説明

ディスペンサー

【課題】ディスペンサーを持ち替えることなく吐出量を調節したり切り替えることを可能とする。
【解決手段】例えばマスチックコークなどの粘性材料を容器から分配するための空気圧式ディスペンサーが記載される。ディスペンサーは、容器の分配ノズルを受け入れ、加圧流体の流れを分配ノズルに与えて材料をスプレー状に分配できるようにする流体供給装置を備える。例えば、ディスペンサーの容器収容区画を閉鎖するキャップ上に配置された部材、および/または分配ノズルの周囲に配置された可動部材などの可動部材を用いて加圧流体の流れを制御することができる。流体供給装置の構造により、加圧流体の流れを簡便に制御して材料を噴霧することが可能になる。容器に分配圧力を加えるための容易互換性のある圧力付加インタフェースを備え、カートリッジとホイルパック容器の両方と共に使用可能であるディスペンサーも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性材料の空気圧式ディスペンサーに関し、より詳細には、粘性材料をビード状にまたはスプレー状に分配可能であるディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジまたはホイル(「ソーセージ」)パックなどの容器で提供される、またはばらで提供される粘性材料の空気圧式ディスペンサーは、当分野で良く知られている。このようなカートリッジで分配される粘性材料の典型例は、マスチックコーキング材および他の種類のシーラント剤である。カートリッジは通常、分配ノズルまたは分配ノズルと接続するコネクタが設けられた分配端と、反対側の開放された後端とを備える。カートリッジ内部の材料は、カートリッジ内部を移動するピストンによって開放後端から封止される。この種のカートリッジ向けの既知の空気圧式ディスペンサーは、本体部と、ディスペンサーをユーザが保持するためのストック部またはハンドルとを備える。典型的に、ストック部は、通常は圧縮空気である加圧流体源にディスペンサーを接続するためのコネクタと、引き金により作動して分配圧力を与えるバルブとを備える。使用時に、カートリッジの開放端が本体部内の面取りされた封止リングまたはプラグに押し付けて保持され、加圧流体の回路とカートリッジとの間にシールを形成する。この結果、分配圧力がカートリッジ内部のピストンを前方に駆動し、これによって粘性材料がカートリッジから分配される。このようなディスペンサーの一例は、GB1589381に開示されている。
【0003】
特定の用途、例えば車両の製造および保守における車体下方のシーリングでは、ディスペンサーを用いて粘性材料のビード(bead)を付けることができるとともに、同じディスペンサーを用いて粘性材料をより拡散させて噴霧することができると望ましい。このような用途向けの既知のディスペンサーは、カートリッジの分配ノズルの周囲に設けられたスプレーノズルと、スプレーノズルに加圧流体を供給するための加圧流体回路とを備える。分配ノズルに沿ってノズルの分配端を越えて加圧流体が流れ、これによって分配ノズルから分配された材料を霧状にする。
【0004】
この種の既知のディスペンサーの一つは、ストック部に取り付けられたシリンダーを本体部が備える。シリンダーの後端には、粘性材料容器の後端の背後に加圧流体を供給するための装置が設けられ、シリンダー内に容器を保持するためのキャップをシリンダーの前端に接続することができる。一変形例では、ホイルパックから粘性材料を分配するようにディスペンサーを構成することができる。この場合、シリンダーの内部に浮動ピストンが設けられ、引き金が作動すると、浮動ピストンの背後で増大する分配圧力をホイルパックに伝達する。別の変形例では、GB1589381に記載されているように、カートリッジの開放端を封止するための封止部材がディスペンサーの後部に備えられる。キャップは、分配ノズルの周囲にスプレーノズルを受け入れるためのねじを備え、キャップとシリンダーの後部との間を加圧流体の導管が接続し、材料の分配時に圧力を受ける。導管は、一方の側でシリンダーに固定されホースによってキャップと後端とにそれぞれ接続されたボール弁を備えており、分配ノズルの周囲のスプレーノズルを通した加圧流体の流れをオンオフすることができる(または、中間位置に調整することができる)。分配の間に弁が開かれると、加圧流体は分配ノズルに沿ってスプレーノズルの内側の分配端を越えて流れ、分配された粘性材料を霧状にする。弁が閉じられると、粘性材料は霧状にされることなく分配ノズルおよびスプレーノズルを通して分配され、ビートとして出すことができる。
【0005】
粘性材料をビード状または霧状の両方で分配可能である別の既知のディスペンサーは、カートリッジを受け入れるシリンダーと、ストック部に接続された分配引き金を持つストック部とを備える。ディスペンサーは、本体部内にカートリッジを保持するためのキャップも備えており、キャップに固定可能なスプレーノズルを有する。本体部は二重壁を持ち、キャップが二重壁の外側を封止する。二重壁の間の隙間を通してキャップ背後の空間に加圧流体が運ばれ、そこからスプレーノズルを通して加圧流体が漏れて分配された粘性材料を霧状にする。二重壁の間の加圧流体の圧力、およびスプレーノズルを通る加圧流体の圧力は、ストック部の調整ダイアルによって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した既知のスプレーおよびビードディスペンサーにはいくつかの欠点がある。本体部の側面またはストック部上にバルブまたは調整ダイアルが配置されているので、材料の分配中に、あるいは分配動作の間にディスペンサーの持ち方を変えることなく、ディスペンサーのスプレー挙動を調節したり切り替えたりすることが容易ではない。さらに、分配ノズルの周囲の加圧流体の流れを切ってビードを出すとき、スプレーノズルが取り外されていないと、ビードを出すときにスプレーノズルと分配ノズルの間に材料が進入するという特有のリスクが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様では、容器から分配ノズルを通して粘性材料を分配するディスペンサーが提供される。ディスペンサーは、ノズル受け入れ空間を通して分配ノズルを受け入れ、一つまたは複数の流体供給ポートを通してノズル受け入れ空間に加圧流体を供給する流体供給装置を備える。流体供給装置は、分配ノズルが貫通するように受け入れる第1部材および第2部材を備える。第2部材は、流体供給ポートが閉じられる第1配置と流体供給ポートが開かれてノズル受け入れ空間に流体を供給する第2配置との間で第1部材に対して移動可能であり、分配ノズルの周囲でスプレーノズルを取り外し可能に受け入れるように構成される。
【0008】
有利なことに、可動の第2部材を分配ノズルの周囲(ディスペンサーのまさに正面)に配置することで、ディスペンサーを分配位置で保持しつつ、人間工学的に簡便に流体供給ポートを開閉できるようになる。典型的に、ディスペンサーは、容器を保持する本体部と、引き金を有するストック部またはハンドルとを備える。引き金は、分配圧力を容器に与えて分配ノズルを通して容器内の粘性材料を分配するとともに、流体供給ポートが開いている場合、ノズル受け入れ空間に加圧流体の流れを与える。分配ノズルの周囲で流体供給ポートを開閉するための第2部材と流体供給装置とをこのように配置することで、片方の手でストック部またはハンドルを保持し、もう片方の手で第2部材の領域でディスペンサーの前部を支持しながら、ユーザが第2部材を駆動することが可能になる。
【0009】
一部の実施形態では、(供給ポートが開いている)第2配置のときよりも(供給ポートが閉じている)第1配置のときに、第2部材が第1部材に近接する。その結果、流体供給ポートが閉じられたときにスプレーノズルと分配ノズルの間の隙間が減少するか隙間がなくなるように、分配ノズルの周りで第2部材に固定されたスプレーノズルが分配ノズルに対して移動する。これにより、ディスペンサーがビードモードで使用されるとき、スプレーノズルと分配ノズルの間に加圧流体が流れず、材料が進入する危険性が軽減または排除される。
【0010】
一部の実施形態では、流体供給装置は、第1部材に対して回転が規制された第3部材を備える。第2部材は第1部材に対する線形移動が規制され、ユーザが第1部材に対して第3部材を回転させると第1部材に対して第2部材が平行移動して供給ポートを開閉するように、第2部材が第3部材と結合される。この特別な構成は、ノズル受け入れ空間への加圧流体の供給を制御するための回転制御要素がディスペンサー前部の分配ノズルの周囲にあるという便利さと、第1部材に対する第2部材の線形移動に基づき流体供給ポートが開閉される単純な構成とを組み合わせる。
【0011】
一部の実施形態では、第1部材の内壁と外壁との間の流路に第2部材の領域が配置され、第2部材の領域と外壁とが共同して供給ポートを画成する。有利なことに、分配ノズルに沿った方向に供給ポートからの加圧流体を導くように内壁が作用する。一部の実施形態では、流体供給装置は、第1部材と第2部材の間に第1供給ポートシールと第2供給ポートシールを備えており、第2部材が各供給ポートに対して開口部を有する。開口部は、第2配置のとき第1および第2供給ポートシールの間に配置され、第1配置のとき第1および第2供給ポートシールの一方の側に通じる。これは、(利用可能な空間次第で)潜在的に多数の開閉可能な供給ポートを提供するのに例えばOリングである二つのシールで十分であるという、簡単かつ効率的な構成を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、第1部材と第2部材が、ディスペンサーの容器受け入れ区画を閉じるためのキャップの一部である。特に、一部の実施形態では、区画は、区画外壁と区画内壁との間に流体供給経路を画成し、第1部材は、区画の外壁を封止する第1シールと、区画の内壁を封止する第2シールとを有する。両方のシールと供給ポートの間に流路を画成することによって、第1部材と区画の特定の構成が、キャップ内の流体供給装置とディスペンサーとを接続する単純な構成を提供する。これは、上述した既知のディスペンサーのうちの一つにおける固定された導管(ホース)の必要性と比較することができる。上述した他の既知のディスペンサーのように、キャップの完全な取り外し、またはキャップの下の空間に加圧流体を単に供給することを防止する。これは、キャップに設けられた切り替え可能な流体供給ポートとは両立しない。
【0013】
本発明の別の態様では、上述したディスペンサーの第2部材と取り外し可能に結合し、第1部材と第2部材が第2配置の状態であるときに分配ノズルの分配端を越えて加圧流体を導くように構成された第1端部を有するスプレーノズルが提供される。
【0014】
一部の実施形態では、スプレーノズルは分配ノズルと係合する一つまたは複数のリブを備え、これによってスプレーノズルと分配ノズルの間に明確に定義された関係を作り、分配ノズルに沿って加圧流体を通す通路を提供する。一部の実施形態では、第1端部と反対側の第2端部にあるスプレーノズルの端部が、分配ノズルの分配端にある端部と結合するように構成される。このようにして、スプレーノズルと分配ノズルの端部が結合したとき、ビードを出すようにディスペンサーを使用したときの端部の間への分配された材料の進入が実質的に防止されるか少なくとも軽減される。
【0015】
本発明の別の態様では、上述したスプレーノズルとともに使用するように構成された分配ノズルが提供される。分配ノズルは、スプレーノズルの端部と結合するように構成された端部を分配端に有しており、端部同士が結合したとき、分配された材料が端部の間に進入するのを軽減するか実質的に防止する。
【0016】
本発明の別の態様は、上述したスプレーノズルと分配ノズルを備える(組み立てられたまたは別々に提供される)部品キットにまで広がる。さらに、部品キットは上述したディスペンサーを備えてもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、上述したディスペンサーと結合するように構成されたキャップが提供される。キャップは、ノズル受け入れ空間を通して分配ノズルを受け入れ、一つまたは複数の流体供給ポートを通してノズル受け入れ空間に加圧流体を供給するための流体供給装置を備える。キャップは、流体供給ポートが閉じられる第1配置と、流体供給ポートが開かれてノズル受け入れ空間に流体を供給する第2配置との間でキャップに対して移動可能であり、キャップに固定された部材をさらに備える。
【0018】
有利なことに、供給ポートを開閉動作することができる部材をキャップ自体に設けることによって、分配中にユーザの自由な手を用いてキャップの領域でディスペンサーを自然に支えるという人間工学的なやり方で、分配モードとスプレーモードの切替を行うことができる。
【0019】
一部の実施形態では、分配される材料を収容する容器を受け入れる本体部と、分配圧力を容器に与えるための圧力付加インタフェースとを有するディスペンサーが提供される。圧力付加インタフェースは、本体部に対して取り外し可能に固定される。ディスペンサーは、バルブに結合された引き金を有するストック部を備える。バルブは、引き金が作動したときに圧力付加インタフェースに加圧流体を供給して容器から材料を分配するための供給ポートと、引き金が開放されたときに圧力付加インタフェースから加圧流体を放出して材料の分配を停止するための排気ポートとに、圧力付加インタフェースを選択的に接続する。
【0020】
圧力付加インタフェースは、カートリッジ容器の開放端を封止する封止リングを備えてもよいし、または、本体部の内側にスライド可能に組み付けられ、ホイルパック容器に分配圧力を付加するピストンを備えてもよい。加圧流体の供給と、ストック部を通した排気の放出の両方を経由することによって、圧力付加インタフェースが容易に取り外し可能になり、容易に交換することができる。本発明の関連する態様は、ディスペンサーと、上述した各圧力付加インタフェースのうちの一つとを備える部品キットに広がる。
【0021】
以下、添付の図面を参照して、例示のみを目的として本発明の特定の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スプレーおよびビードディスペンサーの斜視図である。
【図2】図1のディスペンサーの一部の断面図である。
【図3】図2に示したディスペンサーのノズルを通るA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1のディスペンサーのキャップの分解図を、分配ノズルおよびスプレーノズルと共に示す図である。
【図5】図2の断面図の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、ディスペンサーは、ストック部2と、ストック部2によって環状クランプ構造6に把持された本体部4とを備える。本体部は、クランプ構造6によって一緒に把持された第1円筒外壁部8と第2円筒外壁部10とを備える。本体部4は、ねじ込み式リアキャップ12によって後端が閉鎖され、ねじ込み式フロントキャップ14によって正面が閉鎖されている。フロントキャップ14は回転部材16を備える。回転部材16は、線形可動部材18をキャップに対して線形移動させるように構成される。スプレーノズル20は、ねじ込み接続によって線形可動部材18に固定される。
【0024】
ストック部は、人間工学的な形状のハンドル22を備える。ハンドル22は、レギュレータ26からの加圧流体の流れを制御するバルブに接続された引き金24を収容する。レギュレータ26は、圧縮空気などの加圧流体源に接続するための簡易着脱式コネクタ28を有する。レギュレータ26は、レギュレータ26の上流の分配圧力を調節するためのダイアル30を備える。
【0025】
図2を参照して、本体部4は、粘性材料を収容する容器を受け入れるための区画を画成する円筒形の内壁32をさらに備える。円筒形内壁32は、ディスペンサーの前部ではフランジ34によって第1および第2外壁部8、10に対して保持され、ディスペンサーの後部では、内壁32のねじ切りされた外面と係合するねじ込み式リング38によって、第2外壁部10の肩部36に対して保持される。第1および第2外壁部8、10と内壁32との間の空間は、ディスペンサーの後部でOリング40によって封止されている。ディスペンサー後部の開口42は、内壁32と外壁部8、10との間の空間43を内壁32の内側と接続する。
【0026】
スペーサ部材44は、開口42の両側にあるOリング46を用いて内壁32を封止し、リアキャップ12によって適所に保持され、スペーサ44のフランジ48を内壁32の後端に対して保持している。反対側のスペーサの前側では、スペーサ44の前部に封止リング50が締まりばめされており、Oリング46のうち隣合う一つを封止するように係合する。封止リング50は、粘性材料収容カートリッジの開放後端の内面を封止するように係合する外向きに丸められた面取り部52を有する。スペーサ44内の開口54は、開口42から封止リング52を通して、封止リング50に対して保持されたカートリッジの開放後端の中に加圧流体を送る流路を提供する。これについてはさらに詳細に後述する。
【0027】
チューブ56は、内壁32および第1外壁部8によって位置決めされた封止部材58を経由して、ストック部2の内側にある、引き金により作動するバルブ(図示せず)に空間43を接続する。引き金24とバルブの設定に応じて、空間43は、サイレンサーに接続されたバルブの排気ポートを通して大気圧に接続されるか、または、レギュレータ26から空間43に加圧流体を供給するバルブの入口ポートによってレギュレータ26に接続される。
【0028】
ディスペンサーの前部には、空間43からキャップ14内の流体供給装置(より詳細に後述する)に通じる流体供給経路が、内壁32と第2外壁部10との間に画成されている。内壁32に対面する第2外壁部10のリッジ60は、空間43から流体供給装置への加圧流体の流路の有効断面を制限して、ダイアル30を用いて設定された所与の分配圧力に対して、流体供給装置へと流れる流体の流速を制限する。
【0029】
キャップ14は、内壁32の内面に対して封止するように配置された第1外側Oリング62と、第2外壁部10の内面に対して封止するように配置された第2外側Oリング64とを備える。第2外側Oリング64は第1外側Oリング62の前方に配置されており、二つのOリングによって、空間43とキャップ14とを結ぶ流体供給経路が画成されている。第1および第2外側Oリング62、64はキャップ部材66上に保持される。キャップ部材66は、ねじ込み式リング68に回転可能に固定される(相対回転が可能になるように軸方向に配置される)。ねじ込み式リング68は、第2外壁部10上の対応するねじ山と係合して、キャップ部材66を本体部4に対して保持する(また、封止リング50の)丸められた面取り部52に押し付けて内壁32の内側にカートリッジを保持する)。
【0030】
線形可動部材18は、キャップ部材66の内壁70と外壁72との間の流路に受け入れられる。さらなる詳細は後述するが、線形可動部材18がキャップ部材66に対して移動すると、線形可動部材18とキャップ部材66の外壁72との間にシールが形成されるかまたはシールが壊れる。この結果、内壁32と第2外壁部10との間の流路から、内壁70に沿ったキャップ部材66内の導管74を通り、線形可動部材18の内部空間へと加圧流体が流れる。これによって、キャップ部材66および線形可動部材18を通して配置された分配ノズル76の周囲の空間に流体を供給する、開閉可能な流体供給ポートが提供される。(図2には示されていないが、使用時には、分配ノズルが粘性材料収容容器に接続される。)
【0031】
線形可動部材18とキャップ部材66とは、流体供給ポートが開かれたとき、流体供給ポートが閉じられているときと比較して両者がさらに離れて位置するように構成される(線形可動部材18は、内壁70と外壁72との間の流路内への挿入量がより小さい)。図2は、供給ポートが開かれた配置状態の線形可動部材18とキャップ部材66とを示している。この配置状態では、分配ノズル76を囲うように線形可動部材18に固定されたスプレーノズル20は、分配端78を越えて加圧流体を導くために分配ノズル76の分配端78よりも前方に延出しており、分配された材料を霧状にして材料を噴霧する。
【0032】
図3に示すように、スプレーノズル20は、その前端に隣接してリブ80を備える部分を有している。リブ80は、分配ノズルの対応する直線部82を位置決めしてスプレーノズル20に対して明確に定義された関係で分配ノズルを保持しつつ、同時に分配ノズル76に沿って分配端78を越えて加圧流体を流すための経路を提供する。詳細は後述するが、流体供給ポートを閉じるために、回転部材16を回転させると、キャップ部材66の内外壁70、72の間に画成された流路内に線形可動部材18がさらに挿入される。同時に、直線部82に沿ってスライドするリブ80とともに、線形可動部材18に固定されたスプレーノズル20が分配ノズル76に沿って後方に移動する。分配ノズルおよびスプレーノズルのそれぞれの端部84、86は相補的な形状となるように構成されているので、線形可動部材18がキャップ部材66の中に完全に挿入されると、端部84、86が結合して流体供給ポートを閉鎖する。こうして、分配ノズル76の分配端78から分配される材料からスプレーノズル20の内側が実質的に封止され、流体供給ポートを閉じて材料を噴霧するのではなくビード状に分配するとき、スプレーノズル20への材料の進入が軽減するかまたは実質的に防止される。
【0033】
図4および図5を参照して、供給ポートを開閉する構成について詳細に説明する。既に簡単に説明したように、線形可動部材18は、キャップ部材66の内外壁70、72の間の流路内に入り込む。内壁70はリッジ88を画成する。リッジ88は、線形可動部材18の内面上の対応するリッジ89(図4では観察できない)とかみ合って、線形可動部材18のキャップ部材66に対する線形移動を規制する。線形可動部材18は、ツースタート(two-start)高ピッチねじ山90によって、回転部材16に連結される。回転部材16は、ねじ94によってキャップ部材66に固定された保持リング92によって、ねじ込み式リング68とともにキャップ部材66に回転可能に固定される。このようにして、回転部材16の回転によって、内外壁70、72の間の流路を出入りする線形可動部材18の移動が生じる。
【0034】
線形可動部材18の外面と外壁72の内面との間には、導管74の両側にそれぞれOリング96が配置されている。Oリング96は、外壁72の肩部98、スペーサ100およびワッシャ102によって適所に維持される。導管74の一端では、肩部98とスペーサ100との間にOリング96の一方が適所に保持され、導管74の他端では、スペーサ100とワッシャ102との間にOリング96の他方が適所に保持される。ワッシャ102は回転部材16によってその位置に保持される。スペーサ100は、ウェブ106によって間隔が開けられた二つのリング104を備え、リング104の間の導管74を加圧流体が通過できるようになっている。
【0035】
スプレーノズル20を受け入れる側とは反対側では、線形可動部材18が開口またはスロット108を形成している。キャップ部材66の内外壁70、72の間に線形可動部材18が完全に挿入されると、両方のOリング96が線形可動部材18の外面を封止する。こうして、分配ノズル76を受け入れる、キャップ部材66と線形可動部材18の内部の空間から導管74を分離する。図2および図5に示す構成では、壁70、72の間の流路から線形可動部材18が部分的に引き出され、その結果、開口部108がOリング96の一つよりも前方に延出して封止が破られる。こうして、分配ノズル76を受け入れる空間と導管74とが開口部108を介して流体連通する。したがって、導管74は、Oリング96および開口部108とともに、分配ノズル76を受け入れる空間に空気圧流体を供給するための流体供給ポートを提供する。この流体供給ポートは、回転部材16を回転させて線形可動部材18を線形移動させることによって開閉可能である。
【0036】
操作時には、キャップ14が本体部4から取り外され、内壁32によって画成された空間内にカートリッジが挿入され、開口端を持つ封止リング50の丸められた面取り部52にカートリッジが当接する。続いて、キャップ14が本体部4に固定され、キャップ部材66および線形可動部材18を通して分配ノズル76が配置され、キャップ部材66によって封止リング52に対してカートリッジが適所に保持される。上述したように、引き金24が作動すると、簡易着脱式コネクタ28に接続された加圧流体源から、レギュレータ26によって調節された圧力を持つ加圧流体がスペーサ44とキャップ14の両方に供給される(したがってカートリッジの内側にも加圧流体が供給されてカートリッジのピストンを駆動する)。材料をビード状に分配するためには、壁70、72の間に線形可動部材18を完全に挿入する。材料を噴霧するためには、線形可動部材18を十分に引き出して加圧流体が導管74から開口部108を通して流れるようにする。分配操作をしている間、または材料の分配中に、ハンドル22を把持していない方の手を用いて回転部材16を回転させることで、全閉(噴霧なし、ビード状に分配される)と全開(最大限に噴霧状にされたスプレー)との間でスプレー挙動を調節することが可能になる。
【0037】
カートリッジ形態の容器から分配する構成の観点で、特定の実施形態について説明を行った。しかしながら、リアキャップ12のねじを外してスペーサ44を容易に取り外せるという特性があるため、当分野において「ソーセージパック(sausage packs)」として知られるホイル(foil)容器から粘性材料を分配するように上記のディスペンサーを容易に適合させることができる。これは、キャップ12のねじを外してスペーサ44を取り除き、その場所に内壁32を封止するように嵌め合うピストンを挿入し、代わりのスペーサをその後ろに挿入することによって達成することができる。代わりのスペーサは、スペーサ44の後部と同様の方法でディスペンサーの後端を封止する働きをし、開口42からの加圧流体がピストンの背後に確実に与えられるようにする。ピストンおよび代わりのスペーサでスペーサ44を置き換えた後に、リアキャップ12を再び締めることによって、スペーサ44と同様の方法で代わりのスペーサが適所に保持される。ホイル容器は、キャップ部材66と係合するフランジを有する別のノズルとともに使用される。開口42からの加圧流体は、壁32の内側に収容されたホイル容器に向けてピストンを駆動して、カートリッジ容器と同様に粘性材料を分配する。
【0038】
本発明の特定の実施形態の観点から上記の説明をしたが、本発明を逸脱することなく上述した特徴の多数の修正、変更、並列が可能であり、以下の請求項によって包含されるように意図されていることが理解されるだろう。このような修正の一部について以下で説明する。
【0039】
上述の実施形態では、レギュレータ26から内壁32の内側とキャップ14とを結ぶ流体管が、外壁によって画成された流路、すなわち内壁32の周りに配置されたスリーブを備えるが、レギュレータからカートリッジ収容空間および/またはキャップ14に通じる流体流路を提供する多くの他の構造を設けることができる。例えば、外側を経由するエアホースを用いたり、または外側を経由するエアホースとストック部2の延長部の内部を経由する空気管の組み合わせを用いたりすることができる。
【0040】
例えば異なるカートリッジを収容するために長さが異なるスペーサや、上述したホイルパックとともに使用されるピストンとスペーサの組み合わせなどの、他の圧力配送インタフェースに対するスペーサ44の容易互換性の観点からは、リアキャップ12が容易に取り外し可能であり、したがってあらゆる空気接続部が本体部に作られておりリアキャップ12上には存在しないことが好ましい。同じ観点から、加圧流体を供給する入口ポートと加圧流体を空間43に放出する排気ポートの両方がストック部2の内部に設けられ、あらゆる空気圧式部品を本体部ポートの後端から遠ざけて、スペーサ44の容易互換性と干渉しないようにすることが好ましい。しかしながら、これらの構成部品の別の配置も等しく可能である。
【0041】
流体供給ポートを開閉する他の構成も使用可能であることが理解されるだろう。例えば、(回転部材を介するのではなく)ユーザによって直接駆動される線形可動部材と、ねじ山上の回転部材を使用し、横方向から長手方向へと対応するシールを再配置して、流体供給ポートを開閉するためのねじ込み式部材または単なる回転部材により部材の回転をキャップに対する線形移動に変換することなどである。
【0042】
スプレーノズル20が線形可動部材18に対して取り外し可能に接続されると説明したが、スプレーノズルが線形可動部材18の一部を形成したり、または供給ポートを開閉する他の部材の一部を形成してもよいことが理解されるだろう。最後に、例えばスプレーノズル20をキャップ14に取り付けたり、またはキャップ14を本体部4(またはリアキャップ12)に取り付けるための締結構造を等しく使用することができる。例えば、バヨネット(差し込み)締結構造や他の任意の種類の適切な締結構造などである。実際、上述の実施形態は各端に締結具を有するが、他の実施形態は、前部または後部のいずれか一端のみを開放可能な本体部を有する。この場合、分配ノズルを受け入れ噴霧形成のために加圧流体を供給する観点で上述したキャップの機能を提供するように構成された、完全に閉じられた後端を持つ前方から、または一体形成された前部を持つ後方から、本体部に容器を搭載することができる。
【0043】
上述した特定の実施形態は、内壁32および外壁部8、10用の金属(アルミニウムなど)と、残りの構造部品用のプラスチック材料(必要に応じてガラスを含むアセタールまたはナイロンなど)との組み合わせで製造される。ノズルは高密度ポリエチレンなどのプラスチックから製造される。全ての構造部品をプラスチック材料で構成することを含む、金属材料とプラスチック材料の任意の適切な組み合わせを代替実施形態で使用できることは理解されるだろう。当業者にとっては周知のように、Oリングなどの封止部品や、圧力接続ホースおよびチューブ、バルブおよびコネクタなどの他の空気圧部品での使用には多数の材料が適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器から分配ノズルを通して粘性材料を分配するディスペンサーであって、
ノズル受け入れ空間を通して前記分配ノズルを受け入れ、一つまたは複数の流体供給ポートを通して前記ノズル受け入れ空間に加圧流体を供給する流体供給装置を備え、
前記流体供給装置は、前記分配ノズルが貫通するように受け入れる第1部材および第2部材を備え、
前記流体供給ポートが閉じられる第1配置と、前記流体供給ポートが開かれて前記ノズル受け入れ空間に流体を供給する第2配置との間で、前記第1部材に対して前記第2部材が移動可能であり、
前記分配ノズルの周囲でスプレーノズルを取り外し可能に受け入れるように前記第2部材が構成されることを特徴とするディスペンサー。
【請求項2】
前記第2配置のときよりも前記第1配置のときに、前記第2部材が前記第1部材に近接することを特徴とする請求項1に記載のディスペンサー。
【請求項3】
前記流体供給装置は、前記第1部材に対して回転が規制された第3部材を備え、
前記第1部材に対して前記第3部材が回転すると、前記第1部材に対して前記第2部材が平行移動して前記供給ポートを開閉するように、前記第2部材と第3部材が結合されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のディスペンサー。
【請求項4】
前記第1部材の内壁と外壁との間の流路に前記第2部材の領域が配置され、前記第2部材の領域と前記外壁とが共同して前記供給ポートを画成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のディスペンサー。
【請求項5】
前記流体供給装置は、前記第1部材と第2部材の間に第1供給ポートシールと第2供給ポートシールを備えており、
前記第2部材が各供給ポートに対して開口部を備え、該開口部は、前記第2配置のとき前記第1および第2供給ポートシールの間に配置され、前記第1配置のとき前記第1および第2供給ポートシールの一方の側に通じることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のディスペンサー。
【請求項6】
前記第1部材と第2部材が、ディスペンサーの容器受け入れ区画を閉じるためのフロントキャップの一部であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のディスペンサー。
【請求項7】
前記区画は、区画外壁と区画内壁との間に流体供給経路を画成し、
前記第1部材は、前記区画の外壁を封止する第1シールと、前記区画の内壁を封止する第2シールとを有し、両方のシールと前記供給ポートの間に流路を画成することを特徴とする請求項6に記載のディスペンサー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のディスペンサーの前記第2部材と取り外し可能に結合し、前記第1部材と第2部材が前記第2配置の状態であるときに前記分配ノズルの分配端を越えて加圧流体を導くように構成された第1端部を有するスプレーノズル。
【請求項9】
前記分配ノズルと係合する一つまたは複数のリブを備え、これによって前記分配ノズルに沿って加圧流体を通す通路を提供することを特徴とする請求項8に記載のスプレーノズル。
【請求項10】
前記第1端部と反対側の第2端部にある前記スプレーノズルの端部が、前記分配ノズルの分配端にある端部と結合するように構成されており、前記端部同士が結合したとき、分配された材料が前記端部の間に進入するのを軽減するか実質的に防止することを特徴とする請求項8または9に記載のスプレーノズル。
【請求項11】
請求項10に記載のスプレーノズルとともに使用するように構成された分配ノズルであって、
前記スプレーノズルの端部と結合するように構成された端部を前記分配端に有しており、前記端部同士が結合したとき、分配された材料が前記端部の間に進入するのを軽減するか実質的に防止することを特徴とする分配ノズル。
【請求項12】
請求項8ないし10のいずれかに記載のスプレーノズルと、請求項11に記載の分配ノズルとを備える部品キット。
【請求項13】
請求項1ないし7のいずれかに記載のディスペンサーを含む、請求項12に記載の部品キット。
【請求項14】
請求項1ないし7のいずれかに記載のディスペンサーと結合するように構成されたフロントキャップであって、前記流体供給装置と、該フロントキャップに固定された前記第2部材とを備えることを特徴とするフロントキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−130913(P2012−130913A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283327(P2011−283327)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(505298629)ピー.シー.コックス リミティド (5)
【Fターム(参考)】