説明

ディスプレイ用光学フィルタ及びその製造方法、並びにディスプレイ用光学フィルタを備えたディスプレイ及びプラズマディスプレイパネル

【課題】容易に製造することができ、そして良好な電磁波シールド性を有し、さらに接地し易いアース電極を備えたディスプレイ用光学フィルタを提供すること。
【解決手段】透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍に、少なくとも導電層表面に達する複数の凹部が形成され、その凹部及び/又はその近傍に導電層が露出しており、その露出導電層が電極部を形成していることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ;及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、近赤外線遮断、電磁波遮蔽等の各種機能を有する光学フィルタ、及びこの光学フィルタを備えたディスプレイ、特にPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、及びCRTディスプレイにおいては、外部からの光が表面で反射し、内部の視覚情報が見えにくいとの問題は、従来から知られており、反射防止膜等を含む光学フィルムの設置等、種々対策がなされている。
【0003】
近年、ディスプレイは大画面表示が主流となり、大画面表示デバイスとして、液晶ディスプレイと共にPDPが一般的になってきている。PDPは液晶ディスプレイに比べて応答速度が早い等の利点を有する。しかしながら、このPDPでは画像表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射のおそれがあり、このため、これらを防止する目的で、PDPに対して、導電性を有する種々のPDPフィルタ(電磁波シールド性光透過窓材)が提案されている。この電磁波シールド性光透過窓材の導電層としては、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュ、(3)透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が知られている。
【0004】
さらに、従来のPDPを初めとした大型ディスプレイでは、前述の反射防止フィルムや近赤外線カットフィルム等の種々のフィルムが貼り合わされている。
【0005】
上記電磁波シールド性光透過窓材においては、例えば、特許文献1(特開平11−74683号公報)には、2枚の透明基板の間に導電性メッシュを介在させて、透明接着樹脂で接合一体化してなる電磁波シールド性光透過窓材が記載されている。
【0006】
さらに上記導電層による電磁波シールド性を良好なものとするために、導電層(電磁波シールド材)、例えば導電性メッシュ、をPDP本体に接地(アース)する必要があることから、2枚の透明基板間から電磁波シールド材を外部にはみ出させ、上記光透過窓材積層体の裏側に回り込ませて接地するか、2枚の透明基板間に該電磁波シールド材に接触するように導電性粘着テープを挟み込む必要がある。しかしながら、このような方法では、積層工程における上記作業が煩雑であるとの問題がある。
【0007】
また、特許文献2(特開2001−142406号公報)には、1枚の透明基板と、電磁波シールド材と、最表層の反射防止フィルムと、近赤外線カットフィルムとが積層一体化されてなる積層体を備え、該透明基板の端面及び表裏の縁部にまたがって導電性粘着テープが付着され、該導電性粘着テープと該電磁波シールド材の縁部(端部)とが導電性粘着剤によって付着されている電磁波シールド性光透過積層フィルムが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−74683号公報
【特許文献2】特開2001−142406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示されているように、従来のPDP等のディスプレイ用光学フィルタは、一般に複数の機能性フィルムを製造後、それらを貼り合わせるので煩雑な製造工程となり、コスト面でも不利である。
【0010】
このため、部品数の低減による生産性の向上及びコストの低減を図るため、特許文献2に示されるようなフィルタ部材にガラスを含まないタイプのPDPフィルタ(直張りタイプPDPフィルタ)が提案されている。しかしながら、このような直張りタイプPDPフィルタもガラス以外の機能性フィルムを予め製造した後、貼り合わせるという点では、従来のフィルタと同様で、煩雑な製造工程となり、コスト面でも十分とは言えない。
【0011】
これらの問題を解決するために、基板として一枚の樹脂フィルムのみを用い、複数の機能層をその表面に形成する構造を採用することが考えられる。その製造方法として最も簡便なものが、樹脂フィルム上に導電メッシュを形成した電磁波シールドフィルム上に、反射防止層、近赤外線吸収層等の機能層を塗工によって形成する方法である。
【0012】
しかしながら、上記のように塗工によって各機能層を形成すると、導電メッシュ部が露出しない状態となるため電磁シールドのためのアース部を確保できないとの問題がある。
【0013】
従って、本発明は、容易に製造することができ、そして良好な電磁波シールド性を有し、さらに接地し易いアース電極を備えたディスプレイ用光学フィルタを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、容易に製造することができ、そして軽量で薄く、良好な電磁波シールド性を有し、さらに接地し易いアース電極を備えたディスプレイ用光学フィルタを提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、上記接地し易いアース電極を備えたディスプレイ用光学フィルタを簡易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、容易に製造することができ、そして良好な電磁波シールド性を有し、さらに接地し易いアース電極を備えたPDP用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたディスプレイを提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍に、少なくとも導電層表面に達する複数の凹部が形成され、その凹部及び/又はその近傍に導電層が露出しており、その露出導電層が電極部を形成していることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ;及び
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍に、少なくとも透明基板表面に達する複数の凹部が形成され、その凹部の頂部に導電層が露出しており、その露出導電層が電極部を形成していることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ
にある。
【0019】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの好適態様は以下の通りである。
(1)透明基板が、矩形状である。通常のディスプレイの表示面の形状に相当し、有用である。
(2)凹部が、透明基板の少なくとも相対する両側に設けられている。アースが容易である。
(3)凹部が、間隔をおいて複数設けられている。凹部は、例えば、外周端部(矩形状の場合の辺)に沿って少し内側に設けられており、その平面形状は一般に線状(細い帯状)、例えば直線状又は曲線状である。凹部は、例えば、辺に対し1個の、平面形状が長い直線状の凹部でも良いが、間隔をおいて複数の直線状の凹部が好ましい。これは導電層が露出しやすくなるためである。
(4)導電層が、メッシュ状導電層である。優れた導電性が得られる。
(5)透明基板のハードコート層が設けられていない側には近赤外線吸収層が設けられている。アースをとりやすい構成である。
(6)ハードコート層の上に、さらに反射防止層(好ましくは低屈折率層)が形成され、最表層を構成している。ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層が設けられていても良い(反射防止機能が向上する)。低屈折率層にさらに保護層が設けられても良い。
(7)近赤外線吸収層の表面に透明粘着剤層が設けられている。ディスプレイへの装着が容易となる。
(8)メッシュ状導電層のメッシュの間隙にはハードコート層が埋め込まれている。優れた透明性が得られる。
(9)透明基板がプラスチックフィルムである。
(10)透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている。ディスプレイへの装着が容易となる。
(11)プラズマディスプレイパネル用フィルタである。
【0020】
上記本発明のディスプレイ用光学フィルタは、下記の本発明の製造方法により有利に得ることができる:
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタにおける、当該ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍をカットすることにより、少なくとも導電層表面に達する複数の凹部を形成して、その凹部及び/又はその近傍に導電層が露出させ、これによりその露出導電層の電極部を形成することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタの製造方法;及び
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタにおける、当該ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍をカットすることにより、少なくとも透明基板表面に達する複数の凹部を形成して、その凹部の頂部に導電層が露出させ、これによりその露出導電層の電極部を形成することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【0021】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の好適態様は以下の通りである。
(1)カット作業が、切れ込み入れるか、或いは切削することにより行う。切れ込み入れた場合は、切れ込みが入った周囲の導電層が反り返って表面に露出した状態になり、この部分がアース電極を形成する。切削した場合も同様に、切削した凹部の端部の導電層が反り返って表面に露出した状態になり、この部分がアース電極を形成する。導電層の表面又はその近傍までしかカットしなかった場合は、露出導電層は通常凹部の底部がほとんどで、カットによってはその周囲にも導電層が反り返る状態となるが、主としてこの底部の導電層がアース電極を形成する。
(2)透明基板が、矩形状である。カットが容易である。
(3)凹部を、透明基板の少なくとも相対する両側に設ける。
(4)凹部を、間隔をおいて複数設ける。凹部は、例えば、外周端部(矩形状の場合の辺)に沿って少し内側に設けられており、その平面形状は一般に線状である。
(5)導電層が、メッシュ状導電層である。
(6)透明基板のハードコート層が設けられていない側には近赤外線吸収層が設けられている。
(7)ハードコート層の上に、さらに低屈折率層が形成され、最表層を構成している。
(8)近赤外線吸収層の表面に透明粘着剤層が設けられている。
(9)透明基板がプラスチックフィルムである。
(10)透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている。
【0022】
さらにまた、本発明は、
上記のディスプレイ用光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイ;及び
上記のディスプレイ用光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルにもある。
【発明の効果】
【0023】
本発明のディスプレイ用光学フィルタは、フィルタの表面の周囲に露出した導電層が設けられているので、これを電極部として用いて、ディスプレイに装着した場合、この電極部をディスプレイの枠(金属化カバー)と接触させることにより容易にアースをとることができる。従って、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、容易に製造することができ、そして軽量で薄く、良好な電磁波シールド性を有し、さらに接地し易いアース電極を備えた光学フィルタということができる。
【0024】
さらに、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、長尺状のプラスチックフィルム全面に形成された導電層上に、ハードコート層、反射防止膜等の機能層を連続的に形成し、ディスプレイに合った寸法に裁断し、最表層(最外層)の周囲をカットして導電層を露出させることにより得られるので、極めて簡便に製造することができる。
【0025】
特に、透明フィルムを1枚用いて上記のように光学フィルタを得た場合は、光学フィルタの厚さが極めて小さくなり、これに伴い質量も小さくなるため、ディスプレイに装着する際、そして装着後も取扱い上極めて有利である。
【0026】
従って、本発明のディスプレイ用光学フィルタは、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、近赤外線遮断、電磁波遮蔽等の各種機能を有する、生産性に優れた光学フィルタということができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の、電極部(アース電極)付きディスプレイ用光学フィルタについて、以下に詳細に説明する。
【0028】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの基本構成を示す1例の概略断面図を図1に示す。図1において、透明フィルム12の一方の表面に、メッシュ状導電層13、ハードコート層16及び低屈折率層の反射防止層17がこの順で設けられ、他方の表面には近赤外線吸収層14及びその上に透明粘着剤層15が設けられている。そしてフィルタの周囲近傍(側端部の内側近傍)に、透明フィルム12表面にまで達する凹部18が形成されている。この凹部18は、メッシュ状導電層13’、ハードコート層16’により形成されており、表面に露出したメッシュ状導電層13’が電極部を形成することができる。これにより、フィルタをディスプレイの表示部に貼付した際、容易に導通をとることができる。凹部18の深さは、透明フィルム12を破壊しない限り透明フィルム12の中まで到達していても良い。
【0029】
このような凹部18は、最表層の表面をカットすることにより一般に得られる。カット作業は、切れ込み入れるか、或いは切削することにより行う。単に切れ込み入れた場合は、切れ込みが入った周囲の導電層が反り返って表面に露出した状態になり、この部分がアース電極を形成する。切削した場合も同様に、切削した凹部の端部の導電層が反り返って表面に露出した状態になり、この部分がアース電極を形成する。導電層の表面又はその近傍までしかカットしなかった場合は、露出導電層は通常凹部の底部がほとんどで、カットによってはその周囲にも導電層が反り返る状態となるが、主としてこの底部の導電層がアース電極を形成する。
【0030】
凹部18は、一般に、間隔をおいて複数設けられている。凹部18は、一般に、外周端部(矩形状の場合の辺)に沿って少し内側に設けられており、その平面形状は一般に線状(細い帯状)、例えば直線状又は曲線状である。凹部は、例えば、辺に対し1個の、平面形状が長い直線状の凹部でも良いが、間隔をおいて複数の直線状の凹部の方が、導電層が露出しやすく好ましい。
【0031】
凹部18の幅(W)は一般に、0.1〜5mm、特に1〜3mmが好ましい。下限より小さい場合は導通をとり難くなり、上限を超えるとフィルタ全体の面積に影響を与える。また凹部18の外側端部の透明フィルムの縁部との距離(E)は一般に、2〜10mm、特に5〜10mmが好ましい。下限より小さい場合は作業が困難となり、上限を超えるとフィルタ全体の面積に影響を与える。
【0032】
この構成において、反射防止性がやや劣るが、反射防止層17が無くても良い。また、近赤外線遮断性に劣るが、近赤外線吸収層14及びその上に透明粘着剤層15も無くても良い。メッシュ状導電層13は、メッシュ状でない導電層(例、金属酸化物層等)であっても良いが、メッシュ状導電層が導通をとりやすく好ましい。
【0033】
一般に、上記メッシュ状導電層13の凹部をハードコート層16が完全に覆っており、メッシュ状導電層13は露出していない。そして本発明の機能層であるハードコート層16が、優れた平坦性及び高い鉛筆硬度を有している。
【0034】
図1を、反射防止層17側から見た平面図を図2に示す。矩形状の反射防止層17の周辺近傍部に凹部18が多数形成され、凹部の底部に透明フィルム12が覗いており、凹部の頂部(頂端部)にメッシュ状導電層13’が露出している。このメッシュ状導電層13’に、フィルタをディスプレイの表示部に貼付した際、ディスプレイの枠(金属化カバー)と接触させることにより容易にアースをとることができる。
【0035】
図3に、凹部の形状の例の概略図を示す。即ち凹部38は、1本の直線状でも(1)、短い直線状の凹部38がジグザグに多数形成されていても良い(2)。また(3)のように直線状の凹部38を長短交互に形成しても良い。
【0036】
メッシュ状導電層13、13’は、例えば、メッシュ状の金属層又は金属含有層である。メッシュ状の金属層又は金属含有層は、一般に、エッチングにより、又は印刷法により形成されている。これにより低抵抗を得られやすい。
【0037】
反射防止層17は、一般に低屈折率層である。即ち、ハードコート層16とその上に設けられた低屈折率層との複合膜により反射防止効果を示す。この低屈折率層とハードコート層16との間に高屈折率層を設けても良い。これにより反射防止機能は向上する。
【0038】
また反射防止層17は設けなくても良く、透明フィルムと、透明フィルムより屈折率の高い又は低い(好ましくは低い)ハードコート層16のみであっても良い。ハードコート層16、反射防止層17は、いずれも塗工により形成されていることが、生産性、経済性の観点から好ましい。
【0039】
近赤外線吸収層14は、PDPのネオン発光等の不要な光を遮断する機能を有する。一般に800〜1200nmに吸収極大を有する色素を含む層である。透明粘着層15は一般にディスプレイへの容易に装着するために設けられている。透明粘着剤層15の上に剥離シートを設けても良い。
【0040】
上述のディスプレイ用光学フィルタは、本発明の製造方法に従い、例えば、表面にメッシュ状導電層を有する長尺状のプラスチックフィルムのその導電層に、ハードコート層及び反射防止層を塗工(必要により加熱又は紫外線線照射)等により形成し、他方の表面に近赤外線吸収層、透明粘着剤層を塗工等により形成することにより、長尺状の光学フィルタを得、その後、作製されたフィルタを、各ディスプレイの全面の表示部の形状に合わせて矩形状に裁断、周囲をカットして導電層を露出させる(電極部の形成)ことにより得られる。このように、ロールトゥロールで高い生産性で製造することができる長尺状の光学フィルタから、簡便な方法で電極部を形成して、光学フィルタを得ることができる。従って、本発明の製造方法は、電極部を有する光学フィルタを、極めて簡便に製造することができる方法である。
【0041】
矩形状の光学フィルタの周囲をカットする道具としては、メッシュ状導電層が表面に露出するような力を付与できるものであればどのような道具を使用しても良く、例えば、カッター(例、ナイフ、ローラーカッター、超音波カッター、プラ板切刃付きカッター(市販品の例、NTカッター)、切削工具、みぞきり、溝切りのこ等を挙げることができる。例えば、凹部に相当する位置に複数の刃が付いた支持板(例えば自動包装機械用カッターのようなもの)を光学フィルタの表面の辺近傍に押し付けることにより一度に多数の凹部を形成することができる。
【0042】
矩形の透明フィルムの場合、各層はバッチ式で形成されても良いが、上記のように連続フィルム上に、各層を連続式、一般にロールトゥロール方式で形成し、裁断することが好ましい。
【0043】
本発明の図1の光学フィルタが、ディスプレイの1種であるプラズマディスプレイパネル49の画像表示面に貼付された状態を図4に示す。ディスプレイパネル40の表示面の表面に透明粘着剤層45を介して光学フィルタが接着されている。即ち、透明フィルム42の一方の表面に、メッシュ状導電層43、ハードコート層46、低屈折率層等の反射防止層47がこの順で設けられ、透明フィルム42の他方の表面には近赤外線吸収層44及び透明粘着剤層45が設けられた光学フィルタが表示面に設けられている。そしてフィルタの周囲近傍(一般に側端部近傍)に、透明フィルム42表面にまで届く凹部48が形成されている。この凹部48は、メッシュ状導電層43’、ハードコート層46’により形成されており、表面に露出したメッシュ状導電層43’にプラズマディスプレイパネル40の周囲に設けられた金属カバー49に導電性ガスケット又はシールドフィンガー(板バネ状金属部品)等を用いて、接触状態にされている。これにより、光学フィルタと金属カバー49が導通し、アースが達成される。金属カバー49は金属枠、フレームでも良い。図4から明らかなように、メッシュ状導電層43は、視聴者側を向いている。金属カバー49は、導電層43の端部の縁部から2〜20mm程度覆っている。
【0044】
次に、本発明のディスプレイ用光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0045】
透明フィルムは、その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はないが、一般にプラスチックフィルムが使用される。例えば、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。透明フィルムの表面には、ハードコート層16との接着性を向上させるために中間層(易接着層)を設けても良い。
【0046】
透明フィルムの厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0047】
本発明の導電層は、得られる光学フィルタの表面抵抗値が、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□の範囲となるように設定される。メッシュ(格子)状の導電層が好ましい。或いは、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。また導電層は、塗工層でもよい。
【0048】
メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インク(例、金属粒子含有樹脂層)をメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0049】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径(線幅)1μm〜1mm、開口率40〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50〜95%である。他の材料のメッシュ状の導電層についても、一般に同様の範囲が好ましい。メッシュ状の導電層において、線径が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下し両立させることができない。1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、40%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量も低下する。
【0050】
なお、導電性メッシュの開口率とは、当該導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0051】
メッシュ状の導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0052】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0053】
メッシュ状の導電層として、金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたものも好ましい。この場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0054】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm(特に1〜15μm)とするのが好ましい。
【0055】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0056】
メッシュ状の導電層を、透明基板に導電性インキをパターン印刷して形成しても良い。次のような導電性インキを用い、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等により透明基板の表面に印刷することができる。
【0057】
一般に、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、或いは銀、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の粒子等の導電性材料の粒子を50〜95重量%濃度にPMMA、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂に分散させたものである。このインクは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて透明基板の板面に印刷により塗布し、その後必要に応じ室温〜120℃で乾燥させ基板上に塗着させる。上記と同様の導電性材料の粒子をバインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布し熱等で固着させる。
【0058】
このようにして形成される印刷膜の厚さは、薄過ぎると電磁波シールド性が不足するので好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼすことから、0.5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0059】
このようなパターン印刷によれば、パターンの自由度が大きく、任意の線径、間隔及び開口形状の導電層を形成することができ、従って、所望の電磁波遮断性と光透過性を有するプラスチックフィルムを容易に形成することができる。
【0060】
導電層のパターン印刷の形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状の印刷膜や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状の印刷膜等が挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この印刷膜の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0061】
上記の他に、メッシュ状の導電層として、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料(好ましくは、金属または金属酸化物の蒸着層)からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状導電層を用いても良い。
【0062】
塗工による導電層としては、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層を挙げることができる。
【0063】
導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0064】
ポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0065】
或いは、ポリマーは後述するハードコート層に使用される紫外線硬化性樹脂を用いることが特に好ましい。
【0066】
上記塗工による導電層の形成は、ポリマー(必要により溶剤を用いて)中に上記導電性微粒子を混合等により分散させて塗工液を作製し、この塗工液を、透明基板上に塗工し、適宜乾燥、硬化させる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、塗工後乾燥することにより、熱硬化型の場合は、乾燥、熱硬化することにより得られる。紫外線硬化性樹脂を用いた場合は、塗工後、必要に応じて乾燥し、紫外線照射することにより得られる。
【0067】
上記塗工形成された導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると、電磁波シールド性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0068】
本発明の導電層は、塗工により形成される導電性ポリマーの層でも良い。例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリナフタレン等の炭化水素系ポリマー;ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン等のヘテロ原子含有ポリマーを挙げることができる。ポリピロール、ポリチオフェンが好ましい。上記導電性ポリマーの明導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると、電磁波シールド性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0069】
導電層として、金属酸化物層を設ける場合、一般に気相成膜法により形成される。その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工等が挙げることができるが、気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着)が好ましい。前記の導電性粒子を構成する無機化合物を用いて導電層を形成することができる。導電層を気相成膜法で形成した場合は、その層厚は、30〜50000nm、特に50nm程度が好ましい。
【0070】
また導電層は、誘電体層(金属酸化物)と金属層との交互積層膜でも良い。特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。例えば、ITO等の金属酸化物の誘電体層とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)を挙げることができる。
【0071】
上記透明導電膜は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0072】
導電層(特にメッシュ状導電層、中でもメッシュ状金属含有導電層)をさらに低い抵抗値にして、電磁波シールド効果を向上させたい場合は、導電層上にメッキ層を形成することが好ましい。
【0073】
金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、これらは単独で使用しても、2種以上の合金として使用しても良い。好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0074】
また、防眩性能を付与させても良い。この防眩化処理は、(メッシュ)導電層の表面に黒化処理を行って、黒化層を設けることにより行っても良い。例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系のインクの塗布等により行うことができる。
【0075】
本発明の反射防止層は、透明基板(一般に透明フィルム)より屈折率の低いハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜であるか、或いはハードコート層と低屈折率層との間にさらに高屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止層は透明基板より屈折率の低いハードコート層のみであっても有効である。但し、透明基板の屈折率が低い場合、透明フィルムより屈折率の高いハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜、或いは低屈折率層上にさらに高屈折率層が設けられた複合膜としても良い。
【0076】
ハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコーン樹脂層等を挙げることができ、通常その厚さは1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれでもよいが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0077】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0078】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0079】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0080】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0081】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0082】
ハードコート層は、透明フィルムより屈折率が低いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより一般に基板より低い屈折率を得られやすい。従って、透明基板としては、PET等の高い屈折率の材料を用いることが好ましい。このため、ハードコート層は、屈折率を、1.60以下にすることが好ましい。膜厚は前記の通りである。
【0083】
高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO、ATO、Sb23、SbO2、In23、SnO2、ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0084】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0085】
低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜60重量%(好ましくは10〜50質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.40〜1.51が好ましい。この屈折率が1.51超であると、反射防止フィルムの反射防止特性が低下する。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0086】
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0087】
ハードコート層は、可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0088】
反射防止層が上記3層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは75〜200nm、低屈折率層の厚さは75〜200nmであることが好ましい。
【0089】
反射防止層の、各層を形成するには、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を塗工し、次いで乾燥、必要により熱硬化させるか、或いは塗工後、必要により乾燥し、紫外線を照射する。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0090】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。前記導電層も同様に形成することができる。
【0091】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0092】
本発明の反射防止層は、上記のように塗工により形成することが好ましいが、気相成膜法により形成しても良い。通常、高屈折率層及び低屈折率層を、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0093】
高屈折率層及び低屈折率層等の組合せの例としては、下記のものを挙げることができる。
【0094】
(a) 高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計2層に積層したもの、(b) 高屈折率層/低屈折率層を2層ずつ交互に、合計4層に積層したもの、(c) 中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計3層に積層したもの、(d) 高屈折率層/低屈折率層の順で各層を交互に3層ずつ、合計6層に積層したもの。高屈折率層としては、ITO(スズインジウム酸化物)又はZnO、AlをドープしたZnO、TiO2、SnO2、ZrO等の薄膜を採用することができる。また、低屈折折率層としては、SiO2、MgF2、Al23等の屈折率が1.6以下の薄膜を用いることができる。
【0095】
上記高屈折率層及び低屈折率層等は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0096】
近赤外線吸収層(即ち、近赤外線遮蔽層)は、一般に、透明フィルムの表面に色素等を含む層が形成することにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば色素及びバインダ樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性又は電子線硬化性の樹脂)を含む塗工液を塗工、必要により乾燥、そして必要により硬化させることにより得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0097】
本発明では、近赤外線吸収層に、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0098】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0099】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。
【0100】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0101】
本発明の光学フィルタの近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。
【0102】
近赤外線吸収層の層厚は、0.5〜50μmが一般的である。
【0103】
近赤外線吸収層は、色調補正用の色素を含有していることが好ましい。或いは色調補正用の色素を含む透明色調補正層を、近赤外線吸収層と同様にして設けても良い。色調補正用の色素としては、近赤外線遮蔽層の黄褐色〜緑色の色調を中性化してカラーバランスを整えるために、それらの補色となるようなものが好ましい。このような色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げることができる。無機顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等を挙げることができ、有機顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等を挙げることができ、前記有機系染料及び色素には、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ポリメチン系等を挙げることができるが、これらの内で、発色性の観点から有機系色素が好適に用いられる。
【0104】
導電性粘着テープを、導電層とPDP等の他の部分との接着のために必要により用いても良い。導電性粘着テープとしては、金属箔の一方の面に、導電性粒子を分散させた粘着層を設けたものであって、この粘着層には、アクリル系、ゴム系、シリコン系粘着剤や、エポキシ系、フェノール系樹脂に硬化剤を配合したものを用いることができる。この粘着層に分散させる導電性粒子としては、電気的に良好な導体であればよく、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属粉体、このような金属で被覆された樹脂又はセラミック粉体等を使用することができる。また、その形状についても特に制限はなく、りん片状、樹枝状、粒状、ペレット状等の任意の形状をとることができる。
【0105】
この導電性粒子は、粘着層を構成するポリマーに対し0.1〜15容量%で使用することが好ましく、また、その平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましい。このように、配合量及び粒径にすることにより、導電性粒子の凝縮を防止して、良好な導電性を得ることができるようになる。
【0106】
導電性粘着テープの基材となる金属箔としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の箔を用いることができ、その厚さは通常の場合、1〜100μmである。
【0107】
上記粘着層は、上記金属箔に、前記粘着剤と導電性粒子とを所定の割合で均一に混合した液をロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、マイカバーコーター、フローコーター、スプレーコーター等により塗布することにより容易に形成することができる。この粘着層の厚さは通常の場合5〜100μmである。
【0108】
本発明の透明粘着剤層は、本発明の光学フィルムをディスプレイに接着するための層であり、接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。
【0109】
その層厚は、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0110】
本発明において透明フィルム2枚を使用する場合、これらの接着には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS及びSBS等の熱可塑性エラストマー等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0111】
その層厚は、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0112】
前記透明粘着剤層の材料として、上記EVAを使用しても良い。EVAを使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0113】
架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100重量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0114】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0115】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0116】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0117】
EVAを光により架橋する場合、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0118】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0119】
また、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用される。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0120】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0121】
なお、本発明に係るEVA接着層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0122】
上記接着層(或いは透明粘着剤層)は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【0123】
反射防止層上には、保護層を設けても良い。保護層は、前記ハードコート層と同様にして形成することが好ましい。
【0124】
透明粘着剤層上に設けられる剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0125】
本発明の光学フィルタは、前述のように、例えば、導電層を有する長尺状の透明フィルムの導電層表面に、ハードコート層、反射防止層等を順次設け、次いで、透明フィルムの他方の表面に、近赤外線吸収層及び透明粘着剤層を設けることにより長尺状の積層体を製造し、これを裁断し、上記凹部を形成することにより得られる。
【0126】
長尺状の透明フィルムに、各層を塗工(塗布)する際に使用される塗工機としては、スリットダイ、リップダイレクト、リップリバース等使用することができる。また両面を同時に塗布する場合は、リップダイを両面に配置した両面同時塗工機が一般に使用される。
【0127】
また長尺状の透明フィルムを2枚用いた場合は、一方の長尺状の透明フィルムの一方の表面に、ハードコート層及び反射防止層等、そして導電層を順次設け、別の長尺状の透明フィルムの一方の表面に近赤外線吸収層及び透明粘着剤層を設け(或いは近赤外線カットフィルムに透明粘着剤層を設けても良い)、これらの2枚の積層体を、両方の透明フィルムの裏面同士を、粘着剤層を介して対向させて、重ね合わさせ、一体化することにより容易に製造することができる。このようにして得られた長尺状の積層体を、上記のように裁断すればよい。
【0128】
このようにして得られる本発明のディスプレイ用光学フィルタは、前述のようにPDP等のディスプレイの画像表示ガラス板の表面に貼り合わされて使用される。
【0129】
本発明のPDP表示装置は、透明基板としてプラスチックフィルムを使用しているので、本発明の光学フィルタをその表面であるガラス板表面に直接貼り合わせることができるため、特に透明フィルムを1枚使用した場合は、PDP自体の軽量化、薄型化、低コスト化に寄与できる。また、PDPの前面側に透明成形体からなる前面板を設置する場合に比べると、PDPとPDP用フィルタとの間に屈折率の低い空気層をなくすことができるため、界面反射による可視光反射率の増加、二重反射などの問題を解決でき、PDPの視認性をより向上させることができる。
【0130】
従って、本発明の光学フィルタは、製造が容易で、アースがとりやすく、そして反射防止効果、帯電防止性に優れ、危険な電磁波の放射もほとんどなく、見やすく、ホコリ等が付きにくく、安全なディスプレイということができる。

【実施例】
【0131】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]
<電極部付きディスプレイ用光学フィルタの作製>
(1)メッシュ状導電層
表面にメッシュ状導電層(線幅は20μm、開口率は77%、厚さ4μmの銅層)を有する厚さ100μmの長尺状のポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:540mm、長さ600m)を用意した。
【0133】
(2)ハードコート層(インク)の形成
下記の配合:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 80質量部
ITO(平均粒径150nm) 20質量部
メチルエチルケトン 40質量部
トルエン 40質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製) 4質量部

を混合して得たインク(塗工液)を、上記メッシュ状導電層に、バーコータにより塗布し、紫外線照射により硬化させた。これにより、メッシュ状導電層上に厚さ5μmのハードコート層(屈折率1.52)を形成した。
【0134】
(3)低屈折率層の形成
下記の配合:
オプスターJN―7212(日本合成ゴム(株)製) 100質量部
メチルエチルケトン 50質量部
メチルイソブチルケトン 50質量部

を混合して得たインク(塗工液)を、上記ハードコート層上にバーコータにより塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させ、次いでその紫外線照射により硬化させた。これにより、ハードコート層上に厚さ90nmのハードコート層(屈折率1.42)を形成した。
【0135】
(4)近赤外線吸収層(色調補正機能を有する)の形成
下記の配合:
ポリメチルメタクリレート 30質量部
TP−2(山田化学工業(株)製) 0.4質量部
Plast Red 380(有本化学工業(株)製 0.1質量部
CIR−1085(日本カーリット(株)製) 1.3質量部
IR−10A((株)日本触媒製) 0.6質量部
メチルエチルケトン 152質量部
メチルイソブチルケトン 18質量部
を混合して得た塗工液を、上記ポリエチレンフィルムの裏面にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、ポリエチレンフィルム上に厚さ7μmの近赤外線吸収層(色調補正機能を有する)を形成した。
【0136】
(5)透明粘着剤層の形成
下記の配合:
SKダイン1811L(綜研化学(株)製) 100質量部
硬化剤L−45(綜研化学(株)製) 0.45質量部
トルエン 15質量部
酢酸エチル 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記近赤外線吸収層上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、近赤外線吸収層上に厚さ10μmの透明粘着剤層を形成した。
【0137】
得られた光学フィルタを、長さ400mm及び幅540mmの寸法に裁断し、得られた矩形状の光学フィルタの周囲(端部から5mmの位置に、幅2mm)にカッター(商品名:NTカッターP−1P(プラ板切刃);エヌティ(株)製)で透明フィルムまで切り込みを入れ、幅2mm、長さ10mmの凹部を2mmおきに形成した。
【0138】
[比較例1]
凹部を形成しなかった以外、実施例1と同様にしてディスプレイ用光学フィルタを得た。
【0139】
[光学フィルタの評価]
(1)導電性
光学フィルタの電極(相対する2個の電極部)に抵抗計(商品名:mΩHi−Tester(MCP−T600);日置電機(株)製)を接続して、抵抗値を測定した。
【0140】
上記結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
また実施例1で得られたPDPフィルタは、実際にPDPに貼付しても透明性、電磁波遮蔽性等において、従来のものと遜色はなく、一方、電極部設置においては極めて容易に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の光学フィルタの代表例を示す概略断面図である。
【図2】図1のディスプレイ用光学フィルタの概略平面図である。
【図3】本発明の凹部の平面形状の例を示す。
【図4】図1の光学フィルタが、ディスプレイの1種であるプラズマディスプレイパネルの画像表示面に貼付された状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0144】
11、41 ディスプレイ用光学フィルタ
12、42 透明フィルム
13、13’、43、43’ メッシュ状導電層
16、16’、46 ハードコート層
17、47 反射防止層
14、44 近赤外線吸収層
15、45 透明粘着剤層
18、48 凹部
49 金属カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍に、少なくとも導電層表面に達する複数の凹部が形成され、その凹部及び/又はその近傍に導電層が露出しており、その露出導電層が電極部を形成していることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項2】
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタであって、
ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍に、少なくとも透明基板表面に達する複数の凹部が形成され、その凹部の頂部に導電層が露出しており、その露出導電層が電極部を形成していることを特徴とするディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項3】
透明基板が、矩形状である請求項1又は2に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項4】
凹部が、透明基板の少なくとも相対する両側に設けられている請求項3に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項5】
凹部が、間隔をおいて複数設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項6】
凹部の平面形状が、線状である請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項7】
導電層が、メッシュ状導電層である請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項8】
透明基板のハードコート層が設けられていない側には近赤外線吸収層が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ
【請求項9】
ハードコート層の上に、さらに反射防止層が形成され、最表層を構成している請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項10】
近赤外線吸収層の表面に透明粘着剤層が設けられている請求項8又は9に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項11】
メッシュ状導電層のメッシュの間隙にはハードコート層が埋め込まれている請求項7〜10のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項12】
透明基板がプラスチックフィルムである請求項1〜11のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項13】
透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている請求項10〜12のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項14】
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタにおける、当該ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍をカットすることにより、少なくとも導電層表面に達する複数の凹部を形成して、その凹部及び/又はその近傍に導電層が露出させ、これによりその露出導電層の電極部を形成することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項15】
透明基板の一方の表面に導電層及びハードコート層がこの順で設けられた構造を含むディスプレイ用光学フィルタにおける、当該ハードコート層又はその上に別の層が設けられている場合はそれらの最表層の、周囲の近傍をカットすることにより、少なくとも透明基板表面に達する複数の凹部を形成して、その凹部の頂部に導電層が露出させ、これによりその露出導電層の電極部を形成することを特徴とするディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項16】
カット作業が、切れ込み入れるか、或いは切削することにより行う請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
透明基板が、矩形状である請求項14〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
凹部を、透明基板の少なくとも相対する両側に設ける請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
凹部を、間隔をおいて複数設ける請求項14〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
凹部の平面形状が、線状である請求項14〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
導電層が、メッシュ状導電層である請求項14〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
透明基板のハードコート層が設けられていない側には近赤外線吸収層が設けられている請求項14〜21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
ハードコート層の上に、さらに反射防止層が形成され、最表層を構成している請求項14〜22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
近赤外線吸収層の表面に透明粘着剤層が設けられている請求項22又は23に記載の製造方法。
【請求項25】
透明基板がプラスチックフィルムである請求項14〜24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている請求項24又は25のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項27】
プラズマディスプレイパネル用フィルタである請求項1〜13のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタ。
【請求項28】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイ。
【請求項29】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−147347(P2008−147347A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331713(P2006−331713)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】