説明

ディスプレイ用光学シート

【課題】液晶表示素子に使用されるシート状物の積層体を、従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造する。
【解決手段】2枚以上の光学シート12、14、16及び18が積層され光学シート同士が周縁の1辺で接合されているシート状物の積層体10である。接合長さを1辺の長さの5〜70%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用光学シートに係り、特に、液晶表示素子等に使用されるシート状物の積層体を、従来より簡易な工程で低コストかつ高品質で製造するのに好適なディスプレイ用光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子や有機EL等の電子ディスプレイの用途に、導光板等の光源からの光を拡散させるフィルムや、正面方向に光を集光するレンズフィルム等が用いられている。
【0003】
この場合、各種の光学フィルム(シート)を積層して使用する例が多い。たとえば、特許文献1においては、反射型偏光フィルムと位相差フィルムと半透過半反射層とが任意の順番で積層され、更に、これら3層の外側に吸収型偏光フィルムが積層されてなる半透過半反射性偏光フィルムが提供されている。そして、光源装置と液晶セルとの間に5層ものフィルムが介在しており、この構成により、画面輝度が高められ、又は消費電力が抑えられるとされている。
【0004】
また、特許文献2〜4においては、1枚の光拡散フィルムとレンズフィルムの機能を一体化したフィルムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−184575号公報
【特許文献2】特開平7−230001号公報
【特許文献3】特許第3123006号公報
【特許文献4】特開平5−341132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の構成において、何層ものフィルムを積層するには多数の工程を経ることが求められ、工程が複雑になるとともにコストアップは避けられない。
【0006】
また、レンチキュラーレンズやプリズムシートのような平板レンズは表面が傷つき易く、また汚れ易いので、表面に保護シートが貼られた状態で納品される形態が一般的である。
【0007】
ところが、このような保護シートは、平板レンズから剥離された後には、廃却されるのみであり、資源として無駄であるのみならず、コストアップの要因ともなり、好ましくない。また、保護シートを平板レンズから剥離する作業が必要であり、その分だけ生産性を落すことともなる。更に、保護シートを平板レンズから剥離する際に剥離帯電により塵埃等のコンタミネーションを平板レンズに付着させ易く、品質面でも問題が多い。
【0008】
また、何層ものフィルム(シート)を積層する際に、積層時の擦れ、熱膨張・熱収縮による擦れ、ハンドリングによる擦れ等の原因でフィルムに傷を生じさせ易い。
【0009】
更に、複数のフィルム間の熱膨張・熱収縮によるミスマッチングによる不具合(歪みやカール等)を矯正するために、個々のフィルムの厚さを増す等の対策(剛性アップ等)も必要なことがあり、設計上の制約やコストアップ等のデメリットも多い。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、液晶表示素子等のディスプレイ用途に使用されるシート状物の積層体を、従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造するのに好適なディスプレイ用光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、2枚以上の光学シートが積層され該光学シート同士が周縁の1辺で接合されており、該接合長さが前記1辺の長さの5〜70%であることを特徴とするディスプレイ用光学シートを提供する。
【0012】
本発明によれば、2枚以上の光学シートが積層されており、この光学シート同士が周縁の1辺で接合されているので、何枚ものフィルム(シート)をそれぞれ製品サイズに裁断する工程が省け、何層ものフィルム(シート)を位置決めしながら積層する工程も省ける。また、保護シートによる上記の問題も生じず、コスト面及び品質面でも有利である。更に、何層ものフィルムを積層する際の上記問題点も生じない。
【0013】
特に、本発明によれば、接合長さが1辺の長さの5〜70%であるので、複数のフィルム間の熱膨張・熱収縮による上記問題点に対して有効な対処方法となる。この接合長さは、1辺の長さの15〜60%が好ましく、1辺の長さの25〜50%がより好ましい。
【0014】
以上の各点より、本発明によれば、液晶表示素子等のディスプレイ用途に使用されるシート状物の積層体を、従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造できる。
【0015】
なお、光学シート(光学フィルム)とは、光学的な機能を備える各種シートの総称であり、拡散シート、偏光板(拡散シートフィルム)、各種レンズシート(レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ(蠅の目レンズ)、プリズムシート等)が代表的であるが、殆ど光学的な機能を果さない保護シート(保護フィルム)等も含むものとする。
【0016】
なお、「接合長さが1辺の長さの5〜70%」とは、1辺の長さの5〜70%である1本の線状の接合の場合も、分割された複数の線状であって、線の合計の長さが1辺の長さの5〜70%である接合の場合も、更には、1辺に対して垂直に配される短い複数の線状であって、線の合計の長さが1辺の長さの5〜70%である接合の場合をも含むものである。
【0017】
また、本発明は、2枚以上の光学シートが積層され該光学シート同士が周縁の2以上の辺で接合されており、該接合長さがシート周縁長さの5〜70%であることを特徴とするディスプレイ用光学シートを提供する。
【0018】
本発明によれば、光学シート同士が周縁の2以上の辺で接合されており、該接合長さがシート周縁長さの5〜70%であるので、上記の1辺で接合されている構成と同様に各種の効果が得られ、液晶表示素子等のディスプレイ用途に使用されるシート状物の積層体を、従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造できる。
【0019】
なお、「シート周縁長さ」とは、シート周縁(四周)の長さを合算した値である。
【0020】
本発明において、前記接合部分が線状であり、該線状の連続した長さが10〜100mmであることが好ましい。接合部分が線状で、連続した長さが10〜100mmであれば、必要な接着力が確保できるとともに、複数のフィルム間の熱膨張・熱収縮による上記問題点に対して有効な対処方法となる。
【0021】
また、本発明において、前記接合部分が長さ10mm未満の点状であることが好ましい。接合部分が長さ10mm未満の点状であれば、必要な接着力が確保できるとともに、複数のフィルム間の熱膨張・熱収縮による上記問題点に対して有効な対処方法となる。
【0022】
なお、「点状」とは、既述したように、1辺に対して垂直に配される短い複数の線状である場合をも含む。
【0023】
また、本発明において、前記光学シートが、拡散シートを含むことが好ましい。また、本発明において、前記光学シートが、1軸方向に形成された凸状レンズが隣接して略全面に配列されたレンズシートを含むことが好ましい。なお、「1軸方向に形成された凸状レンズが隣接して略全面に配列されたレンズシート」とは、レンチキュラーレンズやプリズムシートが代表的であり、他に回折格子等も含まれる。
【0024】
また、本発明において、前記光学シートが、同一の光学性能である2枚以上のシートを含むことが好ましい。同一の光学性能である2枚以上のシートを含む場合とは、たとえば、1軸方向に形成された凸状レンズが隣接して略全面に配列されたレンズシートの2枚が、凸状レンズの軸が略直行する向きで積層されている例や、拡散シートがこのレンズシートの積層体の表面及び裏面に積層されている例が挙げられる。なお、「レンズの軸が略直行する向きで積層」とあるが、モアレ縞等の防止のために角度を若干量調整してもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、ディスプレイ用光学シートを従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施態様について説明する。先ず、本発明に係るディスプレイ用光学シートの例(第1〜第6実施形態)の構成を説明し、次いでこれらのディスプレイ用光学シートの製造方法(第1〜第6の製造方法)について説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るディスプレイ用光学シートの例(第1実施形態)の構成を示す断面図である。このディスプレイ用光学シート10は、下から順に、第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び第2の拡散シート18が積層されてなる光学シートのモジュールである。
【0028】
第1の拡散シート12及び第2の拡散シート18は、透明なフィルム(支持体)の表面(片面)にビーズをバインダーで固定したシートであり、所定の光拡散性能を有するものである。第1の拡散シート12と第2の拡散シート18とはビーズの径(平均粒径)が異なっており、光拡散性能も異なっている。
【0029】
第1の拡散シート12及び第2の拡散シート18に使用される透明なフィルム(支持体)には、樹脂フィルムを使用できる。樹脂フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート等の公知のものが使用できる。これらのうち、特に、ポリエステル、セルロースアシレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィンが好ましく使用できる。
【0030】
第1の拡散シート12及び第2の拡散シート18のビーズの径は、100μm以下であることが必要であり、25μm以下であることが好ましい。たとえば所定の分布7〜38μmの範囲で、平均粒径が17μmとできる。
【0031】
第1のプリズムシート14及び第2のプリズムシート16は、1軸方向に形成された凸状レンズが隣接して略全面に配列されたレンズシートであり、たとえば、ピッチを50μmと、凹凸高さを25μmと、凸部の頂角を90度(直角)とできる。
【0032】
この第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16とは、凸状レンズ(プリズム)の軸が略直行する向きに配されている。すなわち、図1において、第1のプリズムシート14の凸状レンズの軸は紙面に垂直方向に配されており、第2のプリズムシート16の凸状レンズの軸は紙面に平行方向に配されている。なお、図1においては、第2のプリズムシート16の断面が凸状のレンズである旨が理解できるように、実際とは異なった向きに示されている。
【0033】
第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16の材質及び製法は、公知の各種態様が採り得る。たとえば、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を、この樹脂材料の押し出し速度と略同速度で回転する転写ローラ(プリズムシートの反転型が表面に形成されている)と、この転写ローラに対向配置され同速度で回転するニップローラ板とで挟圧し、転写ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に転写する樹脂シートの製造方法が採用できる。
【0034】
また、ホットプレスにより、プリズムシートの反転型が表面に形成されている転写型板(スタンパー)と樹脂板とを積層し、熱転写によりプレス成形する樹脂シートの製造方法が採用できる。
【0035】
このような製造方法に使用される樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0036】
また、他の製造方法として、第1の拡散シート12及び第2の拡散シート18に使用されるのと同様の透明なフィルム(ポリエステル、セルロースアシレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等)の表面に、凹凸ローラ(プリズムシートの反転型が表面に形成されている)表面の凹凸を転写形成する樹脂シートの製造方法が採用できる。
【0037】
より具体的には、表面に接着剤と樹脂とが順次塗布されることにより、接着剤層と樹脂層(たとえばUV硬化性樹脂)とが2層以上に形成されている透明なフィルムを連続走行させ、この透明なフィルムを回転する凹凸ローラに巻き掛け、樹脂層に凹凸ローラ表面の凹凸を転写し、透明なフィルムが凹凸ローラに巻き掛けられている状態で樹脂層を硬化させる(たとえばUV照射する)凹凸状シートの製造方法が採用できる。なお、接着剤はなくてもよい。
【0038】
なお、第1のプリズムシート14及び第2のプリズムシート16の製法は、上記の例に限定される訳ではなく、表面に所望の凹凸形状が形成できる方法であれば、他の製法も採用できる。
【0039】
図1に示されるように、ディスプレイ用光学シート10の左右の端部は、接合部10Aにより各層が一体化されている。この接合部10Aの形成は、接合工程における炭酸ガスレーザ加工等によりなされている。
【0040】
この接合部10Aの平面上の配置は、後述する実施例で図示されているが、1辺で接合する場合には、接合長さが1辺の長さの5〜70%であることが必要である。この接合長さは、1辺の長さの15〜60%が好ましく、1辺の長さの25〜50%がより好ましい。
【0041】
一方、接合部10Aを2以上の辺とする場合には、接合長さがシート周縁長さの5〜70%であることが必要である。この接合長さは、シート周縁長さの15〜60%が好ましく、シート周縁長さの25〜50%がより好ましい。
【0042】
なお、接合部10Aが線状である場合、この線状の連続した長さが10〜100mmであることが好ましい。一方、接合部10Aが線状である場合、このが長さ10mm未満の点状であることが好ましい。このような形態であれば、必要な接着力が確保できるとともに、複数のフィルム間の熱膨張・熱収縮による上記問題点に対して有効な対処方法となる。なお、「点状」とは、既述したように、1辺に対して垂直に配される短い複数の線状である場合をも含む。
【0043】
以上に説明したディスプレイ用光学シート10は、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。この場合、既述した各種のメリット(ディスプレイ用光学シートを従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造できる)に加え、液晶表示素子のアセンブル作業も非常に容易となるというメリットが得られる。
【0044】
次に、本発明に係るディスプレイ用光学シートの他の例(第2実施形態)について説明する。図2は、ディスプレイ用光学シート20の構成を示す断面図である。なお、図1(第1実施形態)と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
このディスプレイ用光学シート20は、下から順に、拡散シート12、第1のプリズムシート14、及び第2のプリズムシート16が積層されてなる光学シートである。既述のディスプレイ用光学シート10のような広い拡散性能が求められない場合に第2の拡散シート18が省略されている。
【0046】
以上に説明したディスプレイ用光学シート20は、第1実施形態と同様に、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。
【0047】
次に、本発明に係るディスプレイ用光学シートの更に他の例(第3実施形態)について説明する。図3は、ディスプレイ用光学シート30の構成を示す断面図である。なお、図1(第1実施形態)及び図2(第1実施形態)と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
このディスプレイ用光学シート30は、下から順に、第1の拡散シート12、プリズムシート14、及び第2の拡散シート18が積層されてなる光学シートである。
【0049】
このディスプレイ用光学シート30は、既述のディスプレイ用光学シート10のような紙面に垂直方向の拡散性能が求められない場合に、第2のプリズムシート16が省略されているものである。
【0050】
以上に説明したディスプレイ用光学シート30は、第1実施形態と同様に、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。
【0051】
次に、本発明に係るディスプレイ用光学シートの更に他の例(第4実施形態)について説明する。図4は、ディスプレイ用光学シート40の構成を示す断面図である。なお、図1(第1実施形態)、図2(第2実施形態)等と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
このディスプレイ用光学シート40は、下から順に、拡散シート12、及びプリズムシート14が積層されてなる光学シートである。既述のディスプレイ用光学シート10のような広い拡散性能が求められない場合に第2の拡散シート18が省略され、既述のディスプレイ用光学シート10のような紙面に垂直方向の拡散性能が求められない場合に、第2のプリズムシート16が省略されている。
【0053】
以上に説明したディスプレイ用光学シート40は、第1実施形態と同様に、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。
【0054】
次に、本発明に係るディスプレイ用光学シートの他の例(第5実施形態)について説明する。図5は、ディスプレイ用光学シート50の構成を示す断面図である。なお、図1(第1実施形態)、図2(第2実施形態)等と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
このディスプレイ用光学シート50は、下から順に、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び拡散シート18が積層されてなる光学シートである。既述のディスプレイ用光学シート10のような広い拡散性能が求められない場合に第1の拡散シート12が省略されている。
【0056】
以上に説明したディスプレイ用光学シート50は、第1実施形態と同様に、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。
【0057】
次に、本発明に係るディスプレイ用光学シートの他の例(第6実施形態)について説明する。図6は、ディスプレイ用光学シート50の構成を示す断面図である。なお、図1(第1実施形態)、図2(第2実施形態)等と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
このディスプレイ用光学シート60は、下から順に、第1のプリズムシート14、及び拡散シート18が積層されてなる光学シートである。既述のディスプレイ用光学シート10のような広い拡散性能が求められない場合に第1の拡散シート12が省略され、既述のディスプレイ用光学シート10のような紙面に垂直方向の拡散性能が求められない場合に、第2のプリズムシート16が省略されている。
【0059】
以上に説明したディスプレイ用光学シート60は、第1実施形態と同様に、たとえば光源装置と液晶セルとの間に配され、全体で液晶表示素子を形成するように使用される。
【0060】
以上に説明した各ディスプレイ用光学シート10〜60の平面サイズに特に制限はないが、各種のディスプレイ(液晶表示素子等)のバックライトユニットのサイズに対応させることができ、たとえば対角で36mm(1.4インチ)〜2032mm(80インチ)のサイズとすることができる。
【0061】
次に、ディスプレイ用光学シートの製造方法(第1〜第5の製造方法)について説明する。この製造方法は、既述のディスプレイ用光学シート10〜60に共通して適用できるものであるが、説明の便宜より4層構成のディスプレイ用光学シート(第1実施形態)に適用した場合について説明する。
【0062】
図7は、第1の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ライン21の構成図である。図の左端部に設けられているロール12B、14B、16B、及び18Bは、それぞれ、既述の図1に示される第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び第2の拡散シート18が巻回されたロールである。
【0063】
このロール12B、14B、16B、及び18Bは、図示しない繰り出し手段の回転軸にそれぞれ軸支されており、ロール12B、14B、16B、及び18Bより第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び第2の拡散シート18がそれぞれ略同一速度で繰り出し可能となっている。
【0064】
繰り出された第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び第2の拡散シート18は、それぞれガイドローラG、G…に支持され、最終的には、後述するプレス装置48の上流側において積層されるようになっている(積層工程)。
【0065】
このディスプレイ用光学シート製造ライン21においては、積層体の周縁を接合するために、ディスペンサ42、44、46が採用され、積層体の周縁を裁断するために打ち抜きプレス装置48が採用されている。
【0066】
このディスペンサ42、44及び46は、それぞれ接着剤を先端より吐出する供給装置である。ディスペンサ42は、第1の拡散シート12と第1のプリズムシート14とを接着するために、第1の拡散シート12の表面に接着剤を供給するものであり、ディスペンサ44は、第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16とを接着するために、第1のプリズムシート14の表面に接着剤を供給するものであり、ディスペンサ46は、第2のプリズムシート16と第2の拡散シート18とを接着するために、第2のプリズムシート16の表面に接着剤を供給するものである。
【0067】
ディスペンサ42、44及び46より供給される接着剤は、熱又は触媒の助けにより接着される接着剤であることが好ましい。具体的には、シリコン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤など一般的な接着剤を用いることができる。
【0068】
ディスプレイ用光学シート10〜60は、高温で使用する可能性があるため、常温〜120°Cでも安定な接着剤が好ましい。これらの中で、エポキシ系接着剤は強度、耐熱性に優れているため、好適に利用できる。シアノアクリレート系接着剤は、即効性と強度に優れているため、効率的なディスプレイ用光学シートの作製に利用できる。ポリエステル系接着剤は、強度、加工性に優れているため、特に好適である。
【0069】
これらの接着剤は、接着方法によって熱硬化型、ホットメルト型、2液混合型に大別されるが、好ましくは連続生産が可能な熱硬化型又はホットメルト型が使用される。どの接着剤を使用した場合でも、その塗布厚さは、0.5μm〜50μmが好ましい。
【0070】
また、下流のプレスローラ(ガイドローラG)までの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。この乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、たとえば、温風や熱風による乾燥、脱湿風による乾燥、等が挙げられる。
【0071】
ディスペンサ42、44及び46はX方向(シート幅方向)又はXY方向に移動できるX駆動ロボット軸又はXY駆動ロボット軸に取り付けられ、任意の位置への位置決めや任意の軌跡移動を行うことができるようになっている。
【0072】
これらのディスペンサ42、44及び46より接着剤を積層体周縁の被接合箇所に供給し、積層体を搬送しながら下流のプレスローラ(ガイドローラG)により積層体の周縁を接合する。
【0073】
ディスペンサ42、44及び46の下流の打ち抜きプレス装置48は、積層体の周縁を製品サイズに裁断する装置である。この打ち抜きプレス装置48では、接着された部分の中心部分に刃物が入るようにすることにより、打抜かれたシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の全片又は任意の片の端部分だけが接着された複合シートを得ることができる。
【0074】
以上の工程を経ることにより、ディスプレイ用光学シート10(図1参照)が形成される。裁断及び接合されたディスプレイ用光学シート10は、コンベア26上に搬送されて停止する。コンベア26上のディスプレイ用光学シート10は吸着横移載装置28により
集積装置32上に順次重ねられる。
【0075】
一方、プレス装置48によりディスプレイ用光学シート10が打ち抜かれたシートの積層体34は、巻き取り装置(詳細は不図示)の巻き取りロール36に巻き取られる。
【0076】
以上のディスプレイ用光学シートの製造方法(第1の製造方法)によれば、以下の1)〜3)の効果が得られる。
【0077】
1)傷故障削減効果
レンズシート(第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16)の上面、下面に傷がつくとレンズ効果もあることより、傷が目立ってしまう。一方、拡散シート(第1の拡散シート12、第2の拡散シート18)の下面に傷がついた場合は、光が拡散されるので傷は目立たない。このようなことからレンズシートへの傷付きを防止することが傷故障削減に繋がる。傷は、シート加工後の取扱時に付くことが多いが、レンズシートを拡散シートと複合化することにより、拡散シートが保護シートの役割を果たすため、傷付きによる故障が削減できる。特に、レンズシートが表面に出ない、第1実施形態のディスプレイ用光学シート10(図1参照)、及び第2実施形態のディスプレイ用光学シート30(図3参照)においてその効果が大きい。
【0078】
2)組立工数削減効果
たとえば、液晶表示素子の組み立てにおいて、第1実施形態のディスプレイ用光学シート10(図1参照)を使用した場合には、組立工数はディスプレイ用光学シート10を組み込む1工程だけなのに対し、従来品を使用した場合には、第1の拡散シートの組み込み⇒第1のレンズシートの裏面保護シート剥し⇒第1のレンズシートの表面保護シート剥し⇒第1のレンズシートの組み込み⇒第2のレンズシートの裏面保護シート剥し⇒第2のレンズシートの表面保護シート剥し⇒第2のレンズシートの組み込み⇒第2の拡散シートの組み込み、と8工程必要となる。このように、第1の製造方法によれば、大幅な組立工数削減を達成でき、製品コストの低減ができる。
【0079】
3)保護シートの削減効果
レンズシートには、傷付き防止のために保護シートを表裏に貼着することが多い。この保護シートは、レンズシートを組み込んだ後は廃却するものであり、非常に無駄である。本発明品は、拡散シートを保護シートの役割とすることで、この保護シートを節約することができる。
【0080】
具体的には、第4実施形態のディスプレイ用光学シート40(図4参照)、及び第6実施形態のディスプレイ用光学シート60(図6参照)において保護シートを1枚削減でき、第3実施形態のディスプレイ用光学シート30(図3参照)において保護シートを2枚削減でき、第2実施形態のディスプレイ用光学シート20(図2参照)、及び第5実施形態のディスプレイ用光学シート50(図5参照)において保護シートを3枚削減でき、第1実施形態のディスプレイ用光学シート10(図1参照)において保護シートを4枚削減できる。
【0081】
次に、ディスプレイ用光学シートの他の製造方法(第2の製造方法)について説明する。図8は、第2の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ライン31の構成図である。なお、図7(第1の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン21と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
このディスプレイ用光学シート製造ライン31においては、ディスプレイ用光学シート製造ライン21のディスペンサ42、44、46に代えてテープ供給装置52、54、56が採用されている。このテープ供給装置52、54及び56は、それぞれ両面テープを先端より供給する供給装置である。
【0083】
テープ供給装置52は、第1の拡散シート12と第1のプリズムシート14とを接着するために、第1の拡散シート12の表面に両面テープを供給するものであり、テープ供給装置54は、第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16とを接着するために、第1のプリズムシート14の表面に両面テープを供給するものであり、テープ供給装置56は、第2のプリズムシート16と第2の拡散シート18とを接着するために、第2のプリズムシート16の表面に両面テープを供給するものである。
【0084】
テープ供給装置52、54及び56より供給される両面テープは、両面に粘着剤が塗布されたものである。この両面テープの粘着剤としては、高粘着性アクリル共重合樹脂が使用できるが、それ以外にはたとえば、シリコン系、天然ゴム系、合成ゴム系等の粘着剤が使用でき、耐熱性、耐クリープ性等の物理強度、価格等を総合的に考慮すればアクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。
【0085】
両面テープを供給するテープ供給装置52、54及び56は、市販されている汎用のテープディスペンサーを使うことで対応可能である。テープ供給装置52、54及び56はX方向(シート幅方向)の任意の位置に移動可能な1軸の移動機構に取り付けられており、打抜きパターンに応じて両面テープ貼りの位置を可変させることができる。
【0086】
また、テープ供給装置52、54及び56の固定部分にはピボット機構があり、シートの送り速度に同期させてテープ供給装置52、54及び56の位置をかえることで、斜め方向へのテープ貼りパターンにも対応可能な機構となっている。
【0087】
テープ供給装置52、54及び56の下流の打ち抜きプレス装置48では、接着されたテープ幅部分の中心部分に刃物が入るようにすることで、打抜かれたシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の全片又は任意の片の端部分だけが接着された複合シートを得ることができる。
【0088】
次に、ディスプレイ用光学シートの更に他の製造方法(第3の製造方法)について説明する。図9は、第3の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ライン41の構成図である。なお、図7(第1の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン21、及び図8(第2の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン31と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
このディスプレイ用光学シート製造ライン41においては、ディスプレイ用光学シート製造ライン21のディスペンサ42、44、46に代えて超音波ホーン62、64、66が採用されている。この超音波ホーン62、64及び66は、それぞれプレスローラ(ガイドローラG)の下流側に配されている。
【0090】
この超音波ホーン62、64及び66は、2枚以上の積層されたシートを融着させる装置である。すなわち、超音波ホーン62は、第1の拡散シート12と第1のプリズムシート14とを融着させるものであり、超音波ホーン64は、第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16とを融着させるものであり、超音波ホーン66は、第2のプリズムシート16と第2の拡散シート18とを融着させるものである。
【0091】
超音波ホーン62、64及び66(超音波溶着装置)としては、従来より公知であり、エアシリンダでホーンを昇降させる形式のものや、サーボモータによりホーンを昇降させる型式のものが知られているが、シートに荷重を加えながら超音波振動を付与してシート同士を溶着できるものであれば、どのような型式の超音波溶着装置でも適用可能である。
【0092】
超音波ホーン62、64及び66の位置制御は、打抜きパターンがシートの送り方向に対して水平の場合は、シートの幅方向への位置切替だけでよいが、斜めに打抜くようなパターンに対応する場合には、超音波ホーン62、64及び66の走行方向が任意の向きに可変できるような首振り機構を設け、シートの移動量と同期させて幅方向へ移動させることで対応可能である。
【0093】
超音波ホーン62、64及び66の設定条件は、融着部分が熱により溶け切れたりしない範囲で定めればよく、必要に応じて接着(融着)後にエア吹き付けなどの空冷機構により接着部分を冷却してもよい。
【0094】
超音波ホーン62、64及び66の下流の打ち抜きプレス装置48では、接着された融着部分の中心部分に刃物が入るようにすることで、打抜かれたシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の全片又は任意の片の端部分だけが接着された複合シートを得ることができる。
【0095】
次に、ディスプレイ用光学シートの更に他の製造方法(第4の製造方法)について説明する。図10は、第4の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ライン51の構成図である。なお、図7(第1の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン21、図8(第2の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン31、及び図9(第3の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン41等と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0096】
このディスプレイ用光学シート製造ライン51においては、ディスプレイ用光学シート製造ライン41の超音波ホーン62、64及び66に代えてレーザヘッド72、74、76が採用されている。このレーザヘッド72、74、76は、超音波ホーン62、64及び66と同様に、それぞれプレスローラ(ガイドローラG)の下流側に配されている。
【0097】
このレーザヘッド72、74、76は、超音波ホーン62、64及び66と同様に、2枚以上の積層されたシートを融着させる装置である。すなわち、レーザヘッド72は、第1の拡散シート12と第1のプリズムシート14とを融着させるものであり、レーザヘッド74は、第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16とを融着させるものであり、レーザヘッド76は、第2のプリズムシート16と第2の拡散シート18とを融着させるものである。
【0098】
レーザヘッド72、74、76を含むレーザ光照射装置としては、波長が355〜1064nmのYAGレーザ照射装置、半導体レーザ照射装置、波長が9〜11μmの炭酸ガスレーザ照射装置等が採用できる。発振方式は連続発振でもパルス発振でもよいが、溶着を行うにはパルス発振による点付けが、外見上の仕上がりもよく好適である。
【0099】
溶着(接合工程)を行うのに必要な出力及び周波数は、素材の送り速度、レーザ光のスキャン速度、素材の厚さ等により異なるが、概ね、出力は2〜50Wが、周波数は100kHz以下の条件で良好な溶着結果が得られる。
【0100】
レーザヘッド72、74、76は、X方向(シート幅方向)又はXY方向に移動できるX駆動ロボット軸又はXY駆動ロボット軸に取り付けられており、任意の位置への位置決めや任意の軌跡移動を行うことができる。レーザ光の照射パターンに応じてレーザヘッド72、74、76ごと移動させてもよいが、レーザヘッド72、74、76を別置き(固定)にして、レーザ光のみを光ファイバーにより導波することでXY方向の移動機構を簡素化することもできる。
【0101】
なお、レーザヘッド72、74、76による溶着時に発生する煙を吸引する公知の機構(吸引装置等)を設けることもできる。
【0102】
このレーザヘッド72、74、76よりレーザ光を積層体周縁の接合箇所に照射し、照射スポット一定の速度で移動させながら、積層体の周縁を溶融させて接合する。
【0103】
レーザヘッド72、74及び76の設定条件は、融着部分が熱により溶け切れたりしない範囲で定めればよく、必要に応じて接着(融着)後にエア吹き付けなどの空冷機構により接着部分を冷却してもよい。
【0104】
レーザヘッド72、74及び76の下流の打ち抜きプレス装置48では、接着された融着部分の中心部分に刃物が入るようにすることで、打抜かれたシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の全片又は任意の片の端部分だけが接着された複合シートを得ることができる。
【0105】
次に、ディスプレイ用光学シートの更に他の製造方法(第5の製造方法)について説明する。図11は、第5の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ライン61の構成図である。なお、図7(第1の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン21、図8(第2の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン31、及び図9(第3の製造方法)のディスプレイ用光学シート製造ライン41等と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0106】
このディスプレイ用光学シート製造ライン61においては、ディスプレイ用光学シート製造ライン51の3台のレーザヘッド72、74及び76に代えて1台のレーザヘッド78が採用されている。このレーザヘッド78は、プレスローラ(ガイドローラG)の下流側に配されている。
【0107】
このレーザヘッド78は、2枚以上の積層されたシートを同時に融着させる装置である。すなわち、レーザヘッド78は、第1の拡散シート12と第1のプリズムシート14と第2のプリズムシート16と第2の拡散シート18との積層体を融着させるものである。
【0108】
なお、レーザヘッド78の基本的な仕様や周辺の構成は、第4の製造方法と略同様である。
【0109】
レーザヘッド78の設定条件は、融着部分が熱により溶け切れたりしない範囲で定めればよく、必要に応じて接着(融着)後にエア吹き付けなどの空冷機構により接着部分を冷却してもよい。
【0110】
レーザヘッド78の下流の打ち抜きプレス装置48では、接着された融着部分の中心部分に刃物が入るようにすることで、打抜かれたシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の全片又は任意の片の端部分だけが接着された複合シートを得ることができる。
【0111】
次に、第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、第2のプリズムシート16、及び第2の拡散シート18の積層体より打抜かれるシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の平面配置について説明する。
【0112】
図12は、第1〜第5の製造方法において、積層体より打抜かれるシート(ディスプレイ用光学シート10〜60)の平面配置を説明する図である。
【0113】
図12において、(A)は、積層体の搬送方向に対して平行及び直交する方向に融着又は接着(接合工程)を行う状態を示し、(B)は、積層体の搬送方向に対して斜め方向に融着又は接着(接合工程)を行う状態を示す。図において、積層体より打抜かれるシートの周縁部の点は、融着箇所又は接着箇所を示す。
【0114】
以上、説明したように、本発明によれば、ディスプレイ用光学シートを従来より簡易な工程で低コストで、かつ高品質に製造することができる。
【0115】
また、本発明によれば、以下の効果も得られる。
【0116】
1)コストの削減、薄型化による製品価値の向上
大型液晶テレビに用いられる光学シートは剛性が必要なため、支持体の厚さをそれぞれ従来より2倍程度に厚くしたものが用いられている。しかしながら、本発明による光学シートは、シートを複合化したものであるため、それぞれの厚さを厚くせずとも充分に剛性を持たせることができ、各層の厚さを減らすことができる。
【0117】
2)集光効果の低減防止による性能の向上
レンズシートの傷付き防止(傷を目立たなくする目的)のために、裏面をマット処理している製品もある。本発明による光学シートではその必要がなく、生産コストが削減できるのみならず、マット処理による集光効果低減防止が可能であり、性能が向上する。
【0118】
以上、本発明に係るディスプレイ用光学シートの実施形態の各例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0119】
たとえば、本実施形態の例では、いずれの場合においても第1のプリズムシート14及び第2のプリズムシート16のプリズムが上向きになっているが、このプリズムを下向きにして積層することもできる。
【0120】
また、ディスプレイ用光学シートの層構成も実施形態の例に限定されるものではなく、たとえば、保護シートを上下面に積層することもできる。
【0121】
以上のような構成であっても、本実施形態と同様に作用し、同様の効果が得られるからである。
【実施例】
【0122】
[プリズムシートの作成]
第1のプリズムシート14及び第2のプリズムシート16に使用するプリズムシートを作成した。このプリズムシートは、第1のプリズムシート14及び第2のプリズムシート16に共通して使用する。
・樹脂液の調整
図13の表に示す化合物を記載の重量比にて混合し、50°Cに加熱して撹拌溶解し、樹脂液を得た。なお、各化合物の名称と内容は以下の通りである。
【0123】
EB3700:エベクリル3700、ダイセルUC(株)製、
ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート、
(粘度:2200mPa・s/65°C)
BPE200:NKエステルBPE−200、新中村化学(株)製、
エチレンオキシド付加ビスフェノールAメタクリル酸エステル、
(粘度:590mPa・s/25°C)
BR−31 :ニューフロンティアBR−31、第一工業製薬工業(株)製、
トリブロモフェノキシエチルアクリレート、
(常温で固体、融点50°C以上)
LR8893X:Lucirin LR8893X、BASF(株)製の光ラジカル発生剤、
エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルオスフィンオキシド
MEK :メチルエチルケトン
図14に示される構成のプリズムシートの製造装置を使用してプリズムシートの製造を行った。
【0124】
シートWとして、幅500mm、厚さ100μmの透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルムを使用した。
【0125】
エンボスローラ83として、長さ(シートWの幅方向)が700mm、直径が300mmのS45C製で表面の材質をニッケルとしたローラを使用した。ローラの表面の略500mm幅の全周に、ダイヤモンドバイト(シングルポイント)を使用した切削加工により、ローラ軸方向のピッチが50μmの溝を形成した。溝の断面形状は、頂角が90度の三角形状で、溝の底部も平坦部分のない90度の三角形状である。すなわち、溝幅は50μmであり、溝深さは約25μmである。この溝は、ローラの周方向に継ぎ目がないエンドレスとなるので、このエンボスローラ83により、シートWに断面が三角形のレンチキュラーレンズ(プリズムシート)が形成できる。ローラの表面には、溝加工後にニッケルメッキを施した。
【0126】
塗布手段82として、エクストルージョンタイプの塗布ヘッド82Cを用いたダイコータを使用した。
【0127】
塗布液F(樹脂液)として、既述の図13の表に記載した組成の液を使用した。塗布液F(樹脂)の湿潤状態の厚さは有機溶剤乾燥後の膜厚が20μmになるように、塗布ヘッド82Cへの各塗布液Fの供給量を、供給装置82Bにより制御した。
【0128】
乾燥手段89として熱風循環式の乾燥装置を用いた。熱風の温度は100°Cとした。
【0129】
ニップローラ84として、直径が200mmで、表面にゴム硬度が90のシリコンゴムの層を形成したローラを使用した。エンボスローラ83とニップローラ84とでシートWを押圧するニップ圧(実効のニップ圧)は、0.5Paとした。
【0130】
樹脂硬化手段85として、メタルハライドランプを使用し、1000mJ/cmのエネルギーで照射を行った。
【0131】
以上により、凹凸パタ−ンが形成されたプリズムシートを得た。
【0132】
[第1の拡散シート12の作成]
下塗り層、バックコート層、光拡散層の順に、以下の方法により各層を形成することにより、第1の拡散シート12(下用拡散シート)を作製した。
・下塗り層
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)の片面に、下記組成の下塗り層用塗布液としてのA液を、ワイヤーバー(ワイヤーサイズ:#10)で塗布し、120°Cで2分間乾燥させて、膜厚が1.5μmの下塗り層を得た。
【0133】
(下塗り層用塗布液)
メタノール 4165g
ジュリマーSP−50T(日本純薬社製) 1495g
シクロヘキサノン 339g
ジュリマーMB−1X(日本純薬社製) 1.85g
(有機粒子:ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、重量平均粒子径6.2μmの球状超微粒子)
・バックコート層
前記支持体の、下塗り層を塗布した反対側の面に、下記組成のバックコート層用塗布液としてのB液を、ワイヤーバー(ワイヤーサイズ:#10)で塗布し、120°Cで2分間乾燥させて、膜厚が2.0μmのバックコート層を得た。
【0134】
(バックコート層用塗布液)
メタノール 4171g
ジュリマーSP−65T(日本純薬社製) 1487g
シクロヘキサノン 340g
ジュリマーMB−1X(日本純薬社製) 2.68g
(有機粒子:ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、重量平均粒子径6.2μmの球状超微粒子)
・光拡散層
上記で作成した支持体の下塗り層側に、下記組成の光拡散層用塗布液としてのC液を、ワイターバー(ワイヤーサイズ:#22)で塗布し、120°Cで2分間乾燥させて、光拡散層を得た。なお、後述するが、この光拡散層は、C液を調製した直後に塗布したものと、C液を調整して2時間静置した後に塗布したものとをそれぞれ得た。
【0135】
(光拡散層用塗布液)
シクロヘキサノン 20.84g
ディスパロンPFA−230 固形分濃度20質量% 0.74g
(粒子沈降防止剤:脂肪酸アミド、楠本化成社製)
アクリル樹脂(ダイヤナールBR−117、三菱レーヨン社製)20質量%メチルエチルケトン溶液 17.85g
ジュリマーMB−20X(日本純薬社製) 11.29g
(有機粒子;ポリメチルメタクリレート架橋タイプ、重量平均粒子径18μmの球状超微粒子)
F780F(大日本インキ社製) 0.03g
(メチルエチルケトン 30質量%溶液)
[第2の拡散シート18の作成]
上記の第1の拡散シート12の光拡散層のジュリマーMB−20Xの添加量を11.29gから、1.13gに変更した以外は、上記の第1の拡散シート12と同一の条件及び同一のフローで第2の拡散シート18(上用拡散シート)を作製した。
【0136】
[ディスプレイ用光学シート30の作成:実施例1〜4、及び比較例1、2]
以上の各シートを使用し、既述の図3に示される、下から順に、第1の拡散シート12、第1のプリズムシート14、及び第2の拡散シート18が積層されてなるディスプレイ用光学シート30(光学シートのモジュール)を作成した。製造装置としては、以下に個別に説明するように、実施例及び比較例によって異なる。
【0137】
[ディスプレイ用光学シート30の評価]
実施例及び比較例のディスプレイ用光学シート30を、液晶デバイスに組み込んで、輝度ムラや傷故障の有無等を評価した。ディスプレイ用光学シート30に対し、85°C−1000時間の乾燥熱試験を行い、試験後に目視により上記の評価を行った。
【0138】
(実施例1)
既述の第5の製造方法(図11)により、ディスプレイ用光学シート30を作成した。この製造方法においては、接合手段として1台のレーザヘッド78が採用されている。
【0139】
図15に示されるように、ディスプレイ用光学シート30の両長辺(上下2辺)で接合を行った。接合箇所は、辺と平行な断続する線状とした。線の長さは10mmであり、線同士の間隔(スペース)長さは15mmである。したがって、接合長さはシート周縁長さの約40%となる。
【0140】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動によるシートの撓みは認められず、また、輝度ムラは認められなかった。
【0141】
(実施例2)
既述の第5の製造方法(図11)により、ディスプレイ用光学シート30を作成した。この製造方法においては、接合手段として1台のレーザヘッド78が採用されている。
【0142】
図16に示されるように、ディスプレイ用光学シート30の1長辺(上辺)で接合を行った。長辺の長さは、297mmである。接合は、辺と平行な断続する線状とした。線の長さは20mmであり、線の本数は5本である。したがって、接合長さは長辺(1辺)の長さの33%となる。
【0143】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動によるシートの撓みは認められず、また、輝度ムラは認められなかった。
【0144】
(実施例3)
既述の第3の製造方法(図9)により、ディスプレイ用光学シート30を作成した。この製造方法においては、接合手段として超音波ホーン62、64及び66が採用されている。
【0145】
図17に示されるように、ディスプレイ用光学シート30の1長辺(上辺)で接合を行った。接合箇所は、点状とした。点のスポット径は、約1mmであり、点の個数は100個である。したがって、接合長さは長辺(1辺)の長さの34%となる。
【0146】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動によるシートの撓みは認められず、また、輝度ムラは認められなかった。
【0147】
(実施例4)
既述の第1〜第5の製造方法と類似の製造方法により、ディスプレイ用光学シート30を作成した。この製造方法においては、接合手段として第3の製造方法(図9)の超音波ホーン62、64及び66に代えて、熱コテを採用した。この熱コテは、半田ごてと同様に、先端が突起状になったコテがヒータにより加熱される構成のものであり、コテの先端を光学シートに押し付けることにより、シート同士をスポット状(点状)に接合する手段である。
【0148】
図18に示されるように、ディスプレイ用光学シート30の4周で接合を行った。接合は、点状とした。点のスポット径は、約2mmであり、点同士の間隔(ピッチ)は、10mmである。したがって、接合長さは長辺(1辺)の長さの17%となる。
【0149】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動によるシートの撓みは認められず、また、輝度ムラは認められなかった。
【0150】
(比較例1)
既述の第5の製造方法(図11)により、ディスプレイ用光学シート30‘を作成した。この製造方法においては、接合手段として1台のレーザヘッド78が採用されている。
【0151】
図19に示されるように、ディスプレイ用光学シート30‘の4周で接合を行った。接合箇所は、辺と平行な断続する線状(一点鎖線状)とした。線の長さの合計(接合長さ)はシート周縁長さの82%となる。
【0152】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動によりシート全体に大きな撓みが発生し、また、輝度ムラを生じていた。
【0153】
(比較例2)
既述の第3の製造方法(図9)により、ディスプレイ用光学シート30‘を作成した。この製造方法においては、接合手段として超音波ホーン62、64及び66が採用されている。
【0154】
図20に示されるように、ディスプレイ用光学シート30‘の1長辺(上辺)の1箇所で接合を行った。接合は、長さ10mmの線状とした。したがって、接合長さは長辺(1辺)の長さの3.4%となる。
【0155】
乾燥熱試験後の評価結果によれば、熱変動により固定部分(線状部分)でシートに強い撓みが発生し、また、輝度ムラを生じていた。更に、試料によっては、乾燥熱試験後に固定部分が開放されてしまう(シートが分離する)ものもあった。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明に係るディスプレイ用光学シートの製造方法により製造されたディスプレイ用光学シートの実施形態の断面図
【図2】ディスプレイ用光学シートの他の実施形態の断面図
【図3】ディスプレイ用光学シートの更に他の実施形態の断面図
【図4】ディスプレイ用光学シートの更に他の実施形態の断面図
【図5】ディスプレイ用光学シートの更に他の実施形態の断面図
【図6】ディスプレイ用光学シートの更に他の実施形態の断面図
【図7】第1の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ラインの構成図
【図8】第2の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ラインの構成図
【図9】第3の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ラインの構成図
【図10】第4の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ラインの構成図
【図11】第5の製造方法に適用されるディスプレイ用光学シート製造ラインの構成図
【図12】各製造方法において、積層体より打抜かれるシートの平面配置を説明する図
【図13】プリズムシートの作成に使用される樹脂液の組成を示す表
【図14】プリズムシートの製造装置の構成図
【図15】実施例1の接合状態を示す平面図
【図16】実施例2の接合状態を示す平面図
【図17】実施例3の接合状態を示す平面図
【図18】実施例4の接合状態を示す平面図
【図19】比較例1の接合状態を示す平面図
【図20】比較例2の接合状態を示す平面図
【符号の説明】
【0157】
10、20、30、40…ディスプレイ用光学シート、12…第1の拡散シート、14…第1のプリズムシート、16…第2のプリズムシート、18…第2の拡散シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の光学シートが積層され該光学シート同士が周縁の1辺で接合されており、該接合長さが前記1辺の長さの5〜70%であることを特徴とするディスプレイ用光学シート。
【請求項2】
2枚以上の光学シートが積層され該光学シート同士が周縁の2以上の辺で接合されており、該接合長さがシート周縁長さの5〜70%であることを特徴とするディスプレイ用光学シート。
【請求項3】
前記接合部分が線状であり、該線状の連続した長さが10〜100mmである請求項1又は2に記載のディスプレイ用光学シート。
【請求項4】
前記接合部分が長さ10mm未満の点状である請求項1又は2に記載のディスプレイ用光学シート。
【請求項5】
前記光学シートが、拡散シートを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学シート。
【請求項6】
前記光学シートが、1軸方向に形成された凸状レンズが隣接して略全面に配列されたレンズシートを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学シート。
【請求項7】
前記光学シートが、同一の光学性能である2枚以上のシートを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−156038(P2007−156038A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349869(P2005−349869)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】