説明

テトラリン及びインダン誘導体、並びにそれらの5−HT拮抗薬としての使用

式(I)(式中、m、p、q、Ar、R及びRは明細書に定義されたとおりである)で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩。また、式(I)の化合物を、製造するための方法、含有する組成物、及び使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換されたインダン及びテトラリン化合物、並びに関連する組成物、所定のCNS疾患に対して有用な医薬の製造のためのそれらの使用、並びにそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
より詳細には、本発明は、
式I:
【0003】
【化6】

【0004】
(式中、
mは、0〜3であり;
pは、1〜3であり;
qは、0、1又は2であり;
Arは、場合により置換されたアリール又は場合により置換された5〜12員のヘテロアリールであり;
各R1は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ヘテロアルキル、シアノ、−S(O)−R、−C(=O)−NR、−SO2−NR、−N(R)−C(=O)−R又は−C(=O)−Rであり、ここでqは、0〜2であり、R、R、R及びRは、各々独立して、水素又はC1−12−アルキルであり、かつRは、水素、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はヒドロキシであり;
2は、
【0005】
【化7】

【0006】
であり;
Xは、−O−又は−NR7−であり;
nは、2又は3であり;
3及びR4は、各々独立して、水素若しくはアルキルであるか、又はR3とR4は一緒になって、−C(O)−を形成してもよく;
5及びR6は、各々独立して、水素若しくはC1−12−アルキルであるか、又はR5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよいか、又はR5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよく;かつ
7は、水素又はC1−12−アルキルである)
で示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0007】
本発明はまた、前述した化合物の製造方法、使用方法、及び前述した化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0008】
脳内における主要な調節性神経伝達物質としての5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)の作用は、5−HT1、5−HT2、5−HT3、5−HT4、5−HT5、5−HT6、及び5−HT7と称される多数の受容体ファミリーにより仲介される。脳内の5−HT6受容体mRNAの高いレベルに基づき、5−HT6受容体は、中枢神経系の疾患の病理及び治療に役割を有し得ることが述べられている。より詳細には、5−HT2−選択的及び5−HT6選択的リガンドは、所定のCNS疾患、例えばパーキンソン病、ハンチントン病、不安症、うつ病、躁うつ病、精神病、てんかん、強迫性障害、気分障害、偏頭痛、アルツハイマー病(認知記憶の増強)、睡眠障害、例えば拒食症、過食症及び肥満症等の摂食障害、パニック発作、静座不能、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、例えばコカイン、エタノール、ニコチン及びベンゾジアゼピン系薬剤等の薬物乱用からの禁断(離脱)、統合失調症、並びに、例えば脊髄損傷及び/又は水頭症等の頭部外傷に関連した疾患の治療に潜在的に有用であることが確認されている。これらの化合物はまた、機能性腸障害などの所定の胃腸(GI)疾患の治療に有用であることも期待される。例えば、B.L. Roth et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1994, 268, pages 1403-14120, D. R. Sibley et al., MoI. Pharmacol., 1993, 43, 320-327, AJ. Sleight et al., Neurotransmission, 1995, 11, 1-5,及びA.J. Sleight et al., Serotonin ID Research Alert, 1997, 2(3), 115-8を参照されたい。
【0009】
数種の5−HT6及び5−HT2A調節因子が開示されているが、5−HT6受容体、5−HT2A受容体又はその両方の調節に有用な化合物は、依然として必要とされている。
【0010】
本発明は、置換されたキノリノン化合物、関連する組成物、医薬の製造のためのそれらの使用、並びにそれらの製造方法を提供する。特定の実施態様において、本発明は、ピペラジニル−置換キノリノン化合物及び関連する医薬組成物、並びに中枢神経系(CNS)疾病及び胃腸管疾患の治療に有用な医薬の製造のためのそれらの使用を提供する。
【0011】
本開示に引用した全刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0012】
別に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲を含む本願で使用する以下の用語は、以下に提供する定義を有する。明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、別に明白に指定しない限り、複数の参照を含むことに留意する必要がある。
【0013】
「作動薬」は、他の化合物又は受容体部位の活性を高める化合物を指す。
【0014】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する、炭素及び水素原子のみからなる一価の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基(即ち、「C1−C6アルキル」)を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシル、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
「アルキレン」は、1〜6個の炭素原子からなる直鎖状の飽和二価炭化水素基、又は3〜6個の炭素原子からなる分岐鎖状の飽和二価炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレン、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0016】
「アルケニレン」は、2〜6個の炭素原子からなる直鎖状の不飽和二価炭化水素基、又は3〜6個の炭素原子からなる分岐鎖状の不飽和二価炭化水素基を意味し、例えばエテニレン(−CH=CH−)、2,2−ジメチルエテニレン、プロペニレン、2−メチルプロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0017】
「アルコキシ」は、−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義したアルキルである。アルコキシ部分の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0018】
「アミノアルキル」は、R’がアミノであり、Rが本明細書で定義したアルキレンである−R−R’基を意味する。「アミノアルキル」は、アミノメチル、アミノエチル、1−アミノプロピル、2−アミノプロピル等を含む。「アミノアルキル」のアミノ部分は、アルキルで1回又は2回置換されて、各々「アルキルアミノアルキル」及び「ジアルキルアミノアルキル」を提供してもよい。「アルキルアミノアルキル」は、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、エチルアミノエチル等を含む。「ジアルキルアミノアルキル」は、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、N−メチル−N−エチルアミノエチル、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0019】
「拮抗薬」は、他の化合物又は受容体部位の作用を低下させるか、又は防止する化合物を指す。
【0020】
「アリール」は、単環、二環又は三環の芳香族環からなる一価の環状芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、場合により、本明細書に定義するように置換され得る。アリール部分の例は、フェニル、ナフチル、ナフタレニル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラヂニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含み、またそれらの部分的水素化誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0021】
「アリーレン」は、二価のアリール基を意味し、ここでアリールは、本明細書に定義されている。「アリーレン」は、例えば、オルト−、メタ−及びパラ−フェニレン(各々、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン及び1,4−フェニレン)を含み、これらは場合により、本明細書に定義するように置換されてもよい。
【0022】
交換可能に使用し得る「アリールアルキル」及び「アラルキル」は、Rがアルキレン基であり、R’が本明細書で定義するアリール基である、基−R−R’を意味し;例えば、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチル、及び以後、本発明による化合物の例に記述される基は、アリールアルキルの例である。
【0023】
「シクロアルキル」は、単環又は二環からなる飽和炭素環部分を意味する。シクロアルキルは、場合により、一つ又はそれ以上の置換基で置換され得、ここで、各置換基は、独立して、別に明確に指定しない限り、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。シクロアルキル部分の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を含み、またそれらの部分的不飽和誘導体、例えばシクロヘキセニル、シクロペンテニル等を含み、並びに以後、本発明による化合物の例に記述する基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
「シクロアルキルアルキル」は、Rがアルキレンであり、R’が本明細書で定義するシクロアルキルである、式−R−R’部分を意味する。
【0025】
「ヘテロアルキル」は、該ヘテロアルキル基の結合地点が炭素原子を介していることを理解した上で、1個、2個又は3個の水素原子が、−OR、−NR及び−S(O)(ここで、nは、0〜2の整数である)からなる群より独立して選択される置換基に置き換わっている、本明細書に定義するアルキル基を意味し、式中、Rは水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり;R及びRは、互いに独立して、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり;nが0のとき、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2のとき、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。代表的な例は、メトキシ、エトキシ、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピル、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
「ヘテロアリール」は、該ヘテロアリール基の結合地点が芳香族環上であることを理解した上で、N、O又はSから選択される1個、2個又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである少なくとも1個の芳香族環を有する、5〜12個の環原子からなる単環式又は二環式の一価基を意味する。ヘテロアリール環は、場合により、本明細書に定義するように置換されてもよい。ヘテロアリール部分の例は、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、ベンゾチエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジル、ピリジニル、ピリダジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾニル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル等を含み、また、それらの部分的水素化誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。上記のヘテロアリール部分は、部分的に飽和であってもよい。従って、「ヘテロアリール」は、「イミダゾリニル」、「テトラヒドロピリミジニル」、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0027】
「ヘテロアリーレン」は、二価のヘテロアリール基を意味し、ここでヘテロアリールは、本明細書に定義されている。「ヘテロアリーレン」は、場合により、本明細書に定義するように置換されてもよい。「ヘテロアリーレン」は、例えば、インドリレン、ピリミジニレン、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0028】
交換可能に使用し得る用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、置換基フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0029】
「ハロアルキル」は、1個又はそれ以上の水素が、同一又は異なるハロゲンに置き換えられている、本明細書に定義するアルキルを意味する。例示的なハロアルキルは、−CH2Cl、−CH2CF3、−CH2CCl3、パーフルオロアルキル(例えば、−CF3)、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含む。
【0030】
「ヘテロシクロアミノ」は、少なくとも1個の環原子が、N、NH又はN−アルキルであり、残りの環原子が、アルキレン基を形成する飽和環を意味する。
【0031】
「ヘテロシクリル」は、1個、2個又は3個若しくは4個のヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄から選択される)を組み込んだ、1〜3個の環からなる一価の飽和部分を意味する。ヘテロシクリル環は、場合により、本明細書に定義するように置換されてもよい。ヘテロシクリル部分の例は、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリリジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、及び以後、本発明による化合物の例に記述する基を含み、またそれらの部分的不飽和の誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
「場合により置換された」は、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」又は「ヘテロシクリル」に関連して使用された場合、場合により、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ(例えば、F)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(式中、Rは、水素、アルキル、フェニル若しくはフェニルアルキルである)、−(CR’R”)−COOR(式中、nは、0〜5の整数であり、R’及びR”は、独立して、水素若しくはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、又は−(CR’R”)−CONR(式中、nは、0〜5の整数であり、R’及びR”は、独立して、水素若しくはアルキルであり、R及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル若しくはフェニルアルキルである)から選択される1〜4個の置換基で、好ましくは1〜2個の置換基で独立して置換された、アリール、フェニル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルを意味する。
【0033】
「脱離基」は、従来、合成有機化学において、それに関連した意味を有する基、即ち、置換反応条件下で置換可能な原子又は基を意味する。脱離基の例は、ハロゲン、アルカン−又はアリーレンスルホニルオキシ、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、及びチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されたベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシ、並びに以後、本発明による化合物の例に記述する基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0034】
「調節因子」は、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用は、本明細書で定義する作動薬、拮抗薬等を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0035】
「場合による」又は「場合により」は、その後に記載する事象又は状況が発生してもよいが、必ずしも発生する必要はなく、また、該記載は、事象又は状況が発生する場合と、発生しない場合とを含むことを意味する。
【0036】
「疾病状態」は、任意の疾病、状態、症状又は徴候を意味する。
【0037】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、溶媒が、その溶媒と共に記載される反応の条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン、又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジン等を含む。反対に特定しない限り,本発明の反応に使用される溶媒は、不活性溶媒である。
【0038】
「薬学的に許容され得る」は、概して安全で無毒な、及び生物学的にもそれ以外にも望ましくないものではない医薬組成物の調製に有用であることを意味し、獣医学的及びヒト医薬への使用に許容されるものを含む。
【0039】
化合物の「薬学的に許容され得る塩」は、本明細書に定義するように薬学的に許容され得、かつ親化合物の所望の薬理活性を所有する塩を意味する。そのような塩は、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸と共に形成された酸付加塩;又は例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等の有機酸と共に形成された酸付加塩;あるいは
親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンに置き換えられるか;又は有機若しくは無機塩基と配位する際に形成される塩を含む。許容され得る有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等を含む。許容され得る無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む。
【0040】
好ましい薬学的に許容され得る塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。
【0041】
薬学的に許容され得る塩への全ての言及は、同一の酸付加塩の、本明細書に定義する溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を含むことを理解するべきである。
【0042】
本明細書において交換可能に使用され得る用語「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」は、そのプロドラッグが哺乳動物対象に投与された際に、インビボで式Iに係わる活性親薬物を放出する任意の化合物を指す。式Iの化合物のプロドラッグは、式Iの化合物に存在する一つ又はそれ以上の官能基を修飾し、該修飾がインビボで切断されて、親化合物を放出し得るように調製される。プロドラッグは、式Iの化合物のヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が、インビボで切断されて、各々、遊離のヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基を再生し得る任意の基に結合している式Iの化合物を含む。プロドラッグの例は、式Iの化合物のヒドロキシ官能基のエステル(例えば、酢酸エステル、ギ酸エステル及び安息香酸エステル誘導体)、カルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミン、式Iの化合物のケトン及びアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタール及びエノールエステル等を含むが、これらに限定されるわけではない。Bundegaard, H. 「Design of Prodrugs」p1-92, Elesevier, New York-Oxford (1985)等を参照されたい。
【0043】
「保護基」又は「保護する基」は、従来の合成化学のそれに関連した意味において、多官能基化合物の一の反応性部位を、他の保護されていない反応性部位で化学反応が選択的に行われ得るように、選択的に遮断する基を意味する。本発明のある工程は、反応関与体に存在する反応性窒素及び/又は酸素原子を遮断する保護基に依存している。例えば、用語「アミノ保護基」及び「窒素保護基」は、本明細書において交換可能に使用され、合成手順中、窒素原子を望ましくない反応から保護することを意図する有機基を指す。例示的な窒素保護基は、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)等を含むが、これらに限定されるわけではない。当業者は、除去が容易であり、かつ後に続く反応に耐えられる基を選択することができる。
【0044】
「溶媒和物」は、化学量論的な量、又は化学量論的ではない量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。数種の化合物は、結晶固体状態内に一定のモル比の溶媒分子を捕捉して、溶媒和物を形成する傾向がある。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は、水和物であり、溶媒がアルコールの場合、形成される溶媒和物は、アルコラートである。水和物は、水分子の一つ又はそれ以上と物質の一つとが組み合わされて形成され、ここで、水はその分子状態をH2Oとして維持し、このような組み合わせは、一種又はそれ以上の水和物を形成することができる。
【0045】
「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒト;例えばチンパンジー及び他の類人猿、並びに猿種等の非ヒト霊長類;例えば牛、馬、羊、山羊及び豚等の家畜;例えば兎、犬及び猫等の家庭動物;例えばラット、マウス及びモルモット等の齧歯類を含む実験動物;等を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物のクラスを意味する。非哺乳動物の例は、鳥等を含むが、これに限定されるわけではない。用語「対象」は、特定の年齢又は性別を示さない。
【0046】
「治療的有効量」は、疾病状態の治療のために対象に投与された場合、その疾病状態を治療するに十分な量を意味する。「治療的有効量」は、化合物、治療する疾病状態、治療される疾病の重篤さ、対象の年齢及び相対的健康、投与経路及び形態、主治医又は獣医の判断、並びに他の要素に応じて変動するであろう。
【0047】
用語「上記に定義したもの」及び「本明細書に定義したもの」は、変化するものに関する場合、参照により、変化するものの幅広い定義と、もし存在するならば、好ましい、より好ましい及び最も好ましい定義とを組み込む。
【0048】
疾病状態を「治療する」又は疾病状態の「治療」は、
(i)疾病状態の予防、即ち、疾病状態に暴露され得るか、若しくは罹りやすくなっている被験者における、該疾病状態の臨床的症状を進展させないこと、
(ii)疾病状態の抑制、即ち、疾病状態若しくはその臨床的症状の進展を抑止すること、又は
(iii)疾病状態の軽減、即ち、疾病状態若しくはその臨床的症状を、一時的若しくは永久的に後退させることを含む。
【0049】
用語「処理する」、「接触させる」及び「反応させる」は、化学反応に関する場合、指定の及び/又は所望の生成物を生成するために、適切な条件下で、二種又はそれ以上の試薬を加え又は混合することを意味する。指定の及び/又は所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に加えた二種の試薬の組み合わせから直接起こるわけではなく、即ち、混合物中で生成した一種又はそれ以上の中間体が存在し得、これが最終的に指定の及び/又は所望の生成物の形成に繋がってもよいことを理解すべきである。
【0050】
一般に、本願にて使用する命名法は、IUPAC体系的な命名法を生成するAUTONOM(商標)v.4.0、Beilstein Instituteコンピュータ化システムに基づいている。本明細書に示す化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。
【0051】
本明細書において、化学構造中の炭素、酸素又は窒素原子上に現れている任意の空の原子価は、水素の存在を示す。
【0052】
本発明の範囲は、存在し得る様々な異性体のみならず、形成され得る異性体の様々な混合物も包含することを理解すべきである。更に、本発明の範囲は、
式I:
【0053】
【化8】

【0054】
(式中、
mは、0〜3であり;
pは、1〜3であり;
qは、0、1又は2であり;
Arは、場合により置換されたアリール又は場合により置換された5〜12員のヘテロアリールであり;
各R1は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ヘテロアルキル、シアノ、−S(O)−R、−C(=O)−NR、−SO2−NR、−N(R)−C(=O)−R又は−C(=O)−Rであり、ここでqは、0〜2であり、R、R、R及びRは、各々独立して、水素又はC1−12−アルキルであり、かつRは、水素、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はヒドロキシであり;
2は、
【0055】
【化9】

【0056】
であり、
Xは、−O−又は−NR7−であり;
nは、2又は3であり;
3及びR4は、各々独立して、水素若しくはC1−12−アルキルであるか、又はR3とR4は一緒になって、−C(O)−を形成してもよく;
5及びR6は、各々独立して、水素若しくはC1−12−アルキルであるか、又はR5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよいか、又はR5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよく;かつ
7は、水素又はC1−12−アルキルである)
で示される化合物の溶媒和物及び塩、又はその薬学的に許容され得る塩も包含する。
【0057】
式Iの数個の実施態様において、pは1又は2であり、特定の実施態様において、pは2である。多くの実施態様において、qは2である。
【0058】
式Iの所定の実施態様において、Arは、場合により、一つ又はそれ以上のハロ、好ましくは一つ又はそれ以上のFで置換された、アリール又は5〜12員のヘテロアリールである。
【0059】
所定の実施態様において、本発明の化合物は、
式II:
【0060】
【化10】

【0061】
(式中、m、Ar、R1及びR2は、本明細書に定義したとおりである)
で示される化合物であり得る。
【0062】
式I及び式IIのいくつかの実施態様において、pは1又は2であり、特定の実施態様において、pは1である。多くの実施態様において、mは0又は1であり、R1は好ましくはハロである。所定の実施態様において、Arは、場合により置換されたアリール、例えばフェニル又はナフチルであり、各々、場合により(例えば、ハロ、好ましくはFで)置換されている。別の実施態様において、Arは、場合により置換されたヘテロアリール、例えばチエニル、ピリジル又はピリミジルであってもよく、各々、場合により(例えば、ハロ、好ましくはFで)置換されている。
【0063】
本発明の所定の実施態様において、式I及び式IIの化合物は、2に等しいnを有しかつXが−O−である。このような実施態様において、R5及びR6は両方とも水素であってもよく、又は代替的に、R5及びR6の一方は水素であってもよいが、他方はC1−12−アルキル、好ましくはメチルである。nが2でありかつXが−O−である式I及び式IIの別の実施態様において、R3及びR4は水素である。nが2でありかつXが−O−である式I及び式IIの更に別の実施態様において、R5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、4〜6員環を形成してもよい。nが2でありかつXが−O−である式1及び式IIの更なる実施態様において、R3とR4は一緒になって−C(O)−を形成してもよい。
【0064】
本発明の所定の実施態様において、式I及び式IIの化合物は、2に等しいnを有しかつXが−NR7−である。このような実施態様において、R5及びR6は両方とも水素であってもよく、又は代替的に、R5及びR6の一方は水素であってもよいが、他方はC1−12−アルキル、好ましくはメチルである。nが2でありかつXが−NR7−である式I及び式IIの別の実施態様において、R3及びR4は水素である。nが2でありかつXが−NR7−である式I及び式IIのなお別の実施態様において、R5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、4〜6員環を形成してもよい。nが2でありかつXが−NR7−である式I及び式IIの更なる実施態様において、R3とR4は一緒になって−C(O)−を形成してもよい。
【0065】
本発明の所定の実施態様において、式I及び式IIの化合物は、3に等しいnを有しかつXが−O−である。このような実施態様において、R5及びR6は両方とも水素であってもよく、又は代替的に、R5及びR6の一方は水素であってもよいが、他方はC1−12−アルキル、好ましくはメチルである。nが3でありかつXが−O−である式I及び式IIの別の実施態様において、R3及びR4は水素である。nが3でありかつXが−O−である式I及び式IIのなお別の実施態様において、R5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、4〜6員環を形成してもよい。nが3でありかつXが−O−である式I及び式IIの更なる実施態様において、R3とR4は一緒になって−C(O)−を形成してもよい。nが3でありかつXが−O−である式I及び式IIのなお更なる実施態様において、R5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、4〜6員、好ましくは6員環を形成してもよい。
【0066】
本発明の所定の実施態様において、式I及び式IIの化合物は、3に等しいnを有しかつXが−NR7−である。このような実施態様において、R5及びR6は両方とも水素であってもよく、又は代替的に、R5及びR6の一方は水素であってもよいが、他方はC1−12−アルキル、好ましくはメチルである。nが3でありかつXが−NR7−である式I及び式IIの別の実施態様において、R3及びR4は水素である。nが3でありかつXが−NR7−である式I及び式IIのなお別の実施態様において、R5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、4〜6員環を形成してもよい。nが3でありかつXが−NR7−である式I及び式IIの更なる実施態様において、R3とR4は、一緒になって−C(O)−を形成してもよい。nが3でありかつXが−NR7−である式I及び式IIのなお更なる実施態様において、R5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、4〜6員、好ましくは6員環を形成してもよい。
【0067】
式I及び式IIの所定の実施態様において、R2はC1−12−アミノアルキルであってもよい。
【0068】
式I及び式IIの所定の実施態様において、R2は、
【0069】
【化11】

【0070】
(式中、R5、R6及びR7は、本明細書に定義したとおりである)
であってもよい。
【0071】
所定の実施態様において、本発明の化合物は、より詳細には、
式IIIa又は式IIIb:
【0072】
【化12】

【0073】
(式中、
sは、0〜4であり;
各R8は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ヘテロアルキル、シアノ、−S(O)−R、−C(=O)−NR、−SO2−NR、−N(R)−C(=O)−R又は−C(=O)−Rであり、ここでrは、0〜2であり、R、R、R及びRは、各々独立して、水素又はC1−12−アルキルであり、Rは、水素、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はヒドロキシであり;かつ
n、R5及びR6は、本明細書に定義したとおりである)
で示される化合物であってもよい。
【0074】
式IIIa又は式IIIbの所定の実施態様において、sは、0〜2であり、各R8は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はC1−12−ハロアルキルである。これらの多くの実施態様において、nは2である。そのような化合物は、より好ましくは式IIIaの化合物である。そのような実施態様において、R5は水素であってもよく、R6はメチルであってもよい。
【0075】
本明細書のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R、R、R、R及びRのいずれかが、アルキルであるか、又はアルキル部分を含む場合、そのアルキルは、好ましくは低級アルキル、即ちC1−6アルキル、より好ましくはC1−4−アルキルである。
【0076】
表1に、本発明による代表的な化合物を、融点又は質量分析値M+Hと共に示し、また各化合物に関連した実験の例(以下に記載する)を示す。融点は、多くの場合、表1に示すように、対応する付加塩に関して示している。
【0077】
【表1】



【0078】
本発明の他の態様は、治療的有効量の少なくとも一種の式(I)化合物と、薬学的に許容され得る担体とを含有する組成物を提供する。
【0079】
本発明の更に他の態様は、対象における中枢神経系(CNS)疾病状態の治療方法であって、対象に、治療的有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。疾病状態は、例えば、精神病、統合失調症、躁うつ病、神経疾患、記憶障害、注意欠陥障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病又はハンチントン病を含んでもよい。
【0080】
本発明のなお別の局面は、対象における胃腸管の疾患の治療方法であって、対象に、治療的有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0081】
本発明の別の局面では、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0082】
本発明の化合物は、以下に示し、かつ記載する例示的な合成反応スキームに描く様々な方法によって製造され得る。
【0083】
これら化合物の調製に使用する出発物質及び試薬は、一般に、例えばAldrich Chemical Co.等の販売元から入手し得るか、又は例えばFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley&Sons: New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplementals;及びOrganic Reactions, Wiley&Sons: NewYork, 2004, Volumes 1-56等の参考文献に示される手順に従って、当業者に周知の方法によって調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成し得る数個の方法の単なる例示であり、これら合成反応スキームは、多様に変更することができ、該変更は、本願に含まれる開示を参照した当業者に提示されるであろう。
【0084】
合成反応スキームの出発物質及び中間体は、所望であれば、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を含むが、これらに限定されない従来の技術を用いて、単離及び精製し得る。これらの物質は、物理定数及びスペクトルデータを含む従来の手段を用いて、特徴付けし得る。
【0085】
特記のない限り、本明細書に記載する反応は、好ましくは不活性雰囲気下で、大気圧にて約−78〜約150℃、より好ましくは約0〜約125℃の範囲の、最も好ましくかつ好都合には、ほぼ室温(又は周囲温度)、例えば約20℃の反応温度で実施する。
【0086】
下のスキームAに、本発明の化合物の調製に使用可能な合成手順の一つを説明する。ここで、X、Ar、m、p、q、R1、R3、R4、R5及びR6は、本明細書に定義したとおりである。インダン及びテトラリンに至る多数の合成経路が公知であり、対象化合物の調製に使用し得、またスキームAの手順は、単なる典型である。以下の実験セクションに、スキームAの手順の特定の例を提供する。
【0087】
【化13】

【0088】
スキームAのステップ1において、ケトン化合物を還元して、対応するアルコール化合物を与える。ケトン化合物は、例えば、qが2でありpが1であるアリールスルホニルインダノン、qが2でありpが2であるアリールスルホニルテトラリノン、qが2でありpが3であるアリールスルホニルベンゾアゼピノン、又は本発明に従った類似のケトンを含んでもよい。このステップでは、対応するアリールスルファニル(q=0)及びアリールスルフィニル(q=1)ケトン化合物を使用してもよい。ケトン化合物は、当該技術分野にて周知の多様な技術により調製してもよく、これら化合物を調製する特定の例は、本開示の以下の実験セクションに提供する。ステップ1の還元反応は、弱プロトン性溶媒条件下で、ケトン化合物を水素化ホウ素ナトリウムで処理して達成し得る。
【0089】
ステップ2において、アルコール化合物bを塩素化に付して、塩化ニトリル化合物を提供する。この反応は、無極性溶媒条件下で、塩化チオニルを用いて達成してもよい。
【0090】
化合物を塩素化合物と反応させることによって、ステップ3でアルキル化反応を実施して、本発明による式Iの化合物である化合物を得る。化合物dにおいて、Xは、−O−又は−NR7−であってもよく、ここでR7は、上記に定義したとおりである。R5及びR6の一方又は両方が水素の場合、このステップで、適切な保護及び脱保護戦略を使用してもよい。
【0091】
スキームAの手順に関して多くの変更が可能であり、当業者には容易に明らかとなろう。XがOである所定の実施態様では、ステップ2及びステップ3は、化合物を適切なハロゲン化アミノアルキル又はハロゲン化ヘテロアルキルで処理(次いで、アミン官能基を導入するように修飾してもよい)することによる、O−アルキル化反応に置き換えてもよい。
【0092】
以下の実施例セクションに、式Iの化合物を製造するための特定の詳細について記載する。
【0093】
本発明の化合物は、5−HT6、5−HT2A受容体、又はその両方を含む5−HT受容体に対する選択的親和性を有し、そのようなものとして、例えばパーキンソン病、ハンチントン病、不安症、うつ病、躁うつ病、精神病、てんかん、強迫性障害、気分障害、片頭痛、アルツハイマー病(認知記憶の増強)、睡眠障害、例えば拒食症、過食症及び肥満症等の摂食障害、パニック発作、静座不能、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、コカイン、エタノール、ニコチン及びベンゾジアゼピン系薬剤等の薬物乱用からの禁断(離脱)、統合失調症、並びに、例えば脊髄損傷及び/又は水頭症等の頭部外傷に関連した疾患等の、所定のCNS疾患の治療に有用であることが期待される。このような化合物はまた、例えば機能性腸障害及び過敏性腸症候群等の所定のGI(胃腸)疾患の治療にも有用であることが期待される。
【0094】
試験
本発明の化合物の薬効薬理を、当該技術分野にて認められた手順により測定した。5−HT6受容体及び5−HT2A受容体における試験化合物の親和性を測定する、インビトロでの技術を、以下に記載する。
【0095】
投与及び医薬組成物
本発明は、少なくとも一種の本発明の化合物、又は個々の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、又はその薬学的に許容され得る塩若しくは溶媒和物を、少なくとも一種の薬学的に許容され得る担体、並びに場合により他の治療及び/又は予防成分と共に含有する医薬組成物を含む。
【0096】
一般に、本発明の化合物は、類似する有用性を有する薬剤の、任意の許容される投与様式による治療的有効量にて投与されるであろう。適切な用量範囲は、例えば治療するべき疾病の重篤さ、対象の年齢及び相対的健康、使用する化合物の効力、投与の経路及び剤形、投与が向けられる適応症、並びに関与する開業医の選択及び経験等の多数の要素に応じて、一般に、一日1〜500mgであり、好ましくは一日1〜100mgであり、最も好ましくは一日1〜30mgである。これらの疾病を治療する当業者の一人は、必要以上の実験を行うことなく、個人的な知識及び本願の開示に依存した上で、所定の疾病のための本発明の化合物の治療的有効量を確定し得るであろう。
【0097】
一般に、本発明の化合物は、経口(バッカル及び舌下を含む)、経直腸、鼻腔内、局所、肺内、経膣、又は非経口(筋内、動脈内、くも膜下腔内、皮下及び静脈内を含む)投与に適切な医薬製剤として、又は吸入若しくは吸気による投与に適切な形態で、投与されるであろう。好ましい投与方法は、一般に、苦痛の程度に従って調整され得る簡便な一日用量投与計画による経口である。
【0098】
本発明の一種又は複数の化合物は、一種又はそれ以上の従来の補助剤、担体又は希釈剤と共に、医薬組成物及び単位用量の形態に形成されてもよい。医薬組成物及び単位剤形は、従来の成分を、更なる活性化合物又は主成分と伴に又は伴にではなく、従来の比率で含有してもよく、また、単位剤形は、意図される用いるべき一日用量範囲に相応した、活性成分の任意の適切な有効量を含有してもよい。医薬組成物は、経口使用のための、例えば錠剤若しくは充填カプセル剤、半固形剤、散剤、持続放出製剤等の固体として、若しくは例えば液剤、縣濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくは充填カプセル剤等の液体として;又は直腸若しくは経膣投与のための坐剤の剤形で;又は非経口使用のための無菌注射剤の剤形で使用してもよい。従って、錠剤当たり活性成分約1ミリグラム、又は、より幅広く約0.01〜約100ミリグラムを含有する製剤は、代表的な適切な単位剤形である。
【0099】
本発明の化合物は、非常に様々な種類の経口投与用の剤形に製剤化されてもよい。医薬組成物及び剤形は、活性成分として、一種若しくは複数の本発明の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩を含有してもよい。薬学的に許容され得る担体は、固体又は液体のいずれかであってもよい。固体形態の製剤は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又は封入材としても作用し得る一種又はそれ以上の物質であってもよい。散剤において、担体は、一般に、微粉化した活性成分との混合物である微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、一般に、適切な比率で必要な結合能力を有する担体と混合され、所望の形状及び寸法に圧縮される。散剤及び錠剤は、好ましくは、約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ショ糖、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等を含むが、これらに限定されるわけではない。用語「製剤」は、担体としての封入材を伴う活性化合物の製剤を含むことを意図し、活性成分が担体を伴い又は伴わずに、該活性成分に結合した担体により包囲されるカプセル剤を提供する。同様に、カシェ剤及びロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジは、経口投与に適切な固体形態として存在してもよい。
【0100】
経口投与に適切な他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性縣濁剤を含む液体形態の製剤、又は使用直前に液体形態の製剤に転換されることを意図した固体形態の製剤を含む。乳剤は、例えば、プロピレングリコール水溶液等の溶液中で調製されてもよく、又は例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタン若しくはアカシア等の乳化剤を含有してもよい。液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、矯味矯臭剤、安定剤及び増粘剤を加えることにより調製し得る。水性縣濁剤は、微粉化した活性成分を、例えば天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び周知の他の懸濁化剤等の粘性材料と共に、水に分散して調製し得る。液体形態の製剤は、液剤、縣濁剤及び乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、矯味矯臭剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有し得る。
【0101】
本発明の化合物は、非経口投与(例、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による)用に製剤化されてもよく、アンプル、薬剤充填済み注射器、小容量注入又は複数用量容器内で、添加された保存剤と共に単位剤形で存在してもよい。組成物は、油性若しくは水性ビヒクル中の縣濁液、溶液又は乳液、例えば水性ポリエチレングリコール中の溶液のような形態をとってもよい。油性若しくは非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)及び注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)を含み、例えば保存剤、湿潤剤、乳化若しくは懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤等の製剤化用薬剤を含有してもよい。代替的に、活性成分は、例えば無菌の無発熱性の水等の適切なビヒクルで使用前に構成されるための、無菌固体の無菌単離により又は溶液の凍結乾燥により得られる粉末形態であってもよい。
【0102】
本発明の化合物は、軟膏、クリーム若しくはローションとして、又は経皮パッチとして表皮に対する局所投与用に製剤化されてもよい。軟膏及びクリームは、例えば適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた水性又は油性基材と共に製剤化されてもよい。ローションは、水性又は油性基材と共に製剤化されてもよく、一般に、一種若しくはそれ以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤又は着色剤も含有するであろう。適切な口内局所投与用の製剤は、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントである風味付けした基材中に活性薬剤を含有するロゼンジ;例えばゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシアのような不活性基材中に活性成分を含有するパステル剤;並びに適切な液体担体中に活性成分を含有するマウスウォッシュを含む。
【0103】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤化されてもよい。最初に、例えば脂肪酸グリセリドの混合物又はココアバターのような低融点ワックスを融解し、活性成分を例えば撹拌により均質に分散させる。次いで、融解した均質混合物を、都合よいサイズの鋳型に流し込み、冷却させ、固化させる。
【0104】
本発明の化合物は、経膣投与用に製剤化されてもよい。活性成分に加えて、当該技術分野にて適切であることが周知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー等。
【0105】
本発明の化合物は、鼻腔内投与用に製剤化されてもよい。溶液又は懸濁液は、従来の手段、例えば、点滴器(dropper)、ピペット又はスプレーにより鼻腔へ直接適用される。製剤は、単一又は複数回投与形態で提供されてもよい。点滴器又はピペットの後者の場合、これは患者が適切な、規定容積の溶液又は懸濁液を投与することにより達成し得る。スプレーの場合、これは例えば定量噴霧器により達成し得る。
【0106】
本発明の化合物は、鼻腔内への投与を含む、特に気道に対してのエアゾル投与用に製剤化されてもよい。化合物は、一般に、例えば5ミクロン以下のオーダーの小さい粒径を有するであろう。このような粒径は、例えば微粒子化等の当該技術分野にて周知の手段により得てもよい。活性成分は、例えば、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン等のクロロフルオロ炭素(CFC)、又は二酸化炭素若しくは他の適切な気体等の適切な噴射剤と共に、加圧パックにて提供される。エアゾルはまた、例えばレシチンのような界面活性剤を都合よく含んでもよい。薬物の投与量は、定量弁により制御してもよい。代替的に、活性成分は、乾燥粉末、例えば、例えば乳糖、澱粉、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の澱粉誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)等の適切な粉末基材中における化合物の粉末混合物の形態で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセル若しくは薬包内又はブリスター包装内の単位剤形にて存在してもよく、そこから粉末が吸入器により投与されてもよい。
【0107】
所望であれば、製剤は、活性成分の持続若しくは制御放出投与に適した腸溶コーティングと共に調製され得る。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置に製剤化することができる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要であり、また、患者の治療計画に対するコンプライアンスが重大な場合に有利である。経皮送達システム内の化合物は、しばしば皮膚粘着固体支持体に付着される。目的の化合物は、浸透促進剤、例えばアゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせ得る。徐放送達システムは、外科手術又は注射により、皮下層内に皮下的に挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜、例えばシリコーンゴム内、又は生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸内に化合物を封入する。
【0108】
医薬製剤は、単位剤形であることが好ましい。そのような形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に更に分割される。単位剤形は、例えばパックされた錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル内の粉末製剤等の、個別の量を含有するパッケージであるパッケージ製剤であり得る。単位剤形はまた、それ自体のカプセル剤、錠剤、カシェ剤若しくはロゼンジであっても、又はパッケージ形態内の適切な任意数のこれらであってもよい。
【0109】
他の適切な医薬担体及びその製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania.に記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤を、以下の実施例に記載する。
【0110】
実施例
下記の調製例及び実施例を、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるようにするために示す。これらを、本発明の範囲を制限すると考えるべきではなく、本発明の単なる例示及び代表例として考えるべきである。
【0111】
調製例1
6−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
この調製例に記載の合成手順を、スキームBに示す方法に従って行った。
【0112】
【化14】

【0113】
工程1
4−(3−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸メチルエステル
【0114】
【化15】

【0115】
ジメチルホルムアミド(DMF)35mL中の3−フルオロベンズアルデヒド(35.38g、285.07mml)の溶液を、メチルアクリラート(26.28mL、25.03g、290.7mmol)及び粉末化KCNの加熱した(48℃)溶液にアルゴン下にて加えた。反応混合物を40℃で2時間撹拌し、次に水500mLに注いだ。この水相をEt2O 500mLで2回、EtOAc 250mLで1回抽出した。合わせた有機層を水及び飽和ブラインで洗浄し、次にMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発して、4−(3−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸メチルエステル50.89g(242.2mmol、84.93%)を油状物として得た。MS:211(M+H)
【0116】
工程2
4−(3−フルオロ−フェニル)−酪酸
【0117】
【化16】

【0118】
エチレングリコール(150mL)中の4−(3−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸メチルエステル(28.27g、134.49mmol)、ヒドラジン一水和物(26.1mL、26.93g、537.96mmol)及びKOH(22.64g、403.47mmol)の溶液を、アルゴン下で加熱還流し、2時間還流した。反応混合物を冷却し、水1.5Lで希釈し、Et2O 500mLを加え、混合物を6M HClを加えて撹拌しながら酸性化し、その後追加のEt2O 500mLを加えた。有機層を除去し、水層をEt2O/EtOAc(3:1)で2回(250mL及び500mL)抽出した。合わせた有機層を水及び飽和ブラインで洗浄し、次にMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発して、褐色を帯びた油状物を得て、それをヘキサン類/EtOAc(9:1)を用いるシリカゲルを通して溶離した。溶媒を減圧下で除去して、4−(3−フルオロ−フェニル)−酪酸18.44g(101.21mmol、75.26%)を油状物として得た。MS:183(M+H)
【0119】
工程3
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
【0120】
【化17】

【0121】
メタンスルホン酸(75mL)及びP25の溶液を、85℃で15分間撹拌し、その時点で大部分のP25が溶解した。追加のメタンスルホン酸15mLを滴下し、混合物を85℃で2時間撹拌した。反応混合物を水500mLに注ぎ、EtOAc 400mLで2回抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3、水及び飽和ブラインで洗浄し、次にMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、油状物を得て、それをヘキサン類/EtOAc(9:1)を用いるシリカゲルを通して溶離した。溶媒を減圧下で除去して、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン6.06g(36.91mmol、53.97%)を黄色の油状物として得た。MS:165(M+H)
【0122】
工程4
6−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
【0123】
【化18】

【0124】
N−メチルピロリジノン(NMP)50mL中の6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(5.51g、33.56mmol)、ベンゼンチオール(4.07g、3.79mL、36.92mmol)及びK2CO3(9.28g、67.12mmol)の溶液を、アルゴン下にて80℃まで加熱し、80℃で2時間撹拌した。反応混合物を水500mLに注ぎ、EtOAc 300mLで希釈した。層を分離し、水層をEtOAc 250mLで2回抽出した。合わせた有機層を水及び飽和ブラインで洗浄し、次にMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して油状物を得て、それをヘキサン類/EtOAc(9:1)を用いるシリカゲルを通して溶離した。溶媒を減圧下で除去して、6−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン8.05g(31.65mmol、94.31%)を淡黄色の油状物として得た。MS:255(M+H)
【0125】
工程5
6−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
【0126】
【化19】

【0127】
MeOH/MeCN(各50mL)中の6−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(8.05g、31.65mmol)の溶液を、室温で撹拌した。OXONE(商標)(ペルオキシ一硫酸カリウム、77.83g、126.60mmol)を水50mLに溶解し、撹拌反応物に加えた。反応混合物を15時間撹拌し、次に減圧下で蒸発した。得られた水性残渣を水500mLで希釈し、EtOAc 300mLで3回抽出した。合わせた抽出物を水及び飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、油状物を得て、それをヘキサンを用いるシリカゲル、続いてクロロホルムを用いるシリカゲルを通して溶離した。溶媒を減圧下で除去して、6−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン6.55g(22.87mmol、72.27%)を白色の固体として得て、それをEtO2/ヘキサン類から再結晶化した。MS:287(M+H)
【0128】
6−(3−クロロ−ベンゼンスルホニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンを、上記手順を使用して、工程4の3−クロロベンゼンチオールで同様に調製した。MS:287(M+H)
【0129】
調製例2
7−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
この調製例に記載の合成手順を、スキームCに示す方法に従って行った。
【0130】
【化20】

【0131】
工程1:
4−(4−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸
【0132】
【化21】

【0133】
フルオロベンゼン(50mL、530mmol)及び三塩化アルミニウム(156g、1.17mol)を、塩化メチレン500mLに加え、反応混合物を撹拌した。無水コハク酸(50g、500mmol)を撹拌した反応混合物に一度に加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を10%HClを注意深く加えてクエンチし、反応混合物を水500mLに加えた。水性混合物を塩化メチレン250mLで2回抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、減圧下で蒸発して、4−(4−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸62g(316mmol、59.6%)を粗固体として得た。MS:197(M+H)
【0134】
工程2:
4−オキソ−4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸
【0135】
【化22】

【0136】
4−(4−フルオロ−フェニル)−4−オキソ−酪酸(10.0g、51mmol)、チオフェノール(5.2g、51mmol)及び粉末化炭酸カリウム(13.8g、100mmol)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)25mLに加えた。反応混合物を110℃まで2時間加熱し、次に冷却し、水250mLを加えて希釈した。水性混合物をEtOAc 100mLで3回抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、減圧下で蒸発して、4−オキソ−4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸11g(38.5mmol、75.5%)を粗固体として得た。MS:287(M+H)
【0137】
工程3:
4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸
【0138】
【化23】

【0139】
粉末化亜鉛(66g)を2%HClで洗浄し、6M HCl 50mL中のHgCl2(6g)の溶液に加えた。この混合物を5分間激しく振とうし、過剰量の液体をデカントした。次に混合物を6M HCl 450mL中の4−オキソ−4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸(6.5g、22.7mmol)の機械的に撹拌した懸濁液に加え、反応混合物を室温で5日間撹拌した。次に混合物をデカントして過剰量のHClを除去し、水250mLを加えてクエンチした。水性混合物をEtOAc 100mLで3回抽出し、合わせた有機層を減圧下で乾燥して、4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸5.0g(18.4mmol、81%)を粗固体として得た。MS:273(M+H)
【0140】
工程4:
7−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
【0141】
【化24】

【0142】
4−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−酪酸(5.0g、18.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに溶解した。塩化オキサリル(1.8mL、20mmol)及びDMF1滴を加え、反応混合物を1時間撹拌し、次に減圧下で蒸発乾固した。得られた残渣を1,2−ジクロロエタン40mLに溶解し、三塩化アルミニウム(0.85g、25mmol)を一度に加えた。反応混合物を1時間撹拌し、2%HClを加えてクエンチした。この水性混合物をEtOAc 100mLで2回抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、蒸発して、7−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン2.54g(10mmol、55.5%)をガム状残渣として得た。MS:255(M+H)
【0143】
工程5:
7−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン
【0144】
【化25】

【0145】
7−フェニルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン( )をMeOH 50mLに溶解し、室温で撹拌した。OXONE(登録商標)(13.5g、22mmol)を水10mLに溶解し、撹拌反応物に加えた。反応混合物を8時間撹拌し、次に減圧下で蒸発した。得られた水性残渣を水200mLで希釈し、EtOAc 100mLで3回抽出した。合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去して油状物を得て、それをEtOAc/ヘキサン類 1:1を用いるシリカゲルを通して溶離した。溶媒を減圧下で除去して、7−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン1.7g(5.9mmol、59%)を油状物として得た。MS:287(M+H)
【0146】
7−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンを、上記手順を使用して、工程2の4−フルオロベンゼンチオールで同様に調製した。MS:287(M+H)
【0147】
調製例3
5−フェニルスルホニル−インダン−1−オン
この調製例に記載の合成手順を、スキームDに示す方法に従って行った。
【0148】
【化26】

【0149】
工程1:
5−フェニルスルファニル−インダン−1−オン
【0150】
【化27】

【0151】
Aldrich Sigma Chemical Co.(カタログ番号 18,566-3)の5−フルオロ−1−インダノンを、実施例1の工程4の手順を使用し、炭酸カリウムの存在下でベンゼンチオールで処理して、5−フェニルスルファニル−インダン−1−オンを得た。MS:241(M+H)
【0152】
工程2:
5−フェニルスルホニル−インダン−1−オン
【0153】
【化28】

【0154】
5−フェニルスルファニル−インダン−1−オンを、実施例1の工程5の手順を使用し、OXONE(商標)で処理して、5−フェニルスルホニル−インダン−1−オンを得た。MS:273(M+H)
【0155】
実施例1
[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン
この実施例に記載の合成手順を、スキームEに示す方法に従って行った。
【0156】
【化29】

【0157】
工程1
6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−オール
【0158】
【化30】

【0159】
6−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(1.31g、4.6mmol)及び水素化ホウ素ナトリウム(0.35g、9.3mmol)を、メタノール50mLに加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に水(200mL)を反応混合物に加え、白色の結晶が沈殿し、それを濾過により回収し、N2下で乾燥して、6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−オール1.2g(4.16mmol、90%)を得た。MS:289(M+H)
【0160】
工程2
(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−酢酸エチルエステル
【0161】
【化31】

【0162】
6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−オール(1.2g、4.16mmol)を乾燥DMF60mLに溶解し、反応混合物を氷浴中で冷却した。水素化ナトリウム(油中60%固体の0.2g、ヘキサン類で洗浄)を加え、反応混合物を窒素下にて20分間撹拌した。ブロモ酢酸エチル(0.55mL)を滴下し、撹拌を3時間続け、その間に反応混合物を室温に温めた。水(250mL)を反応混合物に加え、水性混合物をEtOAc 150mLで2回抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去して、油状物を得て、それを中圧下にて4:1 EtOAc/ヘキサン類を用いるシリカゲルを通して溶離した。減圧下で溶媒を除去して、(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−酢酸エチルエステル0.75g(2.0mmol、48%)を油状物として得た。MS:375(M+H)
【0163】
工程3
2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−N−メチル−アセトアミド
【0164】
【化32】

【0165】
(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(0.75g、2.0mmol)をメタノール25mLに溶解し、NaOH水溶液(25%溶液の15mL)を加えた。反応混合物を50℃まで10分間加熱し、次に冷却し、水20mLで希釈し、1N HClを加えて酸性化した。得られた水性混合物をEtOAc 100mLで3回抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣に乾燥テトラヒドロフラン(THF)30mLを溶解し、塩化オキサリル(0.8mL)及びジメチルホルムアミド(1滴)を加えた。反応混合物を窒素下にて室温で4時間撹拌し、その後溶媒を減圧下で除去した。残渣をジオキサン25mLに溶解し、得られた溶液を1N NaOH 25mL中のメチルアミン塩酸塩2.0gの溶液に0℃で滴下した。得られた沈殿物を回収し、空気乾燥し、中圧下にて4:1 EtOAc/ヘキサン類を用いるシリカゲルを通して溶離した。減圧下で溶媒を除去して、(2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−N−メチル−アセトアミド0.6g(1.67mmol、83.5%)を油状物として得た。MS:360(M+H)
【0166】
工程4
[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン
【0167】
【化33】

【0168】
(2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−N−メチル−アセトアミド(0.7g、1.9mmol)を、乾燥THF 25mLに溶解した。ボラン(1N THF溶液の10mL)を加え、反応混合物を窒素下にて3時間還流した。反応混合物を冷却し、25%HCl水溶液25mLを加えた。反応混合物を10分間還流し、冷却し、溶媒を減圧下で除去した。1N NaOH水溶液を滴下して水性残渣を塩基性化し、水性混合物をEtOAc 50mLで3回抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。残渣をEt2O/MeOH/HClから再結晶化して、[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン塩酸塩380mg(1.1mmol、58%)を得た。MS:346(M+H)
【0169】
工程1の5−(2−フルオロフェニルスルホニル)−インダン−1−オン及び7−ベンゼンスルホニル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンからそれぞれ出発し、同様に調製したものは:
{2−[5−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−インダン−1−イルオキシ]−エチル}−メチル−アミン、MS:350(M+H);及び
[2−(7−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン、MS:346(M+H)
であった。
【0170】
実施例2
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン
【0171】
この実施例に記載の合成手順を、スキームFに示す方法に従って行った。
【0172】
【化34】

【0173】
工程1
2−(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトアミド
【0174】
【化35】

【0175】
2−(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトアミドを、(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−酢酸エチルエステルから、実施例1の工程3の手順を使用するが、メチルアミン塩酸塩をアンモニアに置き換えて調製した。MS:332(M+H)
【0176】
工程2
(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトニトリル
【0177】
【化36】

【0178】
2−(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトアミド(1.1g、3.3mmol)をピリジン10mLに溶解し、反応混合物を撹拌し、氷浴中で冷却した。トリフルオロメタンスルホニル無水物(2mL)を滴下し、反応混合物を室温に温めた。反応物を10%HCl水溶液100mLを加えてクエンチし、水相をEtOAc 150mLで2回抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、残渣をEtOAc/ヘキサン類(1:5)を用いるシリカゲルを通して溶離する中圧クロマトグラフィーにより精製して、(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトニトリル0.5g(1.6mmol、48.5%)を得た。MS:314(M+H)
【0179】
工程3
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン
【0180】
【化37】

【0181】
(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトニトリルを、THF中のボランを使用して、実施例1の工程4の手順に従って、N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミンに還元した。MS:318(M+H)
【0182】
実施例3
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン
この実施例に記載の合成手順を、スキームGに示す方法に従って行った。
【0183】
【化38】

【0184】
工程1
6−ベンゼンスルホニル−1−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン
【0185】
【化39】

【0186】
6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−オール(0.65g、2.26mmol)をトルエン50mLに溶解し、塩化チオニル1mLを加えた。反応物を1時間還流し、次に冷却した。溶媒を減圧下で除去して、6−ベンゼンスルホニル−1−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン(0.6g、86.3%)を粗油状物として得た。MS:308(M+H)
【0187】
工程2
[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0188】
【化40】

【0189】
6−ベンゼンスルホニル−1−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン(0.6g、1.95mmol)、(2−アミノ−エチル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.512g、2.925mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.1g)及び炭酸カリウム(0.5g)を、アセトニトリル50mLに加え、反応混合物を120時間還流した。反応混合物を冷却し、水200mLで希釈した。水性混合物をEtOAc 200mLで2回抽出し、合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、得られた油状物をEtOAc/ヘキサン類 20%/80%で溶離するシリカゲル(中圧クロマトグラフィー)を通して溶離した。減圧下で溶媒を除去して、[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル0.4g(0.9mmol、46%)を油状物として得た。MS:446(M+H)
【0190】
工程3
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン
【0191】
【化41】

【0192】
[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.4g、0.9mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解し、Et2O中の10%HCl 20mLを加えた。反応混合物を1時間還流し、次に冷却した。溶媒を減圧下で蒸発し、得られた固体をEtOH−Et2Oから再結晶化して、N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン0.3g(0.87mmol、97%)を塩酸塩として得た。MS:345(M+H)
【0193】
実施例3の手順により調製した更なる化合物を表1に示す。
【0194】
実施例4
処方
種々の経路で送達される医薬製剤が下記の表で示されるように配合される。表中で使用される「活性成分」又は「活性化合物」は、1つ以上の式Iの化合物を意味する。
【0195】
【表2】

【0196】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するカプセルに調剤する。1カプセルが1日用量のほぼ全てとなる。
【0197】
【表3】

【0198】
成分を合わせ、メタノールのような溶媒を使用して造粒する。次に配合物を乾燥させ、適切な錠剤成形機を用いて錠剤(活性化合物約20mg含有)を形成する。
【0199】
【表4】


成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0200】
【表5】

【0201】
活性成分を注射用の水の一部に溶解する。次に塩化ナトリウムの十分な量を撹拌しながら加えて、溶液を等張にする。注射用の水の残りで溶液の重量にして、0.2μ膜フィルタを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0202】
【表6】

【0203】
成分を一緒に蒸気浴で溶融、混合し、全重量2.5gを含有する型に注ぐ。
【0204】
【表7】

【0205】
水以外の全ての成分を合わせ、撹拌しながら約60℃に加熱する。次に、十分な量の水を激しく撹拌しながら約60℃で加え、成分を乳化し、次に、全量を約100gにするのに十分な量の水を加える。
【0206】
鼻腔内スプレー製剤
鼻腔内スプレー製剤として、約0.025〜0.5パーセントの活性化合物を含有する数種の水性懸濁液を調製する。製剤は、場合により、例えば微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、右旋糖等の不活性成分を含有する。塩酸を加えて、pHを調製してもよい。鼻腔内スプレー製剤は、一般に、作動毎に製剤約50〜100マイクロリットルを供給する、鼻用定量噴霧器を介して送達されてもよい。一般的な投与計画は、4〜12時間毎に2〜4回噴霧を行う。
【0207】
実施例5
放射性リガンド結合試験
本実施例では、式Iの化合物の、インビトロでの放射性リガンド結合試験について説明する。
【0208】
インビトロでの本発明の化合物の結合活性は、以下のように測定された。5−HT6リガンド親和性の二重測定は、組み換えヒト5−HT6受容体を安定的に発現しているHEK293細胞由来の細胞膜内の[3H]LSDの結合に対して競合させることにより行った。5−HT2Aリガンド親和性の二重測定は、組み換えヒト5−HT2A受容体を安定的に発現しているCHO−K1細胞由来の細胞膜内の[3H]ケタンセリン(3−(2−(4−(4−フルオロベンゾイル)ピペリジノール)エチル)−2,4(1H,3H)−キナゾリンジオン)の結合に対して競合させることにより行った。膜は、HEK293細胞株から、Monsma et al, Molecular Pharmacology, Vol. 43 pp. 320-327 (1993)に記載されている方法により、CHO−K1細胞株から、Bonhaus et al., Br J Pharmacol. Jun; 115 (4): 622-8 (1995) に記載されている方法により、調製した。5−HT6受容体における親和性を評価するために、50mM Tris−HCl、10mM MgSO4、0.5mM EDTA、1mMアスコルビン酸を含有する37℃でpH7.4のアッセイ緩衝液中で、250マイクロリットル反応容積にて、全ての測定を行った。5−HT2A受容体における親和性を評価するために、50mM Tris−HCl、5mMアスコルビン酸、4mM CaCl2を含有する32℃でpH7.4のアッセイ緩衝液中で、250マイクロリットル反応容積にて、全ての測定を行った。[3H]LSD又は[3H]ケタンセリン(5nM)、競合リガンド及び膜を入れたアッセイチューブを、振とうしている水浴内で、37℃で75分間(5−HT6に関して)、又は32℃で60分間(5−HT2Aに関して)、インキュベートして、Packard 96ウェルセルハーベスタを用いてPackard GF-Bプレート(0.3%PEIに予め浸した)上に濾過し、氷冷50mM Tris−HCl中で3回洗浄した。結合した[3H]LSD又は[3H]ケタンセリンを、Packard Top Countを用いて、1分当たりの放射能カウントとして測定した。
【0209】
濃度−結合データを、4−パラメータのロジスティック方程式:
【0210】
【化42】

【0211】
に適合させて、結合部位からの[3H]LSD又は[3H]ケタンセリンの置換を定量化した。式中、Hillは、ヒル勾配であり、[リガンド]は、競合する放射性リガンドの濃度であり、IC50は、放射性リガンドの最大値の半分の特異的結合を生成する放射性リガンドの濃度である。特異的結合ウィンドウ(window)は、Bmaxと基礎パラメータ間の差異である。
【0212】
本実施例の手順を用いて、式Iの化合物を試験して、該化合物が、選択的5−HT6拮抗薬、選択的5−HT2A拮抗薬又は両方であることを見出した。例えば、化合物2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミンは、5−HT6受容体に対してpKi 8.74、5−HT2A受容体に対してpKi 7.21を示した。
【0213】
実施例6
認知の改善
本発明の化合物の認知改善特性は、動物の認知モデル:物体認知課題モデルに存在してもよい。4ヶ月齢の雄のWistarラット(チャールズ・リバー、オランダ)を用いた。化合物を毎日準備し、生理食塩水に溶解し、3用量にて試験した。投与は、T1の60分前に、常にi.p.で行った(注射容積1ml/kg)。化合物の注射から30分後、臭化水素酸スコポラミンを注射した。2つの等しい試験グループを24匹のラットから作成し、2つの実験により試験した。用量の試験順序は、無作為に決定した。実験は、二重盲検プロトコールを用いて実施した。全部のラットが、各用量条件により1回処置された。物体認知試験を、Ennaceur, A., Delacour, J., 1988, Anewone-trial test for neurobiologies studies of memory in rats.1: Behavioral data. Behav. Brain Res. 31, 47-59に記載されているように実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、
mは、0〜3であり;
pは、1〜3であり;
qは、0、1又は2であり;
Arは、場合により置換されたアリール又は場合により置換された5〜12員のヘテロアリールであり;
各R1は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−ハロアルキル、C1−12−ヘテロアルキル、シアノ、−S(O)−R、−C(=O)−NR、−SO2−NR、−N(R)−C(=O)−R又は−C(=O)−Rであり、ここでqは、0〜2であり、R、R、R及びRは、各々独立して、水素又はC1−12−アルキルであり、かつRは、水素、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はヒドロキシであり;
2は、
【化2】


であり、
Xは、−O−又は−NR7−であり;
nは、2又は3であり;
3及びR4は、各々独立して、水素若しくはC1−12−アルキルであるか、又はR3とR4は一緒になって、−C(O)−を形成してもよく;
5及びR6は、各々独立して、水素若しくはC1−12−アルキルであるか、又はR5とR6は、それらが結合する窒素と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよいか、又はR5とRの一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、O、N及びSから選択される更なるヘテロ原子を場合により含む、5員環若しくは6員環を形成してもよく;かつ
7は、水素又はC1−12−アルキルである)
で示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
pが、1又は2である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
qが、2である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Arが、場合により置換されたフェニルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
mが、0又は1である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
nが、2である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが、−O−である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
3及びR4が、水素である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
5及びR6が、水素である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
5とR6の一方が水素であり、他方がC1−12−アルキルである、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
Xが、−NR7−である、請求項6記載の化合物。
【請求項12】
3及びR4が、水素である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
5及びR6が、水素である、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
5とR6の一方が水素であり、他方がC1−12−アルキルである、請求項12記載の化合物。
【請求項15】
nが、3である、請求項5記載の化合物。
【請求項16】
Xが、−O−である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、6員環を形成する、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
Xが、−NR7−である、請求項15記載の化合物。
【請求項19】
5とR6の一方と、R3とR4の一方とが、それらが結合する原子と一緒になって、6員環を形成する、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
2が、アミノ(C1−12−アルコキシ)(C1−12−アルキル)である、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
2が:
【化3】


(式中、R5、R6及びR7は、請求項1に列挙したとおりである)
である、請求項1記載の化合物。
【請求項22】
前記化合物が、
式II:
【化4】


(式中、m、Ar、R1及びR2は、請求項1に列挙したとおりである)
で示される化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項23】
前記化合物が、
式IIIa又はIIIb:
【化5】


(式中、
sは、0〜4であり;
各R8は、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ、C1−12−ハロアルコキシ、C1−12−ヘテロアルキル、シアノ、−S(O)−R、−C(=O)−NR、−SO2−NR、−N(R)−C(=O)−R又は−C(=O)−Rであり、ここでrは、0〜2であり、R、R、R及びRは、各々独立して、水素又はC1−12−アルキルであり、Rは、水素、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はヒドロキシであり;
n、R5及びR6は、請求項1に列挙したとおりである)
で示される化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項24】
sが0〜2であり、各R8が、独立して、ハロ、C1−12−アルキル、C1−12−アルコキシ又はC1−12−ハロアルキルである、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
nが2である、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物が、式IIIaで示される化合物である、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
5が水素であり、R6がメチルである、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
前記化合物が、
N−(2−アミノ−エチル)−2−(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−アセトアミド;
2−(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イルオキシ)−エチルアミン;
{2−[5−(2−フルオロ−ベンゼンスルホニル)−インダン−1−イルオキシ]−エチル}−メチル−アミン;
(5−ベンゼンスルホニル−インダン−1−イル)−ピペリジン−4−イル−アミン;
[2−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン;
[2−(7−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン;
(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−ピペリジン−4−イル−アミン;
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N’−メチル−エタン−1,2−ジアミン;
N’−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N,N−ジメチル−エタン−1,2−ジアミン;及び
N−(6−ベンゼンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジメチル−エタン−1,2−ジアミン
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項記載の式Iの化合物を、薬学的に許容され得る担体との混合物で含有する医薬組成物。
【請求項30】
被験者における中枢神経系の疾病状態の治療に有用な医薬の製造のための、請求項1〜28のいずれか一項記載の式Iの化合物の使用であって、前記疾病状態が、精神病、統合失調症、躁うつ病、神経疾患、記憶障害、注意欠陥障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、摂食障害及びハンチントン病から選択される使用。
【請求項31】
上記に記載したような発明。

【公表番号】特表2008−524277(P2008−524277A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547256(P2007−547256)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013293
【国際公開番号】WO2006/066748
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】