説明

チルトステージ

【課題】簡単な構造で対象物の三次元的な傾斜角度調整が可能となるチルトステージを提供する。
【解決手段】第1のリニアアクチュエータ4によって第1の作動片8が鉛直方向へ移動し、チルトテーブル2は、滑動面2bと支持面3bとの間の空気膜を介してY軸周りに傾動することとなる。また、第2のリニアアクチュエータ6によって第2の作動片9が鉛直方向へ移動し、チルトテーブル2は、滑動面2bと支持面3bとの間の空気膜を介してX軸周りに傾動することとなる。そして、第1の作動片8の上下動と第2の作動片9の上下動とを組み合わせることによって、水平面に対して様々な傾斜角度で傾動させることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、半導体ウェハのボンディングのための傾斜角度調整に用いられるチルトステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような分野の技術として、特開平9−64094号公報がある。この公報に記載されたチルトステージでは、平板状のプレート(チルトテーブル)の下面の中央部に固定された略半球面状のステージ(チルトテーブル)と、略半球面を滑動可能に係止する凹部(支持面)を有する受け台(支持テーブル)と、受け台を固定するための矩形状のベースプレートとが設けられている。ベースプレートの各辺にはモータ取り付けブラケットがそれぞれ設けられ、各ブラケットに回転アクチュエータをなすモータとスプリングポストが取り付けられている。各モータの回転軸にはそれぞれステージの傾斜調整のためのカムが設けられており、それらのカムがボールを介してプレート下面の各縁部にそれぞれ当接される。また、プレートの各側面には、スプリングポストが取り付けられ、このスプリングポストとブラケットに設けられたスプリングポストとの間にスプリングがそれぞれ張架されることによって、カムがボールに押し付けられた状態で当接するようになっている。このような構成により、各モータが独立して回転すると、カムの回転に合わせてプレートの各辺が上下方向に独立して傾斜されることとなる。これによって、チルトステージは、プレートの上面に設けられた載置ステージ及び載置された半導体チップ(対象物)を自由自在に傾斜させ、傾斜角度調整を行っている。
【特許文献1】特開平9−64094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、回転アクチュエータをなすモータを用いて傾斜角度調整を行っている上記ステージにあっては、その回転運動をカム機構を用いて上下方向の直線運動に変換しなくてはならないため、構造を複雑にしなくては対象物(半導体チップ)を三次元的に傾斜角度調整することができないという問題が生じていた。
【0004】
本発明は、簡単な構造で対象物の三次元的な傾斜角度調整が可能となるチルトステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るチルトステージは、載置された対象物の傾斜角度調整を行うチルトステージにおいて、対象物を載置する載置面を上面側に有し、球面状の滑動面を下面側に有するチルトテーブルと、滑動面を支持する球面状の支持面を有する支持テーブルと、一端がチルトテーブルに固定される第1の作動片と、一端がチルトテーブルに固定されると共に、鉛直方向に延在する滑動面の中心軸線周りに、第1の作動片に対して0°と180°を除く角度をなす位置に配置される第2の作動片と、第1及び第2の作動片をそれぞれ鉛直方向に移動させる第1及び第2のアクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0006】
このチルトステージでは、チルトテーブルに第1の作動片と第2の作動片が、それぞれ中心軸線周りに0°及び180°を除く角度をなす位置に配置されており、対応するアクチュエータによって各々が独立して鉛直方向に移動されることができる。よって、チルトテーブルは、アクチュエータの直線的な動作により、それぞれの作動片を直線駆動させるので、水平面に対して様々な傾斜角度で傾斜することとなり、作動片とアクチュエータとの組合せにより、簡単な構造で、対象物の三次元的な傾斜角度調整を実現させている。
【0007】
第2の作動片を配置する位置としては、中心軸線周りに、第1の作動片に対して直角をなす位置が好ましい。
【0008】
また、中心軸線周りに回転可能に支持されている支持テーブルに一端が固定された第3の作動片と、第3の作動片を水平方向に移動させる第3のアクチュエータと、を更に備えることが好ましい。第3の作動片が第3のアクチュエータによって水平方向に移動されると、チルトテーブルを支持する支持テーブルが中心軸周りに回動し、これに伴って、チルトテーブルも中心軸周りに回動する。これにより、チルトテーブルは、第1及び第2の作動片の移動による傾斜角度調整と第3の作動片の移動による回動角度調整とが組み合わされ、更に複雑な調整が可能となる。
【0009】
また、第1〜第3のアクチュエータは、気体の供給及び排出によって駆動するベローズであることが好ましい。対象物の一例をなす半導体ウェハは熱や磁性によって影響を受けてしまう。しかし、気体の供給及び排出によって駆動するベローズを、アクチュエータとして用いることにより、電動アクチュエータをなすモータなどを用いる場合と比べて、半導体ウェハに熱や磁性の影響を与えることなく傾斜角度調整を行うことが可能となる。
【0010】
また、チルトテーブルと支持テーブルとは、鉛直方向に弾性を有する回転規制用板バネによって連結されていることが好ましい。この回転規制用板バネによって、第1及び第2のアクチュエータの駆動に伴い、チルトテーブルが支持テーブルに対して中心軸線周りに回転してしまうことを防止することができる。これによって、対象物の傾斜角度調整の精度を向上させることができる。
【0011】
また、支持テーブルを鉛直方向に移動させる移動機構を更に備えることが好ましい。これによって、チルトテーブルを支持テーブルごと鉛直方向に移動させることができ、対象物の三次元的な傾斜角度調整と相俟って、チルトテーブルの高さ位置の調整をも可能にする。
【0012】
また、移動機構として、例えばエアシリンダが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るチルトステージによれば、簡単な構造で対象物の三次元的な傾斜角度調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るチルトステージの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1〜図4に示すように、チルトステージ1は、半導体ウェハ等の対象物(図示せず)を載置するための載置面2aを有するチルトテーブル2と、チルトテーブル2を滑動可能に支持する支持テーブル3とを有する。このチルトステージ1は、チルトテーブル2を第1及び第2のリニアアクチュエータ(第1及び第2のアクチュエータ)4,6で移動させ、支持テーブル3を第3のリニアアクチュエータ(第3のアクチュエータ)7で移動させることによって、載置面2aの傾斜角度調整及び回動角度調整が行われる。なお、図1に示すように、X及びYは水平面上で互いに90度をなし、鉛直方向をZ方向と定め、以下必要な場合にX、Y、Zを用いる。
【0016】
チルトテーブル2は、円板状のテーブルであり、対象物を載置するための平面状の載置面2aを上面側に有し、凸球面状の滑動面2bを下面側に有する。この滑動面2bの鉛直方向の中心軸Lはチルトテーブル2の中心軸線と一致する。
【0017】
チルトテーブル2の側面2cには、中心軸線LからX軸方向に突出する第1の作動片8と、中心軸線LからY軸方向に突出する第2の作動片9とが形成されている。第1及び第2の作動片8,9はXY平面上に広がる矩形板とされている。
【0018】
支持テーブル3は、矩形状のベースプレート11の上面11aに対して中心軸線L周りに回転可能に支持された円板状のテーブルである。図2に示すように、支持テーブル3の上面3aの略中央部には、チルトテーブル2の滑動面2bを支持するために凹球面状とされた支持面3bが形成される。
【0019】
また、支持テーブル3には、支持面3bを形成するように多孔部3cが埋設され、支持面3bには多数の微小な孔が形成されている。この多孔部3cからは、パイプP1が導出されて外部の空気圧源(図示せず)と接続されている。空気圧源は、多孔部3cへ圧縮空気を供給し、その圧縮空気が支持面3bの多数の孔から滑動面2bに対して吹きつけられる。これによって、滑動面2bと支持面3bの間に空気膜が形成され、滑動面2bは、支持面3bから抵抗を受けることなく非接触状態で支持されることとなる。
【0020】
支持テーブル3の側面3dには、図1に示すように、中心軸線LからY軸の負の方向に突出する第3の作動片12が形成される。第3の作動片12は、YZ平面上に広がる矩形板とされている。
【0021】
第1のリニアアクチュエータ4は、第1の作動片8の上方に配置された支持片13a及び下方に配置された支持片13bを有する断面コ字型の支持部材13と、支持片13aと第1の作動片8との間に延在するベローズアクチュエータ14と、支持片13bと第1の作動片8との間に延在するベローズアクチュエータ16とからなる。そして、第1の作動片8は、ベローズアクチュエータ14の先端とベローズアクチュエータ16の先端とで挟み込まれる。また、支持片13bの下面は、支持テーブル3の上面3aに固定されている。
【0022】
ベローズアクチュエータ14は、図3に示すように、鉛直方向に伸縮可能なベローズ14aと、ベローズ14aの下端側の開口部を封止する円板状の作動板14bとを備える。ベローズ14aの上端側の開口部は支持片13aに固定されることにより封止される。これによって、ベローズアクチュエータ14の内部空間14cは、ベローズ14aと、支持片13aと作動板14bとによって密閉され、その気密性は保たれている。
【0023】
作動板14bの中央部には、上方へ延びるシャフト14dが形成され、このシャフト14dは、支持片13aに設けられたボス13cのガイド穴13dに挿入されることによって鉛直方向に移動可能とされている。また、作動板14bの中央部には、第1の作動片8へ向かって突出する半球面状の押圧部14eが形成され、この押圧部14eは、第1の作動片8の上面8aと当接することによってベローズアクチュエータ14の鉛直方向の駆動に伴い発生する力を第1の作動片8に伝達することができる。
【0024】
ベローズアクチュエータ14の内部空間14cからは、配管P2が導出され、外部に設けられたサーボ弁14fと接続されている。そして、サーボ弁14fを制御することで、内部空間14c内の空気を供給及び排出することができ、内部空間14cの気圧の変化に伴って、作動板14bの鉛直方向の移動量を任意に制御することができる。
【0025】
ベローズアクチュエータ16も、上述のベローズアクチュエータ14と同様の構成を有し、サーボ弁16fを制御することで作動板16bの鉛直方向の移動量を任意に制御することができる。また、押圧部16eは、第1の作動片8の下面8bと当接することによって、ベローズアクチュエータ16鉛直方向の駆動に伴い発生する力を第1の作動片8に伝達することができる。なお、ベローズアクチュエータ16は、ベローズ16a、内部空間16c、シャフト16dを備え、内部空間16cとサーボ弁16fとは配管P3で連結されている。
【0026】
図3に示すように、第2のリニアアクチュエータ6は、第2の作動片9の上方に配置された支持片18a及び下方に配置された支持片18bを有する断面コ字型の支持部材18と、支持片18aと第2の作動片9との間に延在するベローズアクチュエータ19と、支持片18bと第2の作動片9との間に延在するベローズアクチュエータ21とからなる。そして、第2の作動片9は、ベローズアクチュエータ19の先端とベローズアクチュエータ21の先端とで挟み込まれる。また、支持片18bの下面は、支持テーブル3の上面3aに固定されている。なお、ベローズアクチュエータ19,21は、ベローズアクチュエータ14と同様の構成を有している。
【0027】
第3のリニアアクチュエータ7は、第3の作動片12のX軸方向に配置された支持片22a及びX軸の負の方向に配置された支持片22bを有する断面コ字型の支持部材22と、支持片22aと第3の作動片12との間に延在するベローズアクチュエータ23と、支持片22bと第3の作動片12との間に延在するベローズアクチュエータ24とからなる。そして、第3の作動片12は、ベローズアクチュエータ23の先端とベローズアクチュエータ24の先端とで挟み込まれる。また、支持部材22は、支持片22aと支持片22bとを連結する連結部22cを有し、連結部22cの下面は、支持テーブル3の上面3aに固定されている。なお、ベローズアクチュエータ23,24は、ベローズアクチュエータ14と同様の構成を有している。
【0028】
図4に示すように、支持テーブル3とチルトテーブル2とは、鉛直方向に弾性を有するL字状の回転規制用板バネ26によって連結されている。回転規制用板バネ26は、中心軸線L周りに互いに直角をなして4箇所に配置されており、板バネ26の一端は、チルトテーブル2の側面2cにネジ止めされ、回転規制用板バネ26の他端は、支持テーブル3の上面3aにネジ止めされている。回転規制用板バネ26によって、第1及び第2のリニアアクチュエータ4,6の駆動に伴い、チルトテーブル2が支持テーブル3に対して中心軸線L周りに回転してしまうことを防止することができる。これによって、載置面2aの傾斜角度調整の精度を向上させることができる。
【0029】
次に、チルトステージ1の動作について説明する。
【0030】
まず、サーボ弁14f及びサーボ弁16fを同時に制御し、ベローズアクチュエータ14の内部空間14cから空気を排出すると共に、ベローズアクチュエータ16の内部空間16cへ空気を供給する。
【0031】
空気が供給されることによって内部空間16cの気圧が高まり、作動板16bが上方へ移動する。また、押圧部16eと第1の作動片8の下面8bが当接しているため、作動板16bの移動に伴って第1の作動片8も上方へ移動する。
【0032】
これに対し、空気が排出されることによって内部空間14cの気圧が低下する。更に、押圧部14eと第1の作動片8の上面8aが当接しているため、第1の作動片8を介してベローズアクチュエータ16からも上方向の力を受ける。以上によって、作動板14bは、第1の作動片8を支持しながら、その移動に合わせて上方へ移動する。
【0033】
図2において二点鎖線で示すように、第1の作動片8が上方へ移動し、チルトテーブル2は、滑動面2bと支持面3bとの間の空気膜を介して、Y軸周りに傾動することとなる。第2のリニアアクチュエータ6においても、第1のリニアアクチュエータ4と同様に、サーボ弁を制御することによって第2の作動片9を移動させ、チルトテーブル2をX軸周りに傾動させることができる。
【0034】
以上によって、チルトテーブル2は、第1の作動片8の上下動と第2の作動片9の上下動とを組み合わせることによって、水平面に対して様々な傾斜角度で傾動されることとなる。従って、第1及び第2の作動片8,9と第1及び第2のリニアアクチュエータ4,6との組合せにより、簡単な構造で、載置面2a上に載せられた対象物の三次元的な傾斜角度調整が可能となる。
【0035】
更に、第3のリニアアクチュエータ7を制御することによって第3の作動片12が移動し、チルトテーブル2は中心軸線L周りに回転する。これによって、チルトテーブル2は、第1及び第2の作動片8,9の移動による傾斜角度調整と第3の作動片12の移動による回動角度調整とが組み合わされることによって、更に複雑な調整が可能となる。
【0036】
また、例えば対象物として半導体ウェハなどを用いる場合、リニアアクチュエータとして、空気の供給及び排出によって駆動するベローズアクチュエータを用いることにより、電動アクチュエータをなすモータなどを用いる場合と比べて、半導体ウェハに熱や磁性の影響を与えることなく傾斜角度調整を行うことが可能となる。
【0037】
[第2の実施形態]
図5〜図8に示すように、チルトステージ31は、半導体ウェハ等の対象物(図示せず)を載置するための載置面32aを有するチルトテーブル32と、チルトテーブル32を滑動可能に支持する支持テーブル33と、支持テーブル33を鉛直方向に移動させるエアシリンダ61とを有する。このチルトステージ31は、チルトテーブル32を第1及び第2のリニアアクチュエータ(第1及び第2のアクチュエータ)34,36で移動させ、支持テーブル33を第3のリニアアクチュエータ(第3のアクチュエータ)37で移動させることによって、載置面32aの傾斜角度調整及び回動角度調整が行われる。また、エアシリンダ(移動機構)61によって、高さ位置の調整も行われる。なお、図5に示すように、X及びYは水平面上で互いに90度をなし、鉛直方向をZ方向と定め、以下必要な場合にX、Y、Zを用いる。
【0038】
チルトテーブル32は、円板状のテーブルであり、対象物を載置するための平面状の載置面32aを上面側に有し、凸球面状の滑動面32bを下面側に有する。この滑動面32bの鉛直方向の中心軸線Lはチルトテーブル32の中心軸線と一致する。
【0039】
チルトテーブル32の側面32cには、中心軸線Lから見てX軸方向の位置に、断面L字型の作動部38が設けられる。作動部38は、支持テーブル33よりも低い位置で中心軸線LからX軸方向に突出する第1の作動片38cと、第1の作動片38cの中心軸線L側の端部を側面32cに連結させるため下方に突出する連結部38dとを有する。また、図6に示すように、側面32cには、中心軸線Lから見てY軸方向の位置に、断面L字型の作動部39が設けられる。作動部39は、支持テーブル33よりも低い位置で中心軸線LからY軸方向に突出する第2の作動片39cと、第2の作動片39cの中心軸線L側の端部を側面32cに連結させるため下方に突出する連結部39dとを有する。なお、第1の及び第2の作動片38c,39cはいずれもXY平面上に広がる矩形板とされている。
【0040】
矩形状の支持テーブル33は、エアシリンダ61に設けられたロッド62の上端に形成されている。図7に示すように、支持テーブル33の上面33aの略中央部には、チルトテーブル32の滑動面32bを支持するために凹球面状とされた支持面33bが形成される。
【0041】
また、支持テーブル33には、支持面33bを形成するように多孔部33cが埋設され、支持面33bには多数の微小な孔が形成されている。この多孔部33cからは、パイプP31が導出されて外部の空気圧源(図示せず)と接続されている。空気圧源は、多孔部33cへ圧縮空気を供給し、その圧縮空気が支持面33bの多数の孔から滑動面32bに対して吹きつけられる。これによって、滑動面32bと支持面33bの間に空気膜が形成され、滑動面32bは、支持面33bから抵抗を受けることなく非接触状態で支持されることとなる。
【0042】
支持テーブル33の側面33dには、図5に示すように、中心軸線Lから見てY軸の反対方向の位置に、断面L字型の作動部42が設けられる。作動部42は、中心軸線LからY軸の負の方向へ突出する連結部42dと、連結部42dの自由端部から下方へ突出する第3の作動片42cを有する。なお、第3の作動片42cは、YZ平面上に広がる矩形板とされている。
【0043】
第1のリニアアクチュエータ34は、第1の作動片38cの上方に配置された支持片43a及び下方に配置された支持片43bを有する支持部材43と、支持片43aと第1の作動片38cとの間に延在するベローズアクチュエータ44と、支持片43bと第1の作動片38cとの間に延在するベローズアクチュエータ46とからなる。そして、第1の作動片38cは、ベローズアクチュエータ44の先端とベローズアクチュエータ46の先端とで挟み込まれる。また、支持部材43は、支持片43a,43bを連結させる矩形板状の連結部43cを有しており、連結部43cの支持テーブル33側の側面は、支持テーブル33に固定されている。
【0044】
ベローズアクチュエータ44は、図8に示すように、鉛直方向に伸縮可能なベローズ44aと、ベローズ44aの下端側の開口部を封止する円板状の作動板44bとを備える。ベローズ44aの上端側の開口部は支持片43aに固定されることにより封止される。これによって、ベローズアクチュエータ44の内部空間44cは、ベローズ44aと、支持片43aと作動板44bとによって密閉され、その気密性は保たれている。
【0045】
作動板44bの中央部には、上方へ延びるシャフト44dが形成され、このシャフト44dは、支持片43aに設けられたボス43cのガイド穴43dに挿入されることによって鉛直方向に移動可能とされている。また、作動板44bの中央部には、第1の作動片38cへ向かって突出する半球面状の押圧部44eが形成され、この押圧部44eは、第1の作動片38cの上面38aと当接することによってベローズアクチュエータ44の鉛直方向の駆動に伴い発生する力を第1の作動片38cに伝達することができる。
【0046】
ベローズアクチュエータ44の内部空間44cからは、配管P32が導出され、外部に設けられたサーボ弁44fと接続されている。そして、サーボ弁44fを制御することで、内部空間44c内の空気を供給及び排出することができ、内部空間44cの気圧の変化に伴って、作動板44bの鉛直方向の移動量を任意に制御することができる。
【0047】
ベローズアクチュエータ46も、上述のベローズアクチュエータ44と同様の構成を有し、サーボ弁46fを制御することで作動板46bの鉛直方向の移動量を任意に制御することができる。また、押圧部46eは、第1の作動片38cの下面38bと当接することによって、ベローズアクチュエータ46の鉛直方向の駆動に伴い発生する力を第1の作動片38cに伝達することができる。なお、ベローズアクチュエータ46は、ベローズ46a、内部空間46c、シャフト46d、を備え、内部空間46cとサーボ弁46fとは配管P33で連結されている。
【0048】
第2のリニアアクチュエータ36は、図6に示すように、第2の作動片39cの上方に配置された支持片48a及び下方に配置された支持片48bを有する断面コ字型の支持部材48と、支持片48aと第2の作動片39cとの間に延在するベローズアクチュエータ49と、支持片48bと第2の作動片39cとの間に延在するベローズアクチュエータ51とからなる。そして、第2の作動片39cは、ベローズアクチュエータ49の先端とベローズアクチュエータ51の先端とで挟み込まれる。また、支持部材48は、支持片48aと支持片48bとを連結させる矩形板状の連結部48c有し、連結部48cの支持テーブル33側の側面は、支持テーブル33に固定されている。なお、ベローズアクチュエータ49,51は、ベローズアクチュエータ44と同様の構成を有している。
【0049】
第3のリニアアクチュエータ37は、図5に示すように、第3の作動片42cのX軸方向に配置された支持片52a及びX軸と負の方向に配置された支持片52bとを有する断面コ字型の支持部材52と、支持片52aと第3の作動片42cとの間に延在するベローズアクチュエータ53と、支持片52bと第3の作動片42cとの間に延在するベローズアクチュエータ54とからなる。そして、第3の作動片42cは、ベローズアクチュエータ53の先端とベローズアクチュエータ54の先端とで挟み込まれる。また、支持部材52は、支持片52aと支持片52bとを連結する矩形板状の連結部52cを有し、連結部52cは、ベースプレート11の上面11aに固定されている。なお、ベローズアクチュエータ53,54は、ベローズアクチュエータ44と同様の構成を有している。
【0050】
エアシリンダ61のロッド62は、図7に示すように、下端に円筒体61aの内周と略同一の径を有する円板状のピストン62aを有する。円筒体61aの内部空間において、ピストン62aよりも上側の内部空間61b及び下側の内部空間61cからは、それぞれパイプP35,P34が導出されている。
【0051】
次に、チルトステージ31の動作について説明する。
【0052】
まず、サーボ弁44f及びサーボ弁46fを同時に制御し、ベローズアクチュエータ44の内部空間44cから空気を排出すると共に、ベローズアクチュエータ46の内部空間46cへ空気を供給する。
【0053】
空気が供給されることによって内部空間46cの気圧が高まり、作動板46bが上方へ移動する。また、押圧部46eと第1の作動片38cの下面38bが当接しているため、作動板46bの移動に伴って第1の作動片38cも上方へ移動する。
【0054】
これに対し、空気が排出されることによって内部空間44cの気圧が低下する。更に、押圧部44eと第1の作動片38cの上面38aが当接しているため、第1の作動片38cを介してベローズアクチュエータ46からも上方向の力を受ける。以上によって、作動板44bは、第1の作動片38cを支持しながら、その移動に合わせて上方へ移動する。
【0055】
図7において二点鎖線で示すように、第1の作動片38cが上方へ移動し、チルトテーブル32は、滑動面32bと支持面33bとの間の空気膜を介して、Y軸周りに傾動することとなる。第2のリニアアクチュエータ36においても、第1のリニアアクチュエータ34と同様に、サーボ弁を制御することによって第2の作動片39cを移動させ、チルトテーブル32をX軸周りに傾動させることができる。
【0056】
また、パイプP35を介してエアシリンダ61の内部空間61bを開放し、パイプP34から内部空間61cへ空気を供給することによって、ロッド62が上方へ移動する。また、パイプP35からエアシリンダ61の内部空間61bへ空気を供給し、パイプP34を介して内部空間61cを開放することによって、ロッド62が下方へ移動する。これによって、チルトテーブル32は、支持テーブル33を介して鉛直方向へ移動する。
【0057】
以上によって、チルトテーブル32は、第1の作動片38cの上下動と第2の作動片39cの上下動とを組み合わせることによって、水平面に対して様々な傾斜角度で傾動させることとなる。従って、第1及び第2の作動片38c,39cと第1及び第2のリニアアクチュエータ34,36との組合せによって、簡単な構造で、載置面32a上に載せられた対象物の三次元的な傾斜角度調整が可能となる。
【0058】
更に、第3のリニアアクチュエータ37を制御することによって第3の作動片42cが移動し、チルトテーブル32は中心軸線L周りに回転する。これによって、チルトテーブル32は、第1及び第2の作動片38,39の移動による傾斜角度調整と第3の作動片42cの移動による回動角度調整とが組み合わされることによって、更に複雑な調整が可能となる。
【0059】
また、例えば対象物として半導体ウェハなどを用いる場合、リニアアクチュエータとして、空気の供給及び排出によって駆動するベローズアクチュエータを用いることにより、電動アクチュエータをなすモータなどを用いる場合と比べて、半導体ウェハに熱や磁性の影響を与えることなく傾斜角度調整を行うことが可能となる。
【0060】
また、エアシリンダ61によって、チルトテーブル32を支持テーブル33ごと鉛直方向に移動させることができ、対象物の三次元的な傾斜角度調整と相俟って、チルトテーブル32の高さ位置の調整をも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態に係るチルトステージの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2のリニアアクチュエータの部分拡大図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】第2の実施形態に係るチルトステージの斜視図である。
【図6】図5のチルトステージを別の角度から見た斜視図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図7のリニアアクチュエータの部分拡大図である。
【符号の説明】
【0062】
1,31…チルトステージ、2,32…チルトテーブル、2a,32a…載置面、2b,32…滑動面、3,33…支持テーブル、3b,33b…支持面、4,44…第1のリニアアクチュエータ(第1のアクチュエータ)、6,36…第2のリニアアクチュエータ(第2のアクチュエータ)、7,37…第3のリニアアクチュエータ(第3のアクチュエータ)、8,38c…第1の作動片、9,39c…第2の作動片、12,42c…第3の作動片、26…回転規制用板バネ、61…エアシリンダ(移動機構)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置された対象物の傾斜角度調整を行うチルトステージにおいて、
前記対象物を載置する載置面を上面側に有し、球面状の滑動面を下面側に有するチルトテーブルと、
前記滑動面を支持する球面状の支持面を有する支持テーブルと、
一端が前記チルトテーブルに固定される第1の作動片と、
一端が前記チルトテーブルに固定されると共に、鉛直方向に延在する前記滑動面の中心軸線周りに、前記第1の作動片に対して0°及び180°を除く角度をなす位置に配置される第2の作動片と、
前記第1及び第2の作動片をそれぞれ鉛直方向に移動させる第1及び第2のアクチュエータと、
を備えることを特徴とするチルトステージ。
【請求項2】
前記第2の作動片は、前記中心軸線周りに、前記第1の作動片に対して直角をなす位置に配置されることを特徴とする請求項1記載のチルトステージ。
【請求項3】
前記中心軸線周りに回転可能に支持されている前記支持テーブルに一端が固定された第3の作動片と、
前記第3の作動片を水平方向に移動させる第3のアクチュエータと、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載のチルトステージ。
【請求項4】
前記第1〜第3のアクチュエータは、気体の供給及び排出によって駆動するベローズであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のチルトステージ。
【請求項5】
前記チルトテーブルと前記支持テーブルとは、鉛直方向に弾性を有する回転規制用板バネによって連結されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のチルトステージ。
【請求項6】
前記支持テーブルを鉛直方向に移動させる移動機構を更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のチルトステージ。
【請求項7】
前記移動機構は、エアシリンダであることを特徴とする請求項6記載のチルトステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−164245(P2009−164245A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340308(P2007−340308)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】