説明

ディスクモータ及びそれを備えた電動作業機

【課題】フランジを有する構成において、整流子ディスクとコイルディスクとでフランジを挟む場合と比較して整流子ディスクとコイルディスクとの電気的接続が容易なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供する。
【解決手段】フランジ37Bの上面にコイルディスク群としてのコイル部36が接着固定される。整流子ディスク35は、コイル部36の上面に接着固定される。コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364を積層してなる。貫通孔367は、整流子ディスク35から第4コイルディスク364までを上下に貫通し、フランジ37Bに形成された空気孔370と連通する。貫通孔367及び空気孔370は、空気流の経路となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルディスクと整流子ディスクとを有して出力軸を回転駆動するディスクモータ及びそれを備えた電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であってコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子と、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子に電流を供給するためのブラシとから主に構成される(下記特許文献1参照)。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のディスクモータは、複数のコイルディスク同士の接続とコミュテータディスクとの接続については不明である。また、出力軸と一体的に設けられるフランジを有するか否かが不明であり、フランジと整流子ディスク、コイルディスクとの積層関係も不明である。ここで、ブラシが当接し摺動する整流子ディスク面の裏面にフランジを接着し、整流子ディスクの機械的強度を高めることが考えられる。この場合、整流子ディスクとコイルディスクとでフランジを挟む構造となる。しかし、フランジが間にあると、整流子ディスクとコイルディスクとの電気的接続に手間がかかり、コストアップ要因となっていた。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、コイルディスク群のコイルディスク同士の電気的接続、及びコイルディスク群と整流子ディスクとの電気的接続を容易に行うことの可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供することにある。
また、他方の目的としては、出力軸と一体的に設けられるフランジを有する構成であって、整流子ディスクとコイルディスクとでフランジを挟む場合と比較して整流子ディスクとコイルディスクとの電気的接続が容易なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ディスクモータである。このディスクモータは、
出力軸と、
コイルパターンが形成された複数のコイルディスクからなるコイルディスク群と、
前記コイルディスク群の表面に同軸的に接着された整流子ディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備え、
前記コイルディスク群のうち少なくとも2枚のコイルディスクのコイルパターンと前記整流子ディスクの整流子パターンとは、軸方向視において重なる位置で電気的に接続されると共に、前記出力軸と一体に回転する。
【0008】
前記ディスクモータにおいて、前記整流子ディスクと前記コイルディスク群を貫く貫通孔が形成され、前記貫通孔内側に設けられた導体部によって前記整流子ディスクと前記コイルディスク群とが電気的に接続されているとよい。
【0009】
前記ディスクモータにおいて、
前記出力軸に一体的に設けられたフランジを更に備え、
前記コイルディスク群は一方の面を接着面として前記フランジ上に同軸上に接着され、
前記整流子ディスクは、前記コイルディスク群の他方の面に同軸的に接着されているとよい。
この場合、前記フランジは、軸方向視で前記整流子ディスクと略同一の大きさであるとよい。
また、前記導体部は、前記貫通孔内面に形成された導体膜であり、
前記貫通孔と連通し、かつ前記フランジを貫通する空気孔が形成され、
前記貫通孔及び前記空気孔を気体が通過可能であるとよい。
【0010】
前記ディスクモータにおいて、前記導体部が前記貫通孔内側を埋めていてもよい。
【0011】
前記ディスクモータにおいて、
前記電流供給部は、前記整流子ディスクと接触するブラシを有し、
前記ブラシは、前記整流子ディスクの回転に伴い前記整流子ディスク上を相対的に摺動して前記貫通孔の開口上を通過するとよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、ディスクモータである。このディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に一体的に設けられたフランジと、
コイルパターンが形成され、一方の面を接着面として前記フランジ上に同軸的に接着されたコイルディスク又はコイルディスク群と、
前記コイルディスク又はコイルディスク群の他方の面に同軸的に接着された整流子ディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備える。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記ディスクモータを備えた電動作業機である。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コイルディスク群のコイルディスク同士の電気的接続、及びコイルディスク群と整流子ディスクとの電気的接続を容易に行うことの可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を実現可能である。また、フランジを有する態様においては、コイルディスク又はコイルディスク群は一方の面を接着面としてフランジ上に同軸的に接着され、整流子ディスクは前記コイルディスク又はコイルディスク群の他方の面に同軸的に接着されるので、整流子ディスクとコイルディスクとでフランジを挟む場合と比較して整流子ディスクとコイルディスクとの電気的接続が容易なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動作業機としての刈払機の斜視図。
【図2】図1に示す刈払機の駆動部の正断面図。
【図3】図2に示すステータの模式的平面図。
【図4】図2に示すロータの正面図。
【図5】図4に示す出力軸及び支持部材の、支持部材を断面とした正面図。
【図6】図4に示す貫通孔及びその近傍の拡大断面図。
【図7】図4に示す整流子ディスクの平面図。
【図8】(A)は、図4に示す第1コイルディスクの平面図。(B)は、同コイルディスクの底面図。
【図9】第1コイルディスクのコイルパターン説明図。
【図10】変形例に関し、実施の形態の貫通孔を導体で埋めた場合の貫通孔及びその近傍の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る刈払機1の斜視図である。電動作業機の例示である刈払機1は、電源部3と、パイプ部4と、ハンドル部5と、駆動部6と、刈刃7とを備える。
【0019】
電源部3は、電源たるバッテリ301を着脱可能に有する。パイプ部4は、電源部3と駆動部6とを機械的に接続する(連結する)。また、パイプ部4の内部には、電源部3と駆動部6とを電気的に接続する配線(図示せず)が挿通されている。この配線により、電源部3から駆動部6に電力が供給される。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータを収容しており、電源部3からの供給電力により刈刃7を回転駆動する。ディスクモータの構成は後述する。
【0020】
ハンドル部5は、パイプ部4の中間、すなわち電源部3と駆動部6との間に取り付け固定されている。ハンドル部5は、一対のアーム51の先端にそれぞれグリップ52を取り付けてなる。一方のグリップ52には、スロットル53が設けられている。作業者は、スロットル53を操作することにより、駆動部6への供給電力を調整可能、すなわち刈刃7の回転数を調整可能である。刈刃7は、略円板状で、その周縁に鋸歯が形成されている。また、刈刃7中心には後述するディスクモータの出力軸に装着される孔(図には現れず)が形成されている。
【0021】
図2は、図1に示す刈払機1の駆動部6の正断面図である。なお、図2に示すように、出力軸31の延出方向を上下方向と定義する。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータ80を有する。ヘッドハウジング61は、カバー部62及びベース部63を嵌合一体化してなる。ディスクモータ80は、ステータ81と、ロータ82と、一対のブラシ83とを有する。一対のブラシ83は、ディスクモータ80の回転軸(出力軸31)について対称に設けられ、カバー部62のブラシホルダ65に支持される。各ブラシ83は、下面が後述する整流子ディスク35上の銅等の導体の整流子パターンと当接するように、バネ83Aによって整流子ディスク35側(下側)に付勢される。ブラシ83は、図1の電源部3に接続されており、ロータ82の後述するコイルパターンに電流を供給する電流供給部として機能する。
【0022】
ステータ81は、磁束発生部としてのマグネット41と、軟磁性体である上ヨーク42及び下ヨーク43とを有する。リング状の上ヨーク42は、カバー部62の下面に例えばネジ622で固定される。上ヨーク42と略同径のリング状の下ヨーク43は、ベース部63の下面に形成されたリング状溝部631内に例えばネジ632で固定される。マグネット41は、ベース部63の上面に形成された穴部633内に嵌め込み固定される。
【0023】
図3は、図2に示すステータ81の模式的平面図である。本図に示すように、例えば円板形状のマグネット41は、例えば10個、円周上に等角度ピッチで並んで配置される(マグネット41を収容する図2の穴部633も円周上に同数並んで存在する)。円周の中心は、ディスクモータ80の回転中心と略一致する。隣り合うマグネット41は、上面の磁極が相互に異なる。マグネット41としては、ネオジム磁石等の希土類磁石が好ましいが、フェライト磁石等の焼結磁石を用いてもよい。上ヨーク42及び下ヨーク43は、後述するロータ82のコイルパターンに印加される磁束密度を高めるものである。
【0024】
図2に示すように、ロータ82は、出力軸31(ロータシャフト)と、整流子ディスク35と、コイル部36と、支持部材37とを有する。出力軸31は、カバー部62に固定された上側軸受け311及びベース部63に固定された下側軸受け312によって回転自在に支持される。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31Aが形成されており、図示せぬ留め具によって図1の刈刃7が固定される。整流子ディスク35の上面は、ブラシ83の摺動面である。図1に示す電源部3からブラシ83及び整流子ディスク35を介してコイル部36に電流が供給される。
【0025】
図4は、図2に示すロータ82の正面図である。図5は、図4に示す出力軸31及び支持部材37の、支持部材37を断面とした正面図である。図5に示すように、出力軸31に同軸的に固定された例えばアルミ等の金属製の支持部材37は、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状のフランジ37Bとから構成される。フランジ37Bは、円筒部37Aの側面から出力軸31と垂直に外側に突出する。所定数の空気孔370は、フランジ37Bを上下に貫通する。空気孔370の作用については後述する。図4に示すように、軸方向視でフランジ37Bと同形状のシート状の接着層501によって、フランジ37Bの上面にコイルディスク群としてのコイル部36が接着固定される。
【0026】
コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364をシート状の接着層502(絶縁性)を挟んで積層してなる。シート状の接着層502は、各コイルディスクと軸方向視で同形状であり、各コイルディスクの表面略全体を覆う。第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364は、フランジ37Bよりも大径であり、それぞれ両面に後述のコイルパターンが形成されている。軸方向視でフランジ37Bと同形状の整流子ディスク35は、同じく同形状のシート状の接着層503によってコイル部36の上面に接着固定される。所定数の貫通孔367は、整流子ディスク35から第4コイルディスク364までを上下に貫通し、前述の空気孔370と連通する。図4に矢印で示すように、貫通孔367及び空気孔370は、空気流の経路となる。このため、各層の発熱を効率良く冷却することができる。
【0027】
図6は、図4に示す貫通孔367及びその近傍の拡大断面図である。なお、本図において接着層の図示は省略している。各層の基板(両面基板)上において、貫通孔367の周囲の両面に銅等の導体ランド381が設けられる。また、両面の導体ランド381間を接続する個別貫通導体382(銅めっき等の導体層)が導体ランド381上と貫通孔367の内面に跨って設けられる(コイルディスク積層前に設けられる)。さらに、個別貫通導体382間を接続する層間貫通導体383(例えば銅めっき等の導体層)が各層の個別貫通導体382上に跨って設けられる。いくつかの導体ランド381は、各層の基板上の回路パターン(後述の整流子パターン又はコイルパターン)と接続される。なお、図6に二点鎖線で示すように、貫通孔367の開口上をブラシ83が摺動してもよい。
【0028】
図7は、図4に示す整流子ディスク35の平面図である。円板状の整流子ディスク35の中心にある貫通孔35Aは、図4の円筒部37Aを挿通させるものである。スルーホール35Bは、整流子ディスク35の中心から等距離に所定数設けられる。いくつかのスルーホール35Bは、後述するコイルディスクのスルーホールと連通して前述の貫通孔367を成す。整流子ディスク35上に形成された整流子パターン351は、放射状に40セグメントに分かれている。間に7つのセグメントを挟んだ2つのセグメント(1番目と9番目、2番目と10番目等)は、内側に形成された接続パターン352と反対面に形成された不図示の接続パターンにより相互に接続される。
【0029】
図8(A)は、図4に示す第1コイルディスク361の平面図である。図8(B)は、同コイルディスクの底面図である。なお、他のコイルディスクも第1コイルディスク361と同じ構造であり且つ同じコイルパターンを有するので、ここでは第1コイルディスク361についてのみ説明する。
【0030】
第1コイルディスク361は、円板状の絶縁基板90(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の絶縁樹脂基板)の両面にそれぞれコイルパターン92を有する。絶縁基板90の中心にある貫通孔91は、図4の円筒部37Aを挿通させるものである。全層を連絡する貫通孔367は、絶縁基板90の中心からの角度90°おきに3個ずつ、合計12個形成される。各貫通孔367から絶縁基板90の中心までの距離は相互に等しい。各貫通孔367は、整流子ディスク35に形成されたスルーホール35Bのうち1つと連通する。
【0031】
銅その他の導電材からなるコイルパターン92は、相互に近接した略同一幅の4列のパターンからなる部分コイルパターン群920を片面につき20個ずつ有する。部分コイルパターン群920は、内側連絡パターン群92Aと、放射状パターン群92Bと、外側連絡パターン群92Cとを順に接続したものである。両面の内側連絡パターン群92A同士は、端部近傍に形成されたスルーホール921によって相互に電気的に接続される。両面の外側連絡パターン群92C同士は、端部近傍に形成されたスルーホール922によって相互に電気的に接続される。放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心側から半径方向外側に延びて内側連絡パターン群92Aと外側連絡パターン群92Cとを渡す。両面の放射状パターン群92B同士は、軸方向視で略同一位置に存在する。各々の面の放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心から等角度ピッチで存在する。放射状パターン群92Bは、図2及び図3に示すマグネット41の配列円周(各マグネット41の中心が配列される円周)の真上に位置する。つまり、各コイルディスクの回転に伴って放射状パターン群92Bはマグネット41の真上を通過する。放射状パターン群92Bに流れる電流とマグネット41の発生する磁界との間の電磁力により回転力が得られる。
【0032】
図9(A)及び図9(B)は、第1コイルディスク361のコイルパターン説明図である。なお、これらの図は、付されている符号を除き、図8(A)及び図8(B)と同一である。第1コイルディスク361のコイルパターン92は、2つのコイルを含む。一方のコイルの始点をA1−1、終点をA1−2と図9(A)中に示している。また、他方のコイルの始点をA2−1、終点をA2−2と同図中に示している。一方のコイルは、始点A1−1から点P11、P11'、P12'、P12、P13、P13'、・・・P19'、P20'と繋がる。これで上から見て始点A1−1から時計回りに一周となる。同様にして時計回りに合計四周し、点P50'に至る。そして今度は点P50'から点P51'、P51、・・・と反時計回りに合計四周して終点A1−2に至る。他方のコイルも同様に、始点A2−1から終点A2−2まで繋がっている。
【0033】
第1コイルディスク361が有する一方のコイルと整流子基板ディスク35の整流子パターン351との接続関係は、始点A1−1が接続された整流子パターンが一方のブラシ83に導通するときに、終点A1−2が接続された整流子パターンが他方のブラシ83に導通するようになっている。他方のコイル(始点A2−1、終点A2−2)に関しても同様である。また、他のコイルディスクが有するコイルについても同様である。マグネット41の磁極面上を通過する各コイルディスクの放射状パターン群92Bが同一方向の回転トルクを発生するように、整流子ディスク35を介してブラシ83から各コイルに通電される。
【0034】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0035】
(1) コイル部36は下面を接着面としてフランジ37B上に同軸的に(出力軸31中心と同軸となるように)接着固定され、コイル部36の上面に整流子ディスク35が同軸的に接着固定された積層構造であるため、整流子ディスク35とコイル部36との間にフランジ37Bを挟む構造と比較して、整流子ディスク35とコイル部36との電気的接続が容易であり、コスト安である。すなわち、フランジ37Bを挟む構造であると、整流子ディスク35とコイル部36との電気的接続に例えば導体ピンを用いる必要があるため、導体ピンと基板とのはんだ付けの手間が余計に必要となる。さらに、導体ピンとフランジ37Bとの絶縁のために絶縁パイプを設ける必要があるなど、整流子ディスク35とコイル部36との電気的接続が容易でない。これに対し、本実施の形態では、上記のとおりの積層構造のため、公知の層間接続技術を用いて整流子ディスク35とコイル部36とを容易に電気的に接続可能である。
【0036】
(2) 整流子ディスク35の上面からフランジ37Bの下面までが貫通孔367と空気孔370で連通していて空気が流通可能となっているため、放熱性がよく、各層の発熱を効率良く冷却することが可能である。
【0037】
(3) 貫通孔367の開口から整流子ディスク35上に突出する物(例えばピン)がないため、整流子ディスク35上の貫通孔367の開口上をブラシ83が摺動可能である。このため、ブラシ83を整流子ディスク35の中心側に寄せることができ、整流子ディスク35の外径を低減することが可能となる。また、ブラシの摺動距離が短くなるため、ブラシ83の摩擦損を低減し且つブラシ83の長寿命化を図ることができる。
【0038】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0039】
図10は、変形例に関し、実施の形態の貫通孔367を層間貫通導体383で埋めた場合の貫通孔367及びその近傍の拡大断面図である。本図に示すように整流子ディスク35上の貫通孔367の開口が平になるように層間貫通導体383で埋めることにより、貫通孔367の開口上を通過するブラシ83の摺動性を良くすることが可能である。また、層間接続の電気抵抗を低減することができ、効率がよい。放熱性の面では実施の形態の構成が優れているものの、本変形例も上記のとおり別の観点で有意義である。なお、貫通孔367を層間貫通導体383で埋める場合は、フランジ37Bの空気孔370は設けなくてもよい。また、層間貫通導体383は図6と同様とし、別の導体(はんだ等)を追加する形で貫通孔367を埋めてもよい。
【0040】
コイルディスク及び整流子ディスクの形状は、厳密な円板状でなくてもよいが、軸方向視で実質的に円とみなせる範囲であるとよい。
【0041】
出力軸31及び支持部材37は、実施の形態で示したように別体であってもよいし、一体形成されたものであってもよい。
【0042】
フランジ37Bは、整流子ディスク35よりも小径であってもよく、これによればコイルディスク及び整流子ディスクの出力軸31に対する位置決めとしての作用を奏することができる。また、一対のブラシ83間の距離以上の径であれば、ロータ82の強度を向上させることができ望ましい。
【0043】
上記に加え、マグネットの個数とその配置角度ピッチ、コイルパターンの周回数(コイルパターンの列数)、コイルディスクの積層数、ピン挿通孔やスルーホールの数、その他のパラメータは、要求される性能やコストに応じて適宜設定可能である。また、コイルパターンの周回数は、コイルディスクごとに異なってもよい。なお、コイルパターンが1列の場合は、実施の形態の説明における「部分コイルパターン群」、「内側連絡パターン群」、「放射状パターン群」、及び「外側連絡パターン群」の各用語を、「群」を除いて読み替える。
【0044】
電動作業機は、実施の形態で示した刈払機のほか、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソー等、ディスクモータによる回転駆動部を有する種々の電動工具であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 刈払機
3 電源部
4 パイプ部
5 ハンドル部
6 駆動部
7 刈刃
301 バッテリ
31 出力軸(ロータシャフト)
35 整流子ディスク
36 コイル部
37 支持部材
37B フランジ
41 マグネット
42 上ヨーク
43 下ヨーク
51 アーム
52 グリップ
53 スロットル
61 ヘッドハウジング
62 カバー部
63 ベース部
65 ブラシホルダ
80 ディスクモータ
81 ステータ
82 ロータ
83 ブラシ
92 コイルパターン
92A 内側連絡パターン群
92B 放射状パターン群
92C 外側連絡パターン群
920 部分コイルパターン群
361〜364 コイルディスク
501〜503 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
コイルパターンが形成された複数のコイルディスクからなるコイルディスク群と、
前記コイルディスク群の表面に同軸的に接着された整流子ディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備え、
前記コイルディスク群のうち少なくとも2枚のコイルディスクのコイルパターンと前記整流子ディスクの整流子パターンとは、軸方向視において重なる位置で電気的に接続されると共に、前記出力軸と一体に回転する、ディスクモータ。
【請求項2】
前記整流子ディスクと前記コイルディスク群を貫く貫通孔が形成され、前記貫通孔内側に設けられた導体部によって前記整流子ディスクと前記コイルディスク群とが電気的に接続されている請求項1に記載のディスクモータ。
【請求項3】
前記出力軸に一体的に設けられたフランジを更に備え、
前記コイルディスク群は一方の面を接着面として前記フランジ上に同軸上に接着され、
前記整流子ディスクは、前記コイルディスク群の他方の面に同軸的に接着されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のディスクモータ。
【請求項4】
前記フランジは、軸方向視で前記整流子ディスクと略同一の大きさである請求項3に記載のディスクモータ。
【請求項5】
前記導体部は、前記貫通孔内面に形成された導体膜であり、
前記貫通孔と連通し、かつ前記フランジを貫通する空気孔が形成され、
前記貫通孔及び前記空気孔を気体が通過可能である請求項3もしくは請求項4に記載のディスクモータ。
【請求項6】
前記導体部が前記貫通孔内側を埋めている請求項2乃至4の何れか一項に記載のディスクモータ。
【請求項7】
前記電流供給部は、前記整流子ディスクと接触するブラシを有し、
前記ブラシは、前記整流子ディスクの回転に伴い前記整流子ディスク上を相対的に摺動して前記貫通孔の開口上を通過する請求項2乃至6の何れか一項に記載のディスクモータ。
【請求項8】
出力軸と、
前記出力軸に一体的に設けられたフランジと、
コイルパターンが形成され、一方の面を接着面として前記フランジ上に同軸的に接着されたコイルディスク又はコイルディスク群と、
前記コイルディスク又はコイルディスク群の他方の面に同軸的に接着された整流子ディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備える、ディスクモータ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載されたディスクモータを備えた電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161149(P2012−161149A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18461(P2011−18461)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】