説明

テオブロミンと抗ヒスタミン剤との治療用組み合わせ剤

薬剤は、治療、特に咳嗽の治療における同時使用、逐次使用、または分離使用のための組み合わせ調製物として、テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物組み合わせ、その組成物、および治療、特に咳嗽の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
咳嗽は、防御反射である。持続性の咳嗽は、苦痛になることがある。非処方箋治療薬は利用可能であるが、それらの有効性は疑わしい。
【0003】
WO98/42322は、経口で与えられる、咳嗽を治療するためのテオブロミンの使用を開示している。
【0004】
Usmeniら、FASEB J.express article 10.1096は、テオブロミンが、知覚神経作用および咳嗽を抑制することを開示している。モルモットにおけるクエン酸誘発咳嗽における、およびヒトにおけるカプサイシン咳嗽試験における経口投薬後、ならびに摘出モルモット迷走神経調製物の浸漬(bathing)後の効果を示すデータが提供されている。
【0005】
抗ヒスタミン剤すなわちジフェンヒドラミンは、健常ヒト志願者におけるクエン酸誘発咳嗽モデルにおいて有効性を有することが明らかにされている(Packmanら、Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol、1991)。しかしながら、最近の総説論文、Bjornsdottirら、2007年12月、29(6):577〜83は、ヒトにおける咳嗽に対するジフェンヒドラミンの有効性についての推定が、文献中で一義的に立証されていないことを報告している。言い換えれば、抗ヒスタミン剤が、咳嗽において何らかの有効性を有しているという強力な証拠はない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、クエン酸誘発咳嗽モデルにおける、抗ヒスタミン剤クロルフェニラミンと組み合わせられたテオブロミンについての相乗的鎮咳効果を示すデータに少なくとも部分的に基づいている。したがって、最近の文献が、抗ヒスタミン剤が咳嗽において有効性を有していないことを示唆していることを考えると、テオブロミンとクロルフェニラミンとの組み合わせが、テオブロミン単独と比較して、改善された鎮咳効果を有しているということを見いだすことは驚くべきことであった。
【0007】
結果として、テオブロミンが、抗ヒスタミン剤との組み合わせで使用される場合には、テオブロミン単独と同等な鎮咳効果のためにテオブロミンの投与量をかなり減少させることができるため、副作用および薬物負荷を軽減する。
【0008】
したがって、本発明の第一の態様によれば、薬剤は、治療における同時使用、逐次使用、または分離使用のための組み合わせ調製物として、テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む。
【0009】
第二の態様によれば、医薬組成物は、テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む。
【0010】
この相乗的関係は、すべての抗ヒスタミン剤により示されるであろうと考えられる。理論により束縛されることを望むものではないが、このことは、抗ヒスタミン剤類の薬物のメンバーの構造的類似性に起因している可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、モルモットにおけるクエン酸誘発咳嗽に対する、テオブロミン、およびテオブロミンとクロルフェニラミンとの組み合わせの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の説明)
本明細書で使用されているように、「抗ヒスタミン剤」という用語は、ヒスタミン受容体を介してヒスタミンの作用を阻害する薬剤を意味している。この用語は、当業者によく知られている、十分に定義された種類の薬物を表す。好ましい実施形態において、抗ヒスタミン剤は、H−受容体抗ヒスタミン剤である。任意の適当な形態の抗ヒスタミン剤を選択することができる。これらは、塩、プロドラッグ、および活性代謝産物を包含する。
【0013】
本明細書で使用されているように、咳嗽の治療は、咳嗽の数および/または重症度を軽減する任意の治療を意味している。咳嗽の治療は、咳嗽の数の減少、すなわち、身体の咳嗽への衝動を軽減する直接的な鎮咳効果を意味していることが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、薬剤は、鎮咳用医薬組成物として使用するために、テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む。本発明の薬剤は、咳嗽の管理における鎮咳剤として有用である。それは、乾性咳嗽の管理において使用されることが好ましい。
【0014】
抗ヒスタミン剤は、その使用についてすでに知られている量で使用されてもよいが、本発明による組み合わせは、低減された投与量が有効であることを意味している。テオブロミンと共に投与される抗ヒスタミン剤の投与量は、言うまでもなく、その効力を包含する通常の要因によって決まるものであるが、少なくとも0.1mg/kg/日、例えば、少なくとも5mg/kg/日であることが好ましく、最高で50mg/kg/日までであってよい。抗ヒスタミン剤は、0.1〜30mg/kg/日の範囲で投薬されることが好ましい。
【0015】
任意の適当な形態のテオブロミンを選択することができる。これらは、塩、プロドラッグ、および活性代謝産物を包含する。テオブロミンはまた、ココアまたはチョコレートの形態であってもよい。テオブロミンについての適当な投与量範囲は、当技術分野において知られており、通常の要因(年齢など)によって決まるものであるが、組み合わせの相乗効果は、有効投与量が低減されうることを意味している。
【0016】
本発明による組み合わせは、単一の製剤で、または組み合わせ投与、同時投与、もしくは逐次投与のために、分離した製剤で提供されうる。
【0017】
この抗ヒスタミン剤は、下記の薬物から選択することができる:ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、アリメマジン、ジメンヒドリナート、ドキシラミン、メクリジン、クエチアピン、フェキソフェナジン、フェニラミン、セチリジン、プロメタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、レボセチリジン、ヒドロキシジン、アリメマジン、アクリバスチン、シプロヘプタジン、アステミゾール、フェキソフェナジン、ロラタジン、セチリジン、レボセチリジン、ブロムフェニラミン、デキストロブロムフェニラミン、プロメタジン、ミゾラスチン、およびトリプロリジン。抗ヒスタミン剤は、クロルフェニラミンであることが好ましい。
【0018】
本発明の化合物は、経口経路、吸入経路、鼻腔内経路、舌下経路、静脈内経路、直腸経路、および膣経路を介するなどの任意の利用可能な経路により投与することができる。
【0019】
本発明の化合物は、組み合わせ剤として、経口で、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性の散剤または顆粒剤として投与されることが好ましい。本発明の好ましい医薬組成物は、錠剤およびカプセル剤である。経口投与のための液体分散液剤は、シロップ剤、乳剤、および懸濁剤であってよい。組み合わせの医薬組成物は、それらの例が下記に記載されている従来の賦形剤を用いた圧縮錠剤またはカプセル剤であることがより好ましい。
【0020】
経口使用が意図されている組成物は、医薬組成物を製造するための当技術分野に知られている任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、薬学的に洗練されかつ口当たりの良い調製物を提供するために甘味剤、矯味剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適している無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に組み合わせられた活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、微結晶性セルロース、またはポリビニルピロリドン;ならびに滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってもよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それによって、より長期にわたって持続した作用を提供するために、知られている技法によりコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延材料を用いることができる。
【0021】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適している賦形剤との混合物中に組み合わせられた活性材料を含有する。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム、およびアラビアゴム;天然に存在するリン脂質、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、もしくはエチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、もしくはエチレンオキシドの脂肪酸から誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)であってもよい分散化剤または湿潤剤である。水性懸濁剤はまた、1つまたは複数の保存剤、例えば、エチルまたはn−プロピル p−ヒドロキシベンゾエート、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の矯味剤、およびスクロースまたはサッカリンなどの1つまたは複数の甘味剤を含有することもできる。
【0022】
油性懸濁剤は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸などの脂肪酸に、または流動パラフィンなどの鉱油に、または他の界面活性剤もしくは洗浄剤に活性成分を懸濁させることにより製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば、ミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有することができる。上記に示されているものなどの甘味剤、および矯味剤を、口当たりの良い経口調製物を提供するために加えることができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0023】
水の添加による水性懸濁液の調製に適している分散性の散剤および顆粒剤は、分散化剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1つまたは複数の保存剤との混合物中に組み合わせられた活性成分を提供する。適当な甘味剤、矯味剤および着色剤も存在することができる。
【0024】
本発明の組み合わせられた医薬組成物は、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば、流動パラフィン、またはこれらの混合物であってもよい。適当な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガントゴム、天然に存在するリン脂質、例えば、ダイズレシチン、および脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、および上記部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。乳剤はまた、甘味剤および矯味剤を含有することもできる。
【0025】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースと共に製剤化することができる。そのような製剤は、粘滑剤、保存剤、矯味剤および着色剤を含有することもできる。
【0026】
懸濁剤および乳剤は、担体、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有することができる。
【0027】
本発明による組み合わせ組成物は、従来の製剤化技法を使用して生成することができる。特に、噴霧乾燥法を使用し、制御放出特性を提供する材料内に分散または懸濁された活性剤を含むミクロ粒子を生成することができる。
【0028】
ミル粉砕法、例えば、ジェットミル粉砕法もまた、治療用組成物を製剤化するために使用することができる。このことは、特に、吸入による投与が意図されている粒子に当てはまる。ミル粉砕による微細粒子の製造は、従来の技法を使用して達成することができる。「ミル粉砕」という用語は、本明細書において、粒子を微細粒子に破壊または破砕するために活性材料の粒子に十分な力を印加する任意の機械的プロセスを指すために使用される。様々なミル粉砕の装置および条件は、本発明の組成物の製造における使用に適している。
【0029】
必要とされる程度の力を提供するための、適切なミル粉砕条件、例えば、ミル粉砕の強度および時間の選択は、当業者の能力の範囲内にあるであろう。ボールミル粉砕法は、好ましい方法である。代替方法として、粒子を含有する流体を、高圧でバルブに押し通し、高い剪断および乱流の条件を生み出す高圧ホモジナイザーを使用することができる。粒子に対する剪断力、粒子と機械表面または他の粒子との間の衝撃、および流体の加速に起因するキャビテーションはすべて、粒子の破砕に寄与することができる。
【0030】
適当なホモジナイザーは、EmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro Soavi高圧ホモジナイザー、およびMicrofluidics Microfluidiserを包含する。ミル粉砕法を使用し、上記で規定されているようなマスメジアン空気動力学的直径を持つミクロ粒子を提供することができる。吸湿性である場合、活性剤を、上記に述べられているように、疎水性材料と共にミル粉砕することができる。
【0031】
次いで、必要とされる場合には、ミル粉砕法により生成されるミクロ粒子を、追加の賦形剤と共に製剤化することができる。この製剤化は、噴霧乾燥法、例えば、共噴霧乾燥法により達成することができる。この実施形態において、粒子は、溶媒に懸濁され、追加の賦形剤の溶液または懸濁液と共に共噴霧乾燥される。好ましい追加の賦形剤は、多糖を包含する。追加の薬学的に有効な賦形剤もまた使用することができる。
【0032】
吸入、局所、鼻腔内、舌下、静脈内、直腸、および膣への使用が意図されている組み合わせの組成物は、医薬組成物を製造するための当技術分野に知られている任意の方法に従って調製することができる。
【0033】
本発明による治療は、患者の性別、年齢、または健康状態、および1つまたは複数の併用治療の有無などの様々な要因に応じて、一般的に知られている方式で実施することができる。患者集団が重要であることもある。
【実施例】
【0034】
本発明は、下記の試験に少なくとも部分的に基づいている。
【0035】
(試験)
咳嗽は、クエン酸の使用によりモルモットにおいて誘発させた。モルモットの1群に、10mg/kgのテオブロミンを投与し、2つの群に、10または30mg/kgのクロルフェニラミンとの組み合わせでテオブロミンを投与した。対照として、第四の群は、ベヒクルのみを受けた。投与は、経口経路を介した。
【0036】
結果は、図1に示されている。データは、テオブロミンとクロルフェニラミンとの組み合わせが、テオブロミン単剤療法と比較した場合に、咳嗽治療において有意な改善された効力を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療における同時使用、逐次使用、または分離使用のための組み合わせ調製物として、テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む薬剤。
【請求項2】
治療が、咳嗽の治療である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
テオブロミンおよび抗ヒスタミン剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
抗ヒスタミン剤が、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、アリメマジン、ジメンヒドリナート、ドキシラミン、メクリジン、クエチアピン、フェキソフェナジン、フェニラミン、セチリジン、プロメタジン、クレマスチン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、レボセチリジン、ヒドロキシジン、アリメマジン、アクリバスチン、シプロヘプタジン、アステミゾール、フェキソフェナジン、ロラタジン、セチリジン、レボセチリジン、ブロムフェニラミン、デキストロブロムフェニラミン、プロメタジン、ミゾラスチン、およびトリプロリジンから選択される、請求項1または2に記載の薬剤、または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミンである、請求項4に記載の薬剤または組成物。
【請求項6】
抗ヒスタミン剤が、0.1〜30mg/kg/日の投与量で投与される、請求項1、2、4、および5のいずれか1項に記載の薬剤、または請求項3〜5のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513652(P2013−513652A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543903(P2012−543903)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052086
【国際公開番号】WO2011/073647
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510179526)バイオコピア リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biocopea Limited
【Fターム(参考)】