説明

ディファレンシャルアッセンブリ

【課題】操作窓が設けられたディファレンシャルケーシングの周辺にピニオンギヤの対を均等に配置することができるディファレンシャルアッセンブリを提供する。
【解決手段】第1〜4ピニオン孔の対がディファレンシャルケーシング40の内部に形成される。第1〜4ピニオンギヤの対100・102・104・106は、スライド可能、回転可能に第1〜4ピニオン孔の対の内部に配置される。ディファレンシャルケーシング40の第1及び第4ピニオンギヤの対100・106の間には、開口窓124が形成される。第2ピニオン孔の対は、第1及び第3ピニオン孔の対からの径方向の距離が等しい位置にある。第3ピニオン孔の対は、第2及び第4ピニオン孔の対からの径方向の距離が等しい位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動推進の乗物(automotive)の動力伝達系路に用いるディファレンシャル(differential)に関する。より詳しくは、4つのピニオン対の配置と、シャフト(軸)の軸ぶれ(axle shaft endplay)及びサイドギアの軸ぶれと、を独立して調節できるCクリップ(C-clip)ディファレンシャルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動推進の乗物の動力伝達系路に使用される型のディファレンシャルは、通常は対となる出力シャフト間の相対的な回転運動(速度差回転(speed differentiation)など)を円滑に行うため、ディファレンシャルケーシング(differential casing)内に支えられる複数のギアセットを備えている。上記複数のギアセットは、一般的には出力シャフトの末端に固定された、ヘリカルサイドギアを含んでおり、このヘリカルサイドギアは、ヘリカルピニオンギヤの対とかみ合っている。
【0003】
上記のような型のディファレンシャルは、平行軸ヘリカルギアディファレンシャル(parallel axis helical gear differential)として知られている。ディファレンシャルケーシングに加えられる入力トルク(input torque)は、サイドギアとピニオンギヤのかみ合いを通じて伝達され、当該トルクに応じて推進力が生み出される。これら及び他の駆動力を受け入れるためには、ギアポケットの壁表面及びディファレンシャルケーシングの他のスラスト表面(thrust surface)に、適切な支持材(support)が設けられる必要がある。
【0004】
一部のディファレンシャルにおいては、ディファレンシャルの出力シャフトの位置決め及び保持を行うためにC型の保持装置(retainer)、またはCクリップ(C-clip)を取り付ける必要がある。このCクリップを取り付けるには、ディファレンシャルケーシングに備えられた操作窓を通じ、ディファレンシャルケーシングの内部空間で作業を行わねばならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、サイドギアはディファレンシャルの外面の周辺に一様に広がるように装着されることが好ましい。この均等な装着を実現する方法のひとつに、ピニオンギヤの対をディファレンシャルケーシングの外面の周辺に均等に配置する方法があげられる。しかしながら、ディファレンシャルケーシングの外面には操作窓が設けられることから、ピニオンギヤの対を周辺に均等に配することと操作窓を設けることとは両立しえない問題点になりがちである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乗物(vehicle)用のディファレンシャルアッセンブリは、軸の周囲を回転できるディファレンシャルケーシングを備えている。上記ディファレンシャルケーシングの内部には、対となるサイドギアが配置される。上記ディファレンシャルケーシングの内部には、第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対が形成される。第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対の内部には、スライド可能、かつ、回転可能に第1、第2、第3、第4ピニオンギヤの対が配置される。上記第1及び第4ピニオン孔の対の間のディファレンシャルケーシング上には、開口窓が設けられる。上記第2ピニオン孔の対は、上記第1ピニオン孔の対からの径方向の距離と、上記第3ピニオン孔の対からの径方向の距離とが等しくなる位置に配されている。上記第3ピニオン孔の対は、上記第2ピニオン孔の対からの径方向の距離と、上記第4ピニオン孔の対からの径方向の距離とが等しくなる位置に配されている。
【0007】
上記以外の特徴としては、ディファレンシャルケーシングの対となるサイドギアの間にはスペーサーが配置されている。クロスピンは、上記の軸を充分に横断するようスペーサー内の経路を伸びている。クロスピンは先端部を備えており、この先端部は開口窓に隣接してディファレンシャルケーシングに固定される。中間軸部はスペーサー内の経路を通っている。末端部は、ディファレンシャルケーシングに設けられた孔へと導かれている。
【0008】
乗物用のディファレンシャルアッセンブリは、軸の周囲を回転でき、第1及び第2軸シャフト(axle shaft)と連結するディファレンシャルケーシングを備えている。ディファレンシャルケーシングには、開口窓が設けられる。ディファレンシャルケーシング内には、対となるサイドギアが配置される。対となるサイドギアの間にはスペーサーが配置され、これらギアが内側へと移動するのを制限する。このスペーサー内部には経路が設けられている。クロスピンは、通常は軸を横断し、スペーサー内部の経路を通りディファレンシャルケーシングの中に伸びるもので、第1及び第2軸シャフトが内側へと移動するのを制限する。なお、クロスピンの第1及び第2軸シャフトが内側へと移動するのを制限する動作は、スペーサーのサイドギアが内側へと移動するのを制限する動作とは独立したものである。
【0009】
第1及び第2サイドギアをディファレンシャルケーシング内部に組み立てる方法には、第1及び第2サイドギア間にスペーサーを配することが含まれる。クロスピンは、開口窓を通りスペーサー内部へと挿入される。クロスピンは、軸シャフトの軸移動を制限しつつ、軸シャフトがスペーサーと接触するのを防ぐために設けられている。クロスピンの末端部は、ディファレンシャルケーシングに設けられた孔へとはめ込まれている。クロスピンは開口窓でディファレンシャルケーシングに固定されている。
【0010】
本発明のさらなる適用範囲は、以下の詳細な記述により明らかにされるであろう。なお、本発明の好適な実施形態を示すにあたり、詳細な記述がなされ、具体的な例が示されているが、これらは例示のみを目的としており、発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乗物用のディファレンシャルアッセンブリは、軸(シャフト)の周りを回転可能であるディファレンシャルケーシングと、上記ディファレンシャルケーシングの内部に配置される少なくとも一対のサイドギアと、上記ディファレンシャルケーシングの内部に形成された第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対と、上記第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対の内部にスライド可能、かつ、回転可能に、それぞれ配置された第1、第2、第3、第4ピニオンギヤの対と、上記ディファレンシャルケーシングの内部における上記第1及び第4ピニオン孔の対の間に形成された開口窓とを備え、上記第2ピニオン孔の対は、上記第1及び第3ピニオン孔の対からの径方向の距離が等しい位置にあり、上記第3ピニオン孔の対は、上記第2及び第4ピニオン孔の対からの径方向の距離が等しい位置にある構成である。
【0012】
それゆえ、上記4つのピニオンギヤの対の配置と、上記シャフトの軸ぶれ及びサイドギアの軸ぶれとを独立して調節できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図2のディファレンシャルケーシングの斜視図である。
【図2】本発明の内容を取り入れて組み立てられたディファレンシャルアッセンブリを備えた、模範的な自動車の概略図である。
【図3】図2のディファレンシャルアッセンブリの斜視図である。
【図4】図2のディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【図5】図3の交線4−4に沿ったディファレンシャルアッセンブリの断面図である。
【図6】図5の交線5−5に沿ったディファレンシャルアッセンブリの断面図である。
【図7】クロスピン部品を分解した状態の、図2のディファレンシャルアッセンブリを図示する斜視図である。
【図8】クロスピン部品がディファレンシャルケーシングの円筒状突起部とかみ合った状態の、図2のディファレンシャルアッセンブリを図示する斜視図である。
【図9】クロスピン部品が備えられた状態の図2のディファレンシャルアッセンブリを図示する斜視図である。
【図10】他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【図11】他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【図12】他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施の形態1〕
本発明は、詳細な記述と添付の図により、より詳細に理解されるであろう。上記図には下記のものがある。
【0015】
図2は、本発明の教示に従って組み立てられたディファレンシャルアッセンブリを備えた、典型的な自動推進の乗物の概略図である。図3は、図2のディファレンシャルアッセンブリの斜視図である。図1は、図1のディファレンシャルケーシングの斜視図である。図4は、図2のディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【0016】
図5は、図3の交線4−4に沿ったディファレンシャルアッセンブリの断面図である。図6は、図5の交線5−5に沿ったディファレンシャルアッセンブリの断面図である。図7は、クロスピン部品を取り外した状態の、図2のディファレンシャルアッセンブリを示す斜視図である。図8は、クロスピン部品がディファレンシャルケーシングの円筒状突起部(cylindrical boss)とかみ合った状態の、図2のディファレンシャルアッセンブリを示す斜視図である。
【0017】
図9は、クロスピン部品が取り付けられた状態の図2のディファレンシャルアッセンブリを示す斜視図である。図10は、他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。図11は、他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。図12は、他の特徴に基づいたディファレンシャルアッセンブリの分解図である。
【0018】
好適な実施例に関する以下の詳細な記述は、例示することのみを目的としたものであり、本発明、その用途、またはその利用方法を限定するものではない。本発明の内容に基づいたディファレンシャルアッセンブリは広く様々な用途に利用可能であり、以下の詳細な用途に限定されるものでないことを繰り返し述べておく。
【0019】
まず、図2に示されるように、典型的な自動推進の乗物のための動力伝達系10には、エンジン12、出力シャフト16を備える変速装置14、当該出力シャフト16と後軸部品22のピニオンシャフト20とを連結するプロペラシャフト18が備えられている。
【0020】
後軸部品22には、軸ハウジング24、当該軸ハウジング24に支えられたディファレンシャルアッセンブリ26、左後輪32及び右後輪34とそれぞれ相互接続された一対の軸シャフト28及び30が備えられている。
【0021】
ピニオンシャフト20にはピニオンシャフトギア36が固定されており、このピニオンシャフトギア36はディファレンシャルアッセンブリ26のディファレンシャルケーシング40に固定されている隣接リングギア38を回転させる。
【0022】
ディファレンシャルケーシング40内部に支えられるギアセット42は、当該ディファレンシャルケーシング40からの回転力を、軸シャフト28及び30に連結された一対の出力シャフト44及び46にそれぞれ伝達し、それらの間の相対的な回転運動(速度差回転(differentiation)など)を円滑に行わせる。なお、ここではディファレンシャルアッセンブリ26を後輪駆動に適用する例が示されているが、本発明は前輪駆動の乗物のトランスアクスル(transaxle)及び/又は4輪駆動の乗物のトランスファーケース(transfer case)に設置されたディファレンシャルアッセンブリへの利用も考慮されている。
【0023】
図3から図5には、ディファレンシャルアッセンブリ26がより詳細に示されている。ディファレンシャルアッセンブリ26は、平行軸ヘリカルギア型のディファレンシャルであり、内部チャンバー(internal chamber)48を形成するディファレンシャルケーシング40を備えている。ディファレンシャルケーシング40は、主円筒(main drum)又は胴体(body)46、及びエンドキャップ50を備えている。主円筒46及びエンドキャップ50は、それぞれ対となる放射状フランジ52、54を備えている。放射状フランジ52及び54は、位置合わせがなされた取付孔58から伸びる複数のボルト(図示せず)により互いに固定される。周知のように、ディファレンシャルケーシング40の放射状フランジ52に隣接リングギアまたはベベルギア(bevel gear)を固定することにより、ディファレンシャルケーシング40の放射状フランジ52へと回転力(駆動トルクなど)を伝達してもよい。ディファレンシャルケーシング40は、軸方向の位置合わせがなされた一対の開口部60a及び60bを形成しており、これらの開口部は内部チャンバー48に繋がっている。軸方向の位置合わせがなされた開口部60a及び60bは、一対の駆動出力シャフト44及び46(図2)の末端部を受容できるように適合されている。なお、以下において駆動出力シャフトを軸シャフトと呼称する。
【0024】
図4及び図5を参照しつつ以下の説明を行う。ディファレンシャルアッセンブリ26は、ギアセット42を備えている。当該ギアセット42は、ディファレンシャルケーシング40よりの駆動トルクを出力シャフト44及び46(図2)に伝達し、これらシャフト間の速度差回転を円滑に行うよう動作できる。ギアセット42は、ヘリカル型であってもよく、内部チャンバー48の内部に設置されてもよい。ギアセット42は対となるサイドギア68a及び68bを備えている。サイドギアは内部溝(internal spline)70a及び70bを備えており、当該内部溝は、それぞれ対応する出力シャフト44及び46(図2)に設けられた外部溝(特に図示されず)とかみ合っている。
【0025】
さらに、サイドギア68a及び68bは、それぞれ軸ハブ78a及び78bを備えている。これら軸ハブは、主胴体46、ディファレンシャルケーシング40のエンドキャップ50、環状チャンバー82a及び82bに備えられた、対応する環状の受け口(socket)によって保持されている。より詳細な記載が後になされるが、ディファレンシャルケーシング40の内部においてサイドギア68a及び68bの軸ぶれを制限するために、スペーサー86がサイドギア68a及び68bの間に備えられてもよい。クロスピン部品90は、スペーサー86に配された隙間経路92(clearance passage)を通って伸び、出力シャフト44及び46(図2)の軸ぶれを調節する。
【0026】
C型の保持器(C-shaped retainer)、又はCクリップ94は、環状チャンバー82a及び82bに設けられており、出力シャフト44及び46が、それぞれサイドギア68a及び68bから外れるのを防いでいる。サイドギア68a及び68bの外側端にはワッシャー96が取り付けられている。
【0027】
ギアセット42は、4組の対となるピニオン、100a及び100b、102a及び102b、104a及び104b、106a及び106bをそれぞれ備えている。以降、表現を簡潔にするため、対となるピニオン100a及び100b、102a及び102b、104a及び104b、106a及び106bを、それぞれ第1、第2、第3、第4ピニオンギヤの対100、102、104、106と呼称する。ブレーキシュー100a’から106b’は、それぞれピニオン100から106に対応している。
【0028】
図1及び図4に示すように、4組のピニオンギヤの対100から106は、それぞれ相補的なピニオン孔110a及び110b、112a及び112b、114a及び114b、116a及び116bによって回転可能に支えられている。以降、表現を簡潔にするため、この相補的な対となるピニオン孔110a及び110b、112a及び112b、114a及び114b、116a及び116bを、それぞれ第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対110、112、114、116と呼称する。ピニオン孔110から116は、主胴体46の隆起ハブ部120に形成される。ピニオン孔110から116は、それぞれの対毎に配置されており、対となるギアが相互に接続可能できるよう、また内部チャンバー48と接続できるように配置されている。さらに、ピニオン孔110から116は、出力シャフト44及び46(図2)の回転軸Aとほぼ平行になるように位置決めされている。開口窓124は、ディファレンシャルケーシング40上の第1ピニオンギヤの対100及び第4ピニオンギヤの対106の間に配置されている。
【0029】
図6には、ピニオンの空間的な位置関係が図示されている。4つのピニオン孔110から116、つまりは4つのピニオンギヤの対100から106(図4)は、ディファレンシャルケーシング40の周囲において、開口窓124とは反対側に、放射状に等間隔で配置されている。より具体的には、第1ピニオン孔の対110は、第2ピニオン孔の対112から径方向距離αだけずれた位置に配置される。第2ピニオン孔の対112は、第3ピニオン孔の対114からの径方向距離αだけずれた位置に配置される。第3ピニオン孔の対114は、第4ピニオン孔の対116から径方向距離αだけずれた位置に配置される。図示されるように、各距離αは対応する第1孔110aから110dの中心線から測定されている。ピニオン孔の対110及び112、112及び114、114及び116、の間の径方向の変位は、ほぼ同じであってよい(例、α=α=α)。図示されている例では、α、α、αは約75度である。
【0030】
図1、図5、図7を参照しつつ、開口窓124の配置と、クロスピン部品90の連携作用(cooperation)とについて詳細に述べる。開口窓124は、アクセス経路126を備えている。アクセス経路126は、ディファレンシャルケーシング40の外側表面130上に形成される円筒状突起部128により取り囲まれている。円筒状突起部128は、内部放射状接触面136を有するカウンタ孔132(counterbore)を有している。円筒状突起部128は、隆起フランジ(raised flange)142上に形成される一対の取付経路140を備え、ここには留め具(fastener)146(図9)が取り付けられる。棚状部150(ledge portion)は、少なくとも一部分は、開口窓124の周辺部において、ディファレンシャルケーシング40に配された円筒状突起部128の内部へと伸びている。
【0031】
一般的には、クロスピン部品90は、先端部(proximal head portion)154、中間軸部158(intermediate shank portion)、末端部162(distal end portion)を有している。一般的には、先端部154は、クロスピン部品90の縦方向軸を横断するように伸びる胴部を有している。先端部154は、留め具146を受け入れることができるように、貫通孔164を備えている。先端部154は、組立過程においてカウンタ孔132の内部放射状接触面136に対してスライド可能に配置される、弓状末端(arcuate end)168を備えている。先端部154の底面170は、棚状部150とは反対側に配置される。クロスピン部品90の末端部162は、ディファレンシャルケーシング40と一体に形成される(formed into incorporated)孔172の中に配置される。
【0032】
クロスピン部品90は単一部品より形成されても、2つ又はそれ以上の部品より構成されてもよい。ここに示される一例では、クロスピン部品90は、中間軸部158と末端部162との両方により形成される不連続性(discrete)の軸部と、それに圧着される先端部154との2つの部品よりなっている。図中では、クロスピン部品90の末端部162は、中間軸部158より径が小さくなっているが、クロスピン部品90は外径が単一であるように構成されていてもよい。例えば、外径が単一であるクロスピンに合わせて十分な空間を提供できるように、別のピニオン配置を異なる組み立て構成により実現しても構わない。
【0033】
図5及び図8には、ディファレンシャルケーシング40にクロスピン部品90を組み込む形態が詳細に示されている。Cクリップ94が適切に配置され、サイドギア66a及び66bの間にスペーサー86が配置されると、ディファレンシャルケーシング40の開口窓124とは反対側に隙間経路92が配置される。クロスピン部品90の末端部162及び中間軸部158は、開口窓124及び隙間経路92を通して挿入される。クロスピン部品90の末端部162は、開口窓124とは反対側にあるディファレンシャルケーシング40の孔172に入るように配置されている。孔172及び孔136は、取り付けるに際してクロスピン部品90を導くようになっている。先端部154は、ディファレンシャルケーシング40の軸を実質横切る向きに挿入されている。これにより、クロスピン部品90の先端部154は、取り付けるに際して隣接リングギア38に接触しない。
【0034】
クロスピン部品90の末端部162は孔172の中へと配置され、先端部154の底面170は、カウンタ孔132と開口窓124の間において、棚状部150と接触している。これと同様に、先端部154の弓状末端168は、カウンタ孔132の内部放射状接触面136と接触している。先端部154は、図8に示される位置から、図9に示される位置へと回転される。図9に示される位置は、ディファレンシャルアッセンブリ26の軸Aと実質平行な位置であり、円筒状突起部128の隆起フランジ142の取付経路140と、貫通孔164との位置が合う位置である。先端部154が回転する間、内部放射状接触面136により、先端部154の弓状末端168が導かれる。棚状部150は、クロスピン部品90を適切な深さの位置に保ち、円筒状突起部128の隆起フランジ142の取付経路140と、貫通孔164との位置を合わせる役割を果たしている。
【0035】
互いに位置合わせがなされた貫通孔164と取付経路140とには、留め具146が挿入され固定される。このようにクロスピン部品が取り付けられると、基本的にはクロスピン部品90とディファレンシャルケーシング40との相対運動が抑制される。その結果、出力シャフト44及び46(図2)の軸ぶれは、クロスピン部品90の中間軸部158の外径により、望ましい許容範囲内に調節することができる。スペーサー86は、サイドギア68a及び68bの間に配置されており、サイドギア68a及び68bの軸ぶれを調節し、ディファレンシャルアッセンブリ26が正常に作動しなくなることを防いでいる。クロスピン部品は、組み立てられた状態ではスペーサー86とは接触していない。スペーサー86内の隙間経路92は、クロスピン部品90よりも大きな外径を有している。このように、2つの個々の部品が、サイドギアの軸ぶれの調節(すなわちスペーサー86)及び軸シャフトの軸ぶれの調節(すなわちクロスピン部品90)に使用されている。このような配置を用いることで、軸シャフトの軸ぶれに影響を与えることなく、サイドギアの軸ぶれを好ましく制御することが可能となる。
【0036】
回転のバランスをとるため、ディファレンシャルアッセンブリ26の重量を分散させることが好ましい。具体的には、円筒状突起部128及び先端部154の重量を、ピニオンギヤ100〜106の周囲に位置するディファレンシャルケーシング40の重量及びピニオンギヤ100〜106の重量と連携させ、回転バランスの取れたディファレンシャルアッセンブリ26を提供する。また、これ以外の方法としては、ディファレンシャルアッセンブリ26の各部品の重量を回転軸Aの周囲に分散することで、ディファレンシャルアッセンブリ26が回転軸Aの周りを回転する際に生じる不均衡を最小限に抑える、または相殺する、方法もある。なお、ディファレンシャルケーシング40又はディファレンシャルアッセンブリ26のエンドキャップ50に釣り合い重り(counter weight)が、付加的に、又は、何らかの部品と置換して、組み込まれることが好ましい。
【0037】
留め具146は、一般的なディファレンシャルと同様に構成されてもよい。これにより、生産設備やトルクレンチ設定を変更することなく、同じ軸組立ラインにおいて一般的なディファレンシャル及び、ヘリカルギアディファレンシャルを組み立てることができる。
【0038】
図10には、上記以外の特徴を有するディファレンシャルアッセンブリ226が示されている。ディファレンシャルアッセンブリ226は、ディファレンシャルアッセンブリ26と同様の部品を備えているが、200番台の部材番号により特徴づけられる。ディファレンシャルアッセンブリ226は、中間軸部258及び末端部262を有するクロスピン290を備えている。クロスピン290を、保持ディスク234によりディファレンシャルケーシング240内に保持されるよう取り付けることができる。具体的には、クロスピン290の先端部を、保持ディスク234の内側表面に形成されたカウンタ孔238へとはめ込まれるように取り付けることができる。保持リング244を、カウンタ孔238上に位置する放射状へり(radial lip)248に取り付けることができる。
【0039】
図11には、さらなる特徴を有するディファレンシャルアッセンブリ326が示されている。ディファレンシャルアッセンブリ326は、ディファレンシャルアッセンブリ26と同様の部品を備えているが、300番台の部材番号により特徴づけられる。ディファレンシャルアッセンブリ326は、中間軸部358及び末端部362を有するクロスピン390を備えている。クロスピン390を、L型プレート334及び留め具340により、ディファレンシャルケーシング340内に保持されるよう取り付けることができる。具体的には、クロスピン390の先端部を、L型プレート上に形成された開口部338を通るよう取り付けることができる。このようにして、L型プレートはクロスピン390と連携し、軸Aに対してほぼ垂直方向になるようクロスピン390を保持する。フランジ部332に備えられた経路348及びL型プレート334に備えられた経路335を通って固定するよう、留め具340を取り付けることができる。取り付けられた留め具340はクロスピン390の先端部と隣接し、クロスピン390を取り付け位置に保持している。
【0040】
図12には、さらなる特徴を有するディファレンシャルアッセンブリ426が示されている。ディファレンシャルアッセンブリ426は、ディファレンシャルアッセンブリ26と同様の部品を備えているが、400番台の部材番号により特徴づけられる。ディファレンシャルアッセンブリ426は、中間軸部458及び末端部462を有するクロスピン490を備えている。クロスピン490を、留め具450によりディファレンシャルケーシング440に固定されるよう取り付けることができる。具体的には、フランジ部432に設けられた経路448及びクロスピン490に設けられた経路435を通って固定されるよう、留め具450を取り付けることができる。
【0041】
アクセス経路427はディファレンシャルケーシング440上に形成することができ、アクセス経路427によりCクリップ94(図4)を取り付ける際の通路が形成される。さらなる特徴に基づいたスペーサー486には、クロスピンを受容する経路492が備えられており、組立時にはクロスピン490が経路492を通して取り付けられる。スペーサー486は、ディファレンシャルケーシング440内部に軸方向に取り付けられ、図示されるようにサイドギアの間に配置される。
【0042】
本発明に関して詳細な記述がなされ、また図とそれに付随する解説とを用いて様々な実施例が示されたが、請求項によって定義される本発明の範囲より逸脱することなく、当該業者が様々な変更を加えられること及びその構成要素を同等のものに交換することが可能であると解釈されなければならない。
【0043】
さらに、様々な実施例の特徴、構成要素、及び/又は機能を混ぜ合わせる及び組み合わせることは、本発明において明確に考慮されたことである。ある実施例の特徴、構成要素及び/又は機能を、本発明において示された又はそれ以外の適当な実施例へと取り入れることができる本発明の開示は、当該業者により高く評価されるであろう。
【0044】
加えて、本質的な本発明の範囲より逸脱することなく、特定の状況や物質に対応するよう本発明の内容に多くの変更を加えることが可能である。したがって、本発明は、図示された特定の実施例、及び目下のところ発明を実施する最良の形態として示された詳細な記述に限定されるものではない。本発明は上記説明及び請求項に当てはまるあらゆる実施例を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
乗物用のディファレンシャルの部品として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のディファレンシャルアッセンブリであって、
軸の周りを回転可能である、アクセス経路を有するディファレンシャルケーシングと、
上記ディファレンシャルケーシングの内部に配置される一対のサイドギアと、
回転するために上記サイドギアと連結する一対の第1及び第2軸シャフトと、
上記サイドギア対の間に配置された、隙間経路を備えたスペーサーとを備え、
クロスピンはアクセス経路および隙間経路を通じて収容され、上記クロスピンのアクセス経路への収容はディファレンシャルケーシングに対してクロスピンが固定されるものの開放可能に連結され、軸の回転に沿って回転するサイドギア対の位置に関わり無くスペーサーとクロスピンとの間に空間が配置されるように、隙間経路の大きさが対応するクロスピンの大きさよりも大きいことを特徴とするディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項2】
上記スペーサーが略U字形状であることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項3】
上記ディファレンシャルケーシングは、開口窓と、第1、第2、第3、第4ピニオン孔の対とを備え、上記開口窓は上記第1ピニオンギヤ及び上記第4ピニオンギヤの対の間に形成され、上記第2ピニオンギヤは上記第1ピニオンギヤ及び上記第3ピニオンギヤから等間隔にずれた放射状の位置に配置され、上記第3ピニオンギヤは上記第2ピニオンギヤ及び上記第4ピニオンギヤから等間隔にずれた放射状の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項4】
上記クロスピンは中間軸部と末端部とを備え、中間軸部は第2軸シャフトに収容される先端を備えていることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項5】
上記末端部の径は、上記中間軸部の径と同じか小さいことを特徴とする請求項4に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項6】
上記クロスピンは、ディファレンシャルケーシングに開放可能に連結する先端部をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項7】
上記先端部はクロスピンが第1軸シャフトに収容される間は第1取付位置に位置し、
当該先端部はクロスピンのディファレンシャルケーシングに対する軸方向の移動を制限し、
当該先端部はディファレンシャルケーシングと連結するときに回転してディファレンシャルケーシングの軸と平行な位置である第2取付位置に位置することを特徴とする請求項6に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項8】
上記第1取付位置と第2取付位置とが90°異なっていることを特徴とする請求項7に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項9】
上記クロスピンは軸の軸方向への移動を制限し、上記スペーサーはサイドギア対がクロスピンと独立した前後への移動を制限することを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項10】
上記クロスピンをディファレンシャルケーシングに開放可能に連結するとともに、クロスピンのディファレンシャルケーシングへの軸に対して垂直な差込みを補助する留め具が挿入されることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項11】
上記ディファレンシャルケーシングは、上記留め具を収容する取付経路を備えた、放射状に広がる隆起フランジを備えることを特徴とする請求項10に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項12】
乗物のディファレンシャルアッセンブリであって、
軸の周りを回転可能である、2つの不連続な円筒状突起部および上記円筒状突起部の端部と連絡している2つのカウンタ孔で形成されるアクセス経路を有するディファレンシャルケーシングと、
上記ディファレンシャルケーシングの内部に配置される一対のサイドギアと、
上記サイドギア対の間に配置された、隙間経路を備えたスペーサーとを備え、
クロスピンはアクセス経路および隙間経路を通じて収容され、上記クロスピンは上記2つの円筒状突起部とかみ合わせられてディファレンシャルケーシングに固定されるものの開放可能に連結され、2つのカウンタ孔はディファレンシャルケーシングに対する軸の軸方向への移動を制限するC−クリップを収容するのに適応した大きさであることを特徴とするディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項13】
上記クロスピンの末端部はディファレンシャルケーシングに形成された孔に収容され、先端部はカウンタ孔に収容されていることを特徴とする請求項12に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項14】
上記クロスピンに形成された貫通孔を通じて伸び、ディファレンシャルケーシングとかみ合う留め具をさらに備えていることを特徴とする請求項12に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項15】
上記ディファレンシャルケーシングは、上記留め具を収容する取付経路を備えた、放射状に広がる隆起フランジを備えることを特徴とする請求項14に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項16】
上記留め具は、ディファレンシャルケーシングの回転する軸と平行な軸に沿って伸びていることを特徴とする請求項15に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項17】
乗物のディファレンシャルアッセンブリであって、
軸の周りを回転可能である、放射状へりを有するカウンタ孔を有するディファレンシャルケーシングと、
上記ディファレンシャルケーシングの内部に配置され、軸とかみ合って駆動するのに適応した一対のサイドギアと、
上記サイドギア対の間に配置された、隙間経路を備えたスペーサーとを備え、
クロスピンはカウンタ孔および隙間経路を通じて収容され、クロスピンの先端部を収容するカウンタ孔を有する保持ディスクを備え、当該保持ディスクは上記放射状へりとかみ合うとともに留め具によってディファレンシャルケーシングに開放可能に固定されていることを特徴とするディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項18】
上記クロスピンはディファレンシャルケーシングから間を空けて離れていることを特徴とする請求項17に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項19】
上記留め具はカウンタ孔内に保持ディスクを保持する保持リングであることを特徴とする請求項17に記載のディファレンシャルアッセンブリ。
【請求項20】
上記クロスピンの末端部はディファレンシャルケーシング内に形成された孔に収容されていることを特徴とする請求項17に記載のディファレンシャルアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−202810(P2011−202810A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161236(P2011−161236)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2005−61387(P2005−61387)の分割
【原出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(504091968)アメリカン アクスル アンド マニュファクチャリング,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】