説明

ディーゼルエンジン

【課題】始動性を向上するとともに通常運転時の排ガス中の黒煙及び未燃成分を低減したディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】シリンダヘッド20に設けられ燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ30と、発熱部41がシリンダヘッドに設けられた予熱手段40と、ピストン100の冠面120を凹ませて形成され、インジェクタから噴き込まれた燃料の少なくとも一部を反転させて予熱手段の発熱部側へ向かわせる凹曲面部が形成された第1のキャビティ130と、第1のキャビティの周囲に形成された第2のキャビティ140とを有するディーゼルエンジン1を、インジェクタは、第1のキャビティに向けられた第1の墳孔31b及び第2のキャビティに向けられた第2の墳孔31cを有するとともに、始動時には燃料の全噴射量に占める第1の墳孔からの噴射量の割合を通常運転時に対して大きくする噴射制御手段を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直噴式のディーゼルエンジンに関し、特に、始動性を向上するとともに通常運転時の排ガス中の黒煙及び未燃成分を低減したものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ディーゼルエンジンにおいては、NO低減や正味熱効率の改善を目的として、圧縮比を従来よりも低下させることが提案されている。
しかし、ディーゼルエンジンにおいては、圧縮比を低下させると、冷間始動性が悪化することが懸念される。
【0003】
ディーゼルエンジンの始動性改善に関する従来技術として、例えば特許文献1には、グロープラグの周囲をカバーで囲い、カバー内に十分な量の混合気を貯留可能としたディーゼルエンジンが記載されている。
また、特許文献2には、インジェクタから噴射された燃料が直接グロープラグにあたることを防ぐ目的で、燃料の噴射範囲がグロープラグの下方となり、その後リエントラント型燃焼室内で反転した燃料(可燃混合気)がグロープラグに集まるようにしたディーゼルエンジンが記載されている。
一方、ディーゼルエンジンの筒内燃料噴射装置に関する従来技術として、特許文献3には、ノズルに角度の異なる2種類の噴孔を設けるとともに、各噴孔を独立したニードルバルブで開閉するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平 6−221258号公報
【特許文献2】特開2003−254066号公報
【特許文献3】実公昭64− 4824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術のように、可燃混合気をグロープラグ周辺に集めるよう特化させて燃焼室形状等を設計した場合、通常運転時には局部的に燃料過濃領域が形成され、スート等の粒子状物質(PM)からなる黒煙や、燃料の未燃成分の排出量が増加してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、始動性を向上するとともに通常運転時の排ガス中の黒煙及び未燃成分を低減したディーゼルエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、シリンダヘッドに設けられ燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタと、発熱部が前記シリンダヘッドに設けられた予熱手段と、ピストンの冠面を凹ませて形成され、前記インジェクタから噴き込まれた燃料の少なくとも一部を反転させて前記予熱手段の前記発熱部側へ向かわせる凹曲面部が形成された第1のキャビティと、前記第1のキャビティの周囲に形成された第2のキャビティとを有するディーゼルエンジンであって、前記インジェクタは、前記第1のキャビティに向けられた第1の墳孔及び前記第2のキャビティに向けられた第2の墳孔を有するとともに、始動時には燃料の全噴射量に占める前記第1の墳孔からの噴射量の割合を通常運転時に対して大きくする噴射制御手段を備えることを特徴とするディーゼルエンジンである。
これによれば、始動時には主に燃料を第1のキャビティに向けて噴射し、反転した可燃混合気を予熱手段の近傍に集めてエンジンの始動性を向上することができる。
一方、通常運転時には、第1、第2のキャビティに向けて燃料を噴射することによって、筒内の混合気分布を均一に近づけて、空気利用率を高め、局部的に過濃領域が形成されて黒煙や未燃成分が増加することを防止できる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記噴射制御手段は、始動時には前記第1の墳孔のみから燃料を噴射させ、前記第2の墳孔からの燃料噴射を停止することを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、始動時に噴射される燃料の大部分を可燃混合気として予熱手段の周辺に集めることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記インジェクタはシリンダ中心軸近傍に配置され、前記第1のキャビティは、前記ピストンの冠面の中央部を凹ませて形成された浅皿型燃焼室であって、前記第2のキャビティは、前記第1のキャビティの外径側でありかつ前記第1のキャビティに対して前記冠面からの深さが浅い位置に配置されたリエントラント型燃焼室であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、上述した効果を確実に得ることができる。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記インジェクタは、前記第1の噴孔及び前記第2の噴孔をそれぞれ開閉するとともに、独立して駆動可能な第1の弁体及び第2の弁体を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、第1及び第2の噴孔からの燃料噴射量を個別に制御することが可能となり、上述した各発明の効果を確保できる。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記噴射制御手段は、前記第1の噴孔から前記第1のキャビティに噴射された後反転して前記シリンダヘッド側に巻き上げられる燃料が、前記第2の噴孔から前記第2のキャビティに噴射された後反転して前記シリンダヘッド側に巻き上げられる燃料に対して、前記第1の噴孔から噴射された燃料の軌跡と前記第2の噴孔から噴射された燃料の軌跡とが交差する領域を先に通過するよう前記第2の噴孔からの燃料噴射時期を前記第1の噴孔からの燃料噴射時期に対して遅延させることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のディーゼルエンジンである。
これによれば、第1の噴孔からの噴射によって形成される混合気の流れと第2の噴孔からの噴射によって形成される混合気の流れとが干渉することを防止でき、筒内の混合気流動を適切化して燃焼状態を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、始動性を向上するとともに通常運転時の排ガス中の黒煙及び未燃成分を低減したディーゼルエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したディーゼルエンジンの実施例における燃焼室部分をクランク軸と直交しかつシリンダ中心軸を含む平面で切って見た模式的断面図であって、始動時の状態を示す図である。
【図2】図1のディーゼルエンジンにおけるインジェクタ先端部(噴孔部)の模式的断面図である。
【図3】図1のディーゼルエンジンの燃焼室部分の模式的断面図であって、通常運転時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、始動性を向上するとともに通常運転時の排ガス中の黒煙及び未燃成分を低減したディーゼルエンジンを提供する課題を、ピストンに浅皿型燃焼室である第1のキャビティ、及び、その周囲に配置されたリエントラント型燃焼室である第2のキャビティを形成し、始動時には第1のキャビティにのみ燃料を噴射し、通常運転時には第1、第2のキャビティにともに燃料を噴射することによって解決した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を適用したディーゼルエンジンの実施例について説明する。
実施例のディーゼルエンジンは、例えば乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載されるコモンレール式の直噴4ストロークディーゼルエンジンである。
図1は、実施例のディーゼルエンジンの燃焼室部分をクランク軸と直交しかつシリンダ中心軸を含む平面で切って見た模式的断面図であって、始動時の状態を示す図である。
エンジン1は、シリンダブロック10、シリンダヘッド20、インジェクタ30、グロープラグ40、ピストン100等を備えて構成されている。
また、シリンダヘッド20とピストン100の冠面との間の空間部は、噴射された燃料が混合気となって燃焼する燃焼室として機能する。
【0015】
シリンダブロック10は、ピストン100が挿入される円筒内面状のシリンダ11を備えている。
シリンダヘッド20は、シリンダ11の一方側の端部を閉塞して設けられている。
シリンダヘッド20は、新気(未燃空気及びEGRガス)の吸入及び既燃ガスの排気を行なう図示しない吸気ポート及び排気ポートを備えている。
また、シリンダヘッド20は、吸気ポート及び排気ポートを開閉するバルブ及びこのバルブを駆動する動弁駆動系等を備えている。
【0016】
インジェクタ30は、図示しない高圧サプライポンプによって加圧され、蓄圧室であるコモンレールに貯留された燃料を、微粒化して筒内に噴射するものである。
インジェクタ30は、その中心軸方向(ニードル駆動方向)をシリンダ11の中心軸とほぼ一致させた状態で、ピストン100の冠面中央に対向するようにシリンダヘッド20に固定されている。
【0017】
図2は、インジェクタのノズル部近傍の模式的断面図である。
図2に示すように、インジェクタ30は、ノズル本体31、第1ニードル32、第2ニードル33等を備えて構成されている。
ノズル本体31は、円筒状に形成され、その燃焼室側の端部は、端面部31aによって閉塞されている。
端面部31aは、ピストン100側にコーン状に突出して形成されている。
端面部31aの内面は、第1ニードル32及び第2ニードル33の突端部と密着して燃料をシールするシール面部となっている。
【0018】
端面部31aには、第1噴孔31b及び第2噴孔31cが形成されている。
第1噴孔31bは、インジェクタ30の中心軸に対して、所定の角度だけ傾斜した方向に燃料を噴射する貫通孔である。
第2噴孔31cは、インジェクタ30の中心軸に対して、第1噴孔31bよりも大きい所定の角度だけ傾斜した方向に燃料を噴射する貫通孔である。
第2噴孔31cは、第1噴孔31bに対して、端面部31aの内径側(突端側)に配置されている。
また、第1噴孔31b及び第2噴孔31cは、インジェクタ30の中心軸回りに周方向に分散して複数配置されている。
【0019】
第1ニードル32は、ノズル本体31と同心の円筒状に形成され、ノズル本体31の内径側に挿入されている。
第1ニードル32の端面は、ノズル本体31の端面部31aと密着し、第1噴孔31bを閉塞可能となっている。
また、第1ニードル32の外周面とノズル本体31の内周面との隙間には、コモンレールから供給される高圧の燃料が満たされている。
【0020】
第2ニードル33は、ノズル本体31及び第1ニードル32と同心の円柱状に形成され、第1ニードル32の内径側に挿入されている。
第2ニードル33の端面は、ノズル本体31の端面部31aと密着し、第2噴孔31cを閉塞可能となっている。
【0021】
上述した第1ニードル32及び第2ニードル33は、図示しないソレノイドコイルやピエゾ素子等のアクチュエータによって、図示しないエンジン制御装置(噴射制御手段)からの制御信号に基づいて個別にリフト方向(図2における上方)に駆動可能となっている。これによって、エンジン制御装置は、第1の噴孔31b及び第2の噴孔31cからの燃料噴射時期及び噴射量を個別に調整可能であり、さらに、第2ニードル33の駆動を停止することによって、第1の噴孔31bのみから燃料を噴射することも可能である。
【0022】
図1等に示すグロープラグ40は、エンジン1の冷間始動時に用いられる予熱手段である。
グロープラグ40は、その先端部に設けられた発熱部41が燃焼室内でインジェクタ30と隣接して露出するように、シリンダヘッド20に固定されている。
【0023】
ピストン100は、シリンダ11内に挿入され、筒内の燃焼圧力を受けて図示しないコンロッドを介して図示しないクランクシャフトに伝達するほぼ円柱状の部材である。
ピストン100は、側面110、冠面120、第1キャビティ130、第2キャビティ140等を備えて形成されている。
【0024】
側面110は、シリンダ11の内周面と対向して配置された面部であって、シリンダヘッド20側から順に、第1リング溝111、第2リング溝112、第3リング溝113が形成されている。
第1リング溝111、第2リング溝112、第3リング溝113は、例えばほぼ矩形の横断面を有する周方向溝であって、それぞれ図示しない第1コンプレッションリング、第2コンプレッションリング、オイルリングがはめ込まれる部分である。
【0025】
冠面120は、ピストン100がシリンダヘッド20と対向する側の端面であって、実質的にほぼ平面状に形成されている。
【0026】
第1キャビティ130は、冠面110の中央部をクランクシャフト側に凹ませた浅皿型燃焼室である。第1キャビティ130のインジェクタ30と対向する内面は、図1等に示すように、中心軸で切って見た断面形状が円弧状となる凹曲面として形成されている。
第1キャビティ130の外周壁部131は、ピストン100の中心軸方向とほぼ並行に配置されている。
第1キャビティ130の中央部には、コーン状の突起132が形成されている。突起132の高さは、第1キャビティ130の深さに対して小さく設定され、突起132の頂部は丸みをつけた凸曲面状に形成されている。
【0027】
第2キャビティ140は、第1キャビティ130の外径側でありかつ冠面120からの深さが第1キャビティ130に対して浅い位置に設けられたリエントラント型燃焼室である。第2キャビティ140のインジェクタ30と対向する内面は、図1等に示すように、中心軸で切って見た断面形状が円弧状となる凹曲面として形成されている。
第2キャビティ140の外周壁部141は、冠面120側の端部がクランクシャフト側の端部に対してシリンダ11の内径側となるように傾斜して形成されている。
第2キャビティ140の下面部(シリンダヘッド20から遠い側の面部)142は、内径側が外径側に対してシリンダヘッド20側となるように傾斜して配置されている。
また、第2キャビティ140の下面部142と、第1キャビティ130の外周壁部131との接続部143は、丸みをつけて凸曲面状に形成されている。
【0028】
以下、実施例のエンジンにおける噴射制御について説明する。
先ず、エンジン1の始動時においては、エンジン制御装置は、インジェクタ30の第2ニードル33の駆動を停止し、第1ニードル32のみを駆動して第1噴孔31bからのみ燃料噴射を行なう。
このとき、第1噴孔31bからの噴射によって形成される混合気の流れF1は、図1に示すように、第1キャビティ130の底部に衝突してその内面に沿って向きを変え、外周壁部131に沿ってシリンダヘッド20側へ巻き上げられる。
この巻き上げられた混合気の一部は、グロープラグ40の発熱部41の近傍に集められ、これによって着火される。
【0029】
一方、エンジン1の通常運転時には、エンジン制御装置は、インジェクタ30の第1噴孔31b、第2噴孔31cの両方を用いて燃料噴射を行なう。
図3は、図1に相当する断面を示す模式的断面図であって、通常運転時の状態を示している。
このとき、筒内には、上述した混合気の流れF1に加えて、第2噴孔31cからの噴射によって形成され、第2キャビティ140の上部に入った後、その内面に沿って反転し、燃焼室の中心側へ流れる流れF2が形成される。
また、第2噴孔31cからの噴射によって、第2キャビティ140の上方からシリンダヘッド20とピストン100の冠面120との間に流入する流れF3も形成される。
これらの各混合気流は、燃焼室内にほぼ均一な混合気分布を形成し、燃焼室内の各部で着火及び燃焼する。
なお、エンジン制御装置が第2の墳孔からの噴射時期を第1の墳孔からの噴射時期に対して遅延させることで、流れF2は、流れF1が第1キャビティ130側からシリンダヘッド20側へ流れた後に、時間差をもって当該箇所を通過するため、相互に干渉することを防止されている。
【0030】
以上説明した実施例においては、以下の効果を得ることができる。
(1)始動時には燃料を第1キャビティ130に向けて噴射し、反転した可燃混合気F1をグロープラグ40の近傍に集めてエンジン1の始動性を向上することができる。
一方、通常運転時には、第1キャビティ130、第2キャビティ140に向けて燃料を噴射することによって、筒内の混合気分布を均一に近づけて、空気利用率を高め、局部的に過濃領域が形成されて黒煙や未燃成分が増加することを防止できる。
(2)始動時にインジェクタ30の第2噴孔31cからの燃料噴射を停止することによって、始動時に噴射される燃料の大部分を可燃混合気としてグロープラグ40の周辺に集めることができる。
(3)インジェクタ30は第1噴孔31b及び第2噴孔31cを個別に開閉する第1ニードル32及び第2ニードル33を有することによって、各噴孔31b、31cからの燃料噴射量を適切に制御することができる。
(4)第1噴孔31bからの噴射によって形成される混合気の流れF1と第2噴孔31cからの噴射によって形成される混合気の流れF2とが干渉することが防止されており、筒内の混合気流動を適切化して燃焼状態を良好にすることができる。
【0031】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、第1及び第2のキャビティの具体的な形状や、インジェクタ、グロープラグの配置は、適宜変更することが可能である。
また、第1、第2の噴孔からの燃料噴射量を個別に調節可能な燃料噴射手段の構成も特に限定されない。また、エンジンの運転状態によっては、第2の噴孔のみから燃料を噴射するようにしてもよい。
また、実施例では始動時に第2の噴孔からの燃料噴射を停止しているが、始動時に第2の噴孔から通常時に対して少量の燃料を噴射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン 10 シリンダブロック
11 シリンダ 20 シリンダヘッド
30 インジェクタ 31 ノズル本体
31a 端面部 31b 第1噴孔
31c 第2噴孔 32 第1ニードル
33 第2ニードル 40 グロープラグ
41 発熱部 100 ピストン
110 側面 111 第1リング溝
112 第2リング溝 113 第3リング溝
120 冠面 130 第1キャビティ
131 外周壁部 132 突起
140 第2キャビティ 141 外周壁部
142 下面部 143 接続部
F1〜F3 混合気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに設けられ燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタと、
発熱部が前記シリンダヘッドに設けられた予熱手段と、
ピストンの冠面を凹ませて形成され、前記インジェクタから噴き込まれた燃料の少なくとも一部を反転させて前記予熱手段の前記発熱部側へ向かわせる凹曲面部が形成された第1のキャビティと、
前記第1のキャビティの周囲に形成された第2のキャビティと
を有するディーゼルエンジンであって、
前記インジェクタは、前記第1のキャビティに向けられた第1の墳孔及び前記第2のキャビティに向けられた第2の墳孔を有するとともに、始動時には燃料の全噴射量に占める前記第1の墳孔からの噴射量の割合を通常運転時に対して大きくする噴射制御手段を備えること
を特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記噴射制御手段は、始動時には前記第1の墳孔のみから燃料を噴射させ、前記第2の墳孔からの燃料噴射を停止すること
を特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記インジェクタはシリンダ中心軸近傍に配置され、
前記第1のキャビティは、前記ピストンの冠面の中央部を凹ませて形成された浅皿型燃焼室であって、
前記第2のキャビティは、前記第1のキャビティの外径側でありかつ前記第1のキャビティに対して前記冠面からの深さが浅い位置に配置されたリエントラント型燃焼室であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記インジェクタは、前記第1の噴孔及び前記第2の噴孔をそれぞれ開閉するとともに、独立して駆動可能な第1の弁体及び第2の弁体を有すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のディーゼルエンジン。
【請求項5】
前記噴射制御手段は、前記第1の噴孔から前記第1のキャビティに噴射された後反転して前記シリンダヘッド側に巻き上げられる燃料が、前記第2の噴孔から前記第2のキャビティに噴射された後反転して前記シリンダヘッド側に巻き上げられる燃料に対して、前記第1の噴孔から噴射された燃料の軌跡と前記第2の噴孔から噴射された燃料の軌跡とが交差する領域を先に通過するよう前記第2の噴孔からの燃料噴射時期を前記第1の噴孔からの燃料噴射時期に対して遅延させること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184747(P2012−184747A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49820(P2011−49820)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】