説明

テストチップを備えたモジュール

【課題】 ベア・チップ状態でベア・チップをKGD化する手段としての専用のテストチップを備えたモジュールを提供する。
【解決手段】 被測定半導体チップとテスト専用半導体チップとを搭載し、テスト専用半導体チップを用いてテストパターンを発生させ、被測定半導体チップをテストすることで、被測定半導体チップをKGD化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュールに関し、特にベア・チップをKGD化することができる専用のテストチップを備えたモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器は、半導体装置のインテグレーションが進み小型化が加速しているなかで、半導体装置そのものをベア・チップで扱おうとする動きが進んでいる。特にメモリーチップをベア・チップで扱おうとする動きが顕著である。一般的な半導体装置は、半導体メーカーでベア・チップをパッケージングし、検査工程やエージングを行い、良品であることを確認した後に出荷される。すなわち半導体装置のチップは、良品(known good die:以下KGDと記載する)であることが確認されている。しかし、電子機器メーカーでベア・チップを扱う場合には、そのチップはパッケージング前で、裸のベア・チップであり、期待された機能や信頼性は確認されていない状態である。
【0003】
ベア・チップが良品であることを確認しないで、これらのベア・チップを組み込み、モジュール化する。そしてモジュール化した後で、検査やエージングを行い、ベア・チップの初期不良を摘出し、機能や信頼性を確認する方法もある。しかしこの場合には、仮にモジュール化されたベア・チップが不良品の場合には、同時にモジュール化された他の部品、例えばCPU(Central Processing Unit)や、DSP(Digital Signal Processor)等の高価な半導体装置もリワークできないで、不良品として廃棄されることになる。そのため非常にコスト的にディスアドバンテージとなる。従ってベア・チップ状態で、ベア・チップが良品であることを確認すること(以下、KGD化或いは良品化すると略記する)が必要となる。
【0004】
しかし現実的にベア・チップをKGD化或いは良品化する手立ては現状では非常に限られたもので、そのコストが高価であると言える。従来の方式として、チップ・キャリアと呼ばれる方式がある。これはベア・チップをチップ・キャリアと呼ばれるベア・チップ用ソケットに搭載し、ベア・チップのボンディングパッド・ピッチ(100−150μm)からベア・チップ用ソケットに付随したイタバネ(カンチ・レバー)でピッチを約500μmに広げる。更にその広げられたピンをバーンイン・ボード、或いは検査用基板に搭載された受けソケットに接続し、バーンイン、或いはその他の検査を実施する。この方法では、微細加工された非常に高価なチップ・キャリアと呼ばれるベア・チップ用ソケットと、受けソケットの2つが必要となり、ベア・チップをKGD化或いは良品化する手立ては現状では非常に限られたもので高価であるという問題がある。
【0005】
このようなベア・チップの検査に関する先行特許文献として特開2000−68018号公報(以下特許文献1とする)がある。特許文献1に開示された技術を図3に示す。特許文献1の検査システムは、キャリア基板12にベア・チップ11を搭載した半導体パッケージ10、コンタクトピン22が設けられたキャリア基板領域21を有するソケット20、さらにベア・チップの位置決め機構(くぼみ)31を有するふた30を備えている。半導体パッケージ10の端子と、ソケット20のコンタクトピンを接触させるとき、ふた30の位置決めくぼみでベア・チップの位置を正確に補正できるようにしている。このように端子間あるいはピン間ピッチがファイン化された場合には、ベア・チップの位置決めを正確に行う必要がある。特許文献1に開示された位置決めの場合には、位置決め機構のくぼみに半導体パッケージのベア・チップをセットし、さらにベア・チップの端子とコンタクトピンとの位置決めを行っている。しかし、ベア・チップの端子とコンタクトピンに接触ダメージを与えないようにするためには、専用のローダー・アンローダーが必要となる。このように、正確にベア・チップの位置決めすることが困難であり、専用のローダー・アンローダーが必要になるという問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−68018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、ベア・チップをKGD化(良品であることの確認)する手立ては現状では非常に限られたもので高価であるという問題がある。現状のKGD化方式では、
1、ベア・チップ用のソケット又はキャリア基板とそれを受けるソケットが必要となり、非常に高価なソリューションとなる。
2、ベア・チップをソケットに搭載する際アライメントを取る為の専用のローダー・アンローダーが必要となる。
3、ベア・チップのボンディング・ピッチは120μm対応が限界。
4、ベア・チップ用のソケットは、そのベア・チップ専用となり汎用性に欠ける。
5、ベア・チップ用ソケットは厚さ100μm以下の薄型ベア・チップに対応できない。等の欠点がある。そのためベア・チップをKGD化する手立ては現状では非常に限られたもので高価であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記した課題を解決するものであり、ベア・チップ状態でベア・チップをKGD化する手段としての専用のテスト用半導体チップを備えたモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本願発明のモジュールは、被測定半導体チップと、テスト専用半導体チップとを搭載し、テスト専用半導体チップを用いてテストパターンを発生させ、被測定半導体チップをテストすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモジュールにおいては、被測定半導体チップと、テスト専用半導体チップとを搭載し、テスト専用半導体チップを用いてテストパターンを発生させ、被測定半導体チップをテストし、KGD化することができる。そのため高価なLSIテスターが不要となりコストメリットとして、大きい効果が得られる。
また、被測定半導体チップをKGD化した後、その他必要な半導体装置や部品をさらに基板に搭載させ、パッケージングして、モジュールとすることができる。このように被測定半導体チップがKGD化されているため、その後搭載される半導体装置や部品を無駄にすることなく有効に利用することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1には、モジュールの平面図を示す。図2には、図1に示されたモジュールにおける断面図を示す。以下の実施形態では、例えばベア・チップとしてはランダムアクセスメモリーやフラッシュメモリー等のメモリーとする。その理由は、メモリーの場合が最もコスト的にメリットが多いことによる。しかし、本発明は、特にメモリーに限定されるものではなく、メモリー以外にも適用できる。
【0012】
本発明の実施形態は、メモリー専用の組み込み自己テスト(Built-In Self Test:以下BISTと記載するテスト用半導体チップ)エンジンを備えた専用BISTチップと、KGD化しようとするメモリー・ベア・チップを先に集合基板上に実装する。そのパッド間を、例えばボンディングワイヤーで配線する。専用BISTチップは、内蔵されたジェータグ(Joint Test Action Group:以下J−TAGと記載する)コントローラからのコマンドで専用BISTチップ内のテストエンジンを起動させ、書き込み読み出し時のデータ比較検証を行い、メモリー・ベア・チップをKGD化させる。
【0013】
専用BISTチップを使用することで、高価なLSIテスターが不要となることから、コストメリットの大きいKGD化の方法である。メモリー・ベア・チップをKGD化した後、その他必要な半導体装置や部品をさらに基板に搭載させ、パッケージングして、モジュールとすることができる。このようにメモリー・ベア・チップがKGDされているため、その後搭載される半導体装置や部品を無駄にすることなく有効に利用することができる。
【0014】
図1及び図2に示すモジュールは、有機基板1の上にメモリー・ベア・チップ3が搭載され、さらにメモリー・ベア・チップ3の上に専用BISTチップ2が搭載されている。専用BISTチップ2のパッド5は、それぞれメモリー・ベア・チップ3及び有機基板1のパッド5と配線(ボンディングワイヤー)6で接続されている。ここでは、メモリー・ベア・チップ3は、KGD化を必要とするベア・チップで、被測定半導体チップである。専用BISTチップ2は、メモリー・ベア・チップをテストするための専用のテスト用半導体チップである。
【0015】
専用BISTチップ2は、専用BIST部とJ−TAGコントローラ4とを有する。専用BIST部は、メモリー・ベア・チップをテストするためにBISTエンジンとしてのパターン・ジェネレータ等を含み、J−TAGコントローラ4のインターフェース・ポートにより制御される。パターン・ジェネレータとしては、チェッカ・ボード、マーチングパターンといったアルゴリズミックなパターンを発生する回路をハードマクロとして備えることができる。
【0016】
J−TAGコントローラ4は、専用BIST部を起動させ、メモリー・ベア・チップをテストさせ、そのテスト結果をフィードする。専用BISTチップ2は、レトログレード・プロセス(最先端でないプロセス)でも十分、動作可能であることから、最先端プロセスではないレトログレード・プロセスを用いて生産することができる。レトログレード・プロセスを用いることで、コスト的に最も大きなメリットが得られる。
【0017】
このレトログレード・プロセスで生産されたJ−TAGコントローラ4とBIST部をメモリー・ベア・チップのアドレス及び入出力(I/O)に接続する。また、専用BISTチップ2は、テスト時と通常動作時の入出力の切り替えを行う必要があることから、その入出力にはバウンダリ・スキャン・セルが付加されている。J−TAGコントローラのシリアル・インターフェースによって予めテスト・プログラムをハードマクロ化したBISTエンジンを起動させ、メモリー・ベア・チップのテストを行う。高温及び高バイアス状態で書き込み、読み出し、比較を行い、期待値と不一致があった場合J−TAGコントローラのシリアル・インターフェース、或いは専用の不一致検出フラグ出力端子から信号が出力される構成となる。
【0018】
本発明の構成の特徴は下記のとおりである。
1)それぞれの半導体基板上に形成した専用BISTチップとメモリー・ベア・チップとを搭載し、チップ間同士の結線、及びそれに依って構成されるモジュールの外部出力端子までを配線する。
2)専用BISTチップ内の全てのI/Oに付加されたバウンダリ・スキャン・セル。
3)そのバウンダリ・スキャン・セルを制御するJ−TAGコントローラ。
4)J−TAGコントローラによって起動するパターン・ジェネレータ。
5)その入力されたテストパターンとメモリー・ベア・チップから出力されたデータを比較するコンパレータ。
6)比較した結果を一時格納するレジスタ。
7)一連の制御は、外部からアクセスするJ−TAGコントローラのインターフェース・ポートにより行われる。
【0019】
次に、本発明の動作について説明する。
1)まずプローバーやその他の接触方法によりJ−TAGコントローラのインターフェース・ポートからコマンドを入力する。J−TAGコントローラは、被測定物(フラッシュメモリーやランダムアクセスメモリー等のKGD化が必要なメモリー・ベア・チップ等)に対して任意のテストパターンを与えるように指示する。
【0020】
2)J−TAGコントローラは、専用BIST部のパターン・ジェネレータを起動させる。パターン・ジェネレータは、J−TAGコントローラのシリアルライン或いはそのシリアルライン以外に高速化のために構成したパラレルラインから被測定物にテストパターンを書き込む。
【0021】
3)書き込みが終わった後、J−TAGコントローラは、再び書き込んだデータを読み出すコマンドを被測定物に与え、その出力期待値と実際の読み出しデータをコンパレータで比較検証する。
【0022】
4)例えば期待値と読み出し値が同一であれば『1』を、不一致であれば『0』と。又、不一致ビットの種類とロケーションを数ビットで表し、レジスタに格納、或いは不一致発生フラグ出力端子をアサートする。
【0023】
5)1回目の書き込み読み出しデータの判定が終わった後、再びJ−TAGコントローラは被測定物に対して書き込み、読み出し、比較、格納或いはフラグ出力の作業を与えられた任意の時間(KGD化が必要と思われる時間)繰り返す。
【0024】
6)複数回に渡る書き込み、読み出し、比較が終わった後、格納されたレジスタ内容、或いはフラグ出力を読み取る。このとき複数回に渡る書き込み、読み出し、比較は、即ちKGD化で必要とされるストレスが印加されたことになり、メモリーの良品判定とダイナミック・モニタ・バーンインと同等のエージング効果を得る事が可能となる。
【0025】
専用BISTチップには、IP(Intellectual Property)としてハードマクロ化されたパターン・ジェネレータ、コンパレータ、レジスタを備えている。これらのIPの起動方法には、下記のような幾つかの方法がある。
【0026】
1)プローバーやその他の接触方法によりグランド電圧及び一定の電源電圧を供給し、J−TAGコントローラのI/O経由にて起動する方法。
【0027】
2)プローバーやその他の接触方法によりグランド電圧及び一定の電源電圧を供給し、その電源電圧のシーケンスによって起動する方法。
【0028】
3)プローバーやその他の接触方法によりグランド電圧及び一定の電源電圧を供給し、J−TAGコントローラ以外の信号印加に依って起動する方法。
【0029】
これらの何れの方法にしても、IPの起動可能であるが、プローバーやその他のパッドに接触させる箇所は最小限になるようにして、専用BISTチップのIPを起動させることが好ましい。
【0030】
本発明の実施形態においては、メモリー専用のBISTエンジンを備えた専用BISTチップと、KGD化しようとするメモリー・ベア・チップを先に集合基板上に実装する。そのパッド間を、例えばボンディングワイヤーで配線し、さらにテスト時には探針あるいはその他の接触手段によりパッドと接触し、電源及び信号を入力する。専用BISTチップは、内蔵されたJ−TAGコントローラからのコマンドで専用BISTチップのエンジンを起動させ、書き込み読み出しデータ比較検証を行い、メモリー・ベア・チップをKGD化させる。専用BISTチップを使用することで、高価なLSIテスターを不要とするコストメリットの大きいKGD化の方法が得られる。メモリー・ベア・チップをKGD化した後、その他必要な半導体装置や部品をさらに基板に搭載させ、パッケージングして、モジュールとすることができる。
【0031】
本発明においては、被測定半導体チップとテスト専用半導体チップとを搭載し、テスト専用半導体チップを用いてテストパターンを発生させ、被測定半導体チップをテストすることを特徴とするモジュールが得られる。
【0032】
本発明のテスト専用半導体チップは、内部にテストパターンを発生させるパターン・ジェネレータを備えることができる。またテスト専用半導体チップは、その入出力パッドにバウンダリ・スキャン・セルを備えることができる。さらにテスト専用半導体チップは、ジェータグ(JTAG)コントローラを備え、そのインターフェース・ポートからのコマンドによりテストパターンを発生させ、被測定半導体チップをテストしても良い。
【0033】
本発明のテスト専用半導体チップは、内部にコンパレータを備え、被測定半導体チップからの読み出し信号と期待値とを比較判定することができる。またテスト専用半導体チップは、内部にレジスタ、又は不一致検出フラグ出力端子を備え、半導体チップからの読み出し信号と期待値とを比較判定した結果を明示してもよい。
【0034】
上記したように実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るモジュールの平面図である。
【図2】図1に示されたモジュールにおける断面図である。
【図3】従来技術におけるベア・チップ検査システムの構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 有機基板
2 専用BISTチップ
3 メモリー・ベア・チップ
4 J−TAG コントローラ
5 パッド
6 配線
10 半導体パッケージ
11 ベア・チップ
12 キャリア基板
20 ソケット
21 キャリア基板領域
22 コンタクトピン
30 ふた
31 位置決め機構(くぼみ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定半導体チップとテスト専用半導体チップとを搭載し、前記テスト専用半導体チップを用いてテストパターンを発生させ、前記被測定半導体チップをテストすることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記テスト専用半導体チップは、内部にテストパターンを発生させるパターン・ジェネレータを備えていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記テスト専用半導体チップは、その入出力パッドにバウンダリ・スキャン・セルを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記テスト専用半導体チップは、ジェータグ(JTAG)コントローラを備え、そのインターフェース・ポートからのコマンドによりテストパターンを発生させ、前記被測定半導体チップをテストすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモジュール。
【請求項5】
前記テスト専用半導体チップは、内部にコンパレータを備え、前記被測定半導体チップからの読み出し信号と期待値とを比較判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のモジュール。
【請求項6】
前記テスト専用半導体チップは、内部にレジスタを備え、前記被測定半導体チップからの読み出し信号と期待値とを比較判定した結果を記憶保持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−229135(P2009−229135A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72173(P2008−72173)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(308032552)株式会社 ビンテーシス (3)
【Fターム(参考)】