説明

ディジタル放送受信装置

【課題】受信状態がおおむね良好になった場合に視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードに移行するとともに、再生中の視聴覚コンテンツの途中で上記のモードが切替わることを防止すること。
【解決手段】受信状態監視手段131によって検出される受信信号の受信状態から受信率算出手段132によって受信エラー出現率を算出し、受信エラー出現率が所定値か否かを判断する。また、視聴覚コンテンツ再生監視手段133によって視聴覚コンテンツの再生状態を監視し、再生終了時を視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへの復帰タイミングとする。これによって、受信状態がおおむね良好な状態を識別するとともに、再生中の視聴覚コンテンツの途中でモードが切替わり、ユーザに不快感を与えることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル放送受信装置、特に、ディジタル放送信号の受信状況に応じてディジタル放送を受信出力するモードと他の視聴覚コンテンツを再生するモードとを切替える機能を備えたディジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車載用機器には、ディジタル放送を受信して出力する機能と、他の視聴覚コンテンツを再生する機能の両方を備えたものがある。例えば、地上ディジタル放送受信機能に加え、CD再生機能、DVD再生機能の両方を備えているものである。こうした車載機器において、ディジタル放送を受信しながら山間部等を走行すると、短時間、時には長時間電波の受信状態が悪化することがある。電波の受信状態が悪化すると、ディジタル放送は正しく受信できず表示できなくなる。
【0003】
上記の車載用機器の中には、電波の受信状態が悪化した際に、ディジタル放送を受信して出力するテレビ視聴モードから視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生モードへ移行し、電波の受信状態が回復した際に、視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードに復帰するものがある。これは、ディジタル放送を受信できない時にユーザに与える不快感を軽減することを目的としている。
【0004】
放送信号の受信感度に基づいてソースを切替える装置の例を下記に説明する。下記特許文献1(特願2000−261731号公報)は、放送信号の信号受信レベル、電界強度が所定時間以上継続して閾値を超えるか下回るかした場合、或いは所定サンプリング期間中の放送信号の受信レベルの平均値が閾値を超えるか下回る場合に、機能させるソース、例えばテレビチューナ、ナビゲーション装置、CD等の切替えを行う「移動体マルチメディアシステムの切替装置」を開示している。
【0005】
また、下記特許文献2(特願2005−57371号公報)は、AGC信号レベルの変化量、或いは受信データ中の同期コードのピーク値の量、受信データのエラー量(率)等に基づいてディジタルテレビ放送の受信状態が悪化したことを見極め、ラジオ放送やCD/MDプレーヤー等の別の入力源に切替えるようにした「テレビ受信装置」を開示している。この「テレビ受信装置」では、他の入力源からディジタルテレビ放送の受信に復帰する際に、CD/MDプレーヤーの再生中にはその曲が終了した時点で復帰するようにしている。
【0006】
また、下記特許文献3(特願2008−85464号公報)は、地上ディジタル放送の受信レベルが基準値より高い状態が、或いは低い状態が所定時間以上経過したか否かによって受信状態の悪化、回復を判断し、地上ディジタル放送と他のソースによる再生とを切替える「車載用映像・音響システム、プログラム」を開示している。なお、このシステムにおいては、地上ディジタル放送の受信レベルの高低は、信号のビット誤り発生率が基準値以下であるか否かに基づいて特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
[特許文献1]特開2000−261731号公報
[特許文献2]特開2005−57371号公報
[特許文献3]特開2008−85464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の「移動体マルチメディアシステムの切替装置」はアナログ信号を受信している。アナログ放送を受信する場合、放送信号の受信状態の悪化は、ノイズとして画面に表われる。また、放送信号の受信状態が良好か悪いかは受信電波の電界の平均値を得ることで判断できる。一方、ディジタル放送の受信装置の場合は、受信信号の受信状態は符号誤り率(BER:Bit Error Rate)で判断される。ディジタル放送の受信装置の場合、符号誤り率が上昇すると、アナログ放送のように表示される画質に徐々にノイズが混ざるようになって次第に視認できなくなるのではなく、ブロックノイズとして現われ、ブロックノイズが多くなると、ある時点で突然画像が表示できなくなってしまう。そのために、ディジタル放送の受信状態を符号誤り率の平均値で求めることは適切ではない。
【0009】
また、上記特許文献2の「テレビ受信装置」では、ディジタル放送信号を受信し、そのAGC信号レベルの変化量、同期コードのピーク値の検出量、受信データのエラー量(率)を受信状態の基準としているが、一時的に受信状態が悪化しただけですぐに受信状態が良好に戻るような場合は考慮されていない。上記の装置においては、ディジタル放送信号の受信状態が時々悪化するだけで受信状態がおおむね良好である場合でも、誤って受信状態が悪化しているとみなされて他の入力源に切替えられてしまう恐れがある。
【0010】
また、上記特許文献3のように、符号誤り率が閾値よりも一定期間高いか否かを受信状態の基準とする場合であっても、一時的に受信状態が悪化してすぐに受信状態が良好に戻るような場合、或いは、時々受信状態が悪化するだけでおおむね受信状態が良好である場合に受信状態の判断のタイミングによっては間違って受信状態が悪いと判断されてしまう。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決することを目的としている。つまり、受信状態が悪化した場合に、ディジタル放送を受信して出力するテレビ視聴モードから他の視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生モードに移行し、受信状態がおおむね良好になった場合に、視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードに移行するディジタル放送受信装置において、ビルの谷間を移動している場合等、一時的な受信感度の悪化によって上記のモードが頻繁に切替わることを防止することを目的とし、さらに、ディジタル放送受信時のエラー出現率と再生中の視聴覚コンテンツの再生状況に基づいて上記のモードの移行の判定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のディジタル放送受信装置は、表示部と、ディジタル放送信号を受信して前記表示部に出力するディジタル放送受信部と、視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生部と、前記ディジタル放送受信部におけるディジタル放送信号の受信状態を監視する受信状態監視手段と、前記受信状態に基づいて前記受信信号を前記表示部に出力するテレビ視聴モードと前記視聴覚コンテンツ再生部によって前記視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生モードとを切替えるモード移行判定手段と、を備えるディジタル放送受信装置であって、更に、前記受信状態監視手段によって検出される受信状態に基づいて受信エラー出現率を算出する受信率算出手段と、前記視聴覚コンテンツ再生部における視聴覚コンテンツの再生状態を監視する視聴覚コンテンツ再生監視手段と、を備え、前記モード移行判定手段は、前記受信率算出手段によって算出された受信エラー出現率が所定値以下であり、且つ前記視聴覚コンテンツ再生監視手段が再生中の前記視聴覚コンテンツの再生終了を検出した場合に前記視聴覚コンテンツ再生モードから前記テレビ視聴モードへ移行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のディジタル放送受信装置において、前記受信エラー出現率は、前記受信状態監視手段によって前記受信信号の符号誤り率を検出し、前記受信率算出手段が検出された符号誤り率が所定値以上であるときの回数をカウントすることによって算出される。
【0014】
また、本発明のディジタル放送受信装置において、前記受信率算出手段は、前記視聴覚コンテンツ再生部において一つの視聴覚コンテンツの再生終了以前の所定期間における受信エラー出現率を算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のディジタル放送受信装置において、前記視聴覚コンテンツ再生監視手段は、前記視聴覚コンテンツの再生終了の検出を、無音信号部分を検出することにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディジタル放送受信装置によれば、受信状態監視手段によって検出される受信信号の受信状態から受信エラー出現率を算出し、受信エラー出現率が所定値以下か所定値を越えているかを判断することによって、ディジタル放送の受信状態がおおむね良好か否かを判定している。受信エラー出現率を視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへの復帰の判断基準とすることによって、時々ノイズが混入するとしても受信状態がおおむね良好であり、ユーザにとってそれほど不快感を与えない場合を識別して、視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへ復帰することができる。
【0017】
また、本発明は、ディジタル放送信号の受信エラー出現率が所定値以下であることに加え、視聴覚コンテンツ再生監視手段によって視聴覚コンテンツの再生状態を監視し、視聴覚コンテンツの再生終了時を視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへの復帰タイミングとしている。これによって、視聴覚コンテンツの再生中の曲の途中でモードが切替わることを防止でき、曲の途中でモードが切替わってしまった場合のようにユーザに不快感を与えることを防止できる。さらに、テレビ視聴モードへ切替わった場合には受信状態がおおむね良好であるゆえにユーザは不快感を抱くことなくテレビを視聴できるようになる。
【0018】
本発明の一態様によれば、受信エラー出現率は、ディジタル放送受信の符号誤り率を検出し、これが所定値以上であるときの回数をカウントすることを含んで算出される。受信信号の符号誤り率が所定値を超えるとディジタルテレビ放送は全く表示できなくなるので、この状態の出現率をカウントすることで、受信状態を適正に評価することが可能となる。
【0019】
本発明の一態様によれば、再生中の視聴覚コンテンツの終了以前の所定期間における受信エラー出現率を算出している。これにより、再生されている一つの視聴覚コンテンツの後半で受信状態が良好になってきたような場合にも受信状態はおおむね回復したと判断してテレビ視聴モードに移行できるので、ユーザにとって不快感の少ない円滑なモード移行を実現することが可能となる。
【0020】
本発明の一態様によれば、視聴覚コンテンツの再生終了の判断は、視聴覚コンテンツの無音信号部分を検出することによって容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は実施例のディジタル放送受信装置の内部ブロック図である。
【図2】図2は実施例のディジタル放送受信装置において視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへ移行する処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は受信エラー出現率を算出する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を図1〜図3を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのディジタル放送受信装置を例示して説明するものであって、本発明をこのディジタル放送受信装置に特定することを意図するものではなく特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなくその他のディジタル放送受信装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0023】
図1を参照して、本実施例のディジタル放送受信装置10について説明する。なお、図1は実施例のディジタル放送受信装置10の内部ブロック図である。ディジタル放送受信装置10は、ディジタル放送受信部110、視聴覚コンテンツ再生部120、CPU130、RAM140、ROM150、表示部160、パワーアンプ170、スピーカ180を備えて構成される。

ディジタル放送受信部110は、アンテナ111、DTVチューナ(ディジタルテレビチューナ)112、復調部113、フィルタ114、デコーダ115、D/A変換部116を備えて構成される。
【0024】
アンテナ111は、ディジタル放送信号を受信する。アンテナ111は、例えば、2本のロッドアンテナで構成することによってダイバーシティアンテナとして機能させる。これにより、ディジタル放送信号を感度よく受信できる。
【0025】
DTVチューナ112は、アンテナ111で受信したディジタル放送信号に対してCPU130から所定の周波数データが送られることにより所定周波数チャンネルでの選局を行う。
【0026】
復調部113は、DTVチューナ112から入力される選局された受信信号を復調する。また、受信信号に含まれる誤り訂正信号を抽出し、それに基づいて受信信号のエラー訂正を行って元のデータを再現及び合成し、トランスポートストリーム形式のパケット信号として出力する。また、復調部113はエラー訂正を行う際に定期的に符号誤り率(BER:Bit Error Rate)を出力する。
【0027】
フィルタ114は、トランスポートストリーム形式のパケット信号から、オーディオデータ、ビデオデータ、他の情報を含むデータそれぞれ抽出する。これは、各パケットに付与されたパケット識別子を識別することによって可能となる。フィルタ114で抽出された各種データは、デコーダ115へ出力される。
【0028】
デコーダ115は、図1では簡単のために1つだけしか図示されていないが、実際には、オーディオデコーダ、ビデオデコーダ、データデコーダから構成される。それぞれのデコーダは、抽出されたオーディオパケット信号、ビデオパケット信号、データパケット信号を復号化し、それぞれディジタルオーディオ信号、ディジタルビデオ信号、ディジタルデータ信号にする。
【0029】
D/A変換部116は、ディジタルオーディオデータ及びディジタルビデオデータをアナログ音声信号、アナログ映像信号に変換し、それぞれローパスフィルタ(図示せず)等を介して表示部160又はパワーアンプ170へ出力する。
【0030】
視聴覚コンテンツ再生部120は、CD/DVDドライブ121と、CD/DVDドライブ121において再生されるCDやDVD等の視聴覚コンテンツのディジタル信号を復調し、D/A変換して出力する。CD/DVDドライブ121において再生される視聴覚コンテンツのディジタル信号は、アナログオーディオ信号、アナログ映像信号としてパワーアンプ170を介してスピーカ180又は/及び表示部160に出力される。
【0031】
CPU130は、ディジタル放送受信装置10の各部の機能の動作を制御・統括するとともに、以下の各手段として動作する。すなわち、受信状態監視手段131、受信率算出手段132、視聴覚コンテンツ再生監視手段133、モード移行判定手段134である。CPU130はRAM140やROM150に記憶された制御プログラムを実行することによって上記の各手段として動作する。
【0032】
受信状態監視手段131は、ディジタル放送受信部110の復調部113におけるディジタル放送信号の受信状態を監視する。具体的には、ディジタル放送信号は、実際のディジタルデータを信号の誤りを検出して訂正できるように誤り訂正符号が追加されて符号化されており、復号化の際にこの誤り訂正符号に基づいてディジタルデータの誤りを検出することができる。復調部113は定期的、例えば1秒毎に符号誤り率を出力している。受信状態監視手段131は復調部113から出力されるこの符号誤り率を監視する。符号誤り率が2.0×10-4以下の場合、受信状態が良好である。符号誤り率が0(エラーフリー)に近い程ブロックノイズ等がない状態で受信できる。逆に、符号誤り率が2.0×10-4を超えると、エラーが多くなり、受信できない状態となる。そこで、受信状態監視手段131は、符号誤り率が2.0×10-4以下の場合を「エラー無し」として出力し、符号誤り率が2.0×10-4を超えた場合を「エラー有り」として出力する。
【0033】
受信率算出手段132は、受信状態監視手段131から出力される「エラー有り」の出現頻度に基づいて受信エラー出現率を算出する。具体的には、所定期間中に、受信状態監視手段131から出力される「エラー有り」の数をカウントし、総エラー数を、カウントを行った総確認時間で序することによって受信エラー出現率を算出する。特に、本実施例においては、CD/DVDドライブ121において視聴覚コンテンツが1曲再生されている間、受信状態監視手段131から出力される「エラー有り」の数をカウントし、1曲の再生終了時において、総エラー数を総確認時間で除することにより、受信エラー出現率を算出する。
【0034】
なお、受信率算出手段132が「エラー有り」の数をカウントする期間は、テレビ視聴モードにおいては、ユーザによって予め定められた所定期間であり、視聴覚コンテンツ再生モードにおいては、上記のようにCD/DVDドライブ121において再生されている視聴覚コンテンツの1曲の始めから終了までの再生中全てにわたる期間であってもよいし、再生されている視聴覚コンテンツの1曲終了以前の所定期間であってもよい。さらに、受信率算出手段132が「エラー有り」の数をカウントする期間は、再生されている視聴覚コンテンツの曲終了前における1曲全体に対する予め設定された所定割合の期間であってもよい。例えば、曲の長さに対して50%の期間と設定された場合、再生中の曲の長さが4分間であれば、受信率算出手段132は「エラー有り」の数を1曲終了前の2分間にわたってカウントする。これにより、再生される1曲の長さが長い場合には比較的長期間におけるエラー出現率をモード移行の基準とし、1曲の長さが短い場合には比較的短期間におけるエラー出現率をモード移行の基準とすることができ、ユーザにとってより自然なモード移行を実現できる。
【0035】
また、受信エラー出現率は、「エラー有り」の総数を、総確認時間で除することによって求めてもよいし、受信状態監視手段131が符号誤り率を確認した総確認回数で除することによって求めてもよい。
【0036】
視聴覚コンテンツ再生監視手段133は、視聴覚コンテンツ再生部120における視聴覚コンテンツの再生状態を監視する。具体的には、CD/DVDドライブ121において再生中の視聴覚コンテンツからポストギャップやプリギャップ等の無音信号部分を検出することにより、視聴覚コンテンツの1曲再生終了を識別する。
【0037】
モード移行判定手段134は、ディジタル放送受信部110において受信されたディジタル放送信号を表示部160に出力して表示するテレビ視聴モードと、視聴覚コンテンツ再生部120において視聴覚コンテンツを再生してパワーアンプ170を介してスピーカ180或いは/及び表示部160に出力する視聴覚コンテンツ再生モードとを切替えるものである。
【0038】
テレビ視聴モードにおいて、所定期間における受信エラー出現率が所定値を超えた場合に、ディジタル放送信号の受信状態が悪化していると判断し、モード移行判定手段134はディジタル放送受信部110における受信信号を表示部160やパワーアンプ170を介してスピーカ180に出力していたのを停止し、視聴覚コンテンツ再生部において再生されるCDやDVD等に保存されている視聴覚コンテンツの再生を開始し、その出力を、パワーアンプ170を介してスピーカ180に出力、又は/及び表示部160に出力する。(図1のスイッチS1、S2を、ディジタル放送受信部110側から視聴覚コンテンツ再生部120側に切替える。)
視聴覚コンテンツ再生モードにおいて、所定期間における受信エラー出現率が所定値以下であり、且つ視聴覚コンテンツ再生監視手段133が再生中の視聴覚コンテンツの再生終了を検出した場合に、視聴覚コンテンツの1曲が終了したタイミングであるとともにディジタル放送信号の受信状態がおおむね良好であると判断し、視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへ移行する。(図1のスイッチS1、S2を、視聴覚コンテンツ再生部120側からディジタル放送受信部110側に切替える。)
RAM140、ROM150には制御プログラムが記憶され、この制御プログラムをCPU130において実行することによってディジタル放送受信装置の各部の動作を制御・統括する。
【0039】
表示部160は、液晶ディスプレイ等で構成され、ディジタル放送受信部110又は視聴覚コンテンツ再生部120から出力されたアナログ映像信号を表示する。
【0040】
パワーアンプ170は、ディジタル放送受信部110又は視聴覚コンテンツ再生部120から出力されたアナログオーディオ信号を増幅し、スピーカ180に出力する。スピーカ180は増幅されたアナログオーディオ信号を音声として出力する。
【0041】
次に、図2を参照して、本実施例のディジタル放送受信装置10における視聴覚コンテンツ再生モードとテレビ視聴モードとの移行処理について説明する。なお、図2は、実施例のディジタル放送受信装置において視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへ移行する処理を示すフローチャートである。
【0042】
図2のステップS201において、走行中の車両に搭載された本実施例のディジタル放送受信装置10はテレビ視聴モードで動作している。テレビ視聴モードでは、図1のスイッチS1、S2はディジタル放送受信部110側に接続されている。そのため、ディジタル放送受信部110において受信されたディジタル放送信号はディジタル放送受信部110において処理された後、表示部160に、また、パワーアンプ170を介してスピーカ180に出力され、ユーザがディジタルテレビ放送を視聴することができる。
【0043】
図2のステップS202において、復調部113は定期的、例えば1秒毎に符号誤り率を出力しているが、受信状態監視手段131がこの符号誤り率を監視し、符号誤り率が2.0×10-4を超えた場合を「エラー有り」として出力する。受信率算出手段132は受信状態監視手段131から出力される「エラー有り」の出現頻度に基づいて受信エラー出現率を算出する。例えば、所定期間中、具体的には、直近の30秒以内に受信状態監視手段131から出力された「エラー有り」の数をカウントし、総エラー数をカウントを行った総確認時間(30秒)で序することによって受信エラー出現率を算出する。
【0044】
ステップS203において、モード移行判定手段134は、算出された受信エラー出現率が所定値を超えているか否かを判定する。例えば、受信エラー出現率は20%以下の場合にユーザにとって視認性が良好であるのに対し、20%を超えると視認性は悪化し、50%程度になると不快と感じられることから、受信エラー出現率20%超の場合に、モード移行判定手段134は受信状態が悪化したと判断する。車両が山間部等を走行すると、ディジタル放送信号を受信しにくくなり、受信エラー出現率は20%を超える。受信エラー出現率が所定値を超えた場合、処理はステップS204に進む。受信エラー出現率が20%以下の場合、モード移行判定手段134は受信状態が悪化していないと判断し、ステップS202の処理に戻り、受信状態の監視を継続する。
【0045】
ステップS204において、モード移行判定手段134は図1のスイッチS1、S2をディジタル放送受信部110側から視聴覚コンテンツ再生部120側に切替えるとともに、CPU130から視聴覚コンテンツ再生部120に対して視聴覚コンテンツの再生指示を行う。視聴覚コンテンツ再生部120においては、CD/DVDドライブ121がCD或いはDVDの1曲再生を行い、出力されたアナログオーディオ信号やアナログ映像信号はパワーアンプ170を介してスピーカ180、又は/及び表示部160に出力される。
【0046】
ステップS205において、視聴覚コンテンツ再生部120によって視聴覚コンテンツを1曲再生している間に、受信状態監視手段131は、ディジタル放送受信部110におけるディジタル放送受信時の符号誤り率の監視を継続し、符号誤り率が2.0×10-4を超えた場合を「エラー有り」として出力する。
【0047】
ステップS206において、受信率算出手段132は受信状態監視手段131によって出力される「エラー有り」の数をカウントする。
【0048】
ステップS207において、視聴覚コンテンツ再生監視手段133は視聴覚コンテンツ再生部120における視聴覚コンテンツの再生状況、つまり、1曲再生中か1曲再生終了かを判定する。具体的には、CD/DVDドライブ121においてCDを再生している場合に、再生中の曲に含まれるポストギャップやプリギャップ等の無音信号部分を検出した場合に1曲再生終了と判断する。又は、CDやDVDの楽曲データに含まれる演奏時間等のデータと再生時間とを比較することによって1曲再生終了を判断しても良い。1曲の再生が終了していないと判断した場合は、ステップS205の処理に戻り、1曲の再生が終了したと判断した場合は、ステップS208の処理に進む。
【0049】
ステップS208において、受信率算出手段132は、1曲再生中、或いは1曲終了以前の所定期間に受信状態監視手段131から出力された「エラー有り」の出現頻度に基づいて受信エラー出現率を算出する。つまり、受信エラー出現率は、カウントされた「エラー有り」のカウント数を総確認時間で除することによって算出される。受信エラー出現率は、「エラー有り」の総カウント数をA、総確認時間をZとした場合、次の(1)式で表される。
【0050】
受信エラー出現率(%)=(A/Z)×100 (1)
なお、受信エラー出現率は、「エラー有り」の総数を、受信状態監視手段131が符号誤り率を確認した総確認回数で序することによって算出するようにしてもよい。
【0051】
ステップS209において、モード移行判定手段134は、算出された受信エラー出現率が所定値以下か否かを判定する。すなわち、受信エラー出現率が20%以下の場合に受信状態が改善されたと判断し、ステップS210の処理に進む。受信エラー出現率が20%超の場合は、受信状態は改善されていないと判断し、ステップS205の処理に戻るとともに、視聴覚コンテンツ再生部120は次の一曲を再生する。
【0052】
ステップS210において、受信状態監視手段131はディジタル放送受信部110から出力される符号誤り率に基づき、現時点でディジタル放送信号が受信可能な状態であるか否かを判定する。これも符号誤り率が所定値、例えば、2.0×10-4以下である場合に受信可能であると判定し、ステップS211に進む。符号誤り率が所定値超の場合は受信不可能であるとし、ステップS205の処理に戻るとともに視聴覚コンテンツ再生部120は次の一曲を再生する。
【0053】
ステップS211において、モード移行判定手段134は図1のスイッチS1、S2を視聴覚コンテンツ再生部120側からディジタル放送受信部110側に切替えることにより、テレビ視聴モードに切替える。テレビ視聴モードにおいて、ディジタル放送受信部110において受信されたディジタル放送信号は、ディジタル放送受信部110において処理されて表示部160に、また、パワーアンプ170を介してスピーカ180に出力される。
【0054】
図3を参照して、本実施例における受信エラー出現率の算出方法について説明する。なお、図3は受信エラー出現率を算出する処理を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS301において、受信率算出手段132は受信エラー出現率の算出のために使用する変数、具体的には、エラー出現数A、総確認時間Zの初期化を行う。
【0056】
ステップS302において、受信状態監視手段131はディジタル放送受信部110の復調部113から出力される符号誤り率を取得する。
【0057】
ステップS303において、総確認時間をカウントアップする。符号誤り率をX秒毎に監視する場合、総確認時間Zは(Z=Z+X)で求めることができる。なお、本実施例では、符号誤り率は1秒毎に取得することとする。
【0058】
ステップS304において、受信状態監視手段131は復調部113から取得した符号誤り率が所定値を超えたか否かを判定することにより、エラーが出現したか否かを判定する。本実施例では、符号誤り率が2.0×10-4超えた場合、「エラー有り」として出力し、ステップS305に進む。符号誤り率が2.0×10-4以下である場合、ステップS306に進む。
【0059】
ステップS305において、受信率算出手段132はエラー出現数をカウントアップする。エラー出現数Aは、符号誤り率をX秒毎に監視した場合、(A=A+X)で求めることができる。
【0060】
ステップS306において、視聴覚コンテンツ再生監視手段133は、視聴覚コンテンツ再生部120からの出力に基づいて、再生中の視聴覚コンテンツが1曲終了したか否かを判定する。1曲再生が終了していなければ、ステップS302に戻り、受信状態監視手段131は受信状態の監視を継続して行う。
【0061】
1曲再生が終了した場合は、ステップS307の処理に進み、受信率算出手段132が1曲再生中の受信エラー出現率を算出する。受信エラー出現率は、次の(1)式で表される。
【0062】
受信エラー出現率(%)=(A/Z)×100 (1)
(1)式によって算出された受信エラー出現率、及び視聴覚コンテンツの1曲再生終了に基づいてモード移行判定手段134は視聴覚コンテンツ再生モードからテレビ視聴モードへの復帰の判断を行う。
【0063】
なお、上述のステップS302の処理は図2のステップS205の処理に対応し、ステップS303〜ステップS305の処理は図2のステップS206の処理に対応し、ステップS306の処理は図2のステップS207に対応し、ステップS307は図2のステップS208に対応する。
【0064】
上記には、ディジタル放送の受信状態を符号誤り率が所定値を超えた場合を「エラー有り」と判断した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、ディジタル放送信号のCN比と基準値とを比較し、基準値未満である場合を「エラー有り」として受信エラー出現率を算出してもよい。
【0065】
なお、上記実施例においては、視聴覚コンテンツ再生部120において再生される視聴覚コンテンツはCD又はDVDに記録された音楽コンテンツであり、音楽を1曲再生し終わった時点でそれまでのディジタル放送信号の受信状態がおおむね良好であるか判定し、テレビ視聴モードに復帰する例について説明したが、本発明は上記の場合に限られない。視聴覚コンテンツ再生部120において再生される視聴覚コンテンツは、DVD等の動画(映画等)であってもよい。この場合、所定期間におけるディジタル放送の受信状態が良好になったと判断された時点で、表示部160にポップアップ等でテレビ視聴モードに切り替えるか否かを問うメッセージを表示するようにしてもよい。このようにすれば、視聴中の映画が途中で中断するのを防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
10 ディジタル放送受信装置
110 ディジタル放送受信部
111 アンテナ
112 DTVチューナ
113 復調部
114 フィルタ
115 デコーダ
116 D/A変換部
120 視聴覚コンテンツ再生部
121 CD/DVDドライブ
131 受信状態監視手段
132 受信率算出手段
133 視聴覚コンテンツ再生監視手段
134 モード移行判定手段
140 RAM
150 ROM
160 表示部
170 パワーアンプ
180 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、ディジタル放送信号を受信して前記表示部に出力するディジタル放送受信部と、視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生部と、前記ディジタル放送受信部におけるディジタル放送信号の受信状態を監視する受信状態監視手段と、前記受信状態に基づいて前記受信信号を前記表示部に出力するテレビ視聴モードと前記視聴覚コンテンツ再生部によって前記視聴覚コンテンツを再生する視聴覚コンテンツ再生モードとを切替えるモード移行判定手段と、を備えるディジタル放送受信装置であって、更に、
前記受信状態監視手段によって検出される受信状態に基づいて受信エラー出現率を算出する受信率算出手段と、
前記視聴覚コンテンツ再生部における視聴覚コンテンツの再生状態を監視する視聴覚コンテンツ再生監視手段と、を備え、
前記モード移行判定手段は、前記受信率算出手段によって算出された受信エラー出現率が所定値以下であり、且つ前記視聴覚コンテンツ再生監視手段が再生中の前記視聴覚コンテンツの再生終了を検出した場合に前記視聴覚コンテンツ再生モードから前記テレビ視聴モードへ移行することを特徴とするディジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記受信エラー出現率は、前記受信状態監視手段によって前記受信信号の符号誤り率を検出し、前記受信率算出手段により検出された符号誤り率が所定値以上であるときの回数をカウントすることによって算出されることを特徴とする請求項1に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記受信率算出手段は、前記視聴覚コンテンツ再生部において一つの視聴覚コンテンツの再生終了以前の所定期間における受信エラー出現率を算出することを特徴とする請求項1に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記視聴覚コンテンツ再生監視手段は、前記視聴覚コンテンツの再生終了の検出を、無音信号部分を検出することにより行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249000(P2012−249000A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117979(P2011−117979)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】