり、特に下流側供給口までを約280℃〜約320℃とし、下流側供給口以降を約260〜約290℃の範囲内とする事が望ましい。
【0103】
本実施の形態において得られる樹脂組成物は、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、一般に用いられている種々の成形方法や成形装置が使用できる。何ら限定されるものではないが、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって成形品を製造することができ、またそれらの成形技術の複合によっても成形を行うことができる。さらに、各種熱可塑性樹脂又はその組成物、熱硬化性樹脂、紙、金属、木材、セラミックスなどの各種の材料との複合成形体とすることもできる。これらの中では、特に押出成形に適する。
【0104】
また、本実施の形態において得られる樹脂組成物は、適度な粘度と、伸張粘度を有することから、押出成形の中でも、特にチューブ成形に適しており、その中でも、チューブ成形後にコルゲーターで賦形するコルゲートチューブ成形に非常に適している。
さらに、本実施の形態において得られる樹脂組成物から得られる成形体は、金属蒸着後においても、高い柔軟性を示す為、金属蒸着に非常に適する材料である。ここでいう金属蒸着の金属種としては、入手の容易性とコストが低いことから、アルミニウムが好ましい。
【0105】
本実施の形態において得られる樹脂組成物は、多くの優れた特性を有するため、上述したような成形プロセスを経て、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、シート、フイルム、繊維、その他の任意の形状及び用途の各種成形品の製造に有効に使用することができる。
【0106】
具体例としては、例えばワイヤーハーネスを集束するコルゲートチューブ、リレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット、液晶プロジェクター等のランプ廻り部品、SMTコネクター等の電気・電子部品、各種コンピューター及びその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のバンパー・フェンダー・ドアーパネル・ランプ廻り部品、各種モール・エンブレム・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ホイール,キャップ・ルーフレール及びそのステイ材・スポイラー等に代表される外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品、自動車アンダーフード部品、自動車エンジン周り部品等に好適に使用できる。特にワイヤーハーネスを集束するコルゲートチューブに好ましく適用可能である。
【実施例】
【0107】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0108】
[使用した樹脂]
(A1)成分 高粘度脂肪族ポリアミド
VN=215ml/g、末端アミノ基濃度[NH]=18μmol/gのポリアミド6(以下、PA6−1)
VN=232ml/g、[NH]=20μmol/gのポリアミド66(以下、PA66−1)
(A2)成分 低粘度ポリアミド
VN=137ml/g、[NH]=44μmol/gのポリアミド6(以下、PA6−2)
VN=115ml/g、[NH]=52μmol/gのポリアミド6(以下、PA6−3)
VN=138ml/g、[NH]=32μmol/gのポリアミド66(以下、PA66−2)
【0109】
(B)成分 ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記[NH])
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル):還元粘度ηsp/c:0.51dl/g
(C)成分 衝撃改良剤(以下、SEBSと略記)
スチレン−水素添加されたポリブタジエン−スチレン共重合体
旭化成ケミカルズより入手した タフテック H1387
(D)ホスフィン酸塩(以下、Exolitと略記)
クラリアント社より入手したエクソリットOP930
(E)銅化合物(ヨウ化銅:以下、CuIと略記)和光純薬製の試薬
(F)立体障害フェノール系酸化防止剤(以下、Irg1098と略記)
チバスペシャルティーケミカルズより入手したイルガノックス1098
【0110】
その他の成分
相溶化剤(無水マレイン酸:以下MAHと略記)
日本油脂より入手したクリスタルMAN−AB
分散剤(エチレンビスステアリルアミド:以下、EBSと略記)
花王より入手したカオーワックスEB−FF
ヨウ化カリウム(以下、KIと略記)和光純薬製の試薬
【0111】
[評価項目]
(メルトボリュームレート(MVR))
得られたペレットを、ISO1133に準拠し、280℃、5kg荷重条件下で、メルトボリュームレートを測定した。
(シャルピー衝撃強度)
多目的試験片を用いて、ISO179に準拠して、温度:23℃、湿度50%条件下での、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
(引張破壊呼びひずみ)
多目的試験片を用いて、ISO527に準拠し、引張破壊呼びひずみを測定した。
(荷重たわみ温度(HDT))
多目的試験片を用いて、ISO75−2に準拠し、0.45MPaでの荷重たわみ温度を測定した。
【0112】
(切り粉の発生量)
樹脂組成物ペレットを作成時に、ペレタイザーから出てきたペレットを約100g取り、これを精秤した。この値をW1とした。次いで、この精秤したペレタイザーから出てきたペレットを20メッシュの金網状に広げて、よく振とうし、ペレットと切り粉を分別した後、金網上に残ったペレットを精秤した。この値をW2とした。これら、W1とW2より下式を用いて、切り粉の割合(W%)を算出した。
W%=(1−W2/W1)×100
【0113】
(難燃性)
ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形し、得られた試験片を用いて、ISO4589に従い酸素指数を測定した。なお、このときの評価基準として、4秒以内に消炎する酸素の最小濃度を酸素指数とした。
【0114】
(高温エージング性)
ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形し、これらを180℃に設定した熱風オーブン中に入れ、20、40、80、160、320時間、熱処理をほどこした。取り出した試験片を、ISO527に準拠して引張試験を実施した。各々の時間における引張破壊ひずみ、または引張破壊呼びひずみをプロットし、ひずみ保持率が50%になる時間を導き出した。
【0115】
(チューブ押出性)
単層コルゲートダイを設置したGM−40単軸押出機(ジー・エム・エンジニアリング社製)を用いて、押出成形性を実施した。この際に、押出機のコルゲートダイからのチューブ押出性を以下の評価基準で判定した。
良好:コルゲートダイから、チューブの形状で押し出されてくる。
不良:チューブに部分的にスジ状の後がついている。
割れ:チューブが分割してしまい、形状保持しない。
【0116】
(チューブ賦形性)
単層コルゲートダイを設置したGM−40単軸押出機のダイの下流に、横型コルゲーター、引き取り機、及び切断スタッカを、それぞれ設置して、コルゲートチューブの押出成形を実施した。この際に、押出機のコルゲートダイからのチューブ賦形性を以下の評価基準で判定した。
良好:良好なコルゲートチューブ形状に賦形できる。
不良:バリが発生するもしくは、チューブの厚みに偏りがある
穴開き:チューブに穴が開き、充分に膨らまない。
【0117】
[例1〜5]
押出機上流部に1カ所、中流部と下流部にそれぞれ1カ所の供給口を有する二軸押出機[ZSK−40MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流部供給口から中流部供給口の手前までを320℃、中流部供給口からダイまでを280℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量120kg/hの条件で、表1に記載の割合で、樹脂組成物を作成した。その際に、切り粉の発生量を測定した。
得られたペレットを、IS80EPN射出成形機(東芝機械)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度
100℃の条件で、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形した。
得られた試験片を用いて、シャルピー衝撃強度、HDT、難燃性、引張破壊呼びひずみ、及び長期高温エージング性を測定した。
また、得られたペレットを用いて、MVR、チューブ押出性とチューブ賦形性を評価した。
これら得られた結果は、表1に併記した。
【0118】
【表1】

【0119】
[例6〜12]
表2に記載の割合に組成を変更した以外は、すべて例1と同様に実施し、評価した。結果は、表2に示した。
なお、例12に関しては、Cu−MBとして、CuI/KI/EBSが20/70/10の組成のものをコンパクターを用いて、ペレット状に成型したものを用いた。
【0120】
【表2】

【0121】
例6〜10は、ポリアミド中の高粘度脂肪族ポリアミドの量比を変化させていったものであるが、本発明のものは、優れたチューブ押出性と賦形性を有している事が判る。また、例8と例11を対比すると、両者は、(A)成分の合計量に対する、(B)〜(D)成分の合計量の比に違いにあるが、この違いによりチューブ賦形性に大きな違いが生じることが判る。さらに、例8と例12の対比においては、銅化合物をマスターバッチとして添加することにより、高温エージング性が飛躍的に向上することがわかる。
【0122】
[例13〜15]
表3に記載の割合に組成を変更した以外は、すべて例12と同様に実施し、評価した。結果は、表3に示した。また、例13〜15のコルゲートチューブに対して、アルミ真空蒸着装置を用いて、アルミ蒸着を実施した。いずれのサンプルにおいても、良好なアルミ蒸着性を示した。
【0123】
【表3】

【0124】
例13と例15の対比において、意図的に分散相に立体障害フェノール系酸化防止剤を添加することにより、高温エージング性が飛躍的に向上することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド;(B)ポリフェニレンエーテル;(C)衝撃改良材;(D)ホスフィン酸塩類;及び(E)銅を少なくとも含んでなる樹脂組成物であって、
(A)ポリアミドが、(A1)粘度数が、200ml/g以上、300ml/g以下の脂肪族ポリアミド;及び、(A2)粘度数が100ml/g以上、200ml/g未満のポリアミドを含む混合物であり、
(A)ポリアミドを100質量%とした場合における、(A)成分中の(A1)成分の量が、55〜90質量%であり、
(A)成分の合計量に対する、(B)〜(D)成分の合計量の比が、1.00〜1.20の範囲であり、
(D)ホスフィン酸塩類が、下式(1)で表されるホスフィン酸塩、下式(2)で表されるジホスフィン酸塩及びこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種であり、
【化1】

[式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル及び/又はアリールであり、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキレン、C〜C10−アリーレン、C〜C10−アルキルアリーレン又はC〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは1、2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。]
銅の含有量が、樹脂組成物全体を100質量%とした時に、銅元素として50〜250質量ppmである
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(A1)成分の脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜35μmol/gであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A2)成分のポリアミドの末端アミノ基濃度が、20〜80μmol/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A1)成分の脂肪族ポリアミドが、ポリアミド6,6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分のホスフィン酸塩類の量が、樹脂組成物全体を100質量%としたときに5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(F)成分として、酸化防止剤を、樹脂組成物全体を100質量%とした際に、0.05〜2質量%含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)ポリアミド及び(B)ポリフェニレンエーテルの量比が、両者の合計を100質量部としたときに(A)ポリアミドが40〜70質量部、(B)ポリフェニレンエーテルが60〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の衝撃改良材が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物を含む衝撃改良材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物を押出成形して得られるチューブ状成形体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物からなることを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項11】
請求項(10)に記載のコルゲートチューブ表面に、アルミニウムをコートしてなることを特徴とする表面装飾コルゲートチューブ

【公開番号】特開2009−263460(P2009−263460A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113321(P2008−113321)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】