説明

デュアルスプレイ式自動ディスペンサ

本発明に係る自動ディスペンサは、2個の液容器(A,B)に入っている幾ばくかの液体を周期的にエアロゾル化して吐出する。互いに異なる性質を有する複数種類の液体、例えば互いに異種の香料や活性物質を、同じ自動ディスペンサに備わる別々の液容器(A,B)に入れて交互に噴霧させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2個の液容器を備え、それらの液容器に入っている幾ばくかの液体を周期的にエアロゾル化して吐出する自動ディスペンサに関する。
【0002】
本発明では、互いに異種の香料や活性物質等、互いに異なる性質を有する複数種類の液体を同じ自動ディスペンサに備わる別々の液容器に入れ、それらの液体を交互に噴霧させることができる。
【背景技術】
【0003】
スプレイ式自動ディスペンサは周知の通り液体を周期的に噴霧可能な装置である。通常、この種の装置は、ある一種類の液体を噴霧させうる単一のエアロゾルノズル、そのノズルを作動させるためのカム乃至レベル要素、並びにその要素を作動させるための直流電動機を備えている。
【0004】
その電動機には、スプレイバルブを所定時刻に作動させる電子タイマが付設される。
【0005】
特許文献1、2及び3には、エアロゾルを吐出可能な従来型ディスペンサの例が幾つか記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4483466号明細書
【特許文献2】米国特許第3739944号明細書
【特許文献3】米国特許第5249718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ユーザがより多様な形態で香り付けや環境調整を行える秀逸な装置を、非常に安価に製造可能な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成要件については別紙特許請求の範囲中の独立形式請求項を参照されたい。一例を示すと、本発明に係るスプレイ式自動ディスペンサは、ある一種類の液体を噴霧するための第1スプレイバルブと、本ディスペンサ内に可枢動支持されていて休止態勢及び第1作動態勢をとりうるカム要素と、を備える。第1スプレイバルブは、このカム要素が休止態勢である間は作動しないが、そのカム要素が休止態勢から第1作動態勢に変化すると当該カム要素による押下を受けて作動する。
【0009】
スプレイバルブの動作は、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)にとり周知であるので、この点について詳細に説明しなくても本発明の理解には差し支えないであろう。
【0010】
カム要素は電動機で作動させる。電動機には電子タイマを接続しておき、その電子タイマから電動機に対して動作指示を与えるようにする。
【0011】
本ディスペンサの特徴は、第2スプレイバルブを設けたこと、並びに電動機の動作を受け第1及び第2スプレイバルブが選択的に作動するよう上掲のカム要素を構成したことにある。
【0012】
これを実現するには、例えば、その電動機における出力軸回動方向を変化させる電子回路を設ければよい。出力軸回動方向が第1方向ならカム要素の作用で第1スプレイバルブが作動、第2方向なら同じく第2スプレイバルブが作動、といった具合である。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明に係るスプレイ式自動ディスペンサによれば、複数種類の液体を交番的に且つ指定周期で噴霧させることができる。しかも、使用する電動機の個数が1個だけであるので、その製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】そのカム要素が休止態勢をとっているディスペンサを示す背面図である;但し、そのハウジングの一部を省略してある。
【図2】図1に示したディスペンサの斜視図である;但し、図の簡明化のためハウジング部品を全て省略してある。
【図3】本ディスペンサの正面図である;但し、そのハウジング部品を全て省略してある。
【図4】図3に示したディスペンサ及びその内部構成部材を示す斜視図である。
【図5】本ディスペンサ及びそれを覆うハウジング部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、説明内容を補足し本発明の特徴をより好適にご理解頂くため、本明細書と一体不離の関係にある別紙図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。但し、その意図はあくまで例示であり要旨限定の意図を含んではいない。
【0016】
図1に本発明の好適な実施形態を示す。本実施形態のスプレイ式ディスペンサでは、図示しない第1及び第2スプレイバルブ並びにそれに対応する第1及び第2加圧容器(A,B)が、そのハウジング(1)内に実装されている。
【0017】
図示の通り、それら第1及び第2加圧容器(A,B)はハウジング(1)内のドーム状部材(15,16)によって固定的に保持されている。個々のドーム状部材(15,16)の内側では、第1及び第2レベル要素(11,12)のうち対応するものが可枢動支持されている。個々のスプレイバルブは、第1及び第2レベル要素(11,12)のうち対応するものの作用で作動し、対応するエアロゾルノズル(13,14)から幾ばくかの液体を噴霧させる。
【0018】
ハウジング(1)を構成する部品のうち一方の内面からはフィンガ付きの筒(23)が張り出しており、その筒(23)上にはカム要素(2)が可枢動支持されている。カム要素(2)はT字状であり、右アーム(3)、左アーム(4)及び中央アーム(5)を有している。
【0019】
その中央アーム(5)の長軸上には枢支点、即ちカム要素(2)が筒(23)のフィンガによって枢動可能に把持される点が位置している。
【0020】
このカム要素(2)の形状や寸法は、第1容器(A)に係るスプレイバルブや第2容器(B)に係るスプレイバルブを作動させうるように設定されている。
【0021】
また、直流電動機(6)はカム要素(2)を作動させる手段であり、その出力軸(7)はカム要素(2)と連携している。図1で見た場合、軸(7)が時計方向に回るとカム要素(2)が右上がり方向に枢動して第2レベル要素(12)が作動し、逆に軸(7)が反時計方向に回るとカム要素(2)が左上がり方向に枢動して第1レベル要素(11)が作動する。
【0022】
この動作でスプレイバルブが作動するのは、アーム(3,4)のうち対応するものの自由端が対応するレベル要素(11,12)に接触し、そのレベル要素(11,12)によってそのスプレイバルブが押下されるからである。レベル要素(11,12)は対応するアーム(3,4)の回転運動を直線的な動きに変換してそのスプレイバルブに伝えるので、作動させる際のスプレイバルブ損傷を防ぐことができる。
【0023】
このレベル要素(11,12)の寸法は、対応するドーム状部材(15,16)内のスプレイバルブに届くように定められている。
【0024】
更に、電動機(6)の出力軸(7)をカム要素(2)の中央アーム(5)に連携させる手段としては、既知形態の減速ギア(8,9,10)が使用されている。同じ目的で、中央アーム(5)の自由端(17)には歯状部分が設けられており、図3に示す如くそれら減速ギアのうち1個にかみ合わされている。
【0025】
そして、本ディスペンサは電子回路(19)も備えている。この回路(19)の一部はプログラマブルな電子回路等で形成された電子タイマであり、その接続先の電動機(6)に対する動作指示に使用されている。本ディスペンサでは、更に、出力軸回動方向を変化させるための電子回路が電動機側端子に接続されている。
【0026】
本ディスペンサでは、プログラム上で定められている所定の周期で電動機が作動するよう、またプログラム上で定められているシーケンスに従い電動機出力軸が所要方向に回りスプレイバルブが選択的に作動するよう、これらの電子回路を使用して自動動作を実行している。
【0027】
従って、2個のスプレイバルブを交番的に作動させ、室内に二種類の香料を噴霧させること等が可能である。
【0028】
また、使用プログラムをユーザが指定できるよう、電子回路上に複数通りのプログラムを格納可能な構成にしてもよい。ユーザによるマニュアル指示を受け付け、指示されたスプレイバルブを作動させる構成にしてもよい。
【0029】
更に、カム要素がT字状であるため、減速ギアや電動機を本ディスペンサ内の容器間空間に配することができる。即ち、ハウジング内空間を有効利用してコンパクトなディスペンサを実現することができる。
【0030】
同じく、カム要素がT字状であるため、減速ギアの歯における応力を増すことなく、減速ギアで加えうるトルクを増大させることができる。
【0031】
そして、そのカム要素がスプレイバルブに及ぼす作用の持続時間によらず所定量の揮発性物質が放出されるよう、計量バルブをスプレイバルブとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある一種類の液体を噴霧するための第1スプレイバルブと、
本ディスペンサ内に可枢動支持されていて、その態勢を休止態勢から第1作動態勢へと変化させると上記第1スプレイバルブが作動するカム要素と、
上記カム要素を作動させうるようにその出力軸が当該カム要素と連携している電動機と、
その電動機に対し動作指示を与えるため上記電動機に接続されている電子タイマと、
を備え、複数種類の液体を周期的に噴霧可能なデュアルスプレイ式の自動ディスペンサであって、
更に第2スプレイバルブを備え、それら第1及び第2スプレイバルブが上記電動機の動作を受けて選択的に作動するよう上記カム要素が構成されていることを特徴とする自動ディスペンサ。
【請求項2】
請求項1記載の自動ディスペンサであって、更に、上記電動機の端子に接続されておりその電動機における出力軸回動方向を交番的に変化させる電子回路を備える自動ディスペンサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動ディスペンサであって、上記電動機が第1方向に動作すると上記カム要素が第1作動態勢になって上記第1スプレイバルブが作動し、また当該電動機が第2方向に動作すると当該カム要素が第2作動態勢になって上記第2スプレイバルブが作動する自動ディスペンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の自動ディスペンサであって、上記カム要素が左アーム、右アーム及び中央アームを有するT字状の部材であり、本ディスペンサに対する当該カム要素の枢支点がその中央アームの長軸上にある自動ディスペンサ。
【請求項5】
請求項4記載の自動ディスペンサであって、上記電動機の出力軸が、減速ギアを介し上記カム要素の中央アームと連携する自動ディスペンサ。
【請求項6】
請求項5記載の自動ディスペンサであって、上記中央アームが、上記減速ギアのうち1個とかみ合う歯状の自由端を有する自動ディスペンサ。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項記載の自動ディスペンサであって、上記電動機、上記カム要素の中央アーム及び上記減速ギアが、本ディスペンサ内の容器間空間に存する自動ディスペンサ。
【請求項8】
請求項7記載の自動ディスペンサであって、更に、上記スプレイバルブに対応して液体貯留用の容器を複数個備える自動ディスペンサ。
【請求項9】
請求項8記載の自動ディスペンサであって、それらの容器内に互いに異なる性質の液体が貯留されている自動ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505232(P2011−505232A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533445(P2010−533445)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062384
【国際公開番号】WO2009/062553
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(506076732)ツォベーレ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (9)
【Fターム(参考)】