説明

テトラエチレンペンタアミンの製造方法

本発明は、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)を触媒で水素化することによりテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を製造する方法に関する。場合によりDETDNは、付加的にジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)を含有するアミノニトリル混合物の成分として存在していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)を触媒で水素化することによりテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を製造する方法に関する。場合によりDETDNは、付加的にジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)を含有するアミノニトリル混合物の成分として存在していてもよい。
【0002】
触媒の存在下で、場合によりさらに別の官能基により置換されている脂肪族ニトリルを、相応するアミンへ水素化できることは一般に公知である。以下に示すように、このような水素化法はいくつかのアミンを製造するための種々のアミノニトリルに関しても公知である。しかしこれまで、TEPAもまた、アミノニトリルDETDNから、または場合により、DETDNおよびDETMNを含有するアミノニトリル混合物から出発して製造することができることはどこにも記載されていない。しかし、TEPAを製造するための従来公知の方法は、以下に記載するように欠点と結びついている。
【0003】
従来技術ではα−アミノニトリルであるアミノアセトニトリル(AAN)およびイミノジアセトニトリル(IDAN)、またはβ−アミノニトリルを水素化するための多数の方法が記載されている。たとえばβ−アミノニトリルの水素化は通常、問題なく進行するが、その一方でα−アミノニトリルの水素化は、多数の欠点、たとえばC−CN結合またはR2N−C結合の水素分解の出現と結びついている。"Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis"、第213〜215頁は、β−アミノニトリルと比較して、α−アルキルアミノニトリルまたは環式α−アミノニトリルに基づいたα−アミノニトリルの水素化の問題を示している。α−アミノニトリルの公知の安定性の問題はおそらく、今日までα−アミノニトリルAANまたはIDANのEDA(エチレンジアミン)もしくはDETA(ジエチレントリアミン)への水素化のみがより詳細に記載されていることの主要な理由である。しかしEDAまたはDETAは大工業的には、以下に記載するEDC法またはMEA法によって製造される。しかし高級α−アミノニトリルに関しては、相応する水素化は知られていない。
【0004】
DE−A3003729には、溶剤系の存在下にコバルト触媒またはルテニウム触媒を用いた、脂肪族ニトリル、アルキレンオキシニトリルおよびアルキレンアミノニトリルから第一級アミンへの水素化法が記載されている。使用される溶剤系は、水およびアンモニア以外に、エーテルまたはポリエーテルを含有している。原料として使用可能なアルキレンアミノニトリルまたはアルキレンオキシニトリルは、それぞれ複雑な一般式によって定義されている。特に相応するジアミンへと水素化することができる具体的な化合物または例として、エチレンジアミンジプロピオニトリル(EDDPN、N,N′−ビス(シアノエチル)−エチレンジアミンともよばれる)または3,3′−(エチレンジオキシ)−ジプロピオニトリルが記載されている。DE−A3003729は、これに対してシアノメチル置換基を有するDETA誘導体、たとえばDETDNまたはDETMNの単独化合物の使用についての示唆は開示していない。さらにDETMNは、この刊行物によるアルキレンアミノニトリルの一般的な定義に該当しない。
【0005】
EP−A0382508は、非環式、脂肪族ポリアミンを、液相中、ラネーコバルト触媒により、有利には無水アンモニアの存在下で非環式、脂肪族ポリニトリルを水素化することにより回分式で製造する方法を記載している。この場合、ポリニトリル溶液が、実質的に酸素を含有していない雰囲気中でラネーコバルト触媒を有する反応帯域に供給される。全反応時間においてポリニトリル溶液は、ポリニトリルが反応帯域中で水素と反応する最大速度を上回らない速度で供給される。この方法により、ポリニトリル、たとえばイミノジアセトニトリル(IDAN)、ニトリロトリアセトニトリル、エチレンジアミンテトラアセトニトリル(EDTN)またはその他の詳細に特定されていない、2以上のシアノ基を有する化合物からポリアミンを製造することができる。
【0006】
EP−A212986は、別の方法に関するものであり、この方法では、EP−A0382508に記載されているものと同一の脂肪族ポリニトリルを、原料流中に含有されている液状の第一級または第二級アミンの存在下に、粒状のラネーコバルト触媒を用いて、相応するポリアミンへと水素化することができる。特に必然的に存在するアミノ成分であるエチレンジアミン(EDA)が、多数の別の第一級または第二級アミンとならんで記載されている。
【0007】
EP−A1209146は、ニトリルを第一級アミンへと連続的に水素化する別の方法に関し、この場合、そのつどのニトリルを液相中、アルミニウムからなる合金をベースとする、懸濁された活性化ラネー触媒を使用し、かつ反応はアンモニアおよび塩基性のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の不存在下に実施される。ニトリルとして、多数の他のニトリル以外に、IDAN、EDTN、EDDPNまたはエチレンジアミンモノプロピオニトリル(EDMPN)を相応するエチレンジアミンへと反応させることができる。
【0008】
EP−B0913388は、ニトリルを触媒反応により水素化する方法に関し、これはコバルトスポンジ触媒の存在下で、ニトリル基から第一級アミン基への反応を実施するための条件下でのニトリルと水素との接触を含む。コバルトスポンジ触媒は、あらかじめ触媒量の水酸化リチウムにより処理されており、かつ方法は水の存在下で実施される。ニトリルとして、1〜30個の炭素原子を有する脂肪族ニトリル、特にβ−アミノニトリル、たとえばジメチルアミノプロピオニトリルが適切である。相応するポリニトリルからポリアミンを製造するためのもう1つの方法は、DE−A2755687に開示されている。この方法では、タブレット形の水素化触媒を用いて、触媒の分解を防止する安定剤の存在下で水素化を実施する。ポリニトリルとして、特にエチレンジアミンジプロピオニトリル(EDDPN)を使用することができる。安定剤として特にEDAが適切である。
【0009】
US−A2006/0041170は、トリエチレンテトラアミン(TETA)、特にTETA塩の製造方法、および医薬としてのその使用に関する。この多段法では、まずエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)が製造される。引き続きEDDNを、両方の第二級アミノ基の窒素原子において、ベンズアルデヒドにより、またはBoc保護基(t−ブトキシ−カルボニル基)により誘導体とし、たとえば(環式)イミダゾリジン誘導体が形成される。引き続きこれらの誘導体を、たとえば水素との反応によって還元し、その際に相応するジアミノ化合物が得られる。これらのジアミノ化合物をふたたび酸の存在下で加水分解して、相応するTETA塩が得られる。この方法の欠点は特に、これが多段の水素化法であり、その際に、水素化を実施するためには、使用される原料であるEDDNをまず化学的に誘導体にしなくてはならないことである。さらに、まずTETAが塩として生じ、遊離塩基の形では生じないことが欠点である。
【0010】
従って従来技術では、DETDN、またはDETDNもしくはDETMNを含有するアミノニトリル混合物を、TEPAおよび場合により別のエチレンアミンの製造のために使用することができることはどこにも記載されていない。しかしTEPAを製造するための他の方法は公知である。
【0011】
EP−A222934は、ビシナルなジハロゲンアルカンと過剰のアンモニアとを水相中、強塩基を添加して反応させることにより高級アルキレンポリアミンを製造する方法に関し、この場合、イミン中間生成物が形成され、これを引き続きアルキレンポリアミンと反応させて高級アルキレンポリアミンが形成される。ビシナルなジハロゲンアルカンとして、特にエチレンジクロリド(EDCまたは1,2−ジクロロエタン)が適切である。アルキレンポリアミンとして、特にエチレンジアミンまたは高級エチレンアミン、たとえばDETA、あるいはまたTEPAおよびトリエチレンテトラアミン(TETA)が使用される。この方法(EDC法)では、種々のエチレンアミン(線状エチレンアミン、たとえばEDA、DETA、TETA、TEPAまたは高級エチレンアミンならびに環式誘導体、たとえばピペラジン(Pip)、アミノエチル−ピペラジン(AEPip)または高級ピペラジン誘導体、たとえばジアミノエチルピペラジン(DAEPip)またはピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)の混合物が生じる。どのエチレンジアミンを原料であるEDCおよびNH3に添加するかに応じて、反応混合物は相応する割合の高級エチレンアミンを含有する。たとえば適切にTEPAを製造すべき場合には、原料であるEDCおよびNH3に、エチレンアミンTETAを添加する。このようにして生成物(エチレンアミン混合物)は、高い割合のTEPAを含有するが、しかし前記の別の線状ならびに環式のエチレンアミンも含有する。この方法の欠点は特に、方法が低い選択率で進行すること(エチレンアミン混合物が得られる)と、最初に特殊なエチレンアミン(たとえばDETA)を製造しなくてはならず、まず高級エチレンアミン(たとえばTETA)を適切に製造するか、もしくは収率を高めるためには、これを引き続き方法に導入しなくてはならない。しかしこの方法では、使用される原料(ハロゲンアルカン)および生じる塩酸に基づいて、腐食の問題ならびに生じる塩に基づいて環境問題が生じる。
【0012】
DE−T68911508は、線状の長鎖ポリアルキレンポリアミン、たとえばTEPAを製造するための代替的な方法を記載している。この方法では、二官能性の脂肪族アルコールを、タングステン含有触媒の存在下にアミン反応体と反応させる。二官能性の脂肪族アルコールとして、特にモノエタノールアミン(MEA)が適切であり、アミン反応体として、たとえばEDAまたはDETAを使用することができる。この方法により原則として線状の長鎖ポリアルキレンポリアミンからなる混合物(つまりエチレンアミン混合物)が得られる。このエチレンアミン混合物中に、DETA、TETA、TEPA、PipまたはAEPipが含有されており、その際、そのつどの成分の割合は、使用されるアミン反応体に従って変化する。アミン反応体としてDETAを使用する場合、高い割合のTETAおよびTEPAを含有するエチレンアミン混合物が得られる。この方法の欠点は、方法が、得られるエチレンアミン混合物の成分に対して低い選択率で進行することである。この場合、比較的大量の副生成物、たとえばアミノエチルエタノールアミン(AEEA)または高級ヒドロキシ含有エチレンアミンが生じるが、これは経済的に重要ではない。生じる副生成物の量が比較的多い理由は、MEAもしくは高級エタノールアミン(たとえばAEEA)が、使用されるアミンに代わってそれ自体で反応することができるためである。(統計学的に)多数の反応の可能性に基づいて、線状TEPAに対する選択率は、カップリング生成物のために極めて小さく、かつ制御不可能である。合成は部分的な反応率で可能であるにすぎない。
【0013】
エチレンアミンの製造に関する概要を、SRIレポート"CEH Product Review Ethylenamines"、SRI International、2003年、第53〜54頁は記載しており、この中で、前記の方法に相応して(原料であるEDCまたはMEAを用いて)特にEDAまたはDETAが製造される。その際に、高級エチレンアミン、たとえばTETAまたはTEPAが、副生成物として生じるか、もしくは原料とEDAまたはDETAとの新たな反応によって比較的高い収率で得られる。
【0014】
従って本発明の課題は、TEPAおよび場合によりTETAを製造するための簡単で、安価な方法を提供することである。
【0015】
前記課題は、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)を、触媒および溶剤の存在下で水素化する、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)の製造方法によって解決される。DETDNが、i)少なくとも30質量%のDETDN、およびii)少なくとも5質量%のジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)を含有するアミノニトリル混合物中に存在する場合は、別の主生成物としてのTEPA以外に、TETAも得られる。本発明の範囲での水素化とは、DETDNまたは場合により別のアミノニトリルと水素との反応を意味する。
【0016】
本発明による方法は、TEPAおよび場合により別の主成分であるTETAを高い反応率および/または選択率で製造することができるという利点を有する。高い選択率は、特に、DETDNおよび場合によりDETMNを選択的に製造することができ、使用されるDETDNが主にTEPAへと水素化されることに示される。その際に形成される副生成物は主として別の線状および環式エチレンアミンである。環式エチレンアミンの割合は本発明による方法では、EDC法に比べると比較的少ない。しかし別のエチレンアミンは部分的に同様に興味深い有価生成物であり(主に線状エチレンアミン、たとえばDETA)、たとえば大工業的な方法ではこれらを単離する価値がある。有利にはDETDNおよび場合によりDETMNは、完全に、またはほぼ完全に反応する。このことは、大工業的な方法では特に重要である。というのも、未反応の原料は通常、製造サイクルに返送されるか、もしくは廃棄処理しなくてはならないからである。比較的大量のDETDNまたはDETMNが未反応である方法は、これらのアミノニトリルの不安定性が高いために特に不利である。一方ではDETDNならびにDETMNが比較的高温で分解する傾向があるために、分解生成物はそのつどのサイクルに返送することができず、他方、これらの分解は爆発に類似する激しさで進行しうる。本発明による方法では、アミノニトリルを完全に反応させることができるので、製造サイクルへの返送に関する労力は不要である。
【0017】
本発明による方法のもう1つの利点は、EDC法に比べて原料としての塩化炭化水素の使用を断念することができることである。さらに、塩酸もしくは塩酸塩が別の反応生成物として生じることがない。前記の物質の廃棄処理は特に大工業的な方法では(環境)問題となる。MEA法と比較した利点は、異なった原料に基づいて、AEEAならびにヒドロキシ官能基を有するその他の化合物の形成が重要ではないことである。
【0018】
本発明による方法では、1実施態様でDETDNを(主)原料として使用する。この実施態様は、水素化される溶液中の別のアミノニトリルの含有率を、DETDNに対して有利には10質量%以下に、特に5質量%以下に限定する。本発明の別の実施態様では、DETDNが、アミノニトリル混合物の成分として存在している。アミノニトリル混合物は、少なくとも30%(質量%)のDETDN(成分1)以外に、少なくとも5質量%のDETMN(成分2)ならびに場合により別のアミノニトリルを含有している。DETDNは通常、30〜95質量%、有利には30〜70質量%、特に有利には30〜50質量%がアミノニトリル混合物中に含有されている。アミノニトリル混合物は成分2を通常は5〜70質量%、有利には30〜70質量%含有している。特に有利には該混合物は、成分2を50〜70質量%含有している。前記のDETDNおよびDETMNならびに別のアミノニトリルの質量%の記載は、混合物中に含有されているアミノニトリルの全量に対するものである。付加的に存在する水またはその他の溶剤は、この量の記載において考慮されていない。
【0019】
「別のアミノニトリル」という概念は、本発明の範囲では、DETDNおよびDETMNとは異なる、少なくとも3つの官能基を有するそれぞれの炭化水素含有化合物であると理解すべきであり、この場合、官能基は、シアノ基、第一級、第二級または第三級アミノ基から選択されており、炭化水素含有化合物中に少なくともそのつど1つのシアノ基と1つの第二級アミノ基が含有されていることが前提となっている。さらにアミノアセトニトリル(AAN)もまた、別のアミノニトリルと理解すべきである。
【0020】
有利な別のアミノニトリルは、イミノジアセトニトリル(IDAN)、エチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)またはエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)から選択されている。
【0021】
前記の別のアミノニトリルはすでに文献から公知の化合物であり、これらの単独化合物の製造方法は当業者に公知である一方、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)およびジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)は、これまで文献に記載されていなかった新規の化合物である。従ってアミノニトリルのDETDNおよびDETMNは、それ自体、本発明の対象である。同様に、DETDNまたはDETMNまたはこれらの混合物の製造方法は、本発明のもう1つの対象である。
【0022】
DETDNは、DETAと青酸(HCN)およびホルムアルデヒドとの反応により製造することができる。有利にはDETA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]である。HCN、または場合によりFACHが(以下に記載するように)原料のアミノ基に対して過剰でなく使用されることによって、場合によりその後に実施される水素化の際の選択率の改善を達成することができる。
【0023】
DETDNは、有利にはジエチレントリアミン(DETA)とホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)との反応により製造される。有利にはDETA対FACHのモル比は、1:1〜1:2[モル/モル]である。さらに有利にはDETA対FACHのモル比は、1:1.5〜1:2[モル/モル]、特に約1:2[モル/モル]である。DETAおよびFACHの製造方法は当業者に公知である。有利にはDETAを本発明による方法ではその遊離塩基の形で使用するが、しかし場合により塩、たとえばDETAの二塩酸塩も原料として使用することができる。
【0024】
FACHの製造は、水性ホルムアルデヒドと青酸との反応によって行うことができる。有利にはホルムアルデヒドは、30〜50%の水溶液として存在する。青酸は有利には90〜100%の純度で使用される。この反応は、有利には5.5のpH値で行われ、この値は、有利には水酸化ナトリウム溶液またはアンモニアによって調整される。反応は、20〜70℃の温度で、たとえばループ形反応器および/または管型反応器中で行うことができる。
【0025】
精製された青酸(HCN)の代わりに、HCN粗ガスもホルムアルデヒド水溶液中で上記の条件下にFACHへと反応させることができる。HCN粗ガスは、有利にはホルムアミドの熱分解により製造され、かつ水以外に特に少量のアンモニアを含有している。
【0026】
場合により得られた水性FACH溶液は、保護的な真空蒸発によって、たとえば流下薄膜式蒸発器または薄膜蒸発器で濃縮することができる。有利には50〜80%のFACH溶液になるまで濃縮を行う。濃縮前にFACH溶液のpH値を、たとえば酸の添加によって、たとえばリン酸または有利には硫酸の添加によって、4以下に、有利には3以下に低下させることにより該溶液を安定化することは有利である。
【0027】
あるいは、ジエチレントリアミン−ホルムアルデヒド付加物(DTFA)と青酸(HCN)との反応によってもDETDNを製造することができ、この場合、DTFA対HCNのモル比は有利には1:1.5〜1:2[モル/モル]である。さらに、DETAを、ホルムアルデヒドおよび青酸と同時に(並行して)反応させることもできる。まずホルムアルデヒドと青酸とからなる混合物を製造し、これを引き続きDETAと反応させることも考えられる。有利にはこれらの変法では、DETA対他の原料のモル比は、1:1.5〜1:2[モル/モル]である。
【0028】
反応は、10〜90℃、有利には30〜70℃で、ならびに常圧または過圧で実施することができる。有利には反応を管型反応器または攪拌反応器カスケードで実施する。
【0029】
有利にはDETDNの製造は、溶剤中で、特に水の存在下で実施する。場合により水以外にさらに別の、水と混和可能な溶剤を使用することができる。しかし、アルコール、特にメタノールの存在は、あまり有利ではない。
【0030】
DETDN(主生成物)の製造の際に、本発明による方法のこの実施態様では、重要な副生成物としてDETMNが生じる。相応する方法パラメータ(たとえば原料、温度、溶剤または圧力)の選択に応じて、本発明による方法は、反応生成物中のDETDNの割合が変化し、かつDETMNが副生成物としてではなく、第二の反応主生成物として生じるように制御することができる。従って本発明のこの実施態様では、DETDN以外にDETMNを(主生成物として)含有するアミノニトリル混合物が製造される。有利にはその際に前記で定義した濃度の記載に従ってアミノニトリル混合物が製造される。
【0031】
有利にはDETMNの割合の向上は、前記の合成の変法で記載したパラメータ範囲において、そのつど低いモル割合のFACH、ホルムアルデヒドまたは青酸を使用することによって達成される。従ってたとえばDETMN割合を高めるためには、DETA対FACHのモル比1:1.5〜1:1.8[モル/モル]を使用する。できる限り純粋なDETMNを製造して、DETDNは副生成物としてのみ存在するようにするためには、FACHのモル割合をさらに低減させ、有利には約1:1[モル/モル]のDETA対FACHの比とする。
【0032】
さらに、わずかな割合、たとえば10質量%以下、有利には5〜10質量%、特に1質量%以下のDETMNを含有するアミノニトリル混合物は、本発明の1実施態様では、DETAとできる限り高いモル割合のFACHとの反応により製造することができる。この場合、有利にはFACHが40質量%以上の水溶液または純粋なFACHを使用する。DETA対FACHのモル比はこの場合、有利には1:2[モル/モル]である。
【0033】
DETDNまたはDETMNまたはDETDNとDETMNとを含有する混合物の製造に引き続き、単独化合物を当業者に公知の方法で単離することができる。有利には単離は結晶化により行う。結晶化法自体は当業者に公知である。本発明の1実施態様では、DETDNを有利にはその製造に引き続き直接、通常はそれ以上精製工程を経ることなく水素化に供給する。有利にはDETDNはこの場合、前記のアミノニトリル混合物の成分として存在しており、これはさらにDETMNを含有している。水素化前に場合により1もしくは複数の以下に記載する精製工程を実施することができる。有利には水素化は、水の低減および/または低沸点成分の分離を例外として、付加的な中間工程を行うことなく、DETDNの製造に引き続き行われる。
【0034】
i)低沸点成分の分離
本発明の実施態様では、水素化前に低沸点成分を工程a)の反応生成物から分離する。DETDNおよび場合によりDETMNを製造するためにFACHを使用する場合には、低沸点成分の分離はすでにFACHとDETAとの反応の前に行うことができる。
【0035】
有利には青酸(HCN)を低沸点成分として分離する。この場合、HCNはFACHの分解生成物としても生じうる。さらにここで、場合により存在するアンモニアを分離することができる。有利にはこの分離は蒸留により、たとえばサムベイ蒸留("Chemie Ingenieur Technik、第27巻、第257〜261頁)の形で行う。場合により反応混合物を窒素でストリッピングすることができる。
【0036】
ii)水の低減
水は低沸点成分と一緒に、または有利には低沸点成分を分離した後に、完全に、または部分的に低減することができる。有利には水の低減は蒸留として行う。これは一段または多段で蒸発器もしくは蒸発器カスケード中で行うことができ、その際、段から段へと異なった圧力もしくは温度を調整することができる。水の分離は蒸留塔中で行うこともできる。有利には水の分離は真空下で行う。残留するアミノニトリルまたはアミノニトリル混合物は、水および低沸点成分の残分を含有していてもよい。有利には残留水分は、少なくとも10質量%である。その場合、低沸点成分はわずかな痕跡量で含有されているにすぎない。
【0037】
一般に任意の種類/品質のDETDNおよび場合によりDETMN、ならびに他のアミノニトリルを水素化の際に使用することができる。有利には相応するアミノニトリルをその水溶液の形で使用する。前記のとおり、DETDNならびにDETMNは、本発明による方法で使用する前に、当業者に公知の方法によって精製することができる。DETDNを本発明による方法で、DETDNまたはDETMNならびに場合により別のアミノニトリルを含有するアミノニトリル混合物中で使用する場合には、このアミノニトリル混合物のそれぞれの成分をそれぞれ相互に別々に合成し、かつ本発明による方法で使用する前に相応する量でアミノニトリル混合物に合することができる。
【0038】
DETDNは、室温で固体であり、DETMNも同様である。従って本発明による方法の水素化は、溶剤、たとえば有機溶剤、および/または水の存在下で実施される。有利には水を溶剤として使用し、場合により水と有機溶剤、たとえばエーテル、特にTHFとからなる混合物を使用することもできる。しかし水以外に有機溶剤(つまり不活性有機化合物)を付加的に使用することは有利であることが判明した。というのも、このことによって水性アミノニトリル混合物のそれぞれの成分の、特に生じるアミンの存在下での安定化を達成することができるからである。さらに、有機溶剤を使用することによって、使用される触媒のすすぎ効果(すすぎサイクルの低減、触媒排出の減少)を達成することができ、このことにより触媒の寿命を向上するか、もしくは消費量を低減し(長い触媒寿命)、ならびに触媒負荷を改善することができる。
【0039】
1もしくは複数の成分を含有していてもよい適切な溶剤は、有利には以下の特性を有している:
(a)溶剤は、DETDNまたは場合によりDETMNに対して安定化作用を有し、特に支配的な温度におけるこれらの分解を阻止すべきである、
(b)溶剤は、良好な水素溶解性を示すべきである、
(c)溶剤は、反応条件で不活性であるべきである、
(d)反応混合物(DETDN、場合によりDETMNならびに水または有機溶剤)は、反応条件下で単相であるべきである、
(e)溶剤の選択は、有利には水素化に続く生成物の蒸留による生成物流からの分離に関して行われるべきである。その際、エネルギーコストまたは装置コストの高い(たとえば沸点の範囲が狭い混合物または分離が困難な共沸混合物)分離は回避されるべきである、
(f)溶剤は、生成物から良好に分離することができるべきである。つまり、沸点は、生成物の沸点とは大きく異なっているべきである。この場合、生成物よりも低い沸点が有利である。
【0040】
可能な溶剤(水以外)は、有機溶剤、たとえばアミド、たとえばN−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルホルムアミド(DMF)、芳香族および脂肪族の炭化水素、たとえばベンゼンおよびキシレン、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第2級ブタノールおよび第3級ブタノール、アミン、エステル、たとえば酢酸メチルエステルまたは酢酸エチルエステル、およびエーテル、たとえばジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)である。有利には本発明による方法ではエーテルを使用するが、さらに有利には環式エーテルを使用し、特に有利にはテトラヒドロフランを使用する。別の有利な実施態様では、アルコール、特にメタノールを有機溶剤として使用する。
【0041】
有機溶剤は、使用されるアミノニトリル(DETDNおよび場合によりDETMN)に対して0.1:1〜15:1の質量比で使用する。水素化がその中で実施される溶液中のアミノニトリル混合物の濃度は、適切な供給速度もしくは滞留時間を調整することができるように選択すべきである。アミノニトリルを10〜50質量%で溶剤もしくは混合物と混合することが有利である。特に有利な溶剤であるメタノールもしくはテトラヒドロフランに対してたとえば、溶剤に対してアミノニトリルを20〜40質量%で使用することが有利である。
【0042】
水が存在する場合には、溶液中の水の割合は、0〜60質量%、有利には10〜30質量%の範囲である。水の量の記載はこの場合、アミノニトリルと水との混合物に対するものである。
【0043】
場合により、水素化がその中で実施される溶液中に付加的な添加剤が含有されていてもよい。添加剤として原則として水酸化物、たとえばアルカリ金属水酸化物、アルコラート、アミド、アミン、ならびに場合によりアンモニアが考えられる。有利には添加剤としてアミン、有利にはアミンのEDAおよびアンモニアが適切であり、特にEDAが適切である。さらに酸性添加剤、たとえばケイ酸塩が付加的に溶液中に存在していてもよい。これらの物質は、純粋な物質として、または溶剤中に溶解して添加することができる。有利には本発明による方法は添加剤を添加して実施する。
【0044】
ニトリル官能基をアミンへと水素化するための触媒として、元素の周期律表の第8副族の1もしくは複数の元素(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、有利にはFe、Co、Ni、RuまたはRh、特に有利にはCoまたはNiを活性種として含有している触媒を使用することができる。この中には、いわゆる骨格触媒(Raney(登録商標)タイプとも呼ばれる。以下ではラネー触媒ともよぶ)が含まれるが、これは水素化活性金属と別の成分(有利にはAl)とからなる合金を展開(活性化)することによって得られるものである。触媒はさらに、1もしくは複数の助触媒を含有していてもよい。有利な実施態様では、本発明による方法でラネー触媒が使用され、有利にはラネーコバルト触媒またはラネーニッケル触媒、および特に有利には元素Cr、NiもしくはFeの少なくとも1つによってドープされたラネーコバルト触媒または元素Mo、CrもしくはFeの1つによってドープされたラネーニッケル触媒が使用される。
【0045】
触媒は完全触媒(Vollkatlysator)としても、担持触媒として使用することもできる。担体として有利には金属酸化物、たとえばAl23、SiO2、ZrO2、TiO2、金属酸化物の混合物または炭素(活性炭、カーボンブラック、グラファイト)を適用する。
【0046】
酸化物触媒は、使用前に反応器外で、または反応器内で、水素を含有するガス流中、高温で金属酸化物を還元することによって活性化する。触媒を反応器外で還元する場合、その後に酸素を含有するガス流による不動態化または不活性材料中への埋め込みを行って、空気中での制御されない酸化を回避し、かつ確実な取り扱いを可能にすることができる。不活性材料として、有機溶剤、たとえばアルコール、あるいはまた水またはアミン、有利には反応生成物を使用することができる。活性化の際の例外は、骨格触媒であり、これは水性の塩基を用いて、たとえばEP−A1209146に記載されているように溶解除去することによって活性化することができる。
【0047】
実施法(懸濁水素化、流動床水素化、固定床水素化)に応じて、触媒は粉末、スプリットまたは成形体(たとえば押出成形体またはタブレット)として使用される。
【0048】
特に有利な固定床触媒は、EP−A1742045に開示されているコバルト完全接触触媒(Cobalt-Vollkontakte)であり、これはMn、Pおよびアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)によってドープされている。これらの触媒の触媒活性材料は、水素による還元の前に、それぞれ酸化物として計算して、コバルト55〜98質量%、特に75〜95質量%、リン0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%およびアルカリ金属、特にナトリウム0.05〜5質量%からなっている。
【0049】
別の適切な触媒は、EP−A963975に開示されている触媒であり、その触媒活性材料は、水素による処理の前に、ZrO2を22〜40質量%、銅の酸素含有化合物をCuOとして計算して1〜30質量%、ニッケルの酸素含有化合物をNiOとして計算して15〜50質量%(Ni:Cuのモル比は1より大)、コバルトの酸素含有化合物を、CoOとして計算して15〜50質量%、アルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物を、Al23もしくはMnO2として計算して0〜10質量%を含有しており、かつモリブデンの酸素含有化合物は含有せず、たとえばこの刊行物に開示されている触媒Aは、ZrO2として計算してZr33質量%、NiOとして計算してNi28質量%、CuOとして計算してCu11質量%、およびCoOとして計算してCo28質量%の組成を有している。
【0050】
さらに、EP−A696572に開示されている触媒が適切であるが、その触媒活性材料は、水素による還元の前に、ZrO2を20〜85質量%、銅の酸素含有化合物をCuOとして計算して1〜30質量%、ニッケルの酸素含有化合物を、NiOとして計算して30〜70質量%、モリブデンの酸素含有化合物をMoO3として計算して0.1〜5質量%、およびアルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物をAl23もしくはMnO2として計算して0〜10質量%含有している。たとえばこの文献に具体的に開示されている触媒は、ZrO2を31.5質量%、NiOを50質量%、CuOを17質量%、およびMoO3を1.5質量%の組成を有している。同様に適切であるのは、WO−A−99/44984に記載されている触媒であり、これは(a)鉄または鉄をベースとする化合物またはこれらの混合物、(b)Al、Si、Zr、Ti、Vの群から選択される2、3、4または5の元素をベースとする助触媒を(a)に対して0.001〜0.3質量%、(c)アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属をベースとする化合物を(a)に対して、0〜0.3質量%、ならびに(d)マンガンを(a)に対して0.001〜1質量%含有している。
【0051】
懸濁法のためには、有利にはラネー触媒を使用する。ラネー触媒の場合、活性な触媒は、「金属スポンジ」として、二元合金(ニッケル、鉄、コバルトとアルミニウムまたはケイ素)から、相手を酸もしくはアルカリによって溶解除去することによって製造することができる。当初の合金相手の残分はしばしば相乗作用をもたらす。
【0052】
本発明による方法で使用されるラネー触媒は、有利にはコバルトまたはニッケル、特に有利にはコバルトと、アルカリ中で可溶性の別の合金成分とから出発して製造される。この可溶性の合金成分の場合、有利にはアルミニウムが使用されるが、あるいはまたその他の成分、たとえば亜鉛およびケイ素またはこれらの成分の混合物を使用することもできる。
【0053】
ラネー触媒を活性化するために、可溶性の合金成分を完全に、または部分的にアルカリによって抽出するが、このために、たとえば水酸化ナトリウムの水溶液を使用することができる。触媒はその後、たとえば水または有機溶剤によって洗浄することができる。
【0054】
触媒中で単独の、または複数の別の元素が助触媒として存在していてもよい。助触媒の例は、元素の周期律表の副族IB、VIBおよび/またはVIIIの金属、たとえばクロム、鉄、モリブデン、ニッケル、銅などである。
【0055】
可溶性成分(一般にアルミニウム)の展開による触媒の活性化は、反応器自体の中で、または反応器に装入する前に行うことができる。前活性化された触媒は、空気に敏感であり、かつ自然発火性であるため、通常は、たとえば水、有機溶剤、または本発明による反応の際に存在する物質(溶剤、原料、生成物)のような媒体のもとで貯蔵され、かつ取り扱われるか、または室温で固体の有機化合物中に埋め込まれている。
【0056】
有利な実施態様では、本発明により、Co/Al合金からアルカリ金属水酸化物の水溶液、たとえば水酸化ナトリウム水溶液による溶解除去、およびその後の水による洗浄によって得られ、かつ有利には助触媒として元素のFe、NiまたはCrの少なくとも1つを含有するラネーコバルト骨格触媒を使用する。
【0057】
このような触媒は一般にコバルト以外に、Al1〜30質量%、特にAl2〜12質量%、特に有利にはAl3〜6質量%、Cr0〜10質量%、特にCr0.1〜7質量%、特に有利にはCr0.5〜5質量%、とりわけCr1.5〜3.5質量%、Fe0〜10質量%、特にFe0.1〜3質量%、特に有利にはFe0.2〜1質量%、および/またはNi0〜10質量%、特にNi0.1〜7質量%、特に有利にはNi0.5〜5質量%、とりわけNi1〜4質量%を含有し、その際、質量の記載はそのつど触媒の全質量に対するものである。
【0058】
本発明による方法における触媒として、たとえば有利にはW.R.Grace&Co.社のコバルト骨格触媒"Raney 2724"を使用することができる。この触媒は以下の組成を有している:Al:2〜6質量%、Co:≧86質量%、Fe:0〜1質量%、Ni:1〜4質量%、Cr:1.5〜3.5質量%。
【0059】
同様に本発明によれば、Ni/Al合金からアルカリ金属水酸化物の水溶液、たとえば水酸化ナトリウム溶液を用いた溶解除去、およびその後の水による洗浄によって得られ、かつ有利に助触媒として元素のFe、Crの少なくとも1つを含有するニッケル骨格触媒を使用することができる。
【0060】
このような触媒は一般に、ニッケル以外にさらに、Al1〜30質量%、特にAl2〜20質量%、特に有利にはAl5〜14質量%、Cr0〜10質量%、特にCr0.1〜7質量%、特に有利にはCr1〜4質量%および/またはFe0〜10質量%、特にFe0.1〜7質量%、特に有利にはFe1〜4質量%を含有しており、その際、質量の記載はそのつど触媒の全質量に対するものである。
【0061】
本発明による方法における触媒として、たとえばJohnson Matthey社のニッケル骨格触媒A4000を使用することができる。この触媒は以下の組成を有している:
Al:≦14質量%、Ni:≧80質量%、Fe:1〜4質量%、Cr:1〜4質量%。
【0062】
触媒は場合により活性および/または選択性が低下した場合に、当業者に公知の方法、たとえばWO99/33561およびここに引用されている文献で公開されている方法によって再生することができる。
【0063】
触媒の再生は、本来の反応器中で(インサイチュー)または取り出した触媒を(エクスサイチュー)用いて実施することができる。固定床法の場合、有利にはインサイチューで再生し、懸濁法の場合には有利には触媒の一部を連続的に、または不連続的に取り出してエクスサイチューで再生し、かつ返送する。
【0064】
本発明による方法を実施する温度は、40〜150℃、有利には70〜140℃、特に80℃〜130℃の範囲である。
【0065】
水素化の際に支配的な圧力は一般に5〜300バール、有利には30〜250バール、特に有利には40〜160バールである。
【0066】
有利な実施態様では、DETDN、もしくはDETDNおよびDETMNを含有するアミノニトリル混合物は、DETDNおよび場合によりアミノニトリル混合物の残りの成分が水素化の際に水素と反応する速度を上回らない速度で供給する。
【0067】
供給速度は有利には、ほぼ完全な反応率が達成されるように調整する。これは温度、圧力、混合物の種類、触媒の量および種類、反応媒体、反応器内容物の混合の度合い、滞留時間などによって影響を受ける。
【0068】
本発明による方法では、1(もしくは複数)の溶剤を使用し、その際、溶剤をまず完全にDETDNまたはアミノニトリル混合物と混合する。得られた溶液は場合により添加剤を含有していてもよいが、引き続き触媒を有する反応容器に供給する。場合により、たとえば半回分式の方法では、溶剤の一部を触媒と一緒に反応容器中に装入することができ、その後に溶液を計量供給する。連続的な方法では、溶剤の部分量を、DETDN、溶剤および場合により添加剤を含有する溶液とは別に反応容器に添加することもできる。場合により、たとえば半回分式の方法では、溶剤の一部を触媒と一緒に反応容器中に装入することができ、その後に溶剤を計量供給する。特に有利には、水溶液中のアミノニトリルを供給し、有機溶剤を別個に計量供給する。
【0069】
DETDNを水素化することによりTEPAを含有を製造するための本発明による方法は、触媒反応のために適切な、慣用の反応容器中で、固定床法、流動床法、懸濁法で、連続的に、半連続的に、または不連続的に実施することができる。水素化を実施するために、アミノニトリルと触媒とが加圧下で気体状の水素と接触することが可能な反応容器が適切である。
【0070】
懸濁法での水素化は、攪拌反応器、ジェット式ループ型反応器、ジェットノズル式反応器、泡鐘塔反応器もしくはこれらの同一もしくは異なった反応器のカスケードで実施することができる。固定床触媒を用いた水素化のために、管型反応器あるいはまた管束型反応器も考えられる。
【0071】
固定床触媒の場合、塔底法または細流法でアミノニトリルを供給する。しかし有利には懸濁法を半連続的な運転法で、および有利には連続的な運転法で使用する。
【0072】
ニトリル基の水素化は熱の放出下で行われ、この熱は通常、除去する必要がある。熱の除去は、組み込まれた熱伝達面、冷却ジャケットまたは外部に存在する熱伝達装置によって反応器の周囲を循環して行うことができる。水素化反応器もしくは水素化反応器カスケードは、直列で運転することができる。あるいは、反応器搬出物の一部が反応器の入口に、有利にはあらかじめ循環流を後処理することなく返送される循環式の運転法も可能である。これにより反応溶液の最適な希釈が達成される。特に循環流は外部の熱伝達装置により簡単で安価な方法で冷却され、このようにして反応熱が除去される。反応器は、反応溶液の温度上昇を、冷却された循環流によって制限することができることによって、断熱運転することもできる。反応器自体はこの場合、冷却する必要がないので、簡単で安価な構造が可能である。別の代替案は、冷却される管束型反応器(固定床の場合のみ)である。両方の運転法の組合せもまた可能である。この場合、有利には固定床反応器が懸濁反応器の後方に接続されている。
【0073】
本発明による方法によって、水素化により主生成物としてTEPA(第1の態様)ならびに別のエチレンアミンが副成分として得られる。本発明による方法で、DETDNおよびDETMNを含有するアミノニトリル混合物を使用する場合、主成分としてTEPAおよびTETA(第2の態様)ならびに副成分として別のエチレンアミンを含有するエチレンアミン混合物が得られる。本発明による方法を以下の反応式1で、2つの態様に基づいて説明するが、その際、DETDNおよびDETMNを含有するアミノニトリル混合物が一緒に製造され、かつ引き続き水素化される。
【0074】
【化1】

【0075】
第2の態様で「エチレンアミン混合物」という概念は、反応生成物が2つの主成分(TEPAおよびTETA)を含有しているために使用され、他方、第1の態様では1の主生成物(TEPA)が存在するのみである。従って以下に記載される副生成物は、これらの2つの態様における概念の定義に関して考慮されない。
【0076】
第1の態様では、使用されたDETDNの量に対して、有利に≧75質量%、特に≧90質量%の選択率でTEPAが得られる。
【0077】
「別のエチレンアミン」という概念は、本発明の範囲では、TEPA(第1の態様)、およびTETAとTEPA(第2の態様)とはそれぞれ異なった、少なくとも2つのエチレン単位および少なくとも2つの官能基を有する炭化水素含有化合物であると理解すべきであり、その際、官能基は第一級、第二級もしくは第三級アミノ基から選択されている。別のエチレンアミンとは、本発明の範囲では、環式化合物、たとえばピペラジン(Pip)ならびにその誘導体であると理解すべきである。同様に、エチレンジアミン(EDA)は、別のエチレンアミンとして理解されるべきである。DETAおよびPipは、C4(副)生成物と、およびAEPipおよびTETAは、C6(副)生成物ともよばれる。
【0078】
有利な別のエチレンアミンは、TETA(それぞれ第1の態様のみ)ならびにジエチレントリアミン(DETA)、ピペラジン(Pip)、アミノエチレンピペラジン(AE−Pip)またはジアミノエチルピペラジン(DAEPip)ならびにピペラジニルエチルエチレンジアミン(PEEDA)から選択されている。
【0079】
水素化に引き続き、場合により、たとえば溶剤および/または触媒を当業者に公知の方法で分離することによって、得られた生成物(TEPAまたはエチレンアミン混合物)を精製することができる。特に、主生成物(TEPAおよび場合によりTETA)は一緒に、または単独で当業者に公知の方法により反応生成物から単離することができる。両方の主生成物を一緒に、たとえば蒸留によって分離する場合、これらの生成物を引き続きそれぞれ両方単独の生成物に単離することができる。従って最終的には純粋なTEPAおよび純粋なTETAが得られる。その他の不純物、副生成物または別のエチレンアミン、たとえばDETAまたはPipは、同様に当業者に公知の方法でそのつどの生成物から分離することができる。あるいは、TETAを環式生成物であるPEEDAもしくはDEAPipと一緒に単離することも可能である。
【0080】
有利な実施態様では、本発明による方法は、溶剤としてテトラヒドロフランまたはメタノールを使用して実施する。水素化の際の温度は、有利には80〜140℃、圧力は有利には40〜160バールである。有利には水素化をEDAおよび/または場合によりアンモニアの存在下で実施する。
【0081】
以下の例は、本発明による方法を説明するものである。割合は、その他の記載がない限り、質量%で記載されている。連行される内部標準液であるジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)により、場合により形成される揮発性の分解成分を測定することによって生成物を定量化することができる。定量化はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行うが、その際、そのつど取り出された試料は、均質化のためにメタノールが添加される。
【0082】
実施例:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)を合成するための一般的な規定
変法a)
羽根型攪拌機を備えた6lの反応容器中に、ホルムアルデヒド(30%)6000g(60モル)を装入し、かつ水酸化ナトリウム溶液(1モル/l)でpH値を5.5に調整する。2.5時間以内に、青酸1661g(61.2モル)を、加熱されたU管を介して、攪拌機の下側に気体状で供給し、その際、反応温度は30℃、pH値は5.5に維持する。30分間の後攪拌の後で、pH値を硫酸(50%)で2.5に低下させる。リービッヒ滴定により相応する含有率を確認する。
【0083】
変法b)
羽根型攪拌機を備えた6lの反応容器中に、ホルムアルデヒド(30%)7000g(70モル)を装入し、かつ水酸化ナトリウム溶液(1モル/l)でpH値を5.5に調整する。3時間以内に、青酸1938g(71.4モル)を、50℃に加熱されたU管を介して、攪拌機の下側に気体状で供給し、その際、反応温度は30℃、pH値は5.5に維持する。10分間の後攪拌の後で、pH値を硫酸(50%)で2.5に調整する。低沸点成分、特に青酸を分離除去するために、反応搬出物をサムベイ蒸留(たとえば"Chemie Ingenieur Technik, 第27巻、第257〜261頁に記載されているように)(1ミリバール、30℃)に供する。リービッヒ滴定により相応する含有率を確認し、かつ場合により水の添加によってFACH43〜44%もしくは67%の含有率に調整する。
【0084】
例1:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを一般的な規定により変法b)で製造する。
【0085】
ジエチレントリアミンジアセトニトリル
2lの反応容器中に、DETA165g(2.2モル)を装入し、かつ氷冷下に最大温度30℃で2時間以内に、FACH(44.6%)511g(4モル)を滴加する。3時間の後攪拌の後で、わずかに黄色の溶液が生じる。FACHの反応率はリービッヒ滴定によれば99.3%である。反応バッチは、遊離の青酸0.09%(フォルハードの滴定により測定)を含有している。滴定により、使用されたFACHに対して90.2%のDETDNの収率が得られる。DETMNは、滴定により測定することができなかった。反応したジエチレントリアミンの、DETDNへと反応しなかったものからDETMNが形成されたとの仮定の下で、全アミノニトリル収率として93.5%ひいてはDETMNの収率3%が生じる。
【0086】
テトラエチレンペンタアミン−TEPA
a)得られた生成物(DETDNの製造)を半回分式の方法で水素化する。この場合、270mlのオートクレーブ中に、Crドープしたラネーコバルト触媒3.25gならびにTHF15mlを装入する。オートクレーブを120℃に加熱し、全圧力が100バールになるまで水素を圧入する。120分以内に、THF106g中の粗DETDN溶液13.8g、不活性標準液13.8gならびに水10gからなる混合物を計量供給する。反応混合物をさらに反応条件下で60分間撹拌する。搬出物をメタノールで均質化する。選択率は、PEEDA12%、ならびにTEPA67%である。さらにC4生成物およびC6生成物(Pip、DETA、TETAおよびAEPIP)が9%得られる。
【0087】
DETDN合成における過剰のDETAによって、DETMNも形成され、これはC6生成物であるTETAおよびAEPIPへと水素化される。
【0088】
b)得られた生成物(DETDNの製造)を半回分式の方法で水素化する。この場合、270mlのオートクレーブ中に、Crドープしたラネーコバルト触媒3.25g、THF15mlおよびEDA13.5gを装入する。オートクレーブを120℃に加熱し、全圧力が100バールになるまで水素を圧入する。120分以内に、THF106g中の粗DETDN溶液13.8g、内部標準液13.8gならびに水10gからなる混合物を計量供給する。反応混合物をさらに反応条件下で60分間撹拌する。搬出物をメタノールで均質化する。選択率はPEEDA6%ならびにTEPA76%である。さらに、C4生成物およびC6生成物が14%得られる。
【0089】
EDAの添加によって、より多くの線状TEPAが形成される。同様にC4生成物およびC6生成物の増加が判明したが、これはEDAの縮合に起因する。
【0090】
c)得られた生成物(DETDNの製造)を半回分式の方法で水素化する。この場合、270mlのオートクレーブ中に、Crドープしたラネーコバルト触媒3.25gならびにTHF15mlを装入する。オートクレーブを120℃に加熱し、全圧力が100バールになるまで水素を圧入する。120分以内に、THF106g中の粗DETDN溶液13.8g、内部標準液13.8gからなる混合物を計量供給する。反応混合物をさらに反応条件下で60分間撹拌する。搬出物をメタノールで均質化する。選択率はPEEDA6%ならびにTEPA82%である。さらに、C4生成物およびC6生成物が10%得られる。
【0091】
例1aおよび1bと比較して、水の付加的な添加を断念したが、これによりTEPA選択率に対して肯定的な作用がもたらされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)を、触媒および溶剤の存在下で水素化する、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)の製造方法。
【請求項2】
DETDNが、i)少なくとも30質量%のDETDNおよびii)少なくとも5質量%のジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)を含有するアミノニトリル混合物中に存在している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ラネー触媒、有利にはラネーニッケル触媒またはラネーコバルト触媒、特にCo/Al合金から、アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いた溶解除去により得られ、かつ助触媒として元素のFe、NiもしくはCrの少なくとも1を含有するラネーコバルト骨格触媒を使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
溶剤が、水および/または有機溶剤、特にテトラヒドロフランまたはメタノールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
圧力が、30〜250バールであり、かつ/または温度が70°〜140℃であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
アミノニトリル混合物中に、10〜70質量%のDETMNが含有されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
水素化後に、TEPA、トリエチレンテトラアミン(TETA)および場合によりそのつど得られる反応生成物中に副生成物として含有されている別のエチレンアミンを単離することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
DETDNおよびDETMNを、ジエチレントリアミン(DETA)およびホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)の反応により製造することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
DETAおよびFACHの反応を、水の存在下で行うことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
DETAおよびFACHからのDETDNの製造に引き続き直接にDETDNの水素化を行い、その際、場合により水素化前に水の低減および/または低沸点成分の分離除去を実施することを特徴とする、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
DETDNが、請求項2に記載のアミノニトリル混合物中に存在していることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
DETDNが水素化の際に水素と反応する速度を上回らない速度で、DETDNを水素化に供給することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水素化を、添加剤の存在下に、特にエチレンジアミン(EDA)またはアンモニアの存在下に実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)またはジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)から選択されるアミノニトリル。
【請求項15】
請求項14記載のアミノニトリルまたはこれらの混合物の製造方法において、ジエチレントリアミン(DETA)をホルムアルデヒドおよび青酸(HCN)と反応させることを特徴とする、請求項14記載のアミノニトリルまたはこれらの混合物の製造方法。
【請求項16】
ホルムアルデヒドおよびHCNをまずホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)へと反応させ、引き続きDETAをFACHと反応させることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
DETA対FACHのモル比が、1:1.5〜1:2[モル/モル]であることを特徴とする、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2010−520163(P2010−520163A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551191(P2009−551191)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052335
【国際公開番号】WO2008/104551
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】