説明

デシカントロータを用いた空調方法及び空調装置

【課題】結露や霜付きをなくし、圧縮機の吸入圧力調整弁等の付帯設備を必要とせず、低コストで、かつ省エネを達成できる高効率な除湿空調手段を実現する。
【解決手段】空調室12と再生室14とが並設され、これら室に跨ってデシカントロータ20が設けられている。ヒートポンプ装置40のエアクーラ50が空調室12に設けられ、エアヒータ46が再生室14に設けられている。エアヒータ出口側再生用空気DAの相対湿度Hrdが設定相対湿度Hrsになるように、かつエアクーラ出口側空気温度Tedが設定範囲となるように、ヒートポンプ装置40の圧縮機44の回転数Rcaを制御すると共に、負荷変動によりエアクーラ出口側空気温度Tedが設定範囲外となったとき、再生ファン36の送風量を制御し、エアクーラ出口側空気温度Tedを設定範囲に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷凍倉庫に隣接された荷捌室や食肉用家畜屠体のカット室等に適用されて好適であり、温度及び湿度の調整を省エネかつ高効率に可能にした空調方法及び空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記荷捌室やカット室等のように、室温を低温に保持し、かつ除湿を要する被空調室の空調手段として、圧縮機や蒸発器等のヒートポンプサイクル構成機器を備え、冷熱源及び加熱源を供給し得るヒートポンプ装置を用いていた。しかし、このヒートポンプ装置では、冷熱源と加熱源の熱バランスをとることが容易でなかった。このため、蒸発器側負荷が低下した場合、霜付きやCOPの低下を招いていた。
【0003】
また、空気中の水蒸気を吸着除湿するため、扁平円筒体に吸着剤を担持したデシカントロータが用いられている。このデシカントロータと、前記ヒートポンプ装置とを組み合わせ、デシカントロータで除湿し後の吸着熱により温度上昇した被処理空気の冷却及び採熱や、デシカントロータを再生するための再生用空気の加熱を、ヒートポンプ装置に行なわせるようにした空調装置は公知である。かかる空調装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−241693号公開公報
【特許文献2】特開2008−70060号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された空調装置では、デシカントロータの上流側で被処理空気を予冷するプレクーラや、デシカントロータで除湿した後の被処理空気を冷却する吸熱器24(特許文献1中の符号)で、結露や霜付きが発生するおそれがある。そのため、結露の発生で、カビなど微生物が繁殖したり、霜付きによりCOPが低下するという問題がある。しかし、特許文献1では、この問題に対する対策や、ヒートポンプ装置のCOPの向上に対して配慮されていない。
【0006】
特許文献2に開示された空調装置は、カビ発生の抑制やCOPの向上に対して配慮された構成となっているが、ヒートポンプ装置の圧縮機の吸入圧力を調整するための調整弁を設ける必要があり、コスト高となっている。
【0007】
デシカントロータを再生するために外気を導入して用いる再生用空気は、デシカントロータの上流側で、デシカントロータの除湿性能を確保するため、相対湿度が低くなるように温度を調節する。再生用空気がもともと低温であるとき、再生用空気の絶対湿度は高くないので、再生用空気の温度をそれほど高くする必要はない。従来は、除湿性能とは無関係に、再生用空気温度を事前に一定に調整していたので、エネルギーロスとなっていた。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、結露や霜付きをなくし、圧縮機の吸入圧力調整弁等の付帯設備を必要とせず、低コストで、かつ省エネを達成できる高効率な除湿空調手段を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明のデシカントロータを用いた空調方法は、デシカントロータで被処理空気を除湿し、吸着熱により温度上昇した被処理空気をヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置のエアクーラで冷却及び採熱した後、被空調室に供給すると共に、デシカントロータを再生する再生用空気をヒートポンプ装置のエアヒータで加熱するようにしたデシカントロータを用いた空調方法において、エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する工程と、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御する工程と、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、再生用空気流を形成する再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻す工程と、からなるものである。
【0010】
本発明方法では、ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御し、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度を所望範囲に制御することで、デシカントロータの再生効果を高く維持するようにしている。図10は、湿り空気線図である。再生用空気の再生能力は、再生用空気の相対湿度で決まる。
【0011】
図11は、空調装置の運転例を示し、エアヒータ入口側及び出口側における再生用空気の状態値(夏期、中間期及び冬期)を示す。この運転例は、再生用空気として外気を用いた場合である。中間期及び冬期では、外気の絶対湿度が小さいので、エアヒータでの再生用空気の加熱温度を低減しても、除湿性能を確保できる。
【0012】
また、本発明方法では、ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御することで、エアクーラ出口側被処理空気温度を所望範囲に制御するようにしている。即ち、圧縮機の吸入圧力が下がりすぎて、エアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲を下回った場合、圧縮機の回転数を減少させ、冷媒循環量を減少させることにより、圧縮機の吸入圧力を増大させ、エアクーラ出口側被処理空気温度を上昇させる。エアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲を上回った場合、圧縮機の回転数を増加させ、冷媒循環量を増加させることにより、エアクーラ出口側被処理空気温度を下降させる。
【0013】
被空調室に供給される被処理空気量の減少や相対湿度の低下からデシカントロータでの吸着熱量が減少して、ヒートポンプ装置のエアクーラの冷却負荷量が少なくなると、エアクーラの蒸発温度が低下しすぎて、エアクーラの熱交換面が結露や霜付きを起す。本発明方法では、かかる場合、再生ファンの送風量を減少させ、エアヒータの加熱負荷量を減少させる。この結果、エアクーラの冷却負荷量が減少し、エアクーラの蒸発温度が上昇して、エアクーラの熱交換面を結露や霜付きが起こる温度以上の温度に上昇できる。
【0014】
エアクーラ出口側被処理空気温度が低下すると、ヒートポンプ装置のCOPが悪化するので、エアクーラ出口側被処理空気の温度を必要以上に低温にする必要はない。本発明方法では、エアクーラ出口側被処理空気温度を結露や霜付きが起こる温度以上に制御しているので、ヒートポンプ装置のCOP向上にも寄与する。
【0015】
逆に、エアクーラ出口側被処理空気温度が上昇しすぎた場合、再生ファンの送風量を増加させ、エアヒータの加熱負荷量を増加させる。これによって、エアクーラの冷却能力が増大し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻すことができる。
【0016】
このように、エアクーラ出口側被処理空気の冷却負荷量の広範囲な変動に対して、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に制御できるので、エアクーラで結露や霜付きを防止して、COPの高い高効率運転を可能とする。また、圧縮機の吸入圧力制御に、吸入圧力調整弁を必要としないので、設備費を低コストにできる。
【0017】
なお、エアヒータ入口側再生用空気温度又はデシカントロータ入口側の被処理空気温度が低い場合、エアヒータ出口側被処理空気温度の設定値を低くすればよい。また、エアヒータ入口側再生用空気温度又はデシカントロータ入口側の被処理空気温度が高い場合、エアヒータ出口側被処理空気温度の設定値を高くすればよい。
【0018】
本発明方法において、デシカントロータ上流側再生用空気の温度及び相対湿度からデシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を求め、該絶対湿度からエアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるように、エアヒータ出口側再生用空気温度を制御するようにするとよい。
【0019】
図10は、湿り空気線図である。図10から、再生用空気の絶対湿度は温度及び相対湿度から求めることができる。ここで求めた絶対湿度とエアヒータ出口側再生用空気温度とから、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度を決定することができる。エアヒータ出口側再生用空気温度を制御し、エアクーラ出口側被処理空気の相対湿度を所望範囲に制御することにより、エアヒータ出口側再生用空気の絶対湿度が低い場合は、エアヒータ出口側再生用空気温度が低くしても、設計段階の除湿性能を維持できる。これによって、エアヒータ入口側再生用空気温度が低いとき、デシカントロータの運転において、その空気の絶対湿度に応じた最適な再生温度にすることで、不必要な加熱をしない省エネルギーな運転が可能となる。
【0020】
本発明方法において、エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を季節に応じて予め設定しておき、エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度設定値と温度とから絶対湿度を近似演算し、該絶対湿度からエアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するようにするとよい。エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を夏期、中間期及び冬期に応じて、これらの季節に合った相対湿度を予め設定しておく。これによって、エアヒータ入口側再生用空気温度及びエアヒータ出口側再生用空気温度を検出するだけで、除湿性能を維持でき、制御手段を簡素化かつ低コスト化できる。
【0021】
また、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明のデシカントロータを用いた空調装置は、デシカントロータと、ヒートポンプサイクルを構成し、デシカントロータで除湿され吸着熱により温度が上昇した被処理空気を冷却及び採熱するエアクーラ、及びデシカントロータを再生する再生用空気を加熱するエアヒータを備えたヒートポンプ装置とを備え、エアクーラで冷却した被処理空気を被空調室に供給するようにしたデシカントロータを用いた空調装置において、
前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数制御装置と、再生用空気流を形成する再生ファン及びその送風量制御装置と、エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する第1の温度センサと、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御すると共に、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、前記再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻すコントローラと、を備えているものである。
【0022】
本発明装置では、コントローラによって、ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御し、冷媒循環量を制御することにより、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度を所望範囲に制御することで、デシカントロータの再生効果を高く維持するようにしている。また、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、該コントローラで再生ファンの送風量を制御することにより、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻すようにしている。
【0023】
そのため、本発明装置によれば、デシカントロータの湿分脱着性能を常に最適に制御でき、これによって、デシカントロータの除湿効果を高く維持できる。また、エアクーラ出口側被処理空気の冷却負荷量の広範囲な変動に対して、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に制御するようにしているので、エアクーラでの結露や霜付きを防止できる。これによって、COPの高い高効率運転を可能とすると共に、圧縮機の吸入圧力の制御に、圧縮機吸入圧力調整弁を必要としないので、設備費を低コスト化できる。
【0024】
本発明装置において、エアヒータの入口側再生用空気の温度を検出する第2の温度センサと、エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を検出する湿度センサと、エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、コントローラは、第2の温度センサと湿度センサの検出値からデシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を演算する演算装置を備え、前記絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気温度を制御するように構成するとよい。
【0025】
エアヒータ入口側再生用空気の温度と相対湿度とから再生用空気の絶対湿度を求めることができる。この絶対湿度とエアヒータ出口側再生用空気温度とからエアヒータ出口側再生用空気の相対湿度を求め、エアヒータ出口側再生用空気温度を制御し、この相対湿度を所望範囲に制御することで、湿分脱着性能を所望範囲に制御できる。これによって、デシカントロータの再生効果を高く維持できる。
【0026】
本発明装置において、エアヒータの入口側再生用空気の温度を検出する第2の温度センサと、エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、前記コントローラは、第2の温度センサの検出値と、季節に応じて予め設定されたエアヒータ入口側再生用空気の相対湿度とから、デシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を近似演算する演算装置を備え、前記絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するように構成するとよい。
【0027】
エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を夏期、中間期及び冬期に応じて予め設定しておくことで、前記第2の温度センサを設けるだけで、エアヒータ出口側再生用空気の湿分脱着性能を制御できる。そのため、制御が容易になると共に、制御装置を簡素化かつ低コスト化できる。
【0028】
本発明装置において、エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、前記コントローラは、季節に応じて予め設定されたエアヒータ入口側再生用空気の絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるように、エアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するように構成するとよい。これによって、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度がさらに容易になると共に、制御装置をさらに簡素化かつ低コスト化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明方法によれば、デシカントロータで被処理空気を除湿し、吸着熱により温度上昇した被処理空気をヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置のエアクーラで冷却及び採熱した後、被空調室に供給すると共に、デシカントロータを再生する再生用空気をヒートポンプ装置のエアヒータで加熱するようにしたデシカントロータを用いた空調方法において、エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する工程と、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御する工程と、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、再生用空気流を形成する再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻す工程と、からなるので、エアヒータ出口側再生用空気をデシカントロータの再生に最適な温度範囲に調整でき、これによって、デシカントロータの除湿効果を高く維持できると共に、エアクーラ出口側被処理空気の温度を被空調室の必要温度以下に低下させないので、エアクーラでの結露や霜付きの発生を防止できるとともに、不必要な加熱が必要ない省エネルギーな運転が可能となる。
【0030】
また、エアクーラ出口側被処理空気温度を必要以上に低下させないので、ヒートポンプ装置のCOPを向上でき、省エネかつ高効率運転が可能になると共に、圧縮機の吸入圧力の制御に、吸入圧力調整弁を必要としないので、設備費を低コストにできる。
【0031】
また、本発明装置によれば、デシカントロータと、ヒートポンプサイクルを構成し、デシカントロータで除湿され吸着熱により温度上昇した被処理空気を冷却及び採熱するエアクーラ、及びデシカントロータを再生する再生用空気を加熱するエアヒータを備えたヒートポンプ装置とを備え、エアクーラで冷却した被処理空気を被空調室に供給するようにしたデシカントロータを用いた空調装置において、ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数制御装置と、再生用空気流を形成する再生ファン及びその送風量制御装置と、エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する第1の温度センサと、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御すると共に、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、前記再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻すコントローラと、を備えているので、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明方法及び装置の第1実施形態に係る空調装置の構成図である。
【図2】前記空調装置の制御装置及び検出装置のブロック線図である。
【図3】前記空調装置の運転手順を示すフローチャートである。
【図4】前記空調装置の運転手順の一部を示すフローチャートである。
【図5】前記空調装置の圧縮機回転数増加時のヒートポンプサイクルを示すモリエル線図である。
【図6】前記空調装置の再生ファン回転数増加時のヒートポンプサイクルを示すモリエル線図である。
【図7】第1実施形態の空調装置の試験結果を示す図表である。
【図8】本発明方法及び装置の第2実施形態に係る空調装置の構成図である。
【図9】第2実施形態に係る空調装置の制御装置及び検出装置のブロック線図である。
【図10】湿り空気線図である。
【図11】デシカントロータを用いた空調装置のエアヒータの入口側空気及び出口側空気の状態変化の例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0034】
(実施形態1)
本発明方法及び装置の第1実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す空調装置10Aにおいて、空調室12と再生室14とが、隔壁16を介して並設されている。空調室12には処理ファン24が設けられ、再生室14には再生ファン36が設けられている。これらのファンによって、空調室12と再生室14には互いに逆方向の空気流が形成されている。
【0035】
空調室12では、処理ファン24によって外気OAを取り込み、取り込んだ外気OAの温度及び湿度を調整し、被処理空気SAとして被空調室18に供給する。再生室14では、外気OA又は被空調室18の室内空気RAを取り入れ、それらの温度及び湿度を調整し、デシカントロータ20を再生するための再生用空気DAとして、デシカントロータ20に送り込む。被空調室16は、室内を低温雰囲気に保持する必要がある空間、例えば、冷凍食品等を冷凍保管する冷凍倉庫に隣接された荷捌室や、食肉用家畜屠体のカット室などに用いられる。
【0036】
デシカントロータ20は、空調室12と再生室14とに跨って配置され、回転軸20aを中心に回転する。空調室12内では、デシカントロータ20で被処理空気SAに含まれる水蒸気を吸着して除去する。デシカントロータ20の水蒸気を吸着した領域は、再生室14側に移動し、再生室14では、吸着した水蒸気を再生用空気DAに放出する。デシカントロータ20から水蒸気を取り込んだ再生用空気DAは、排気空気EAとして外気に排気される。デシカントロータ20は、吸着剤を含浸させた特殊シートでハニカム状に製作されており、図示省略の駆動モータで1時間に数十回転という低速で回転し、連続的に吸着と再生とを繰り返している。該吸着剤は、例えば、シリカゲルやゼオライト等の無機系吸着剤や、高分子吸着剤が用いられる。
【0037】
空調室12には、上流側に設けられた処理ファン24で外気OAが取り込まれる。外気OAは、空調室12に取り込まれる前に、プレクーラ22で予冷され、露点以下の温度になって除湿される。このプレクーラ22は必ずしも必要ではなく、設けない場合もある。プレクーラ22の出口側被処理空気SAは、デシカントロータ20で水蒸気が吸着され、除湿される。吸着剤は、水蒸気を吸着するとき、吸着熱を放出し、発熱するため、デシカントロータ通過後の被処理空気SAの温度は、通過前より上昇する。デシカントロータ通過後の被処理空気SAは、エアクーラ50で冷却され、その後、被空調室18に供給される。空調室12のエアクーラ50の出口側には、温度センサ26が設けられている。
【0038】
再生室14には、被空調室18の室内空気RA又は外気OAが、再生用空気DAとして導入される。なお、外気OAより被空調室18の室内空気RAのほうが低湿度であるので、再生用空気として好適である。導入された再生用空気DAは、エアヒータ46で加熱され、再生用空気DAの相対湿度が調整される。エアヒータ46の入口側に、エアヒータ入口側再生用空気DAの温度を検出する温度センサ30、及びエアヒータ入口側再生用空気DAの相対湿度を検出する湿度センサ32が設けられている。エアヒータ46の出口側には、エアヒータ出口側再生用空気DAの温度を検出する温度センサ34が設けられている。図10からもわかるように、絶対湿度が同一のとき、温度が高くなれば、相対湿度は低下し、温度が低ければ、相対湿度は増加する。
【0039】
エアヒータ46で加熱され相対湿度が低下した再生用空気DAは、デシカントロータ20を通り、デシカントロータ20に吸着されている水蒸気をデシカントロータ20から脱着させて取り込む。この時、デシカントロータ20に含浸された吸着剤は、水蒸気を放出する時吸熱するため、デシカントロータ通過後の排気空気EAは、温度が下がった湿り空気として外部に放出される。
【0040】
空調装置10Aには、ヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置40が設けられている。ヒートポンプ装置40の構成は、冷媒循環路42に、圧縮機44、エアヒータ46、膨張弁48、及びエアクーラ50等のヒートポンプサイクル構成機器が介設されてなる。冷媒として、高圧側で超臨界状態となり、エアヒータ46で再生用空気DAを80℃以上の高温に加熱できるCOを用いるとよい。また、圧縮機44を回転駆動する駆動モータ52と、駆動モータ52の回転数を制御するインバータ装置54と、再生ファン30の回転数を制御するインバータ装置38とが設けられている。コントローラ60は、温度センサ26、30,34及び湿度センサ32の検出値を入力し、これらの検出値に基づいて、インバータ装置38及び54を制御する。
【0041】
図2は、コントローラ60の構成を示す。図において、温度センサ30で検出されたエアヒータ入口側再生用空気DAの温度、及び湿度センサ32で検出されたエアヒータ入口側再生用空気DAの相対湿度Hrdから、演算器620で再生用空気DAの絶対湿度Hadを演算する。次に、演算器618で、絶対湿度Hadに基づいてエアヒータ出口側空気温度設定値Tasが設定される。演算器618に設定相対湿度Hrs(例えば、Hrs=7%)が入力され、設定相対湿度Hrsとなるために必要なエアヒータ出口側空気温度設定値Tasを演算する。設定値Tasは比較器602に入力される。
【0042】
エアヒータ出口側空気温度設定値Tasは、比較器602で、温度センサ34で検出されたエアヒータ出口側空気温度検出値Tadと比較され、その偏差が出力される。PID演算器604では、後述する出力上限リミット演算器606で算出された圧縮機回転数操作量Rcaがフィードバックされ、該偏差と圧縮機回転数操作量Rcaとから、PID演算により、圧縮機44の回転数設定値Rcsが出力される。
【0043】
圧縮機回転数設定値Rcsは、出力上限リミット演算器606に送られ、出力上限リミット演算器606では、後述する出力上限設定値増減器612から送られる圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)を加味して、圧縮機回転数操作量Rcaを算出し、出力する。この圧縮機回転数操作量Rcaをインバータ装置54に入力し、圧縮機44を回転させると共に、同時に操作量RcaをPID演算器604にフィードバックする。ここで、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)は圧縮機44の能力限界値である。
【0044】
比較器608で、エアクーラ50の出口側空気温度設定値Tesは、温度センサ26で検出されるエアクーラ50の出口側空気温度検出値Tedと比較され、この偏差は、タイマ610に送られる。該偏差に対し、タイマ610で、所定時間経過後、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)の増減量ΔLmax(Rcs)が出力され、出力上限設定値増減器612に送られる。出力上限設定値増減器612では、該増減量ΔLmax(Rcs)から、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)を求め、それを出力上限リミット演算器606に送る。
【0045】
比較器602の偏差は、タイマ614にも送られ、この偏差に対し、タイマ614で、所定時間経過後、再生ファン36の回転数操作量増減値ΔRfaが出力され、再生ファン回転数増減器616に送られる。再生ファン回転数増減器616では、この回転数操作量増減値ΔRfaから再生ファン36の回転数操作量Rfaを算出し、再生ファン36がこの回転数操作量Rfaとなるように、インバータ装置38を制御する。
【0046】
次に、空調装置10Aの運転手順を図3により説明する。図3において、空調装置10Aの運転をスタートさせ(S10)、運転中であることを確認した後(S11)、エアヒータ46の出口側空気温度設定値Tasを演算する(S12)。
【0047】
図4により、設定値Tasの演算手順を説明する。図4において、スタート後(S120)、温度センサ30及び湿度センサ32で検出されたエアヒータ入口側再生用空気DAの温度及び相対湿度から、演算器620で再生用空気DAの絶対湿度Hadを演算する(S122)。次に、演算器618で、絶対湿度Hadと設定相対湿度Hrsとから、エアヒータ出口側空気温度設定値Tasを演算する(S124)。
【0048】
設定値Tasが80℃以下のとき、設定値Tasはそのまま比較器602に送られる(S126)。設定値Tasが80℃を超えるとき、設定値Tasは80℃として、比較器602に送られる(S128)。設定値Tasを80℃以下とする理由は、エアヒータ出口側再生用空気温度が80℃を超えると、デシカントロータ20に担持された高分子収着剤が劣化又は破損するためである。なお、一般的な吸着剤を使用する場合はこの限りではない。
【0049】
次に、図3に戻り、エアヒータ46の出口側空気温度設定値Tasと、エアヒータ出口側空気温度検出値Tadとの偏差、及び出力上限リミット演算器606からフィードバックされた圧縮機回転数操作量Rcaとに基づいて、PID演算器604でPID演算が行なわれ(S13)、圧縮機回転数設定値Rcsが演算される。
【0050】
次に、始動時の制御マスク時間が経過したかどうかを判定する(S14)。制御マスク時間が経過していない時、圧縮機44の回転数は、PID演算器604で演算された前記設定値Rcsで駆動され、再生ファン36の回転数は、予め設定された回転数で駆動される(S16)。この制御マスク時間をもうけた理由は、始動時は運転がまだ安定しておらず、本来の運転制御を行なっても応答性の良い制御ができないためである。
【0051】
制御マスク時間が経過したら、温度センサ26で検出したエアクーラ50の出口側空気温度検出値Tedが設定範囲Lmin(Tes)〜Lmax(Tes)に入っているかどうかを判定する(S18)。検出値Tedが該設定範囲にあるとき、タイマ610で、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)の増減量ΔLmax(Rcs)を出力しない。即ち、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)を変更せず、出力上限リミット演算器606で圧縮機回転数操作量Rcaを決定し(S34)、この操作量で圧縮機44のインバータ装置54を制御する(S36)。
【0052】
エアクーラ50の出口側空気温度検出値Tedが、設定範囲下限値Lmin(Tes)を下回っていたら、タイマ610を圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)を減少させる方向にセットし(S22)、タイムアップ時間経過後(S24)、増減量ΔLmax(Rcs)を出力する。増減量ΔLmax(Rcs)の減少量は、タイムアップ時間に比例して設定される。なお、タイムアップ時間経過前に、検出値Tedが設定範囲内に戻ったら、Lmax(Rcs)を変更しない。
【0053】
タイムアップ時間経過後、増減量ΔLmax(Rcs)は出力上限設定値増減器612に出力され、出力上限設定値増減器612では、この増減量ΔLmax(Rcs)に基づいて、低減された上限リミット設定値Lmax(Rcs)を演算し、出力上限リミット演算器606に出力する(S34)。出力上限リミット演算器606では、この上限リミット設定値Lmax(Rcs)及びPID演算器604から出力される設定値Rcsに基づいて、圧縮機回転数操作量Rcaを演算し、インバータ装置54に出力する(S36)。
【0054】
エアクーラ50の出口側空気温度検出値Tedが、設定範囲上限値Lmax(Tes)を上回っていたら、タイマ610を圧縮機回転数の増減量ΔLmax(Rcs)を増加させる方向にセットする(S28)。タイムアップ時間経過後(S30)、タイムアップ時間に比例して増加した増減量ΔLmax(Rcs)を、出力上限設定値増減器612に出力する。なお、タイムアップ時間経過前に、Tedが設定範囲内に戻ったら、Lmax(Rcs)を変更しない。
【0055】
出力上限設定値増減器612では、この増減量ΔLmax(Rcs)に基づいて、増加した上限リミット設定値Lmax(Rcs)を出力する(S32)。出力上限リミット演算器606では、この上限リミット設定値Lmax(Rcs)及びPID演算器604から出力される設定値Rcsに基づいて、圧縮機回転数操作量Rcaを演算し、インバータ装置54に出力する(S36)。
【0056】
このようにして、エアクーラ50の出口側空気温度検出値Tedに応じて、検出値Tedが低いとき、圧縮機回転数を減少させ冷媒循環量を減少させる。これによって、圧縮機44の吸入圧力を上昇させ、エアクーラ出口側被処理空気温度を上昇できる。逆に、検出値Tedが高いときは、圧縮機回転数を増加させ冷媒循環量を増加させる。これによって、圧縮機44の吸入圧力を下降させ、エアクーラ出口側被処理空気温度を低減できる。
【0057】
図5のモリエル線図に示すように、圧縮機44の吸入圧力が下がると、ヒートポンプサイクル線がAからA’に移行し、ヒートポンプ装置40のCOPが低下する。そのため、必要以上にエアクーラ出口側被処理空気の温度を下げないほうがよい。本実施形態では、圧縮機44の回転数を調整して、エアクーラ出口側被処理空気の温度を必要以上に下げないようにしているので、ヒートポンプ装置40のCOPを高く維持した省エネかつ高効率運転が可能になる。
【0058】
次に、予め設定された回転数で駆動されている再生ファン36の制御を行なう。まず、エアヒータ46の出口側空気温度検出値Tadが設定範囲Lmin(Tas)〜Lmax(Tas)にあるかどうかを判定する(S38)。該検出値Tadが設定範囲内にあるとき、タイマ614を作動させない(S40)。即ち、タイマ614で再生ファン回転数の増減量ΔRfaを出力させない。そのため、再生ファン回転数増減器616では、再生ファン回転数操作量Rfaを変更せず、再生ファン36の稼動を継続する(S54)。
【0059】
検出値Tadが設定範囲の下限値Lmin(Tas)を下回っていたら、タイマ614を再生ファン36の回転数を減少させる方向にセットし(S42)、タイムアップ時間経過後(S44)、回転数操作量を減少させる増減量ΔRfaを出力させる(S46)。なお、タイムアップ時間経過前に、検出値Tadが設定範囲内に戻ったら、回転数操作量Rfaを変更しない。
【0060】
この増減量ΔRfaに基づき、再生ファン回転数増減器616では、前回より低い回転数操作量Rfaを出力し(S46)、この回転数操作量Rfaとなるように、インバータ装置38を制御する。これによって、エアクーラ出口側被処理空気温度を上げ、設定範囲に戻すことができる。
【0061】
検出値Tadが設定範囲の上限値Lmax(Tas)を上回っていたら、タイマ614を再生ファン36の回転数を増加させる方向にセットし(S48)、タイムアップ時間経過後(S50)、回転数操作量を増加させる増減量ΔRfaを出力させる(S52)。なお、タイムアップ時間経過前に、Tadが設定範囲内に戻ったら、回転数操作量Rfaを変更しない。
【0062】
この増減量ΔRfに基づき、再生ファン回転数増減器616では、前回より高い回転数操作量Rfaを出力し(S54)、この回転数操作量Rfaとなるように、インバータ装置38を制御する。これによって、エアクーラ出口側被処理空気温度を下げ、設定範囲に戻すことができる。
【0063】
このようにして、エアヒータ46の出口側空気温度検出値Tadに応じて、検出値Tadが低いとき、再生ファン32の回転数を減少させてエアヒータ出口側空気温度を上昇させ、検出値Tadが高いときは、再生ファン32の回転数を増加させてエアヒータ出口側空気温度を下降させる。これによって、エアヒータ46の出口側空気温度を設定範囲に戻すことができる。
【0064】
図6のモリエル線図において、再生ファン36の回転数を増加させることによって、ヒートポンプサイクル線がBからB’に移行し、ヒートポンプ装置40のCOPを向上できる。そのため、検出値Tadが設定範囲を上回っているとき、ヒートポンプ装置40のCOPを向上させながら、検出値Tadを設定範囲に戻すことができる。
【0065】
図1中の数値は、被空調室18が冷凍倉庫に隣接された前室(荷捌室)であるとき、各領域における被処理空気又は再生用空気の温度及び湿度の一例を示す。
【0066】
本実施形態によれば、温度センサ30及び湿度センサ32によって再生用空気DAの絶対湿度Hadを演算し、この絶対湿度Hadから、エアヒータ出口側再生空気DAが設定相対湿度Hrs(例えば、Hrs=7%)となるように、エアヒータ出口側再生用空気温度を制御しているので、絶対湿度に応じた最適な再生温度でデシカントロータ20の除湿性能を高く保持できる。
【0067】
また、エアクーラ50の出口側被処理空気温度を被空調室18の必要温度以下に低下させないので、エアクーラ50での結露によるカビ等の発生や霜付きを防止できる。そのため、被処理空気SAを清浄な状態で被空調室18に供給できると共に、ヒートポンプ装置40のCOPを向上でき、省エネかつ高効率運転が可能になる。また、圧縮機44の吸入圧力を制御するために、吸入圧力調整弁を必要としないので、設備費を低コストにできる。
【実施例】
【0068】
図7は、前記第1実施形態に係る空調装置10Aを実際に運転させて得られた試験結果である。この試験では、ヒートポンプ装置40の冷媒としてCOを用い、被空調室18は、冷凍倉庫に隣接された前室(荷捌室)である。図7において、横軸は時間軸であり、この制御運転を1〜12段階まで行なうのに1〜2時間を要した。この運転例では、始動時の第1段階で、エアクーラ出口側空気温度検出値Tedが7℃であって、設定値Tesの10℃より低温であり、エアヒータ出口側空気温度検出値Tadが設定値Tasと同一の70℃である。
【0069】
エアクーラ出口側空気検出値Tedを設定値Tesに近づけるため、圧縮機回転数操作量Rcaを低減すると、ヒートポンプ装置40の冷媒循環量が減少するため、エアヒータ出口側空気温度検出値Tadが上昇する。同時に、圧縮機回転数操作量Rcaの低減に伴い、圧縮機回転数上限リミット設定値Lmax(Rcs)も低減する。この操作でエアクーラ出口側空気温度検出値Tedは、14℃まで上昇する(第4段階)。
【0070】
次に、第4段階で、再生ファン操作量Rfaを低減することで、エアヒータ出口側空気温度検出値Tadが上昇する(第5段階)。このような制御を行なうことで、最終の第12段階で、エアクーラ出口側空気温度検出値Ted及びエアヒータ出口側空気温度検出値Tadを設定値に到達させることができた。
【0071】
(実施形態2)
次に、本発明方法及び装置の第2実施形態を図8及び図9に基づいて説明する。図8に示すように、本実施形態の空調装置10Bは、エアヒータ46上流側の再生室14に温度センサ30のみを設け、湿度センサ32をなくしている。その他の装置構成は、前記第1実施形態と同一である。
【0072】
図9に、空調装置10Bのコントローラ60の構成を示す。図9において、温度センサ30でエアヒータ入口側再生用空気DAの温度を検出し、この検出値を演算器620に入力する。また、演算器620には、夏期、中間期又は冬期等季節毎に予め設定されたエアヒータ入口側再生用空気DAの季節相対湿度設定値SHrsが入力される。季節相対湿度設定値SHrsは、その季節に合致した相対湿度が設定されている。温度センサ30の温度検出値と季節相対湿度設定値SHrsとから、演算器620で再生用空気DAの絶対湿度Hadを演算する。
【0073】
演算器618で、設定相対湿度Hrs(例えば、Hrs=7%)が入力され、絶対湿度Hadに基づいて、エアヒータ入口側再生用空気DAの相対湿度が設定相対湿度Hrsとなるエアヒータ出口側空気温度設定値Tasを演算する。設定値Tasは比較器602に入力される。設定値Tasは、比較器602で、温度センサ34で検出されたエアヒータ出口側空気温度検出値Tadと比較され、その偏差が出力される。その他の装置構成は、図2に示す前記第1実施形態のコントローラ60の構成と同一である。また、その後の運転手順も第1実施形態と同一である。
【0074】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得られる外、エアヒータ入口側の再生室14に湿度センサ32をなくして温度センサ30のみを設け、温度センサ30の検出値と、予め設定された季節相対湿度設定値SHrsとから、デシカントロータ上流側再生用空気DAの絶対湿度Hadを演算するようにしているので、制御装置が簡素かつ低コストになるという長所がある。
【0075】
なお、第2実施形態では、エアヒータ入口側再生用空気DAの季節相対湿度設定値SHrsを予め設定しているが、第2実施形態の変形例として、エアヒータ入口側再生用空気DAの季節絶対湿度を設定するようにしてもよい。このように、季節絶対湿度を設定するようにすれば、温度センサ34の検出値と前記季節絶対湿度とから、エアヒータ入口側再生用空気DAの相対湿度を決定できる。そのため、デシカントロータ入口側再生用空気の絶対湿度を演算する演算器620が不要になる。従って、第2実施形態と比べて、制御がさらに容易になると共に、制御装置がさらに簡素かつ低コストになるという長所がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、霜付きがなく、圧縮機の吸入圧力調整弁等の付帯設備を必要とせず、低コストで、かつ省エネを達成できる高効率な除湿空調手段を実現できる。
【符号の説明】
【0077】
10A、10B 空調装置
12 空調室
14 再生室
16 隔壁
18 被空調室
20 デシカントロータ
20a 回転軸
22 プレクーラ
24 処理ファン
26 温度センサ(第1の温度センサ)
30 温度センサ(第2の温度センサ)
32 湿度センサ
34 温度センサ(第3の温度センサ)
36 再生ファン
38、54 インバータ装置
40 ヒートポンプ装置
42 冷媒循環路
44 圧縮機
46 エアヒータ
48 膨張弁
50 エアクーラ
52 駆動モータ
60 コントローラ
602,608 比較器
604 PID演算器
606 出力上限リミット演算器
610,614 タイマ
612 出力上限設定値増減器
616 再生ファン回転数増減器
618,620 演算器
A、A’、B、B’ ヒートポンプサイクル線
K 臨界点
D 飽和蒸気線
L 飽和液線
T 等温線
DA 再生用空気
EA 排気空気
Had 絶対湿度
Hrd 相対湿度
Hrs 設定相対湿度
SHrs 季節相対湿度設定値
OA 外気
RA 被空調室室内空気
SA 被処理空気
Rcs 圧縮機回転数設定値
Rca 圧縮機回転数操作量
Tas エアヒータ出口側空気温度設定値
Tad エアヒータ出口側空気温度検出値
Tes エアクーラ出口側空気温度設定値
Ted エアクーラ出口側空気温度検出値
Lmax(Rcs) 圧縮機回転数上限リミット設定値
ΔLmax(Rcs) 圧縮機回転数上限リミット設定値増減量
Rfa 再生ファン回転数操作量
ΔRfa 再生ファン回転数増減値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デシカントロータで被処理空気を除湿し吸着熱により温度上昇した被処理空気をヒートポンプサイクルを構成するヒートポンプ装置のエアクーラで冷却及び採熱した後、被空調室に供給すると共に、デシカントロータを再生する再生用空気をヒートポンプ装置のエアヒータで加熱するようにしたデシカントロータを用いた空調方法において、
エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する工程と、
エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御する工程と、
エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、再生用空気流を形成する再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻す工程と、からなることを特徴とするデシカントロータを用いた空調方法。
【請求項2】
デシカントロータ上流側再生用空気の温度及び相対湿度からデシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を求め、該絶対湿度からエアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるように、エアヒータ出口側再生用空気温度を制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデシカントロータを用いた空調方法。
【請求項3】
エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を季節に応じて予め設定しておき、エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度設定値と温度とから絶対湿度を近似演算し、該絶対湿度からエアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデシカントロータを用いた空調方法。
【請求項4】
デシカントロータと、ヒートポンプサイクルを構成し、デシカントロータで除湿され吸着熱により温度が上昇した被処理空気を冷却及び採熱するエアクーラ、及びデシカントロータを再生する再生用空気を加熱するエアヒータを備えたヒートポンプ装置とを備え、エアクーラで冷却した被処理空気を被空調室に供給するようにしたデシカントロータを用いた空調装置において、
前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数制御装置と、再生用空気流を形成する再生ファン及びその送風量制御装置と、エアクーラ出口側被処理空気温度を検出する第1の温度センサと、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲となり、かつエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲となるように、前記ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御すると共に、エアクーラの冷却負荷量が変動してエアクーラ出口側被処理空気温度が設定範囲外となったとき、前記再生ファンの送風量を制御し、エアクーラ出口側被処理空気温度を設定範囲に戻すコントローラと、を備えていることを特徴とするデシカントロータを用いた空調装置。
【請求項5】
エアヒータの入口側再生用空気の温度を検出する第2の温度センサと、エアヒータ入口側再生用空気の相対湿度を検出する湿度センサと、エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、
前記コントローラは、第2の温度センサと湿度センサの検出値からデシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を演算する演算装置を備え、前記絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気温度を制御するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のデシカントロータを用いた空調装置。
【請求項6】
エアヒータの入口側再生用空気の温度を検出する第2の温度センサと、エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、
前記コントローラは、第2の温度センサの検出値と、季節に応じて予め設定されたエアヒータ入口側再生用空気の相対湿度とから、デシカントロータ上流側再生用空気の絶対湿度を近似演算する演算装置を備え、前記絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるようにエアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のデシカントロータを用いた空調装置。
【請求項7】
エアヒータ出口側再生用空気温度を検出する第3の温度センサと、を備え、
前記コントローラは、季節に応じて予め設定されたエアヒータ入口側再生用空気の絶対湿度に基づいて、エアヒータ出口側再生用空気の相対湿度が設定範囲になるように、エアヒータ出口側再生用空気の温度を制御するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のデシカントロータを用いた空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−167843(P2012−167843A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27757(P2011−27757)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【特許番号】特許第4870843号(P4870843)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】