説明

ディテント機構および自動変速機

【課題】ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動する場合に、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができ、ディテントプレートや本体ケースを保護することができるディテント機構および自動変速機を提供すること。
【解決手段】ディテントプレート14に、ディテントプレート14の揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部23a、23bを有する貫通孔23を形成するとともに、ディテントプレート14が揺動範囲を超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに係合部23a、23bに係合して弾性力を発生する捩じりコイルバネ24を設け、捩じりコイルバネ24を、貫通孔23に摺動自在に設けられた一端部24aと、バルブケース25に固定された他端部24bと、捩じりコイルバネ24の一端部24aと他端部24bの間に設けられ、ディテントプレート14のコントロールロッド18に巻回される巻回部24cとを含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディテント機構および自動変速機に関し、特に、自動変速機の変速操作を行うディテントプレートが揺動方向にオーバーストロークするときの衝撃を緩和するようにしたディテント機構および自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の自動変速機、あるいは原動機として内燃機関と電気モータを併有するハイブリッド車両用の自動変速機においては、シフトレバー若しくはシフトスイッチの操作を電気的に検出し、シフト切換手段を電気的に制御可能なアクチュエータで制御する、所謂、シフトバイワイヤ制御方式を採用して、機械的な操作リンケージを電気的な操作系に置き換えることでシフト操作部の操作方法や配置の自由度を高めたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシフトバイワイヤにあっては、自動変速を行うシフトレンジ切換弁を備えており、このシフトレンジ切換弁を運転者のシフト操作により、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ等の各種シフトレンジにストロークさせることで、油圧の供給状態が所望の状態に変化し、車両の駐停車や所定の走行形態を達成することができる。
【0004】
この種のシフトバイワイヤは、アクチュエータの駆動により揺動自在にディテントプレートと、ディテントプレートに取付けられ、ディテントプレートの揺動位置に応じて上述したパーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ等の各種シフトレンジにストロークするシフトレンジ切換弁とを備えており、ディテントプレートは、アクチュエータによってシフトレンジの範囲内で揺動するようになっている。
【0005】
すなわち、ディテントプレートの揺動方向一方側がパーキングレンジで、揺動方向他方側がドライブレンジに位置する場合に、パーキングレンジとドライブレンジの間の揺動位置にリバースレンジおよびニュートラルレンジが位置しているため、ディテントプレートは、ドライブレンジとパーキングレンジの間を揺動するように揺動範囲が設定される。
【0006】
また、シフトレバーがパーキングレンジに操作されたときに原動機から駆動輪への動力伝達経路中のいずれかの回転部材を機械的に固定するパーキングロック機構が設けられており、このパーキングロック機構は、ディテントプレートに連動して操作されるようになっている。
【0007】
このパーキングロック機構としては、原動機から駆動輪への動力伝達経路中のいずれかの回転部材に係合および離脱し、シフト操作によってパーキングレンジが選択されたときに、回転部材に係合して回転部材を固定する揺動式のロック爪と、ロック爪を揺動操作する直動カムと、一端部が直動カムに連結されるとともに他端部がディテント機構に連結され、ディテント機構がパーキングレンジと非パーキングレンジとの間で揺動するのに応じて直動カムを進退動させるパーキングロッドとを備えており、アクチュエータによってディテント機構を揺動することにより、パーキングロッドを介してロック爪を揺動させるようになっている。
【0008】
ところで、アクチュエータから何らかの原因でディテントプレートに過大なトルクが加わる等して、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動した場合には、ディテントプレートがドライブレンジやパーキングレンジと異なる揺動位置となってしまい、シフトの切換えを正常に行うことができなくなるおそれがあるとともに、パーキングロック機構に過大なトルクが加わってパーキングロック機構が損傷してしまう可能性があるため、ディテントプレートが揺動範囲を超えないようにする必要がある。
【0009】
従来、ディテントプレートの揺動を規制するものとしては、シフトレバーと連動し、端部に複数の切欠きを有するディテントプレートと、ディテントプレートの切欠きに嵌合し、ディテントプレートの揺動位置を保持するディテントスプリングと、本体ケースとしての変速機ケースに設けられ、ディテントプレートと当接することにより、ディテントプレートの両方向の揺動範囲を規制するストッパ部とを備えた自動変速機におけるディテント機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
このディテント機構にあっては、アクチュエータから何らかの原因でディテントプレートに過大なトルクが加わる等してディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動した場合に、ディテントプレートがストッパ部に衝突することにより、ディテントプレートの揺動を規制することができる。
【0011】
このため、シフトの切換えを正常に行うことができなくなるのを防止することができるとともに、パーキングロック機構に過大なトルクが加わるのを防止して、パーキングロック機構を保護することができる。
【特許文献1】特開2001−271925号公報
【特許文献2】特開2006−260435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来のディテント機構にあっては、ディテントプレートが揺動範囲を超えたときに、ディテントプレートをストッパ部に衝突させるようにしているため、ディテントプレートの衝撃荷重によってディテントプレートや変速機ケースを損傷させてしまうおそれがあった。
【0013】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動する場合に、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができ、ディテントプレートや本体ケースを保護することができるディテント機構および自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るディテント機構は、上記目的を達成するため、(1)操作手段の操作に連動して揺動自在に設けられ、揺動位置に応じて複数のシフトレンジを選択するディテントプレートと、前記ディテントプレートの外周部に設けられた切欠き部に嵌合し、シフトレンジに応じた前記ディテントプレートの揺動位置を保持するディテントスプリングと、前記ディテントプレートを揺動自在に支持する本体ケースとを備えたディテント機構において、前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に設けられるとともに、前記ディテントプレートの揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部を有する揺動範囲設定手段と、一端部が前記揺動範囲設定手段に摺動自在に設けられるとともに、他端部が前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか他方に設けられ、前記ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに前記揺動範囲設定手段の係合部に係合して弾性力を発生するダンパー部材とを備えたものから構成されている。
【0015】
この構成により、操作手段の操作に連動した揺動範囲でディテントプレートが揺動するときには、ダンパー部材の一端部を揺動範囲設定手段の範囲内に位置させることができ、ディテントプレートをスムーズにさせることができる。
【0016】
また、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材の一端部が揺動範囲設定手段の延在方向一端部または他端部に設けられた係合部に係合し、ダンパー部材の弾性力が発生するので、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0017】
このため、ディテントプレートが本体ケースに衝突した場合に、ディテントプレートや本体ケースに強い衝撃が加わるのを防止することができ、ディテントプレートや本体ケースを保護することができる。
【0018】
上記(1)に記載のディテント機構において、(2)前記操作手段が、運転者が選択したシフトレンジに応じて動作することにより、前記ディテントプレートを揺動させるアクチュエータを有するものから構成されている。
【0019】
この構成により、アクチュエータに何らかの理由によって異常が発生したときに、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動した場合に、ダンパー部材の一端部が揺動範囲設定手段の延在方向一端部または他端部に設けられた係合部に係合し、ダンパー部材の弾性力が発生するので、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0020】
上記(1)または(2)に記載のディテント機構において、(3)前記ディテントプレートに設けられた複数の切欠き部が、複数のシフトレンジの各シフトレンジに対応し、前記ディテントスプリングが、前記ディテントプレートの揺動範囲内において各シフトレンジに対応する切欠き部に嵌合するものから構成されている。
【0021】
この構成により、操作手段の操作に連動した揺動範囲でディテントプレートが揺動するときには、ディテントプレートに形成された各シフトレンジに対応する切欠き部にディテントスプリングが嵌合するので、ディテントプレートの揺動範囲内においてディテントプレートの揺動位置に応じたシフトレンジを確実に選択することができる。
【0022】
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のディテント機構において、(4)前記揺動範囲設定手段が、前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に前記ディテントプレートの揺動方向に沿って延在して設けられ、前記ダンパー部材の一端部が挿通される貫通孔を有し、前記係合部が前記貫通孔の延在方向両端部からなるものから構成されている。
【0023】
この構成により、操作手段の操作に連動した揺動範囲でディテントプレートが揺動するときには、ダンパー部材の一端部がディテントプレートまたは本体ケースに形成された貫通孔に沿って移動する。
【0024】
また、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材の一端部が貫通孔の延在方向一端部または他端部に係合してダンパー部材の弾性力を発生させることができるため、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0025】
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のディテント機構において、(5)前記揺動範囲設定手段が、前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に前記ディテントプレートの揺動方向に沿って延在して設けられ、前記ダンパー部材の一端部を取り囲むレール状の突起からなり、前記係合部が前記レール状の突起の延在方向両端部からなるものから構成されている。
【0026】
この構成により、操作手段の操作に連動した揺動範囲でディテントプレートが揺動するときには、ダンパー部材の一端部がディテントプレートまたは本体ケースに形成されたレール状の突起に沿って移動する。
【0027】
また、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材の一端部がレール状の突起の延在方向一端部または他端部に係合してダンパー部材の弾性力を発生させることができるため、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0028】
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のディテント機構において、(6)前記本体ケースが、前記ディテントプレートの揺動範囲の一方向側または他方向側に対向して設けられ、前記ディテントプレートに当接することによって前記ディテントプレートの一方向および他方向の揺動を規制するストッパ部を有し、前記ストッパ部は、前記ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動し、前記ダンパー部材が前記揺動範囲設定手段の係合部に係合して弾性力を発生した後に、前記ディテントプレートが当接するものから構成されている。
【0029】
この構成により、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材の一端部が揺動範囲設定手段の延在方向一端部または他端部に設けられた係合部に係合し、ダンパー部材の弾性力が発生するので、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。次いで、ディテントプレートがさらに揺動すると、ディテントプレートがストッパ部に当接してディテントプレートの揺動が規制される。
【0030】
そして、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材によってディテントプレートの揺動速度を小さくすることができるため、ディテントプレートがストッパ部に当接する際の衝撃を小さくすることができ、ディテントプレートおよび本体ケースを保護することができる。
【0031】
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のディテント機構において、前記ダンパー部材が捩じりコイルバネを有し、前記捩じりコイルバネは、前記揺動範囲設定手段に摺動自在に設けられた一端部と、ディテントプレートまたは本体ケースに固定された他端部と、前記捩じりコイルバネの一端部と他端部の間に設けられ、前記ディテントプレートの揺動軸に巻回される巻回部とを有するものから構成されている。
【0032】
この構成により、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、捩じりコイルバネの一端部が揺動範囲設定手段の延在方向一端部または他端部に設けられた係合部に係合し、捩じりコイルバネの弾性力を発生させることができるため、簡単、かつ安価な構成によってディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0033】
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のディテント機構を有する自動変速機であって、(8)車両の原動機から駆動輪側に動力を伝達する動力伝達経路中に複数の回転部材と、
前記ディテントプレートと前記動力伝達経路中の回転部材の間に介装され、前記操作手段の操作に連動して前記ディテントプレートがパーキングレンジに揺動されたときに、前記動力伝達経路中の回転部材を機械的に固定し、前記操作手段の操作に連動して前記ディテントプレートが非パーキングレンジに揺動されたときに、前記回転部材の固定を機械的に解除するパーキングロック機構を備えたものから構成されている。
【0034】
この構成により、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動するときには、ダンパー部材の一端部が揺動範囲設定手段の延在方向一端部または他端部に設けられた係合部に係合し、ダンパー部材の弾性力が発生するので、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができる。
【0035】
このとき、ディテントプレートに加わる衝撃を小さくすることができるため、ディテントプレートがパーキングレンジに揺動したときに、ディテントプレートからパーキングロック機構に衝撃が加わるのを防止することができる。この結果、パーキングロック機構が回転部材に強く係合するのを防止することができ、パーキングロック機構および回転部材を保護することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動する場合に、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができ、ディテントプレートや本体ケースを保護することができるディテント機構および自動変速機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係るディテント機構および自動変速機の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1〜図8は、本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図である。
【0039】
まず、構成を説明する。
図1において、シフトレンジ切換装置は、運転者が図示しないシフトレバーを操作することにより、自動変速機10のシフトレンジを選択・指令するための操作部1と、自動変速機10のシフトレンジの切換状態を表示するための表示部2と、自動変速機10に組み込まれてシフトレンジを切換えるためのシフトレンジ切換機構3と、シフトレンジ切換機構3を駆動する操作手段としてのアクチュエータ4と、このアクチュエータ4を駆動する駆動回路5と、アクチュエータ4の出力軸に設置されてその回転角度を検出する回転角センサ6と、操作部1から入力されるシフトレンジの切換指令および回転角センサ6からの検出信号を受けて、自動変速機10のシフトレンジが切換指令に対応した走行レンジとなるように駆動回路5を介してアクチュエータ4を駆動し、シフトレンジ切換機構3を動作させる制御回路7と、何らかの原因によってアクチュエータ4に異常が発生してアクチュエータ4の動作不能時、すなわち、アクチュエータ4の出力軸がロックしたときに運転者が手動で直接シフトレンジ切換機構3を動作させ、シフトレンジを切換えるための補助切換レバー8とを含んで構成されている。
【0040】
また、制御回路7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータから構成されており、アクチュエータ4を駆動して自動変速機10のシフトレンジを切換えるシフトレンジ切換制御に加えて、表示部2にシフトレンジの切換状態を表示するシフトレンジ表示制御を実行する。
【0041】
シフトレンジ切換機構3は、ディテント機構を構成しており、自動変速機10のシフトレンジを、パーキングレンジ(P)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ドライブレンジ(D)の各走行レンジに順に切換えるためのものである。
【0042】
図2において、シフトレンジ切換機構3は、自動変速機10内の図示しない摩擦係合装置の係合および解放を、各走行レンジの切換状態に応じて切換制御するためのレンジ切換弁11およびマニュアルバルブ12と、各レンジを保持するためのディテントスプリング13およびディテントプレート14と、シフトレンジがパーキングレンジに切換えられたときに、自動変速機10の図示しない出力軸に設けられたパーキングギヤ15にパーキングポール16を嵌合させて、出力軸の回転を停止させるパーキングロッド17と、補助切換レバー8と、ディテントプレート14および補助切換レバー8が固定されたコントロールロッド18とから構成されている。
【0043】
ディテントプレート14は、外周上端部に複数の切欠き部14a〜14dが形成されており、切欠き部14aはパーキングレンジに、切欠き部14bはリバースレンジに、切欠き部14cはニュートラルレンジに、切欠き部14dはドライブレンジにそれぞれ対応している(図4参照)。
【0044】
このシフトレンジ切換機構3は、コントロールロッド18の回転により、ディテントプレート14をコントロールロッド18の軸周りに揺動させて、ディテントプレート14に連結されたレンジ切換弁11およびパーキングロッド17を、各シフトレンジに対応した切換位置に制御するものであり、本実施の形態では、このシフトレンジの切換を電動で行うために、コントロールロッド18にアクチュエータ4の出力軸(ACT出力軸21)を直結している。すなわち、本実施の形態のシフトレンジ切換機構3は、所謂、シフトバイワイヤ方式である。
【0045】
また、コントロールロッド18に取付けられた補助切換レバー8は、運転者が運転中にその先端部を操作して、手動でコントロールロッド18を回すことができるように設置されており、この補助切換レバー8は、通常は使用しないが、ACT出力軸21がロックしたとき、手動でシフトチェンジする際に用いるものである。
【0046】
図3は、アクチュエータ4の概略を示す図である。図3において、アクチュエータ4は、動力発生源としてのモータ19と、モータ19の出力回転軸19aに直結され、モータ19の回転速度を所定の減速比にて減速する減速機構20と、減速機構20の出力回転軸20aに直結され、コントロールロッド18の先端部を嵌合するための嵌合穴21aが形成されたACT出力軸21とから構成されている。
【0047】
なお、モータ19は、所謂ブラシレスDCモータであり、駆動回路5からモータ19のステータを構成する図示しない3相巻線への通電電流を制御回路7によって制御することにより、双方向に回転することができるとともに、所望の回転位置で停止させることができるようになっている。
【0048】
また、ACT出力軸21には回転角センサ6が取付けられており、コントロールロッド18の先端が嵌合穴21aに嵌合されることにより、ACT出力軸21とコントロールロッド18とが直結されている。
【0049】
また、シフトレンジの切換は、コントロールロッド18を介してディテントプレート14が揺動することにより行われるようになっており、コントロールロッド18の回転角度、すなわち、ディテントプレート14の揺動位置に応じて、各種シフトレンジに切換わるようになっている。
【0050】
具体的には、シフトレンジを切換えるためのACT出力軸21の回転を、操作部1から入力される切換指令に基づいて、制御回路7が駆動回路5を介してモータ19を回転制御することにより行う。
【0051】
制御回路7は、操作部1からシフトレンジの切換指令が入力されると、駆動回路5をPWM制御することにより、モータ19に流れる電流を制御し、ACT出力軸21の回転を、コントロールロッド18を介してディテントプレート14が所望のシフトレンジに対応した揺動位置にまで揺動するように制御する。
【0052】
ディテントスプリング13は、基端部がボルト26によって変速機ケース22の一部を構成するマニュアルバルブ12のバルブケース25に保持されており、先端部の嵌合部13aが切欠き部14a〜14dのいずれかに嵌合するようになっている。
【0053】
そして、制御回路7によってディテントプレート14が所望のシフトレンジに対応した揺動位置まで揺動するように制御されると、ディテントスプリング13が、シフトレンジに対応したディテントプレート14の切欠き部14a〜14dのいずれかに嵌合することにより、ディテントプレート14をシフトレンジに応じた揺動位置に保持するようになっている。
【0054】
また、パーキングロック機構は、ディテントプレート14とパーキングギヤ15の間に介装されたパーキングポール16およびパーキングロッド17から構成されている。回転部材としてのパーキングギヤ15は、車両の原動機であるエンジンから駆動輪側に動力を伝達する自動変速機10の動力伝達経路中に設けられた複数の回転部材のうちの出力軸に設けられており、このパーキングギヤ15にパーキングポール16の突起部16aが嵌合することにより、パーキングギヤ15が機械的に固定、すなわち、ロックされる。
【0055】
このパーキングポール16は、パーキングロッド17の端部に設けられた直動カム17aの進退に応じて突起部16aをパーキングギヤ15に係合する係合位置と突起部16aをパーキングギヤ15から離隔する離隔位置との間で揺動するようになっており、直動カム17aは、パーキングロッド17の他端部が固定されたディテントプレート14の揺動に応じて進退する。
【0056】
すなわち、ディテントプレート14は、アクチュエータ4によってパーキングレンジに揺動されたときに、直動カム17aによってパーキングポール16を係合位置に揺動させて突起部16aをパーキングギヤ15に係合することにより、パーキングギヤ15をロックし、アクチュエータ4によって非パーキングレンジ(パーキングレンジ以外のシフトレンジ)に揺動されたときに、直動カム17aによってパーキングポール16を離隔位置に揺動させて突起部16aをパーキングギヤ15から離隔させることにより、パーキングギヤ15のロックを解除する。
【0057】
一方、図4に示すように、ディテントプレート14は、コントロールロッド18を介して本体ケースとしての変速機ケースに揺動自在に設けられており、ディテントプレート14にはディテントプレート14の揺動方向に沿って揺動範囲設定手段としての貫通孔23が形成されている。
【0058】
この貫通孔23にはダンパー部材を構成する捩じりコイルバネ24の一端部24aが摺動自在に挿通されており、この捩じりコイルバネ24の他端部24bは、バルブケース25に固定されている。
【0059】
また、一端部24aと他端部24bの間の捩じりコイルバネ24部分、すなわち、捩じりコイルバネ24の中央部は、揺動軸としてのコントロールロッド18の外周部に巻回されて巻回部24cを構成しており、捩じりコイルバネ24の一端部24aはばね力を有している。
【0060】
また、貫通孔23の延在方向両端部は係合部23a、23bを構成しており、ディテントプレート14が揺動範囲を超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに、捩じりコイルバネ24の一端部が係合部23aまたは係合部23bに係合して弾性力を発生するようになっている。
【0061】
したがって、本実施の形態の貫通孔23は、ディテントプレート14の揺動範囲S内に位置するように延在しており、ディテントスプリング13の嵌合部13aは、ディテントプレート14の揺動範囲S内において、各シフトレンジに対応するディテントプレート14の切欠き部14a〜14dに嵌合することになる。すなわち、図4に示すように、ディテントプレート14の揺動範囲Sは、パーキングレンジ(P)からドライブレンジ(D)までの範囲に設定されている。
【0062】
また、変速機ケース22およびバルブケース25には、それぞれストッパ部22a、25aが形成されており、このストッパ部22a、25aは、ディテントプレート14の揺動範囲の一方向側または他方向側に対向して設けられている。
【0063】
このストッパ部22a、25aは、ディテントプレート14が揺動範囲を超えて揺動したときにディテントプレート14が係合することにより、ディテントプレート14の揺動を規制するようにしている。
【0064】
次に、作用を説明する。
運転者によりシフトレンジ切換操作が行われると、例えば、操作部1によってパーキングレンジ、ニュートラルまたはドライブレンジからパーキングレンジに切換える旨の切換指令が制御回路7に入力される。制御回路7では、この切換指令に基づいてパーキングレンジに切換えるために必要なACT出力軸21の回転方向および角度を設定する。
【0065】
次いで、制御回路7は、駆動回路5に切換指令信号を出力すると、駆動回路5は、アクチュエータ4を駆動して、コントロールロッド18を回動させることにより、ディテントプレート14を揺動させる。
【0066】
このとき、図5に示すように、ディテントプレート14の切欠き部14dにディテントスプリング13の嵌合部13aが嵌合する位置までディテントプレート14を揺動させることにより、ディテントスプリング13によってディテントプレート14をパーキングレンジに対応する揺動位置に保持する。
【0067】
このとき、レンジ切換弁11がディテントプレート14によって軸線方向に移動するため、マニュアルバルブ12によってパーキングレンジに対応する位置に変速されるように、自動変速機10の公知の変速制御が行われる。
【0068】
また、ディテントプレート14がパーキングレンジに揺動するのに伴ってパーキングロッド17を介して直動カム17aが前進するため、パーキングポール16の突起部16aがパーキングギヤ15に係合することにより、パーキングギヤ15がロックされる。
【0069】
ここで、ディテントプレート14が正常な揺動範囲S内、すなわち、パーキングレンジとドライブレンジの間の揺動範囲S内で揺動する場合には、捩じりコイルバネ24の一端部24aが貫通孔23の係合部23a、23bに係合しないようにディテントプレート14が揺動する。
【0070】
ところが、何らかの理由によってアクチュエータ4に異常が発生することにより、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するような事態が発生し、ディテントプレート14がパーキングレンジ方向の揺動範囲Sを超えて揺動した場合には、捩じりコイルバネ24の一端部24aが係合部23bに係合することにより、捩じりコイルバネ24の弾性力が発生し、ディテントプレート14の揺動速度が小さくなる。
【0071】
そして、図7に示すように、ディテントプレート14は、捩じりコイルバネ24によって付勢された状態でバルブケース25のストッパ部25aに当接することにより、揺動が規制される。このとき、ディテントプレート14の揺動速度が小さいため、ディテントプレート14がストッパ部25aに当接するときの衝撃も非常に小さいものとなる。
【0072】
また、ディテントプレート14がストッパ部25aに当接した状態では、ディテントスプリング13の嵌合部13aが切欠き部14aからストッパ部25a側に向かって僅かに乗り上げた状態となるため、マニュアルバルブ12によってパーキングレンジとなるような油圧制御が実行されるとともに、直動カム17aによってパーキングポール16が係合位置に回動されて突起部16aがパーキングギヤ15に係合されることにより、パーキングギヤ15がロックされる。
【0073】
一方、運転者によりシフトレンジ切換操作が行われることにより、例えば、操作部1によってパーキングレンジからドライブレンジに切換える旨の切換指令が制御回路7に入力されると、制御回路7は、この切換指令に基づいてドライブレンジに切換えるために必要なACT出力軸21の回転方向および角度を設定する。
【0074】
次いで、制御回路7は、駆動回路5に切換指令信号を出力すると、駆動回路5は、アクチュエータ4を駆動して、コントロールロッド18を回動させることにより、ディテントプレート14を揺動させる。
【0075】
このとき、図6に示すように、ディテントプレート14の切欠き部14aにディテントスプリング13の嵌合部13aが嵌合する位置までディテントプレート14を揺動させることにより、ディテントスプリング13によってディテントプレート14をドライブレンジに対応する揺動位置に保持する。
【0076】
このとき、レンジ切換弁11がディテントプレート14によって軸線方向に移動するため、マニュアルバルブ12によってドライブレンジに対応する位置に変速されるように、自動変速機10の公知の変速制御が行われる。
【0077】
また、ディテントプレート14がドライブレンジに揺動するのに伴ってパーキングロッド17を介して直動カム17aが後退するため、パーキングポール16の突起部16aがパーキングギヤ15から離隔することにより、パーキングギヤ15のロックが解除される。
【0078】
ここで、ディテントプレート14が正常な揺動範囲S内、すなわち、パーキングレンジとドライブレンジの間の揺動範囲S内で揺動する場合には、捩じりコイルバネ24の一端部24aが貫通孔23の係合部23a、23bに係合しないようにディテントプレート14が揺動する。
【0079】
ところが、何らかの理由によってアクチュエータ4に異常が発生することにより、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するような事態が発生し、ディテントプレート14がパーキングレンジ方向の揺動範囲Sを超えて揺動した場合には、図8に示すように、捩じりコイルバネ24の一端部24aが係合部23bに係合することにより、捩じりコイルバネ24の弾性力が発生し、ディテントプレート14の揺動速度が小さくなる。
【0080】
そして、ディテントプレート14は、捩じりコイルバネ24によって付勢された状態で変速機ケース22のストッパ部22aに当接することにより、揺動が規制される。このとき、ディテントプレート14の揺動速度が小さいため、ディテントプレート14がストッパ部22aに当接するときの衝撃も非常に小さいものとなる。
【0081】
また、ディテントプレート14がストッパ部22aに当接した状態では、ディテントスプリング13の嵌合部13aが切欠き部14aからストッパ部22a側に向かって僅かに乗り上げた状態となるため、マニュアルバルブ12によってドライブレンジレンジとなるような油圧制御が実行される。
【0082】
このように本実施の形態では、ディテントプレート14に、ディテントプレート14の揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部23a、23bを有する貫通孔23を形成するとともに、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに係合部23a、23bに係合して弾性力を発生する捩じりコイルバネ24を設け、この捩じりコイルバネ24を、貫通孔23に摺動自在に設けられた一端部24aと、バルブケース25に固定された他端部24bと、捩じりコイルバネ24の一端部24aと他端部24bの間に設けられ、ディテントプレート14のコントロールロッド18に巻回される巻回部24cとを含んで構成したので、アクチュエータ4の操作に連動した揺動範囲でディテントプレート14が揺動するときには、捩じりコイルバネ24の一端部24aを貫通孔23の延在方向範囲内に位置させることができ、ディテントプレート14をスムーズにさせることができる。
【0083】
また、ディテントプレート14が揺動範囲を超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ24の一端部24aが貫通孔23の係合部23aまたは係合部23bに係合することにより、捩じりコイルバネ24の弾性力を発生させることができるので、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0084】
そして、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ24の付勢力によってディテントプレート14の揺動速度を小さくすることができるため、ディテントプレート14がストッパ部22aまたはストッパ部25aに当接する際の衝撃を小さくすることができる。この結果、ディテントプレート14、変速機ケース22およびバルブケース25を保護することができる。
特に、本実施の形態の変速制御は、アクチュエータ4によってディテントプレート14を揺動させることにより、シフトレンジが選択されるシフトバイワイヤ方式となっているため、アクチュエータ4に何らかの理由によって異常が発生したときに、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動した場合に、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、ダンパー部材として捩じりコイルバネ24を用いているので、簡単、かつ安価な構成によってディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、ディテントプレート14の外周端部に設けられた複数の切欠き部14a〜14dが、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジのそれぞれに対応し、ディテントスプリング13の嵌合部13aが、ディテントプレート14の揺動範囲S内において各シフトレンジに対応する切欠き部14a〜14dに嵌合するので、ディテントプレート14の揺動範囲S内においてディテントプレート14の揺動位置に応じたシフトレンジを確実に選択することができる。
【0087】
また、本実施の形態では、ディテントプレート14と自動変速機10の動力伝達経路中のパーキングギヤ15の間に介装され、アクチュエータ4によってディテントプレート14がパーキングレンジに揺動されたときに、動力伝達経路中のパーキングギヤ15を機械的に固定し、アクチュエータ4によってディテントプレート14が非パーキングレンジに揺動されたときに、パーキングギヤ15の固定を機械的に解除するパーキングロック機構を有し、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときにディテントプレート14に加わる衝撃を小さくすることができるため、ディテントプレート14がパーキングレンジに揺動したときに、ディテントプレート14からパーキングロック機構に衝撃が加わるのを防止することができる。
【0088】
このため、パーキングロック機構のパーキングポール16の係合部16aがパーキングギヤ15に強く係合するのを防止することができ、パーキングポール16およびパーキングギヤ15を保護することができる。
【0089】
(第2の実施の形態)
図9、図10は、本発明に係るディテント機構および自動変速機の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図9、図10において、ディテントプレート14には、ディテントプレート14の揺動方向に沿って揺動範囲設定手段としてのレール状の突起31が形成されており、この突起31は、捩じりコイルバネ24の一端部24aを取り囲むようになっている。
【0090】
また、本実施の形態の突起31は、ディテントプレート14の揺動範囲S内に位置するように延在しており、ディテントスプリング13の嵌合部13aは、ディテントプレート14の揺動範囲S内において、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジに対応するディテントプレート14の切欠き部14a〜14dに嵌合することになる。
【0091】
また、突起31の両端部は係合部31a、31bを構成しており、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに、捩じりコイルバネ24の一端部が係合部31aまたは係合部31bに係合して弾性力を発生するようになっている。
【0092】
本実施の形態にあっては、ディテントプレート14に、ディテントプレート14の揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部31a、31bを有する突起31を形成し、この突起31によって捩じりコイルバネ24の一端部24aを取り囲むようにしたので、アクチュエータ4の操作に連動した揺動範囲Sでディテントプレート14が揺動するときには、捩じりコイルバネ24の一端部24aを突起31の延在方向範囲内に位置させることができ、ディテントプレート14をスムーズにさせることができる。
【0093】
また、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ24の一端部24aが突起31の係合部31aまたは係合部31bに係合することにより、捩じりコイルバネ24の弾性力を発生させることができるので、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0094】
この結果、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ24の付勢力によってディテントプレート14の揺動速度を小さくすることができ、ディテントプレート14がストッパ部22aまたはストッパ部25aに当接する際の衝撃を小さくすることができる。この結果、ディテントプレート14、変速機ケース22およびバルブケース25を保護することができる。また、その他の作用効果としては第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0095】
(第3の実施の形態)
図11は、本発明に係るディテント機構および自動変速機の第3の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図11において、バルブケース25には、ディテントプレート14の揺動方向に沿って揺動範囲設定手段としての貫通孔36が形成されている。この貫通孔36にはダンパー部材を構成する捩じりコイルバネ37の一端部37aが摺動自在に挿通されており、この捩じりコイルバネ37の他端部37bは、ディテントプレート14に固定されている。
【0096】
また、一端部37aと他端部37bの間の捩じりコイルバネ37部分、すなわち、捩じりコイルバネ37の中央部は、コントロールロッド18に巻回されて巻回部37cを構成しており、捩じりコイルバネ37の一端部37aはばね力を有している。
【0097】
また、貫通孔36の延在方向両端部は係合部36a、36bを構成しており、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに、捩じりコイルバネ37の一端部が係合部36aまたは係合部36bに係合して弾性力を発生するようになっている。
【0098】
したがって、本実施の形態の貫通孔36は、ディテントプレート14の揺動範囲S内に位置するような長さ、すなわち、揺動範囲S1に亘って延在しており、ディテントスプリング13の嵌合部13aは、ディテントプレート14の揺動範囲S内において、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジに対応するディテントプレート14の切欠き部14a〜14dに嵌合することになる。
【0099】
本実施の形態にあっては、バルブケース25に、ディテントプレート14の揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部36a、36bを有する貫通孔36を形成したので、アクチュエータ4の操作に連動した揺動範囲Sでディテントプレート14が揺動するときには、捩じりコイルバネ37の一端部37aを貫通孔36の延在方向範囲内に位置させることができ、ディテントプレート14をスムーズにさせることができる。
【0100】
また、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ37の一端部37aが貫通孔36の係合部36aまたは係合部36bに係合することにより、捩じりコイルバネ37の弾性力を発生させることができるので、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0101】
この結果、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ37の付勢力によってディテントプレート14の揺動速度を小さくすることができ、ディテントプレート14がストッパ部22aまたはストッパ部25aに当接する際の衝撃を小さくすることができる。この結果、ディテントプレート14、変速機ケース22およびバルブケース25を保護することができる。
【0102】
また、その他の作用効果としては第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施の形態では、貫通孔36をバルブケース25に設けているが、変速機ケース22に設けるようにしてもよい。
【0103】
(第4の実施の形態)
図12、図13は、本発明に係るディテント機構および自動変速機の第4の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図12、図13において、バルブケース25には、ディテントプレート14の揺動方向に沿って揺動範囲設定手段としてのレール状の突起41が形成されており、この突起41は、捩じりコイルバネ42の一端部42aを取り囲むようになっている。
【0104】
捩じりコイルバネ42の他端部42bは、ディテントプレート14に固定されており、一端部42aと他端部42bの間の捩じりコイルバネ42部分、すなわち、捩じりコイルバネ42の中央部は、コントロールロッド18に巻回されて巻回部37cを構成し、捩じりコイルバネ37の一端部37aはばね力を有している。
【0105】
また、本実施の形態の突起41は、ディテントプレート14の揺動範囲S内に位置するような長さ、すなわち、揺動範囲S1に亘って延在しており、ディテントスプリング13の嵌合部13aは、ディテントプレート14の揺動範囲S内において、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジに対応するディテントプレート14の切欠き部14a〜14dに嵌合することになる。
【0106】
また、突起41の両端部は係合部41a、41bを構成しており、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに、捩じりコイルバネ42の一端部が係合部41aまたは係合部41bに係合して弾性力を発生するようになっている。
【0107】
本実施の形態にあっては、バルブケース25に、ディテントプレート14の揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部41a、41bを有する突起41を形成し、この突起41によって捩じりコイルバネ42の一端部42aを取り囲むようにしたので、アクチュエータ4の操作に連動した揺動範囲Sでディテントプレート14が揺動するときには、捩じりコイルバネ42の一端部42aを突起41の延在方向範囲内に位置させることができ、ディテントプレート14をスムーズにさせることができる。
【0108】
また、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ42の一端部42aが突起41の係合部41aまたは係合部41bに係合することにより、捩じりコイルバネ42の弾性力を発生させることができるので、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0109】
この結果、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、捩じりコイルバネ42の付勢力によってディテントプレート14の揺動速度を小さくすることができ、ディテントプレート14がストッパ部22aまたはストッパ部25aに当接する際の衝撃を小さくすることができる。この結果、ディテントプレート14、変速機ケース22およびバルブケース25を保護することができる。
【0110】
また、その他の作用効果としては第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施の形態では、突起41をバルブケース25に設けているが、変速機ケース22に設けるようにしてもよい。
【0111】
(第5の実施の形態)
図14は、本発明に係るディテント機構および自動変速機の第5の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。なお、第1〜第4の実施の形態では、変速機ケース22の一部を示しているが、この変速機ケース22は、シフトレンジ切換機構3を覆うようにして設けられている。
【0112】
図14において、ディテントプレート14に対向する変速機ケース22の側壁には突出部22bが設けられており、この突出部22bには、ダンパー部材としての棒バネ45(破線で示す)の基端部(他端部)が取付けられており、この棒バネ45の先端部(一端部)には樹脂や金属等から構成されるピン45aが設けられている。
なお、突出部22bが設けられている理由は、変速機ケース22とディテントプレート14の間に距離がある場合に、その距離を縮めるためである。また、本体ケース22の側壁は、図1のディテントプレートに対して手前側に設けられているものであり、ディテントプレート14の動作については、図1を用いて説明を行う。
【0113】
この棒バネ45は、ディテントプレート14の揺動範囲S内において係合部23a、23bに係合しないようになっており、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに、棒バネ45のピン45aが係合部23aまたは係合部23bに係合することにより、棒バネ45が弾性力を発生するようになっている。
本実施の形態にあっては、アクチュエータ4の操作に連動した揺動範囲でディテントプレート14が揺動するときには、棒バネ45のピン45aを貫通孔23の延在方向範囲内に位置させることができ、ディテントプレート14の揺動をスムーズにさせることができる。
【0114】
また、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、棒バネ45のピン45aが貫通孔23の係合部23aまたは係合部23bに係合することにより、棒バネ45の弾性力を発生させることができるので、ディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0115】
この結果、ディテントプレート14が揺動範囲Sを超えて揺動するときには、棒ばね45の付勢力によってディテントプレート14の揺動速度を小さくすることができ、ディテントプレート14がストッパ部22aまたはストッパ部25aに当接する際の衝撃を小さくすることができる。この結果、ディテントプレート14、変速機ケース22およびバルブケース25を保護することができる。
【0116】
また、その他の作用効果としては第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができることに加えて、本実施の形態では、ダンパー部材を棒バネ45から構成しているので、より簡単、かつより安価な構成によってディテントプレート14に加わる衝撃を軽減することができる。
【0117】
なお、上記各実施の形態では、ディテント機構をシフトバイワイヤ方式の自動変速機に適用しているが、これに限らず、シフトレバーとディテントプレート14とをワイヤケーブルで接続した自動変速機に適用してもよい。
この自動変速機にディテント機構を適用したものにあっては、パーキングレンジやドライブレンジにシフト操作が行われる際に、運転者によってシフトレバーからワイヤテーブルを介してディテントプレート14に過大な負荷が加えられる場合に、ディテントプレート14に加わる衝撃を緩和することができ、上記各実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0118】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0119】
以上のように、本発明に係るディテント機構および自動変速機は、ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動する場合に、ディテントプレートに加わる衝撃を軽減することができ、ディテントプレートや本体ケースを保護することができるという効果を有し、自動変速機の変速操作を行うディテントプレートが揺動方向にオーバーストロークするときの衝撃を緩和するようにしたディテント機構および自動変速機等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、自動変速機のシフトレンジ切換装置の全体構成図である。
【図2】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテント機構の概略構成図である。
【図3】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、アクチュエータの概略構成図である。
【図4】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートの正面図である。
【図5】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートがパーキングレンジに揺動した状態を示す図である。
【図6】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートがドライブレンジに揺動した状態を示す図である。
【図7】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートがパーキングレンジを超えてストッパ部に当接した状態を示す図である。
【図8】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第1の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートがドライブレンジを超えてストッパ部に当接した状態を示す図である。
【図9】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第2の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートの正面図である。
【図10】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第2の実施の形態を示す図であり、捩じりコイルバネとレール状の突起の位置関係を示す図である。
【図11】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第3の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートの正面図である。
【図12】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第4の実施の形態を示す図であり、ディテントプレートの正面図である。
【図13】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第4の実施の形態を示す図であり、捩じりコイルバネとレール状の突起の位置関係を示す図である。
【図14】本発明に係るディテント機構および自動変速機の第5の実施の形態を示す図であり、棒バネと貫通孔の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
3 シフトレンジ切換機構(ディテント機構)
4 アクチュエータ(操作手段)
10 自動変速機
13 ディテントスプリング
14 ディテントプレート
14a〜14d 切欠き部
15 パーキングギヤ(回転部材)
16 パーキングポール(パーキングロック機構)
17 パーキングロッド(パーキングロック機構)
22 変速機ケース(本体ケース)
22a、25a ストッパ部
23、36 貫通孔(揺動範囲設定手段)
23a、23b、36a、36b 係合部
24、37、42 捩じりコイルバネ(ダンパー部材)
24a、37a、42a 一端部
24b、37b、42b 他端部
24c、37c、42c 巻回部
25 バルブケース(本体ケース)
31、41 突起(揺動範囲設定手段)
31a、31b、41a、41b 係合部
45 棒バネ(ダンパー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作手段の操作に連動して揺動自在に設けられ、揺動位置に応じて複数のシフトレンジを選択するディテントプレートと、前記ディテントプレートの外周部に設けられた切欠き部に嵌合し、シフトレンジに応じた前記ディテントプレートの揺動位置を保持するディテントスプリングと、前記ディテントプレートを揺動自在に支持する本体ケースとを備えたディテント機構において、
前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に設けられるとともに、前記ディテントプレートの揺動方向に亘って延在し、延在方向両端部に係合部を有する揺動範囲設定手段と、
一端部が前記揺動範囲設定手段に摺動自在に設けられるとともに、他端部が前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか他方に設けられ、前記ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動方向の一方向および他方向に揺動したときに前記揺動範囲設定手段の係合部に係合して弾性力を発生するダンパー部材とを備えたことを特徴とするディテント機構。
【請求項2】
前記操作手段が、運転者が選択したシフトレンジに応じて動作することにより、前記ディテントプレートを揺動させるアクチュエータを有することを特徴とする請求項1に記載のディテント機構。
【請求項3】
前記ディテントプレートに設けられた複数の切欠き部が、複数のシフトレンジの各シフトレンジに対応し、
前記ディテントスプリングが、前記ディテントプレートの揺動範囲内において各シフトレンジに対応する切欠き部に嵌合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディテント機構。
【請求項4】
前記揺動範囲設定手段が、前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に前記ディテントプレートの揺動方向に沿って延在して設けられ、前記ダンパー部材の一端部が挿通される貫通孔を有し、
前記係合部が前記貫通孔の延在方向両端部からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載のディテント機構。
【請求項5】
前記揺動範囲設定手段が、前記ディテントプレートまたは前記本体ケースの何れか一方に前記ディテントプレートの揺動方向に沿って延在して設けられ、前記ダンパー部材の一端部を取り囲むレール状の突起からなり、前記係合部が前記レール状の突起の延在方向両端部からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載のディテント機構。
【請求項6】
前記本体ケースが、前記ディテントプレートの揺動範囲の一方向側または他方向側に対向して設けられ、前記ディテントプレートに当接することによって前記ディテントプレートの一方向および他方向の揺動を規制するストッパ部を有し、
前記ストッパ部は、前記ディテントプレートが揺動範囲を超えて揺動し、前記ダンパー部材が前記揺動範囲設定手段の係合部に係合して弾性力を発生した後に、前記ディテントプレートが当接することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載のディテント機構。
【請求項7】
前記ダンパー部材が捩じりコイルバネを有し、前記捩じりコイルバネは、前記揺動範囲設定手段に摺動自在に設けられた一端部と、ディテントプレートまたは本体ケースに固定された他端部と、前記捩じりコイルバネの一端部と他端部の間に設けられ、前記ディテントプレートの揺動軸に巻回される巻回部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項に記載のディテント機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1の請求項に記載のディテント機構を有する自動変速機であって、
車両の原動機から駆動輪側に動力を伝達する動力伝達経路中に複数の回転部材と、
前記ディテントプレートと前記動力伝達経路中の回転部材の間に介装され、前記操作手段の操作に連動して前記ディテントプレートがパーキングレンジに揺動されたときに、前記動力伝達経路中の回転部材を機械的に固定し、前記操作手段の操作に連動して前記ディテントプレートが非パーキングレンジに揺動されたときに、前記回転部材の固定を機械的に解除するパーキングロック機構を備えたことを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−162346(P2009−162346A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2113(P2008−2113)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】