説明

デフェンシンタンパク質

本発明は、本明細書においてタンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして同定された、INSP108およびINSP109と称される新規タンパク質、ならびに疾患の診断、予防および治療におけるこれらのタンパク質およびコードしている遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書において分泌タンパク質、特にタンパク質のデフェンシンファミリーのメンバーとして同定された、INSP108およびINSP109と称される新規タンパク質、ならびに疾患の診断、予防および治療におけるこれらのタンパク質およびコードしている遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により完全に本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
(背景)
薬剤の発見プロセスにおいて、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えるのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力および精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼性をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関および企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究および薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子およびそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
(緒言)
[分泌タンパク質]
タンパク質を生成しかつ細胞外へ分泌する細胞の能力は、多くの生物学的プロセスの中心である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質およびシグナル伝達分子は全て、細胞により分泌される。これは、分泌小胞の細胞膜との融合を介する。全てではないがほとんどの場合において、タンパク質は、小胞体に向かい、シグナルペプチドにより分泌小胞へ入る。シグナルペプチドは、細胞質から分泌小胞のような膜結合したコンパートメントへのポリペプチド鎖の輸送に影響を及ぼすcis-作用配列である。分泌小胞を標的としたポリペプチドは、細胞外マトリックスに分泌されるか、または細胞膜に保持されるかのいずれかである。細胞膜に保持されたポリペプチドは、1個または2個以上の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能において重要な役割を果たす分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着分子)、プロテアーゼならびに増殖因子および分化因子である。これらのタンパク質の特性の一部を以下に説明する。
【0004】
[デフェンシン]
デフェンシンは、外来病原体の侵襲に対し作用する体の先天性免疫機構の一部を形成している。哺乳類のデフェンシンは、ジスルフィド結合のパターンを基に、α、βおよびθの3つの範疇に分類される。INSP108およびINSP109は、β範疇に含まれる。これらのタンパク質は、カチオン性であり、アルギニン-リッチであり、一次構造は異なるにも関わらず典型的三次構造を共有している。これらは、ループにより連結された3個の逆平行β-シートおよび疎水性特性は直交し突出しているβ-ヘアピンからなる。
これらのタンパク質は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌から、マイコバクテリア、真菌さらにはエンベロープを有するウイルスまでの範囲に広がる活性の広範なスペクトルを有することが示されている。これらは、微生物のリン脂質が豊富な負帯電した細胞膜に結合し、崩壊を引き起こすが、正確な作用様式は未だ決定されていない。高濃度は、哺乳類細胞にとって有毒であるが、比較的低い濃度は、上皮細胞および線維芽細胞の成長を促進することが示されており、従って創傷治癒における役割を示唆している。デフェンシンは、単球、多形核白血球およびT-細胞について走化性であることも示されている。In vitroにおいてデフェンシンは、大腸菌、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、腸チフス菌(Salmonella typhimurium)およびカンジダアルビカンスに対して活性があることが示されている。
従ってこれらのタンパク質の知識の増加は、前述の病態および関連する病態につながる基礎となる経路の理解の増加、ならびにこれらの疾患を治療するためのより効果的な遺伝子療法および/または薬物療法の開発において極めて重要である。
【0005】
[本発明]
本発明は、INSP108およびINSP109ポリペプチドがデフェンシンであるという発見を基にしている。
本発明の第一の特徴のひとつの態様において:
(i)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、および/または配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
であるポリペプチドが提供される。
好ましくは、本発明の第一の特徴のポリペプチドは:
(i)配列番号:6および/または配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
である。
本発明のこの第一の特徴の第二の態様に従い:
(i)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6および/または配列番号:8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
が提供される。
【0006】
配列番号:2に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP108エクソン1ポリペプチド”と称する。配列番号:4に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP108エクソン2ポリペプチド”と称する。配列番号:6に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP108ポリペプチド”と称する。
本出願人はこの理論に結びつけられることを欲するものではないが、INSP108ポリペプチドの最初の24個のアミノ酸はシグナルペプチドを形成することが仮定されている。この仮定されたシグナル配列を伴わない完全長INSP108ポリペプチド配列は、配列番号:8と称される。
配列番号:8と記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP108成熟ポリペプチド”と称する。
本明細書において使用される用語“INSP108ポリペプチド”は、INSP108エクソン1ポリペプチド、INSP108エクソン2ポリペプチド、INSP108ポリペプチドおよびINSP108成熟ポリペプチドで構成されるポリペプチドを含む。
【0007】
本発明の第一の特徴の第三の態様において:
(i)配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14および/または配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
が提供される。
好ましくは本発明のこの第一の特徴のポリペプチドは:
(i)配列番号:14および/または配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
である。
本発明のこの第一の特徴の第四の態様に従い:
(i)配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14および/または配列番号:16に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物;
が提供される。
【0008】
配列番号:10に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP109エクソン1ポリペプチド”と称される。配列番号:12に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP109エクソン2ポリペプチド”と称される。配列番号:14に記載の配列を有するポリペプチドは、以後“INSP109ポリペプチド”と称される。
本出願人は、この理論に結びつけられることを欲するものではないが、INSP109ポリペプチドの最初の21個のアミノ酸はシグナルペプチドを形成することが仮定されている。この仮定されたシグナル配列を伴わない完全長INSP109ポリペプチド配列は、配列番号:16と称される。
配列番号:16と記載された配列を有するポリペプチドは、以後“INSP109成熟ポリペプチド”と称する。
本明細書において使用される用語“INSP109ポリペプチド”は、INSP109エクソン1ポリペプチド、INSP109エクソン2ポリペプチド、INSP109ポリペプチドおよびINSP109成熟ポリペプチドで構成されるポリペプチドを含む。
【0009】
本発明者らは、“デフェンシンファミリーのメンバーとしての機能”は、デフェンシンファミリーのポリペプチド内で保存された特徴として同定され得るアミノ酸配列または構造の特徴を含むポリペプチドを意味することとし、その結果受容体またはリガンドとのこのポリペプチドの相互作用は、完全長野生型ポリペプチドの機能と比べ、実質的に損なわれる影響を受けない。特に本発明者らは、ドメイン内ジスルフィド結合の形成を可能にするポリペプチド内の特定の位置のシステイン残基の存在に言及している。デフェンシンとして機能する能力は、Nizetら(Nature 2001, 414:454-457)およびColeら(Proc. Natl. Acad. Sci. 2002, 99(4):1813-1818)の論文に記載されたアッセイを用いて測定することができる。
【0010】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
好ましくは、精製核酸分子は、配列番号:1(INSP108エクソン1ポリペプチドをコードしている)、配列番号:3(INSP108エクソン2ポリペプチドをコードしている)、配列番号:5(INSP108ポリペプチドをコードしている)、配列番号:7(INSP108成熟ポリペプチドをコードしている)、配列番号:9(INSP109エクソン1ポリペプチドをコードしている)、配列番号:11(INSP109エクソン2ポリペプチドをコードしている)、配列番号:13(INSP109ポリペプチドをコードしている)および/または配列番号:15(INSP109成熟ポリペプチドをコードしている)に記載された核酸配列を含むか、またはこれらの配列のいずれかひとつの余剰的等価物もしくはフラグメントである。
本発明はさらに、精製核酸分子が、配列番号:1(INSP108エクソン1ポリペプチドをコードしている)、配列番号:3(INSP108エクソン2ポリペプチドをコードしている)、配列番号:5(INSP108ポリペプチドをコードしている)、配列番号:7(INSP108成熟ポリペプチドをコードしている)、配列番号:9(INSP109エクソン1ポリペプチドをコードしている)、配列番号:11(INSP109エクソン2ポリペプチドをコードしている)、配列番号:13(INSP109ポリペプチドをコードしている)および/または配列番号:15(INSP109成熟ポリペプチドをコードしている)に記載された核酸配列からなるか、またはこれらの配列のいずれかひとつの余剰的等価物もしくはフラグメントであることを提供している。
【0011】
第三の特徴では、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で本発明の第二の特徴の核酸分子とハイブリダイズする精製核酸分子を提供する。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二または第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のデフェンシンファミリーのタンパク質のメンバーに特異的に結合するリガンドを提供する。好ましくは、リガンドは、タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーである本発明の第一の特徴のポリペプチドの機能を阻害する。本発明のポリペプチドへのリガンドは、成熟したまたは改変された基質、酵素、受容体、最大2000Da、好ましくは800Daまたはそれ未満である小型の天然もしくは合成の有機分子のような、小型有機分子、ペプチド模倣物、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述のものの構造的または機能的模倣物を含む、様々な形であってよい。
【0012】
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するのに有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベルまたは活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、または低下させ得る(アンタゴニスト作用)。
重要なことに、INSP108およびINSP109ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療および/または診断に有効な化合物を同定することが可能であるスクリーニング方法のデザインが可能になる。本発明の第六および第七の特徴のリガンドおよび化合物は、このような方法を用い同定されても良い。これらの方法は、本発明の特徴に含まれる。
【0013】
第八の特徴において、本発明は、デフェンシンファミリーのメンバーが関与している疾患の治療または診断における使用のための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または第五の特徴の本発明の宿主細胞、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を提供する。このような疾患は、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部および頚部ならびに他の固形腫瘍を含む、細胞増殖障害;白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫のような、骨髄増殖性障害;アレルギー、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬および気道炎症、喘息、および臓器移植拒絶反応を含む、自己免疫/炎症障害;高血圧、浮腫、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック状態、再潅流損傷、および虚血を含む、心臓血管系障害;中枢神経系障害、アルツハイマー病、脳外傷、筋萎縮性側索硬化症、および疼痛を含む、神経障害;発達障害;糖尿病、骨粗鬆症、および肥満、AIDSおよび腎疾患を含む、代謝障害;ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生体感染症を含む感染症、ならびに他の病態を含むことができる。好ましくは、この疾患は、タンパク質のデフェンシンファミリーが関与するものであり、致死的でない内毒素血症、敗血症ショック、羊膜腔の微生物感染症、回帰熱のJarish-Herxheimer反応、中枢神経系の感染性疾患、急性膵炎、潰瘍性大腸炎、膿胸、溶血性尿毒症症候群、髄膜炎菌症、胃感染症、百日咳、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、敗血症、喘息、HIV、AIDSおよび糸球体腎炎である。これらの分子は、このような疾患を治療するための医薬品の製造において使用することもできる。
【0014】
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルまたは本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を前記患者由来の組織で評価する工程、および前記発現レベルまたは活性をコントロールレベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示している。このような方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様の方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され、この場合、時間の経過にしたがってポリペプチドまたは核酸分子の発現もしくは活性レベルがコントロールレベルに向かって変化することは、疾患の退行を示している。
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド、例えば抗体と、生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程。
本発明の第九の特徴によると、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、および、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様の方法を短期または長期ベースで用い、患者においてモニターされる疾患の治療を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患の診断法に有用なキットも提供する。
【0015】
第十の特徴において、本発明は、デフェンシンタンパク質としての本発明の第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。本発明のポリペプチドのデフェンシンタンパク質としての適当な使用は、細胞増殖、代謝または分化のレギュレーターとしての使用、受容体/リガンド対の一部としての使用、ならびに前記リストから選択された生理的または病理的状態の診断マーカーとしての使用を含む。
第十一の特徴において、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第五の特徴の宿主細胞、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を、医薬として許容できる担体と組合せて含有する医薬組成物を提供する。
第十二の特徴において、本発明は、疾患の治療または診断のための医薬品の製造における使用のための、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第五の特徴の宿主細胞、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を提供する。これらの分子は、疾患の治療のための医薬品の製造において使用することもできる。
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、または本発明の第二もしくは第三の特徴の核酸分子、または本発明の第四の特徴のベクター、または本発明の第五の特徴の宿主細胞、または本発明の第六の特徴のリガンド、または本発明の第七の特徴の化合物を、患者に投与することを含む。
【0016】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現または活性レベルと比較したとき罹患した患者で低下する疾患については、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現、または前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現または活性レベルと比較したとき罹患した患者で上昇する疾患については、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物はアンタゴニストであるべきである。前記アンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイムおよびリガンド、例えば抗体が含まれる。
第十四番目の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをより高レベル、より低レベル、または非存在レベルで発現するように形質転換したトランスジェニックまたは非ヒト遺伝子ノックアウト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療または診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
【0017】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術および手法の要旨は、下記で提供される。本発明は、記載された特定の方法論、プロトコール、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチドおよびアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、リコンビナントDNA技術および免疫学の通常の技術が用いられ、前記技術は当業者の技術範囲内である。
【0018】
前記のような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II (D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);およびHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackウェル eds. 1986)。
【0019】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合または改変ペプチド結合、すなわちペプチドイソスターによって互いに結合した2個または3個以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。この用語は、短鎖(ペプチドおよびオリゴペプチド)および長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-またはプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-またはプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質であってもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-またはプレプロ-配列がリーダー配列もしくは分泌配列であっても、または成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1個または2個以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利であり、前記付加アミノ酸配列は、分泌配列もしくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、または例えばリコンビナント形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、または前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0020】
ポリペプチドは、翻訳後プロセッシングのような天然のプロセスによって、または当技術分野で周知の化学的改変技術によって改変された、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)およびユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合改変によるポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両端の閉塞(blockage)は、天然に存在するポリペプチドおよび合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
【0021】
ポリペプチド内に生じる改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の機能であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質および程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後改変能力および問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、または前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP108ポリペプチドまたはINSP109ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、2種のポリペプチドが、ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性または類似性を有する場合、“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性および類似性の度合いは、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。
【0022】
したがって、相同なポリペプチドには、INSP108ポリペプチドおよびINSP109ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種または地理的変種)および変異体(例えばアミノ酸置換、挿入または欠失を含む変異体)が含まれる。このような変異体は、1個または2個以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにこのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;または芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつかの、すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、または単に1つのアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性および活性を変化させないサイレント置換、付加および欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。前記変異体には、1つまたは2つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0023】
典型的には、2つのポリペプチド間で30%を越える同一性が、機能的等価物の指標であると考えられる。好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP108ポリペプチドまたはINSP109ポリペプチド、またはそれらの活性フラグメントと、80%を超える配列同一性の度合いを有する。より好ましいポリペプチドは、それぞれ85%、90%、95%、98%または99%を越える同一性の度合いを有する。
本発明の第一の特徴の機能的に等価のポリペプチドは、構造についてのアラインメントの1つまたは2以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム(Biopendium)(商標)検索データベースを作成するために使用される検索道具のひとつであるインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(PCT出願WO 01/69507を参照されたい)、INSP108およびINSP109ポリペプチド配列と顕著な構造相同性を共有することに基づき、INSP108およびINSP109ポリペプチドと比較して低い配列同一性しか持たないが、デフェンシンファミリーのメンバーであると推定される、現在未知の機能のポリペプチドを同定することができる。"顕著な構造相同性"とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダーが、ふたつのタンパク質は、10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP108またはINSP109ポリペプチドのフラグメントおよびINSP108またはINSP109ポリペプチドの機能的等価物のフラグメントを含むが、ただしこれらフラグメントがデフェンシンファミリーのメンバーであるかまたはINSP108もしくはINSP109ポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
【0024】
本明細書において用いる、“フラグメント”という用語は、INSP108またはINSP109ポリペプチドまたはその機能的等価物の1つのアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記フラグメントは、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20またはそれより大きい)。小さなフラグメントは、抗原決定基を構成することができる。
完全長INSP108およびINSP109ポリペプチドのフラグメントは、各々、INSP108またはINSP109ポリペプチド配列の、1つまたは2つの隣接エクソン配列の組合せからなることができる。例えば、このような組合せは、INSP108ポリペプチドのエクソン1および2を含む。このようなフラグメントは、本発明に含まれる。
そのようなフラグメントは、“独立的存在(free-standing)”、すなわち、他のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部でもなく、それらに融合されているのでもないものであってもよく、またはより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分または領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明のフラグメントは、最も好ましくは連続するただ1つの領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記フラグメントのアミノ末端に融合したプレ−および/もしくはプロ−ポリペプチド領域を有するフラグメント、ならびに/または前記フラグメントのカルボキシ末端に融合した付加的領域を有するフラグメントに関する。しかしながら、いくつかのフラグメントがただ1つのより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
【0025】
本発明のポリペプチドまたはその免疫原性フラグメント(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用い、例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用い、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離もしくは同定するか、またはアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的または治療的補助としても用いることができる。
“免疫特異的”という用語は、前記抗体が、先行技術における他の近縁ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2およびFvも指す。したがって、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
“実質的により大きい親和性”は、公知の分泌タンパク質に関する親和性と比較して、本発明のポリペプチドの親和性の測定可能な増加を意味する。
好ましくは、この親和性は、本発明のポリペプチドは、タンパク質のデフェンシンファミリーのメンバーのような公知の分泌タンパク質よりも、少なくとも1.5-倍、2-倍、5-倍、10-倍、100-倍、103-倍、104-倍、105-倍、106-倍またはそれよりも大きい。
【0026】
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類、例えばマウス、ウサギ、ヤギまたはウマが、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、リコンビナントDNA技術によって誘導されてもよく、または化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリンおよびキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法、例えばイムノアフィニティークロマトグラフィーにしたがって処理される。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に作製できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:Kohler G & Milstein C, Nature, 256:495-497(1975);Kozbor et al., Immunology Today, 4:72(1983);Cole et al., 77-96 “Monoclonal Antibodies and Cancer Treatment”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
【0027】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合または融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature, 321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988);Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989);Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991); Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸および選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。したがって、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、前記抗体が、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインは異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
【0028】
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、または未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990);J. Marks et al., Biotechnology, 10:779-783 (1992))。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991))。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子または酵素)で標識することができる。
本発明の第二および第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12、配列番号:14および、配列番号:16に記載のポリペプチド配列ならびに機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法および用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10またはそれより大きい(例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40またはそれより大きい)。
本発明の核酸分子は、上述の核酸分子に相補的な配列も含む(例えばアンチセンスまたはプローブとしての目的のために)。
【0029】
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、またはDNA(例えばcDNA、合成DNAまたはゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成技術によって、またはそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノムまたはcDNAライブラリーから、または生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitroまたはin vivo転写によって作製され得る。
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNAおよびRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、ならびにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子または抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含み、このペプチド骨格は好ましくはリジンで終わる。前記末端リジンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよく、細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNAおよびRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al., Anticancer Drug Des., 8:53-63 (1993))。
【0030】
本発明のポリペプチドをコードしている核酸分子は、本明細書に説明された核酸分子の1種または2種以上のコード配列と同じであって良い。
これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14または配列番号:16のポリペプチドをコードする配列と異なる配列を有することもある。
そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列および付加コード配列(例えばリーダー配列または分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-またはプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴って、または伴わないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’および3’配列を含む)を伴う成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されず、前記の非コード5’および3’配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合およびmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
【0031】
本発明の第二および第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチドおよびフラグメントの機能的等価物およびそれらのフラグメントもコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種、例えば天然に存在する対立形質変種であっても、または前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞または生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失または挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失または挿入には、1個または2個以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域または非コード領域またはその両方において変化していてもよい。コード領域における変化は、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失または挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシングおよび/または発現の改変が挙げられる。ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリングならびに遺伝子フラグメントおよび合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変化、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0032】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二または第三の特徴に包含される。例えば、このポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるようにデザインすることができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435 (1989);J. Okano, Neurochem., 56:560 (1991);J. O’ Connor, Neurochem., 56:560 (1991);Lee et al., Nucleic Acids Res., 6:3073 (1979);Cooney et al., Science, 241:456 (1988);Dervan et al., Science, 251:1360 (1991))。
【0033】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類および体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、またはBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストランまたはポリエチレングリコール);およびハイブリダイゼーションに続く洗浄条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。したがって、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, Methods Enzymol., 152:399-407 (1987);A.R. Kimmel, Methods Enzymol., 152:507-511 (1987))で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適したハイブリダイゼーション反応の条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗浄すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件は高ストリンジェンシー条件である。
【0034】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP108またはINSP109ポリペプチドをコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも70%同一である核酸分子、およびそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、そのようなコード配列の全長にわたって少なくとも80%同一の領域を含むかまたはこれらと相補的な核酸分子である。これに関しては、そのような核酸分子の全長にわたって少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、99%またはそれ以上同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP108またはINSP109ポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;および(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0035】
本発明に従って利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNAまたはゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP108またはINSP109ポリペプチドをコードする完全長cDNAおよびゲノムクローンを単離し、さらにこのポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子またはオーソログ遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で既知の他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができ、これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシングおよび解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、またはポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal サイクルr)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリストならびに373および377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0036】
INSP108ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブまたは人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds), Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、適切なコード遺伝子(配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15)に由来する核酸配列に対応するか、または前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。
前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、および検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類または他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNAまたはRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプおよび/またはサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0037】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5’末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、または短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーターおよび調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知の種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8998-9002 (1988))に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar, PCR Methods Applic., 2:318-322 (1993))。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅することまたは伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al., Nucleic Acids Res., 16:8186 (1988))。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒトおよび酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNAフラグメントのPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al., PCR Methods Applic., 1:111-119 (1991))。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、Parkerの方法である(J.D. Parker et al, Nucleic Acids Res., 19:3055-3060 (1991))。さらに、ゲノムDNAを少しずつ移動して調べるためにPCR、入れ子(nested)プライマーおよびプロモーターファインダー(PromoterFinder)(商標)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random-primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
【0038】
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニングまたは他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患または症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子または調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体または罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0039】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために貴重である。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術およびヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的または量的性質を有する場合もある。
遺伝子サイレンシング法を実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature, 411:494-498 (2001))は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少または阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、またはTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0040】
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクトまたは形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中のそれらのコード核酸分子の発現によって、リコンビナント形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)およびFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene expression systems. Using nature for the art of expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖または発現に適したいずれの系またはベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、および場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
【0041】
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系およびウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス、または上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミドおよびファージミドを含む)。プラスミドにおいて含まれ発現されるものよりも大きいDNAフラグメントをデリバリーするためには、ヒト人工染色体(HAC)も使用することができる。ベクターpCR4-TOPO-INSP108(図9)、pDONR-INSP108-6HIS(図13)、pEAK12d-INSP108-6HIS(図14)、pDEST12.2-INSP108-6HIS(図15)、pCR4-TOPO-INSP109(図19)、pDONR-INSP109-6HIS(図20)、pEAK12d-INSP109-6HIS(図21)およびpDEST12.2-INSP109-6HIS(図22)は、INSP108およびINSP109に関連する本発明の特徴に従う使用に適したベクターの好ましい例である。
特に適切な発現系には、リコンビナントバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
【0042】
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)および上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入または感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)または永続的(染色体組込み)であり得る。
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔または細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチドまたはリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、または含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、または異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
【0043】
制御配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的または物理的刺激(調節化合物の存在を含む)または多様な温度もしくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーターならびに5’および3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度および特異性を変化させることができる。利用されるベクター系および宿主に依存して、多くの適切な転写および翻訳エレメント(構成性および誘発性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘発性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)またはpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えばヒートショック、RUBISCOおよび貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルスに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えばウイルスプロモーターまたはリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来または哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40またはEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0044】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築され、前記コード配列の調節配列に関する位置および向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置および向きである(すなわち制御配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
制御配列および他の調節配列は、ベクターへの挿入の前に核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、制御配列および適切な制限部位を既に含む発現ベクターへ、コード配列を直接クローニングすることができる。
リコンビナントポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定して発現する細胞株は、ウイルスの複製起点および/または内因性発現エレメントならびに選択マーカー遺伝子を同じまたは別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1〜2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖および回収が可能になる。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0045】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれ、そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞およびヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞および他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
【0046】
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養および植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号および5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk, Phytochemistry, 30:3861-3863 (1991))。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって移入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実および他の樹木、マメ類および野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞または培養組織から再生させることができる。
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセスおよびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))およびアスペルギルス細胞が含まれる。
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al., Cell, 11:223-32 (1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al., Cell, 22:817-23 (1980))の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk-またはaprt±細胞で用いることができる。
【0047】
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性または除草剤耐性を選択基準として用いてもよく;例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 77:3567-70 (1980))、nptはアミノグリコシド系ネオマイシンおよびG-418に対する耐性を付与し(F. Colbere-Garapin et al., J. Mol. Biol., 150:1-14 (1981))、さらにalsまたはpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)およびホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在および発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、ただ1つのプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘発または選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
【0048】
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)またはイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸またはタンパク質の検出および/または定量のためにメンブレン、溶液またはチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;およびD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211−1216)。
多様な標識および結合技術が当業者に知られており、種々の核酸およびアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識またはPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3またはSP6)および標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI);Promega (Madison, WI);U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子または標識には、放射性核種、酵素および蛍光、化学発光または色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0049】
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物、特にげっ歯類動物の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、または遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレーターとして有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
ポリペプチドは、周知の方法によってリコンビナント細胞培養物から回収し精製することができ、これは、硫安またはエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離および/または精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
【0050】
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製促進ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263−281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al., DNA Cell Biol., 12:441-453 (1993))。
【0051】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合は、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の表面で前記ポリペプチドを生成させることが一般には好ましい。この場合、宿主細胞はスクリーニングアッセイで使用する前に、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)またはイムノアフィニティー技術のような技術を用いて収穫することができる。ポリペプチドが培養液中に分泌される場合は、前記培養液を回収して発現されたポリペプチドを回収および精製することができる。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベルまたは活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、または阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、または本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
【0052】
アゴニスト化合物またはアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリーまたは天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニストまたはアンタゴニストは、天然または改変された基質、リガンド、酵素、受容体、もしくは構造的もしくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘発しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害または消滅させる小型有機分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
【0053】
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、または細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞または細胞膜を用いることを含み、前記細胞または細胞膜を被験化合物と接触させて、結合または機能的応答の刺激もしくは阻害を観察する。続いて前記被験化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記被験化合物と接触させなかったコントロール細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルを被験化合物がもたらすか否かを、適切な検出系を用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイが行われ、被験化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
【0054】
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニスト化合物を同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の第一の特徴のポリペプチドをその表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルのレベルを測定することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するかまたは阻害するかを決定する工程。
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するさらに好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)前記ポリペプチドを細胞表面に発現している細胞を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で被験化合物と接触させる工程であって、前記ポリペプチドは、前記化合物とポリペプチドとの結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる第二の成分と結合されており;さらに
(b)前記化合物と前記ポリペプチドとの相互作用によって生じるシグナルレベルを前記化合物が存在しないときのシグナルレベルと比較することにより、前記化合物が前記ポリペプチドと結合しこれを活性化するかまたは抑制するかを決定する工程。
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、前記ポリペプチドに対する標識または非標識リガンドまたは受容体の存在下でアゴニストまたはアンタゴニストの同定を行う工程をさらに含み得る。
【0055】
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法の別の態様は、以下の工程を含む:
本発明のポリペプチドをその表面に有する細胞とリガンドまたは受容体との結合または前記のポリペプチドを含む細胞膜とリガンドまたは受容体との結合の抑制を、前記ポリペプチドとの結合を許容する条件下で候補化合物を存在させて決定する工程、および前記ポリペプチドに結合したリガンドの量を決定する工程。リガンドまたは受容体の結合の減少をひき起こし得る化合物は、アゴニストまたはアンタゴニストであると考えられる。好ましくは、前記リガンドは標識されている。
より詳しくは、アンタゴニストまたはアゴニスト化合物をポリペプチドについてスクリーニングする方法は以下の工程を含む:
(a)本発明のポリペプチドを細胞表面に発現している全細胞または本発明のポリペプチドを含む細胞膜と、標識リガンドまたは受容体とをインキュベートする工程;
(b)前記全細胞または細胞膜と結合した標識リガンドまたは受容体の量を測定する工程;
(c)工程(a)の標識リガンドまたは受容体および前記全細胞または細胞膜の混合物に候補化合物を添加し、前記混合物を平衡化させる工程;
(d)前記全細胞または細胞膜と結合した標識リガンドまたは受容体の量を工程(c)の後で測定する工程;さらに
(e)工程(b)および工程(d)で結合した標識リガンドまたは受容体の相違を比較する工程であって、それにより工程(d)の結合の減少を引き起こす化合物はアゴニストまたはアンタゴニストであると考える。
【0056】
INSP108およびINSP109ポリペプチドは、先に説明したアッセイにおいて、用量依存的様式で、免疫系細胞の増殖および分化を調節することもわかっている。従ってINSP108およびINSP109ポリペプチドの“機能的等価物”は、用量依存的様式で前述のアッセイにおいて同じ増殖および分化を調節する活性を示すポリペプチドを含む。用量依存的活性の程度はINSP108またはINSP109ポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいてINSP108またはINSP109ポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
上述のある態様では、単純な結合アッセイを用いてもよく、この場合、被験化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的または間接的に被験化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、または標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができ、この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合について被験化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切の被験化合物の存在を検出することができる。
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加被験化合物の影響を検出するアッセイをデザインすることもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベルまたは細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞または組織からのポリペプチド生成を阻害または増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被験化合物との結合複合体の形成を測定することができる。βデフェンシン抗菌アッセイは、Nizetら(Nature, 2001, 414:454-457)に説明されている。θデフェンシン抗菌および抗ウイルスアッセイは、Coleら(Proc. Natl. Acad. Sci., 2002, 99(4):1813-1818)に説明されている。
【0057】
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際特許出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型の被験化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
当技術分野で公知の標準的な受容体結合技術により膜結合受容体または可溶性受容体を同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ、前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイおよび架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、またはその検出もしくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上の受容体供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物または体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴および分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、受容体の精製およびクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとその受容体との結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0058】
本発明はまた、先に述べたアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質および酵素、ならびに前述の方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性または抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンドまたは化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記に詳細に説明するように、治療用もしくは診断用試薬として、ワクチンとして、または他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いられる専門用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンドまたは化合物[X]を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%または99質量%を構成する。
【0059】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンドまたは化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患または症状を治療、緩和もしくは予防するために、または検出可能な治療効果もしくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)または動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌまたはブタ)のいずれかで概算することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量および投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重および性別、食事、投与時間および投与回数、併用薬剤、反応感受性および治療に対する忍容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、または他の薬剤、医薬品またはホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0060】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体および他のポリペプチド、遺伝子ならびに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);および有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
【0061】
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
いったん製剤化されたならば、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト対象者が治療され得る。
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃またはハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液または懸濁剤のいずれか)として調製でき;注射に先立ち液体ビヒクルで溶液または懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
【0062】
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内に注射することによって達成されるか、または組織の間隙腔にデリバリーされるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも反復投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含み、前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、受容体の結合を遮断することによって、または第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストは抗体である。最も好ましくは、そのような抗体は、先に記載するような免疫原性を最少にするキメラ抗体および/またはヒト化抗体である。
別のアプローチでは、問題のリガンド、基質、酵素、受容体に対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持するフラグメントの形態で投与することができる。
【0063】
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成されるまたは別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5’領域または調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサーおよびイントロン)に対して相補的な配列またはアンチセンス分子(DNA、RNAまたはPNA)をデザインすることによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列またはアンチセンス分子をデザインし、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0064】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然または合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527−533)。合成リボザイムをデザインして、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格および天然の塩基を用いて合成され得る。あるいは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2'-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また改変塩基を含んでいてもよい。
RNA分子は、細胞内安定性および半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5'および/または3'末端へのフランキング配列の付加、または分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエートまたは2’-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成にも受け継がれ、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(queosine)およびブトシン(butosine)のような非慣用塩基、ならびにアセチル-、メチル-、チオ-および同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンの包含によってPNA分子の全てに広げられ得る。
本発明のポリペプチドおよびその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上述のアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
【0065】
遺伝子治療を用い、対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivoまたはex vivoで実施することができる。Ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離および精製、治療用遺伝子の導入、および遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離および精製を必要としない。
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、または、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルスもしくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97-129および米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現するように、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され、その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するためおよびin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic- based Therapeutic Approaches, Chapter 20(およびその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.Pread, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0066】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流または筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチドまたは核酸分子が疾患をひき起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患を引き起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチドまたは核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質または核酸を、通常は上述の医薬的に許容できる担体と組合せて含み、前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原または免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)および他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内または皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでいてもよい水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁剤または増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁剤が含まれる。
本発明のワクチン製剤は、単位用量または複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプルおよびバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、日常的な検査によって容易に決定することができる。
【0067】
本発明のポリペプチドに結合する抗体の遺伝子デリバリーも同じく、例えば、国際特許出願WO 98/55607に開示されたように作用することができる。
射出注入(jet injection)と称される技術(例えば、www.powderject.com参照)も、ワクチン組成物の製剤において有用である。
予防接種およびワクチンデリバリーシステムに関する多くの適当な方法は、国際特許出願WO 00/29428に開示されている。
本発明はまた、診断薬としての本発明の核酸分子の使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現または位置的もしくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、またはそのような疾患に対する感受性の診断を規定するかまたはそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検または剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、またはPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)もしくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163-166 (1986);Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301-334 (1991);Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117-126(1991);Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291-294(1990))。
【0068】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、および前記発現レベルをコントロールのレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供し、この場合、前記コントロールレベルと異なるレベルは疾患を示唆する。前記方法は:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、コントロールサンプルを前記プローブと接触させる工程;および、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、この場合、コントロールサンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患を示唆する。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;および、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
【0069】
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失および挿入が検出される。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、または溶融温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、および、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
【0070】
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異および他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシングまたは一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874-879 (1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物または改変PCRによって作製された一本鎖鋳型分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、または蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。この方法の感度は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異および他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上記のように検出することができる。
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下または非存在下でのゲル内のDNAフラグメントの電気泳動移動度における変化によって、または直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNaseおよびS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、または化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
【0071】
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動およびDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA (1993))。すなわち、細胞内のDNAまたはRNA配列は、それらを単離および/またはメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);およびTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異および多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖および遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996) , Vol 274, pp610-613)。
【0072】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法にしたがって調製され使用される(PCT出願WO 95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al., Nat. Biotech., 14:1675-1680 (1996);M. Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619 (1996))。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロンまたは他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライドもしくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO 95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法およびインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(またはスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的または化学的結合方法を用いて基質表面にcDNAフラグメントまたはオリゴヌクレオチドを配置することおよび連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、または利用可能な装置(スロットブロットまたはドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)および機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536または6144個のオリゴヌクレオチド、または2個から100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0073】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチドまたはmRNAの異常な増加または低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下または発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法および他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;および(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA(先述したような)、RIAおよびFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコールは、ポリペプチド発現の変化レベルまたは異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値または標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液または細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0074】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる状態または疾患の診断のために、または本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンドおよび他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上述のものと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体および標識を用いてヒトの体液または細胞もしくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、または改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合または非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で公知の多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、コントロールおよび疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無および過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験または個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0075】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;または
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットが、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;および、疾患の診断を容易にするために前記プローブおよびプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1種または2種以上の抗体;および、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0076】
このようなキットは、デフェンシンファミリーのメンバーが関与している疾患または易罹患性の診断において使用されるであろう。このような疾患は、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部および頚部ならびに他の固形腫瘍を含む、細胞増殖障害;白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫のような、骨髄増殖性障害;アレルギー、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬および気道炎症、喘息、および臓器移植拒絶反応を含む、自己免疫/炎症障害;高血圧、浮腫、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック状態、再潅流損傷、および虚血を含む、心臓血管系障害;中枢神経系障害、アルツハイマー病、脳外傷、筋萎縮性側索硬化症、および疼痛を含む、神経障害;発達障害;糖尿病、骨粗鬆症、および肥満、AIDSおよび腎疾患を含む、代謝障害;ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生体感染症を含む感染症、ならびに他の病態を含む。好ましくは、本疾患は、致死的でない内毒素血症、敗血症ショック、羊膜腔の微生物感染症、回帰熱のJarish-Herxheimer反応、中枢神経系の感染性疾患、急性膵炎、潰瘍性大腸炎、膿胸、溶血性尿毒症症候群、髄膜炎菌症、胃感染症、百日咳、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、敗血症、喘息、HIV、AIDSおよび糸球体腎炎などのように、デフェンシンファミリーのメンバーが関与しているものである。
本発明の種々の特徴および態様は、特にINSP108およびINSP109ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0077】
(実施例)
実施例1:INSP108
配列番号:6で示されたINSP108ポリペプチド配列を、NCBI非-余剰的配列データベースに対するBLASTクエリーとして使用した。トップヒットは、デフェンシンとアノテーションされたヒト遺伝子であった(図1)。INSP108はこの配列と、有意性であるE-値(4e-6)で並置し(図2)、その結果この予測には高度の信頼性があることを示した。
実施例2:INSP108シグナル配列
図3は、INSP108は、このタンパク質の出発点にシグナルペプチドを有すると予測されることを示している。図3のSigPデータが明確に示すように、シグナルペプチド切断部位は、INSP108ポリペプチド配列の残基24と25の間にあると考えられる(Nielsen, H. et al, 1997, Protein Engineering, 10, 1-6; Nielsen, H., and Krogh, A.: Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model. In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB 6), AAAI Press, Menlo Park, California, pp. 122-130 (1998))。
【0078】
実施例3:INSP109
配列番号:14に示されたINSP109ポリペプチド配列を、NCBI非-余剰的配列データベースに対するBLASTクエリーとして使用した。トップヒットは、アノテーションされないマウス遺伝子予測であり、第二のヒットは、マウスデフェンシンβ(NP_062702.1)であった(図4)。図5は、マウスデフェンシンβ4と並置したINSP109ポリペプチドを示す。
実施例4:INSP109シグナル配列
図6は、INSP109は、タンパク質の開始部にシグナルペプチドを有すると予測されることを示す。図6のSigPデータが明確に示すように、このシグナルペプチド切断部位は、INSP109ポリペプチド配列の残基21と22の間であると考えられる(Nielsen, H. et al. 1997, Protein Engineering, 10, 1-6; Nielsen, H., and Krogh, A.: Prediction of signal peptides and signal anchors by a hidden Markov model. In Proceedings of the Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology (ISMB 6), AAAI Press, Menlo Park, California, pp. 122-130 (1998))。
【0079】
実施例5:INSP108のクローニング
1.1 ヒトcDNA鋳型の調製
第一鎖cDNAは、Superscript II RNase H- Reverse Transcriptase (Invitrogen)を製造元のプロトコールに従い使用し、様々な正常ヒト組織総RNAサンプル(Clontech, Stratagene, Ambion, Biochain Instituteおよび研究室内調製物)から調製した。オリゴ(dT)15プライマー(1μL、500μg/ml)(Promega)、2μgヒト総RNA、1μL 10mM dNTP混合物(中性pHでdATP、dGTP、dCTPおよびdTTPが各10mM)および滅菌蒸留水で最終容量12μLとしたものを、1.5mlのエッペンドルフチューブ内で一緒にし、65℃で5分間加熱し、その後氷冷した。これらの内容物を、短期間の遠心分離により収集し、5X第一鎖緩衝液4μL、0.1M DTT 2μL、およびRnaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40ユニット/μL, Invitrogen)1μLを添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし;その後、SuperScript II酵素1μL(200ユニット)を添加し、ピペッティングにより穏やかに混合した。混合物を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱し失活した。このcDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen)1μL(2ユニット)を添加し、この反応混合物を、37℃で20分間インキュベーションした。最終の21μL反応混合物を、179μL滅菌水を添加することにより希釈し、総容量200μLとした。INSP108の増幅のための鋳型として使用したヒトcDNAサンプルは、脳、腎臓、肝臓、肺、胎盤、骨格筋、小腸、脾臓、甲状腺、結腸、精巣、皮膚、膵臓、下垂体、唾液腺、副腎、眼、および癌細胞株サンプルの混合物(Universal Reference RNAサンプル、Stratagene)に由来する。
【0080】
1.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
18〜25塩基長を有するPCRプライマー対を、仮想cDNAの完全なコード配列を増幅するために、Primer Designer Software (Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を使用し、デザインした。PCRプライマーを、55±10℃に近いTmおよびGC含量40〜60%を有するように最適化した。ほとんどまたは全く特異的プライミングを伴わない、標的配列(INSP108)について高い選択性を有するプライマーを選択した。
【0081】
1.3 様々なヒトcDNA鋳型からのINSP108のPCR増幅
遺伝子-特異的クローニングプライマー(INSP108-CP1およびINSP108-CP2、図7、図8および表1)を、INSP108の全体で231bpのコード予測配列に及ぶ245bpのcDNAフラグメントを増幅するようにデザインした。科学文献の解析は、β-デフェンシンタンパク質は、粘膜表面上におよび分泌器官により発現される事を示唆した。従って遺伝子-特異的クローニングプライマーINSP108-CP1およびINSP108-CP2を、1.1項においてPCR鋳型として列記されたヒトcDNAサンプルと共に使用した。PCR反応は、1X Platinum(登録商標)Taq High Fidelity PCR緩衝液、2mM MgSO4、200μMの各dNTP、0.2μMの各クローニングプライマー、2.5ユニットPlatinum(登録商標)Taq DNA High Fidelity(Invitrogen)DNAポリメラーゼおよび100ngのヒトcDNA鋳型を含む最終容量50μLで、下記のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを用い行った:94℃で2分間;94℃で30秒、55℃で30秒、68℃で30秒を40サイクル、それに続く68℃7分間を1サイクルおよび4℃の保持サイクル。
【0082】
各増幅産物のアリコート5μLを、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、ひとつのPCR産物が、精巣cDNAに対応するサンプル中のほぼ予測された分子量で移動することを認めた。精巣増幅の残りのPCR産物は、第二の0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、Qiagen MinElute DNA精製システム(Qiagen)を用い精製した。PCR産物は、EB緩衝液(10mM Tris.Cl, pH8.5)10μLで溶離し、その後直接サブクローニングした。
【0083】
1.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物を、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4 TOPO)へ、Invitrogen Corporationから購入したTAクローニングキットを製造元に指定された条件で用い、サブクローニングした。簡単に述べると、ヒト精巣cDNA増幅由来のゲル精製したPCR産物4μLを、TOPOベクター1μLおよび塩溶液1μLと共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを、氷上で解凍し、TOPO反応液2μLを添加した。混合液を、氷上で15分間インキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることにより、ヒートショックした。サンプルを氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μLを添加した。サンプルを、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。続いて形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレートに播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0084】
1.5 コロニーPCR
滅菌爪楊枝を用い、コロニーを、滅菌水50μL中に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、1X AmpliTaq(商標)緩衝液、200μMの各dNTP、20ピコモルT7プライマー、20ピコモルT3プライマー、1ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)を含有する、全反応溶液20μLで、MJ Research DNA Engineを用いPCRを行った。サイクリング条件は以下の通りであった:94℃で2分間;94℃で30秒、48℃で30秒および72℃で1分間を30サイクル。続いて更なる分析の前に、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(245bp cDNA+複数のクローニング部位またはMSCのための105bp)を示すコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有L-ブロス(LB)5ml中で、220rpmで振盪しながら、37℃で一晩増殖させた。
【0085】
1.6 プラスミドDNAの調製およびシークエンシング
ミニプレッププラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600ロボット式システム(Qiagen)またはWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ# 1460)を用い、製造元の指示にしたがって5mLの培養液から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems カタログ# 4390246)を製造元の指示に従い用い、プラスミドDNA(200-500ng)をT7およびT3プライマーによりDNAシークエンシングした。プライマー配列は、表1に示した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore カタログ# LSKS09624)を用い精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
配列解析は、予測INSP108配列との100%マッチを含むクローンを同定した。クローニングしたcDNAフラグメントの配列を、図8に示す。クローニングしたPCR産物のプラスミドマップ(pCR4-TOPO-INSP108)(プラスミドID13982)は、図9に示す。
【0086】
2. HEK293/EBNA細胞におけるINSP108発現のためのプラスミド構築
DNAシークエンシングにより同定されたINSP108の完全コード配列(ORF)を含むpCR4-TOPOクローン(pCR4-TOPO-INSP108, プラスミドID13982)(図9)を用い、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図11)およびpDEST12.2(図12)へ、ゲートウェイ(商標)クローニング技術(Invitrogen)を用い、この挿入断片をサブクローニングした。
2.1 フレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性INSP108 ORFの作製
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位およびコザック配列により5'末端がフランキングされ、ならびにインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドンおよびattB2組換え部位をコードしている配列により3'末端がフランキングされたINSP108のORF(ゲートウェイ互換性cDNA)を作製する2工程PCR反応である。第一のPCR反応液は以下を含む(最終容積50μL):pCR4-TOPO-INSP108 (プラスミドID13982)1.5μL、各dNTP (10mM) 1.5μL、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液5μL、MgSO4 (50mM)1μL、遺伝子特異的プライマー(100μM) (INSP108-EX1およびINSP0108-EX2)を各0.5μL、10X Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)2.5μL、およびPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)1μL。PCR反応は、開始変性工程95℃で2分、それに続く94℃で15秒、55℃で30秒および68℃で2分30秒を15サイクル;ならびに、4℃の保持サイクルを用いて行った。増幅産物は、Wizard PCR Preps DNA精製システム(Promega)を用い、PCR混合物から直接精製し、製造元の指示に従い50μLの滅菌水中に回収した。
第二のPCR反応液は以下を含む(最終容積50μL):精製したPCR 1産物10μL、各dNTP (10mM) 1.5μL、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液5μL、MgSO4 (50mM)1μL、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワードおよびGCPリバース)0.5μL、およびPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μL。第2のPCR反応の条件は以下であった:95℃で1分、それに続く94℃で15秒、50℃で30秒および68℃で2分30秒を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒および68℃で2分30秒を19サイクル;それに続く、4℃の保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCR Preps DNA精製システム(Promega)を用い、製造元の指示に従い、ゲル精製した。
【0087】
2.2 ゲートウェイ互換性INSP108 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221ならびに発現ベクターpEAK12dおよびpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、ゲートウェイ改変されたPCR産物の、ゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen, 図10)への、下記のサブクローニングに関与している:PCR2由来の精製産物5μLは、最終容量10μL中の 1μL pDONR221ベクター(0.15μg/μL)、2μL BP緩衝液および1.5μLのBPクロナーゼ酵素混合液(Invitrogen)と共に、室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテイナーゼK(2μg)の添加により停止し、37℃でさらに10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(2μL)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のようなエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコート30μLを、氷上で解凍し、BP反応混合液2μLを添加した。この混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞を、BioRad Gene-Pulser(商標)を製造元の推奨プロトコールに従い用いてエレクトロポレーションした。室温に予め温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を15mlのスナップ-キャップ付きチューブに移し、振盪しながら(220rpm)で37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μLおよび50μL)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0088】
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、6個の得られたコロニー由来の5ml培養液から調製した。プラスミドDNA(200〜500ng)に、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造元の指示に従い用い、21M13およびM13RevシークエンシングプライマーによりDNAシークエンシングを施した。これらのプライマー配列は表1に示す。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624を用い精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で解析した。
【0089】
正確な配列を含むひとつのクローン由来のプラスミド溶離液(2μL)(pDONR221-INSP108-6HIS、プラスミドID14224、図13)を、次に、pEAK12dベクターまたはpDEST12.2ベクター(図11および12)(0.1μg/μl)1.5μL、LR緩衝液2μLおよびLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μLを含み、最終容積10μLである組換え反応において使用した。この混合液を室温で1時間インキュベーションし、プロテイナーゼK(2μg)の添加により停止し、さらに37℃で10分間インキュベーションした。この反応のアリコート(1μL)を用い、大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションにより下記のように形質転換した:30μLのDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)を、氷上で解凍し、LR反応混合液1μLを添加した。この混合液を冷却した0.1cmエレクトロポレーションキュベットに移し、細胞をBioRad Gene Pulser(商標)を製造元の推奨プロトコールに従い使用し、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション直後に、室温に予め温めたSOC培地(0.5mL)を添加した。この混合液を、15mlスナップ-キャップ付きチューブに移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。形質転換混合物のアリコート(10μlおよび50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0090】
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、各ベクターにおいてサブクローニングした得られた6個のコロニー由来の5ml培養液から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)に、前述のようなpEAK12FおよびpEAK12RプライマーによるDNAシークエンシングを施した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)に、前述のような21M13およびM13RevプライマーによるDNAシークエンシングを施した。プライマー配列は表1に示す。
Sambrook J.ら(1989, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)の説明した方法を用い、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-INSP108-6HIS、プラスミドID番号14228、図14、およびpDEST12.2-INSP108-6HIS、プラスミドID14229、図15)のひとつの500ml培養液から、CsCl勾配精製されたマキシプレップDNAを調製した。プラスミドDNAを、滅菌水中に濃度1μg/μLで再懸濁し、-20℃で貯蔵した。
【0091】
表1:INSP108クローニングおよびシークエンシングプライマー

下線付き配列=コザック配列
""付き配列=停止コドン
[]内配列=Hisタグ
【0092】
実施例6:エクソン集成によるINSP109のクローニング
1.1 ゲノムDNA由来のINSP109をコードしているエクソンのPCR増幅
INSP109のエクソン1および2を増幅するためにPCRプライマーをデザインした(表2)。エクソン1のリバースプライマー(INSP109-エクソン1R)は、INSP109のエクソン2とその5'末端で9bp重複している。エクソン2のフォワードプライマー(INSP109エクソン2F)は、INSP109のエクソン1とその5'末端で9bp重複している。
INSP109のエクソン1を作成するために、ゲノムDNA(0.1μg/μl (Novagen Inc.)、10mM各dNTP(Amersham Pharmacia Biotech)1.5μL、MgSO4(Invitrogen)1μL、INSP109-エクソン1F(10μM)1.5μl、INSP109-エクソン1R(10μM)1.5μL、10X Pfx緩衝液10μLおよびPfxポリメラーゼ(2.5U/μl)(Invitrogen)0.5μLを含有する最終容積50μlで、PCR反応を行った。このPCR条件は、94℃で5分間;94℃で15秒、57℃で30秒および68℃で30秒を30サイクル;追加の伸長サイクル68℃で7分間;および、4℃の保持サイクルであった。反応生成物を、2%アガロースゲル(1X TAE)に装加し、正確なサイズ(64bp)のPCR産物をQiaquick Gel Extraction Kit(Qiagenカタログ# 28704)を用いてゲル精製し、溶離緩衝液(Qiagen)30μLで溶離した。INSP109のエクソン2を作成し、PCRプライマーはINSP109-エクソン2FおよびINSP109-エクソン2Rであり、アニーリング温度63℃を使用した以外は、同じように精製した。このINSP109エクソン2 PCR産物は、190bpであった。
【0093】
1.2 INSP109 ORFを作成するためのエクソン1および2の集成
エクソン1および2は、ゲル精製したエクソン1 5μl、ゲル精製したエクソン2 5μL、10mM各dNTP 1μL、MgSO4 2μL、INSP109-エクソン1F(10μM)1μl、INSP109-エクソン2R(10μM)1μL、10X Platinum Taq HiFi緩衝液5μL、およびPlatinum Taq HiFi DNAポリメラーゼ(5U/μl)(Invitrogen)0.5μLを含有する、PCR反応液50μl中で集成した。反応条件は、94℃で2分;94℃で30秒、60℃で30秒および68℃で1分を35サイクル;追加の伸長サイクル68℃で7分;および、4℃の保持サイクル。反応生成物を、2%アガロースゲル(1X TAE)上で分析した。正確なサイズ(236bp)のPCR産物を、Qiagen MiniElute DNA精製システム(Qiagen)を製造元の指示に従い用いてゲル精製し、EB溶離緩衝液(10mM Tris.Cl、pH8.5)10μLで溶離し、直接サブクローニングした。
【0094】
1.3 PCR産物のサブクローニング
PCR産物を、Invitrogen Corporationから購入したトポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4 TOPO)へ、製造元に指定された条件で用い、サブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μLを、TOPOベクター1μLおよび塩溶液1μLと共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを、氷上で解凍し、TOPO反応液2μLを添加した。混合液を、氷上で15分間インキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることにより、ヒートショックした。サンプルを氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μLを添加した。サンプルを、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。続いて形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレートに播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0095】
1.4 コロニーPCR
滅菌爪楊枝を用い、アンピシリン耐性コロニーを、滅菌水50μL中に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、1X AmpliTaq(商標)緩衝液、200μMの各dNTP、20ピコモルT7プライマー、20ピコモルT3プライマー、1ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)を含有する、全反応溶液20μLで、MJ Research DNA Engineを用いPCRを行った。サイクリング条件は以下の通りであった:94℃で2分間;94℃で30秒、48℃で30秒および72℃で1分間を30サイクル。続いて更なる分析の前に、サンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予想されるPCR産物サイズ(236bp cDNA+複数のクローニング部位またはMSCのための103bp)を示すコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有L-ブロス(LB)5ml中で、220rpmで振盪しながら、37℃で一晩増殖させた。
1.5 プラスミドDNAの調製およびシークエンシング
ミニプレッププラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600ロボット式システム(Qiagen)またはWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ# 1460)を用い、製造元の指示にしたがって5mLの培養液から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems カタログ# 4390246)を製造元の指示に従い用い、プラスミドDNA(200-500ng)をT7プライマーによりDNAシークエンシングした。プライマー配列は、表2に示した。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore カタログ# LSKS09624)を用い精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
配列解析は、予測INSP109配列との100%マッチを含むクローンを同定した。クローニングしたcDNAフラグメントの配列を、図18に示す。クローニングしたPCR産物のプラスミドマップ(pCR4-TOPO-INSP109)(プラスミドID13984)は、図19に示す。
【0096】
3. HEK293/EBNA細胞におけるINSP109発現のためのプラスミド構築
DNAシークエンシングにより同定されたINSP109の完全コード配列(ORF)を含むpCR4-TOPOクローン(pCR4-TOPO-INSP109, プラスミドID13984)(図19)を用い、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図11)およびpDEST12.2(図12)へ、ゲートウェイ(商標)クローニング技術(Invitrogen)を用い、この挿入断片をサブクローニングした。
2.1 フレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性INSP109 ORFの作製
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位およびコザック配列により5'末端がフランキングされ、ならびにインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドンおよびattB2組換え部位をコードしている配列により3'末端がフランキングされたINSP109のORF(ゲートウェイ互換性cDNA)を作製する2工程PCR反応である。第一のPCR反応液は以下を含む(最終容積50μL):pCR4-TOPO-INSP109 (プラスミドID13984)1.5μL、各dNTP (10mM) 1.5μL、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液5μL、MgSO4 (50mM)1μL、遺伝子特異的プライマー(100μM) (INSP109-EX1およびINSP0109-EX2)を各0.5μL、10X Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)2.5μL、およびPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)1μL。PCR反応は、開始変性工程95℃で2分、それに続く94℃で15秒、55℃で30秒および68℃で2分30秒を15サイクル;ならびに、4℃の保持サイクルを用いて行った。増幅産物は、Wizard PCR Preps DNA精製システム(Promega)を用い、PCR混合物から直接精製し、製造元の指示に従い50μLの滅菌水中に回収した。
第二のPCR反応液は以下を含む(最終容積50μL):精製したPCR 1産物10μL、各dNTP (10mM) 1.5μL、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液5μL、MgSO4 (50mM)1μL、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワードおよびGCPリバース)0.5μL、およびPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μL。第2のPCR反応の条件は以下であった:95℃で1分、94℃で15秒、50℃で30秒および68℃で2分30秒を4サイクル;94℃で15秒;55℃で30秒および68℃で2分30秒を19サイクル;それに続く、4℃の保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCR Prep DNA精製システム(Promega)を用い、製造元の指示に従い、ゲル精製した。
【0097】
2.2 ゲートウェイ互換性INSP109 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221ならびに発現ベクターpEAK12dおよびpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、ゲートウェイ改変されたPCR産物の、ゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen, 図10)への、下記のサブクローニングに関与している:PCR2由来の精製産物5μLは、最終容量10μL中の 1μL pDONR221ベクター(0.15μg/μL)、2μL BP緩衝液および1.5μLのBPクロナーゼ酵素混合液(Invitrogen)と共に、室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテイナーゼK(2μg)の添加により停止し、37℃でさらに10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(2μL)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のようなエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコート30μLを、氷上で解凍し、BP反応混合液2μLを添加した。この混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞を、BioRad Gene-Pulser(商標)を製造元の推奨プロトコールに従い用いてエレクトロポレーションした。室温に予め温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を15mlのスナップ-キャップ付きチューブに移し、振盪しながら(220rpm)で37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μLおよび50μL)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0098】
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、6個の得られたコロニー由来の5ml培養液から調製した。プラスミドDNA(200〜500ng)に、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造元の指示に従い用い、21M13およびM13RevプライマーによりDNAシークエンシングを施した。これらのプライマー配列は表2に示す。シークエンシング反応物を、Dye-Exカラム(Qiagen)またはMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624を用い精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサー上で解析した。
正確な配列を含むひとつのクローン由来のプラスミド溶離液(2μL)(pDONR221-INSP109-6HIS、プラスミドID14230、図20)を、次に、pEAK12dベクターまたはpDEST12.2ベクター(図11および12)(0.1μg/μl)1.5μL、LR緩衝液2μLおよびLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μLを含み、最終容積10μLである組換え反応において使用した。この混合液を室温で1時間インキュベーションし、プロテイナーゼK(2μg)の添加により停止し、さらに37℃で10分間インキュベーションした。この反応のアリコート(1μL)を用い、大腸菌DH10B細胞をエレクトロポレーションにより下記のように形質転換した:30μLのDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)を、氷上で解凍し、LR反応混合液1μLを添加した。この混合液を冷却した0.1cmエレクトロポレーションキュベットに移し、細胞をBioRad Gene Pulser(商標)を製造元の推奨プロトコールに従い使用し、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション直後に、室温に予め温めたSOC培地(0.5mL)を添加した。この混合液を、15mlスナップ-キャップ付きチューブに移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。形質転換混合物のアリコート(10μlおよび50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロスプレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0099】
プラスミドミニプレップDNAを、QiaPrep Turbo 9600ロボット型システム(Qiagen)を用い、各ベクターにおいてサブクローニングした得られた6個のコロニー由来の5ml培養液から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)に、前述のようなpEAK12FおよびpEAK12RプライマーによるDNAシークエンシングを施した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)に、前述のような21M13およびM13RevプライマーによるDNAシークエンシングを施した。プライマー配列は表2に示す。
Sambrook J.ら(1989, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)の説明した方法を用い、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-INSP109-6HIS、プラスミドID番号14231、図21、およびpDEST12.2-INSP109-6HIS、プラスミドID14350、図22)のひとつの500ml培養液から、CsCl勾配精製されたマキシプレップDNAを調製した。プラスミドDNAを、滅菌水中に濃度1μg/μLで再懸濁し、-20℃で貯蔵した。
【0100】
表2:INSP109クローニングおよびシークエンシングプライマー

下線付き配列=コザック配列
""付き配列=停止コドン
[]内配列=Hisタグ
[[]]内配列=隣接エクソンとの重複
【0101】
実施例7:INSP108およびINSP109の発現および精製
ここで本明細書に明らかにされたヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を基に、INSP108およびINSP109 ポリペプチドのin vivoにおける組織分布および発現レベルを決定するために、更なる実験を行った。
INSP108およびINSP109の転写産物の存在を、様々なヒト組織に由来したcDNAのPCRにより調べた。INSP108およびINSP109転写産物は、試験したサンプル中で非常に低いレベルで存在することがある。したがって、RNA調製物中の少量のゲノム混入は、偽陽性の結果を生じるので、様々なヒト組織中の転写産物の存在を確立する実験のデザインには細心の注意が必要である。したがって全てのRNAは、逆転写に使用する前に、DNAseで処理されなければならない。加えて各組織に関して、コントロール反応は、逆転写が生じないよう設定されるのがよい(-ve RTコントロール)。
【0102】
例えば、各組織からの総RNA 1μgを使用し、Multiscript逆転写酵素(ABI)およびランダムヘキサマープライマーを用い、cDNAを作成してもよい。各組織について、逆転写酵素以外の全ての構成要素が添加されたコントロール反応が設定される(-ve RTコントロール)。PCR反応は、各組織について、逆転写されたRNAサンプルおよびマイナスRTコントロールに対し設定される。INSP085-特異的プライマーは、本明細書に提供された配列情報を基に容易にデザインされる。逆転写されたサンプル中の正確な分子量の産物の存在は、マイナスRTコントロール中の産物の非存在と共に、その組織における転写産物の存在の証拠となり得る。INSP108およびINSP109転写産物をスクリーニングするためには、前述のように作成されたもののみではなく、いずれか適当なcDNAライブラリーを使用することができる。
INSP108およびINSP109ポリペプチドの組織分布パターンはさらに、これらのポリペプチドの機能に関連した有用な情報を提供するであろう。
加えてここで、発現ベクターpEAK12d-INSP108-6HIS、pEAK12d-INSP109-6HIS、pDEST12.2-INSP108-6HISおよびpDEST12.2-INSP109-6HISを使用し、更なる実験を行うことができる。これらのベクターによる哺乳類細胞株のトランスフェクションは、INSP108およびINSP109タンパク質の高レベルの発現を可能にし、その結果INSP108およびINSP109ポリペプチドの機能特性に関する継続した研究を可能にする。下記の材料および方法は、そのような実験の適当なものの例である:
【0103】
細胞培養
エプスタイン-バーウイルス核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を、Ex-細胞VPRO血清-非含有培地(シードストック、維持培地、JRH)において懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前に(-1日目)、細胞を、2個のT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコあたり50ml)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(商標)試薬を用いトランスフェクションを行った(プラスミドDNA 2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、プラスミドDNAを、GFP(蛍光レポーター遺伝子)DNAで同時-トランスフェクションした。次にトランスフェクション混合物を、2個のT225フラスコに加え、37℃(5%CO2)で6日間インキュベーションした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目および6日目の定量的蛍光試験により行った(Axiovert 10 Zeiss)。
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清をプールし、遠心分離し(例えば、4℃、400g)、固有の識別票を付したポットに入れた。6His-タグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、1個のアリコート(500μL)を保持した。
大規模化バッチは、トランスフェクション試薬としてPolysciences からのポリエチレンイミンにより、BP/PEI/HH/02/04を参照し、"浮遊細胞のPEIトランスフェクション"と称されるプロトコールに従い作成した。
【0104】
精製方法
C-末端6Hisタグを伴うリコンビナントタンパク質を含有する培養培地サンプルを、冷緩衝液A(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈した。このサンプルを、滅菌フィルター(Millipore)で濾過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃で維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃で実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20 MC (Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm, 0.83ml)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1.0x10cm)でゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA;1M NaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiS04溶液でNiイオンを再度帯電させ、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、400mMイミダゾール、pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Labomaticサンプル添加装置でサンプルを200mlのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10ml/分で装荷した。前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液(20mMのイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMのイミダゾール洗浄の間に、緩く付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。リコンビナントHis-タグ付加タンパク質を、流速2ml/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を採集した。
【0105】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを、2mlの緩衝液D(1.137M NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに統合されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2ml/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。前記画分を、滅菌遠心分離フィルター(Millipore)で濾過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗-His抗体を用い、SDS-PAGE(4-12% NuPAGEゲル;Novex)ウェスタンブロットで分析した。NuPAGEゲルは、0.1%クマーシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)で室温で1時間染色し、続けて20%メタノール、7.5%酢酸で、バックグラウンドが透明になりタンパク質バンドが明確に視認できるまで、脱色した。
【0106】
電気泳動に続いて、タンパク質をゲルからニトロセルロースメンブレンへ電気的に移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;0.1% Tween 20、pH7.4)で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中でふたつのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18およびH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)と共に4℃で一晩インキュベーションした。室温でさらに1時間インキュベーションした後、前記メンブレンを緩衝液E(10分、3回)で洗浄し、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP-結合抗-ウサギ二次抗体(DAKO, HRP 0399)と室温で2時間インキュベーションした。緩衝液Eで洗浄(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
クマーシー染色により検出可能なタンパク質バンドを示したサンプルについて、タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準とする、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて決定した。
さらに細胞株中のポリペプチドの過剰発現または発現のノックダウンを使用し、宿主細胞ゲノムの転写活性に対する作用を決定することができる。INSP108およびINSP109ポリペプチドの二量体化のパートナーであるコ-アクチベーターおよびコ-リプレッサーを、ウェスタンブロットと組合せた免疫沈降および質量分析と組合せた免疫沈降により同定することができる。
【0107】
実施例8:デフェンシン活性の検出アッセイ
ケモカイン-様ポリペプチドのバリデーションおよび特徴決定のための細胞-および動物-ベースのアッセイ
細胞培養物または動物モデルを使用し、ケモカインの特異性、効能、および効率を試験するためのいくつかのアッセイ、例えばin vitro化学走化性アッセイ(Proudfoot A, et al., J Biol Chem, 276:10620-10626, 2001;Lusti-Narasimhan M et al., J Biol Chem, 270:2716-21, 1995)、またはマウスの耳の腫脹(Garrigue JL et al., Contact Dermatitis, 30:231-7, 1994)などが開発されている。有用な道具および製品(抗体、トランスジェニック動物、放射標識したタンパク質など)を作成するための多くの他のアッセイおよび技術が、ケモカインについて記載した総説および書籍に説明されており(Methods Mol. Biol, vol.138, “Chemokines Protocols”、Proudfoot AIら編集、Humana Press Inc., 2000;Methods Enzymol, vol. 287 and 288, Academic Press, 1997)、ならびに本発明のケモカイン-様ポリペプチドの生物学的活性ならびに可能性のある治療法または診断法および用途に関係した関連試薬をより正確な方法で証明するために使用することができる。
【0108】
サイトカイン発現調節アッセイ
下記のin vitro細胞-ベースの3つ組アッセイは、Human Th1/Th2 Cytokine CBAキット(Becton-Dickinson)のような、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-5、IL-4およびIL-10についてのサイトカインビーズアレイ(CBA)アッセイにより測定されるように、様々なヒト末梢血単核細胞(hPBMC)に作用するコンカナバリンA(ConA)により誘導されたサイトカイン分泌に対する本発明のタンパク質の作用を測定する。
最適条件は、96-ウェルプレート中で100000個細胞/ウェルおよび2%グリセロール中最終100μLである。マイトジェン(ConA)の最適濃度は5ng/mlである。このアッセイの最適時間は、48時間である。リードアウト選択(read-out choice)は、CBAである。
1 バッフィーコートからのヒトPBMCの精製
バッフィーコート1から2を、DMEMで希釈する。その後希釈した血液25mlを、50mlのFalconチューブ中の15mlのフィコール層上にゆっくり添加し、チューブを遠心した(2000rpm、20分間、室温でブレーキをかけず)。その後中間相(リング)を収集し、これらの細胞を、DMEM 25mlで洗浄し、引き続き遠心工程(1200rpm, 5分間)を行った。この操作を3回反復した。バッフィーコートは、総細胞数およそ600x106個を生じた。
【0109】
2 スクリーニング
1.25x106個細胞/mlの80μLを、DMEM+2.5%ヒト血清+1%L-グルタミン+1%ペニシリン-ストレプトマイシン中に希釈し、その後96ウェルマイクロタイタープレートに加えた。各ウェルに10μlを添加した(1個のウェルにひとつの条件):タンパク質は、PBS+20%グリセロール中に希釈した(タンパク質の最終希釈は1/10である)。その後1個のウェルあたりConA刺激剤(50μg/ml)10μLを添加した(1個のウェルにひとつの条件-ConAの最終濃度は5μg/mlである)。48時間後、細胞上清を収集し、ヒトサイトカインを、Human Th1/Th2 Cytokine CBAキット(Becton-Dickinson)により、測定した。
【0110】
3 CBA分析
(より詳細には、CBAキット製造元の指示を参照のこと)
i)混合したヒトTh1/Th2捕獲ビーズの調製
実験に必要なアッセイチューブの数を決定する。各捕獲ビーズ懸濁液は、混合前に、数秒間激しくボルテックスする。分析される各アッセイのために、各捕獲ビーズ10μlアリコートを、“混合捕獲ビーズ”とラベルした単独のチューブに加える。ビーズ混合物は、完全にボルテックスされる。
ii)試験サンプルの調製
上清を、アッセイ希釈液を用い、希釈(1:4)する(上清20μl+アッセイ希釈液60μl)。その後サンプル希釈液を混合した後、サンプルを96ウェル円錐底マイクロタイタープレート(Nunc)に移す。
【0111】
iii)ヒトTh1/Th2サイトカインCBAアッセイ法
希釈した上清50μlを、96ウェル円錐底マイクロタイタープレート(Nunc)に添加する。混合した捕獲ビーズ50μLを添加し、引き続きヒトTh1/Th2 PE検出試薬50μlを添加する。その後このプレートを、室温で3時間インキュベーションし、直接露光から保護し、その後1500rpmで5分間遠心する。次に上清を慎重に廃棄する。引き続きの工程において、洗浄緩衝液200μlを、各ウェルに2回添加し、1500rpmで5分間遠心し、上清を慎重に廃棄する。その後洗浄緩衝液130μlを、各ウェルに添加し、ビーズペレットを再懸濁する。このサンプルを最終的にフローサイトメーター上で分析する。そのデータは次に、CBA Application Software、Activity BaseおよびMicrosoft Excelソフトウェアを用い分析する。アッセイのリードアウトから、in vitroにおいて、本発明のタンパク質は、試験した全てのサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10)について一貫した阻害作用を有するかどうかを評価することができる。さらに、EC50値を基に、どのサイトカインが、最も阻害され、その結果そのサイトカインに特に関連することがわかっている、特定の自己免疫/炎症疾患を引き起こすかを容易に評価することができる。
【0112】
Tリンパ球反応を標的化するアッセイ
[Fas-リガンド-誘導したT細胞の死] このアッセイは、受容体が媒介した細胞死の新規モジュレーターを明らかにするであろう。このアッセイにおいて、T細胞アポトーシスは、Jurkat細胞(ヒトT細胞株)を、モノクローナル抗6-his抗体と組合せたリコンビナント6ヒスチジン-タグ付きFasリガンドで刺激することにより誘導される。細胞死は、細胞が死滅する時に培養培地に放出される細胞質酵素であるLDHの放出により定量化される。リードアウトは、490nmでの比色アッセイの読み値である。T細胞は、多くの自己免疫疾患において病因であることが示されており、抗原-特異性T細胞死を制御することは、治療的戦略である(例えば、クローン病患者における抗-TNFα治療)。
[ヒト-MLR:増殖およびサイトカイン分泌] この細胞-ベースのアッセイは、別のドナー由来のPBMC(自家反応性)による刺激時の、リンパ球増殖およびサイトカイン分泌または阻害に対する新規タンパク質の作用を測定する。これらのアッセイは、抗原-特異性T細胞および抗原提示細胞の機能を説明し、これらはあらゆる自己免疫疾患における重要な細胞反応である。分泌されたサイトカイン(IL-2、4、5、10、TNF-αおよびIFN-γ)は、CBAにより定量される。
注記:増殖およびサイトカイン分泌は独立した反応である。
【0113】
[マウス-MLR:増殖] この細胞-ベースのアッセイは、別のドナー(マウス系統)由来の脾臓細胞による刺激後の、リンパ球増殖またはマウス脾臓細胞の阻害に対する新規タンパク質の作用を測定する。この細胞-ベースのアッセイは、Tリンパ球および抗原提示細胞の反応に対する新規タンパク質の作用を測定し、かつ陽性活性を確認するために使用され、h-MLRアッセイにおける同一性をヒットするであろう。このアッセイは、ヒト疾患のマウスモデルにおいて試験されるタンパク質を選択するために使用されるであろう。
【0114】
スーパー抗原TSSTにより刺激されたヒトPBMC
スーパー抗原は、T細胞に作用する免疫系の強力なモジュレーターである。スーパー抗原は、免疫学的に媒介された疾患、例えばIBD、アトピー性皮膚炎および乾癬などの炎症性皮膚疾患に影響を及ぼす。この細胞アッセイにおいて、本発明者らは、特に共刺激分子に関して、古典的抗原に対するT細胞反応ではなくむしろ、TCRを介しているが、様々な必要要件を伴う、Tリンパ球活性化を特異的に標的化している。
【0115】
[ConAまたはPHAのいずれかにより刺激されたヒトPBMC] これらの細胞-ベースのアッセイは、サイトカインビーズアレイ(CBA)アッセイにより測定されるような異なる細胞に作用するふたつの異なる刺激により誘導されたサイトカイン分泌(IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-5、IL-4およびIL-10)に対する新規タンパク質の作用を測定する。ほとんどのサイトカインは、損傷、環境および細胞標的に応じて、前炎症または抗-炎症の二重作用を有する。サイトカイン分泌を調節する能力を伴うタンパク質は、治療的可能性があるであろう(例えば、減少するIFN-γおよびTNF-αは、Th1-媒介型自己免疫疾患に有用であるのに対し、IL-4、IL-5の減少は、Th2-媒介型-疾患に有益であり、IL-10の誘導は、MSおよびSLEに関して興味深い。)。
【0116】
単球/マクロファージおよび顆粒球の反応を標的化するアッセイ
[LPSで刺激されたヒトPBMC] この細胞-ベースのアッセイは、単球/マクロファージおよび顆粒球に作用するLPSにより誘導されたサイトカイン分泌(IFN-γ、TNF-α)に対する新規タンパク質の作用を測定する。IFN-γおよびTNF-α分泌を調節する能力を伴うタンパク質は、Th1-媒介型自己免疫疾患において有益であろう。
【0117】
好中球反応を標的化するアッセイ
好中球は、関節リウマチのような炎症および自己免疫疾患において重要である。IL-8のような白血球誘引物質は、細胞と微小血管内皮の間の一連の接着相互作用を開始し、好中球の活性化、接着および最終的には移動を生じる。好中球の組織浸潤は、これらの細胞の細胞形態の特定の変化に関連した細胞骨格要素の再構成に左右される。この細胞-ベースのアッセイは、ヒト好中球の細胞骨格再構成に対する新規タンパク質の作用を測定する。
【0118】
Bリンパ球反応を標的とするアッセイ
自己抗体に加え浸潤性B細胞は、全身性エリスマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーングレン症候群および重症筋無力症のような、様々な自己免疫疾患の病因において重要であると考えられている。強力な証拠は、B細胞ホメオスタシスの調節不良は、免疫寛容に影響を及ぼし、これは病原性抗体および持続炎症を生じる自己反応性のB細胞の不適切な生存につながることを指摘している。B細胞受容体の起動(triggering)に続くB細胞の増殖、生存および分化の調節において重要な役割を果たす新規因子の同定は、新規療法の開発と高い関連がある。
[B細胞増殖] この細胞-ベースのアッセイは、新規タンパク質のB細胞生存に対する作用を測定する。
[B細胞共刺激] この細胞-ベースのアッセイは、B細胞共刺激に対する新規タンパク質の作用を測定する。
【0119】
単球および小グリア細胞の反応を標的化するアッセイ
[THP-1カルシウム灌流] THP1-細胞アッセイにおけるCa+-灌流は、小胞体からの細胞内カルシウム放出(一般的(generic)セカンドメッセンジャー事象)を起動するそれらの能力に対する、新規タンパク質の作用を測定する。
[小グリア細胞増殖(次にIACに提示される)] 小グリア細胞前駆体の増殖時に、いくつかのサイトカインを含む多くのコロニー刺激因子が、重要な役割を果たすことは知られている。とりわけ、M-CSFは、マクロファージ/小グリア細胞の成熟の最終工程に重要であり、および他の因子と置き換えることができない。この生物学的反応の評価は、小グリア細胞活性に影響する方法を説明し、その結果MSの治療可能性を伴う分子を同定する好機を示すことができる。
小グリア細胞株のM-CSFに対する増殖反応を測定する細胞-ベースのアッセイが開発された。この実行可能性および堅牢性のある相(phase)は、最適の結果を示した。このアッセイは、96ウェルプレートにおいて行い;非-放射性基質を必要とし、容易に自動化される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1:配列番号:6(INSP108ポリペプチド)を使用する、NCBI非-余剰的のデータベースに対するBLAST結果。
【図2】図2:INSP108ポリペプチド配列(配列番号:6)およびデフェンシンβ123(ヒト)の間のアラインメント。
【図3】図3:INSP108のSig P切断部位予測。
【図4】図4:配列番号:14(INSP109ポリペプチド)を使用する、NCBI非-余剰的データベースに対するBLAST結果。
【図5】図5:INSP109ポリペプチド配列(配列番号:14)およびデフェンシンβ4(マウス)の間のアラインメント。
【図6】図6:INSP109のSig P切断部位予測。
【図7】図7:INSP108の予想されたヌクレオチド配列および翻訳。
【図8】図8:プライマーINSP108-CP1およびINSP108-CP2を使用しクローニングされたINSP108 PCR産物のヌクレオチド配列および翻訳。
【図9】図9:pCR4-TOPO-INSP108のマップ。
【図10】図10:pDONR 221のマップ。
【図11】図11:発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図12】図12:発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図13】図13:pDONR221-INSP108-6HISのマップ。
【図14】図14:pEAK12d-INSP108-6HISのマップ。
【図15】図15:pDEST12.2-INSP108-6HISのマップ。
【図16】図16:INSP109の推定ヌクレオチド配列および翻訳。
【図17】図17:ゲノムDNAにおけるINSP109コードしているエクソンの配置およびPCRプライマーの位置。
【図18】図18:クローニングしたINSP109 ORFのヌクレオチド配列および翻訳。
【図19】図19:pCR4-TOPO-INSP109のマップ。
【図20】図20:pDONR-INSP109-6HISのマップ。
【図21】図21:pEAK12d-INSP109-6HISのマップ。
【図22】図22:pDEST12.2-INSP109-6HISのマップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号:6および/または配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物。
【請求項2】
配列番号:6および/または配列番号:8記載のアミノ酸配列からなる、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
以下の(i)から(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i)配列番号:14または配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(ii)タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーとして機能するそれらのフラグメントであるか、または(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有するポリペプチド;または
(iii) (i)もしくは(ii)の機能的等価物。
【請求項4】
配列番号:14および/または配列番号:16記載のアミノ酸配列からなる、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:6、配列番号:8、配列番号:14または配列番号:16記載のアミノ酸配列と相同であり、タンパク質デフェンシンファミリーのメンバーであることを特徴とする、請求項1または3の(iii)記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項6】
配列番号:6、配列番号:8、配列番号:14または配列番号:16に記載のアミノ酸配列もしくはその活性フラグメントと80%を超える配列同一性、好ましくは85%、90%、95%、98%または99%を超える配列同一性を有する、請求項1、3または5のいずれか1項記載のフラグメントまたは機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項7】
配列番号:6、配列番号:8、配列番号:14、または配列番号:16に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと顕著な構造的相同性を示す、請求項1、3、5または6のいずれか1項記載の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項8】
配列番号:6、配列番号:8、配列番号:14または配列番号:16記載のアミノ酸配列由来の7個またはそれよりも多いアミノ酸残基からなる、請求項1または3の(i)記載のポリペプチドと共通である抗原決定基を有する、請求項1、3および6のいずれか1項記載のフラブメントであるポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている、精製核酸分子。
【請求項10】
配列番号:5、配列番号:7、配列番号:13、および/または配列番号:15に記載の核酸配列を含むか、またはそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項9記載の精製核酸分子。
【請求項11】
配列番号:5、配列番号:7、配列番号:13および/または配列番号:15記載の核酸配列からなるか、またはそれらの余剰的等価物もしくはフラグメントである、請求項9または10記載の精製核酸分子。
【請求項12】
高いストリンジェンシーの条件下で、請求項9〜11のいずれか1項記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項14】
請求項13記載のベクターで形質転換されている宿主細胞。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項記載のデフェンシンポリペプチドと特異的に結合するリガンド。
【請求項16】
抗体である、請求項15記載のリガンド。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルまたは活性を増加させるかまたは低下させるいずれかの化合物。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドの生物学的作用のいずれをも誘発することなく、前記ポリペプチドと結合する、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
天然または改変されている基質、リガンド、酵素、受容体または構造的もしくは機能的模倣物である、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
疾患の治療または診断に使用するための、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項14記載の宿主細胞、請求項15もしくは16記載のリガンド、または請求項17〜19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
患者由来の組織において、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする天然遺伝子の発現レベルを評価するか、または請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドの活性を評価すること;および
前記発現レベルまたは活性をコントロールレベルと比較すること;
を含み、ここで前記コントロールレベルとは異なるレベルは疾患を示唆している、患者の疾患を診断する方法。
【請求項22】
In vitroで実施される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
(a)請求項15または16記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;および
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
(a)患者由来の組織サンプルを核酸プローブと、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;および
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
を含み、ここでコントロールサンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なる患者サンプルのハイブリッド複合体レベルの検出は疾患を示唆している、請求項21または22記載の方法。
【請求項25】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを核酸プライマーと、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触させる工程;
(b)コントロールサンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;および
(c)前記サンプルの核酸を増幅する工程;および、
(d)患者サンプルおよびコントロールサンプルの両方から、増幅核酸レベルを検出する工程;
を含み、ここでコントロールサンプルの増幅核酸レベルと顕著に異なる患者サンプルの増幅核酸レベルの検出は疾患を示唆している、請求項21または22記載の方法。
【請求項26】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子を単離する工程;および、
(c)前記疾患の指標として疾患に付随する変異の存在を前記核酸分子中で検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む、請求21または22記載の方法。
【請求項27】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物で変異の有無を検出することをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記核酸分子を、前記核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に付随する変異に対応する任意の部分に前記核酸プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;および
疾患に付随する変異の有無の指標として前記プローブ鎖の非ハイブリダイズ部分の有無を検出すること;
によって、前記患者における変異の有無を検出する、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部および頚部ならびに他の固形腫瘍を含む、細胞増殖障害;白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫のような、骨髄増殖性障害;アレルギー、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬および気道炎症、喘息、および臓器移植拒絶反応を含む、自己免疫/炎症障害;高血圧、浮腫、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック状態、再潅流損傷、および虚血を含む、心臓血管系障害;中枢神経系障害、アルツハイマー病、脳外傷、筋萎縮性側索硬化症、および疼痛を含む、神経障害;発達障害;糖尿病、骨粗鬆症、および肥満、AIDSおよび腎疾患を含む、代謝障害;ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生体感染症、致死的でない内毒素血症、敗血症ショック、羊膜腔の微生物感染症、回帰熱のJarish-Herxheimer反応、中枢神経系の感染性疾患、急性膵炎、潰瘍性大腸炎、膿胸、溶血性尿毒症症候群、髄膜炎菌症、胃感染症、百日咳、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、敗血症、喘息、HIVおよび糸球体腎炎を含む、感染症を含むが、これらに限定されるものではない、請求項21〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記疾患が、デフェンシンに関連した疾患である、請求項21〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
デフェンシンタンパク質としての、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドの使用。
【請求項32】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項14記載の宿主細胞、請求項15もしくは16記載のリガンド、または請求項17〜19のいずれか1項記載の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項33】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、または請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子を含有する、ワクチン組成物。
【請求項34】
新生物、メラノーマ、肺、結腸直腸、乳房、膵臓、頭部および頚部ならびに他の固形腫瘍を含む、細胞増殖障害;白血病、非ホジキンリンパ腫、白血球減少症、血小板減少症、血管新生障害、カポジ肉腫のような、骨髄増殖性障害;アレルギー、炎症性腸疾患、関節炎、乾癬および気道炎症、喘息、および臓器移植拒絶反応を含む、自己免疫/炎症障害;高血圧、浮腫、アンギナ、アテローム性動脈硬化症、血栓症、敗血症、ショック状態、再潅流損傷、および虚血を含む、心臓血管系障害;中枢神経系障害、アルツハイマー病、脳外傷、筋萎縮性側索硬化症、および疼痛を含む、神経障害;発達障害;糖尿病、骨粗鬆症、および肥満、AIDSおよび腎疾患を含む、代謝障害;ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生体感染症、致死的でない内毒素血症、敗血症ショック、羊膜腔の微生物感染症、回帰熱のJarish-Herxheimer反応、中枢神経系の感染性疾患、急性膵炎、潰瘍性大腸炎、膿胸、溶血性尿毒症症候群、髄膜炎菌症、胃感染症、百日咳、腹膜炎、乾癬、関節リウマチ、敗血症、喘息、HIVおよび糸球体腎炎を含む、感染症の治療のための医薬品の製造において使用するための、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項14記載の宿主細胞、請求項15もしくは16記載のリガンド、または請求項17〜19のいずれか1項記載の化合物、または請求項32記載の医薬組成物。
【請求項35】
デフェンシンが関連した疾患の治療のための医薬品の製造において使用される、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項14記載の宿主細胞、請求項15もしくは16項記載のリガンド、請求項17〜19のいずれか1項記載の化合物、または請求項32記載の医薬組成物。
【請求項36】
患者へ、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子、請求項13記載のベクター、請求項14記載の宿主細胞、請求項15もしくは16記載のリガンド、請求項17〜19のいずれか1項記載の化合物、または請求項32記載の医薬組成物を投与することを含む、患者における疾患を治療する方法。
【請求項37】
罹患した患者での天然遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が健常な対象者での発現または活性のレベルと比較した場合に低い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物または組成物がアゴニストである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
罹患した患者での天然遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が健常な対象者での発現または活性のレベルと比較した場合に高い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物または組成物がアンタゴニストである、請求項36記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドの発現もしくは活性のレベル、または請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子の発現レベルを、前記患者由来の組織においてある期間にわたってモニターすることを含む、患者において疾患の治療をモニターする方法であって、
前記期間にわたる発現または活性のレベルがコントロールレベルに対して変化することは前記疾患の退行の指標である、方法。
【請求項40】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドまたは請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子を、前記ポリペプチドまたは核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1種または2種以上の化合物と接触させること;および、前記核酸分子またはポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;
を含む、疾患の治療および/または診断に有効な化合物を同定する方法。
【請求項41】
請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;および、疾患の診断を容易にするために前記プローブおよびプライマーを使用するための指示を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項42】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器をさらに含む、請求項41のキット。
【請求項43】
核酸分子の少なくとも1種が請求項9〜12のいずれか1項記載の核酸分子である、核酸分子のアレイを含むキット。
【請求項44】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドと結合する1種または2種以上の抗体;および、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬を含む、キット。
【請求項45】
請求項1〜8のいずれか1項記載のポリペプチドをより高いレベル、より低いレベルまたは非存在のレベルで発現するように形質転換された、非ヒトトランスジェニック動物または非ヒトノックアウト動物。
【請求項46】
請求項45記載の非ヒトトランスジェニック動物を候補化合物と接触させること、および前記動物の疾患に対する前記化合物の作用を決定することによって、疾患の治療に有効な化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公表番号】特表2007−527197(P2007−527197A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500204(P2006−500204)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000101
【国際公開番号】WO2004/063219
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】