説明

チロシナーゼ活性抑制剤及びこれを含む美白用化粧料

【課題】 チロシナーゼの活性を効果的に抑制させることにより皮膚本来の色素であるメラニンの生成を抑制させ、色素沈着やシミ・ソバカスを防止し得る安全な天然物由来のチロシナーゼ活性抑制剤及びこれを含有した含む美白用化粧料を提供することにある。
【解決手段】サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物を含むことを特徴とするチロシナーゼ活性抑制剤であり、好適には水抽出物である。また、当該チロシナーゼ活性抑制剤をサツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物(乾燥固形分として)を美白化粧料に対して0.001重量%〜5重量%含むことを特徴とする美白用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚におけるメラニンの生成を抑制するチロシナーゼ活性抑制剤及びこれを用いて日焼け後の色素沈着やシミ・ソバカスを予防又は防止する美白用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け後の色素沈着やシミ・ソバカスは、一般に皮膚の紫外線暴露による刺激やホルモンの異常又は遺伝的要素等によって皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)が活性化されメラニン生成が亢進した結果、生じるものと考えられている。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、更に5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。従来、チロシナーゼの活性を阻害してメラニン生成を抑制する物質や産生したメラニンを減少させる物質の使用が検討され、これを用いた美白化粧料が種々提案されている。例えば、アスコルビン酸及びその誘導体を用いる方法(例えば特許文献1〜2参照)、アルブチンを用いる方法(例えば特許文献3参照)、コウジ酸及びその誘導体を用いる方法(例えば特許文献4参照)、グルタチオンを用いる方法(例えば特許文献5参照)、ハイドロキノン及びその誘導体(例えば特許文献3参照)、これらを組み合わせて配合した美白化粧料(例えば特許文献7〜8参照)などがある。しかし、アスコルビン酸及びその誘導体は水系では酸化されやすく、不安定で変色の原因になり美白効果の低下や製品外観の低下となり好ましくない。また、ハイドロキノン及びその誘導体には皮膚刺激性があり、アレルギー反応を引き起こす場合があるなどの安全性の観点からこれらの美白用化粧料への使用には問題があると指摘されてきた。これらを改善する方法として、天然物由来の成分を用いてメラニンの生成を抑制させる方法が検討されてきたが、メラニン生成抑制効果が微弱で、十分な効果を発揮するには至っておらず、十分満足できるものは得られていない。
【0003】
【特許文献1】特開昭56−120612号公報
【特許文献2】特開昭62−262610号公報
【特許文献3】特開平5−139950号公報
【特許文献4】特開平5−221846号公報
【特許文献5】特開平8−139946号公報
【特許文献6】特開平5−221846号公報
【特許文献7】特開平8−078364号公報
【特許文献8】特開平8−103984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、チロシナーゼの活性を効果的に抑制させることにより皮膚本来の色素であるメラニンの生成を抑制させ、色素沈着やシミ・ソバカスを防止し得る安全な天然物由来のチロシナーゼ活性抑制剤及びこれを含有した美白用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、化粧料に用いることのできるチロシナーゼ活性抑制作用及びメラニン生成抑制作用を有する天然物について鋭意検討を重ねた結果、サツマイモ属の植物の外皮およびその抽出物がチロシナーゼ活性抑制作用を持ち、メラニン生成量を減少させる効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物を含むことを特徴とするチロシナーゼ活性抑制剤である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載のチロシナーゼ活性抑制剤であり、サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物がサツマイモを水溶性溶媒の沸点よりも20℃低い温度乃至沸点の範囲の温度で抽出して得られることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のチロシナーゼ活性抑制剤であり、水溶性溶媒が水、炭素数1〜4の水溶性一価アルコール、炭素数1〜6の水溶性多価アルコール、炭素数1〜4の水溶性多価アルコールの縮重合体、水溶性ケトン、水溶性カルボン酸及び炭酸エステル、水溶性環状エーテル、ピロリドン及びその水溶性誘導体、ピリジンから選ばれた1種あるいは2種以上を用いることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は2記載のチロシナーゼ活性抑制剤であり、水溶性溶媒が水であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のチロシナーゼ活性抑制剤を含むことを特徴とする美白用化粧料である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5記載の美白用化粧料であり、サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物を乾燥固形分として美白化粧料全量に対して0.001重量%〜5重量%含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天然のサツマイモ外皮の溶媒抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤を配合した美白用化粧料により、皮膚本来の色素であるメラニンの生成を抑制させ、色素沈着やシミ・ソバカスを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、サツマイモ外皮の溶媒抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤及びこれを配合した美白用化粧料である。
【0014】
本発明におけるサツマイモは、サツマイモ属(lpomoea)に属するサツマイモであり、特に品種、産地が限定されるものではなく、いずれでもよい。例えば、サツマイモには高系14号、鳴門金時、タマユタカ、コガネセンガン、エレガントサマー等の黄色系品種;ハヤトイモ、ベニハヤト、ヘルシーレッド、ジェイレッド、サニーレッド等の橙色系品種;宮農36号、山川紫、アヤムラサキ等の紫系品種、金時、紅あずま等があり、これらの1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明で用いるサツマイモの部分は、植物であるサツマイモの根茎部(いわゆる「サツマイモ」)の外皮及びこれを含む根茎部外周部分(以下「サツマイモ外皮」とする)である。根茎部外皮以外の部分の溶剤抽出物では本発明の効果が十分に得られない。また、サツマイモ外皮として、小片状のもの、これを粉砕したものや乾燥粉末化したもののいずれでもよい。
【0016】
本発明のサツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物(以下「サツマイモ抽出物」とする)とは、サツマイモを常圧又は加圧下、さらに常温又は加温下、水溶性溶媒を用いて抽出されることにより得られる溶媒抽出液、その希釈液及びその濃縮液並びにその乾燥物をいう。また、溶媒抽出の際にソックスレー抽出器等の抽出器具を用いても良い。
【0017】
本発明におけるサツマイモ抽出物の抽出方法には、常温でサツマイモ外皮を水溶性溶媒に浸漬し抽出する方法、サツマイモ外皮を加温した水溶性溶媒に浸漬し抽出する方法、加圧下に加温した水溶性溶媒にサツマイモ外皮を浸漬し抽出する方法等がある。中でもサツマイモ外皮を加温した水溶性溶媒に浸漬し抽出する方法が好ましい。加温した水溶性溶媒によってサツマイモ外皮を浸漬抽出する場合の加温温度は、水溶性溶媒の沸点よりも20℃低い温度〜沸点の範囲の温度であり、好ましくは水溶性溶媒の沸点よりも10℃低い温度〜沸点の範囲の温度である。水溶性溶媒でのサツマイモ外皮の抽出に要する時間は、サツマイモの種類、サツマイモ外皮の使用部、使用する水溶性溶媒の種類、抽出温度、目的とサツマイモ外皮の抽出の程度により適宜決定されればよいが、通常、1〜10時間が目安となる。
【0018】
本発明で用いられる溶媒は、サツマイモ外皮中に存在するチロシナーゼ活性抑制物質を抽出する水溶性溶媒であり、水、炭素数1〜4の水溶性一価アルコール、炭素数1〜6の水溶性多価アルコール、炭素数1〜4の水溶性多価アルコールの縮重合体、水溶性ケトン、水溶性カルボン酸及び炭酸エステル、水溶性環状エーテル、ピロリドン及びその水溶性誘導体、ピリジンから選ばれた1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。具体的には、水としてはイオン交換水、純水、蒸留水;炭素数1〜4の水溶性一価アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール;炭素数1〜6の水溶性多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;炭素数1〜4の水溶性多価アルコールの縮重合体としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール−プロピレングリコール縮合体;水溶性ケトンとしは、アセトン、メチルエチルケトン;水溶性カルボン酸エステル及び炭酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート;水溶性環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、ジオキサン;ピロリドン及びその水溶性誘導体としては、N−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドンが挙げられる。中でも好ましくは水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランであり、より好ましくは水、エタノールである。
【0019】
具体的にサツマイモ外皮を熱水抽出する場合を例に述べると、サツマイモ外皮を細かく刻み、紙で軽く水気を吸い取った後、当該サツマイモ外皮10gと精製水50gを1000mL三角フラスコに入れ、これを沸騰水浴中に入れて撹拌機で緩やかに撹拌しながら1時間保持し、冷却した後にろ紙でサツマイモ外皮を濾別してサツマイモ外皮の熱水抽出液を得る。サツマイモ外皮を熱水で抽出する時間は、目的とする抽出物量を考慮して適宜決定すれば良く、通常は1時間〜3時間である。また、サツマイモ外皮をエタノール等の水溶性有機溶媒で抽出する場合、サツマイモ外皮を細かく刻み、紙で軽く水気を吸い取った後、当該サツマイモ外皮10gとエタノール50gを500mL三角フラスコに入れ、これを常温で1〜3時間、常温で撹拌しながら保持し、冷却しろ紙でサツマイモ外皮を濾別してサツマイモ外皮の水溶性有機溶媒抽出液を得る。水溶性溶媒にサツマイモ外皮を浸漬し、加圧加温して抽出する方法では、加圧の程度及び加圧時間は特に限定されるものではなく、目的とする抽出物量を考慮して適宜決定すれば良く、通常は1.1atm〜10atmの圧力下で20分〜1時間の加圧時間が目安となる。
【0020】
得られたサツマイモ外皮の水溶性有機溶媒抽出液をそのまま用いる場合や水で希釈して使用する場合もあるが、通常、濃縮して固形物又はペースト状物若しくは凍結乾燥して粉末状物に調製して使用される。また、固形物又はペースト状物若しくは粉末状として得られたサツマイモ抽出物を水に再溶解してサツマイモ抽出物水溶液として使用することもできる。また、サツマイモの水溶性有機溶媒抽出液には種々の夾雑物が含まれるために、ろ過等の手段を用いてこれらを除去して用いることが好ましい。さらに必要により公知の方法で脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。
【0021】
一般にチロシナーゼ活性を抑制することにより、メラニンの異常産生が抑制される。チロシナーゼ活性抑制効果の測定方法は特に限定されるものではなく、一般に用いられる方法が使用できる。例えば、マウスB16メラノーマ細胞(例えば理研、RCB1283)を培養して用い、これにサツマイモ外皮抽出物を加えて十分に撹拌した後、37℃にて暗所で3時間インキュベーションし、上澄みを取り405nm吸光度を測定して吸光度の変化で評価する方法がある。サツマイモ抽出物を加えてチロシナーゼ活性が抑制されるとマウスB16メラノーマ細胞培養物の上澄みの405nm吸光度は低くなる。
【0022】
サツマイモ外皮抽出物は、チロシナーゼの活性を抑制して、L−ドーパ(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)の酸化によるドーパキノンの生成を抑制し、ドーパクロム、インドールキノンの生成促進、更にはメラニン生成を抑制する効果を持っている。本発明のチロシナーゼ活性抑制剤は、サツマイモ外皮抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤であり、その他従来から用いられてきたチロシナーゼ活性抑制作用を有する物質と併用しても良い。
【0023】
本発明の美白用化粧料(以下「美白用化粧料」とする)は、前述のチロシナーゼ活性抑制作用を持つサツマイモ抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤を含有する美白用化粧料であり、皮膚に塗布することにより皮膚本来の色素であるメラニンの生成を抑制させ、色素沈着やシミ・ソバカスを防止することができる化粧料である。具体的に美白用化粧料としては、美白用乳液、美白用ローション、美白用ゲルローション、美白用ファンデーション、美白用クリーム、美白用パック等がある。
【0024】
チロシナーゼ活性抑制剤を配合する場合の美白用化粧料の形態は特に限定されるものではなく、水溶液状、乳化溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の形態で配合することができる。美白用化粧料へのサツマイモ抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤の配合量は、目的とするチロシナーゼ活性抑制作用を考慮して決定されるものであり、一律に決められるものではないが、通常、美白用化粧料全量に対してサツマイモ抽出物の乾燥固形分として0.001〜5重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0025】
美白用化粧料の調製は、特に限定されるものではなく、一般の化粧料と同様な方法で調製することができる。具体的に被乳化成分の油性剤、乳化剤として作用する多糖類、水を主成分とする美白用乳液の調製を例に説明する。乳化剤として作用する多糖類〔例えば「アルカシーラン」(伯東(株)製)〕を室温下、ディスパーザを用いて水に分散させ、これにサツマイモ抽出物、グリセリン、1,3−ブチレングリコール及び1,2−ペンタンジオール等を混合し、均一として乳化剤を含む水分散液を調製する。美白用乳液の被乳化成分の油性剤、例えばスクワラン、オリーブオイル、油溶性天然ビタミン、ステアリルアルコール等の高級アルコールを加温、撹拌して均一な被乳化成分を調製する。乳化剤を含む水分散液分を所定温度に加温し、ホモジナイザー(あるいはホモミキサー)で8000rpmに攪拌しながら、被乳化成分を徐々に添加して乳化を行う。更に撹拌して乳化を熟成させた後、撹拌冷却して本発明の美白用乳液を得る。また、水相成分だけからなる美白用ローション(化粧水)は、水相にチロシナーゼ活性抑制剤をそのまま添加し、溶解するだけである。
【0026】
本発明の美白用化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で、薬品類、医薬部外品類、化粧品類などの製剤に使用される有用成分、例えば精製水、温泉水、深層水、保湿剤、収れん剤、美白剤、抗炎症(消炎)剤、皮膚(細胞)賦活化剤、抗菌剤、経皮吸収促進剤、清涼剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、褪色防止剤、緩衝剤などが任意に選択し配合することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔本発明のチロシナーゼ活性抑制剤〕
・チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)
「あやむらさき」を剥き、天日乾燥した外皮10gを90℃の熱水50g(純水)に1時間浸漬、静置した後、冷却し、No2のろ紙で濾過した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、乾燥させてサツマイモ外皮抽出物(「あやむらさき」外皮抽出物)を約20mg(固形分として)得た。これをチロシナーゼ活性抑制剤(A−1)とした。
・チロシナーゼ活性抑制剤(A−2)
前記チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)と同様の方法で「紅あずま」外皮を用いて「紅あずま」外皮抽出物を約20mg(固形分として)得た。これをチロシナーゼ活性抑制剤(A−2)とした。
・チロシナーゼ活性抑制剤(A−3)
前記チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)と同様の方法で「金時」外皮を用いて「金時」外皮抽出物(A−3)を約20mg(固形分として)得た。これをチロシナーゼ活性抑制剤(A−3)とした。
・チロシナーゼ活性抑制剤(A−4)
前記チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)と同様の方法で「紅さつま」外皮を用いて「紅さつま」外皮抽出物を約20mg(固形分として)得た。これをチロシナーゼ活性抑制剤(A−4)とした。
・チロシナーゼ活性抑制剤(A−5)
「金時」の外皮を剥いだ後の部分を乾燥させ、前記サツマイモ外皮抽出物(A−1)と同様の方法にて熱水で抽出し、「金時」抽出物を約20mg(固形分として)得た。これをチロシナーゼ活性抑制剤(A−5)とした。
【0029】
〔比較例のチロシナーゼ活性抑制剤〕
・チロシナーゼ活性抑制剤(B−1):L−アスコルビン酸リン酸Na(昭和電工(株)製)
・チロシナーゼ活性抑制剤(B−2):L−アスコルビン酸(武田薬品工業(株)製)
・チロシナーゼ活性抑制剤(B−3):グラブリジン(丸善製薬(株)製)
・チロシナーゼ活性抑制剤(B−4):アスタキサンチン(試薬、シグマ社製)
【0030】
(その他の成分)
C−1:1,3−ブチレングリコール(試薬、関東化学(株))
C−2:グリセリン(試薬、関東化学(株))
C−3:パラオキシ安息香酸エステル(試薬、関東化学
【0031】
〔チロシナーゼ活性抑制試験1〕
10wt%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM培地を用いて、常法(37℃、5wt%CO)で培養したマウスB16メラノーマ細胞(理研、RCB1283)を用いて、サツマイモ外皮抽出物のチロシナーゼ活性抑制試験を行った。チロシナーゼ活性抑制試験において、サツマイモ外皮抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤(A−1)を水に溶かしてサツマイモ外皮抽出固形分濃度が400ppm濃度のチロシナーゼ活性抑制剤(A−1)水溶液として使用した。
【0032】
培養フラスコのほぼ底面いっぱいに増殖した細胞を通常のトリプシン処理操作により遊離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて洗浄し、5×106cell/mLとなるようPBSに懸濁し、細胞懸濁液とした。細胞懸濁液0.2mL(1×106cells)に0.33重量%−Triton X−100水溶液0.2mL、0.1重量%−L−DOPA水溶液0.2mL及び400ppm濃度のチロシナーゼ活性抑制剤(A−1)水溶液0.2mLを順次加え、十分に撹拌して試験液を調製した後、37℃にて暗所で3時間インキュベーションした。次に混合液を超音波にて処理して均一化した後(必要なら遠心分離を行って)上澄みをとって、405nm吸光度を測定した。チロシナーゼ活性抑制作用は、チロシナーゼ活性抑制率(%)として次式により算出し、この数値が高いほど好ましい。
チロシナーゼ活性抑制率(%)=〔(β−α)/β〕×100
α:チロシナーゼ活性抑制剤添加時の吸光度
β:チロシナーゼ活性抑制剤無添加時の吸光度
また、メラニン生成抑制作用は、上澄み液中のメラニン量をメラニン標準品による検量線から算出し、次式のメラニン生成抑制率(%)により評価した。この数値が高いほど好ましい。
メラニン生成抑制率(%)=(γ/ε)×100
γ:チロシナーゼ活性抑制剤添加時のメラニン量
ε:チロシナーゼ活性抑制剤無添加時のメラニン量
サツマイモ外皮抽出物のチロシナーゼ活性抑制剤(A−1)がメラニン生成抑制作用を持てば、405nmの吸光度は低くなり、チロシナーゼ活性抑制率(%)およびメラニン生成抑制率(%)は高くなる。チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)の添加量を変化させ、それぞれでの405nmの吸光度を測定し、表1にまとめた。同様にして、チロシナーゼ活性抑制剤(A−1)に代えて、チロシナーゼ活性抑制剤(A−2)〜(A−5)を用いてチロシナーゼ活性抑制作用及びメラニン生成抑制作用を評価した。結果を表1〜表3に示した。なお、表中の「有効成分ppm対全量」は、試験液量(「全量」に相当)に対するチロシナーゼ活性抑制剤の有効成分の比率を示し、サツマイモ外皮抽出物を含むチロシナーゼ活性抑制剤では、サツマイモ外皮抽出物固形分の試験液量(「全量」に相当)に対する比率を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】


本発明のサツマイモ外皮抽出物は、表2で示されるようにヒトメラノサイト細胞のチロシナーゼ活性を抑制することが認められ、表3ではサツマイモ外皮抽出物は、ヒトメラノサイト細胞のメラニン生成を減少させることが認められた。
【0036】
〔紅斑抑制及び色素沈着抑制試験〕
紅斑抑制試験有色モルモット(各群10匹)の背部4ヶ所を剃毛し、温水でよく洗浄した後、4ヶ所を2つに分け、一方を試験区、他方をコントロール区とした。表4に示した組成で調製した美白外用組成物を試験区の2ヶ所に各々0.2ml塗布し、24時間後に麻酔下、紫外線を照射した。紫外線照射は、東芝(株)製FL20S・BLBランプとFL20S・E30ランプを各3本ずつ同時に用い、紫外線量4.8×106erg/cm2で照射した。紫外線照射直後、先に美白外用組成物を塗布した箇所に再度、美白外用組成物を0.2ml塗布した。さらに紫外線照射12時間後及び24時間後に美白外用組成物を0.2ml塗布した。照射24時間後にモルモットの剃毛した部分の紅斑の程度を目視評価し、さらに7日後に色素沈着の程度を目視評価し、モルモットごとに採点して各グループの平均値を求めた。紅斑の程度、色素沈着の評価は以下のようにした。結果を表4に示す。
【0037】
(紅斑抑制効果の評価基準)
<評価> <内容と評価>
6点:紅斑が全く認められない。
4点:紅斑がごく僅かに認められる。
2点:紅斑が認められるが、非照射部位との境界が不明瞭。
0点:紅斑が認められ、非照射部位との境界が鮮明。
【0038】
(色素沈着抑制効果の評価基準)
<評価> <内容>
6点:色素沈着が全く認められない。
4点:色素沈着がごく僅かに認められる。
2点:色素沈着が認められるが、非照射部位との境界が不明瞭。
0点:色素沈着が認められ、非照射部位との境界が鮮明。
【0039】
【表4】


本発明のサツマイモ外皮抽出物を添加した美白用外用剤組成物は、各種美白剤単独に比較して、紫外線による紅斑や色素沈着を効果的に抑制することが示された。
【0040】
〔美白用皮膚外用剤の評価〕
以下の処方に従って、化粧料、乳液、クリーム1〜4、パックを調製し、建常人40名に対して1ヶ月間、連続使用して、「試験1:くすみ、シミ、そばかすの改善」、「試験2:化粧ののり具合の改善」、「試験3:肌荒れの改善」についてテストを行なった。化粧品の使用方法には特別な制限をせず、通常の化粧品と同様とし、その使用結果を自己申告にて集計した。各試験の評価基準は以下のようにした。
・「試験1:くすみ、シミ、そばかすの改善」に対する評価基準
〇:くすみ、しみ、そばかすが改善した回答者数が40名中21名以上。
×:くすみ、しみ、そばかすが改善した回答者数が40名中20名以下。
・「試験2:化粧ののり具合の改善」に対する評価基準
〇:化粧ののりが良くなったと回答者数が40名中21名以上。
×:化粧ののりが良くなったと回答者数が40名中20名以下。
・「試験3:肌荒れの改善」に対する評価基準
〇:肌荒れが改善した回答者数が40名中21名以上。
×:肌荒れが改善した回答者数が40名中20名以下。
結果を表10に示す。
【0041】
(実施例13:化粧水1)
化粧水1の組成を表5に示す。
【0042】
【表5】


1.区分bの多糖類(アルカシーラン)を室温にて予めディスパーザを用いて水に前分散させた(分散液1)。
2.区分aの各成分を計量し、均一混合溶解した(分散液2)。
3.分散液2に分散液1を加えた後、10分間攪拌を行って化粧水1(実施例5)を得た。
【0043】
(実施例14:化粧水2)
実施例13の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−1)の代わりに同量のサツマイモ外皮抽出物(A−2)に置き換えて調製し、化粧水2(実施例14)を得た。
【0044】
(実施例15:化粧水3)
実施例13の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−1)の代わりに同量のサツマイモ外皮抽出物(A−3)に置き換えて調製し、化粧水3(実施例15)を得た。
【0045】
(実施例16:化粧水4)
実施例13の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−1)の代わりに同量のサツマイモ外皮抽出物(A−4)に置き換えて調製し、化粧水4(実施例16)を得た。
【0046】
(比較例9:化粧水5)
実施例13の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−1)の代わりに同量の精製水に置き換えて調製し、化粧水5(比較例9)を得た。
【0047】
(実施例17:乳液1)
乳液1の組成を表6に示す。
【0048】
【表6】


1,区分cの多糖類(アルカシーラン)を室温にて予めディスパーザを用いて水に前分散させた(分散液1)。
2.区分aの各成分を計量し、均一混合加温溶解した(分散液2)。
3.区分bの各成分を計量し、70℃に加温し溶解した(分散液3)。
4.70℃に加温したまま、分散液1に分散液2を加え、ホモジナイザー(あるいはホモミキサー)で8000rpmに攪拌しながら、分散液3を徐々に添加した。
5.添加後10分間攪拌を行い、室温まで冷却して乳液1(実施例17)を得た。
【0049】
(比較例10:乳液2)
実施例17の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−2)の代わりに同量の精製水に置き換えて調製し、乳液2(比較例10)を得た。
【0050】
(実施例18:クリーム1)
クリーム1の組成を表7に示す。
【0051】
【表7】

1.区分bの多糖類(アルカシーラン)を室温にて予めディスパーザを用いて水に前分散させた(分散液1)。
2.区分aの各成分と分散液1を均一に混合、加温溶解した(分散液2)。
3.区分cの各成分を計量して加温溶解した(分散液3)。
4.分散液2をホモジナイザー(あるいはホモミキサー)で8000rpmに攪拌しながら、分散液3を徐々に添加した。
5.添加後10分間攪拌を行った(分散液4)。
6.区分dのハイビスワコー104、105を予めティスパーザを用いて水に分散させた(分散液5)。
7.区分eの各成分を均一に分散させた(分散液6)。
8.分散液5に分散液6を加えて、均一混合した(分散液7)。
9.分散液4に分散液7を加えて中和後、室温まで冷却し、クリーム1(実施例18)を得た。
【0052】
(比較例11:クリーム2)
実施例18の成分aのサツマイモ抽出物外皮(A−2)の代わりに同量の精製水に置き換えて調製し、クリーム2(比較例11)を得た。
【0053】
(実施例19:パック1)
パック1の組成を表8に示す。
【0054】
【表8】

1.区分cの多糖類(アルカシーラン)を室温にて予めディスパーザを用いて水に前分散させた(分散液1)。
2.区分aの各成分を計量し、均一混合加温溶解した(分散液2)。
3.分散液1をホモジナイザー(あるいはホモミキサー)で8000rpmに攪拌しながら、分散液2を徐々に添加した。
4.添加後10分間攪拌を行った後、室温まで冷却し、区分bを添加、更に10分間攪拌を行ってパック1(実施例19)を得た。
【0055】
(比較例12:パック2)
実施例19の成分bのサツマイモ外皮抽出物(A−2)の代わりに同量の精製水に置き換えて調製し、パック2(比較例12)を得た。
【0056】
(実施例20:リキッドファンデーション1)
リキッドファンデーション1の組成を表9に示す。
【0057】
【表9】

1.区分cのメチルセルロースを室温にて予めディスパーザを用いて水に前分散させた(分散液1)。
2.区分aの各成分を計量し、均一混合加温溶解した(分散液2)。
3.区分bの各成分を計量し、加温溶解した(分散液3)。
4.分散液1に分散液2を加温下にて加え、ホモジナイザー(あるいはホモミキサー)で8000rpmに攪拌しながら、分散液3を徐々に添加した。
5.添加後10分間攪拌を行い、室温まで冷却してリキッドファンデーション1(実施例20)を得た。
【0058】
(比較例13:リキッドファンデーション2)
実施例12の成分aのサツマイモ外皮抽出物(A−2)の代わりに同量の精製水に置き換えて調製し、リキッドファンデーション2(比較例13)を得た。
【0059】
【表10】

本発明の美白用化粧料である化粧水1〜4、乳液1、クリーム1、パック1、リキッドファンデーション1は、本発明のサツマイモ外皮抽出物を含まない美白用化粧料の化粧水5、乳液2、クリーム2、パック2、リキッドファンデーション2に比較して、くすみ、しみ、そばかすの改善効果、「化粧ののり」の改善、肌荒れの改善が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物を含むことを特徴とするチロシナーゼ活性抑制剤。
【請求項2】
サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物が、サツマイモを水溶性溶媒の沸点よりも20℃低い温度乃至沸点の範囲の温度で抽出して得られる請求項1記載のチロシナーゼ活性抑制剤。
【請求項3】
水溶性溶媒が、水、炭素数1〜4の水溶性一価アルコール、炭素数1〜6の水溶性多価アルコール、炭素数1〜4の水溶性多価アルコールの縮重合体、水溶性ケトン、水溶性カルボン酸及び炭酸エステル、水溶性環状エーテル、ピロリドン及びその水溶性誘導体、ピリジンから選ばれた1種あるいは2種以上を用いる請求項1又は2記載のチロシナーゼ活性抑制剤。
【請求項4】
水溶性溶媒が水である請求項1又は2記載のチロシナーゼ活性抑制剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のチロシナーゼ活性抑制剤を含むことを特徴とする美白用化粧料。
【請求項6】
サツマイモ外皮の水溶性溶媒抽出物を乾燥固形分として美白化粧料全量に対して0.001重量%〜5重量%含む請求項5記載の美白用化粧料。




【公開番号】特開2007−210976(P2007−210976A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35001(P2006−35001)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】