デシタビンポリモルフの組成物及び処方物並びにその使用方法
デシタビンのポリモルフを用いて新形成症状を治療するための医薬組成物及び方法が提供される。更に、前記医薬組成物の製造方法及び投与方法もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、デシタビンの新規なポリモルフ(polymorph)、特にデシタビンの無水結晶及び半水結晶形を提供する。本発明はまた、そのようなポリモルフを含む医薬組成物及び処方物を提供する。いくつかの変型例では、本明細書の医薬組成物及び処方物は、経口投与、注射及び/又は吸入用に適合させることができる。開示のデシタビンポリモルフの生成方法、開示のデシタビンポリモルフの医薬処方物の製造方法の他に前記医薬処方物を種々の疾患の治療に使用する方法を含む、種々の方法もまた提供される。
ある実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0及び14.5に主要回折線(major diffraction line)゜2θ値を、更にほぼ13、18.5、21.5、23.5及び24.5に微弱回折線(minor diffraction line)゜2θ値を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)によって測定したとき約200.5℃から202.5℃で吸熱、約202.5℃から204.5℃で放熱;約1850cm-1に集中する吸収、及び約2000cm-1に集中する別のピークを有するIRスペクトル;及び約2900cm-1から3000cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りにシャープなピークを有し、約600cm-1から1600cm-1で一連の小バンドに取り囲まれたラマンスペクトル。
【0002】
別の実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、6.5、13.5、17、18、20.5、22.5及び23.5の゜2θ値に主要回折線を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法によって測定したとき85℃から87℃で吸熱、93℃から96℃で吸熱、197℃から200℃で吸熱、及び199℃から201℃で放熱;3400cm-1辺りに広いストレッチ、3100cm-1から2800cm-1にストレッチ、2000cm-1辺りにシャープなピーク、及び約1700cm-1から400cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトル;及び、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、約800cm-1にピーク、1600cm-1から600cm-1に一連の小バンドを有するラマンスペクトル。
また別の実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、13、14.5、16.5、19、23及び27.5の゜2θ値に主要回折線を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法によって測定したとき48℃から50℃で第一の微弱吸熱、163.6℃から165.6℃で第二の微弱吸熱、194.8℃から196.8℃で第三の吸熱、及び195℃から197℃で放熱;3625cm-1から3675cm-1で吸収無し、大雑把に3400cm-1に広いストレッチ、2000cm-1に弱いピーク、及び1700cm-1から500cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトル;及び、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、約800cm-1にピークを有するラマンスペクトル。
【0003】
発明の詳細な説明
デシタビン(又は5-アザ-2'-デオキシシチジン)は、1964年に先ず初めに合成されたピリミジン類似体である。その抗白血病性潜在能力は、Sorm and Vesely(1968)が最初に認めた。最近の研究は、デシタビン(及びその類似体5-アザシチジン)の抗白血病活性は、DNAメチルトランスフェラーゼと共有結合アダクツを形成することにより、前記メチルトランスフェラーゼ酵素を阻害するその能力と関係を有する可能性を示した。サイレント遺伝子の活性化は、老化及びアポトーシスに至る白血球細胞の最終分化の誘発に必要であると考えられる。複数の研究が、デシタビンによる処置は、白血病細胞の表現型改変、CD13及びCD33の発現低下、並びに成熟類骨髄系細胞の表面決定基(例えばCD16及びCD11c)の抗原密度の増加をもたらすことを示している。興味深いことに、白血病細胞表面のMHCクラスI分子、HLA-DR及びベータ-2-ミクログロブリンの発現は、デシタビン療法時に顕著に増加する。したがって、デシタビン処置は、IL-2のような免疫介在療法、又は移植若しくはドナー白血球輸液に付随する移植片対白血病作用を高める可能性がある。デシタビンは特に再発性又は難治性白血病の患者での応答達成に効果的であり、更に骨髄外毒性が限定的であるために有利な薬剤である。
本発明はデシタビンの新規なポリモルフを提供する。本発明は更にそのようなポリモルフを用いる医薬組成物及び処方物を提供する。前記医薬組成物及び処方物は、経口投与、注射及び/又は吸入を含む種々の投与形のために適合させられる。本発明はまた、新規なデシタビンポリモルフの生成方法、デシタビンポリモルフの医薬処方物の製造方法、及び種々の疾患(例えば白血病及び/又は、CD13及び/又はCD33の発現レベルの上昇及び/又はCD16及び/又はCD11cの発現レベルの低下に付随する他の症状)を治療する方法を提供する。
【0004】
A.定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語及び語句を下記に定義する:
本明細書で用いられる、“無水物”という用語は、その実験式が水を含まない化合物を指す。
本明細書で用いられる、“半水和物”という用語は、1分子の水が2分子のデシタビンと結合した水和物を指す。
本明細書で用いられる、“一水和物” という用語は、その実験式が1分子の水を含む化合物を指す。
本明細書で用いられる、“非晶質”という用語は、サンプルのXRPDパターンにおいて範囲が明確なピークを欠くか、又は広がった“ハロー”の特徴を有するサンプルを指す。“非晶質”という用語はまた、結晶含有量をほとんど含まず、XPRD又は他の回折技術では識別不能パターンを生じる物質を指す。ガラス質物質は非晶質であると考えられる。非晶質物質は真の結晶格子をもたず、結果として純固体というよりはむしろガラス質であり、技術的には非常に粘稠な非結晶性流動体に類似する。純固体というよりは、ガラスは擬似固体非晶質物質としてより正確に表現することができる。したがって、非晶質物質は、擬似固体ガラス質物質を指す。化合物の溶液からの沈殿(しばしば迅速な溶媒の蒸発によって達成される)は、化合物の非晶質型に都合がよいことが知られている。
本明細書で用いられる、“広い”又は“拡大した”という用語は、XRPD、NMR及びIR分光分析線を含むスペクトル線を指し、基準スペクトルの線幅と比較した相対的な用語である。基準スペクトルは、しばしば具体的な化合物の非操作結晶(下記に定義されている)型のスペクトルであり、溶媒の組成及び特性を含むある一式の物理的及び化学的条件(例えば温度及び圧力)から直接得られるスペクトルで、例えば、粉砕前の結晶材料に対するすり潰した又は粉砕した結晶材料のXRPDスペクトルを指す。溶媒和又は水和された構成分子、イオン又は原子が迅速にタンブリングしない物質では、線の拡大は、前記化合物の化学的成分の方位のランダム性の増加を示し、したがって非晶質含有量の増加を示す。比較が種々の結晶化条件により得られた結晶質物質間で実施されるとき、拡大は、拡大スペクトル線を有するサンプルの非晶質含有量の増加、又は同一ではないが類似のスペクトルを有する結晶の混合物の可能性のどちらかを示している。
【0005】
本明細書で用いられる、“結晶質”という用語は、水和又は溶媒和され得る、XRPD又は他の回折技術によって識別可能な回折パターンを示すために十分な結晶含有量を有する個々の化合物を含む物質を指す。溶液に溶解された化合物の直接結晶化によって溶媒から得られるか、又は種々の結晶化条件下で得られた結晶の相互変換(interconversion)から得られる結晶質物質は、前記溶媒を含む結晶を有するであろう(前記は結晶質溶媒和物と称される)。更にまた、具体的な溶媒組成及び結晶化の物理的特性(総じて結晶化条件と称される)は、前記結晶化条件に固有の物理的及び化学的特性を有する結晶質物質をもたらすことができる。結晶特性の例には、前記化合物の化学成分の互いに対する前記結晶内での方位、及び前記化合物のある特定の形態の優位性が含まれる。
存在する結晶の個々のタイプの形態(結晶の熱動力学的安定性を決定する)に応じて、前記個々の化合物を含む非晶質固体物質は、最初の結晶化の副産物及び/又は前記結晶質物質を含む結晶の分解産物として多様な量で存在するであろう。したがって、本明細書で用いられる結晶質は、前記物質が識別可能な回折パターンを有するかぎり、種々の程度の非晶質含有量を含む。結晶質物質の非晶質含有量は、物質をすり潰すか又は粉砕することによってしばしば増加し得る(前記は、非粉砕結晶質物質に比較して回折スペクトル線又は他のスペクトル線の拡大によって明示される)。XRPD又は他の結晶特異的スペクトルで識別が不能になるか(実質的に物質を非晶質にする)、又はほとんど識別不能になる得る程度にまで十分なすり潰し及び/又は粉砕は、未粉砕結晶質物質と比較してスペクトル線は拡大され得る(擬似非晶質と称され得る)。
本明細書で用いられる、“痕跡”という用語は、本明細書で用いられる物理的及び化学的検出方法によって検出可能な量であるが、結晶内に存在する個々の化合物の0.03当量未満を含んでいる。例えば、0.04%(w/w)未満のH2Oを含むデシタビンの結晶質ポリモルフ(ここでデシタビン1分子当たり1個のH2O分子を含む結晶(例えば1当量のH2O)はH2Oがほぼ4.4%(w/w)である)、水の痕跡を含むと正確に記載される。
【0006】
B.癌関連遺伝子の異常な高メチル化
哺乳動物細胞では、ゲノムDNA中のほぼ3%から5%のシトシン残基が5-メチルシトシンの形態で存在する。シトシンのこのような改変はDNA複製後に生じ、メチルドナーとしてS-アデノシル-メチオニンを用いてDNAメチルトランスフェラーゼによって触媒される。ほぼ70%から80%の5-メチルシトシン残基がCpG配列で見出される。高頻度で見出されるとき、ゲノム中のこの配列はCpGアイランドと称される。非メチル化CpGアイランドはハウスキーピング遺伝子に付随し、一方、多くの組織特異的遺伝子のアイランドは、それらが発現される組織を除いてメチル化される。DNAのこのメチル化は、胚の発生時の真核細胞における種々の遺伝子発現の制御で重要な役割を果たすと提唱されてきた。この仮説に一致して、DNAメチル化の阻害は哺乳動物細胞の分化を誘発することが見出された(Jones and Taylor, Cell (1980) 20:85-93)。
DNA中のメチル化シトシン(C)(5-メチルシトシン)は偶発的な脱アミノ化を受け、シトシンが脱アミノ化されてからウラシルを生じるよりもはるかに高速でチミン(T)が生成される(以下を参照されたい:Shen et al. Nucleic Acids Res. (1994) 22:972-976)。5-メチルシトシンの脱アミノ化が修復されない場合、CからTへの遷移変異をもたらすであろう。例えば、ヒトp53遺伝子中のDNA損傷の多くの“ホットスポット”がCpGからTpGへの遷移変異と密接に関連している(以下を参照されたい:Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94:3893-3898)。p53遺伝子以外の多くの腫瘍抑制遺伝子もまた、それらのプロモーター領域中のCpGアイランドの異常なメチル化によって不活化され得る。多くの腫瘍サプレッサー及び他の癌関連遺伝子が、ヒト癌細胞及び原発腫瘍で高メチル化されることが見出された。腫瘍増殖の抑制に参画し、異常な高メチル化によってサイレンス化される遺伝子の例には以下が含まれる:p15/INK4B(サイクリンキナーゼ阻害因子)、p16/INK4A(サイクリンキナーゼ阻害因子)、p73(p53同族体)、ARF/INK4A(通常レベルp53)、ウィルムス腫瘍、フォンヒッペルリンダウ(von Hippel Lindau、VHL)、レチン酸レセプターβ(RAR β)、エストロゲンレセプター、アンドロゲンレセプター、癌(HIC1)及び網膜芽細胞腫(Rb)で高メチル化された乳房由来増殖阻害因子、侵襲/転移サプレッサー(例えばE-カドヘリン)、組織阻害因子メタロプロテイナーゼ-2(TIMP-3)、mts-1及びCD44;DNA修復/無毒化発癌物質(例えばメチルグアニンメチルトランスフェラーゼ)、hMLH1(ミスマッチDNA修復)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、及びBRCA-1;血管形成阻害因子(例えばトロンボスポンジン-1(TSP-1)及びTIMP3);及び腫瘍抗原(例えばMAGE-1)。
【0007】
特に、p16のサイレンシングは、多くの種々の癌タイプでしばしば異常なメチル化を伴う。p16/INK4A腫瘍サプレッサー遺伝子は、構成的に発現されるサイクリン依存キナーゼ阻害剤をコードする(前記はサイクリンD-Rb経路による細胞周期の制御で決定的な役割を果たす)。Hamel and Hanley-Hyde(Cancer Invest. (1997) 15:143-152)は染色体9p(原発性肺癌のヘテロ接合性の低下をしばしば受ける部位)上に位置する。これらの癌では、非欠失対立遺伝子座の不活化をもたらすメカニズムは異常なメチル化であると説明されている。実際、p16を発現しなかった肺癌細胞株の場合、48%がこの遺伝子のメチル化の徴候を示した(Otterson et al. Oncogene (1995) 11:1211-1216)。原発性非小細胞性肺腫瘍の約26%がp16のメチル化を示した。乳房及び結腸の原発性腫瘍はそれぞれ31%及び40%のp16のメチル化を示した(Herman et al. Cancer Res. (1995) 55:4525-4530)。
レチン酸レセプターの異常なメチル化はまた、乳癌、肺癌、卵巣癌などの進行に寄与する。レチン酸レセプターは、DNA中のレチン酸応答エレメント(RARE)と結合して遺伝子発現を活性化させる核内転写因子である。特に、仮説的腫瘍サプレッサーRARβ遺伝子は染色体3p24(乳癌のヘテロ接合性の低下をしばしば示す部位)上に位置する(Deng et al. (1996)Science 274:2057-2059)。いくつかの腫瘍細胞へのRARβのcDNAのトランスフェクションは最終的分化を誘発し、ヌードマウスでのそれらの腫瘍原性を低下させた(Caliaro et al. Int. J. Cancer (1994) 56:743-748;及びHoule et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:985-989)。RARβ遺伝子の発現欠如は乳癌及び他の癌タイプについて報告された(Swisshelm et al. Cell Growth Differ. (1994) 5:133-141;及びCrowe, Cancer Res. (1998) 58:142-148)。RARβ遺伝子発現欠如についての前記のような理由はRARβ遺伝子の高メチル化に依る。実際、RARβのメチル化は、原発性結腸癌の43%及び原発性乳癌の30%で検出された(Cote et al. Anti-Cancer Drugs (1998) 9:743-750;及びBovenzi et al. Anticancer Drugs (1999) 10:471-476)。
【0008】
エストロゲンレセプター遺伝子の5'-領域のCpGアイランドの高メチル化は多くの腫瘍タイプで見出された(Issa et al. J. Natl. Cancer Inst. (1994) 85:1235-1240)。エストロゲンレセプター発現欠如は、遺伝子変異が存在しない場合ですらホルモン非応答性乳癌の一般的特徴である(Roodi et al. J. Natl. Cancer Inst. (1995) 87:446-451)。エストロゲン陰性である原発性乳房腫瘍の約25%が、この遺伝子の1つの部位に異常なメチル化を提示していた。エストロゲンレセプターのmRNAを発現しない乳癌細胞株は、DNAメチルトランスフェラーゼレベルの増加及びこの遺伝子のプロモーター領域の高度のメチル化を示していた(Ottaviano et al. Cancer Res. (1994) 54:2552-2555)。ヒトのミスマッチ修復遺伝子(hMLH-1)の高メチル化はまた種々の腫瘍で見出されている。ミスマッチ修復は、細胞増殖時のDNA複製の忠実性を高めるために細胞によって用いられる。この活性の欠如は、正常細胞で観察される変異速度よりもはるかに速い変異速度をもたらし得る(Mordrich and Lahue, Annu. Rev. Biochem. (1996) 65:101-133)。ミスマッチ修復遺伝子(hMLH-1)のプロモーター領域のメチル化は原発性結腸腫瘍での前記の発現欠如と相関し、一方、正常な隣接組織及びこの遺伝子を発現する結腸腫瘍はそのメチル化の形跡を示さない(Kane et al. Cancer Res. (1997) 57:808-811)。
DNAの異常なメチル化が腫瘍形成時に発生する分子メカニズムは明らかではない。DNAメチルトランスフェラーゼが、親の鎖内に相補的なメチル化されたCpGをもたない発生期DNA鎖でCpGアイランドをメチル化することによって間違いを生じることはあり得る。更にまた、異常なメチル化は、これらの部位をメチル化から“護る”CpG結合タンパク質の除去による可能性も有り得る。そのメカニズムが何であれ、異常なメチル化が頻発することは正常な哺乳動物細胞では稀な事象である。
【0009】
C.デシタビン
デシタビン(5-アザ-2'-デオキシシチジンとしても知られている)は、その関連する天然のヌクレオシドデオキシシチジンのアンタゴニストである。これら2つの化合物の唯一の構造的相違は、デシタビンのシトシンの5位には、デオキシシチジンのこの位置の炭素に対して窒素が存在することである。デシタビンでは2つの異性形を区別することができる。この場合、ベータ-アノマーがデシタビンの活性形である。水溶液中でのデシタビンの分解態様は以下のとおりである:(a)活性なβ-アノマーの不活性なα-アノマーへの変換(Pompon et al. J. Chromat. (1987) 388:113-122);(b)アザ-ピリミジン環の開環によるN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシル)-尿素の生成(Mojaverian and Repta, J. Pharm. Pharmacol. (1984) 36:728-733);及び(c)その後に続くグアニジン化合物の生成(Kissinger and Stemm, J. Chromat. (1986) 353:309-318)。本出願はデシタビンのベータ-アノマーを扱う。
デシタビンは多くの薬理学的特徴を有する。分子レベルでは、DNAへの取り込みについてS期依存性である。細胞レベルでは、デシタビンは細胞の分化を誘発することができ、血液学的毒性を示す。in vivoで短い半減期を有するにもかかわらず、デシタビンは優れた組織分布を示す。
デシタビンのもっとも主要な機能は、DNAメチル化を特異的に及び強力に阻害するその能力である。例としてCpGアイランドのシトシンのメチル化について上述したように、シトシンの5-メチルシトシンへのメチル化はDNAレベルで生じる。細胞内では、デシタビンは先ず初めにその活性形(リン酸化された5-アザ-デオキシシチジン)にデオキシシチジンキナーゼによって変換される(前記キナーゼは主として細胞周期のS期に合成される)。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位に対するデシタビンの親和性は天然の基質(デオキシシチジン)に類似する(Momparler et al. Pharmacol. Ther. (1985) 30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼによってそのトリホスフェート形に変換された後、デシタビンは、複製DNAに天然の基質(dCTP)の速度と類似の速度で取り込まれる(Bouchard and Momparler, Mol. Pharmacol. (1983) 24:109-114)。
【0010】
デシタビンのDNA鎖への取り込みはメチル化低下効果を有する。各クラスの分化細胞はそれ自身の別個のメチル化パターンをもつ。染色体の複製後に、このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは相補的な娘DNA鎖でのメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位炭素の窒素の置換は、このDNAメチル化の正常なプロセスを妨害する。メチル化の特異的部位における5-メチルシトシンのデシタビンによる置換は、おそらく前記酵素とデシタビン間の共有結合の形成のために、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的不活化をもたらす(以下を参照されたい:Juttermann et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:11797-11801)。特異的にDNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができる。
デシタビンのDNA鎖への取り込みはメチル化低下効果を有する。各クラスの分化細胞はそれ自身の別個のメチル化パターンを有する。このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは相補的な娘DNA鎖でのメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位炭素の窒素の置換は、このDNAメチル化の正常なプロセスを妨害する。メチル化の特異的部位における5-メチルシトシンのデシタビンによる置換は、おそらく前記酵素とデシタビン間の共有結合の形成のために、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的不活化をもたらす(以下を参照されたい:Juttermann et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:11797-11801)。特異的にDNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができる。
【0011】
D.デシタビンポリモルフ
本発明はデシタビンの種々のポリモルフを開示する。前記の一般構造は図22に示されている。簡潔にするために、本明細書に記載されるポリモルフのいくつかはポリモルフA、B及びC型と称する。これらのポリモルフの物理的性状を決定するために、種々の検査を各ポリモルフについて実施した。前記検査にはX線粉末回折(“XRPD”)、可変温度X線粉末回折(“VT-XRPD”)、熱解析(“TA”)、微分走査熱量測定(“DSC”)、赤外線分光分析(“IR”)、ラマン分光分析(“ラマン”)、NMR分光分析、水分収着/脱着分析(“MS/DA”)及びホットステージ顕微鏡法が含まれる。
本発明のデシタビンポリモルフは、デシタビンの直接結晶化によって、又は結晶化に続く相互変換によって得ることができる。特に、溶液は、35.5mgのSSCI-15003(スーパーゲン社(SuperGen Inc.)から入手したデシタビン(Lot. No. H113210/27262A))をほぼ溶解することによって調製した。前記溶液をろ過しバイアルに入れ、続いてバイアルに封をして周囲温度に冷却した。一晩、固体を形成させる。
いくつかの事例では、生成されるポリモルフは結晶質無水物、一水和物及び半水和物である。非晶質ポリモルフはまた、溶媒和デシタビンから溶媒を急速に蒸発させることによって、又は本明細書に記載の種々の結晶質ポリモルフのいずれかをすり潰し、粉砕し、そうでなければ物理的に加圧又は磨耗させることによって誘導することができる。有機化合物を沈殿及び結晶化させるための一般的な有機的方法を応用して、種々のデシタビンポリモルフを調製することができる。これらの一般的な方法は有機合成化学及び製薬分野の業者には公知であり、例えば以下に記載されている:J. March, "Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure," 4th Ed. (New York: Wiley-Interscience, 1992)。
【0012】
1.デシタビンのポリモルフA型:
デシタビンポリモルフA型はスーパーゲン社(SuperGen Inc.)から入手できる(Lot. No. H113210/27262A)。A型は結晶質無水物であり、サンプルのXRPDパターンでピークが存在することにより明瞭である。図1はA型のXRPDパターンを示している。主要回折線(10)及び(14)が、゜2θでそれぞれ7及び14.5に認められる。シャープであるが弱い線(12)、(16)、(18)及び(19)が、゜2θでそれぞれ13、18.5、21.5及び24.5に認められる。A型は、25から40の間の゜2θ値で針状形態を示す。更にまた、このデータと一致して、A型は、相対ピーク強度における変動として認められる優越方位効果を示す(優越方位効果は針状又は層状形態を有する結晶質物質でしばしば認められる)。
A型の熱解析は更に、このポリモルフがデシタビンの無水物であることを示唆している。熱解析及びDSCの結果は下記の表1及び図2に要約されている。
表1:A型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
A型の熱解析は、ほぼ200℃のサンプル分解点まで質量低下を示さない。したがっていくつかの実施態様では、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって198℃から208℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって200℃から205℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。又は、より好ましくは、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって202℃から204℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。
上記の吸熱は放熱事象を伴い、前記放熱は199℃から206℃辺り、又はより好ましくは201℃から204℃、又はより好ましくは203.5℃辺りに存在する。この動態は、A型は、約197℃から199℃で、より好ましくは約198.2℃で分解又は結晶再整列とともに溶解を開始し、約199℃から約201℃、又はより好ましくは約200℃の融点を有することを示している。200℃に近い融点はまたホットステージデータ(下記の表2に要約)によって確認される。
表2:ホットステージ顕微鏡観察
【0013】
A型のIRスペクトルは図1に示されている。前記スペクトルは、3500cm-1辺りにピーク(30)及び3500から3000cm-1の間に広いストレッチ(32)、1700cm-1から400 cm-1の間に複雑なフィンガープリント領域(34)、及び3700cm-1から4000 cm-1の間にごくわずかの吸収を示す。更にまた、IRスペクトルは、ほぼ1850cm-1に明確なピーク(36)及びほぼ2000cm-1に明確なピーク(38)を示す。
A型のラマンスペクトルは図2に提供される。ラマンスペクトルは、3000cm-1から2900cm-1の間に比較的弱いストレッチ(40)、ほぼ800cm-1にシャープなピーク(42)、及び600cm-1から1600 cm-1の領域に一連の小さなバンド(44)を示す。
A型の水分収着/脱着分析は、この固相ポリモルフは、デシタビン一水和物に水和されたもの(B型)と比較して不安定であることを明らかにした。A型の水分収着/脱着のデータは下記の表3更に図3に要約されている。
表3:A型ポリモルフの水分収着/脱着データ
【0014】
表3に示されているように、A型は、5%RHで平衡させたときごくわずかな量(0.06%)の水を失う。前記物質は、5から45%RHの範囲で総量約0.1%を失う。更にまた、図5に示されているように、A型サンプルは、RHが75%より上で水分を収着し、5から95%RHの総質量増加は7.3%である。収着事象で獲得された本質的に全ての質量は、脱着サイクル時にデシタビンポリモルフB型として保持され得る。A型に関して実施した実験は、大気中の水分はA型をB型に部分的に水和させることができることを示したが、一方、約10,000psiで1時間、A型を圧縮したとき型の変化は誘発されなかった。したがって、A型は打錠時に物理的に安定であり得る。
A型の単一結晶はメタノール中のデシタビン溶液を冷却することによって成長した。固体形に対するX線結晶構造を得た。A型の不整ユニットは図6に示されている。更にまたデシタビンのポリモルフA型は、段ボール(corrugated)テープの結晶充填構造を特徴とし、前記はアゾシトシン環の間の水素結合から生じる。c軸に沿って見下ろしたときのデシタビンA型の充填構造は図7に示されている。b軸に沿って見下ろしたときのデシタビンA型の充填構造は図8に示されている。
溶液状態のH1 NMRスペクトルは周囲温度で得られた。A型のH1 NMRの結果は、百万分率で表したシフトにより図23に示されている。シフト(238)及び(239)は芳香環の電子特性を示す。シフト(237)はC=C二重結合に直接結合した水素を示す。シフト(234)及び(236)は、エーテル領域又は更にアルコール及びエステルを示す。最後にシフト(232)は、C=O、C=C又はフェニル環の隣の炭素に結合した陽子を有するカルボニル領域を示す。2つ以上の電気的に陰性の置換基が存在する場合は、前記陽子はいっそうダウンフィールドに達し得る。これらの基の各々はC-H結合のわずかな分極、電子密度の減少及び陽子の脱シールドを誘発する。
【0015】
2.デシタビンのポリモルフB型
上記で考察したように、デシタビンは一水和物(B型と称される)として結晶化させることができる。デシタビンのB型ポリモルフは、A型を高い相対湿度に暴露し、続いて一水和物型の結晶化によって製造することができる。ある例では、A型は、20℃、75.5%RHで塩化ナトリウムの水溶液中でB型に変換される。B型は一水和物であると考えられ、図9に示されている。B型のXRPDパターンは、それぞれ約6.5、13.5、17、18、20.5、22.5及び23.5の゜2θ値に回折線(90)−(96)を有する。
B型の熱解析及びDSCデータは下記の表4に提供され、更に図10に示されている。
表4:B型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
B型ポリモルフの熱解析データは、サンプル中の結晶水は約100℃より低い温度で除去されることを示している。算出された150℃での7.2%の質量減少は、一水和物を無水物に脱溶媒化することに伴う理論的質量減少7.3%と一致する。図10に示したB型のDSC曲線は、それぞれ86℃及び94.9℃での2つの吸熱事象(102)及び(104)を示している。B型の溶解/分解に伴う吸熱事象は、A型のDSC図表で認められる吸熱事象よりもわずかに低い。B型のこれらの吸熱事象は水の減少に帰され、更に198.35℃でのシャープな吸熱(106)及び200℃での放熱(108)(前記はおそらく溶解/再結晶に帰される)が続く。ほぼ150℃の温度で10分加熱し続いて室温に冷却したB型サンプルはA型に変換される。このことは、所望する場合にはA型はB型から製造できることを示している。他方、B型は、真空オーブン中で室温で6日間保存したときC型に変換され、VT-XRPD実験は、B型を部分的に加熱してポリモルフC型が生成されることを示している。
【0016】
したがって、いくつかの実施態様では、デシタビンポリモルフBは、81℃から91℃の間で吸熱、90℃から100℃の間で吸熱、193℃から203℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。より好ましくは、デシタビンポリモルフBは、83℃から88℃の間で吸熱、93℃から98℃の間で吸熱、195℃から200℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。またはより好ましくは、デシタビンポリモルフBは、85℃から87℃の間で吸熱、94℃から96℃の間で吸熱、197.4℃から199.4℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。
B型の水分収着/脱着データは下記の表5に提供され、更に図11にも示されている。
表5:B型の水分収着/脱着データ
【0017】
このデータは、B型は5%RHで部分的に脱溶媒和し得ることを示している。B型は5%RHで平衡化させたとき水分(約2.4%)を失うが、約44%RHでその水分を再度獲得し、95%RHで更に水分(0.09%)を獲得する。B型は5%RHで安定であるが、前記は部分的形態変化を進行させ、B型及びC型の混合物を提供する。性状決定データを基にすれば、B型はA型の一水和物である。
デシタビンポリモルフB型の単一結晶X線データを用いて、図12、13に示した充填模式図を作成した。図12は、c軸に沿って見下ろしたときのデシタビンB型の充填模式図を示す。図13は、b軸に沿って見下ろしたときのデシタビンポリモルフB型の充填模式図を示す。B型で優勢な相互作用は、一方向に優勢な(one-dominational)段ボールテープ構造(前記はA型でも見出される)と定義される水素結合である。しかしながら、B型は、A型の水素結合よりも長い(例えば弱い)水素結合をアザシトシン環の間に有する。更にまた、A型構造で認められるものとは異なり、B型のデオキシリボース環は、隣接するテープユニットを分離させる水分子と水素結合を形成する。A型で認められる前記段ボールモチーフもまたB型には存在しない。その代わりに、B型のテープユニットは同じ平面に沿って積重ねられる。B型の水分子が前記構造から取り除かれるならば、前記化合物は、A型に変換されるために更に別の著しい分子の再編を受ける必要がある。
図14はB型のIRスペクトルを示す。IRスペクトルは、3400cm-1辺りに比較的広いOHストレッチ(142)を示す。3100cm-1から2800 cm-1の間の芳香族及び脂肪族CHストレッチ(144)もまた広い。このスペクトルは、1700cm-1から400 cm-1に複雑なフィンガープリント(146)を有する。シャープなピーク(148)はほぼ2000 cm-1に存在し、C=Cストレッチ(例えば脂環式環のもの)を表す。
【0018】
B型のラマンスペクトルは図15に提供される。ラマンスペクトルは、3100cm-1から2800 cm-1の間に比較的弱い芳香族及び脂肪族CHストレッチ(152)、約800cm-1にC-O-C結合を示すピーク(154)、及び1600cm-1から600 cm-1の間に一連の小バンド(鎖式鎖及び脂環式鎖の振動を示す)を示している。
更にまた、メチルスルホキシド-d6中に溶解したB型の溶液の1H NMR解析によって、この態様で調製されたB型のサンプルは化学的に純粋であることが確認された(図24参照)。図24は、デシタビンポリモルフB型の1H NMRシフトを示す。シフト(248)及び(249)は、B型ポリモルフよりも高いピークを有する、シフト(248)をもつ芳香環の電子特性を示している。シフト(247)は、C=C二重結合に直接結合した水素を示している。シフト(244)及び(246)は、エーテル領域、又は更にアルコール及びエステルを示している。最後に、シフト(242)及び(241)は、C=O、C=C、又はフェニル環の隣の炭素と結合した陽子を有するカルボニル領域を示している。
【0019】
3.デシタビンのポリモルフC型
ポリモルフC型はスーパーゲン社から入手するか(Lot. No. 97045sg04)、又は上記に記載したデシタビンポリモルフB型から調製することができる。
C型のXRPDパターンは図16に提供されている。C型ポリモルフのパターンは、主要回折線をそれぞれ約6、13、14.5、16.5、19、23、27.5、32、33及び34の゜2θ値に有する。このパターンは、図17に提供されているように、溶液1H NMR分光分析による解析で化学的に純粋であることが判明した。
C型のTGAデータは下記の表6及び図18に提供される。
表6:C型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
弱い吸熱(180)及び(182)が、それぞれ48℃から50℃の間、及び163.5℃から165.5℃の間に認められるとともに、強い吸熱(184)が194.8℃及び196.8℃で認められる。強い放熱活性がほぼ195℃及び197℃で生じる。
したがっていくつかの実施態様では、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって44℃から54℃の間で吸熱、160℃から170℃の間で吸熱、190℃から200℃の間で吸熱、及び190℃から200℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって47℃から52℃の間で吸熱、162℃から167℃の間で吸熱、190℃から195℃の間で吸熱、及び193℃から198℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって、48℃から50℃の間で吸熱、163℃から165℃の間で吸熱、191℃から193℃の間で吸熱、及び194℃から196℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。
【0020】
図18は、ほぼ150℃でほぼ1.2%のわずかな質量減少を示し、これは、C型で実施した水分収着/脱着分析と一致する(前記分析では、5%RHで平衡させたときC型はその最初の質量のほぼ1.4%を失うことが示された)。しかしながら、C型の別個の分析で25℃での質量平衡事象をTGA方法で省略したとき、異なる結果が得られる(図29参照)。この事例では、サンプルのTGAデータは約150℃でほぼ3.2%の質量減少を示す。この結果は、C型は不安定なデシタビン半水和ポリモルフであることを示唆している。デシタビンの水溶液の真空蒸発によってポリモルフスクリーンで調製したC型サンプル(サンプル番号1029-65-05)はまた、大量の揮発性物質を含むことがTGAによって判明した。このサンプルでは、質量減少は約150℃で7.2%の規模であり、これはデシタビン一水和物の脱水について予想される7.3%の理論的質量減少に近い。
C型の水分収着/脱着は下記の表7、更に図19に提供される。
表7:B型の水分収着/脱着データ
【0021】
5%RHで平衡させたとき、サンプルは最初の質量の1.4%を失い、サンプル中の微量の水分の存在を示している。C型は、5%RHから95%RHでその質量の13%近くを吸収するので非常に吸湿性である。サンプルCの質量減少の大半は5%RHでの最終RH事象で発生し、これはB型で観察されたものと類似する。質量平衡はこのRHレベルでは180分後に達成されないので、このRHレベルで更に時間を与えられるならば、サンプルは更に多くの水分を吸収することができる。水分収着/脱着解析後のC型サンプルのXRPD解析は、C型サンプルはB型に変換されることを示した。
これらの結果はRHチャンバーを用いてC型で実施したストレス実験と一致する(表17の下の2列を参照されたい)。3つのサンプルの2つが、ほぼ23%及び85%RHで保存されたときC型からB型に変換した。ほぼ33%RHで保存されたC型の第三のサンプルは28日後に変化なく維持された。これらの結果は、C型は十分な時間が与えられるならばB型に変換され得ることを示唆している。
C型のIRスペクトルは図20に提供されている。この形態について採集したIRデータは、3400cm-1辺りに広いOHストレッチ(200)を示す。特にポリモルフA型及びB型で2000 cm-1に観察されたシャープなピークと比較して、2000cm-1に弱いピーク(202)が存在する。1700cm-1から500 cm-1の間に複雑なフィンガープリント形態(204)もまた認められる。針状形の各ピークはA型のピークと一致するが、これらのピークはそれらより一般的に広くかつ長い。3625cm-1から3675cm-1の間で認められる吸収ピークは存在しない。
C型のラマンスペクトルは図21に示され、3100cm-1から2800 cm-1の間に芳香族及び脂肪族CHストレッチ(202)の弱いピーク、ほぼ800cm-1に強いピーク(204)、及び600cm-1から1700 cm-1の領域に弱いバンド(206)を示している。
C型の1H NMRスペクトルは、C型はデシタビンの固有のポリモルフであることを示している。図25は、デシタビンポリモルフC型の化学シフトを提供する。シフト(258)及び(259)は芳香環の電子特性を示している。シフト(257)はC=C二重結合を示し、これによりピーク(257)はポリモルフB型の対応するピーク(247)よりも短い。シフト(254)及び(256)は、エーテル領域、又はアルコール及びエステルの領域を示している。ピーク(256)はポリモルフB型の対応するピーク(246)よりも実質的に短い。化学シフト(251)及び(252)は、C=O、C=C、又はフェニル環の隣の炭素と結合した陽子を有するカルボニル領域を示している。化学シフト(251)及び(252)は実質的にである。
【0022】
E.処方物及び投与の様式
本発明は、本明細書に開示したデシタビンポリモルフの1つ又は2つ以上を含む医薬処方物を含む。そのような医薬処方物は更に担体又は希釈剤を含むことができ、この場合前記デシタビンはそのポリモルフ型を維持する。
本発明の処方物は任意のタイプの投与に対応させることができる。例えば、前記処方物は、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、経鼻的に、リポソームを介して、吸入により、膣内に、眼内に、局所デリバリーにより(例えばカテーテル又はステントによって)、皮下に、脂肪組織内に、関節内に、又は場合によって徐放性投与形として投与することができる。好ましい実施態様では、デシタビンポリモルフは経口的に、吸入により、又は皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射により、又は脳脊髄液に直接投与される。
【0023】
1.経口及び非経口処方物
ある実施態様にしたがえば、本明細書に開示した1つ又は2つ以上のポリモルフ型を経口投与のために製剤化することができる。任意の経口処方物に与えられるポリモルフの濃度は最終的な所望処方物によって決められる。処方物に存在する全てのポリモルフの総量は好ましくは、推奨用量を通常的に投与させる量である。経口投薬に含まれるポリモルフの量を決定する1つの要件は、デリバリーベヒクルの要求されるサイズである。
経口投与のための固体の投薬形にはカプセル、錠剤、ピル、散剤及び顆粒が含まれる。固体の投薬形態では、活性物質は、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容できる担体(例えばシュクロース、ラクトース又はデンプン)と混合される。そのような投薬形態はまた、通常的な慣わしとして不活性な担体以外のまた別の物質、例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むことができる。カプセル、錠剤及びピルに関しては、投薬形態はまた緩衝物質を含むことができる。錠剤及びピルはまたその他に腸溶皮を用いて調製することができる。
経口投与のための液体投薬形態には、医薬的に許容できる懸濁物及びシロップが、当分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤(例えば水)を含むエリキシルとともに含まれる。これらの組成物はまた1つ又は2つ以上の補助剤(例えば表面安定化剤、懸濁剤、甘味剤、香料又は芳香剤)を含むことができる。本発明が液体投薬形態として実施されるとき、デシタビンは任意の開示ポリモルフ型で維持される。
【0024】
この特徴にしたがえば、デシタビンポリモルフは他の化合物又はデリバリー装置と混合され、治療活性が強化された安定な組成物が形成される。これらの処方物は腫瘍をもつ対象者(例えばヒトの癌患者)への経口投与を可能にする。例えば、ある実施態様では、デシタビンポリモルフ型は医薬的に許容できる粉末化賦形剤、担体及び/又は希釈剤と混合することができる。前記処方物の組成及び追加される各物質の量は、種々の要件(投与速度、処方物の投与後のドラッグデリバリーのタイミング、及び所望の最終濃度を含む)に左右されるであろう。そのような処方物に含まれ得る賦形剤の例にはpH調整化合物が含まれ、前記は典型的には医薬的に許容できる酸又は塩基、及び/又は緩衝性物質であり、ほぼ等モル比の弱酸又は塩基及びそれらの共役塩を含む。
ある実施態様では、前記処方物は、界面相互作用阻害剤(前記は隣接粒子間に物理的障壁を生じる)と一緒にしたポリモルフを含むことができる。この処方物では、デシタビンは相対的に小さな粒子サイズを有する結晶質ポリモルフ(例えば純固体)であり、前記は、同じ粒子サイズを有するガラス質又は非晶質の擬似固体物質よりもデシタビンをより良好に安定化させると期待される。この組成物でデリバーされる小さいがなお安定である粒子デシタビンは、より大きな粒子サイズを有す投薬形と比較して、経口投与されたときにより良好な生体利用性及びより高い治療活性を有し、一方、小さなガラス質粒子を含む調製物よりもより長い保存期間を有すると期待される。
【0025】
非経口投与のための調製物には無菌的水性又は非水性懸濁物及びミクロ懸濁物が含まれる。非水性賦形剤の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油及びトウモロコシ油)、ゼラチン及び注射用エステル(例えばオレイン酸エチル)である。医薬調製物を製剤化する業者は、結晶質又は非晶質固体の完全な溶媒化は本発明に包含されず、個々の処方物で用いられるべきポリモルフを保存するためにポリモルフは担体中で不溶であるべきであることは理解されよう。そのような投薬形態はまた、1つ又は2つ以上の補助物質、例えば保存剤(例えば海面相互作用阻害剤)、湿潤剤および分散剤を含むことができる。前記投薬形態は、例えば細菌保持フィルターでろ過することによって、前記組成物への殺菌剤の取り込みによって、組成物を照射することによって、又は組成物を加熱することによって滅菌することができる。それらはまた、滅菌水又は他の何らかの無菌的注射可能媒体を用いて使用前に製造することができる。
経口又は非経口投与のための医薬処方物はまたデシタビンポリモルフ含有ミクロ懸濁物を含むことができ、更に、また別の医薬的に許容できる担体、賦形剤、添加物など(特に経口又は非経口薬投与に適するもの)を含むことができる。また別には、デシタビンポリモルフ含有ミクロ懸濁物は改変することなく経口的又は非経口的に投与することができる。ミクロ懸濁物は熱動力学的に安定な微結晶懸濁物であり、前記は、分散剤として機能する界面活性剤分子の界面薄層によって安定化させることができる(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, New York: Marcel Dekker, 1992, vol. 9)。
【0026】
肺投与:
本明細書のいずれのデシタビンポリモルフも肺投与に用いることができる。結晶質ポリモルフ(この場合結晶は純固体物質である)及び完全に非晶質、ガラス質、擬似固体ポリモルフの両方を、肺デリバリー用の乾燥粒子及びエーロゾル化液体粒子として適切な粒子サイズにすることができる。デシタビンの結晶質又はガラス質ポリモルフ型は、デシタビン分子が溶媒和されたときのように、デシタビン分子が固体又は擬似固体を含まない調製物よりも十分な時間より安定である。限定ではなく例示として挙げれば、いずれの結晶質ポリモルフデシタビンも、前記が微晶質型として結晶化されているならば、肺デリバリーのための乾燥散剤処方物として用いることができる。また別には、デシタビンの結晶質ポリモルフをすり潰すか又は粉砕して十分に小さな粒子サイズを得るか(前記によって非晶質含有量が増加したポリモルフにすることができる)、または溶媒の急速な蒸発から得られたもっぱら非晶質の沈殿物をすり潰して粉末ガラス型を得ることができる。
肺デリバリー用の乾燥散剤処方物は、結晶質又は非晶質ポリモルフ及び肺の薬剤投与に適した任意の担体を含む。ただし担体としては医薬用糖類が一般的には好ましく、例えばフルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチナイト、ラフィノース、スタキオース、シュクロース、トレハロース、キシリトール並びにそれらの水和物及び組合せである。選択された成分を先ず初めに一緒にし、続いてブレンドして均質で均一な粉末混合物を形成する。そのような粉末を調製する技術は当分野では周知である。簡単に記せば、前記調製は、典型的には、粒子サイズを減少させ(必要に応じて)、個々の成分を一緒にし更にブレンドする工程を含む。粒子サイズを減少させる技術は、例示すればミル、例えばエアージェットミル又はボールミルを利用する。約0.1μmから約65μmの直径をもつ粒子サイズが肺投与には要求される。混合方法は一緒にした粉末をシフターに通し、更に個々の粉末を粉末ブレンダー(例えば“二重コーン”ブレンダー又は“V-ブレンダー”)でブレンドする。用いられるここの技術に関係なく、得られた粉末は均質及び均一でなければならない。典型的には、活性物質は全処方物の約0.10%から約99%(w/w)を構成するであろう。
【0027】
本発明の肺用処方物はまたエーロゾル組成物として投与することができる。エーロゾル処方物は当業者には公知であり、例えば以下に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Ed. (Easton, PA: Mack Publishing Company, 1995)。簡単に記せば、本発明のエーロゾル処方物は、溶液エーロゾル(活性物質は担体(例えば発射薬)中に溶解することができる)又は分散液エーロゾル(活性物質は担体又は場合によって溶媒中に懸濁又は分散される)のどちらかである。エーロゾル処方物では、担体は典型的には発射薬、通常は液化ガス又は液化ガス混合物である。例えば、担体はフッ素化された炭化水素である。好ましいフッ素化炭化水素は以下から選択される:トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1,ジフルオロエタン、オクタフルオロシクロブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)及びそれらの組合せ。当業者には容易に理解されるところであるが、本発明のエーロゾル処方物は1つ又は2つ以上の賦形剤を含むことができる。前記エーロゾル処方物は例えば以下を含み得る:活性物質の酸化的分解を阻害するための抗酸化剤(例えばアスコルビン酸);粒子の凝集を防止する分散剤(例えばソルビタントリオレート、オレイルアルコール、オレイン酸、レシチン、トウモロコシ油及びその組合せ);及び/又は、粒子間の滑りを提供し更に吸入器の成分(例えばバルブおよびスプリング)の摩擦を減少させるための滑沢剤。
乾燥散剤処方物に関して記載されているように、エーロゾル処方物から遊離される粒子サイズは肺投与のために適切でなければならない。溶液エーロゾルは、活性物質が担体(例えば発射薬)溶液と一緒に発射されるので、発射薬用液が蒸発するとき吸入装置の始動時に吸入で小粒子を生じる。結果として、溶液エーロゾルの投与は十分に小さな粒子を生じる(例えば約0.1μmから約65μmの範囲内の活性物質)。本発明の結晶質及び非晶質デシタビンポリモルフは、単に液体担体中の固体の分散液としてエーロゾルによりデリバーすることができる。
【0028】
分散液エーロゾルは不溶の活性物質を含み、この場合粒子サイズは一定である。すなわち、分散液エーロゾル中の粒子サイズは活性物質がデリバーされている間に変化しない。それゆえに、活性成分は、分散エーロゾルとして処方される前に適切な粒子サイズをもたなければならない。したがって、乾燥散剤処方物について上記で述べたように、活性物質に粒子サイズを減少させる技術は、分散液エーロゾルで適切な粒子サイズをもつ活性物質の調製のために等しく適用することができる。更にまた、乾燥散剤処方物と同じ範囲の粒子サイズを分散液エーロゾルにも適用することができる。
本発明のエーロゾル処方物は冷却充填プロセスを利用して調製することができる。最初に、エーロゾル処方物の成分及びエーロゾル容器を、担体(すなわち発射薬)が液体になるように約-40℃に冷却する。担体以外の全ての成分をエーロゾル容器に入れる。次に、前記担体を添加し成分を混合する。続いてバルブアッセンブリーを正しい位置に挿入する。最後に、容器が機密になるようにバルブアッセンブリーを捩じ込む。組み立てが完了した、吸入処方物を保持する容器をアッセンブリー後に周囲温度に復帰させることができる。冷却充填プロセスの代替として、エーロゾル処方物は、担体以外の全ての成分をエーロゾル容器に入れ、続いてバルブアッセンブリーを挿入し正しい位置に捩じ込んだ後で、担体をバルク容器から移すことによって調製してもよい。続いて液体担体をバルク容器又はタンクからバルブアッセンブリーを通して加圧下でメーターで計測する。担体を計り入れた後で、容器をチェックして加圧した内容物がもれていないことを確認する。エーロゾル処方物を調製するこれら両方法で、活性物質は総処方物の約0.1重量%から約40重量%を構成する。好ましくは、活性物質は総処方物の約1重量%から約15重量%を構成する。
【0029】
本発明の肺用処方物はまた、当分野で周知のように吸入用液体組成物であってもよい(例えば上掲書(The Science and Practice of Pharmacy)を参照されたい)。本発明のデシタビンポリモルフのためには、液体組成物はミクロ懸濁物でなければならない。そのような液体処方物は、活性物質の他に1つ又は2つ以上の担体を含む。上記に記載したように、用いられているポリモルフを担体が溶媒和しないように注意しなければならない。担体の例は、処方物を正常な体液に対して等張にさせる濃度をもつ塩化ナトリウム溶液である。前記担体の他に、前記液体処方物は水及び/又は賦形剤を含むことができる。前記賦形剤には以下が含まれる:抗菌保存料(例えばベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、チメロサール及びそれらの組合せ)、緩衝物質(例えばクエン酸、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの組合せ)、界面活性剤(例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノパルミテート及びそれらの組合せ)、及び/又は懸濁剤(例えば寒天、ベントナイト、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ビーグム(veegum)及びそれらの組合せ)。前記組成物を一緒にし、続いて通常の攪拌を実施することにより、吸入に適した液体処方物が達成される。典型的には、活性物質は総処方物の約0.01%から約40%を構成する。
乾燥散剤、エーロゾル又は液体にかかわらず、種々の公知の装置を用いて肺用処方物を投与することができる。乾燥散剤吸入装置は当業者には周知であり、前述の乾燥散剤処方物の投与に用いられる。本発明の処方物を投与に適した乾燥散剤吸入装置には、例えば以下が含まれる:TURBOHALER(商標)(Astra Pharmaceutical Products, Inc., Westborough, MA)、ROTAHALER(商標)(Allen & Hanburys, Ltd., London, England)。エーロゾル処方物は、加圧用量計測吸入装置により投与することができる。本発明の液体処方物はポンプスプレービン又はネブライザーにより投与することができる。
【0030】
他の活性物質もまた本発明の処方物に取り込むことができる。前記には例えば他の抗増殖剤、抗新形成薬又は抗炎症剤、又は気道拡張剤が含まれる(特に気管支若しくは肺胞の炎症、又は気道閉塞を含む病変(例えば肺及び気管支肺胞癌)に対して気道を拡張し、より深部のデリバリーを達成する)。これらの機能の両方を果たす物質、例えば長時間作用性βアドレナリン作動性アゴニスト(サルメテロールキシナフォエーテを含む)及びホスホジエステラーゼ阻害剤(テオフィリン及び他のヒポキサンチンを含む)は、肺の炎症性病理生理学的プロセスで相乗作用的抗炎症効果を表すことが示された(Pang et al. (2000) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 23(1):79-85)。
増殖性呼吸系疾患(炎症及び/又は閉塞を含む)の治療でデシタビンと同時投与するために追加できる適切な活性物質の例には、気管支拡張剤(βアドレナリン作動性アゴニスト、抗コリン作動薬、吸入に適したホスホジエステラーゼ阻害剤及びコルチコステロイドを含む)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。気管支拡張剤の組合せもまた用いることができる。長時間作用性βアドレナリン作動性アゴニストは特に好ましい。なぜならばそれらは、呼吸器系の新形成病変の治療にしばしば重要な抗炎症作用を提供するだけでなく、肺のより深部のデリバリーを達成し得るからであり、後者は、特に肺胞の炎症を含む肺及び気管支肺胞の癌にとって重要である。同様に、吸入による投与用の治療的に適切な任意のグルココルチコイド又は医薬的に適切な塩、エステル、又は前記の他の誘導体も吸入による同時投与に含むことができる。
【0031】
上記で言及したように、気管支拡張剤は、肺の深部への活性物質のデリバリーを担保するために有用である。抗コリン作動型の典型的な気管支拡張剤には、限定ではなく例示として挙げればアトロピン化合物(例えばイサトロピウム)が含まれる。前記は、急性喘息について気管支拡張でβアゴニスト(特にβ2アゴニスト)と強力な相乗作用を有することが示され(Dusser (1998) Ann. Fr. Anesth. Reanim. 17(Suppl. 2):40s-42s)、更に抗炎症性薬剤のデリバリーのために肺胞の深部へのデリバリーを担保するために気道を開放するために用いられるとき同様な効果を発揮すると期待される。βアドレナリン作動性アゴニストクラスの典型的な気管支拡張剤には、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、レバルブテロール(すなわちホモキラル(R)-アルブテロール)、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リミテロール、サルメテロール及びテルブタリンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記気管支拡張剤は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は他の誘導体として処方物中に存在することができ、また前記は、当業者に周知の種々の方法で官能化することができる。
【0032】
他の抗炎症薬をデシタビンポリモルフと組み合わせることができる。コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症薬(NASIDS)は可能な併用療法剤であり、炎症性気道疾患および一般的な新形成の治療で既に用いられている。クロモリンスルフェート及びロイコトリエン阻害剤の新規クラスもまた炎症性疾患で用いられ、したがって、炎症を伴う新形成及び原発性の炎症性増殖性肺病変の両方の吸入療法のために、デシタビンの結晶質及び非晶質ポリモルフと一緒に用いることができる。抗炎症性活性を有することが明らかにされたが本来抗炎症薬ではない物質には、上記に記載したように長時間作用性アゴニスト及びテオフィリン、並びにマクロライド系抗生物質(Cazzola et al. (2000) Monaldi Arch. Chest Dis. 55(3):231-6)が含まれる。前記抗生物質には、エリスロマイシン及びその誘導体、例えばアジスロマイシン及びクラリスロマイシンが含まれる。本発明の結晶質及び非晶質ポリモルフとの抗生物質(抗炎症活性を有するものを含む)又は抗ウイルス剤(前記薬剤は肺を感染に対して予め処置する)の同時投与は、肺の新形成の治療のために、更に感染性エティオロジーを有する増殖性炎症性疾患(例えば肺結核及びウイルス性肺炎)の治療のために所望される。
【0033】
経皮投与
種々の粒子サイズ(肺の投与に適した粒子サイズを含む)の乳濁物と同様に、粒子状懸濁物、ミクロ懸濁物及びナノ懸濁物は、デシタビンの経皮デリバリーに変換し得る。また別に、より大きなサイズの本発明の結晶質及び/又は非晶質ポリモルフを、適切な乳化剤を用いて乳化懸濁物(ミクロ乳化懸濁物を含む)として製剤化することができる。しかしながら、肺投与のために得られた粒子サイズは、粒子を保存し、一方で、適用時に皮膚を通過して経皮的にその辺りにデシタビン分子を拡散させることを可能にする適切な物質と直接混合することができる。
【0034】
F.用量
本明細書のポリモルフの有用な用量は、それらのin vitro活性及びin vivo活性を動物モデルで比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物の有効用量をヒトに外挿する方法は当分野で公知である(例えば米国特許4,938,949号を参照されたい)。
一般的には、液体組成物(例えばローション)中の本明細書のポリモルフの濃度は、約0.1−25重量%、好ましくは約0.5−10重量%であろう。半固体又は固体組成物(例えばゲル又は散剤)中の濃度は、約0.1−5重量%、好ましくは約0.5−2.5重量%であろう。
治療で使用するために必要な化合物又は活性な塩若しくはその誘導体の量は、選択される具体的な塩によるだけでなく、投与ルート、治療される症状の性質、並びに患者の年齢及び状態によってもまた変動し、最終的には主治医又は臨床医によって判断されるであろう。
しかしながら、一般的には適切な用量は、1日当たり体重1kgにつき約0.005から約100mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.1から約75mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.3から約50mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.6から約25mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約1から約15mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約2から約10mg、又はより好ましくは1日当たり体重1kgにつき約3から約5mgの範囲であろう。
前記化合物は、好都合にはユニット投薬形態で投与することができる。前記は、ユニット投薬形態当たり、活性物質を例えば0.05から1000mg、好都合には0.1から750mg、もっとも好都合には0.5から500mg含む。
【0035】
理想的には、前記活性成分は、約0.005から約75μM、好ましくは約0.001から約50μM、もっとも好ましくは約0.02から約30μMの活性化合物のピーク血中濃度を達成するように投与するべきである。前記は、例えば活性成分の0.0005から5%溶液(場合によって食塩水中の活性成分溶液)の静脈内注射、又は約0.01−1mgの活性成分を含むボーラスとしての経口投与によって達成することができる。所望の血中レベルは、連続的輸液によって維持されて約0.0001−5mg/kg/hrを提供するか、又は約0.004−15mg/kgの活性成分を含む間歇的輸液によって維持することができる。
いくつかの実施態様では、1つ又は2つ以上のポリモルフが静脈内輸液により患者に投与される。静脈内輸液は1日につき1−24時間実施することができ、治療はほぼ1−100日、より好ましくは約2−50日、より好ましくは約3−10日継続することができる。治療につき投与される投薬量は約1−300mg/m2、より好ましくは約1−200mg/m2、より好ましくは約1−100mg/m2、より好ましくは約1−50mg/m2、より好ましくは約1−35mg/m2、より好ましくは約1−25mg/m2、より好ましくは約1−10mg/m2、より好ましくは約1−5mg/m2、より好ましくは約1−3mg/m2の範囲であり得る。
所望の用量は、好都合には1回の投薬中に又は適切な間隔で分割した投薬中に(例えば1日につき2回、3回、4回又は5回以上の部分用量として)存在することができる。部分用量それ自体も更に分割して、例えば複数の別個の大雑把に間隔をあけて(例えば注入器からの複数回の吸入又は静脈輸液)投与することができる。
【0036】
G.適応症
デシタビンが治療的に有効な任意の症状の治療に、本発明のデシタビンポリモルフ用いることができる。本発明の新規なポリモルフを利用するために、前記ポリモルフが取り込まれている医薬組成物を、それらのポリモルフ型を保持するように投与する。
ある実施態様にしたがえば、1つ又は2つ以上のデシタビンポリモルフを含む処方物を患者に投与することを含む、ある症状を治療する方法が提供される。
ある変型例では、デシタビンポリモルフを含む処方物が、望ましくない又は非制御細胞増殖を伴う症状をもつ患者に投与される。そのような適応症には例えば以下が含まれる:再狭窄(例えば冠状動脈、頸動脈及び脳の病巣)、良性腫瘍、種々のタイプの癌(例えば原発性腫瘍及び腫瘍転移)、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性硬化症)、外科手術又は瘢痕組織の形成をもたらす他の事象による対組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されていない組織の異常、器官移植に伴う増殖性応答、及び種々の炎症性増殖性疾患。
一般的には、良性腫瘍内の細胞はその分化特性を維持し、完全に非制御の態様で分裂するわけではない。良性腫瘍は通常は局在し、非転移性である。本発明を用いて治療することができる良性腫瘍の具体的なタイプには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):血管腫(例えば海綿状血管腫)、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、良性骨腫瘍、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ及び炎症性肉芽腫(化膿性(例えば化膿性肉芽腫)及び非感染性又は特発性(例えばサルコイドーシス及びベリリウム症)の両者)。
新形成(例えば悪性腫瘍)では、細胞は未分化になり、生理学的細胞増殖制御シグナルに応答せず、非制御態様で増殖する。悪性腫瘍は侵襲性で、遠位部位に拡散することができる(転移)。悪性腫瘍及び他の新形成は通常、原発性及び二次性新形成に分けられる。原発性新形成は発生組織から直接生じ、連続する組織及び器官に局所的侵襲によって拡散することができる。二次性新形成(又は転移)は、身体のどこかで発生したが、今は遠位器官に拡散している腫瘍によって示される。新形成の拡散の共通のルートは、隣接構造物中への直接的増殖、及び血管系又はリンパ系を介する転移拡散であり、組織平面および身体間隙(腹腔液、脳脊髄液などを含む)に沿って足跡をつけていく。
【0037】
本発明を用いて治療することができる癌又は新形成(原発性及び二次性の両方)には癌及び肉腫の両方が含まれる。具体的な癌及び肉腫の例には以下が含まれる:白血病、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳の神経学的腫瘍、喉頭の癌、胆嚢癌、膵臓癌、直腸の癌、傍甲状腺の癌、甲状腺の癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫(reticulum cell sarcoma)、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫 (mucosal neuroms)、腸神経節神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍(leimyomater tumor)、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する他の癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、メラノーマ及び類表皮癌。
外科手術時の身体組織に対する傷害による異常な細胞増殖の治療が種々のがけ手術方法について可能であり得る。前記手術には、関節手術、腸の手術及びケロイド瘢痕が含まれる。線維性組織を生じる疾患には気腫が含まれる。本発明を用いて治療することができる反復性運動異常には手根管症候群が含まれる。
【0038】
本発明を用いて治療することができる、器官移植に伴う増殖性応答には、潜在的器官拒絶または合併症の一因となる増殖性応答が含まれる。特に、これらの増殖性応答は、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、及び任意の外来又は非自己細胞、組織、器官若しくは器官系の移植時に発生し得る。
本発明を用いて治療することができる異常な血管形成には、慢性関節リュウマチ、虚血性再灌流関連脳浮腫及び損傷、副腎皮質虚血、卵巣過形成及び過剰血管形成、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症及び他の眼球血管形成疾患(例えば未熟児網膜症(水晶体後方線維形成症)、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生(neuroscular)緑内障、及びオスター・ウェーバー症候群)に付随する異常な血管形成が含まれる。
異常な血管形成を伴う疾患は血管の増殖を要求又は誘発する。例えば、角膜血管形成は3つの病期、前血管潜伏期、活発な血管新生、並びに血管成熟及び退行を含む。種々の血管形成因子(炎症性応答エレメント、例えば白血球、血小板、サイトカイン及びエイコサノイド又は未確認血中成分を含む)の正体及びメカニズムは未だ明らかにされていない。
本発明のまた別の実施態様では、望ましくない制御不能の血管形成を伴う疾患の治療方法が提供される。本方法は、制御不能な血管形成を罹患している患者に、血管形成を阻害できるように治療的に有効な量の本明細書に開示したデシタビンポリモルフを投与することを含む。血管形成及び/又は血管形成疾患を抑制するために要求される具体的なデシタビンの用量は、症状の重篤度、投与経路、及び主治医が決定することができる関連要件に左右され得る。一般的には、許容可能で有効な1日の用量は、血管形成及び/又は血管形成性疾患を効果的に抑制するために十分な量である。
【0039】
本実施態様にしたがえば、本発明の組成物を用いて、制御不能の血管形成を伴う種々の疾患(例えば網膜/脈絡膜血管新生及び角膜血管新生)を治療することができる。網膜/脈絡膜血管新生及び角膜血管新生の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ベスト病、近視、眼小窩(optic pits)、シュタルガルト病、パージェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状細胞貧血、サルコイドーシス、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫による頸動脈閉塞病(pseudoxanthoma elasticum carotid abostructive diseases)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性紅斑性狼瘡、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を引き起こす感染、ヒストプラスマ症、毛様体炎(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷及びレーザー照射後の合併症、潮紅(rubesis)を伴う疾患(眼角(angle)の血管新生)、及び血管線維組織又は線維組織の異常増殖によって惹起される疾患(硝子体網膜症の全ての型を含む)。角膜の血管新生の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過装着、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎、翼状片の乾性角膜炎、シェーグレン症候群、しゅさ性ざ瘡、フィレクテヌローシス(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角膜炎、多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、強膜炎、類天疱瘡、放射状角膜切開、血管新生緑内障及び水晶体後方線維過形成、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学薬品火傷、細菌性潰瘍、カビ性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染及びカポジ肉腫。
本発明の更に別の実施態様では、制御不能の血管形成を伴う慢性炎症性疾患の治療方法が提供される。前記方法は、制御不能の血管形成を伴う慢性炎症性疾患を罹患している患者に、血管形成を阻害できるように治療的に有効な量の本発明の組成物を投与することを含む。慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持するために毛細血管芽の持続的形成を必要とする。本発明の組成物を単独で又は他の抗炎症薬と併用して用いて血管形成を阻害することによって、肉芽腫の形成を防ぎ、それによって疾患を緩和させることができる。慢性炎症性疾患の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎、乾癬、サルコイドーシス、及び慢性関節リウマチ。
【0040】
炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)は、胃腸管の種々の部位の慢性炎症及び血管形成を特徴とする。例えば、クローン病は、もっとも一般的には回腸遠位部を冒すが、また口から肛門及び肛門周囲領域までの胃腸管の任意の部分に慢性の粘膜貫通炎症として発生し得る。一般的に、クローン病の患者は、腹痛、発熱、食欲不振、体重減少及び腹部腫脹を伴う慢性的な下痢を示す。潰瘍性大腸炎もまた、慢性で非特異的な炎症性及び潰瘍性疾患であり、結腸粘膜に発生し、血液性下痢を特徴とする。
これらの炎症性腸疾患は、一般的には慢性肉芽腫性炎症性の病理生理学的経過によって引き起こされる。炎症性腸疾患は胃腸管の全体を冒す可能性があり、典型的には炎症細胞の筒によって取り囲まれた新規な毛細血管芽を含む。本発明の組成物による血管形成の阻害はこの血管芽の形成を阻害し、肉芽腫形成を妨げるはずである。炎症性腸疾患はまた、腸以外の症状の発現、例えば皮膚病巣も示す。そのような病巣は炎症及び血管形成を特徴とし、胃腸管以外の他の多くの部位に発生し得る。本発明の組成物による血管形成阻害は炎症細胞の流入を減少させ、前記病巣の病理発生を予防、停止又は遅らせるはずである。
サルコイドーシス(また別の慢性炎症疾患)は、特発性の多系統肉芽腫症を特徴とする。ベリリウム症は組織病理学的にはサルコイドーシスと類似するが、ベリリウム元素によって引き起こされることが知られている。サルコイドーシスおよびベリリウム症の肉芽腫は、組織病理学的には結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の非乾酪変性肉芽腫及びマイコバクテリウムによって惹起される他の疾患に類似するが、結核菌感染で見出される乾酪変性肉芽腫は、ベリリウム症及びサルコイドーシスでは認められない。この疾患の肉芽腫は身体のいずれの場所にも形成され、したがってその症状は肉芽腫の部位及び疾患が活発であるか否かによって左右される。肉腫の肉芽腫の形成は、血管形成性毛細血管芽(炎症細胞の定常的供給を提供する)によって促進される。本発明の組成物を用いて血管形成を阻害することによって、そのような肉芽腫の形成を阻害することができる。
乾癬(前記もまた慢性及び再発性炎症疾患である)は、丘疹及び種々のサイズのプラークを特徴とする。本発明の組成物を単独又は他の抗炎症薬と併用して用いる治療は、この特徴的な病巣を維持するために必要な新規な血管の形成を妨げ、患者に症状の緩和を提供するはずである。
【0041】
慢性関節リウマチ(RA)もまた、末梢関節の非特異的な炎症を特徴とする慢性炎症疾患である。関節の滑膜基底層内の血管に血管形成が生じると考えられている。新規な血管ネットワークの形成に加えて、内皮細胞が複数の因子及び反応性酸素種を放出し、これらはパンヌスの増殖及び軟骨の破壊をもたらす。血管形成に必要とされる因子は、慢性関節リウマチの慢性炎症状態に活発に寄与し、前記の維持を助長する。本発明の組成物を単独又は他の抗RA薬と併用して用いる治療は、慢性炎症を維持するために必要な新規な血管の形成を妨げ、RA患者に症状の緩和を提供するはずである。
本発明の組成物はまた他の抗血管形成薬と併用して用いることができる。抗血管形成薬の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):レチン酸及びその誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)タンパク質、ENDOSTATIN(商標)タンパク質、スラミン、スクォラミン、メタロプロテイナーゼ-Iの組織阻害物質、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害物質、プラスミノーゲン活性化物質阻害剤-1、プラスミノーゲン活性化物質阻害剤-2、軟骨由来阻害物質、パクリタキセル、血小板因子4、プロタミンスルフェート(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(クィーンクラブの殻から調製)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp-pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝の調節物質(例えばプロリン類似体(1-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d-1,3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン)、α,α-ジピリジル、β-アミノプロピオニトリルフマレート、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロンを含む);モトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン-血清、チンプ-3、キモスタチン、β-シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン、フマギリン、金ナトリウムチオマレート、d-ペニシラミン(CDPT)、β-1-アンチコラゲナーゼ-血清、α-2-アンチプラスミン、ビサントレン、ロベンザリト2ナトリウム、n-(2-カルボキシフェニル-4-クロロアントロニル酸2ナトリウム又は“CCA”、タリドミド;血管不活性化(angiostatic)ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール;メタロプロテイナーゼ(メタロプロテアーゼ)阻害物質(例えばBB94)。他の抗血管形成薬には、以下の血管原性増殖因子(bFGF、aFGF、FGF-5、VEGFアイソフォーム、VEGF-C、HGF/SF及びAng-1/Ang-2)に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)が含まれる(N. Ferrana and K. Alitalo, "Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors" (1999) Nature Medicine5:1359-64。
全ての実施態様において、“有効な量”という用語は、医学分野の用語として、すなわち患者に最良の治療価値及び利益を供与する薬剤の投薬スケジュール及び投与ルートと理解される。
【0042】
(実施例1)
ポリモルフスクリーンに用いられるデシタビンサンプルはスーパーゲン社(SuperGen Inc.)によって提供された。このサンプルが示す代表的なXRPDパターンは図1に提供されている。このパターンを示すデシタビンポリモルフ型はA型と称される。A型は熱に安定であるが、水又は大気中の水分に暴露されたとき容易に水和してB型を生じる。B型は、実験条件に応じてA型又はC型のどちらかに変換される。C型は大気中の水分の存在で容易にB型に変換され、したがって実験室で純粋なC型サンプルを得ることは困難である。
デシタビンのポリモルフスクリーンのために調製されたサンプルを、類似するXRPDパターンにしたがって分類した。一連の合致するパターンに由来するあるXRPDパターンは“標準パターン”と称され、続いてこれを今後の比較に用いた。非晶質サンプルは、サンプルのXRPDパターンに範囲が明瞭なピークが存在しないこと、及び広い“ハロー”が存在することによって同定される。無秩序の物質は、サンプルのXRPDパターンで広いピークを特徴とする。溶液1H NMR分光分析を用いて、各固体型は、実際にデシタビンの固体変態であって分解産物ではないことを立証した。ポリモルフA、B及びCの1H NMR分光分析は図23−25にそれぞれ示されている。
【0043】
(実施例2)
デシタビンの秤量サンプル(典型的には10から20mg)をアリコットのテスト溶媒で処理した。溶媒は試薬等級又はHPLC等級であった。前記アリコットは典型的には100μL又は1mLであった。添加の間で、混合物を典型的には振盪又は超音波処理した。個体が溶解されたか否かは目視精査によって判定した。溶解性は、完全な溶解を提供するために使用された溶媒合計を基にしてこれらの実験から判定された。種々の溶媒におけるデシタビンの凡その溶解性は下記の表15に提供される。
表15:デシタビンの凡その溶解性
溶解性は溶液を生じるために用いられた溶媒の合計を基にこれらの実験から概算した。デュープリケートでの実施を平均した。実際の溶解性は、使用された溶媒アリコットのサイズのために、又は溶解速度が遅いためにこれらの計算よりも高いであろう。溶解が実験中に生じなかった場合は、溶解性は“未満”と表記されている。
一般的には、デシタビンはこの実験に用いた溶媒のほとんど全てで難溶性である。顕著な例外はメチルスルホキシドであり、前記ではこの化合物はほぼ37mg/mLの程度まで溶解性であることが判明した。デシタビンはまた、1,1,1,3,3,3-ヘキサンフルオロ-2-プロパノールにもわずかに溶解性であり(〜18mg/mL)、水に極めてわずかに溶解性である(〜8mg/mL)。
【0044】
(実施例3)
溶液をいくつかの異なる最終処理工程の1つを用いてろ過した。そのような処理工程には以下が含まれる:急速蒸発、低速蒸発、減圧下での遠心蒸発、低速冷却、溶媒/アンチソルベントクラッシュ、クラッシュ冷却、スラリー実験、相対湿度(RH)ストレス、上昇温度スラリー実験、蒸気拡散、粉砕実験、及び凍結乾燥。
急速蒸発(FE)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのナイロンフィルターでろ過した。前記ろ過溶液を開放バイアル中で周囲温度で蒸発させた。
低速蒸発(SE)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。前記ろ過溶液を、ゆるく蓋をしたバイアル又は小さな穴を有するアルミフォイルで覆ったバイアル中で周囲温度で蒸発させた。
減圧下での遠心蒸発(CentriVap)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターからバイアル中にろ過した。続いて、前記バイアルをラブコンコ(Labconco)セントリヴァップ(CentriVap(商標))遠心蒸発装置に置き、自動真空ポンプを用いて減圧下で溶媒を除去し、固体残渣を提供した。
低速冷却(SC)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、典型的には65℃の通常温度に設定したホットプレート上で加熱した。溶液を0.2μmのフィルターから開放バイアルにろ過し、前記はその間なお温かかった。前記バイアルに封をし、ゆっくりと周囲温度に冷却させた。固体の有無を観察した。固体が存在しない場合、又は固体の量がXRPD分析には少なすぎる場合は、前記バイアルを冷蔵庫に一晩置いた。再び、固体の有無を観察し、十分な固体が存在しない場合は、前記バイアルを冷凍庫に一晩置いた。十分な固体がなお存在しない場合には、サンプルのバイアルの蓋を緩めて周囲温度で溶液を蒸発させた。この事例では、サンプルはSC、SEとして記録される。形成された固体をろ過によって単離し、分析の前に風乾した。
【0045】
溶媒/アンチソルベントクラッシュ(S/AS)では、デシタビン溶液を種々の溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。固体の形成は、前記ろ過溶液をある温度で適切なアンチソルベントに添加することによって誘発した。生成された固体をろ過によって単離し、分析の前に風乾した。固体が直ちに形成されない場合には、サンプルを冷凍庫又は冷蔵庫に置き、結晶化を促進させた。固体が形成されない場合には、サンプルバイアルの蓋をゆるめ、溶液を周囲温度で蒸発させた。これらの事例では、サンプルはS/AS、SEとして記録される。
クラッシュ冷却(CC)では、デシタビン溶液を種々の溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。固体形成は、前記ろ過溶液をバイアルに添加し、直ちにサンプルをドライアイス/アセトン浴に数分置くことによって誘発した。生成された固体をろ過によって単離し、分析前に風乾した。固体が直ちに形成されない場合には、サンプルを冷凍庫に置き、結晶化を促進させた。
スラリー実験では、未溶解固体が存在するように十分なデシタビンを与えられた溶媒に添加した。続いて、オービタルシェーカー又は回転ホイールを用いて、前記混合物を封入バイアル中で周囲温度で攪拌した。数日後、真空ろ過で固体を単離し、サンプルバイアルの蓋をゆるめ周囲温度で乾燥させた。
蒸気拡散(VD)では、与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのナイロンフィルターでろ過したデシタビン溶液を含む開放バイアルを、溶媒を含む更に大きなバイアルの中に置いた。この更に大きなバイアルに封をし、周囲温度で数日静置した。粉砕実験では、デシタビンサンプルを、室温でボールミル(Retsch Mixer MillモデルMM200)を用いるか、又は液体窒素の温度でクリオグラインダー(SPEX CentiPrepモデル6750フリーザー/ミル)を用いてすり潰した。
上昇温度スラリー実験では、未溶解固体が存在するように十分な固体を与えられた溶媒に添加することによって、デシタビン溶液を調製した。続いて、オービタルシェーカーを用いて上昇温度で前記混合物を封入バイアル中で攪拌した。数日後に固体を吸引ろ過によって単離し、サンプルバイアルの蓋をゆるめ周囲温度で乾燥させた。
デシタビンポリモルフスクリーンの結果は下記の表16にまとめられている。
表16デシタビンポリモルフスクリーン
aPO=優越方位
【0046】
(実施例4)
相対湿度(RH)ストレス分析では、飽和塩溶液を少量の未溶解の塩とともに含むチャンバー内に固体サンプルを含む開放バイアルを置いた。チャンバーに封をし、周囲温度で数日静置させた。サンプルを前記RHチャンバーから取り出して直ちにX線粉末回折(XRPD)によってサンプルを分析した。これら塩溶液のRH値はASTMスタンダードから得られた。RHの結果は下記の表17に示されている。
表17:相対湿度ストレス実験
最後に凍結乾燥では、溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、続いて回転羽根の自動真空ポンプを取り付けた市販の凍結乾燥装置に置いた。この凍結乾燥操作の間に凍結溶液の温度管理は行われなかった。
吸湿性は、サンプルを相対湿度95%、室温の封入チャンバー内に20日間置くことによって調べた。質量増加/減少又はTGAはこの吸湿性実験工程では測定しなかった。20日後に残留する固体についてXRPDパターンを得て、出発物質と比較した。
脱水/脱溶媒実験は、サンプルを持続的真空下に室温で14日間置くことによって実施した。残留する固体についてXRPDパターンを得て、出発物質と比較した。
融解が目で観察されるまでホットベンチでサンプルをゆっくりと加熱し、続いて急速に前記サンプルを周囲温度に冷却することによってデシタビンの固化した融成物を生成した。物質が溶解し始めたとき、前記物質は黒変し泡だった。生じた黒色の物質は、分解のためにそれ以上は分析しなかった。
【0047】
(実施例5)
実施例5:単結晶の成長
ホットプレートで100℃に加熱したメタノール(メタノールの温度は55℃)の4.0mLに、A型の35.5mgをほぼ溶解させることによって溶液を調製した。この溶液をバイアル中にろ過し、前記バイアルを封入し、周囲温度に冷却した。固体を一晩形成させた。いくつかの結晶を顕微鏡のスライド上に置き、パラトン-N(Paratone-N)で保護した。
ほぼ0.28x0.25x0.05mmの寸法を有するC8H12N4O4の無色のプレートをランダムな方位を有するガラス繊維上にマウントした。予備実験及びデータの採集は、ノニウスカッパCCD(Nonius KappaCCD)回折計でMoのKα照射により実施した(λ=0.71073Å)。リファインメントはORTEPプログラムで実施し、充填模式図はマーキュリーヴァージョン1.1ソフトを用いて作成した。
データ採集のためのセル定数及び方位マトリックスは、2<θ<25゜の範囲で4960反射の設定角度を用いて最小二乗リファインメントから得た。オルト斜方晶系セルパラメーター及び算出容積は以下のとおりである:a=5.6268(2)、b=7.0943(2)、c=24.8394(10)Å、α=β=γ=90゜、V=991.54(6)Å3。Z=4及び228.1の分子量のためには、算出密度は1.53gcm-3である。DENZO/SCALEPACKからリファンメントされたモザイク度は0.42゜であり、結晶が良好な品質を有することを示した。空間群は、ABSENプログラムによって以下の系統的提示(h00 h=2n;0k0 k=2n;00l l=2n)から、及びそれに続く最小二乗リファインメントから測定し、P212121(no. 19)であると決定された。データは、150±1 Kの温度で、50.0゜の最大2θ値まで採集した。
この構造に対する結晶学的データには、C8H12N4O4の分子式、228.21の分子量、及びP212121の空間群が含まれる。得られた構造物の品質は、0.033又は3.3%のR-値によって示されるとおり高い。不整ユニットはただ1つの対称非依存分子を含む(図6を参照されたい)。A型の結晶充填は、アゾシトシン環の間の水素結合の結果として形成される段ボールテープ構造を特徴とする(図7)。続いて一次元テープユニットは、デオキシリボース環の間の比較的弱い水素結合によって結合している段ボール層内に積重ねられる(図8)。単結晶X線データから計算されたXRPDパターンは図1に提示されている。この計算パターンとA型に対する実験的XRPDパターンとの比較は、この2つのデータセットの良好な合致を提供する。
【0048】
(実施例6)
実施例6:性状決定
X線粉末回折:
X線粉末回折解析は、1.5406Åの波長を有するCu Kα放射線を用いてシマヅXRD-6000 X-線粉末回折計で実施した。前記装置は、精密焦点X-線チューブを備えていた。前記チューブのパワーは、電位差を40kV及び電流を40mAに設定することによって設定された。回折した放射線はNaIシンチレーション検出装置で検出された。2.5から40の゜2θまで3゜/分(0.4秒/0.02゜ずつ)でのシータ-2シータ連続スキャンを実施した。シリコン標準物は毎日解析して装置のアラインメントをチェックした。各サンプルは石英のサンプルホルダーで解析した。種々の温度(VT-XRPD)実験は1つの型について実施した。サンプルは、種々の温度のホルダー中にサンプルを圧縮することによって分析のために調製した。
熱分析及び熱重量分析:
熱重量分析は、TA装置TGA2050又は2950で実施した。目盛定め標準物はニッケル及びアルメル(Alumel(商標))であった。サンプルを清浄なアルミニウム皿に置き、正確に秤量し、TGA炉に挿入した。サンプルを窒素中で35℃から250℃の最終温度まで10℃/分の速度で加熱した。
微分走査熱量測定法(DSC)データはTA装置DSC2920で得た。目盛定め標準物はインジウムであった。サンプルをDSC皿に置き、重量を正確に記録した。前記皿はクリンプされた(crimped)皿か、又は圧を逃がすために小さな穴をもつ密閉皿であった。観察される揮発温度は、圧の作用のために開放パンで得られる温度より高いことに留意されたい。
サンプルを窒素下で25℃から250℃又は350℃の最終温度まで10℃/分の速度で加熱した。
ホットステージ顕微鏡法:
ホットステージ顕微鏡法は、画像採集のためにソニーDVC-970MD 3CCDカメラを搭載したライカDM LP顕微鏡に載せたリンカン(Linkam)ホットステージ(モデルFT IR600)装置を用いて実施した。サンプルの観察のために20倍の対物レンズをクロスポラライザーとともに用いた。ステージ温度は、サンプルを調べる前に毎日USP標準物を用いて目盛決めを実施した。各サンプルについて、少量を顕微鏡スライドに置き、覆いをし、一滴のシリコン油を固体上に添加した。サンプルをほぼ4℃/分で加熱し、20倍の対物レンズ及びCCDカメラを用いて画像を周期的に捉えた。クロスポラライジングフィルターを用いて二重屈折性(birefringence)を観察した。
赤外(IR)分光分析:
IRスペクトルは、ニコレット・インスツルメント社(Nicolet Instrument Corp.)のマグマ(Magma(商標))モデル860フーリエ変換IR分光光度計で得た。前記にはエバー-グロ(Ever-Glo)中/遠赤外供給源、拡張範囲の臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター、及びジューテロ化したトリグリシンスルフェート(DTGS)検出計が搭載されていた。サンプリングのために、スペクトラ-テック社(Spectra-Tech, Inc.)の拡散リフレクタンスアクセサリー(the Collector(商標))を利用した。各スペクトルは、4cm-1のスペクトル解析能で256の同時添加スキャンを表す。化合物のためのサンプル調製は、サンプルをマイクロカップに置き、前記物質を凍らせたガラススライドの高さに調節することから成っていた。設定のバックグラウンドデータを正しい位置のアラインメントミラーにより得た。続いて単一ビームサンプルデータを得た。その後、Log 1/R(R=リフラクタンス)スペクトルを、サンプルの単一ビームデータセット対バックグラウンドの単一ビームデータセットの比を得ることによって得た。分光光度計の波長は、使用時前にポリスチレンにより目盛定めを実施した。
ラマン分光分析:
FT-ラマンスペクトルは、1064nmの励起波長及びほぼ0.5WのNd:YVO4レーザーパワーを利用してFT-ラマン960分光光度計(Thermo Nicolet)で得た。ラマンスペクトルは、インジウムガリウム砒化物(InGaAs)検出計を用いて測定した。各サンプルは、分析のために前記サンプルを固体ホルダーに置くことによって準備した。256のサンプルスキャンの全てを4cm-1のスペクトル解析能で採集した。分光光度計(の波長)は、使用時に硫黄及びシクロヘキサンにより目盛定めを実施した。
NMR分光分析:
5.87T(ラーマー周波数:1H=250MHz)で操作するブルーカー(Bruker)モデルAM-250分光光度計により、溶液状態1H NMRスペクトルを得た。パルス幅7.5μs及び捕捉時間1.6384秒を5000Hzのスペクトルウィンドウにわたって用いて時間-ドメインデータを得た。合計16384のデータポイントを採集した。5秒の緩和遅延時間を過渡の間に用いた。各データセットは典型的には128の共同平均過渡から成っていた。スペクトルはGRAMS/32 AIソフト、ヴァージョン6.00を用いて加工した。The free induction decay (FID) was zero-filled to four times the number of data points、更にフーリエ変換前に0.61Hzの線拡張因子を用いて指数関数的に増加させた。1Hスペクトルは、内部標準として添加したテトラメチルシラン(0ppm)に対して内部リファレンスを実施した。
水分バランス:
水分収着/脱着データはVTI SGA-100蒸気収着分析装置で採集した。収着及び脱着データは、窒素パージ下で5から95%の範囲の相対湿度(RH)にわたって10%ずつRHを増加させながら採集した。塩化ナトリウム(NaCl)及びポリビニルピロリドン(PVP)を目盛定め標準として用いた。分析に用いた平衡基準は、5分で0.0100%未満の質量変化で、前記質量基準が満たされない場合は、平衡基準は180分の最大平衡時間であった。採集データは、サンプルの初めの水分含有量に対して修正されなかった。
本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改変及び変更を本発明の化合物、組成物、及びに対して加えることができることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、本発明の改変及び変更が添付の特許請求の範囲及び前記の等価物であることを条件として、前記改変及び変更に及ぶ。
【0049】
(実施例7)
実施例7:非晶質材料
非晶質材料は、デシタビンを水から結晶化させることによって調製した(サンプル番号1029-39-04)。
【0050】
(実施例8)
VT-XRPD実験では、デシタビンポリモルフB型はB型及びC型の混合物に変換され、一方、TGA炉で実施した実験ではB型は約150℃でA型に変換された。サンプルサイズ以外では、これら2つの実験における他の唯一の相違は、VT-XRPD実験では、サンプルは、大気の存在下で加熱され、一方、TGA実験では乾燥窒素が用いられている。
【0051】
(実施例6)
図26は、デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)及びC型(下)のXRPDパターンの比較を示す。以下の特徴的なピークによって、デシタビンの3つのポリモルフ型を区別することができる。A型は、凡そ7.0の゜2θ値にシャープなピークを有し、一方、B及びC型は同じ領域にごく小さなピークを有する。A型は、凡そ13および14.5の゜2θ値に2つのピークを有し、それに対してB及びC型では凡そ13の゜2θ値にただ1つのピークが存在する。B型は、凡そ22.5及び26の゜2θ値に2つのピークを有し、それに対して、A型では多数の短いピークが、又C型では26の゜2θ値にただ1つのピークが存在する。更に、C型は27の゜2θ値にシャープなピークを有し、A及びB型はピークをもたない。
図27は、1700cm-1から700cm-1の間のデシタビンA型(上)、B型(中)及びC型(下)のIRスペクトルの比較を示す。この3つのポリモルフの各々のIRスペクトルは固有であり、前記ポリモルフの識別に用いることができる。例えば、A型は凡そ1700cm-1にシャープなピークを有し、前記はB型ではごく小さなピークであり、C型では広いピークである。第二に、B型は1700cm-1にシャープなピークを有し、一方、A及びB型の両型は同じ領域にシャープなピークを有する。第三に、C型は1475cm-1から1550cm-1の間に広いピークを有し、1400cm-1又は1600cm-1にはピークをもたないが、一方、A型は1400cm-1及び1600cm-1の領域に広がる広いピークを有し、B型は凡そ1500cm-1に単一ピーク及び1450cm-1により短いピークを有する。
図28は、デシタビンA型(上)、B型(中)及びC型(下)のラマンスペクトルの比較を示す。各ポリモルフのスペクトルは以下のように区別することができる。A型は凡そ800cm-1にシャープなピークを有し、一方、B及びC型は分割ピークを有し、第二のより短いピークを凡そ800cm-1に、よりシャープなピークをわずかに低いシフト(例えば約820cm-1)に有する。第二に、B型は凡そ1300cm-1に短いシャープなピークを有し、一方、A及びC型は同じ領域により広い又はより短いピークを有する。更にまた、ポリモルフC型は凡そ850cm-1から900cm-1の間にピークをもたず、一方、A及びB型の両型は前記領域に短いシャープなピークを有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ポリモルフA型のXRPDパターンを示す。
【図2】ポリモルフA型の微分走査熱量測定法による熱解析を示す。
【図3】ポリモルフA型のIR吸収スペクトルを示す。
【図4】ポリモルフA型のラマン吸収スペクトルを示す。
【図5】ポリモルフA型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図6】ポリモルフA型の不整ユニットを示す。
【図7】c軸から見た、ポリモルフA型の結晶充填構造を示す。
【図8】b軸から見た、ポリモルフA型の結晶充填構造を示す。
【図9】ポリモルフB型のXRPDパターンを示す。
【図10】ポリモルフB型の熱解析及び微分走査熱量測定を示す。
【図11】ポリモルフB型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図12】c軸から見た、ポリモルフB型の結晶充填構造を示す。
【図13】b軸から見た、ポリモルフB型の結晶充填構造を示す。
【図14】ポリモルフB型のIR吸収スペクトルを示す。
【図15】ポリモルフB型のラマン吸収スペクトルを示す。
【図16】ポリモルフC型のXRPDパターンを示す。
【図17】ポリモルフC型の1H NMR分光分析を示す。
【図18】ポリモルフC型の熱解析及び微分走査熱量測定を示す。
【図19】ポリモルフC型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図20】ポリモルフC型のIR吸収スペクトルの図を示す。
【図21】ポリモルフC型のラマン吸収スペクトルの図を示す。
【図22】デシタビンの一般式を示す。
【図23】デシタビンポリモルフA型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図24】デシタビンポリモルフB型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図25】デシタビンポリモルフC型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図26】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のXRPDパターンの比較を示す。
【図27】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のIRスペクトルの比較を示す。
【図28】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のラマンスペクトルの比較を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、デシタビンの新規なポリモルフ(polymorph)、特にデシタビンの無水結晶及び半水結晶形を提供する。本発明はまた、そのようなポリモルフを含む医薬組成物及び処方物を提供する。いくつかの変型例では、本明細書の医薬組成物及び処方物は、経口投与、注射及び/又は吸入用に適合させることができる。開示のデシタビンポリモルフの生成方法、開示のデシタビンポリモルフの医薬処方物の製造方法の他に前記医薬処方物を種々の疾患の治療に使用する方法を含む、種々の方法もまた提供される。
ある実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0及び14.5に主要回折線(major diffraction line)゜2θ値を、更にほぼ13、18.5、21.5、23.5及び24.5に微弱回折線(minor diffraction line)゜2θ値を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)によって測定したとき約200.5℃から202.5℃で吸熱、約202.5℃から204.5℃で放熱;約1850cm-1に集中する吸収、及び約2000cm-1に集中する別のピークを有するIRスペクトル;及び約2900cm-1から3000cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りにシャープなピークを有し、約600cm-1から1600cm-1で一連の小バンドに取り囲まれたラマンスペクトル。
【0002】
別の実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、6.5、13.5、17、18、20.5、22.5及び23.5の゜2θ値に主要回折線を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法によって測定したとき85℃から87℃で吸熱、93℃から96℃で吸熱、197℃から200℃で吸熱、及び199℃から201℃で放熱;3400cm-1辺りに広いストレッチ、3100cm-1から2800cm-1にストレッチ、2000cm-1辺りにシャープなピーク、及び約1700cm-1から400cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトル;及び、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、約800cm-1にピーク、1600cm-1から600cm-1に一連の小バンドを有するラマンスペクトル。
また別の実施態様では、デシタビンポリモルフは、以下の1つ又は2つ以上の物理的特性を特徴とし得る:波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、13、14.5、16.5、19、23及び27.5の゜2θ値に主要回折線を有するX線粉末回折パターン;微分走査熱量測定法によって測定したとき48℃から50℃で第一の微弱吸熱、163.6℃から165.6℃で第二の微弱吸熱、194.8℃から196.8℃で第三の吸熱、及び195℃から197℃で放熱;3625cm-1から3675cm-1で吸収無し、大雑把に3400cm-1に広いストレッチ、2000cm-1に弱いピーク、及び1700cm-1から500cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトル;及び、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、約800cm-1にピークを有するラマンスペクトル。
【0003】
発明の詳細な説明
デシタビン(又は5-アザ-2'-デオキシシチジン)は、1964年に先ず初めに合成されたピリミジン類似体である。その抗白血病性潜在能力は、Sorm and Vesely(1968)が最初に認めた。最近の研究は、デシタビン(及びその類似体5-アザシチジン)の抗白血病活性は、DNAメチルトランスフェラーゼと共有結合アダクツを形成することにより、前記メチルトランスフェラーゼ酵素を阻害するその能力と関係を有する可能性を示した。サイレント遺伝子の活性化は、老化及びアポトーシスに至る白血球細胞の最終分化の誘発に必要であると考えられる。複数の研究が、デシタビンによる処置は、白血病細胞の表現型改変、CD13及びCD33の発現低下、並びに成熟類骨髄系細胞の表面決定基(例えばCD16及びCD11c)の抗原密度の増加をもたらすことを示している。興味深いことに、白血病細胞表面のMHCクラスI分子、HLA-DR及びベータ-2-ミクログロブリンの発現は、デシタビン療法時に顕著に増加する。したがって、デシタビン処置は、IL-2のような免疫介在療法、又は移植若しくはドナー白血球輸液に付随する移植片対白血病作用を高める可能性がある。デシタビンは特に再発性又は難治性白血病の患者での応答達成に効果的であり、更に骨髄外毒性が限定的であるために有利な薬剤である。
本発明はデシタビンの新規なポリモルフを提供する。本発明は更にそのようなポリモルフを用いる医薬組成物及び処方物を提供する。前記医薬組成物及び処方物は、経口投与、注射及び/又は吸入を含む種々の投与形のために適合させられる。本発明はまた、新規なデシタビンポリモルフの生成方法、デシタビンポリモルフの医薬処方物の製造方法、及び種々の疾患(例えば白血病及び/又は、CD13及び/又はCD33の発現レベルの上昇及び/又はCD16及び/又はCD11cの発現レベルの低下に付随する他の症状)を治療する方法を提供する。
【0004】
A.定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語及び語句を下記に定義する:
本明細書で用いられる、“無水物”という用語は、その実験式が水を含まない化合物を指す。
本明細書で用いられる、“半水和物”という用語は、1分子の水が2分子のデシタビンと結合した水和物を指す。
本明細書で用いられる、“一水和物” という用語は、その実験式が1分子の水を含む化合物を指す。
本明細書で用いられる、“非晶質”という用語は、サンプルのXRPDパターンにおいて範囲が明確なピークを欠くか、又は広がった“ハロー”の特徴を有するサンプルを指す。“非晶質”という用語はまた、結晶含有量をほとんど含まず、XPRD又は他の回折技術では識別不能パターンを生じる物質を指す。ガラス質物質は非晶質であると考えられる。非晶質物質は真の結晶格子をもたず、結果として純固体というよりはむしろガラス質であり、技術的には非常に粘稠な非結晶性流動体に類似する。純固体というよりは、ガラスは擬似固体非晶質物質としてより正確に表現することができる。したがって、非晶質物質は、擬似固体ガラス質物質を指す。化合物の溶液からの沈殿(しばしば迅速な溶媒の蒸発によって達成される)は、化合物の非晶質型に都合がよいことが知られている。
本明細書で用いられる、“広い”又は“拡大した”という用語は、XRPD、NMR及びIR分光分析線を含むスペクトル線を指し、基準スペクトルの線幅と比較した相対的な用語である。基準スペクトルは、しばしば具体的な化合物の非操作結晶(下記に定義されている)型のスペクトルであり、溶媒の組成及び特性を含むある一式の物理的及び化学的条件(例えば温度及び圧力)から直接得られるスペクトルで、例えば、粉砕前の結晶材料に対するすり潰した又は粉砕した結晶材料のXRPDスペクトルを指す。溶媒和又は水和された構成分子、イオン又は原子が迅速にタンブリングしない物質では、線の拡大は、前記化合物の化学的成分の方位のランダム性の増加を示し、したがって非晶質含有量の増加を示す。比較が種々の結晶化条件により得られた結晶質物質間で実施されるとき、拡大は、拡大スペクトル線を有するサンプルの非晶質含有量の増加、又は同一ではないが類似のスペクトルを有する結晶の混合物の可能性のどちらかを示している。
【0005】
本明細書で用いられる、“結晶質”という用語は、水和又は溶媒和され得る、XRPD又は他の回折技術によって識別可能な回折パターンを示すために十分な結晶含有量を有する個々の化合物を含む物質を指す。溶液に溶解された化合物の直接結晶化によって溶媒から得られるか、又は種々の結晶化条件下で得られた結晶の相互変換(interconversion)から得られる結晶質物質は、前記溶媒を含む結晶を有するであろう(前記は結晶質溶媒和物と称される)。更にまた、具体的な溶媒組成及び結晶化の物理的特性(総じて結晶化条件と称される)は、前記結晶化条件に固有の物理的及び化学的特性を有する結晶質物質をもたらすことができる。結晶特性の例には、前記化合物の化学成分の互いに対する前記結晶内での方位、及び前記化合物のある特定の形態の優位性が含まれる。
存在する結晶の個々のタイプの形態(結晶の熱動力学的安定性を決定する)に応じて、前記個々の化合物を含む非晶質固体物質は、最初の結晶化の副産物及び/又は前記結晶質物質を含む結晶の分解産物として多様な量で存在するであろう。したがって、本明細書で用いられる結晶質は、前記物質が識別可能な回折パターンを有するかぎり、種々の程度の非晶質含有量を含む。結晶質物質の非晶質含有量は、物質をすり潰すか又は粉砕することによってしばしば増加し得る(前記は、非粉砕結晶質物質に比較して回折スペクトル線又は他のスペクトル線の拡大によって明示される)。XRPD又は他の結晶特異的スペクトルで識別が不能になるか(実質的に物質を非晶質にする)、又はほとんど識別不能になる得る程度にまで十分なすり潰し及び/又は粉砕は、未粉砕結晶質物質と比較してスペクトル線は拡大され得る(擬似非晶質と称され得る)。
本明細書で用いられる、“痕跡”という用語は、本明細書で用いられる物理的及び化学的検出方法によって検出可能な量であるが、結晶内に存在する個々の化合物の0.03当量未満を含んでいる。例えば、0.04%(w/w)未満のH2Oを含むデシタビンの結晶質ポリモルフ(ここでデシタビン1分子当たり1個のH2O分子を含む結晶(例えば1当量のH2O)はH2Oがほぼ4.4%(w/w)である)、水の痕跡を含むと正確に記載される。
【0006】
B.癌関連遺伝子の異常な高メチル化
哺乳動物細胞では、ゲノムDNA中のほぼ3%から5%のシトシン残基が5-メチルシトシンの形態で存在する。シトシンのこのような改変はDNA複製後に生じ、メチルドナーとしてS-アデノシル-メチオニンを用いてDNAメチルトランスフェラーゼによって触媒される。ほぼ70%から80%の5-メチルシトシン残基がCpG配列で見出される。高頻度で見出されるとき、ゲノム中のこの配列はCpGアイランドと称される。非メチル化CpGアイランドはハウスキーピング遺伝子に付随し、一方、多くの組織特異的遺伝子のアイランドは、それらが発現される組織を除いてメチル化される。DNAのこのメチル化は、胚の発生時の真核細胞における種々の遺伝子発現の制御で重要な役割を果たすと提唱されてきた。この仮説に一致して、DNAメチル化の阻害は哺乳動物細胞の分化を誘発することが見出された(Jones and Taylor, Cell (1980) 20:85-93)。
DNA中のメチル化シトシン(C)(5-メチルシトシン)は偶発的な脱アミノ化を受け、シトシンが脱アミノ化されてからウラシルを生じるよりもはるかに高速でチミン(T)が生成される(以下を参照されたい:Shen et al. Nucleic Acids Res. (1994) 22:972-976)。5-メチルシトシンの脱アミノ化が修復されない場合、CからTへの遷移変異をもたらすであろう。例えば、ヒトp53遺伝子中のDNA損傷の多くの“ホットスポット”がCpGからTpGへの遷移変異と密接に関連している(以下を参照されたい:Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94:3893-3898)。p53遺伝子以外の多くの腫瘍抑制遺伝子もまた、それらのプロモーター領域中のCpGアイランドの異常なメチル化によって不活化され得る。多くの腫瘍サプレッサー及び他の癌関連遺伝子が、ヒト癌細胞及び原発腫瘍で高メチル化されることが見出された。腫瘍増殖の抑制に参画し、異常な高メチル化によってサイレンス化される遺伝子の例には以下が含まれる:p15/INK4B(サイクリンキナーゼ阻害因子)、p16/INK4A(サイクリンキナーゼ阻害因子)、p73(p53同族体)、ARF/INK4A(通常レベルp53)、ウィルムス腫瘍、フォンヒッペルリンダウ(von Hippel Lindau、VHL)、レチン酸レセプターβ(RAR β)、エストロゲンレセプター、アンドロゲンレセプター、癌(HIC1)及び網膜芽細胞腫(Rb)で高メチル化された乳房由来増殖阻害因子、侵襲/転移サプレッサー(例えばE-カドヘリン)、組織阻害因子メタロプロテイナーゼ-2(TIMP-3)、mts-1及びCD44;DNA修復/無毒化発癌物質(例えばメチルグアニンメチルトランスフェラーゼ)、hMLH1(ミスマッチDNA修復)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、及びBRCA-1;血管形成阻害因子(例えばトロンボスポンジン-1(TSP-1)及びTIMP3);及び腫瘍抗原(例えばMAGE-1)。
【0007】
特に、p16のサイレンシングは、多くの種々の癌タイプでしばしば異常なメチル化を伴う。p16/INK4A腫瘍サプレッサー遺伝子は、構成的に発現されるサイクリン依存キナーゼ阻害剤をコードする(前記はサイクリンD-Rb経路による細胞周期の制御で決定的な役割を果たす)。Hamel and Hanley-Hyde(Cancer Invest. (1997) 15:143-152)は染色体9p(原発性肺癌のヘテロ接合性の低下をしばしば受ける部位)上に位置する。これらの癌では、非欠失対立遺伝子座の不活化をもたらすメカニズムは異常なメチル化であると説明されている。実際、p16を発現しなかった肺癌細胞株の場合、48%がこの遺伝子のメチル化の徴候を示した(Otterson et al. Oncogene (1995) 11:1211-1216)。原発性非小細胞性肺腫瘍の約26%がp16のメチル化を示した。乳房及び結腸の原発性腫瘍はそれぞれ31%及び40%のp16のメチル化を示した(Herman et al. Cancer Res. (1995) 55:4525-4530)。
レチン酸レセプターの異常なメチル化はまた、乳癌、肺癌、卵巣癌などの進行に寄与する。レチン酸レセプターは、DNA中のレチン酸応答エレメント(RARE)と結合して遺伝子発現を活性化させる核内転写因子である。特に、仮説的腫瘍サプレッサーRARβ遺伝子は染色体3p24(乳癌のヘテロ接合性の低下をしばしば示す部位)上に位置する(Deng et al. (1996)Science 274:2057-2059)。いくつかの腫瘍細胞へのRARβのcDNAのトランスフェクションは最終的分化を誘発し、ヌードマウスでのそれらの腫瘍原性を低下させた(Caliaro et al. Int. J. Cancer (1994) 56:743-748;及びHoule et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:985-989)。RARβ遺伝子の発現欠如は乳癌及び他の癌タイプについて報告された(Swisshelm et al. Cell Growth Differ. (1994) 5:133-141;及びCrowe, Cancer Res. (1998) 58:142-148)。RARβ遺伝子発現欠如についての前記のような理由はRARβ遺伝子の高メチル化に依る。実際、RARβのメチル化は、原発性結腸癌の43%及び原発性乳癌の30%で検出された(Cote et al. Anti-Cancer Drugs (1998) 9:743-750;及びBovenzi et al. Anticancer Drugs (1999) 10:471-476)。
【0008】
エストロゲンレセプター遺伝子の5'-領域のCpGアイランドの高メチル化は多くの腫瘍タイプで見出された(Issa et al. J. Natl. Cancer Inst. (1994) 85:1235-1240)。エストロゲンレセプター発現欠如は、遺伝子変異が存在しない場合ですらホルモン非応答性乳癌の一般的特徴である(Roodi et al. J. Natl. Cancer Inst. (1995) 87:446-451)。エストロゲン陰性である原発性乳房腫瘍の約25%が、この遺伝子の1つの部位に異常なメチル化を提示していた。エストロゲンレセプターのmRNAを発現しない乳癌細胞株は、DNAメチルトランスフェラーゼレベルの増加及びこの遺伝子のプロモーター領域の高度のメチル化を示していた(Ottaviano et al. Cancer Res. (1994) 54:2552-2555)。ヒトのミスマッチ修復遺伝子(hMLH-1)の高メチル化はまた種々の腫瘍で見出されている。ミスマッチ修復は、細胞増殖時のDNA複製の忠実性を高めるために細胞によって用いられる。この活性の欠如は、正常細胞で観察される変異速度よりもはるかに速い変異速度をもたらし得る(Mordrich and Lahue, Annu. Rev. Biochem. (1996) 65:101-133)。ミスマッチ修復遺伝子(hMLH-1)のプロモーター領域のメチル化は原発性結腸腫瘍での前記の発現欠如と相関し、一方、正常な隣接組織及びこの遺伝子を発現する結腸腫瘍はそのメチル化の形跡を示さない(Kane et al. Cancer Res. (1997) 57:808-811)。
DNAの異常なメチル化が腫瘍形成時に発生する分子メカニズムは明らかではない。DNAメチルトランスフェラーゼが、親の鎖内に相補的なメチル化されたCpGをもたない発生期DNA鎖でCpGアイランドをメチル化することによって間違いを生じることはあり得る。更にまた、異常なメチル化は、これらの部位をメチル化から“護る”CpG結合タンパク質の除去による可能性も有り得る。そのメカニズムが何であれ、異常なメチル化が頻発することは正常な哺乳動物細胞では稀な事象である。
【0009】
C.デシタビン
デシタビン(5-アザ-2'-デオキシシチジンとしても知られている)は、その関連する天然のヌクレオシドデオキシシチジンのアンタゴニストである。これら2つの化合物の唯一の構造的相違は、デシタビンのシトシンの5位には、デオキシシチジンのこの位置の炭素に対して窒素が存在することである。デシタビンでは2つの異性形を区別することができる。この場合、ベータ-アノマーがデシタビンの活性形である。水溶液中でのデシタビンの分解態様は以下のとおりである:(a)活性なβ-アノマーの不活性なα-アノマーへの変換(Pompon et al. J. Chromat. (1987) 388:113-122);(b)アザ-ピリミジン環の開環によるN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシル)-尿素の生成(Mojaverian and Repta, J. Pharm. Pharmacol. (1984) 36:728-733);及び(c)その後に続くグアニジン化合物の生成(Kissinger and Stemm, J. Chromat. (1986) 353:309-318)。本出願はデシタビンのベータ-アノマーを扱う。
デシタビンは多くの薬理学的特徴を有する。分子レベルでは、DNAへの取り込みについてS期依存性である。細胞レベルでは、デシタビンは細胞の分化を誘発することができ、血液学的毒性を示す。in vivoで短い半減期を有するにもかかわらず、デシタビンは優れた組織分布を示す。
デシタビンのもっとも主要な機能は、DNAメチル化を特異的に及び強力に阻害するその能力である。例としてCpGアイランドのシトシンのメチル化について上述したように、シトシンの5-メチルシトシンへのメチル化はDNAレベルで生じる。細胞内では、デシタビンは先ず初めにその活性形(リン酸化された5-アザ-デオキシシチジン)にデオキシシチジンキナーゼによって変換される(前記キナーゼは主として細胞周期のS期に合成される)。デオキシシチジンキナーゼの触媒部位に対するデシタビンの親和性は天然の基質(デオキシシチジン)に類似する(Momparler et al. Pharmacol. Ther. (1985) 30:287-299)。デオキシシチジンキナーゼによってそのトリホスフェート形に変換された後、デシタビンは、複製DNAに天然の基質(dCTP)の速度と類似の速度で取り込まれる(Bouchard and Momparler, Mol. Pharmacol. (1983) 24:109-114)。
【0010】
デシタビンのDNA鎖への取り込みはメチル化低下効果を有する。各クラスの分化細胞はそれ自身の別個のメチル化パターンをもつ。染色体の複製後に、このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは相補的な娘DNA鎖でのメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位炭素の窒素の置換は、このDNAメチル化の正常なプロセスを妨害する。メチル化の特異的部位における5-メチルシトシンのデシタビンによる置換は、おそらく前記酵素とデシタビン間の共有結合の形成のために、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的不活化をもたらす(以下を参照されたい:Juttermann et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:11797-11801)。特異的にDNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができる。
デシタビンのDNA鎖への取り込みはメチル化低下効果を有する。各クラスの分化細胞はそれ自身の別個のメチル化パターンを有する。このメチル化パターンを保存するために、親の鎖上の5-メチルシトシンは相補的な娘DNA鎖でのメチル化を誘導するために機能する。シトシンの5位炭素の窒素の置換は、このDNAメチル化の正常なプロセスを妨害する。メチル化の特異的部位における5-メチルシトシンのデシタビンによる置換は、おそらく前記酵素とデシタビン間の共有結合の形成のために、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的不活化をもたらす(以下を参照されたい:Juttermann et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:11797-11801)。特異的にDNAメチルトランスフェラーゼ(メチル化に必要な酵素)を阻害することによって、腫瘍サプレッサー遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができる。
【0011】
D.デシタビンポリモルフ
本発明はデシタビンの種々のポリモルフを開示する。前記の一般構造は図22に示されている。簡潔にするために、本明細書に記載されるポリモルフのいくつかはポリモルフA、B及びC型と称する。これらのポリモルフの物理的性状を決定するために、種々の検査を各ポリモルフについて実施した。前記検査にはX線粉末回折(“XRPD”)、可変温度X線粉末回折(“VT-XRPD”)、熱解析(“TA”)、微分走査熱量測定(“DSC”)、赤外線分光分析(“IR”)、ラマン分光分析(“ラマン”)、NMR分光分析、水分収着/脱着分析(“MS/DA”)及びホットステージ顕微鏡法が含まれる。
本発明のデシタビンポリモルフは、デシタビンの直接結晶化によって、又は結晶化に続く相互変換によって得ることができる。特に、溶液は、35.5mgのSSCI-15003(スーパーゲン社(SuperGen Inc.)から入手したデシタビン(Lot. No. H113210/27262A))をほぼ溶解することによって調製した。前記溶液をろ過しバイアルに入れ、続いてバイアルに封をして周囲温度に冷却した。一晩、固体を形成させる。
いくつかの事例では、生成されるポリモルフは結晶質無水物、一水和物及び半水和物である。非晶質ポリモルフはまた、溶媒和デシタビンから溶媒を急速に蒸発させることによって、又は本明細書に記載の種々の結晶質ポリモルフのいずれかをすり潰し、粉砕し、そうでなければ物理的に加圧又は磨耗させることによって誘導することができる。有機化合物を沈殿及び結晶化させるための一般的な有機的方法を応用して、種々のデシタビンポリモルフを調製することができる。これらの一般的な方法は有機合成化学及び製薬分野の業者には公知であり、例えば以下に記載されている:J. March, "Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure," 4th Ed. (New York: Wiley-Interscience, 1992)。
【0012】
1.デシタビンのポリモルフA型:
デシタビンポリモルフA型はスーパーゲン社(SuperGen Inc.)から入手できる(Lot. No. H113210/27262A)。A型は結晶質無水物であり、サンプルのXRPDパターンでピークが存在することにより明瞭である。図1はA型のXRPDパターンを示している。主要回折線(10)及び(14)が、゜2θでそれぞれ7及び14.5に認められる。シャープであるが弱い線(12)、(16)、(18)及び(19)が、゜2θでそれぞれ13、18.5、21.5及び24.5に認められる。A型は、25から40の間の゜2θ値で針状形態を示す。更にまた、このデータと一致して、A型は、相対ピーク強度における変動として認められる優越方位効果を示す(優越方位効果は針状又は層状形態を有する結晶質物質でしばしば認められる)。
A型の熱解析は更に、このポリモルフがデシタビンの無水物であることを示唆している。熱解析及びDSCの結果は下記の表1及び図2に要約されている。
表1:A型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
A型の熱解析は、ほぼ200℃のサンプル分解点まで質量低下を示さない。したがっていくつかの実施態様では、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって198℃から208℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって200℃から205℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。又は、より好ましくは、デシタビンのA型ポリモルフは、微分走査熱量測定法によって202℃から204℃の間で10℃/分の速度で吸熱を有すると特徴付けられる。
上記の吸熱は放熱事象を伴い、前記放熱は199℃から206℃辺り、又はより好ましくは201℃から204℃、又はより好ましくは203.5℃辺りに存在する。この動態は、A型は、約197℃から199℃で、より好ましくは約198.2℃で分解又は結晶再整列とともに溶解を開始し、約199℃から約201℃、又はより好ましくは約200℃の融点を有することを示している。200℃に近い融点はまたホットステージデータ(下記の表2に要約)によって確認される。
表2:ホットステージ顕微鏡観察
【0013】
A型のIRスペクトルは図1に示されている。前記スペクトルは、3500cm-1辺りにピーク(30)及び3500から3000cm-1の間に広いストレッチ(32)、1700cm-1から400 cm-1の間に複雑なフィンガープリント領域(34)、及び3700cm-1から4000 cm-1の間にごくわずかの吸収を示す。更にまた、IRスペクトルは、ほぼ1850cm-1に明確なピーク(36)及びほぼ2000cm-1に明確なピーク(38)を示す。
A型のラマンスペクトルは図2に提供される。ラマンスペクトルは、3000cm-1から2900cm-1の間に比較的弱いストレッチ(40)、ほぼ800cm-1にシャープなピーク(42)、及び600cm-1から1600 cm-1の領域に一連の小さなバンド(44)を示す。
A型の水分収着/脱着分析は、この固相ポリモルフは、デシタビン一水和物に水和されたもの(B型)と比較して不安定であることを明らかにした。A型の水分収着/脱着のデータは下記の表3更に図3に要約されている。
表3:A型ポリモルフの水分収着/脱着データ
【0014】
表3に示されているように、A型は、5%RHで平衡させたときごくわずかな量(0.06%)の水を失う。前記物質は、5から45%RHの範囲で総量約0.1%を失う。更にまた、図5に示されているように、A型サンプルは、RHが75%より上で水分を収着し、5から95%RHの総質量増加は7.3%である。収着事象で獲得された本質的に全ての質量は、脱着サイクル時にデシタビンポリモルフB型として保持され得る。A型に関して実施した実験は、大気中の水分はA型をB型に部分的に水和させることができることを示したが、一方、約10,000psiで1時間、A型を圧縮したとき型の変化は誘発されなかった。したがって、A型は打錠時に物理的に安定であり得る。
A型の単一結晶はメタノール中のデシタビン溶液を冷却することによって成長した。固体形に対するX線結晶構造を得た。A型の不整ユニットは図6に示されている。更にまたデシタビンのポリモルフA型は、段ボール(corrugated)テープの結晶充填構造を特徴とし、前記はアゾシトシン環の間の水素結合から生じる。c軸に沿って見下ろしたときのデシタビンA型の充填構造は図7に示されている。b軸に沿って見下ろしたときのデシタビンA型の充填構造は図8に示されている。
溶液状態のH1 NMRスペクトルは周囲温度で得られた。A型のH1 NMRの結果は、百万分率で表したシフトにより図23に示されている。シフト(238)及び(239)は芳香環の電子特性を示す。シフト(237)はC=C二重結合に直接結合した水素を示す。シフト(234)及び(236)は、エーテル領域又は更にアルコール及びエステルを示す。最後にシフト(232)は、C=O、C=C又はフェニル環の隣の炭素に結合した陽子を有するカルボニル領域を示す。2つ以上の電気的に陰性の置換基が存在する場合は、前記陽子はいっそうダウンフィールドに達し得る。これらの基の各々はC-H結合のわずかな分極、電子密度の減少及び陽子の脱シールドを誘発する。
【0015】
2.デシタビンのポリモルフB型
上記で考察したように、デシタビンは一水和物(B型と称される)として結晶化させることができる。デシタビンのB型ポリモルフは、A型を高い相対湿度に暴露し、続いて一水和物型の結晶化によって製造することができる。ある例では、A型は、20℃、75.5%RHで塩化ナトリウムの水溶液中でB型に変換される。B型は一水和物であると考えられ、図9に示されている。B型のXRPDパターンは、それぞれ約6.5、13.5、17、18、20.5、22.5及び23.5の゜2θ値に回折線(90)−(96)を有する。
B型の熱解析及びDSCデータは下記の表4に提供され、更に図10に示されている。
表4:B型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
B型ポリモルフの熱解析データは、サンプル中の結晶水は約100℃より低い温度で除去されることを示している。算出された150℃での7.2%の質量減少は、一水和物を無水物に脱溶媒化することに伴う理論的質量減少7.3%と一致する。図10に示したB型のDSC曲線は、それぞれ86℃及び94.9℃での2つの吸熱事象(102)及び(104)を示している。B型の溶解/分解に伴う吸熱事象は、A型のDSC図表で認められる吸熱事象よりもわずかに低い。B型のこれらの吸熱事象は水の減少に帰され、更に198.35℃でのシャープな吸熱(106)及び200℃での放熱(108)(前記はおそらく溶解/再結晶に帰される)が続く。ほぼ150℃の温度で10分加熱し続いて室温に冷却したB型サンプルはA型に変換される。このことは、所望する場合にはA型はB型から製造できることを示している。他方、B型は、真空オーブン中で室温で6日間保存したときC型に変換され、VT-XRPD実験は、B型を部分的に加熱してポリモルフC型が生成されることを示している。
【0016】
したがって、いくつかの実施態様では、デシタビンポリモルフBは、81℃から91℃の間で吸熱、90℃から100℃の間で吸熱、193℃から203℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。より好ましくは、デシタビンポリモルフBは、83℃から88℃の間で吸熱、93℃から98℃の間で吸熱、195℃から200℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。またはより好ましくは、デシタビンポリモルフBは、85℃から87℃の間で吸熱、94℃から96℃の間で吸熱、197.4℃から199.4℃の間で吸熱を示す微分走査熱量測定を特徴とする。
B型の水分収着/脱着データは下記の表5に提供され、更に図11にも示されている。
表5:B型の水分収着/脱着データ
【0017】
このデータは、B型は5%RHで部分的に脱溶媒和し得ることを示している。B型は5%RHで平衡化させたとき水分(約2.4%)を失うが、約44%RHでその水分を再度獲得し、95%RHで更に水分(0.09%)を獲得する。B型は5%RHで安定であるが、前記は部分的形態変化を進行させ、B型及びC型の混合物を提供する。性状決定データを基にすれば、B型はA型の一水和物である。
デシタビンポリモルフB型の単一結晶X線データを用いて、図12、13に示した充填模式図を作成した。図12は、c軸に沿って見下ろしたときのデシタビンB型の充填模式図を示す。図13は、b軸に沿って見下ろしたときのデシタビンポリモルフB型の充填模式図を示す。B型で優勢な相互作用は、一方向に優勢な(one-dominational)段ボールテープ構造(前記はA型でも見出される)と定義される水素結合である。しかしながら、B型は、A型の水素結合よりも長い(例えば弱い)水素結合をアザシトシン環の間に有する。更にまた、A型構造で認められるものとは異なり、B型のデオキシリボース環は、隣接するテープユニットを分離させる水分子と水素結合を形成する。A型で認められる前記段ボールモチーフもまたB型には存在しない。その代わりに、B型のテープユニットは同じ平面に沿って積重ねられる。B型の水分子が前記構造から取り除かれるならば、前記化合物は、A型に変換されるために更に別の著しい分子の再編を受ける必要がある。
図14はB型のIRスペクトルを示す。IRスペクトルは、3400cm-1辺りに比較的広いOHストレッチ(142)を示す。3100cm-1から2800 cm-1の間の芳香族及び脂肪族CHストレッチ(144)もまた広い。このスペクトルは、1700cm-1から400 cm-1に複雑なフィンガープリント(146)を有する。シャープなピーク(148)はほぼ2000 cm-1に存在し、C=Cストレッチ(例えば脂環式環のもの)を表す。
【0018】
B型のラマンスペクトルは図15に提供される。ラマンスペクトルは、3100cm-1から2800 cm-1の間に比較的弱い芳香族及び脂肪族CHストレッチ(152)、約800cm-1にC-O-C結合を示すピーク(154)、及び1600cm-1から600 cm-1の間に一連の小バンド(鎖式鎖及び脂環式鎖の振動を示す)を示している。
更にまた、メチルスルホキシド-d6中に溶解したB型の溶液の1H NMR解析によって、この態様で調製されたB型のサンプルは化学的に純粋であることが確認された(図24参照)。図24は、デシタビンポリモルフB型の1H NMRシフトを示す。シフト(248)及び(249)は、B型ポリモルフよりも高いピークを有する、シフト(248)をもつ芳香環の電子特性を示している。シフト(247)は、C=C二重結合に直接結合した水素を示している。シフト(244)及び(246)は、エーテル領域、又は更にアルコール及びエステルを示している。最後に、シフト(242)及び(241)は、C=O、C=C、又はフェニル環の隣の炭素と結合した陽子を有するカルボニル領域を示している。
【0019】
3.デシタビンのポリモルフC型
ポリモルフC型はスーパーゲン社から入手するか(Lot. No. 97045sg04)、又は上記に記載したデシタビンポリモルフB型から調製することができる。
C型のXRPDパターンは図16に提供されている。C型ポリモルフのパターンは、主要回折線をそれぞれ約6、13、14.5、16.5、19、23、27.5、32、33及び34の゜2θ値に有する。このパターンは、図17に提供されているように、溶液1H NMR分光分析による解析で化学的に純粋であることが判明した。
C型のTGAデータは下記の表6及び図18に提供される。
表6:C型結晶の熱解析データ
*Endo−吸熱、Exo−放熱、遷移が示された最高温度
**25℃から150℃の間のパーセント質量変化
弱い吸熱(180)及び(182)が、それぞれ48℃から50℃の間、及び163.5℃から165.5℃の間に認められるとともに、強い吸熱(184)が194.8℃及び196.8℃で認められる。強い放熱活性がほぼ195℃及び197℃で生じる。
したがっていくつかの実施態様では、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって44℃から54℃の間で吸熱、160℃から170℃の間で吸熱、190℃から200℃の間で吸熱、及び190℃から200℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって47℃から52℃の間で吸熱、162℃から167℃の間で吸熱、190℃から195℃の間で吸熱、及び193℃から198℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。より好ましくは、デシタビンのポリモルフC型は、微分走査熱量測定法によって、48℃から50℃の間で吸熱、163℃から165℃の間で吸熱、191℃から193℃の間で吸熱、及び194℃から196℃の間で放熱を有すると特徴付けられる。
【0020】
図18は、ほぼ150℃でほぼ1.2%のわずかな質量減少を示し、これは、C型で実施した水分収着/脱着分析と一致する(前記分析では、5%RHで平衡させたときC型はその最初の質量のほぼ1.4%を失うことが示された)。しかしながら、C型の別個の分析で25℃での質量平衡事象をTGA方法で省略したとき、異なる結果が得られる(図29参照)。この事例では、サンプルのTGAデータは約150℃でほぼ3.2%の質量減少を示す。この結果は、C型は不安定なデシタビン半水和ポリモルフであることを示唆している。デシタビンの水溶液の真空蒸発によってポリモルフスクリーンで調製したC型サンプル(サンプル番号1029-65-05)はまた、大量の揮発性物質を含むことがTGAによって判明した。このサンプルでは、質量減少は約150℃で7.2%の規模であり、これはデシタビン一水和物の脱水について予想される7.3%の理論的質量減少に近い。
C型の水分収着/脱着は下記の表7、更に図19に提供される。
表7:B型の水分収着/脱着データ
【0021】
5%RHで平衡させたとき、サンプルは最初の質量の1.4%を失い、サンプル中の微量の水分の存在を示している。C型は、5%RHから95%RHでその質量の13%近くを吸収するので非常に吸湿性である。サンプルCの質量減少の大半は5%RHでの最終RH事象で発生し、これはB型で観察されたものと類似する。質量平衡はこのRHレベルでは180分後に達成されないので、このRHレベルで更に時間を与えられるならば、サンプルは更に多くの水分を吸収することができる。水分収着/脱着解析後のC型サンプルのXRPD解析は、C型サンプルはB型に変換されることを示した。
これらの結果はRHチャンバーを用いてC型で実施したストレス実験と一致する(表17の下の2列を参照されたい)。3つのサンプルの2つが、ほぼ23%及び85%RHで保存されたときC型からB型に変換した。ほぼ33%RHで保存されたC型の第三のサンプルは28日後に変化なく維持された。これらの結果は、C型は十分な時間が与えられるならばB型に変換され得ることを示唆している。
C型のIRスペクトルは図20に提供されている。この形態について採集したIRデータは、3400cm-1辺りに広いOHストレッチ(200)を示す。特にポリモルフA型及びB型で2000 cm-1に観察されたシャープなピークと比較して、2000cm-1に弱いピーク(202)が存在する。1700cm-1から500 cm-1の間に複雑なフィンガープリント形態(204)もまた認められる。針状形の各ピークはA型のピークと一致するが、これらのピークはそれらより一般的に広くかつ長い。3625cm-1から3675cm-1の間で認められる吸収ピークは存在しない。
C型のラマンスペクトルは図21に示され、3100cm-1から2800 cm-1の間に芳香族及び脂肪族CHストレッチ(202)の弱いピーク、ほぼ800cm-1に強いピーク(204)、及び600cm-1から1700 cm-1の領域に弱いバンド(206)を示している。
C型の1H NMRスペクトルは、C型はデシタビンの固有のポリモルフであることを示している。図25は、デシタビンポリモルフC型の化学シフトを提供する。シフト(258)及び(259)は芳香環の電子特性を示している。シフト(257)はC=C二重結合を示し、これによりピーク(257)はポリモルフB型の対応するピーク(247)よりも短い。シフト(254)及び(256)は、エーテル領域、又はアルコール及びエステルの領域を示している。ピーク(256)はポリモルフB型の対応するピーク(246)よりも実質的に短い。化学シフト(251)及び(252)は、C=O、C=C、又はフェニル環の隣の炭素と結合した陽子を有するカルボニル領域を示している。化学シフト(251)及び(252)は実質的にである。
【0022】
E.処方物及び投与の様式
本発明は、本明細書に開示したデシタビンポリモルフの1つ又は2つ以上を含む医薬処方物を含む。そのような医薬処方物は更に担体又は希釈剤を含むことができ、この場合前記デシタビンはそのポリモルフ型を維持する。
本発明の処方物は任意のタイプの投与に対応させることができる。例えば、前記処方物は、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、経鼻的に、リポソームを介して、吸入により、膣内に、眼内に、局所デリバリーにより(例えばカテーテル又はステントによって)、皮下に、脂肪組織内に、関節内に、又は場合によって徐放性投与形として投与することができる。好ましい実施態様では、デシタビンポリモルフは経口的に、吸入により、又は皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射により、又は脳脊髄液に直接投与される。
【0023】
1.経口及び非経口処方物
ある実施態様にしたがえば、本明細書に開示した1つ又は2つ以上のポリモルフ型を経口投与のために製剤化することができる。任意の経口処方物に与えられるポリモルフの濃度は最終的な所望処方物によって決められる。処方物に存在する全てのポリモルフの総量は好ましくは、推奨用量を通常的に投与させる量である。経口投薬に含まれるポリモルフの量を決定する1つの要件は、デリバリーベヒクルの要求されるサイズである。
経口投与のための固体の投薬形にはカプセル、錠剤、ピル、散剤及び顆粒が含まれる。固体の投薬形態では、活性物質は、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容できる担体(例えばシュクロース、ラクトース又はデンプン)と混合される。そのような投薬形態はまた、通常的な慣わしとして不活性な担体以外のまた別の物質、例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むことができる。カプセル、錠剤及びピルに関しては、投薬形態はまた緩衝物質を含むことができる。錠剤及びピルはまたその他に腸溶皮を用いて調製することができる。
経口投与のための液体投薬形態には、医薬的に許容できる懸濁物及びシロップが、当分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤(例えば水)を含むエリキシルとともに含まれる。これらの組成物はまた1つ又は2つ以上の補助剤(例えば表面安定化剤、懸濁剤、甘味剤、香料又は芳香剤)を含むことができる。本発明が液体投薬形態として実施されるとき、デシタビンは任意の開示ポリモルフ型で維持される。
【0024】
この特徴にしたがえば、デシタビンポリモルフは他の化合物又はデリバリー装置と混合され、治療活性が強化された安定な組成物が形成される。これらの処方物は腫瘍をもつ対象者(例えばヒトの癌患者)への経口投与を可能にする。例えば、ある実施態様では、デシタビンポリモルフ型は医薬的に許容できる粉末化賦形剤、担体及び/又は希釈剤と混合することができる。前記処方物の組成及び追加される各物質の量は、種々の要件(投与速度、処方物の投与後のドラッグデリバリーのタイミング、及び所望の最終濃度を含む)に左右されるであろう。そのような処方物に含まれ得る賦形剤の例にはpH調整化合物が含まれ、前記は典型的には医薬的に許容できる酸又は塩基、及び/又は緩衝性物質であり、ほぼ等モル比の弱酸又は塩基及びそれらの共役塩を含む。
ある実施態様では、前記処方物は、界面相互作用阻害剤(前記は隣接粒子間に物理的障壁を生じる)と一緒にしたポリモルフを含むことができる。この処方物では、デシタビンは相対的に小さな粒子サイズを有する結晶質ポリモルフ(例えば純固体)であり、前記は、同じ粒子サイズを有するガラス質又は非晶質の擬似固体物質よりもデシタビンをより良好に安定化させると期待される。この組成物でデリバーされる小さいがなお安定である粒子デシタビンは、より大きな粒子サイズを有す投薬形と比較して、経口投与されたときにより良好な生体利用性及びより高い治療活性を有し、一方、小さなガラス質粒子を含む調製物よりもより長い保存期間を有すると期待される。
【0025】
非経口投与のための調製物には無菌的水性又は非水性懸濁物及びミクロ懸濁物が含まれる。非水性賦形剤の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油及びトウモロコシ油)、ゼラチン及び注射用エステル(例えばオレイン酸エチル)である。医薬調製物を製剤化する業者は、結晶質又は非晶質固体の完全な溶媒化は本発明に包含されず、個々の処方物で用いられるべきポリモルフを保存するためにポリモルフは担体中で不溶であるべきであることは理解されよう。そのような投薬形態はまた、1つ又は2つ以上の補助物質、例えば保存剤(例えば海面相互作用阻害剤)、湿潤剤および分散剤を含むことができる。前記投薬形態は、例えば細菌保持フィルターでろ過することによって、前記組成物への殺菌剤の取り込みによって、組成物を照射することによって、又は組成物を加熱することによって滅菌することができる。それらはまた、滅菌水又は他の何らかの無菌的注射可能媒体を用いて使用前に製造することができる。
経口又は非経口投与のための医薬処方物はまたデシタビンポリモルフ含有ミクロ懸濁物を含むことができ、更に、また別の医薬的に許容できる担体、賦形剤、添加物など(特に経口又は非経口薬投与に適するもの)を含むことができる。また別には、デシタビンポリモルフ含有ミクロ懸濁物は改変することなく経口的又は非経口的に投与することができる。ミクロ懸濁物は熱動力学的に安定な微結晶懸濁物であり、前記は、分散剤として機能する界面活性剤分子の界面薄層によって安定化させることができる(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, New York: Marcel Dekker, 1992, vol. 9)。
【0026】
肺投与:
本明細書のいずれのデシタビンポリモルフも肺投与に用いることができる。結晶質ポリモルフ(この場合結晶は純固体物質である)及び完全に非晶質、ガラス質、擬似固体ポリモルフの両方を、肺デリバリー用の乾燥粒子及びエーロゾル化液体粒子として適切な粒子サイズにすることができる。デシタビンの結晶質又はガラス質ポリモルフ型は、デシタビン分子が溶媒和されたときのように、デシタビン分子が固体又は擬似固体を含まない調製物よりも十分な時間より安定である。限定ではなく例示として挙げれば、いずれの結晶質ポリモルフデシタビンも、前記が微晶質型として結晶化されているならば、肺デリバリーのための乾燥散剤処方物として用いることができる。また別には、デシタビンの結晶質ポリモルフをすり潰すか又は粉砕して十分に小さな粒子サイズを得るか(前記によって非晶質含有量が増加したポリモルフにすることができる)、または溶媒の急速な蒸発から得られたもっぱら非晶質の沈殿物をすり潰して粉末ガラス型を得ることができる。
肺デリバリー用の乾燥散剤処方物は、結晶質又は非晶質ポリモルフ及び肺の薬剤投与に適した任意の担体を含む。ただし担体としては医薬用糖類が一般的には好ましく、例えばフルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチナイト、ラフィノース、スタキオース、シュクロース、トレハロース、キシリトール並びにそれらの水和物及び組合せである。選択された成分を先ず初めに一緒にし、続いてブレンドして均質で均一な粉末混合物を形成する。そのような粉末を調製する技術は当分野では周知である。簡単に記せば、前記調製は、典型的には、粒子サイズを減少させ(必要に応じて)、個々の成分を一緒にし更にブレンドする工程を含む。粒子サイズを減少させる技術は、例示すればミル、例えばエアージェットミル又はボールミルを利用する。約0.1μmから約65μmの直径をもつ粒子サイズが肺投与には要求される。混合方法は一緒にした粉末をシフターに通し、更に個々の粉末を粉末ブレンダー(例えば“二重コーン”ブレンダー又は“V-ブレンダー”)でブレンドする。用いられるここの技術に関係なく、得られた粉末は均質及び均一でなければならない。典型的には、活性物質は全処方物の約0.10%から約99%(w/w)を構成するであろう。
【0027】
本発明の肺用処方物はまたエーロゾル組成物として投与することができる。エーロゾル処方物は当業者には公知であり、例えば以下に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Ed. (Easton, PA: Mack Publishing Company, 1995)。簡単に記せば、本発明のエーロゾル処方物は、溶液エーロゾル(活性物質は担体(例えば発射薬)中に溶解することができる)又は分散液エーロゾル(活性物質は担体又は場合によって溶媒中に懸濁又は分散される)のどちらかである。エーロゾル処方物では、担体は典型的には発射薬、通常は液化ガス又は液化ガス混合物である。例えば、担体はフッ素化された炭化水素である。好ましいフッ素化炭化水素は以下から選択される:トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1,ジフルオロエタン、オクタフルオロシクロブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)及びそれらの組合せ。当業者には容易に理解されるところであるが、本発明のエーロゾル処方物は1つ又は2つ以上の賦形剤を含むことができる。前記エーロゾル処方物は例えば以下を含み得る:活性物質の酸化的分解を阻害するための抗酸化剤(例えばアスコルビン酸);粒子の凝集を防止する分散剤(例えばソルビタントリオレート、オレイルアルコール、オレイン酸、レシチン、トウモロコシ油及びその組合せ);及び/又は、粒子間の滑りを提供し更に吸入器の成分(例えばバルブおよびスプリング)の摩擦を減少させるための滑沢剤。
乾燥散剤処方物に関して記載されているように、エーロゾル処方物から遊離される粒子サイズは肺投与のために適切でなければならない。溶液エーロゾルは、活性物質が担体(例えば発射薬)溶液と一緒に発射されるので、発射薬用液が蒸発するとき吸入装置の始動時に吸入で小粒子を生じる。結果として、溶液エーロゾルの投与は十分に小さな粒子を生じる(例えば約0.1μmから約65μmの範囲内の活性物質)。本発明の結晶質及び非晶質デシタビンポリモルフは、単に液体担体中の固体の分散液としてエーロゾルによりデリバーすることができる。
【0028】
分散液エーロゾルは不溶の活性物質を含み、この場合粒子サイズは一定である。すなわち、分散液エーロゾル中の粒子サイズは活性物質がデリバーされている間に変化しない。それゆえに、活性成分は、分散エーロゾルとして処方される前に適切な粒子サイズをもたなければならない。したがって、乾燥散剤処方物について上記で述べたように、活性物質に粒子サイズを減少させる技術は、分散液エーロゾルで適切な粒子サイズをもつ活性物質の調製のために等しく適用することができる。更にまた、乾燥散剤処方物と同じ範囲の粒子サイズを分散液エーロゾルにも適用することができる。
本発明のエーロゾル処方物は冷却充填プロセスを利用して調製することができる。最初に、エーロゾル処方物の成分及びエーロゾル容器を、担体(すなわち発射薬)が液体になるように約-40℃に冷却する。担体以外の全ての成分をエーロゾル容器に入れる。次に、前記担体を添加し成分を混合する。続いてバルブアッセンブリーを正しい位置に挿入する。最後に、容器が機密になるようにバルブアッセンブリーを捩じ込む。組み立てが完了した、吸入処方物を保持する容器をアッセンブリー後に周囲温度に復帰させることができる。冷却充填プロセスの代替として、エーロゾル処方物は、担体以外の全ての成分をエーロゾル容器に入れ、続いてバルブアッセンブリーを挿入し正しい位置に捩じ込んだ後で、担体をバルク容器から移すことによって調製してもよい。続いて液体担体をバルク容器又はタンクからバルブアッセンブリーを通して加圧下でメーターで計測する。担体を計り入れた後で、容器をチェックして加圧した内容物がもれていないことを確認する。エーロゾル処方物を調製するこれら両方法で、活性物質は総処方物の約0.1重量%から約40重量%を構成する。好ましくは、活性物質は総処方物の約1重量%から約15重量%を構成する。
【0029】
本発明の肺用処方物はまた、当分野で周知のように吸入用液体組成物であってもよい(例えば上掲書(The Science and Practice of Pharmacy)を参照されたい)。本発明のデシタビンポリモルフのためには、液体組成物はミクロ懸濁物でなければならない。そのような液体処方物は、活性物質の他に1つ又は2つ以上の担体を含む。上記に記載したように、用いられているポリモルフを担体が溶媒和しないように注意しなければならない。担体の例は、処方物を正常な体液に対して等張にさせる濃度をもつ塩化ナトリウム溶液である。前記担体の他に、前記液体処方物は水及び/又は賦形剤を含むことができる。前記賦形剤には以下が含まれる:抗菌保存料(例えばベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、チメロサール及びそれらの組合せ)、緩衝物質(例えばクエン酸、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びそれらの組合せ)、界面活性剤(例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノパルミテート及びそれらの組合せ)、及び/又は懸濁剤(例えば寒天、ベントナイト、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ビーグム(veegum)及びそれらの組合せ)。前記組成物を一緒にし、続いて通常の攪拌を実施することにより、吸入に適した液体処方物が達成される。典型的には、活性物質は総処方物の約0.01%から約40%を構成する。
乾燥散剤、エーロゾル又は液体にかかわらず、種々の公知の装置を用いて肺用処方物を投与することができる。乾燥散剤吸入装置は当業者には周知であり、前述の乾燥散剤処方物の投与に用いられる。本発明の処方物を投与に適した乾燥散剤吸入装置には、例えば以下が含まれる:TURBOHALER(商標)(Astra Pharmaceutical Products, Inc., Westborough, MA)、ROTAHALER(商標)(Allen & Hanburys, Ltd., London, England)。エーロゾル処方物は、加圧用量計測吸入装置により投与することができる。本発明の液体処方物はポンプスプレービン又はネブライザーにより投与することができる。
【0030】
他の活性物質もまた本発明の処方物に取り込むことができる。前記には例えば他の抗増殖剤、抗新形成薬又は抗炎症剤、又は気道拡張剤が含まれる(特に気管支若しくは肺胞の炎症、又は気道閉塞を含む病変(例えば肺及び気管支肺胞癌)に対して気道を拡張し、より深部のデリバリーを達成する)。これらの機能の両方を果たす物質、例えば長時間作用性βアドレナリン作動性アゴニスト(サルメテロールキシナフォエーテを含む)及びホスホジエステラーゼ阻害剤(テオフィリン及び他のヒポキサンチンを含む)は、肺の炎症性病理生理学的プロセスで相乗作用的抗炎症効果を表すことが示された(Pang et al. (2000) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 23(1):79-85)。
増殖性呼吸系疾患(炎症及び/又は閉塞を含む)の治療でデシタビンと同時投与するために追加できる適切な活性物質の例には、気管支拡張剤(βアドレナリン作動性アゴニスト、抗コリン作動薬、吸入に適したホスホジエステラーゼ阻害剤及びコルチコステロイドを含む)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。気管支拡張剤の組合せもまた用いることができる。長時間作用性βアドレナリン作動性アゴニストは特に好ましい。なぜならばそれらは、呼吸器系の新形成病変の治療にしばしば重要な抗炎症作用を提供するだけでなく、肺のより深部のデリバリーを達成し得るからであり、後者は、特に肺胞の炎症を含む肺及び気管支肺胞の癌にとって重要である。同様に、吸入による投与用の治療的に適切な任意のグルココルチコイド又は医薬的に適切な塩、エステル、又は前記の他の誘導体も吸入による同時投与に含むことができる。
【0031】
上記で言及したように、気管支拡張剤は、肺の深部への活性物質のデリバリーを担保するために有用である。抗コリン作動型の典型的な気管支拡張剤には、限定ではなく例示として挙げればアトロピン化合物(例えばイサトロピウム)が含まれる。前記は、急性喘息について気管支拡張でβアゴニスト(特にβ2アゴニスト)と強力な相乗作用を有することが示され(Dusser (1998) Ann. Fr. Anesth. Reanim. 17(Suppl. 2):40s-42s)、更に抗炎症性薬剤のデリバリーのために肺胞の深部へのデリバリーを担保するために気道を開放するために用いられるとき同様な効果を発揮すると期待される。βアドレナリン作動性アゴニストクラスの典型的な気管支拡張剤には、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、レバルブテロール(すなわちホモキラル(R)-アルブテロール)、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リミテロール、サルメテロール及びテルブタリンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記気管支拡張剤は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は他の誘導体として処方物中に存在することができ、また前記は、当業者に周知の種々の方法で官能化することができる。
【0032】
他の抗炎症薬をデシタビンポリモルフと組み合わせることができる。コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症薬(NASIDS)は可能な併用療法剤であり、炎症性気道疾患および一般的な新形成の治療で既に用いられている。クロモリンスルフェート及びロイコトリエン阻害剤の新規クラスもまた炎症性疾患で用いられ、したがって、炎症を伴う新形成及び原発性の炎症性増殖性肺病変の両方の吸入療法のために、デシタビンの結晶質及び非晶質ポリモルフと一緒に用いることができる。抗炎症性活性を有することが明らかにされたが本来抗炎症薬ではない物質には、上記に記載したように長時間作用性アゴニスト及びテオフィリン、並びにマクロライド系抗生物質(Cazzola et al. (2000) Monaldi Arch. Chest Dis. 55(3):231-6)が含まれる。前記抗生物質には、エリスロマイシン及びその誘導体、例えばアジスロマイシン及びクラリスロマイシンが含まれる。本発明の結晶質及び非晶質ポリモルフとの抗生物質(抗炎症活性を有するものを含む)又は抗ウイルス剤(前記薬剤は肺を感染に対して予め処置する)の同時投与は、肺の新形成の治療のために、更に感染性エティオロジーを有する増殖性炎症性疾患(例えば肺結核及びウイルス性肺炎)の治療のために所望される。
【0033】
経皮投与
種々の粒子サイズ(肺の投与に適した粒子サイズを含む)の乳濁物と同様に、粒子状懸濁物、ミクロ懸濁物及びナノ懸濁物は、デシタビンの経皮デリバリーに変換し得る。また別に、より大きなサイズの本発明の結晶質及び/又は非晶質ポリモルフを、適切な乳化剤を用いて乳化懸濁物(ミクロ乳化懸濁物を含む)として製剤化することができる。しかしながら、肺投与のために得られた粒子サイズは、粒子を保存し、一方で、適用時に皮膚を通過して経皮的にその辺りにデシタビン分子を拡散させることを可能にする適切な物質と直接混合することができる。
【0034】
F.用量
本明細書のポリモルフの有用な用量は、それらのin vitro活性及びin vivo活性を動物モデルで比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物の有効用量をヒトに外挿する方法は当分野で公知である(例えば米国特許4,938,949号を参照されたい)。
一般的には、液体組成物(例えばローション)中の本明細書のポリモルフの濃度は、約0.1−25重量%、好ましくは約0.5−10重量%であろう。半固体又は固体組成物(例えばゲル又は散剤)中の濃度は、約0.1−5重量%、好ましくは約0.5−2.5重量%であろう。
治療で使用するために必要な化合物又は活性な塩若しくはその誘導体の量は、選択される具体的な塩によるだけでなく、投与ルート、治療される症状の性質、並びに患者の年齢及び状態によってもまた変動し、最終的には主治医又は臨床医によって判断されるであろう。
しかしながら、一般的には適切な用量は、1日当たり体重1kgにつき約0.005から約100mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.1から約75mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.3から約50mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約0.6から約25mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約1から約15mg、より好ましくは1日当たり体重1kgにつき約2から約10mg、又はより好ましくは1日当たり体重1kgにつき約3から約5mgの範囲であろう。
前記化合物は、好都合にはユニット投薬形態で投与することができる。前記は、ユニット投薬形態当たり、活性物質を例えば0.05から1000mg、好都合には0.1から750mg、もっとも好都合には0.5から500mg含む。
【0035】
理想的には、前記活性成分は、約0.005から約75μM、好ましくは約0.001から約50μM、もっとも好ましくは約0.02から約30μMの活性化合物のピーク血中濃度を達成するように投与するべきである。前記は、例えば活性成分の0.0005から5%溶液(場合によって食塩水中の活性成分溶液)の静脈内注射、又は約0.01−1mgの活性成分を含むボーラスとしての経口投与によって達成することができる。所望の血中レベルは、連続的輸液によって維持されて約0.0001−5mg/kg/hrを提供するか、又は約0.004−15mg/kgの活性成分を含む間歇的輸液によって維持することができる。
いくつかの実施態様では、1つ又は2つ以上のポリモルフが静脈内輸液により患者に投与される。静脈内輸液は1日につき1−24時間実施することができ、治療はほぼ1−100日、より好ましくは約2−50日、より好ましくは約3−10日継続することができる。治療につき投与される投薬量は約1−300mg/m2、より好ましくは約1−200mg/m2、より好ましくは約1−100mg/m2、より好ましくは約1−50mg/m2、より好ましくは約1−35mg/m2、より好ましくは約1−25mg/m2、より好ましくは約1−10mg/m2、より好ましくは約1−5mg/m2、より好ましくは約1−3mg/m2の範囲であり得る。
所望の用量は、好都合には1回の投薬中に又は適切な間隔で分割した投薬中に(例えば1日につき2回、3回、4回又は5回以上の部分用量として)存在することができる。部分用量それ自体も更に分割して、例えば複数の別個の大雑把に間隔をあけて(例えば注入器からの複数回の吸入又は静脈輸液)投与することができる。
【0036】
G.適応症
デシタビンが治療的に有効な任意の症状の治療に、本発明のデシタビンポリモルフ用いることができる。本発明の新規なポリモルフを利用するために、前記ポリモルフが取り込まれている医薬組成物を、それらのポリモルフ型を保持するように投与する。
ある実施態様にしたがえば、1つ又は2つ以上のデシタビンポリモルフを含む処方物を患者に投与することを含む、ある症状を治療する方法が提供される。
ある変型例では、デシタビンポリモルフを含む処方物が、望ましくない又は非制御細胞増殖を伴う症状をもつ患者に投与される。そのような適応症には例えば以下が含まれる:再狭窄(例えば冠状動脈、頸動脈及び脳の病巣)、良性腫瘍、種々のタイプの癌(例えば原発性腫瘍及び腫瘍転移)、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性硬化症)、外科手術又は瘢痕組織の形成をもたらす他の事象による対組織の傷害、異常な創傷治癒、異常な血管形成、組織の線維症を生じる疾患、反復性運動異常、高度に血管が形成されていない組織の異常、器官移植に伴う増殖性応答、及び種々の炎症性増殖性疾患。
一般的には、良性腫瘍内の細胞はその分化特性を維持し、完全に非制御の態様で分裂するわけではない。良性腫瘍は通常は局在し、非転移性である。本発明を用いて治療することができる良性腫瘍の具体的なタイプには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):血管腫(例えば海綿状血管腫)、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、良性骨腫瘍、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ及び炎症性肉芽腫(化膿性(例えば化膿性肉芽腫)及び非感染性又は特発性(例えばサルコイドーシス及びベリリウム症)の両者)。
新形成(例えば悪性腫瘍)では、細胞は未分化になり、生理学的細胞増殖制御シグナルに応答せず、非制御態様で増殖する。悪性腫瘍は侵襲性で、遠位部位に拡散することができる(転移)。悪性腫瘍及び他の新形成は通常、原発性及び二次性新形成に分けられる。原発性新形成は発生組織から直接生じ、連続する組織及び器官に局所的侵襲によって拡散することができる。二次性新形成(又は転移)は、身体のどこかで発生したが、今は遠位器官に拡散している腫瘍によって示される。新形成の拡散の共通のルートは、隣接構造物中への直接的増殖、及び血管系又はリンパ系を介する転移拡散であり、組織平面および身体間隙(腹腔液、脳脊髄液などを含む)に沿って足跡をつけていく。
【0037】
本発明を用いて治療することができる癌又は新形成(原発性及び二次性の両方)には癌及び肉腫の両方が含まれる。具体的な癌及び肉腫の例には以下が含まれる:白血病、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳の神経学的腫瘍、喉頭の癌、胆嚢癌、膵臓癌、直腸の癌、傍甲状腺の癌、甲状腺の癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫(reticulum cell sarcoma)、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫 (mucosal neuroms)、腸神経節神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍(leimyomater tumor)、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する他の癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、メラノーマ及び類表皮癌。
外科手術時の身体組織に対する傷害による異常な細胞増殖の治療が種々のがけ手術方法について可能であり得る。前記手術には、関節手術、腸の手術及びケロイド瘢痕が含まれる。線維性組織を生じる疾患には気腫が含まれる。本発明を用いて治療することができる反復性運動異常には手根管症候群が含まれる。
【0038】
本発明を用いて治療することができる、器官移植に伴う増殖性応答には、潜在的器官拒絶または合併症の一因となる増殖性応答が含まれる。特に、これらの増殖性応答は、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、及び任意の外来又は非自己細胞、組織、器官若しくは器官系の移植時に発生し得る。
本発明を用いて治療することができる異常な血管形成には、慢性関節リュウマチ、虚血性再灌流関連脳浮腫及び損傷、副腎皮質虚血、卵巣過形成及び過剰血管形成、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症及び他の眼球血管形成疾患(例えば未熟児網膜症(水晶体後方線維形成症)、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生(neuroscular)緑内障、及びオスター・ウェーバー症候群)に付随する異常な血管形成が含まれる。
異常な血管形成を伴う疾患は血管の増殖を要求又は誘発する。例えば、角膜血管形成は3つの病期、前血管潜伏期、活発な血管新生、並びに血管成熟及び退行を含む。種々の血管形成因子(炎症性応答エレメント、例えば白血球、血小板、サイトカイン及びエイコサノイド又は未確認血中成分を含む)の正体及びメカニズムは未だ明らかにされていない。
本発明のまた別の実施態様では、望ましくない制御不能の血管形成を伴う疾患の治療方法が提供される。本方法は、制御不能な血管形成を罹患している患者に、血管形成を阻害できるように治療的に有効な量の本明細書に開示したデシタビンポリモルフを投与することを含む。血管形成及び/又は血管形成疾患を抑制するために要求される具体的なデシタビンの用量は、症状の重篤度、投与経路、及び主治医が決定することができる関連要件に左右され得る。一般的には、許容可能で有効な1日の用量は、血管形成及び/又は血管形成性疾患を効果的に抑制するために十分な量である。
【0039】
本実施態様にしたがえば、本発明の組成物を用いて、制御不能の血管形成を伴う種々の疾患(例えば網膜/脈絡膜血管新生及び角膜血管新生)を治療することができる。網膜/脈絡膜血管新生及び角膜血管新生の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ベスト病、近視、眼小窩(optic pits)、シュタルガルト病、パージェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状細胞貧血、サルコイドーシス、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫による頸動脈閉塞病(pseudoxanthoma elasticum carotid abostructive diseases)、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性紅斑性狼瘡、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を引き起こす感染、ヒストプラスマ症、毛様体炎(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷及びレーザー照射後の合併症、潮紅(rubesis)を伴う疾患(眼角(angle)の血管新生)、及び血管線維組織又は線維組織の異常増殖によって惹起される疾患(硝子体網膜症の全ての型を含む)。角膜の血管新生の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過装着、アトピー性角膜炎、上輪部角膜炎、翼状片の乾性角膜炎、シェーグレン症候群、しゅさ性ざ瘡、フィレクテヌローシス(phylectenulosis)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角膜炎、多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、強膜炎、類天疱瘡、放射状角膜切開、血管新生緑内障及び水晶体後方線維過形成、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学薬品火傷、細菌性潰瘍、カビ性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、原虫感染及びカポジ肉腫。
本発明の更に別の実施態様では、制御不能の血管形成を伴う慢性炎症性疾患の治療方法が提供される。前記方法は、制御不能の血管形成を伴う慢性炎症性疾患を罹患している患者に、血管形成を阻害できるように治療的に有効な量の本発明の組成物を投与することを含む。慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持するために毛細血管芽の持続的形成を必要とする。本発明の組成物を単独で又は他の抗炎症薬と併用して用いて血管形成を阻害することによって、肉芽腫の形成を防ぎ、それによって疾患を緩和させることができる。慢性炎症性疾患の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎、乾癬、サルコイドーシス、及び慢性関節リウマチ。
【0040】
炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)は、胃腸管の種々の部位の慢性炎症及び血管形成を特徴とする。例えば、クローン病は、もっとも一般的には回腸遠位部を冒すが、また口から肛門及び肛門周囲領域までの胃腸管の任意の部分に慢性の粘膜貫通炎症として発生し得る。一般的に、クローン病の患者は、腹痛、発熱、食欲不振、体重減少及び腹部腫脹を伴う慢性的な下痢を示す。潰瘍性大腸炎もまた、慢性で非特異的な炎症性及び潰瘍性疾患であり、結腸粘膜に発生し、血液性下痢を特徴とする。
これらの炎症性腸疾患は、一般的には慢性肉芽腫性炎症性の病理生理学的経過によって引き起こされる。炎症性腸疾患は胃腸管の全体を冒す可能性があり、典型的には炎症細胞の筒によって取り囲まれた新規な毛細血管芽を含む。本発明の組成物による血管形成の阻害はこの血管芽の形成を阻害し、肉芽腫形成を妨げるはずである。炎症性腸疾患はまた、腸以外の症状の発現、例えば皮膚病巣も示す。そのような病巣は炎症及び血管形成を特徴とし、胃腸管以外の他の多くの部位に発生し得る。本発明の組成物による血管形成阻害は炎症細胞の流入を減少させ、前記病巣の病理発生を予防、停止又は遅らせるはずである。
サルコイドーシス(また別の慢性炎症疾患)は、特発性の多系統肉芽腫症を特徴とする。ベリリウム症は組織病理学的にはサルコイドーシスと類似するが、ベリリウム元素によって引き起こされることが知られている。サルコイドーシスおよびベリリウム症の肉芽腫は、組織病理学的には結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の非乾酪変性肉芽腫及びマイコバクテリウムによって惹起される他の疾患に類似するが、結核菌感染で見出される乾酪変性肉芽腫は、ベリリウム症及びサルコイドーシスでは認められない。この疾患の肉芽腫は身体のいずれの場所にも形成され、したがってその症状は肉芽腫の部位及び疾患が活発であるか否かによって左右される。肉腫の肉芽腫の形成は、血管形成性毛細血管芽(炎症細胞の定常的供給を提供する)によって促進される。本発明の組成物を用いて血管形成を阻害することによって、そのような肉芽腫の形成を阻害することができる。
乾癬(前記もまた慢性及び再発性炎症疾患である)は、丘疹及び種々のサイズのプラークを特徴とする。本発明の組成物を単独又は他の抗炎症薬と併用して用いる治療は、この特徴的な病巣を維持するために必要な新規な血管の形成を妨げ、患者に症状の緩和を提供するはずである。
【0041】
慢性関節リウマチ(RA)もまた、末梢関節の非特異的な炎症を特徴とする慢性炎症疾患である。関節の滑膜基底層内の血管に血管形成が生じると考えられている。新規な血管ネットワークの形成に加えて、内皮細胞が複数の因子及び反応性酸素種を放出し、これらはパンヌスの増殖及び軟骨の破壊をもたらす。血管形成に必要とされる因子は、慢性関節リウマチの慢性炎症状態に活発に寄与し、前記の維持を助長する。本発明の組成物を単独又は他の抗RA薬と併用して用いる治療は、慢性炎症を維持するために必要な新規な血管の形成を妨げ、RA患者に症状の緩和を提供するはずである。
本発明の組成物はまた他の抗血管形成薬と併用して用いることができる。抗血管形成薬の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):レチン酸及びその誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)タンパク質、ENDOSTATIN(商標)タンパク質、スラミン、スクォラミン、メタロプロテイナーゼ-Iの組織阻害物質、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害物質、プラスミノーゲン活性化物質阻害剤-1、プラスミノーゲン活性化物質阻害剤-2、軟骨由来阻害物質、パクリタキセル、血小板因子4、プロタミンスルフェート(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(クィーンクラブの殻から調製)、硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(sp-pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝の調節物質(例えばプロリン類似体(1-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d-1,3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン)、α,α-ジピリジル、β-アミノプロピオニトリルフマレート、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロンを含む);モトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン-血清、チンプ-3、キモスタチン、β-シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン、フマギリン、金ナトリウムチオマレート、d-ペニシラミン(CDPT)、β-1-アンチコラゲナーゼ-血清、α-2-アンチプラスミン、ビサントレン、ロベンザリト2ナトリウム、n-(2-カルボキシフェニル-4-クロロアントロニル酸2ナトリウム又は“CCA”、タリドミド;血管不活性化(angiostatic)ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール;メタロプロテイナーゼ(メタロプロテアーゼ)阻害物質(例えばBB94)。他の抗血管形成薬には、以下の血管原性増殖因子(bFGF、aFGF、FGF-5、VEGFアイソフォーム、VEGF-C、HGF/SF及びAng-1/Ang-2)に対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)が含まれる(N. Ferrana and K. Alitalo, "Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors" (1999) Nature Medicine5:1359-64。
全ての実施態様において、“有効な量”という用語は、医学分野の用語として、すなわち患者に最良の治療価値及び利益を供与する薬剤の投薬スケジュール及び投与ルートと理解される。
【0042】
(実施例1)
ポリモルフスクリーンに用いられるデシタビンサンプルはスーパーゲン社(SuperGen Inc.)によって提供された。このサンプルが示す代表的なXRPDパターンは図1に提供されている。このパターンを示すデシタビンポリモルフ型はA型と称される。A型は熱に安定であるが、水又は大気中の水分に暴露されたとき容易に水和してB型を生じる。B型は、実験条件に応じてA型又はC型のどちらかに変換される。C型は大気中の水分の存在で容易にB型に変換され、したがって実験室で純粋なC型サンプルを得ることは困難である。
デシタビンのポリモルフスクリーンのために調製されたサンプルを、類似するXRPDパターンにしたがって分類した。一連の合致するパターンに由来するあるXRPDパターンは“標準パターン”と称され、続いてこれを今後の比較に用いた。非晶質サンプルは、サンプルのXRPDパターンに範囲が明瞭なピークが存在しないこと、及び広い“ハロー”が存在することによって同定される。無秩序の物質は、サンプルのXRPDパターンで広いピークを特徴とする。溶液1H NMR分光分析を用いて、各固体型は、実際にデシタビンの固体変態であって分解産物ではないことを立証した。ポリモルフA、B及びCの1H NMR分光分析は図23−25にそれぞれ示されている。
【0043】
(実施例2)
デシタビンの秤量サンプル(典型的には10から20mg)をアリコットのテスト溶媒で処理した。溶媒は試薬等級又はHPLC等級であった。前記アリコットは典型的には100μL又は1mLであった。添加の間で、混合物を典型的には振盪又は超音波処理した。個体が溶解されたか否かは目視精査によって判定した。溶解性は、完全な溶解を提供するために使用された溶媒合計を基にしてこれらの実験から判定された。種々の溶媒におけるデシタビンの凡その溶解性は下記の表15に提供される。
表15:デシタビンの凡その溶解性
溶解性は溶液を生じるために用いられた溶媒の合計を基にこれらの実験から概算した。デュープリケートでの実施を平均した。実際の溶解性は、使用された溶媒アリコットのサイズのために、又は溶解速度が遅いためにこれらの計算よりも高いであろう。溶解が実験中に生じなかった場合は、溶解性は“未満”と表記されている。
一般的には、デシタビンはこの実験に用いた溶媒のほとんど全てで難溶性である。顕著な例外はメチルスルホキシドであり、前記ではこの化合物はほぼ37mg/mLの程度まで溶解性であることが判明した。デシタビンはまた、1,1,1,3,3,3-ヘキサンフルオロ-2-プロパノールにもわずかに溶解性であり(〜18mg/mL)、水に極めてわずかに溶解性である(〜8mg/mL)。
【0044】
(実施例3)
溶液をいくつかの異なる最終処理工程の1つを用いてろ過した。そのような処理工程には以下が含まれる:急速蒸発、低速蒸発、減圧下での遠心蒸発、低速冷却、溶媒/アンチソルベントクラッシュ、クラッシュ冷却、スラリー実験、相対湿度(RH)ストレス、上昇温度スラリー実験、蒸気拡散、粉砕実験、及び凍結乾燥。
急速蒸発(FE)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのナイロンフィルターでろ過した。前記ろ過溶液を開放バイアル中で周囲温度で蒸発させた。
低速蒸発(SE)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。前記ろ過溶液を、ゆるく蓋をしたバイアル又は小さな穴を有するアルミフォイルで覆ったバイアル中で周囲温度で蒸発させた。
減圧下での遠心蒸発(CentriVap)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターからバイアル中にろ過した。続いて、前記バイアルをラブコンコ(Labconco)セントリヴァップ(CentriVap(商標))遠心蒸発装置に置き、自動真空ポンプを用いて減圧下で溶媒を除去し、固体残渣を提供した。
低速冷却(SC)では、デシタビン溶液を与えられた溶媒中で調製し、典型的には65℃の通常温度に設定したホットプレート上で加熱した。溶液を0.2μmのフィルターから開放バイアルにろ過し、前記はその間なお温かかった。前記バイアルに封をし、ゆっくりと周囲温度に冷却させた。固体の有無を観察した。固体が存在しない場合、又は固体の量がXRPD分析には少なすぎる場合は、前記バイアルを冷蔵庫に一晩置いた。再び、固体の有無を観察し、十分な固体が存在しない場合は、前記バイアルを冷凍庫に一晩置いた。十分な固体がなお存在しない場合には、サンプルのバイアルの蓋を緩めて周囲温度で溶液を蒸発させた。この事例では、サンプルはSC、SEとして記録される。形成された固体をろ過によって単離し、分析の前に風乾した。
【0045】
溶媒/アンチソルベントクラッシュ(S/AS)では、デシタビン溶液を種々の溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。固体の形成は、前記ろ過溶液をある温度で適切なアンチソルベントに添加することによって誘発した。生成された固体をろ過によって単離し、分析の前に風乾した。固体が直ちに形成されない場合には、サンプルを冷凍庫又は冷蔵庫に置き、結晶化を促進させた。固体が形成されない場合には、サンプルバイアルの蓋をゆるめ、溶液を周囲温度で蒸発させた。これらの事例では、サンプルはS/AS、SEとして記録される。
クラッシュ冷却(CC)では、デシタビン溶液を種々の溶媒中で調製し、0.2μmのフィルターでろ過した。固体形成は、前記ろ過溶液をバイアルに添加し、直ちにサンプルをドライアイス/アセトン浴に数分置くことによって誘発した。生成された固体をろ過によって単離し、分析前に風乾した。固体が直ちに形成されない場合には、サンプルを冷凍庫に置き、結晶化を促進させた。
スラリー実験では、未溶解固体が存在するように十分なデシタビンを与えられた溶媒に添加した。続いて、オービタルシェーカー又は回転ホイールを用いて、前記混合物を封入バイアル中で周囲温度で攪拌した。数日後、真空ろ過で固体を単離し、サンプルバイアルの蓋をゆるめ周囲温度で乾燥させた。
蒸気拡散(VD)では、与えられた溶媒中で調製し、0.2μmのナイロンフィルターでろ過したデシタビン溶液を含む開放バイアルを、溶媒を含む更に大きなバイアルの中に置いた。この更に大きなバイアルに封をし、周囲温度で数日静置した。粉砕実験では、デシタビンサンプルを、室温でボールミル(Retsch Mixer MillモデルMM200)を用いるか、又は液体窒素の温度でクリオグラインダー(SPEX CentiPrepモデル6750フリーザー/ミル)を用いてすり潰した。
上昇温度スラリー実験では、未溶解固体が存在するように十分な固体を与えられた溶媒に添加することによって、デシタビン溶液を調製した。続いて、オービタルシェーカーを用いて上昇温度で前記混合物を封入バイアル中で攪拌した。数日後に固体を吸引ろ過によって単離し、サンプルバイアルの蓋をゆるめ周囲温度で乾燥させた。
デシタビンポリモルフスクリーンの結果は下記の表16にまとめられている。
表16デシタビンポリモルフスクリーン
aPO=優越方位
【0046】
(実施例4)
相対湿度(RH)ストレス分析では、飽和塩溶液を少量の未溶解の塩とともに含むチャンバー内に固体サンプルを含む開放バイアルを置いた。チャンバーに封をし、周囲温度で数日静置させた。サンプルを前記RHチャンバーから取り出して直ちにX線粉末回折(XRPD)によってサンプルを分析した。これら塩溶液のRH値はASTMスタンダードから得られた。RHの結果は下記の表17に示されている。
表17:相対湿度ストレス実験
最後に凍結乾燥では、溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、続いて回転羽根の自動真空ポンプを取り付けた市販の凍結乾燥装置に置いた。この凍結乾燥操作の間に凍結溶液の温度管理は行われなかった。
吸湿性は、サンプルを相対湿度95%、室温の封入チャンバー内に20日間置くことによって調べた。質量増加/減少又はTGAはこの吸湿性実験工程では測定しなかった。20日後に残留する固体についてXRPDパターンを得て、出発物質と比較した。
脱水/脱溶媒実験は、サンプルを持続的真空下に室温で14日間置くことによって実施した。残留する固体についてXRPDパターンを得て、出発物質と比較した。
融解が目で観察されるまでホットベンチでサンプルをゆっくりと加熱し、続いて急速に前記サンプルを周囲温度に冷却することによってデシタビンの固化した融成物を生成した。物質が溶解し始めたとき、前記物質は黒変し泡だった。生じた黒色の物質は、分解のためにそれ以上は分析しなかった。
【0047】
(実施例5)
実施例5:単結晶の成長
ホットプレートで100℃に加熱したメタノール(メタノールの温度は55℃)の4.0mLに、A型の35.5mgをほぼ溶解させることによって溶液を調製した。この溶液をバイアル中にろ過し、前記バイアルを封入し、周囲温度に冷却した。固体を一晩形成させた。いくつかの結晶を顕微鏡のスライド上に置き、パラトン-N(Paratone-N)で保護した。
ほぼ0.28x0.25x0.05mmの寸法を有するC8H12N4O4の無色のプレートをランダムな方位を有するガラス繊維上にマウントした。予備実験及びデータの採集は、ノニウスカッパCCD(Nonius KappaCCD)回折計でMoのKα照射により実施した(λ=0.71073Å)。リファインメントはORTEPプログラムで実施し、充填模式図はマーキュリーヴァージョン1.1ソフトを用いて作成した。
データ採集のためのセル定数及び方位マトリックスは、2<θ<25゜の範囲で4960反射の設定角度を用いて最小二乗リファインメントから得た。オルト斜方晶系セルパラメーター及び算出容積は以下のとおりである:a=5.6268(2)、b=7.0943(2)、c=24.8394(10)Å、α=β=γ=90゜、V=991.54(6)Å3。Z=4及び228.1の分子量のためには、算出密度は1.53gcm-3である。DENZO/SCALEPACKからリファンメントされたモザイク度は0.42゜であり、結晶が良好な品質を有することを示した。空間群は、ABSENプログラムによって以下の系統的提示(h00 h=2n;0k0 k=2n;00l l=2n)から、及びそれに続く最小二乗リファインメントから測定し、P212121(no. 19)であると決定された。データは、150±1 Kの温度で、50.0゜の最大2θ値まで採集した。
この構造に対する結晶学的データには、C8H12N4O4の分子式、228.21の分子量、及びP212121の空間群が含まれる。得られた構造物の品質は、0.033又は3.3%のR-値によって示されるとおり高い。不整ユニットはただ1つの対称非依存分子を含む(図6を参照されたい)。A型の結晶充填は、アゾシトシン環の間の水素結合の結果として形成される段ボールテープ構造を特徴とする(図7)。続いて一次元テープユニットは、デオキシリボース環の間の比較的弱い水素結合によって結合している段ボール層内に積重ねられる(図8)。単結晶X線データから計算されたXRPDパターンは図1に提示されている。この計算パターンとA型に対する実験的XRPDパターンとの比較は、この2つのデータセットの良好な合致を提供する。
【0048】
(実施例6)
実施例6:性状決定
X線粉末回折:
X線粉末回折解析は、1.5406Åの波長を有するCu Kα放射線を用いてシマヅXRD-6000 X-線粉末回折計で実施した。前記装置は、精密焦点X-線チューブを備えていた。前記チューブのパワーは、電位差を40kV及び電流を40mAに設定することによって設定された。回折した放射線はNaIシンチレーション検出装置で検出された。2.5から40の゜2θまで3゜/分(0.4秒/0.02゜ずつ)でのシータ-2シータ連続スキャンを実施した。シリコン標準物は毎日解析して装置のアラインメントをチェックした。各サンプルは石英のサンプルホルダーで解析した。種々の温度(VT-XRPD)実験は1つの型について実施した。サンプルは、種々の温度のホルダー中にサンプルを圧縮することによって分析のために調製した。
熱分析及び熱重量分析:
熱重量分析は、TA装置TGA2050又は2950で実施した。目盛定め標準物はニッケル及びアルメル(Alumel(商標))であった。サンプルを清浄なアルミニウム皿に置き、正確に秤量し、TGA炉に挿入した。サンプルを窒素中で35℃から250℃の最終温度まで10℃/分の速度で加熱した。
微分走査熱量測定法(DSC)データはTA装置DSC2920で得た。目盛定め標準物はインジウムであった。サンプルをDSC皿に置き、重量を正確に記録した。前記皿はクリンプされた(crimped)皿か、又は圧を逃がすために小さな穴をもつ密閉皿であった。観察される揮発温度は、圧の作用のために開放パンで得られる温度より高いことに留意されたい。
サンプルを窒素下で25℃から250℃又は350℃の最終温度まで10℃/分の速度で加熱した。
ホットステージ顕微鏡法:
ホットステージ顕微鏡法は、画像採集のためにソニーDVC-970MD 3CCDカメラを搭載したライカDM LP顕微鏡に載せたリンカン(Linkam)ホットステージ(モデルFT IR600)装置を用いて実施した。サンプルの観察のために20倍の対物レンズをクロスポラライザーとともに用いた。ステージ温度は、サンプルを調べる前に毎日USP標準物を用いて目盛決めを実施した。各サンプルについて、少量を顕微鏡スライドに置き、覆いをし、一滴のシリコン油を固体上に添加した。サンプルをほぼ4℃/分で加熱し、20倍の対物レンズ及びCCDカメラを用いて画像を周期的に捉えた。クロスポラライジングフィルターを用いて二重屈折性(birefringence)を観察した。
赤外(IR)分光分析:
IRスペクトルは、ニコレット・インスツルメント社(Nicolet Instrument Corp.)のマグマ(Magma(商標))モデル860フーリエ変換IR分光光度計で得た。前記にはエバー-グロ(Ever-Glo)中/遠赤外供給源、拡張範囲の臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター、及びジューテロ化したトリグリシンスルフェート(DTGS)検出計が搭載されていた。サンプリングのために、スペクトラ-テック社(Spectra-Tech, Inc.)の拡散リフレクタンスアクセサリー(the Collector(商標))を利用した。各スペクトルは、4cm-1のスペクトル解析能で256の同時添加スキャンを表す。化合物のためのサンプル調製は、サンプルをマイクロカップに置き、前記物質を凍らせたガラススライドの高さに調節することから成っていた。設定のバックグラウンドデータを正しい位置のアラインメントミラーにより得た。続いて単一ビームサンプルデータを得た。その後、Log 1/R(R=リフラクタンス)スペクトルを、サンプルの単一ビームデータセット対バックグラウンドの単一ビームデータセットの比を得ることによって得た。分光光度計の波長は、使用時前にポリスチレンにより目盛定めを実施した。
ラマン分光分析:
FT-ラマンスペクトルは、1064nmの励起波長及びほぼ0.5WのNd:YVO4レーザーパワーを利用してFT-ラマン960分光光度計(Thermo Nicolet)で得た。ラマンスペクトルは、インジウムガリウム砒化物(InGaAs)検出計を用いて測定した。各サンプルは、分析のために前記サンプルを固体ホルダーに置くことによって準備した。256のサンプルスキャンの全てを4cm-1のスペクトル解析能で採集した。分光光度計(の波長)は、使用時に硫黄及びシクロヘキサンにより目盛定めを実施した。
NMR分光分析:
5.87T(ラーマー周波数:1H=250MHz)で操作するブルーカー(Bruker)モデルAM-250分光光度計により、溶液状態1H NMRスペクトルを得た。パルス幅7.5μs及び捕捉時間1.6384秒を5000Hzのスペクトルウィンドウにわたって用いて時間-ドメインデータを得た。合計16384のデータポイントを採集した。5秒の緩和遅延時間を過渡の間に用いた。各データセットは典型的には128の共同平均過渡から成っていた。スペクトルはGRAMS/32 AIソフト、ヴァージョン6.00を用いて加工した。The free induction decay (FID) was zero-filled to four times the number of data points、更にフーリエ変換前に0.61Hzの線拡張因子を用いて指数関数的に増加させた。1Hスペクトルは、内部標準として添加したテトラメチルシラン(0ppm)に対して内部リファレンスを実施した。
水分バランス:
水分収着/脱着データはVTI SGA-100蒸気収着分析装置で採集した。収着及び脱着データは、窒素パージ下で5から95%の範囲の相対湿度(RH)にわたって10%ずつRHを増加させながら採集した。塩化ナトリウム(NaCl)及びポリビニルピロリドン(PVP)を目盛定め標準として用いた。分析に用いた平衡基準は、5分で0.0100%未満の質量変化で、前記質量基準が満たされない場合は、平衡基準は180分の最大平衡時間であった。採集データは、サンプルの初めの水分含有量に対して修正されなかった。
本発明の範囲から逸脱することなく、種々の改変及び変更を本発明の化合物、組成物、及びに対して加えることができることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、本発明の改変及び変更が添付の特許請求の範囲及び前記の等価物であることを条件として、前記改変及び変更に及ぶ。
【0049】
(実施例7)
実施例7:非晶質材料
非晶質材料は、デシタビンを水から結晶化させることによって調製した(サンプル番号1029-39-04)。
【0050】
(実施例8)
VT-XRPD実験では、デシタビンポリモルフB型はB型及びC型の混合物に変換され、一方、TGA炉で実施した実験ではB型は約150℃でA型に変換された。サンプルサイズ以外では、これら2つの実験における他の唯一の相違は、VT-XRPD実験では、サンプルは、大気の存在下で加熱され、一方、TGA実験では乾燥窒素が用いられている。
【0051】
(実施例6)
図26は、デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)及びC型(下)のXRPDパターンの比較を示す。以下の特徴的なピークによって、デシタビンの3つのポリモルフ型を区別することができる。A型は、凡そ7.0の゜2θ値にシャープなピークを有し、一方、B及びC型は同じ領域にごく小さなピークを有する。A型は、凡そ13および14.5の゜2θ値に2つのピークを有し、それに対してB及びC型では凡そ13の゜2θ値にただ1つのピークが存在する。B型は、凡そ22.5及び26の゜2θ値に2つのピークを有し、それに対して、A型では多数の短いピークが、又C型では26の゜2θ値にただ1つのピークが存在する。更に、C型は27の゜2θ値にシャープなピークを有し、A及びB型はピークをもたない。
図27は、1700cm-1から700cm-1の間のデシタビンA型(上)、B型(中)及びC型(下)のIRスペクトルの比較を示す。この3つのポリモルフの各々のIRスペクトルは固有であり、前記ポリモルフの識別に用いることができる。例えば、A型は凡そ1700cm-1にシャープなピークを有し、前記はB型ではごく小さなピークであり、C型では広いピークである。第二に、B型は1700cm-1にシャープなピークを有し、一方、A及びB型の両型は同じ領域にシャープなピークを有する。第三に、C型は1475cm-1から1550cm-1の間に広いピークを有し、1400cm-1又は1600cm-1にはピークをもたないが、一方、A型は1400cm-1及び1600cm-1の領域に広がる広いピークを有し、B型は凡そ1500cm-1に単一ピーク及び1450cm-1により短いピークを有する。
図28は、デシタビンA型(上)、B型(中)及びC型(下)のラマンスペクトルの比較を示す。各ポリモルフのスペクトルは以下のように区別することができる。A型は凡そ800cm-1にシャープなピークを有し、一方、B及びC型は分割ピークを有し、第二のより短いピークを凡そ800cm-1に、よりシャープなピークをわずかに低いシフト(例えば約820cm-1)に有する。第二に、B型は凡そ1300cm-1に短いシャープなピークを有し、一方、A及びC型は同じ領域により広い又はより短いピークを有する。更にまた、ポリモルフC型は凡そ850cm-1から900cm-1の間にピークをもたず、一方、A及びB型の両型は前記領域に短いシャープなピークを有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ポリモルフA型のXRPDパターンを示す。
【図2】ポリモルフA型の微分走査熱量測定法による熱解析を示す。
【図3】ポリモルフA型のIR吸収スペクトルを示す。
【図4】ポリモルフA型のラマン吸収スペクトルを示す。
【図5】ポリモルフA型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図6】ポリモルフA型の不整ユニットを示す。
【図7】c軸から見た、ポリモルフA型の結晶充填構造を示す。
【図8】b軸から見た、ポリモルフA型の結晶充填構造を示す。
【図9】ポリモルフB型のXRPDパターンを示す。
【図10】ポリモルフB型の熱解析及び微分走査熱量測定を示す。
【図11】ポリモルフB型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図12】c軸から見た、ポリモルフB型の結晶充填構造を示す。
【図13】b軸から見た、ポリモルフB型の結晶充填構造を示す。
【図14】ポリモルフB型のIR吸収スペクトルを示す。
【図15】ポリモルフB型のラマン吸収スペクトルを示す。
【図16】ポリモルフC型のXRPDパターンを示す。
【図17】ポリモルフC型の1H NMR分光分析を示す。
【図18】ポリモルフC型の熱解析及び微分走査熱量測定を示す。
【図19】ポリモルフC型についての水分の収着/脱着データを示す。
【図20】ポリモルフC型のIR吸収スペクトルの図を示す。
【図21】ポリモルフC型のラマン吸収スペクトルの図を示す。
【図22】デシタビンの一般式を示す。
【図23】デシタビンポリモルフA型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図24】デシタビンポリモルフB型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図25】デシタビンポリモルフC型の溶液のH NMRスペクトルを示す。
【図26】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のXRPDパターンの比較を示す。
【図27】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のIRスペクトルの比較を示す。
【図28】デシタビンポリモルフA型(上)、B型(中)、及びC型(下)のラマンスペクトルの比較を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13.5、22.5、及び23.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴するデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項2】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ6.5、17、18、及び20.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有する、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項3】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で81.0℃から91.0℃で吸熱、89.9℃から99.9℃で吸熱、及び193.4℃から203.4℃で吸熱を示す、請求項1のデシタビンポリモルフ。
【請求項4】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で83.5℃から88.5℃で吸熱、92.4℃から97.4℃で吸熱、及び195.9℃から200.9℃で吸熱を示す、請求項1のデシタビンポリモルフ。
【請求項5】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で85.0℃から87.0℃で吸熱、93.9℃から95.9℃で吸熱、及び197.4℃から199.4℃で吸熱を示す、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項6】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ18及び20.5の゜2θ値に回折線を有する、いくつかの更に追加された弱いX線粉末回折パターンを示す、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項7】
前記ポリモルフが、更に150℃で約7.2%の質量低下を示す、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項8】
更に図12に示す構造を特徴とする、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項9】
前記ポリモルフが、更に、3400cm-1辺りに広いストレッチ、3100cm-1から2800cm-1にストレッチ、2000cm-1辺りにシャープなピーク、及び約1700cm-1から400cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトルを示す、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項10】
前記ポリモルフが、更に、約3100cm-1から2900cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りに強いバンド、及び1600cm-1から600cm-1に一連の小バンドを有するラマンスペクトルを特徴とする、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項11】
前記ポリモルフが、一水和物である、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項12】
デシタビンのポリモルフ形態であって、前記ポリモルフが、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0、13、14.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴とする、前記デシタビンのポリモルフ形態。
【請求項13】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で198.4℃から208.4℃で吸熱を示す、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項14】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で200.9℃から205.9℃で吸熱を示す、請求項13に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項15】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で202.4℃から204.4℃で吸熱を示す、請求項13に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項16】
痕跡を超える水を含まない、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項17】
無水物である、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項18】
更に、3700cm-1から4000cm-1にごく小さい吸収、約2000cm-1及び約1850cm-1のピークとともに3500cm-1から3000cm-1に広いストレッチを有するIRスペクトルを示す、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項19】
更に、ほぼ198℃で融解開始及びほぼ200℃で融解を有する、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項20】
前記ポリモルフ形態が、更に、デシタビンのメタノール溶液を冷却することによって製造されることを特徴とする、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項21】
更に、約2800cm-1から3000cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りに強いピークを有し、約600cm-1から1600cm-1で一連の小バンドによって取り囲まれているラマンスペクトルを示す、請求項12のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項22】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ18.5、21.5、及び24.5から成る群から選択される゜2θ値に回折線を更に含む、請求項12のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項23】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ19、23、及び27.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴とし得るデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項24】
前記ポリモルフが、更に、13、14.5及び16.5から成る群から選択される゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示す、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項25】
更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約44.3℃から54.3℃で吸熱、159.6℃から169.6℃で吸熱、及び190.8℃から200.8℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項26】
前記ポリモルフが更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約46.8℃から52.8℃で吸熱、162.1℃から167.1℃で吸熱、及び193.3℃から198.3℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項27】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約48.3℃から50.3℃で吸熱、163.6℃から165.6℃で吸熱、及び194.8℃から196.8℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項28】
前記ポリモルフが、更に、3625cm-1から3675cm-1にごく小さい吸収、3400cm-1辺りに広いストレッチ、2000cm-1辺りに弱いピーク、及び約1700cm-1から500cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトルを示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項29】
前記ポリモルフが、更に、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、及び約800cm-1にピークを有するラマンスペクトルを特徴とする、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項30】
前記ポリモルフが、2,2,2-トリフルオロエタノール及び水中のデシタビン溶液の蒸着、続いて周囲温度での蒸発及び周囲温度での真空オーブン乾燥によって製造される、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項31】
医薬担体及び請求項1、12又は23に記載のデシタビンポリモルフを含む医薬組成物。
【請求項32】
新形態成疾患を有する患者を治療する方法であって、前記方法が、請求項1、12又は23のいずれかの項に記載の医薬組成物の医薬的に有効な量を患者に投与することを含む、前記新形成疾患罹患者を治療する方法。
【請求項33】
前記新形成疾患が、再狭窄、良性腫瘍、癌、血液学的異常及びアテローム性硬化症から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記良性腫瘍が、血管腫、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマ及び化膿性肉芽腫から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭の癌、胆嚢癌、膵臓癌、直腸癌、傍甲状腺癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓の癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベンティキュラム細胞肉腫、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ及び類表皮癌から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記血液学的異常が、急性類骨髄球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄形成不全症候群及び鎌状血球貧血から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
デシタビンに対して結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0、13、及び14.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項38】
前記ポリモルフが、更に、ほぼ18.5、21.5、及び24.5の゜2θ値のX線回折線パターンを有することを特徴とし得る、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
デシタビンで結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13.5、22.5、及び23.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項40】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ6.5、17、18、及び20.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
デシタビンに対して結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ19、23、及び27.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項42】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13、14.5、及び16.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有することを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13.5、22.5、及び23.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴するデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項2】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ6.5、17、18、及び20.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有する、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項3】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で81.0℃から91.0℃で吸熱、89.9℃から99.9℃で吸熱、及び193.4℃から203.4℃で吸熱を示す、請求項1のデシタビンポリモルフ。
【請求項4】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で83.5℃から88.5℃で吸熱、92.4℃から97.4℃で吸熱、及び195.9℃から200.9℃で吸熱を示す、請求項1のデシタビンポリモルフ。
【請求項5】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で85.0℃から87.0℃で吸熱、93.9℃から95.9℃で吸熱、及び197.4℃から199.4℃で吸熱を示す、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項6】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ18及び20.5の゜2θ値に回折線を有する、いくつかの更に追加された弱いX線粉末回折パターンを示す、請求項1に記載のデシタビンポリモルフ。
【請求項7】
前記ポリモルフが、更に150℃で約7.2%の質量低下を示す、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項8】
更に図12に示す構造を特徴とする、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項9】
前記ポリモルフが、更に、3400cm-1辺りに広いストレッチ、3100cm-1から2800cm-1にストレッチ、2000cm-1辺りにシャープなピーク、及び約1700cm-1から400cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトルを示す、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項10】
前記ポリモルフが、更に、約3100cm-1から2900cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りに強いバンド、及び1600cm-1から600cm-1に一連の小バンドを有するラマンスペクトルを特徴とする、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項11】
前記ポリモルフが、一水和物である、請求項1に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項12】
デシタビンのポリモルフ形態であって、前記ポリモルフが、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0、13、14.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴とする、前記デシタビンのポリモルフ形態。
【請求項13】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で198.4℃から208.4℃で吸熱を示す、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項14】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で200.9℃から205.9℃で吸熱を示す、請求項13に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項15】
前記ポリモルフ形態が、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で202.4℃から204.4℃で吸熱を示す、請求項13に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項16】
痕跡を超える水を含まない、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項17】
無水物である、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項18】
更に、3700cm-1から4000cm-1にごく小さい吸収、約2000cm-1及び約1850cm-1のピークとともに3500cm-1から3000cm-1に広いストレッチを有するIRスペクトルを示す、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形。
【請求項19】
更に、ほぼ198℃で融解開始及びほぼ200℃で融解を有する、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項20】
前記ポリモルフ形態が、更に、デシタビンのメタノール溶液を冷却することによって製造されることを特徴とする、請求項12に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項21】
更に、約2800cm-1から3000cm-1に比較的弱いストレッチ、800cm-1辺りに強いピークを有し、約600cm-1から1600cm-1で一連の小バンドによって取り囲まれているラマンスペクトルを示す、請求項12のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項22】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ18.5、21.5、及び24.5から成る群から選択される゜2θ値に回折線を更に含む、請求項12のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項23】
波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ19、23、及び27.5の゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示すことを特徴とし得るデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項24】
前記ポリモルフが、更に、13、14.5及び16.5から成る群から選択される゜2θ値に回折線を有するX線粉末回折パターンを示す、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項25】
更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約44.3℃から54.3℃で吸熱、159.6℃から169.6℃で吸熱、及び190.8℃から200.8℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項26】
前記ポリモルフが更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約46.8℃から52.8℃で吸熱、162.1℃から167.1℃で吸熱、及び193.3℃から198.3℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項27】
前記ポリモルフが、更に、微分走査熱量測定法により10℃/分の速度で約48.3℃から50.3℃で吸熱、163.6℃から165.6℃で吸熱、及び194.8℃から196.8℃で吸熱を示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項28】
前記ポリモルフが、更に、3625cm-1から3675cm-1にごく小さい吸収、3400cm-1辺りに広いストレッチ、2000cm-1辺りに弱いピーク、及び約1700cm-1から500cm-1に複雑なフィンガープリントを有するIRスペクトルを示すことを特徴とし得る、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項29】
前記ポリモルフが、更に、約3100cm-1から2800cm-1にピーク、及び約800cm-1にピークを有するラマンスペクトルを特徴とする、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項30】
前記ポリモルフが、2,2,2-トリフルオロエタノール及び水中のデシタビン溶液の蒸着、続いて周囲温度での蒸発及び周囲温度での真空オーブン乾燥によって製造される、請求項23に記載のデシタビンのポリモルフ形態。
【請求項31】
医薬担体及び請求項1、12又は23に記載のデシタビンポリモルフを含む医薬組成物。
【請求項32】
新形態成疾患を有する患者を治療する方法であって、前記方法が、請求項1、12又は23のいずれかの項に記載の医薬組成物の医薬的に有効な量を患者に投与することを含む、前記新形成疾患罹患者を治療する方法。
【請求項33】
前記新形成疾患が、再狭窄、良性腫瘍、癌、血液学的異常及びアテローム性硬化症から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記良性腫瘍が、血管腫、肝細胞アデノーマ、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴覚神経腫、神経線維腫、胆管アデノーマ、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生過形成、トラコーマ及び化膿性肉芽腫から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭の癌、胆嚢癌、膵臓癌、直腸癌、傍甲状腺癌、腺組織の癌、神経組織の癌、頭部及び頸部の癌、結腸の癌、胃癌、気管支の癌、腎臓の癌、基底細胞癌、扁平上皮癌(潰瘍型及び乳頭状型の両型)、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベンティキュラム細胞肉腫、ミエローマ、巨細胞腫瘍、小細胞肺癌、胆石、小島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性及び慢性リンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫、過形成角膜神経腫、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルム腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍、子宮頸部形成異常及び前記部位に発生する癌、神経芽腫、網膜芽腫、軟組織肉腫、悪性類癌腫、局所性皮膚病巣、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫、真性赤血球増加症、腺癌、多発性グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ及び類表皮癌から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記血液学的異常が、急性類骨髄球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄形成不全症候群及び鎌状血球貧血から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
デシタビンに対して結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ7.0、13、及び14.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項38】
前記ポリモルフが、更に、ほぼ18.5、21.5、及び24.5の゜2θ値のX線回折線パターンを有することを特徴とし得る、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
デシタビンで結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13.5、22.5、及び23.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項40】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ6.5、17、18、及び20.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
デシタビンに対して結晶化工程を実施することを含むデシタビンポリモルフを結晶化する方法であって、メタノールが一次溶媒として用いられ、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ19、23、及び27.5の゜2θ値のX線回折パターンを有するデシタビンの結晶が生成される、前記デシタビンポリモルフの結晶化の方法。
【請求項42】
前記ポリモルフが、更に、波長1.5406オングストロームのCu Kα放射線に対し、ほぼ13、14.5、及び16.5から成る群から選択される゜2θ値にX線粉末回折線を有することを特徴とする、請求項41に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2008−506690(P2008−506690A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521565(P2007−521565)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/024676
【国際公開番号】WO2006/017278
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/024676
【国際公開番号】WO2006/017278
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]