説明

デッキプレート用取着体

【課題】本体に一体に組み付けられたシール体が、挟持部と掛止部との間で不必要に変形してしまうことを抑制すること。
【解決手段】インサート本体11の下部側には、デッキプレート下面の貫通孔周りに掛止される第1掛止片12c及び第2掛止片12dが設けられている。また、インサート本体11における第1掛止片12cよりも上方の外周面周りにはコイルスプリング31が配設されるとともに、インサート本体11において、第1掛止片12cよりも上方であり、且つコイルスプリング31よりも下方の位置には圧接リング32が設けられている。さらに、インサート本体11の外周面には一対の支持部21が突設されるとともに、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレート上面との間で挟持される前の状態において、圧接リング32が支持部21上に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブから吊ボルト又は配線・配管材を支持する被吊下体を吊り下げるためのデッキプレート用取着体に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキプレート上にコンクリートを打設してなるコンクリートスラブの下方で、配線(ケーブル等)・配管材(排気管等)や空調機器・天井下地材等を吊り下げるため、コンクリートスラブからは吊ボルトが吊り下げられている。この吊ボルトは、その上部がコンクリートスラブに埋設されたデッキプレート用取着体としてのインサートに螺合されることでコンクリートスラブから吊り下げられる。インサートは、デッキプレートを上下方向に貫通して穿設された貫通孔を用いてデッキプレートに固定されるが、コンクリートスラブでは、デッキプレートに打設されたコンクリートノロが貫通孔を通過してデッキプレートの下方へ漏れ出ないようにすることが必要である。
【0003】
コンクリートノロの漏出を防止可能としたインサートとしては、特許文献1のデッキインサートが挙げられる。このデッキインサートは、上端に鍔を有する筒状体(本体)を備えるとともに、この筒状体の外周にはバネ(付勢部)が配設されている。バネの一端は鍔の下面に当接しているとともに、他端はデッキプレートの上面を圧接する可動盤(挟持部)の上面に当接している。また、筒状体の下部には張出し片(掛止部)が設けられている。この張出し片は外力が加えられると縮径又は近接するとともに、外力が解除されると自身の弾性により原形状に復元する弾性変形可能になっている。
【0004】
そして、デッキインサートは、筒状体における張出し片の上面と、可動盤の下面とでデッキプレートを挟持することによりデッキプレートに固定される。このとき、可動盤の下面がバネの付勢力によりデッキプレートの上面に圧接することにより、可動盤の下面とデッキプレートの上面との間にコンクリートノロが侵入することが防止され、貫通孔内を通ってデッキプレート下方へコンクリートノロが漏れ出ることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−317030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のデッキインサートにおいては、コンクリートノロの漏出を防止するために可動盤の下面をデッキプレートの上面に圧接させなければならない。しかし、貫通孔をドリルで穿設する際に発生するドリル屑やバリが貫通孔の周りに残っていたり、貫通孔の周りが変形したりして、貫通孔の周りが凹凸状になっていることがある。貫通孔の周りが凹凸状になっていると、可動盤の下面全体がデッキプレート上面に圧接せず、可動盤の下面とデッキプレート上面との間に隙間が形成されてしまい、その隙間からコンクリートノロが漏れ出てしまう。
【0007】
そこで、特許文献1のデッキインサートにおいて、可動盤の下面とデッキプレート上面との間にシール体を介在させて、可動盤の下面とデッキプレート上面との間をシールすることが考えられる。この場合、シール体をデッキインサートに一体に組み付けておくのが好ましく、シール体の落下を抑制するためにシール体を張出し片と可動盤との間に配設しておくのがより好ましい。しかし、デッキインサートの保管時等において、バネの付勢力により、シール体が、可動盤の下面と張出し片との間で挟持されてしまうことが考えられる。シール体が、可動盤の下面と張出し片との間に挟持されると、シール体が不必要に変形してしまい、可動盤の下面とデッキプレート上面との間をシールできなくなる虞がある。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、本体に一体に組み付けられたシール体が、挟持部と掛止部との間で不必要に変形してしまうことを抑制することができるデッキプレート用取着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、デッキプレートに穿設された貫通孔を利用して前記デッキプレートに固定されるとともにコンクリートスラブに埋設され、前記コンクリートスラブから吊ボルト又は配線・配管材を支持する被吊下体を吊り下げるために用いられるデッキプレート用取着体であって、本体の下部側は前記貫通孔を貫通可能に形成されるとともに、前記本体の下部側には、前記デッキプレート下面の前記貫通孔周りに掛止される掛止部が設けられ、前記本体における前記掛止部よりも上側の外面周りには付勢部が設けられるとともに、前記付勢部により前記掛止部に向けて付勢されて前記掛止部と共に前記デッキプレートを挟持する挟持部が設けられ、前記掛止部と前記挟持部とにより前記デッキプレートを挟持した際に、前記挟持部の圧接面と前記デッキプレート上面との間に配設されるとともに厚み方向に圧縮可能な環状のシール体が前記本体に外装されており、さらに、前記付勢部の付勢力に抗して前記圧接面と前記掛止部との間隔を所定の間隔に維持する維持手段を備え、前記維持手段により前記所定の間隔に維持された前記挟持部と前記掛止部との間に前記シール体が配設されていることを要旨とする。
【0010】
ここで、「所定の間隔」とは、シール体が挟持部とデッキプレート上面との間をシールすることができなくなるまで、シール体が変形してしまうことのない間隔のことをいう。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記維持手段は、前記本体の外面から突設される支持部であるとともに、前記挟持部が前記支持部上に支持されることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記維持手段は、前記挟持部を前記掛止部から離間する方向へ引き上げる引上具であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記維持手段は、前記掛止部の上面から突設される当接凸部より形成され、前記挟持部が前記当接凸部に当接されることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記所定の間隔は、前記シール体が厚み方向に圧縮される前の厚み以上になっていることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記シール体が前記挟持部の前記圧接面と前記デッキプレート上面との間で圧縮された圧縮位置では、前記シール体の前記本体に対する接触部位が、前記シール体が前記本体を取り囲む囲繞方向に沿って間断なく密接することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、本体に一体に組み付けられたシール体が、挟持部と掛止部との間で不必要に変形してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態におけるインサートをデッキプレートに固定した状態を示す断面図。
【図2】インサートを下側から見た斜視図。
【図3】第2の実施形態におけるインサート及び引上具を示す縦断面図。
【図4】引上具を示す斜視図。
【図5】第3の実施形態におけるインサート及び支持具を示す縦断面図。
【図6】支持具を示す斜視図。
【図7】第4の実施形態におけるインサートを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明をコンクリートスラブから吊ボルトを吊り下げるために用いられるインサートに具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0017】
図1に示すように、デッキプレート用取着体としてのインサート10は、コンクリートスラブTから吊ボルトBを吊り下げるためにコンクリートスラブTに埋設されるものである。コンクリートスラブTは、金属板製のデッキプレートDの上面にコンクリートを打設して構築されるとともに、デッキプレートDと、コンクリートが硬化してなるコンクリート層Cとからなる。デッキプレートDには円孔状の貫通孔Dcが上下方向に貫通するように穿設されている。そして、この貫通孔Dcを用いてインサート10がデッキプレートDに固定されている。
【0018】
インサート10は、本体として、合成樹脂からなる円筒状のインサート本体11を有する。このインサート本体11は、上下両端が開口する円筒状の本体部12と、本体部12の上部に一体的に組み付けられる金属材料製のヘッダー部13とを備えるとともに、ヘッダー部13により上端が閉塞されている。本体部12は、ヘッダー部13側の大径部12aと、大径部12aの外径よりも小径をなす小径部12bとを有している。
【0019】
また、ヘッダー部13は、本体部12の大径部12a内側に組み付けられた円筒状の筒部14と、この筒部14の上部に設けられるとともに本体部12の上端開口を閉塞するフランジ部15とからなる。筒部14の内周面には雌ねじ14aが形成されている。そして、インサート本体11の下端からインサート本体11内に挿入された吊ボルトBは、その上端の螺子部Baを雌ねじ14aに螺合可能になっている。
【0020】
インサート本体11の下部側には、掛止部としての一対の第1掛止片12cが、本体部12の径方向に対向する位置から突設されている。各第1掛止片12cは、下端のみが本体部12に連結されるとともに、下端縁を傾動中心として傾動可能に形成されている。また、各第1掛止片12cは、本体部12の下から上に向かうにつれて、本体部12における外周面からの突出量が徐々に多くなるように形成されるとともに、第1掛止片12cの上面が、デッキプレートDの下面における貫通孔Dc周りに掛止可能な大きさに形成されている。
【0021】
そして、第1掛止片12cに対して外方から力が作用すると、第1掛止片12cは本体部12(インサート本体11)内に向けて傾動し、本体部12内に没入される。このとき、第1掛止片12cは、本体部12の外周面から突出しなくなるまで、本体部12内に没入させることができる。
【0022】
一方、第1掛止片12cに対する外方からの力が解除されると、第1掛止片12cは、没入位置から原形状に復帰するとともに、本体部12の外周面から突出するようになっている。そして、インサート本体11の下部側は、一対の第1掛止片12cを没入させることにより貫通孔Dcを貫通可能になっている。
【0023】
また、図2に示すように、インサート本体11の下部側において、本体部12の周方向における一対の第1掛止片12c同士の間それぞれには、掛止部としての第2掛止片12dが、本体部12の径方向に対向する位置から突設されている。この第2掛止片12dは、本体部12の下から上に向かうにつれて、本体部12における外周面からの突出量が徐々に多くなるように形成されるとともに、第2掛止片12dの上面が、デッキプレートDの下面における貫通孔Dc周りに掛止可能になっている。
【0024】
また、インサート本体11におけるフランジ部15と第1掛止片12cとの略中間に位置する小径部12bの外周面には、一対の支持部21がインサート本体11の径方向に対向する位置から一体的に突設されている。
【0025】
図1に示すように、インサート10は、インサート本体11における第1掛止片12c及び第2掛止片12dよりも上方の外周面周りに配設される付勢部としてのコイルスプリング31を備えている。また、インサート本体11において、第1掛止片12c及び第2掛止片12dよりも上方であり、且つコイルスプリング31よりも下方の位置には、挟持部としての圧接リング32がインサート本体11の外周面周りに設けられている。
【0026】
コイルスプリング31の一端はフランジ部15に当接するとともに、他端は圧接リング32の上面に支持されており、圧接リング32は、コイルスプリング31の付勢力により第1掛止片12c及び第2掛止片12d側へ付勢されて、圧接リング32の下面32aが第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面を圧接可能になっている。また、圧接リング32の内径は、本体部12の大径部12aの外径よりも僅かに大きくなっているとともに、圧接リング32は、その内側にインサート本体11が貫挿された状態で、インサート本体11を回転中心として回転可能になっている。
【0027】
また、圧接リング32の内縁部には、一対の凹部33が圧接リング32の径方向に対向する位置に形成されている。そして、この凹部33に対して支持部21が通過できるようになっている。また、支持部21上に圧接リング32を支持させることができるようになっている。
【0028】
図2に示すように、圧接リング32が支持部21上に支持された状態では、その圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間のインサート本体11周りにシール体18が配設されている。シール体18は、多孔質の合成樹脂材料によって板状に形成されるとともに、その厚み方向へ圧縮可能になっており、圧縮されると原形状へ戻ろうとする復帰力を発生するようになっている。
【0029】
よって、シール体18が圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間で挟持されることなく、圧接リング32の下面32aとシール体18とが離間した状態でインサート本体11に一体化されている。したがって、一対の支持部21は、圧接リング32の下面32aをシール体18から離間させて、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間を所定の間隔に維持する維持手段として機能する。
【0030】
ここで、「所定の間隔」とは、シール体18が圧接リング32とデッキプレートDとの間をシールすることができなくなるまで、シール体18が変形してしまうことのない間隔のことをいい、本実施形態における所定の間隔は、シール体18が圧縮される前の厚み以上になっている。
【0031】
また、インサート10をデッキプレートDに固定する際には、圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間でシール体18が挟持されるとともに、シール体18は、圧接リング32の下面32aによってデッキプレートD上面に圧接されるようになっている。よって、圧接リング32の下面32aは、シール体18に当接してシール体18をデッキプレートD上面に圧接させる圧接面として機能する。
【0032】
次に、圧接リング32の下面32aをシール体18から離間させるために、圧接リング32を支持部21上に支持する方法を説明する。
まず、シール体18が、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態において、凹部33と支持部21とが重合する位置となるように圧接リング32を回転させる。そして、圧接リング32をコイルスプリング31の付勢力に抗して上方へ移動させるとともに、凹部33内に支持部21を通過させる。さらに、凹部33と支持部21とが重合しない位置となるように圧接リング32を回転させ、圧接リング32の下面32aを支持部21の上面に当接させることで、圧接リング32が支持部21上に支持される。これにより、圧接リング32が支持部21よりも上方に位置するとともに、コイルスプリング31の付勢力に抗してシール体18から離れた状態になる。よって、シール体18は、圧接リング32によって圧縮されることなくインサート本体11に一体化されて組み付けられる。
【0033】
次に、インサート10をデッキプレートDに固定するとともに、インサート10によってケーブル(図示せず)をコンクリートスラブTから吊り下げる方法、及び吊ボルトBの吊り下げ構造について説明する。
【0034】
まず、デッキプレートDにコンクリートが打設される前において、デッキプレートDに貫通孔Dcを穿設する。次に、シール体18が、インサート本体11における圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に一体化されて組み付けられた状態において、貫通孔Dcにインサート本体11の下部側を挿通させる。このとき、インサート本体11におけるフランジ部15を叩くことにより、第2掛止片12dを貫通孔Dcに対して通過させる。同時に、貫通孔Dcの内面に対して第1掛止片12cが摺接することにより、第1掛止片12cには外方から力が作用するとともに、第1掛止片12cがインサート本体11(本体部12)内に向けて没入(傾動)する。
【0035】
そして、第1掛止片12cが貫通孔Dcを通過すると、シール体18がデッキプレートD上面に載置される。また、第1掛止片12cは、外方からの力が解除されて原形状へ復帰し、インサート本体11(本体部12)の外周面から突出して、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面が、デッキプレートD下面の貫通孔Dc周りに掛止される。
【0036】
次に、凹部33と支持部21とが重合する位置となるように圧接リング32を回転させると、コイルスプリング31の付勢力により圧接リング32が第1掛止片12c側へ押圧されて、凹部33内を支持部21が通過するとともに、圧接リング32の下面32aがシール体18の上面に当接してシール体18を圧縮する。よって、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間にシール体18及びデッキプレートDが挟持されるとともに、インサート10がデッキプレートDに固定される。
【0037】
その後、図1に示すように、デッキプレートD上にコンクリートを打設してコンクリート層Cを成形するとコンクリートスラブTが構築されるとともに、コンクリートスラブTにインサート10の上部側が埋設される。
【0038】
また、圧接リング32の下面32aと、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間に、デッキプレートDとシール体18とが挟持されている。このとき、シール体18が厚み方向に圧縮されるとともに原形状へ戻ろうとする復帰力により、シール体18の上面が圧接リング32の下面32aに圧接するとともに、シール体18の下面が、デッキプレートDの上面における貫通孔Dcに周縁部に圧接している。
【0039】
また、シール体18は、厚み方向へ自在に変形可能であるため、貫通孔Dc周りの一部に上方に向けた変形部Ddや、バリDeが残っていたりしても、シール体18は、変形部DdやバリDeに沿うように変形しながら圧接している。このため、シール体18により、圧接リング32の下面32aとデッキプレートDの上面との間に隙間が形成されることが防止される。よって、シール体18により圧接リング32の下面32aとデッキプレートDの上面との間がシールされ、コンクリートノロが貫通孔Dcへ侵入することが防止され、コンクリートノロが貫通孔DcからデッキプレートDの下方へ漏れ出ることが防止される。
【0040】
さらに、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で圧縮された圧縮位置では、シール体18の内周面におけるインサート本体11に対する接触部位が、シール体18がインサート本体11を取り囲む囲繞方向に沿って間断なく密接している。このため、シール体18の内周面とインサート本体11の外周面との間がシールされ、コンクリートノロがシール体18の内周面とインサート本体11の外周面との間へ侵入することが防止される。
【0041】
その後、インサート本体11内に吊ボルトBを挿入するとともに、吊ボルトBの螺子部Baを雌ねじ14aに螺合して、コンクリートスラブTから吊ボルトBを吊り下げる。すると、コンクリートスラブTに吊ボルトBの吊り下げ構造が形成されるとともに、吊ボルトBを利用してケーブルを吊り下げ支持させることができる。
【0042】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)インサート本体11の外周面には一対の支持部21が突設されるとともに、この一対の支持部21上に圧接リング32が支持されるようになっている。そして、一対の支持部21上に圧接リング32が支持されることにより、圧接リング32が、コイルスプリング31の付勢力に抗してシール体18から離れた状態が維持される。したがって、インサート10の保管時や運搬時には、シール体18が圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間で挟持されることが無く、シール体18が変形してしまうことを防止することができる。その結果、インサート10をデッキプレートDに固定する際に、変形していないシール体18を圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間に配設することができるため、圧接リング32とデッキプレートD上面との間でシール体18が挟持されてシール性能を十分に確保することができる。
【0043】
(2)インサート10は、圧接リング32の下面32aとデッキプレートDの上面との間に配設されるシール体18を備えるとともに、このシール体18は厚み方向に圧縮変形可能であり、且つ圧縮後は原形状へ戻ろうとする復帰力を発生する。このため、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面と圧接リング32の下面32aとの間にデッキプレートDを挟持したとき、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面の変形部DdやバリDeの形状に沿うように変形しつつ圧接する。よって、貫通孔Dcの周りが凹凸状になっていても、シール体18の下面全体がデッキプレートDに圧接し、シール体18とデッキプレートD上面との間に隙間が形成されることを防止することができる。したがって、バリDeを除去したり、貫通孔Dcの周りを平坦面状に均したりするといった準備作業を必要とせず、インサート10をデッキプレートDに容易に固定することができる。その結果として、シール体18によって圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間がシールされるため、貫通孔Dcからコンクリートノロが漏れ出ることを防止することができる。
【0044】
(3)支持部21上に圧接リング32を支持させたときの圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間の間隔は、シール体18が圧縮される前の厚み以上になっている。よって、シール体18が、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間で圧縮されることがなく、シール体18が変形してしまうことがない。
【0045】
(4)シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で圧縮されている状態において、シール体18の内周面におけるインサート本体11の外周面に対する接触部位が、シール体18がインサート本体11を取り囲む囲繞方向に沿って間断なく密接している。よって、シール体18の内周面とインサート本体11の外周面との間がシールされ、コンクリートノロがシール体18の内周面とインサート本体11の外周面との間を介して、貫通孔DcからデッキプレートDの下方へ漏れ出ることを防止することができる。
【0046】
(5)圧接リング32は、コイルスプリング31により常に第1掛止片12c及び第2掛止片12d側へ付勢されている。よって、圧接リング32の下面32aと、第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間にシール体18を介してデッキプレートDが挟持された状態において、圧接リング32の下面32aによりシール体18を常にデッキプレートDの上面に圧接させることができる。
【0047】
(6)実施形態では、コイルスプリング31の付勢力により、圧接リング32がデッキプレートD側へ付勢され、シール体18が圧接リング32の下面32aにより厚み方向に圧縮される。このため、シール体18は、回転することなくデッキプレートD上面の変形部DdやバリDeの形状に沿うように変形しつつ圧接する。よって、シール体18が回転しながらデッキプレートD上面の変形部DdやバリDeの形状に沿うように変形しつつ圧接することにより、シール体18の下面が損傷してしまうといったことがなく、シール体18をデッキプレートD上面に圧接させることができる。
【0048】
(7)実施形態では、コイルスプリング31の付勢力により、圧接リング32がデッキプレートD側へ付勢され、シール体18が圧接リング32の下面32aにより厚み方向に圧縮される。よって、例えば、デッキプレートDの上面が下側に凹むように変形していたとしても、シール体18が圧縮されることで、シール体18がデッキプレートDにおける下側に凹んだ部位(変形部)に入り込み、シール体18とデッキプレートD上面との間に隙間が形成されることを防止することができる。
【0049】
(8)シール体18が圧縮位置に配設される前は、シール体18は、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間でインサート本体11に一体に組み付けられている。このため、貫通孔Dcにインサート本体11を下部側から挿入すると、シール体18がデッキプレートD上面に配設される。よって、圧接リング32の下面32aと、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間でデッキプレートDを挟持する際に、シール体18を圧接リング32とデッキプレートDとの間に配設し忘れることがない。
【0050】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図3及び図4にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0051】
図3に示すように、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態(例えば、保管時)では、圧接リング32が維持手段としての引上具41により第1掛止片12c及び第2掛止片12dから離間する方向へ引き上げられている。
【0052】
図4に示すように、引上具41は、円盤状の天板41aと、天板41aの周縁部における対向する部位から天板41aの下面に対して直交する方向へ延びる一対の延設部41bとを備えている。各延設部41bの先端には、延設部41bの延設方向と直交する方向に互いに近づくように延びる支持片41cが設けられている。
【0053】
図3に示すように、支持片41cは、支持片41cにおける天板41aの下面と対向する上面と、圧接リング32の下面32aとが当接することで圧接リング32を支持可能になっている。また、各延設部41bにおける互いに対向する面との間の間隔は、圧接リング32の直径よりも大きくなっている。さらに、各延設部41bは、その基端を基点にして互いに接離する方向へ変形可能になっている。
【0054】
次に、圧接リング32の下面32aをシール体18から離間させるために、圧接リング32を引上具41により第1掛止片12c及び第2掛止片12dから離間する方向へ引き上げる方法を説明する。
【0055】
まず、シール体18が、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態において、使用者の手により圧接リング32を第1掛止片12c及び第2掛止片12d側から上方へ押し上げた状態にする。この状態で、引上具41の各延設部41bを互いに離間する方向へ広げながら、引上具41をインサート10におけるヘッダー部13及び本体部12の大径部12aを覆うように配置する。そして、手による圧接リング32の押し上げを解除すると、コイルスプリング31の付勢力により圧接リング32が下方へ移動して、圧接リング32の下面32aが支持片41cの上面と当接し、圧接リング32が支持片41c上に支持される。これにより、圧接リング32が支持片41cよりも上方に位置するとともに、コイルスプリング31の付勢力に抗してシール体18から離れた状態になる。よって、シール体18は、圧接リング32の下面32aに当接することなくインサート本体11に一体化されて組み付けられる。
【0056】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を図5及び図6にしたがって説明する。
【0057】
図5に示すように、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態(例えば、保管時)では、圧接リング32が維持手段としての支持具51上に支持されている。
【0058】
図6に示すように、支持具51は、互いに平行に延びる第1延設部51a及び第2延設部51bと、両延設部51a,51bの延設方向と直交する方向に延びるとともに両延設部51a,51b同士を繋ぐ連結部51cとから構成されている。第1延設部51aと第2延設部51bとの間の間隔は、シール体18の厚みよりも僅かに大きくなっている。また、第1延設部51a及び第2延設部51bには、その先端部から基端側に向かって凹部51dが形成されている。凹部51dは、第1延設部51a及び第2延設部51bの先端側からインサート本体11を挿入可能になっている。
【0059】
次に、圧接リング32の下面32aをシール体18から離間させるために、圧接リング32を支持具51上に支持する方法を説明する。
まず、シール体18が、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態において、使用者の手により圧接リング32を第1掛止片12c及び第2掛止片12d側から上方へ押し上げた状態にする。この状態で、シール体18が第1延設部51a及び第2延設部51bとの間に位置するとともに、インサート本体11が第1延設部51a及び第2延設部51bの先端側から凹部51dに挿入されるように支持具51をインサート本体11に組み付ける。このとき、第2延設部51bの下面は第1掛止片12cの上面に当接している。
【0060】
そして、使用者の手により圧接リング32が第1掛止片12c及び第2掛止片12d側から上方へ押し上げられた状態を解除すると、コイルスプリング31の付勢力により圧接リング32が下方へ移動して、圧接リング32の下面32aが第1延設部51aの上面に当接し、圧接リング32が第1延設部51a上に支持される。これにより、圧接リング32が第1延設部51aよりも上方に位置するとともに、コイルスプリング31の付勢力に抗してシール体18から離れた状態になる。よって、シール体18は、圧接リング32の下面32aに当接することなく、第1延設部51aと第2延設部51bとの間に位置した状態でインサート本体11に一体化されて組み付けられる。
【0061】
したがって、第3の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(7)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(8)シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態において、シール体18は、第1延設部51aと第2延設部51bとの間に位置した状態で、インサート本体11に一体化されて組み付けられている。よって、例えば、一つの袋に複数のインサート10を入れて運搬する場合、シール体18が第1延設部51a及び第2延設部51bによって保護されているため、インサート10同士が接触してシール体18が変形してしまうことを抑制することができる。
【0062】
(第4の実施形態)
以下、本発明を具体化した第4の実施形態を図7にしたがって説明する。
図7に示すように、圧接リング32の内縁部における下面32aには、圧接リング32の下面32a側へ円環状に膨出する膨出部61が形成されている。膨出部61の内周面は圧接リング32の内周面と同一面上になっているとともに、インサート本体11の外周面に接するようになっている。さらに、第1掛止片12cの上面には、膨出部61と当接可能な当接凸部62が形成されている。図7において拡大して示すように、膨出部61と当接凸部62とが当接した状態では、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間が所定の間隔に維持されるようになっている。よって、膨出部61及び当接凸部62は、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間を所定の間隔に維持する維持手段として機能する。
【0063】
ここで、第4の実施形態における「所定の間隔」とは、シール体18が圧接リング32とデッキプレートDとの間をシールすることができなくなるまでシール体18が変形してしまうことのない間隔のことをいう。
【0064】
まず、シール体18が、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態において、シール体18は、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設されるとともに、インサート本体11に一体に組み付けられている。この組み付け状態では、圧接リング32の下面32aとシール体18の上面とが当接している。
【0065】
また、シール体18が圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態では、膨出部61及び当接凸部62がシール体18の内側に位置するとともに、膨出部61は当接凸部62の先端に当接している。そして、コイルスプリング31の付勢力により、圧接リング32は第1掛止片12c及び第2掛止片12d側へ付勢され、シール体18が、圧接リング32の下面32aにより厚み方向に圧縮されている。これにより、圧接リング32からシール体18に加わる付勢力が、膨出部61から当接凸部62へ伝わり、シール体18が、圧接リング32の下面32aと当接して圧縮された状態以上に圧縮されることなく、インサート本体11に一体化されて組み付けられる。
【0066】
また、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間にシール体18を介してデッキプレートDが挟持された状態では、コイルスプリング31の付勢力により、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で厚み方向に圧縮される。さらに、当接凸部62の先端がデッキプレートDの下面に当接するとともに、膨出部61の下面がデッキプレートDの上面に当接する。これにより、当接凸部62と膨出部61との間にデッキプレートDが挟持されるとともに、インサート10がデッキプレートDに固定される。
【0067】
したがって、第4の実施形態によれば以下に示す効果を得ることができる。
(9)圧接リング32の内縁部における下面32aには膨出部61が形成されるとともに、第1掛止片12cの上面には、膨出部61と当接可能な当接凸部62が形成されている。そして、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態(例えば、保管時)において、膨出部61は当接凸部62の先端に当接している。よって、この膨出部61と当接凸部62との当接により、シール体18が、圧接リング32の下面32aと当接して圧縮された状態以上に圧縮されないように、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間の間隔が所定の間隔に維持されている。したがって、シール体18が、圧接リング32の下面32aと当接して圧縮された状態以上に圧縮されることなく、シール体18を、インサート本体11に一体化して組み付けることができる。その結果、インサート10の保管時等において、インサート本体11に一体に組み付けられたシール体18が不必要に変形してしまうことを抑制することができる。
【0068】
(10)膨出部61の内周面はインサート本体11の外周面に接している。よって、膨出部61の内周面とインサート本体11の外周面との間からコンクリートノロが漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【0069】
(11)第4の実施形態では、圧接リング32の下面32aによりシール体18を圧縮させてシール体18をデッキプレートD上面に圧接させつつ、膨出部61の下面をデッキプレートD上面に当接させて、当接凸部62と膨出部61との間にデッキプレートDを挟持して、インサート10をデッキプレートDに固定した。よって、膨出部61がデッキプレートD上面に当接するため、膨出部61とデッキプレートDとの間にシール体18が介在されておらず、デッキプレートDが圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとによって直接挟持される箇所を形成することができる。その結果、圧接リング32の下面32aに膨出部61が形成されておらず、圧接リング32の下面32a全体にシール体18が配設されており、圧接リング32がデッキプレートDに対して当接していない場合に比べて、インサート10をデッキプレートDに対して強固に固定することができる。
【0070】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態において、フランジ部15の上面と圧接リング32の下面32aとを、挟み部材により圧接リング32の径方向に対向する位置で挟み込む。このようにして、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間の間隔を挟み部材により所定の間隔に維持してもよい。この場合、挟み部材が維持手段として機能する。
【0071】
○ シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で挟持される前の状態において、コイルスプリング31の付勢力に抗して圧接リング32を上方に押し上げる押圧部材を、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に介在させてもよい。この場合、押圧部材は、圧接リング32を上方に押し上げることで、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12cとの間の間隔を所定の間隔に維持する維持手段として機能する。
【0072】
○ 第4の実施形態において、圧接リング32の下面32aに膨出部61を形成しなくてもよい。この場合、第1掛止片12cの当接凸部62が圧接リング32の下面32aに当接して、圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間が所定の間隔に維持されるようにする。また、当接凸部62が圧接リング32の下面32aに当接したときの圧接リング32の下面32aと第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面との間の間隔が、シール体18が圧縮される前の厚み以上になるようにしてもよい。
【0073】
○ 第4の実施形態において、当接凸部62はシール体18の内側に位置するようになっていたが、これに限らず、例えば、当接凸部として、シール体18を貫通可能な突刺体を第1掛止片12cの上面に形成して、突刺体をシール体18に貫通させてその先端を圧接リング32の下面32aに当接させるようにしてもよい。
【0074】
○ 第4の実施形態において、当接凸部62を削除するとともに、第1掛止片12cの上面における外周側縁部に、圧接リング32の下面32aに当接可能な円環状の当接凸部を形成してもよい。この場合、シール体18を、当接凸部よりも内側に形成される空間に収納可能な大きさにする必要がある。
【0075】
○ 第4の実施形態では、当接凸部62の先端がデッキプレートDの下面に当接するとともに、膨出部61の下面がデッキプレートDの上面に当接するようになっていたが、これに限らず、当接凸部62及び膨出部61が貫通孔Dc内に入り込むようになっていてもよい。この場合、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面がデッキプレートDの下面に当接する必要がある。
【0076】
○ 第1〜第3の実施形態において、シール体18が圧接リング32の下面32aとデッキプレートD上面との間で圧縮されている状態において、シール体18の内周面が全周に亘ってインサート本体11の外周面に密接しておらず、シール体18の内周面とインサート本体11の外周面との間に隙間が形成されていてもよい。
【0077】
○ 第1の実施形態において、インサート本体11の外周面に支持部21を周方向に所定の間隔をおいて1つ又は3つ以上設けてもよい。また、例えば、インサート本体11の外周面に沿って延びる平面視円弧状の支持部をインサート本体11の外周面に1つ設けてもよい。この場合、圧接リング32の内縁部に平面視円弧状の支持部が通過可能な形状の凹部を形成する必要がある。
【0078】
○ 第1の実施形態において、支持部21は、インサート本体11に一体的に突設されていたが、これに限らず、インサート本体11と別体に形成された支持部をインサート本体11に取り付けるようにしてもよい。
【0079】
○ 第1の実施形態では、インサート本体11の下部側を貫通孔Dcに挿通して、第1掛止片12c及び第2掛止片12dの上面がデッキプレートD下面の貫通孔Dc周りに掛止された後に、圧接リング32における一対の支持部21により支持された状態を解除したが、これに限らない。例えば、インサート本体11の下部側を貫通孔Dcに挿通する直前に、圧接リング32における一対の支持部21により支持された状態を解除してもよい。
【0080】
○ 第1の実施形態では、シール体18が、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間に配設された状態で、圧接リング32を支持部21上に支持させたが、これに限らない。例えば、圧接リング32を支持部21上に支持した後に、圧接リング32と第1掛止片12c及び第2掛止片12dとの間にシール体18を配設するようにしてもよい。
【0081】
○ 上記各実施形態において、インサート本体11の下部側に第2掛止片12dを設けたが、これに限らず、第2掛止片12dを削除してもよい。
○ 上記各実施形態において、コイルスプリング31と圧接リング32とはそれぞれ別体であったが、これに限らず、例えば、コイルスプリング31の他端に圧接リング32が一体的に設けられていてもよい。
【0082】
○ 上記各実施形態において、第1掛止片12cはインサート本体11内に向けて没入するようになっていたが、これに限らず、例えば、第1掛止片12cはインサート本体11内に完全に没入せずに、インサート本体11内に向けて傾動して貫通孔Dcを通過可能とするものであってもよい。
【0083】
○ 上記各実施形態において、第1掛止片12cはインサート本体11内に向けて没入するようになっていたが、これに限らず、例えば、第1掛止片12cを薄板状に形成するとともに、下端縁のみをインサート本体11の外周面に連結し、第1掛止片12cをインサート本体11の外周面よりも外側で傾動可能な構成にしてもよい。
【0084】
○ 上記各実施形態において、第1掛止片12cは、下端縁を傾動中心として傾動可能に形成されていなくてもよく、単に、本体部12の径方向へ膨出するように形成されていてもよい。この場合、インサート本体11の下部側を貫通孔Dcに挿通させる際には、本体部12を強制的に径方向内側へ撓ませることで、第1掛止片12cを貫通孔Dcに対して通過させるようにする。
【0085】
○ 上記各実施形態において、本体部12における第1掛止片12cよりも下部側の部位を削除してもよい。この場合、第1掛止片12cの上端を本体部12に連結するようにする。これによれば、本体部12における上下方向に沿う長さを、実施形態の本体部12における上下方向に沿う長さよりも短くすることができ、インサート10自体を小型化することができる。
【0086】
○ 上記各実施形態において、掛止部として、本体部12の下から上に向かうにつれて、本体部12における外周面からの突出量が徐々に多くなるように形成される第1掛止片12c及び第2掛止片12dを設けたが、これに限らず、掛止部の形状は特に限定されるものではない。
【0087】
○ 上記各実施形態において、本体部12は、大径部12a及び小径部12bを有し、上下方向に外径が異なる構成であったが、これに限らず、本体部12の外径は上下方向に沿って同一径であってもよい。また、本体部12は、ヘッダー部13側の部位が小径部12bよりも小径をなしていてもよい。
【0088】
○ 上記各実施形態において、インサート本体11は円筒状に形成されていたが、これに限らず、例えば四角筒状であってもよい。この場合、シール体18は四角状の孔を有するとともに環状に形成されている必要がある。そして、シール体18の内縁によって囲まれた空間形状は、シール体18の圧縮位置でのインサート本体11における上下方向と直交する幅方向の断面形状よりも小さくする。これにより、シール体18の内面全体を、インサート本体11を取り囲む囲繞方向に沿って間断なくインサート本体11の外面に密接させることができる。なお、インサート本体11の形状、及びシール体の孔の形状は特に限定されるものではない。
【0089】
○ 上記各実施形態において、シール体18は円環状であったが、これに限らず、例えば、四角環状や六角環状であってもよく、シール体18の形状は特に限定されるものではない。
【0090】
○ 上記各実施形態において、シール体18は、多孔質の合成樹脂材料によって形成されていたが、これに限らず、例えば、ゴム材料によって形成されていたり、スポンジによって形成されていたりしてもよい。
【0091】
○ 本発明を、コンクリートスラブから吊ボルトBを吊り下げるために用いられるインサート10に具体化したが、これに限らず、例えば、配線・配管材を支持する被吊下体を吊り下げるために用いられるデッキプレート用取着体や、吊ボルトB又は配線・配管材を支持する被吊下体が予め一体化されたデッキプレート用取着体に具体化してもよい。
【0092】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記掛止部は、前記貫通孔の内面に摺接する際には前記本体内に向けて傾動するとともに、前記貫通孔通過後には原形状へ復帰するように傾動可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のデッキプレート用取着体。
【0093】
(ロ)前記掛止部は、前記本体に一体形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6、及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載のデッキプレート用取着体。
【符号の説明】
【0094】
B…吊ボルト、D…デッキプレート、Dc…貫通孔、T…コンクリートスラブ、10…デッキプレート用取着体としてのインサート、11…本体としてのインサート本体、12c…掛止部としての第1掛止片、12d…掛止部としての第2掛止片、18…シール体、21…維持手段としての支持部、31…付勢部としてのコイルスプリング、32…挟持部としての圧接リング、32a…圧接面として機能する下面、41…維持手段としての引上具、51…維持手段としての支持具、61…維持手段としての膨出部、62…維持手段としての当接凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートに穿設された貫通孔を利用して前記デッキプレートに固定されるとともにコンクリートスラブに埋設され、前記コンクリートスラブから吊ボルト又は配線・配管材を支持する被吊下体を吊り下げるために用いられるデッキプレート用取着体であって、
本体の下部側は前記貫通孔を貫通可能に形成されるとともに、前記本体の下部側には、前記デッキプレート下面の前記貫通孔周りに掛止される掛止部が設けられ、前記本体における前記掛止部よりも上側の外面周りには付勢部が設けられるとともに、前記付勢部により前記掛止部に向けて付勢されて前記掛止部と共に前記デッキプレートを挟持する挟持部が設けられ、
前記掛止部と前記挟持部とにより前記デッキプレートを挟持した際に、前記挟持部の圧接面と前記デッキプレート上面との間に配設されるとともに厚み方向に圧縮可能な環状のシール体が前記本体に外装されており、
さらに、前記付勢部の付勢力に抗して前記圧接面と前記掛止部との間隔を所定の間隔に維持する維持手段を備え、前記維持手段により前記所定の間隔に維持された前記挟持部と前記掛止部との間に前記シール体が配設されていることを特徴とするデッキプレート用取着体。
【請求項2】
前記維持手段は、前記本体の外面から突設される支持部であるとともに、前記挟持部が前記支持部上に支持されることを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート用取着体。
【請求項3】
前記維持手段は、前記挟持部を前記掛止部から離間する方向へ引き上げる引上具であることを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート用取着体。
【請求項4】
前記維持手段は、前記掛止部の上面から突設される当接凸部より形成され、前記挟持部が前記当接凸部に当接されることを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート用取着体。
【請求項5】
前記所定の間隔は、前記シール体が厚み方向に圧縮される前の厚み以上になっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のデッキプレート用取着体。
【請求項6】
前記シール体が前記挟持部の前記圧接面と前記デッキプレート上面との間で圧縮された圧縮位置では、前記シール体の前記本体に対する接触部位が、前記シール体が前記本体を取り囲む囲繞方向に沿って間断なく密接することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のデッキプレート用取着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231565(P2011−231565A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104758(P2010−104758)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】