説明

テラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法

【課題】容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための検査方法について、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させることにより、異物の有無を確実に検査できるようにする。
【解決手段】サンプルのシール部(standard)に、テラヘルツ波の周波数帯を照射して各周波数での透過率をそれぞれ測定し、高い透過率のピークを示した周波数(0.8661THz)を予め特定してから、被検査のシール部(water)に、サンプルの場合と同様にテラヘルツ波の周波数帯を照射して各周波数での透過率をそれぞれ測定し、サンプルで予め特定した周波数(0.8661THz)の付近で、透過率のピークを示した周波数を検出して、この被検査容器で検出した周波数と、予め特定した周波数(0.8661THz)とを比較して、両方の周波数に位相差が有ると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器のシール部にテラヘルツ波を照射して透過させることで、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否か検査するような、テラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光と電波の境界領域にある「テラヘルツ波」については、これまでその発生・検出の難しさから、産業的に利用されることはあまりなかったが、近年のレーザー技術の発達により実用化への道が拓けたことで、幅広い産業分野での利用が期待されている。
【0003】
そのようなテラヘルツ波の利用について、例えば、下記の特許文献1には、サブテラへルツ電磁波を用いた粉粒体中異物検査装置およびその検査方法として、波長が0.5THz〜100GHzの電磁波が粉粒体を透過することから、このサブテラへルツ電磁波を被検査物に照射し、その物質による伝播時間の差又は透過率の差を利用して粉粒体中の異物検査を行う、という技術が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、テラへルツ波分光計測によるターゲット判別方法及び装置として、約1〜3THzのテラヘルツ波領域において、複数の異なる波長に対するターゲットの吸光度Sのスペクトル[S]を予め計測する分光スペクトル計測ステップと、被対象物に前記各波長のテラヘルツ波を照射して、被対象物の吸光度Iを計測する被対象物分光計測ステップとを有し、吸光度Sのスペクトル[S]と被対象物の吸光度Iのスペクトル[I]から、対象物の成分の有無を判別する、という技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−66375号公報
【特許文献2】特開2004−286716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、周波数領域が0.1THz(3mm)〜10THz(30μm)のテラヘルツ波については、エネルギーが低く、人体にとって安全であり、紙やプラスチックを良く透過する、水に吸収される、金属に反射する、物質の振動状態に敏感に反応する等の性質を有することが既に知られているが、そのような性質を有するテラヘルツ波を利用した検査方法の一つとして、本出願人は、内容物が充填されてからヒートシール等により密封された容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波を照射して透過させることで、容器のシール部に内容物の水滴等のような異物が噛み込まれているか否かを、テラヘルツ波の透過率から検出する可能性について検討を行った。
【0007】
すなわち、容器のシール部に水滴や毛髪のような異物を噛み込ませたものと、容器のシール部に異物を全く噛み込ませていないものとのそれぞれについて、容器のシール部にテラヘルツ波を照射して透過させ、それぞれのテラヘルツ波の透過率を測定して比較した結果、異物の噛み込みが有るとテラヘルツ波の透過率が低下するということから、テラヘルツ波による異物の噛み込みの検査の可能性が示された。しかしながら、使用するテラヘルツ波の周波数によっては、異物の噛み込みが有ってもテラヘルツ波の透過率が必ずしも低下するものとは限らない、ということも判った。
【0008】
一方、容器のシール部に水滴や毛髪のような異物を噛み込ませたものと、そのような異物を容器のシール部に全く噛み込ませていないものとのそれぞれについて、容器のシール部に適当な範囲の周波数帯でテラヘルツ波を照射して透過させ、テラヘルツ波の周波数帯のそれぞれの周波数の透過率を測定して比較した結果、周波数帯で照射したテラヘルツ波を周波数毎に細分して各周波数毎の透過率を示したグラフで見られる干渉波形によって、異物の噛み込みが有ると、透過率のピークが位相変化を起こし、また、対応するピークの透過率が減少する、ということが判った。
【0009】
本発明は、上記のような本出願人の検討により得られた新たな知見に基づくものであって、具体的には、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための検査方法について、テラヘルツ波の周波数帯を容器のシール部に照射して透過させることにより、異物の有無を確実に検査できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するために、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための方法として、先ず、シール部に異物が全く噛み込まれていないサンプル容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数を予め特定しておき、その後、被検査容器に対して、サンプル容器の場合と同様に、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率を測定して、サンプル容器で予め特定した周波数の付近で透過率のピークを示した周波数を検出してから、この被検査容器で検出した周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数とを比較することにより、両方の周波数に位相差が有ると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための方法として、先ず、シール部に異物が全く噛み込まれていないサンプル容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数と、その透過率のピーク値とを予め特定しておき、その後、被検査容器に対して、サンプル容器の場合と同様に、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率を測定して、サンプル容器で予め特定した周波数の付近で透過率のピークを示した周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数での透過率とを検出してから、この被検査容器で検出した周波数及び透過率と、サンプル容器で予め特定した周波数及び透過率のピーク値とを比較することにより、両方の周波数に位相差が有るか、或いは、透過率が低下していると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のような本発明のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法によれば、テラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定することで、先ず、サンプル容器で高い透過率のピークを示した周波数(換言すれば、容器のシール部の材質に適した高い透過率を示す周波数)を予め特定してから、サンプル容器の場合と同様に、テラヘルツ波の周波数帯を被検査容器に照射して透過させ、サンプル容器で予め特定した周波数のピークに対応する被検査容器のピークの周波数を検出して、両方の周波数に位相差が有ると、異物の噛み込みがあると判断していることから、容器のシール部の材質毎に適した周波数のテラヘルツ波を限定して照射しなくても、適当な範囲の周波数帯でテラヘルツ波を照射することにより、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを確実に検査することができる。
【0013】
なお、上記のような本発明の検査方法において、サンプル容器で、高い透過率のピークを示した周波数と共に、その透過率のピーク値をも予め特定してから、被検査容器で、サンプル容器で予め特定した周波数のピークに対応する被検査容器のピークの周波数と共に、サンプル容器で予め特定した周波数での被検査容器の透過率をも検出して、両方の周波数の位相差を比較し、且つ、両方の透過率を比較することで、両方のピークに位相差が有るか、或いは、透過率が低下していると、異物の噛み込みがあると判断するようにした場合には、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かをより一層確実に検査することができる。即ち、周波数の位相差の有無が判定し難いような場合でも、サンプル容器で予め特定した周波数(容器のシール部の材質に適した高い透過率を示す周波数)で被検査容器の透過率の低下が見られる場合には、異物の噛み込みが有ると判断できることから、それによって異物の噛み込みを見逃すような虞はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法について、袋状容器(パウチ)に対して適用した状態を示す説明図である。
【図2】ポリプロピレン樹脂の容器のシール部で、異物を全く噛み込ませていないもの(standard)と、水滴を噛み込ませたもの(water)とのそれぞれについて、所定範囲の周波数帯での各周波数毎のテラヘルツ波の透過率を示すグラフである。
【図3】ポリプロピレン樹脂の容器のシール部で、異物を全く噛み込ませていないもの(standard)と、毛髪を噛み込ませたもの(hair)とのそれぞれについて、所定範囲の周波数帯での各周波数毎のテラヘルツ波の透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための検査方法について、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させることにより、異物の有無を確実に検査できるようにするという目的を、以下の各実施例に具体的に示すように、先ず、シール部に異物が全く噛み込まれていないサンプル容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数(又は、周波数と透過率のピーク値)を予め特定しておき、その後、被検査容器に対して、サンプル容器の場合と同様に、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率を測定して、サンプル容器で予め特定した周波数の付近で透過率のピークを示した周波数(又は、周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数での透過率)を検出してから、この被検査容器で検出した周波数(又は、周波数及び透過率)と、サンプル容器で予め特定した周波数(又は、周波数及び透過率のピーク値)とを比較することにより、両方の周波数に位相差が有る(又は、両方の周波数に位相差が有るか、或いは、透過率が低下している)と、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断する、ということで実現した。
【0016】
なお、以下の各実施例に示すテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法は、何れも、パウチと呼ばれる袋状容器のシール部の検査に関するものであって、ポリプロピレン等のような熱可塑性樹脂製の袋状容器で、容器の上端開口部から内容物を充填してから、上端開口部をヒートシール等により面接着して容器を密封した後で、面接着された容器のシール部に対して、テラヘルツ波を照射して透過させることで、容器のシール部に内容物の水滴や毛髪のような異物が噛み込まれているか否かを検査するものである。
【0017】
そのような検査方法を実施するための装置の一例について説明すると、連続的に搬送されている袋状容器のシール部に対して、図1に示すように、テラヘルツ光源3により、容器1のシール部2のシール面と直交する方向から、シール部2の幅(縦方向の長さ)と同じ縦長のスリット状にテラヘルツ波を照射しており、それによって、容器1のシール部2の長手方向(横方向)に沿って連続的に搬送されている各容器1に対して、それぞれのシール部2の全体にテラヘルツ波を照射できるようにしている。
【0018】
容器1のシール部2を透過したテラヘルツ波は、検出器4によって受光されてから制御装置5に送られ、制御装置5において、測定されて検出されたデータと、予め検出されたサンプル容器(容器のシール部に異物が全く噛み込まれていないもの)のデータとを比較することで、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを判断している。なお、容器1のシール部2に異物が噛み込まれていると判断された場合には、搬送路から容器を除外するためのリジェクト装置(図示せず)に対して、制御装置5からリジェクト信号を発信するようにしている。
【0019】
上記のような装置による本発明のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法の各実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
本実施例(実施例1)のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法では、熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン)製の袋状容器について、先ず、異物が全く噛み込まれていないサンプル容器のシール部に対して、テラヘルツ光源3から適当な範囲の周波数帯(例えば、0.7〜1.1THzの周波数帯)でテラヘルツ波を照射し、シール部2を透過して検出器4により受光されたテラヘルツ波を制御装置5に送って、制御装置5では、テラヘルツ波の周波数帯を周波数毎に細分し、各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数(例えば、0.8661THz)を予め特定している。
【0021】
そして、実際に容器を検査する場合には、被検査容器のシール部に対して、サンプル容器の場合と同様に、テラヘルツ光源3からテラヘルツ波の周波数帯(例えば、0.7〜1.1THzの周波数帯)を照射し、シール部2を透過して検出器4により受光されたテラヘルツ波を制御装置5に送って、制御装置5では、テラヘルツ波の周波数帯を周波数毎に細分し、各周波数での透過率をそれぞれ測定して、サンプル容器で予め特定した周波数(例えば、0.8661THz)の付近で透過率のピークを示す周波数を検出してから、この被検査容器で検出した周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数とを比較することにで、両方の周波数に位相差が有ると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断している。
【実施例2】
【0022】
本実施例のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法では、熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン)製の袋状容器について、先ず、異物が全く噛み込まれていないサンプル容器のシール部に対して、テラヘルツ光源3から適当な範囲の周波数帯(例えば、0.7〜1.1THzの周波数帯)でテラヘルツ波を照射し、シール部2を透過して検出器4により受光されたテラヘルツ波を制御装置5に送って、制御装置5では、テラヘルツ波の周波数帯を周波数毎に細分し、各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数(例えば、0.8661THz)と、その周波数での透過率のピーク値(例えば、80%)とを予め特定している。
【0023】
そして、実際に容器を検査する場合には、被検査容器のシール部に対して、サンプル容器の場合と同様に、テラヘルツ光源3からテラヘルツ波の周波数帯を照射し、シール部2を透過して検出器4により受光されたテラヘルツ波を制御装置5に送って、制御装置5では、テラヘルツ波の周波数帯を周波数毎に細分し、各周波数での透過率をそれぞれ測定して、サンプル容器で予め特定した周波数(例えば、0.8661THz)の付近で透過率のピークを示す周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数(例えば、0.8661THz)での透過率とを検出して、この被検査容器で検出した周波数とサンプル容器で予め特定した周波数とを比較し、且つ、この被検査容器で検出した透過率とサンプル容器で予め特定した透過率のピーク値とを比較することで、両方の周波数に位相差が有るか、或いは、透過率が低下していると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断している。
【0024】
上記のような本実施例(実施例2)の検査方法によれば、仮に、周波数の位相差の有無が判定し難いような場合でも、サンプル容器で予め特定した周波数(容器のシール部の材質に適した高い透過率を示す周波数)で被検査容器の透過率の低下が見られる場合には、異物の噛み込みが有ると判断できることから、それによって異物の噛み込みを見逃すような虞はなく、容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かをより一層確実に検査することができる。
【0025】
ところで、上記のような本発明のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法の各実施例について、ポリプロピレン樹脂の容器のシール部で、サンプル試料として、異物を全く噛み込ませていないもの(standard)を作成し、一方、被検査試料として、水滴を噛み込ませたもの(water)と、毛髪を噛み込ませたもの(hair)とをそれぞれ作成して、その効果を検証した。
【0026】
先ず、ヒートシールした後の総厚が1.021mmであるシール部について、水滴を噛み込ませた被検査試料(water)として、シール面に長さ10mmで深さ50μmの窪みを作り、その中に約20μlの水を噛み込ませることで、当該部分の総厚が1.071mmとなったものを作成し、これと、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)とのそれぞれに対して、0.7〜1.1THzの範囲の周波数帯でテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波を、照射したテラヘルツ波の周波数帯の周波数毎に細分して、各周波数毎の透過率を測定した。
【0027】
図2は、その測定結果を示すグラフである。なお、横軸は周波数[THz]、縦軸は透過率[%]を示している。この水滴を噛み込ませた被検査試料(water)と、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)との各周波数毎の透過率の測定結果を見ると、それぞれの周波数毎の透過率を示す曲線は、何れも、複数のピークを備えた波形をなしていて、両方の波形は、対応するピークの位相がずれた干渉波形となっている。
【0028】
そして、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)では、周波数が0.8661THzの箇所で高い透過率のピークを示しているのに対して、この周波数の付近で、水滴を噛み込ませた被検査試料(water)の透過率のピークを示した周波数は、0.8661THzよりも高周波数側に0.03〜0.04THz程度ずれている。また、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数が0.8661THzでの透過率を見ると、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)の透過率と比べて、水滴を噛み込ませた被検査試料(water)の透過率の方が明確に低くなっている。
【0029】
すなわち、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数(0.8661THz)を特定し、この周波数(0.8661THz)の付近で、被検査試料(water)の透過率のピークを示した周波数を検出すれば、両者の周波数は位相差(0.03〜0.04THz程度のずれ)があること、および、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数(0.8661THz)で、被検査試料(water)の透過率を検出すれば、被検査試料(water)の透過率が明らかに減少していることから、それらの比較によって、被検査試料(water)に異物(水滴)が噛み込まれていることを確実に検査できるということが判る。
【0030】
次に、ヒートシールした後の総厚が1.009mmであるシール部について、毛髪を噛み込ませた被検査試料(hair)として、シール面に直径が0.1mmの毛髪を噛み込ませることで当該部分の総厚が1.109mmとなったものを作成し、これと、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)とのそれぞれに対して、0.7〜1.1THzの範囲の周波数帯でテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波を、照射したテラヘルツ波の周波数帯の周波数毎に細分して、各周波数毎の透過率を測定した。
【0031】
図3は、その測定結果を示すグラフである。なお、横軸は周波数[THz]、縦軸は透過率[%]を示している。この毛髪を噛み込ませた被検査試料(hair)と、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)との各周波数毎の透過率の測定結果を見ると、それぞれの周波数毎の透過率を示す曲線は、何れも、複数のピークを備えた波形をなしていて、両方の波形は、対応するピークの位相がずれた干渉波形となっている。
【0032】
そして、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)では、周波数が0.8661THzの箇所で最も高い透過率のピークを示しているのに対して、この周波数の付近で、毛髪を噛み込ませた被検査試料(hair)の透過率のピークを示した周波数は、0.8661THzよりも高周波数側に0.04〜0.05THz程度ずれている。また、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数が0.8661THzでの透過率を見ると、異物を全く噛み込ませていないサンプル試料(standard)の透過率と比べて、毛髪を噛み込ませた被検査試料(hair)の透過率の方が明確に低くなっている。
【0033】
すなわち、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数(0.8661THz)を特定し、この周波数(0.8661THz)の付近で、被検査試料(hair)の透過率のピークを示した周波数を検出すれば、両者の周波数は位相差(0.04〜0.05THz程度のずれ)があること、および、サンプル試料(standard)で高い透過率のピークを示した周波数(0.8661THz)で、被検査試料(hair)の透過率を検出すれば、被検査試料(hair)の透過率が明らかに減少していることから、それらの比較によって、被検査試料(hair)に異物(水滴)が噛み込まれていることを確実に検査できるということが判る。
【0034】
以上、本発明の方法の各実施例について説明したが、本発明は、上記のような実施例にのみ限定されるものではなく、例えば、検査の対象となる容器については、上記の各実施例に示したような袋状容器に限らず、カップ型容器等のような他の容器であっても良い等、適宜に変更可能なものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 容器(袋状容器)
2 シール部
3 テラヘルツ光源
4 検出器
5 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための方法として、先ず、シール部に異物が全く噛み込まれていないサンプル容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数を予め特定しておき、その後、被検査容器に対して、サンプル容器の場合と同様に、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率を測定して、サンプル容器で予め特定した周波数の付近で透過率のピークを示した周波数を検出してから、この被検査容器で検出した周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数とを比較することにより、両方の周波数に位相差が有ると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断するようにしたことを特徴とするテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法。
【請求項2】
容器のシール部に異物が噛み込まれているか否かを検査するための方法として、先ず、シール部に異物が全く噛み込まれていないサンプル容器に対して、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率をそれぞれ測定して、高い透過率のピークを示した周波数と、その透過率のピーク値とを予め特定しておき、その後、被検査容器に対して、サンプル容器の場合と同様に、容器のシール部にテラヘルツ波の周波数帯を照射して透過させ、この周波数帯の各周波数での透過率を測定して、サンプル容器で予め特定した周波数の付近で透過率のピークを示した周波数と、サンプル容器で予め特定した周波数での透過率とを検出してから、この被検査容器で検出した周波数及び透過率と、サンプル容器で予め特定した周波数及び透過率のピーク値とを比較することにより、両方の周波数に位相差が有るか、或いは、透過率が低下していると、被検査容器のシール部に異物が噛み込まれていると判断するようにしたことを特徴とするテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法。
【請求項3】
検査する容器のシール部の材質がポリプロピレンであり、照射するテラヘルツ波の周波数帯が0.7〜1.1THzの範囲のものであり、サンプル容器で高い透過率のピークを示して予め特定されるテラヘルツ波の周波数が0.8661THzであることを特徴とする請求項1又は2に記載のテラヘルツ波を用いた容器シール部の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220901(P2011−220901A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91738(P2010−91738)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】