説明

デュアルクラッチトランスミッション用のデュアルクラッチ構造体

【課題】デュアルクラッチトランスミッション用の改良型デュアルクラッチ構造体を提供する。
【解決手段】デュアルクラッチ構造体(20)は、入力シャフト(16)、第1及び第2摩擦クラッチ(24,26)、出力シャフト(32,42)、ハウジングに固定されたハブ(46)、ハウジングに固定された第1及び第2のピストン/シリンダ装置(80,82)を有する。摩擦クラッチ(24,26)の入力部材(28,38)が入力シャフト(16)に連結され、出力部材(30,40)が出力シャフト(32,42)にそれぞれ連結されている。摩擦クラッチは、ハウジングに連結されたピストン/シリンダ装置(80,82)及びアキシアル軸受(88,98)によって作動可能である。入力部材(28,38)のうち少なくとも一方は、ラジアル軸受構造体(60)によってハブ(46)に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチトランスミッション(トランスミッション)用のデュアルクラッチ構造体であって、入力シャフトと、第1の摩擦クラッチと、第2の摩擦クラッチと、2つの出力シャフトと、ハウジングに固定されたハブと、ハウジングに固定された第1のピストン/シリンダ装置と、ハウジングに固定された第2のピストン/シリンダ装置とを有し、摩擦クラッチの入力部材が、入力シャフトに連結され、摩擦クラッチの出力部材が、2つの出力シャフトにそれぞれ連結され、摩擦クラッチを、ハウジングに連結されたピストン/シリンダ装置及びアキシアル軸受によってそれぞれ作動させることができるようになっているデュアルクラッチ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した形式のデュアルクラッチ構造体は、独国特許出願公開第102004061020号明細書で知られている。
【0003】
デュアルクラッチトランスミッションは、デュアルクラッチ構造体及び2つの部分変速装置(partial transmission)を有する。部分変速装置は、一般に、平歯車伝動装置として設計される。この場合、部分変速装置の一方が、偶数ギア段に割り当てられ、他方が、奇数ギア段に割り当てられる。
【0004】
デュアルクラッチ構造体の2つのクラッチのオーバラップ作動によって、駆動力を途切れされることなくギヤチェンジを実施することが可能である。
【0005】
上述した形式のデュアルクラッチトランスミッションは、自動車、特に乗用車に適している。
今日、流体作動式(湿式)摩擦クラッチ、例えば湿式作動型多板クラッチが、一般に、デュアルクラッチ構造体に用いられている。
【0006】
デュアルクラッチ構造体は、独国特許出願公開第102004013265号明細書で知られており、かかるデュアルクラッチ構造体では、2つの摩擦クラッチにそれぞれ1つの共同して回転する作動ピストンが割り当てられ、これら作動ピストンは、圧力の作用を受けることができるピストン空間の方へ向いた第1の半径方向作用フェースと、遠心力圧力補償空間の方へ向いた第2の半径方向作用フェースとを有している。流体が、共同して回転するハブ及びこのハブとハウジングとの間に配置された回転リードスルー(leadthrough)を介してピストン空間に供給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のデュアルクラッチ構造体の欠点は、これは、構造が複雑で且つ生じるドラグトルクが高いということにある。
【0008】
性能が同程度の二段式構造体が、独国特許出願公開第10223780号明細書で知られている。
【0009】
上記の独国特許出願公開第102004061020号明細書において、2つのピストン/シリンダ装置をハウジングに固定されたハブに固定するように設けることが知られており、これら2つのピストン/シリンダ装置は、半径方向に互いに嵌め合わされて配置されていて同一方向に作用する。ピストン/シリンダ装置は、レバー(てこ)構造体を介してデュアルクラッチ構造体の摩擦クラッチに作用し、これら摩擦クラッチは、同様に、半径方向互いに嵌め合わされて配置されている。
【0010】
半径方向外側の摩擦クラッチの入力部材は、第1の出力シャフト(内側出力シャフト)の一部に回転自在に取り付けられ、この第1の出力シャフトは、クランクシャフトに向かう方向に延びている。
【0011】
上述の技術背景を考慮して、本発明の目的は、デュアルクラッチトランスミッション用の改良型デュアルクラッチ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、技術分野で述べたデュアルクラッチ構造体において、入力部材のうち少なくとも一方が、ラジアル軸受構造体によって、ハウジングに固定されたハブに取り付けられていることを特徴とするデュアルクラッチ構造体によって達成される。
【0013】
この場合、少なくとも一方の入力部材を直接又は間接に取り付けることができる。
この結果、全体として、軸受についてかなり好ましい支承パターンが得られる。
【0014】
特に有利には、入力部材のうちの少なくとも一方は、回転部材に連結され、回転部材は、ラジアル軸受構造体によって、ハウジングに固定されたハブに回転自在に取り付けられている。
回転部材を一体品として少なくとも一方の入力部材に連結することができ又は別個の部品として具体化できる。
【0015】
また、有利には、ラジアル軸受構造体は、互いに軸方向に間隔をおいて設けられた2つのラジアル軸受を有する。
かかる構成では、軸方向力も又ラジアル軸受構造体に吸収することが可能であり、したがって、少なくとも一方の入力部材又は回転部材を好ましい仕方で軸方向に固定できるようになる。
【0016】
別の実施形態によれば、ラジアル軸受は、密封されており、ラジアル軸受相互間の空間は、冷却用流体を案内するのに役立つ。
この構成では、設計の観点で特に好ましい仕方で、冷却用流体をラジアル軸受構造体を介して摩擦クラッチに供給することが可能である。
【0017】
また、冷却用流体を供給するのに回転リードスルー等は不要であることが好ましい。加うるに、この場合、冷却用流体をハウジングに固定されたハブを介して半径方向内方側部から供給し、次に、最適な仕方でそれぞれ回転部材及び入力部材を介し且つこれらに作用する遠心力により摩擦クラッチに供給するのがよい。
【0018】
また、第1及び前記第2のピストン/シリンダ装置は、ラジアル軸受構造体の互いに反対側に配置されていることが一般に好ましい。
一般に、生じる力を好ましい仕方で案内し又は吸収することができる実質的に対称の配置構成を得ることが可能である。
同様な理由で、第1及び前記第2のピストン/シリンダ装置が互いに逆方向に作用すれば、これ又有利である。
【0019】
ハウジングに固定され、逆方向に作用するピストン/シリンダ装置を備えたデュアルクラッチ構造体の実施形態は又、入力部材の取付け方とは別個独立の、即ち、特に、入力部材のうち少なくとも一方が、ラジアル軸受構造体によって、ハウジングに固定されたハブに回転自在に取り付けられるかどうかとは無関係に、別発明であると考えられる。
【0020】
逆方向の作用は、対称の設計及びモジュール度を得ることができるという点において多くの利点を提供する(例えば、実質的に同一又は鏡に映したように対称に配置されたピストン/シリンダ装置を用いることが可能である)。
一般に有利には、ピストン/シリンダ装置は、ハウジングに固定されたハブの外周部に直接取り付けられる。
【0021】
好ましくは摩擦クラッチ内で半径方向に延びるハブは、その外周部でピストン/シリンダ装置を支持することができる。また、この場合、ラジアル軸受を比較的小さな半径を有するよう設計できれば有利である。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、摩擦クラッチはそれぞれ、ばね構造体によって解除方向に予荷重される。
したがって、この場合、ラジアル軸受は、連結軸受として機能する。というのは、摩擦クラッチを連結する(入れる)対応の力がラジアル軸受を介して加えられるからである。
この場合、ばね構造体のうち少なくとも一方が、回転部材で支持され、回転部材が、ラジアル軸受構造体によって、ハウジングに固定されたハブに回転自在に取り付けられると特に有利である。
これにより、構成要素の複雑さが一段と減少する。というのは、支持体を一般にどのような場合であっても設けられる構造要素によって提供できるからである。
【0023】
2つのピストン/シリンダ装置が互いに逆の作用方向を備えた状態で互いに反対側に設けられる実施形態では、ばね構造体の両方を好ましくは、回転部材で支持するのがよい(互いに反対側から)。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、第2の摩擦クラッチは、第1の摩擦クラッチ内に半径方向に配置される。これにより、軸方向に短い設計が可能になる。
この場合、有利には、第1の摩擦クラッチの入力部材は、半径方向外方に配置された板状キャリヤを有する。
【0025】
また、第2の摩擦クラッチの入力部材が半径方向内方に配置された板状キャリヤを有していれば有利である。
【0026】
変形実施形態では、第2の摩擦クラッチは、第1の摩擦クラッチに軸方向に隣接して配置される。
これにより、半径方向にコンパクトな設計が可能になる。
【0027】
この場合、第1の摩擦クラッチの入力部材が半径方向内方に配置された板状キャリヤを有していれば特に有利である。
これにより、ラジアル軸受構造体への好ましい連結が可能になる。
【0028】
したがって、第2の摩擦クラッチの入力部材が半径方向内方に配置された板状キャリヤを有していれば、これ又有利である。
【0029】
上記の変形実施形態の場合、一般に好ましくは、ラジアル軸受構造体によってハブに取り付けられた回転部材が、第1及び第2の摩擦クラッチの共通の入力部材に連結される。
これにより、構成要素の複雑さを一段と減少させることができる。
【0030】
本発明のデュアルクラッチ構造体により、次の利点のうち少なくとも1つを達成することが全体として可能である。
構成要素の複雑さが低下する。
製造費が安い。
結果的に、ドラグトルクが低い。
遠心力補償空間が不要である。というのは、回転ピストンが設けられていないからである。
回転リードスルーが不要であり、したがって、はっきりと分からないほどの漏れも無くなるようなっている。
デュアルクラッチ構造体のアクチュエータ構成は、モジュール化設計のものであってよい。
同じアクチュエータ構成を互いに異なるデュアルクラッチ構造体、特に、湿式作動摩擦クラッチを備えたデュアルクラッチ構造体だけでなく、乾式作動摩擦クラッチ用のデュアルクラッチ構造体についても使用できる。
【0031】
上述の特徴及び更に以下に説明されるべき特徴を、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ特定の組合せだけでなく他の組合せで又は個別的に利用できることは自明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の例示の実施形態が、図面に記載されており、以下の説明において詳細に説明される。
図1では、自動車用のドライブトレインが、全体を符号10で示されている。
ドライブトレイン10は、エンジン、例えば内燃機関12、デュアルクラッチトランスミッション14を有している。デュアルクラッチトランスミッション14の入力は、内燃機関12のクランクシャフト16に連結されている。デュアルクラッチトランスミッション14は、出力シャフト18を有し、この出力シャフトは、それ自体公知の仕方で、自動車の駆動輪に連結されている。
【0033】
デュアルクラッチトランスミッション14は、ハウジング22内に保持されたデュアルクラッチ構造体20を有している。デュアルクラッチ構造体20は、第1の摩擦クラッチ24と第2の摩擦クラッチ26とを有する。2つの摩擦クラッチ24,26は、半径方向に互いに嵌まり合うように配置されており、第1の摩擦クラッチ24は、半径方向外方に位置している。
【0034】
第1の摩擦クラッチ24は、第1の入力部材28を有し、この第1の入力部材は、入力、即ち、クランクシャフト16に連結されている。第1の入力部材28は、かごのように軸方向前方に延びている。2つの摩擦クラッチ24,26は、第1の入力部材28の半径方向内方に配置されている。
【0035】
第1の摩擦クラッチ24は、第1の出力部材30を更に有している。第1の出力部材30は、デュアルクラッチ構造体の第1の出力シャフト32に連結されている。第1の出力シャフト32は、中実シャフトとして具体化され、この出力シャフトは、デュアルクラッチトランスミッション14の第1の部分変速装置34に連結されている。
【0036】
第1の出力部材30は同様に、ハウジングかごのように設計されており、この第1の出力部材は、第1の入力部材28内で半径方向に延び、第1の摩擦クラッチ24は、第1の出力部材30と第1の入力部材28との間に保持されている。
【0037】
第2の摩擦クラッチ26は、第2の入力部材38を有する。第2の入力部材38は、第1の入力部材28に回転可能にしっかりと連結されている。第2の摩擦クラッチ26は、第2の出力部材40を更に有している。第2の出力部材40は、同様に、ハウジングかごのように設計されており、この第2の出力部材は、第1の出力部材30内で半径方向に延びている。第2の出力部材40は、第2の出力シャフト42に連結され、この第2の出力シャフトは、中空シャフトとして、第1の出力シャフト32に対して同心状に設けられている。第2の出力シャフト42は、デュアルクラッチトランスミッション14の第2の部分変速装置44に連結されている。
【0038】
第1の入力部材28、第1の出力部材30及び第2の出力部材40は、上述したように、クランクシャフト16の付近からハウジングかごのように部分変速装置34,44の方向に延びている。デュアルクラッチ構造体20は、ハブ46を更に有し、このハブは、ハウジングに固定されていて、部分変速装置34,44の付近からクランクシャフト16の付近の方向に軸方向に延び、即ち、かご形の第2の出力部材40内で半径方向に配置されている。この場合、ハウジングに固定されたハブ46は、2つの出力シャフト32,42に対して同軸に配置され、これら出力シャフトを包囲している。
【0039】
第1のアキシアル軸受48が、ハウジングに固定されたハブ46の端部側と第2の出力部材40の半径方向区分との間に配置されている。第2のアキシアル軸受50が、第2の出力部材の半径方向区分のリヤ側と第1の出力部材30の半径方向区分との間に配置されている。第3のアキシアル軸受52が、第1の出力部材の半径方向区分のリヤ側と第1の入力部材28の半径方向区分との間に配置されている。アキシアル軸受48,50,52は、ハウジングに固定されたハブ46と半径方向にほぼ整列している。
【0040】
シャフトシール54が、デュアルクラッチ構造体20のハウジング22とクランクシャフト16との間に設けられている。
【0041】
ハウジング22は、他方の軸方向側部がハウジングに固定されたハブ46に連結されていて、全体として密閉空間が形成されるようになっている。同様に、必要に応じてハウジングに固定されたハブ46と第2の出力シャフト42との間及び第2の出力シャフト42と第1の出力シャフト32との間に設けられているシャフトシールは、図示されていない。
【0042】
第1の部分変速装置34及び第2の部分変速装置44は、先行技術からそれ自体知られているように、平歯車伝動装置として設計されている。第1の部分変速装置34は、例えば、偶数段のギアを有し、第2の部分変速装置44は、例えば、奇数段のギアを有している。
【0043】
第2の入力部材38を取り付け、したがって、間接的に第1の入力部材28も又取り付けるラジアル軸受構造体60が設けられている。ラジアル歯車構造体60は、第1のラジアル軸受62及びこれから軸方向に間隔をおいて設けられた第2のラジアル軸受64を有し、これらラジアル軸受の内リングは、ハウジングに固定されたハブ46に連結されている。2つのラジアル軸受62,64は、回転部材66を半径方向に取り付けるの機能を有し、この回転部材は、半径方向外方に突き出た半径方向ウェブ68を有している。
【0044】
ラジアル軸受62,64は、実質的に半径方向の力を吸収するが、回転部材66は、この回転部材66も又ラジアル軸受62,64により軸方向に案内されるような仕方でこれらラジアル軸受に締結されている。
【0045】
半径方向ウェブ68は、第2の入力部材38、具体的には、第2の入力部材38の軸方向部材70に連結されている。
【0046】
この軸方向部材70は、第2の摩擦クラッチ26用の内側板キャリヤとして機能し、この軸方向部材は、半径方向部材72に連結されている。半径方向部材72は、部分変速装置34,44に隣接した軸方向端部から半径方向外方に延びており、この半径方向部材は、回転可能な固定継手74によって第1の入力部材28の軸方向に突き出た区分に連結されている。第1の入力部材28のこの軸方向に突き出た区分は、第1の摩擦クラッチ24の外側板キャリヤとして機能する。
【0047】
第1の出力部材30の軸方向に突き出た区分は、第1の摩擦クラッチ24のための内側板状キャリヤとして機能する。
【0048】
これに半径方向に隣接して位置する第2の出力部材40の軸方向に延びる区分は、第2の摩擦クラッチ26の外側板状キャリヤとして機能する。
【0049】
2つの摩擦クラッチ24,26を作動させる第1のピストン/シリンダ装置80及び第2のピストン/シリンダ装置82が設けられている。ピストン/シリンダ装置80,82は、ラジアル軸受構造体60又は回転部材66の互いに反対側に配置されている。
【0050】
第1のピストン/シリンダ装置80は、ハウジングに固定されているハブ46に剛結された第1のシリンダ84を有している。第1のピストン/シリンダ装置80は、第1のシリンダ84内で軸方向に変位可能であるように設けられた第1のピストン86を更に有している。このように形成されたシリンダ空間は、ハウジングに固定されたハブ46内の半径方向ボア(詳細には示されていない)によって供給ラインに結合されている。
【0051】
第1のピストン86の外方側部は、第1の連結軸受88によって第1の圧力板90に連結されている。第1の圧力板90は、半径方向外方に延び、この第1の圧力板は、力を第1の摩擦クラッチ24に軸方向に加えるよう設計された軸方向区分を有している。第1の圧力板90は、第1の入力部材28及び第2の入力部材38と共に回転する。ハウジングに固定された第1のピストン86に対する速度差は、連結軸受88により吸収され、この連結軸受は、アキシアル軸受として具体化される。
【0052】
第1の摩擦クラッチ24のクラッチ板に連結された第1の圧力板90の軸方向区分は、第2の入力部材38の半径方向部材72に設けられた開口部91を貫通している。設計の観点で実現される例示の一実施形態では、一般に、この種の複数の開口部91が設けられ、これら開口部91は、第1の圧力板90の周囲全体に沿って分布された状態で配置されている。
【0053】
第1のばね構造体92が、見て第1の圧力板90の第1の連結軸受88と反対側に配置されている。第1のばね構造体92は、回転部材66の半径方向ウェブ68で支持され、この第1のばね構造体は、第1の圧力板90を半径方向ウェブ68から遠ざかる軸方向に且つ部分変速装置34,44の方向に押す。第1の摩擦クラッチ24を作動させるため、第1のピストン/シリンダ装置80に作動油を供給して第1のピストン86が逆方向に動かされ、その結果、第1の軸方向力93を第1の圧力板90を介して第1の摩擦クラッチ24のクラッチ板スタックに及ぼすように構成されている。
【0054】
第2のピストン/シリンダ装置82は、対応した仕方でこれに関してほぼ鏡像関係に構成されている。それに応じて、高いモジュール度を与えるよう類似の又は同一の構成部品を用いる第1及び第2のピストン/シリンダ装置80,82を設けるのがよい。
【0055】
したがって、第2のピストン/シリンダ装置82は、第2のシリンダ94を有し、この第2のシリンダは、特に第2の出力部材40に実質的に隣接した状態で、ハウジングに固定されているハブ46に固定的に連結されている。
【0056】
第2のピストン/シリンダ装置82は、第2のピストン96を更に有し、この第2のピストンは、第2の連結軸受98を介して第2の圧力板100に作用する。第2の圧力板100の軸方向区分は、第2の摩擦クラッチ26のクラッチ板スタックに当接する。したがって、第2のピストン/シリンダ装置82は、第2の軸方向力103を第2の摩擦クラッチ26に及ぼすことができ、第2の軸方向力103は、第1の軸方向力93と逆方向に整列している。
【0057】
回転部材66の半径方向ウェブ68と第2の圧力板100との間に第2のばね構造体102が設けられており、この第2のばね構造体102は、第2の圧力板100に、クランクシャフト16に向かう方向に、即ち、第2の摩擦クラッチ26の解除方向に予荷重する。ラジアル軸受60,62は、ばね構造体92,102が回転部材68に及ぼす軸方向力を吸収する。
【0058】
第2のピストン/シリンダ装置82のシリンダ空間は、ハブ46内に設けられたダクト(詳細には示されていない)によって、油圧回路(同様に、図1には詳細には示されていない)に結合されている。しかしながら、図1は、冷却用流体を摩擦クラッチ24,26に供給することができるダクトも又、ハウジングに固定されているハブ46内に設けられていることを示している。
【0059】
この場合、冷却用流体は、ハブ46内のダクトを介して2つのラジアル軸受62,64相互間の空間及び回転部材66内の半径方向ダクト内に供給され、そして、摩擦クラッチ24,26中へ供給される。クラッチ板への適当な流れの供給を保証するために入力部材38及び出力部材30,40にそれぞれ適当な半径方向開口部が設けられていることは自明である。
【0060】
この場合、回転部材66中の半径方向ダクトは、半径方向ウェブ68を貫通して延びるのがよい。
【0061】
この実施形態では、ラジアル軸受62,64は好ましくは、密閉型軸受として具体化されるのは自明である。
【0062】
図1には、摩擦クラッチ24,26が湿式作動多段クラッチとして示されているが、本発明のデュアルクラッチ構造体20の設計は、乾式作動摩擦クラッチにも適用できることは自明である。
【0063】
この場合、冷却用空気をダクト経由で供給することが可能であり、ダクトは、湿式作動クラッチの場合、冷却用油を供給するために用いられる。
【0064】
かくして、湿式作動又は乾式作動摩擦クラッチを備えたデュアルクラッチ構造体のモジュラーシステムを構成することが全体として可能である。この場合、基本設計は、一方又は他方のクラッチ構造体に使用可能である。
【0065】
ピストン/シリンダ装置80,82を作動させるための作動油をハウジングに固定されているハブ46を介して供給することができ、したがって、回転リードスルーの場合に生じる漏れが生じないようになる。閉ループ制御に必要な漏れは、形成された孔により油圧回路内に提供できる。
【0066】
固定状態のピストン/シリンダ装置の結果として回転部品が少ないので、結果として、ドラグトルクが低くなる。また、複雑さが少ない結果として、デュアルクラッチ構造体を低い製造費で製造できる。加うるに、遠心力補償空間は不要である。というのは、ピストン/シリンダ装置80,82は、回転せずに固定されるように設計されているからである。
【0067】
固定状態のハブ46を備えたデュアルクラッチ構造体20の全体設計は又、機械式ポンプ又は他の組立体を作動させるために使用できる。
【0068】
図面を分かりやすくするために、ハウジングに固定されているハブ46中の上述の流体ダクトは、図1では全体が110で示されている。しかしながら、かかる流体ダクトは、互いに異なる流体ラインから成っていてもよく、かかる流体ダクトは、ハウジングに固定されているハブ46の周囲全体に半径方向に分布して配置されるよう構成できることは自明である。
【0069】
図2は、本発明のデュアルクラッチ構造体20′の変形実施形態を示している。
【0070】
全体的な設計及び全体的な作動モードは、図1のデュアルクラッチ構造体20に一致しており、したがって、以下においては、相違点のみを説明する。
【0071】
デュアルクラッチ構造体20′では、第1の摩擦クラッチ24′と第2の摩擦クラッチ26′は、軸方向に互いに隣接して配置されている。これにより、半径方向にコンパクトな設計が可能になる。
【0072】
第1の入力部材28′は、第2の入力部材38′に回転可能にしっかりと連結されている。この場合、第2の入力部材38′は、第1の摩擦クラッチ24′と第2の摩擦クラッチ26′の両方の内側板キャリヤとして機能する。
【0073】
理解できるように、ピストン/シリンダ装置80′,82′の設計は、図1のデュアルクラッチ構造体20の設計と同一である。これにより、モジュール度の向上が可能になる。互いに半径方向に嵌め込まれた摩擦クラッチを備えるデュアルクラッチ構造体20と互いに軸方向に隣接して配置した摩擦クラッチを備えるデュアルクラッチ構造体の両方を同一の基本設計で構成することが可能である。
【0074】
この場合、多くの部品、例えば、第2の圧力板100′、第2の摩擦クラッチ26′の第2の出力部材40′等は、同一であるということが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態によるデュアルクラッチ構造体を備えた自動車用のドライブトレインの略図である。
【図2】本発明の別の実施形態によるデュアルクラッチ構造体の略図である。
【符号の説明】
【0076】
10 ドライブトレイン
12 内燃機関
14 デュアルクラッチトランスミッション
16 クランクシャフト
18 出力シャフト
20 デュアルクラッチ構造体
22 ハウジング
24 第1の摩擦クラッチ
26 第2の摩擦クラッチ
32,42 出力シャフト
46 ハブ
60 ラジアル軸受構造体
80,82 ピストン/シリンダ装置
88,98 アキシアル軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルクラッチトランスミッション(14)用のデュアルクラッチ構造体(20)であって、入力シャフト(16)と、第1の摩擦クラッチ(24)と、第2の摩擦クラッチ(26)と、2つの出力シャフト(32,42)と、ハウジングに固定されたハブ(46)と、ハウジングに固定された第1のピストン/シリンダ装置(80)と、ハウジングに固定された第2のピストン/シリンダ装置(82)とを有し、前記摩擦クラッチ(24,26)の入力部材(28,38)が、前記入力シャフト(16)に連結され、前記摩擦クラッチ(24,26)の出力部材(30,40)が、前記2つの出力シャフト(32,42)にそれぞれ連結され、前記摩擦クラッチ(24,26)を前記ハウジングに連結された前記ピストン/シリンダ装置(80,82)及びアキシアル軸受(88,98)によってそれぞれ作動させることができるようになっているデュアルクラッチ構造体において、
前記入力部材(28,38)のうち少なくとも一方は、ラジアル軸受構造体(60)によって、前記ハウジングに固定された前記ハブ(46)に取り付けられている、
ことを特徴とするデュアルクラッチ構造体。
【請求項2】
前記入力部材(28,38)のうちの少なくとも一方(38)が、回転部材(66)に連結され、該回転部材が、前記ラジアル軸受構造体(60)によって、前記ハウジング(46)に固定された前記ハブ(46)に回転自在に取り付けられている、
請求項1に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項3】
前記ラジアル軸受構造体(60)は、互いに軸方向に間隔をおいて設けられた2つのラジアル軸受(62,64)を有する、
請求項1又は2に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項4】
前記ラジアル軸受(62,64)が密封されており、
前記ラジアル軸受相互間の空間は、冷却用流体を案内するの機能を有する、
請求項3に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項5】
前記第1及び前記第2のピストン/シリンダ装置(80,82)は、前記ラジアル軸受構造体(60)の互いに反対側に配置されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項6】
前記第1及び前記第2のピストン/シリンダ装置(80,82)は、互いに逆方向(93,103)に作用する、
請求項1ないし5のいずれk1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項7】
前記ピストン/シリンダ装置(80,82)は、前記ハウジングに固定された前記ハブ(46)の外周部に直接取り付けられている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項8】
前記摩擦クラッチ(24,26)はそれぞれ、ばね構造体(92,102)によって解除方向に予荷重されている、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項9】
前記ばね構造体(92,102)のうち少なくとも一方は、回転部材(66)で支持され、前記回転部材は、前記ラジアル軸受構造体(60)によって、前記ハウジングに固定された前記ハブ(46)に回転自在に取り付けられている、
請求項8に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項10】
前記第2の摩擦クラッチ(26)は、前記第1の摩擦クラッチ(24)内に半径方向に配置されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項11】
前記第1の摩擦クラッチ(24)の前記入力部材(28)は、半径方向外方に配置された板状キャリヤ(28)を有する、
請求項10に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項12】
前記第2の摩擦クラッチ(26)の前記入力部材(38)は、半径方向内方に配置された板状キャリヤ(38)を有する、
請求項10又は11に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項13】
前記第2の摩擦クラッチ(26′)は、前記第1の摩擦クラッチ(24′)に軸方向に隣接して配置されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項14】
前記第1の摩擦クラッチ(24′)の前記入力部材(28′,38′)は、半径方向内方に配置された板状キャリヤ(38′)を有する、
請求項13に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項15】
前記第2の摩擦クラッチ(26′)の前記入力部材(28′,38′)は、半径方向内方に配置された板状キャリヤ(38′)を有する、
請求項13又は14に記載のデュアルクラッチ構造体。
【請求項16】
前記ラジアル軸受構造体(60)によって前記ハブ(46)に取り付けられた回転部材(66)が、前記第1及び前記第2の摩擦クラッチ(24′,26′)の共通の入力部材(38′)に連結されている、
請求項13ないし15のいずれか1項に記載のデュアルクラッチ構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−232217(P2007−232217A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−85625(P2007−85625)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(505152284)ゲットラーク ゲットリーベ ウント ツァーンラトファブリーク ヘルマン ハーゲンマイアー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】