説明

デュアルモジュラスプリスケーラ

【課題】セットアップマージンを増加させて、更なる高速動作を図る。
【解決手段】リング状にカスケード接続された9個のフリップフロップU12,U4〜U11、及びNANDゲートU3を備えている。フリップフロップU12,U4〜U11は、初段から最終段に向けてこの順で配列され、それぞれ、マスタースレイブ方式のフリップフロップにより構成されている。フリップフロップU12のマスターラッチに、分周比切替端子T−PSが接続されたNORゲートG1を組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路等に用いられるデュアルモジュラスプリスケーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のフリップフロップをリング状にカスケード接続し、クロック信号をn分周又はn+1分周するデュアルモジュラスプリスケーラが知られている。例えば、特許文献1には、最高動作周波数の向上及びいずれのスレイブフリップフロップからも出力を得ることを目的とするデュアルモジュラスプリスケーラが開示されている。
【0003】
この従来のデュアルモジュラスプリスケーラは、第1から第3のマスターフリップフロップ及び第1〜第3のスレイブフリップフロップを交互に配置し、これらをリング状にカスケード接続し、第1のマスターフリップフロップの入力端子に、分周比切替端子からの信号と、第3のスレイブフリップフロップの正相出力信号とを入力とする第1の2入力ORゲートが接続され、第1のスレイブフリップフロップの入力端子に、第1のマスターフリップフロップの逆相出力信号と第3のマスターフリップフロップの逆相出力信号とを入力とする第2の入力ORゲートが接続されたものである。
【0004】
また、図7は、特許文献1とは別の従来のデュアルモジュラスプリスケーラの回路図を示している。このデュアルモジュラスプリスケーラは、ORゲートU1、NANDゲートU3、及び9個のマスタースレイブ方式のフリップフロップU2,U4〜U11を備える16/17デュアルモジュラスプリスケーラである。
【0005】
具体的には、ORゲートU1は、出力端子がフリップフロップU2のD端子に接続され、入力端子にはフリップフロップU11の出力信号と分周比切替信号PSとが入力される2入力ORゲートである。NANDゲートU3は、出力端子がフリップフロップU4のD端子に接続され、入力端子にはフリップフロップU2の出力信号とフリップフロップU11の出力信号とが入力される2入力NANDゲートである。
【0006】
フリップフロップU2,U4〜U11は、それぞれフリップフロップDFF1により構成されている。フリップフロップDFF1はクロック信号CKが入力されるCK端子と、入力端子であるD端子と、出力端子であるQ端子とを備えている。
【0007】
図8(a)はフリップフロップDFF1の回路図を示し、図8(b)はフリップフロップDFF1のCK端子に入力されるクロック信号CKから、後述するトランスミッションゲートTM1〜TM4を制御する、位相が例えば略180度異なる2相のクロック信号CK1,CKN1を生成するための回路の回路図を示している。
【0008】
図8(a)に示すように、フリップフロップDFF1は、マスターラッチM及びスレイブラッチSを備えている。マスターラッチMは、トランスミッションゲートTM1,TM2及びインバータI1,I2を備えている。
【0009】
トランスミッションゲートTM1は、D端子とインバータI1との間に接続されている。インバータI1の出力端子は、トランスミッションゲートTM3に接続されている。また、インバータI1の入出力端子間には、インバータI2及びトランスミッションゲートTM2が接続され、帰還ループが形成されている。
【0010】
スレイブラッチSは、トランスミッションゲートTM3,TM4に入力されるクロック信号CK1,CKN1の極性が異なる以外は、マスターラッチMと同一構成であるため説明を省略する。
【0011】
図8(b)に示すように、CK端子により入力されたクロック信号CKは、2個のインバータI5,I6を介して、クロック信号CK1とされ、1個のインバータI7を介してクロック信号CKN1とされ、2相のクロック信号CK1,CKN1とされる。そして、クロック信号CK1,CKN1は、トランスミッションゲートTM1〜TM4のそれぞれに入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭63−48014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示すデュアルモジュラスプリスケーラでは、フリップフロップ間に第1の2入力ORゲート及び第2の2入力ORゲートの2つのORゲートが接続されているため、これら2つのORゲートの伝搬遅延によって、最高動作周波数が制約を受けるという問題がある。
【0014】
特に、特許文献1のデュアルモジュラスプリスケーラの開発時に比べて、現在では、より高いクロック周波数で動作するデュアルモジュラスプリスケーラが要求されるようになり、特許文献1の構成では、フリップフロップ間に2つのゲート素子が配置されているため、セットアップマージンを確保することが難しく、高速動作を図ることができないという問題がある。
【0015】
また、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラでは、フリップフロップ以外にNANDゲートU3に加えて更にORゲートU1が設けられているため、特許文献1と同様の問題を有している。
【0016】
本発明の目的は、セットアップマージンを増加させて、更なる高速動作を図ることができるデュアルモジュラスプリスケーラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明の一局面によるデュアルモジュラスプリスケーラは、リング状に接続され、クロック信号に同期して入力信号のラッチ動作を行う複数のフリップフロップを備え、前記複数のフリップフロップのうち何れか1つのフリップフロップは、分周比を切り替えるための分周比切替信号が入力され、前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップは、マスタースレイブ方式のフリップフロップにより構成され、当該フリップフロップのマスターは、前記クロック信号に基づいて開閉制御される第1のトランスミッションゲートと、前記第1のトランスミッションゲートからの出力信号と前記分周比切替信号とが入力される論理ゲートとを備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、リング状に接続された複数のフリップフロップのうちいずれか1つのフリップフロップのマスターに、第1のトランスミッションからの出力信号と分周比切替信号とが入力される論理ゲートが設けられている。そのため、図7に示す従来のデュアルモジュラスプリスケーラが備えるORゲートを当該フリップフロップにマージすることができる。そのため、図7に示すORゲートが不要となり、フリップフロップ間のゲート素子によるゲート遅延が減少することになる。そのため、セットアップマージンを増加させ、更なる高速動作を図ることができる。
【0019】
また、分周比切替信号が、第1のトランスミッションゲートの出力側に設けられた論理ゲートに直接入力されている、すなわち、第1のトランスミッションゲートを介さずに論理ゲートに直接入力されているため、分周比切替信号とのセットアップマージンも増加させることができ、更なる高速動作を図ることができる。
【0020】
(2)前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップのマスターは、前記論理ゲートの入出力端子間に接続され、前記クロック信号によって信号の通過が制御されるフィードバックループを備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、分周比切替信号が入力されるフリップフロップのマスターの論理ゲートは、入出力端子間にクロック信号によって信号の通過が制御されるフィードバックループが接続されているため、データを確実にラッチすることができる。
【0022】
(3)前記フィードバックループは、インバータと、前記クロック信号に基づいて開閉制御される第2のトランスミッションゲートとを備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、フィードバックループは、インバータと第2のトランスミッションゲートとにより構成されていることになる。
【0024】
(4)前記フィードバックループは、クロックドインバータを備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、フィードバックループがクロックドインバータにより構成されているため、回路レイアウトの容易化を図ることができ、かつ、回路規模の縮小を図ることができる。
【0026】
(5)前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップのスレイブは、第1のインバータと、前記第1のインバータの入力端子に接続され、前記クロック信号に基づいて開閉制御される第3のトランスミッションゲートと、前記第1のインバータの入出力端子間に接続され、前記クロック信号によって信号の通過が制御されるフィードバックループとを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、フリップフロップ間のゲート素子によるゲート遅延を減少させることができ、セットアップマージンを増加させ、更なる高速動作を図ることができる。また、分周比切替信号が、第1のトランスミッションゲートの出力側に設けられた論理ゲートに直接入力されている、すなわち、第1のトランスミッションゲートを介さずに論理ゲートに直接入力されているため、分周比切替信号とのセットアップマージンも増加させることができ、更なる高速動作を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態によるデュアルモジュラスプリスケーラの回路図を示している。
【図2】(a)は図1に示すフリップフロップの詳細な構成を示す回路図であり、(b)はフリップフロップが備えるCK端子から入力されるクロック信号CKからトランスミッションゲートを制御する2相のクロック信号CK1,CKN1を生成するための回路の回路図を示している。
【図3】図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラのタイミングチャートを示している。
【図4】本発明の別の一実施の形態によるフリップフロップDFF2の回路図を示している。
【図5】図4に示すクロックドインバータの回路図を示している。
【図6】図2(a)の帰還ループを構成するインバータ及びトランスミッションゲートの回路図を示している。
【図7】従来のデュアルモジュラスプリスケーラの回路図を示している。
【図8】(a)は図7に示すフリップフロップの回路図を示し、(b)は図7に示すフリップフロップのCK端子から入力されるクロック信号CKからトランスミッションゲートを制御する2相のクロック信号CK1,CKN1を生成するための回路の回路図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態によるデュアルモジュラスプリスケーラについて説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるデュアルモジュラスプリスケーラの回路図を示している。図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、リング状にカスケード接続された9個のフリップフロップU12,U4〜U11、及びNANDゲートU3を備え、17分周回路又は16分周回路として機能するデュアルモジュラスプリスケーラである。
【0030】
フリップフロップU12,U4〜U11は、初段から最終段に向けてこの順で配列され、それぞれ、マスタースレイブ方式のフリップフロップにより構成されている。フリップフロップU12は、分周比切替端子T−PSに接続され、分周比切替信号PSが入力されるPS端子と、入力端子であるD端子と、クロック端子T−CKに接続され、クロック信号CKが入力されるCK端子と、出力信号が出力されるQ端子とを備えている。
【0031】
そして、フリップフロップU12は、後述する図2(a)に示すフリップフロップDFF2により構成され、例えばクロック信号CKの立ち上がりに同期して、D端子に入力されている入力信号をラッチして、Q端子に出力する。
【0032】
NANDゲートU3は、初段のフリップフロップU12の出力信号及び最終段のフリップフロップU11の出力信号が入力され、出力端子がフリップフロップU4のD端子に接続された2入力NANDゲートにより構成されている。
【0033】
フリップフロップU4〜U11は、それぞれ、図8に示すフリップフロップDFF1により構成され、例えばクロック信号CKの立ち上がりに同期して、D端子に入力されている入力信号をラッチして、Q端子に出力する。フリップフロップDFF1は、入力端子であるD端子と、出力端子であるQ端子と、クロック端子T−CKに接続され、クロック信号CKが入力されるCK端子とを備えている。
【0034】
フリップフロップU4は、D端子がNANDゲートU3を介してフリップフロップU12のQ端子に接続され、Q端子がフリップフロップU5のD端子に接続されている。フリップフロップU5〜U10は、それぞれ、D端子が前段のフリップフロップDFF1のQ端子に接続され、Q端子が次段のフリップフロップDFF1のD端子に接続されている。
【0035】
このように構成された、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、ローレベルの分周比切替信号PSが入力されると、17分周回路として動作し、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力されると、16分周回路として動作する。
【0036】
なお、図1に示すデュアルモジュラススケーラは、9個のフリップフロップを備えているが、本発明はこれに限定されず、m+1(mは正の整数)個のフリップフロップにより構成してもよい。この場合、1段目のフリップフロップをフリップフロップDFF2により構成し、2段目以降のm個のフリップフロップをフリップフロップDFF1により構成すればよい。これにより、2m+1分周回路又は2m分周回路として動作するデュアルモジュラスプリスケーラを構成することができる。
【0037】
図2(a)は図1に示すフリップフロップDFF2の詳細な構成を示す回路図であり、図2(b)はフリップフロップDFF2が備えるCK端子に入力されるクロック信号CKから、トランスミッションゲートTM1〜TM4を制御する、位相が例えば略180度異なる2相のクロック信号CK1,CKN1を生成するための回路の回路図を示している。図2(a)に示すように、フリップフロップDFF2は、マスターラッチMと、スレイブラッチSとにより構成されている。マスターラッチMは、トランスミッションゲートTM1,TM2、インバータI2、及びNORゲートG1を備えている。
【0038】
トランスミッションゲートTM1(第1のトランスミッションゲート)は、入力端子がD端子に接続され、出力端子がNORゲートG1の一方の入力端子に接続され、白丸で示す一方のゲート端子g1にクロック信号CK1が入力され、他方のゲート端子g2にクロック信号CKN1が入力される。
【0039】
ここで、トランスミッションゲートTM1は、ソース同士及びドレイン同士が接続されたp−MOS(Metal Oxide Semiconductor)及びn−MOSにより構成されている。但し、これは一例であり、p−MOS及びn−MOS以外のp型のトランジスタ及びn型のトランジスタにより構成してもよい。なお、図2では、ゲート端子g1がp−MOSのゲート端子を示し、ゲート端子g2がn−MOSのゲート端子を示している。
【0040】
ここで、CK端子は、図2(b)に示すように、直列接続されたインバータI5,I6と、インバータI5,I6の線路とは異なる線路に設けられたインバータI7とを備えている。これにより、CK端子に入力されたクロック信号CKから、インバータI7を介してクロック信号CKN1が生成され、インバータI5,I6を介してクロック信号CKN1に対して位相が略180度異なるクロック信号CK1が生成され、2相のクロック信号CKN1,CK1が生成される。
【0041】
トランスミッションゲートTM1は、ゲート端子g2にハイレベルのクロック信号CKN1が入力されると、このとき、クロック信号CK1はローレベルであるため、ゲート端子g1にローレベルのクロック信号CK1が入力され、p−MOS及びn−MOSが共にオンしてオンとなり、入力端子であるD端子からの入力信号を通過させる。
【0042】
一方、トランスミッションゲートTM1は、ゲート端子g1にハイレベルのクロック信号CK1が入力されると、このとき、クロック信号CKN1はローレベルであるため、ゲート端子g2にローレベルのクロック信号CKN1が入力され、p−MOS及びn−MOSが共にオフしてオフとなり、入力端子であるD端子からの入力信号を通過させない。
【0043】
NORゲートG1は、一方の入力端子にトランスミッションゲートTM1が接続され、他方の入力端子に分周比切替端子T−PSが接続され、出力端子がトランスミッションゲートTM3に接続された2入力NORゲートである。また、NORゲートG1の出力端子と、トランスミッションゲートTM1が接続された入力端子との間にはインバータI2及びトランスミッションゲートTM2がこの順で接続されており帰還ループが形成されている。
【0044】
トランスミッションゲートTM2は、トランスミッションゲートTM1と同一構成であるが、ゲート端子g1にクロック信号CKN1が入力され、ゲート端子g2にクロック信号CK1が入力されている。したがって、トランスミッションゲートTM2は、トランスミッションゲートTM1と相補的にオン・オフする。
【0045】
スレイブラッチSは、トランスミッションゲートTM3,TM4及びインバータI3,I4を備えている。トランスミッションゲートTM3は、入力端子がNORゲートG1の出力端子に接続され、出力端子がインバータI3を介してQ端子に接続されている。そして、トランスミッションゲートTM3は、ゲート端子g1にクロック信号CKN1が入力され、ゲート端子g2にクロック信号CK1が入力され、トランスミッションゲートTM2と同一タイミングでオン・オフする。
【0046】
インバータI3の出力端子とトランスミッションゲートTM3が接続された入力端子との間に、インバータI4及びトランスミッションゲートTM4がこの順に接続され帰還ループが形成されている。トランスミッションゲートTM4は、ゲート端子g1にクロック信号CK1が入力され、ゲート端子g2にクロック信号CKN1が入力されているため、トランスミッションゲートTM3と相補的にオン・オフする。
【0047】
ここで、NORゲートG1は、ローレベルの分周比切替信号PSが入力されると、インバータと等価になる。そのため、図2(a)に示すフリップフロップDFF2は、図7に示す初段のフリップフロップDFF1(U2)と等価になり、また、フリップフロップDFF2のD端子は、フリップフロップU11のQ端子と直接接続されている。
【0048】
一方、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいて、分周比切替端子T−PSからローレベルの分周比切替信号PSが入力されると、ORゲートU1はフリップフロップU11の出力信号をそのままフリップフロップU2に出力するため、フリップフロップU2は、D端子に、直接フリップフロップU11のQ端子が接続されているのと等価となる。
【0049】
よって、ローレベルの分周比切替信号PSが入力された場合、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラと等価になり、17分周回路として動作する。
【0050】
また、図2(a)に示すNORゲートG1は、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力されると、常にローレベルの信号を出力する。一方、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいて、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力されると、ORゲートU1は常にハイレベルの信号を出力することになり、初段のフリップフロップU2を構成する図8(a)に示すインバータI1の出力は常にローレベルとなる。
【0051】
よって、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力されると、図1及び図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラは共に、初段のフリップフロップ(U12及びU2)のマスターラッチMの出力がローレベルとなる。そのため、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力された場合においても、図1及び図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラは等価になる。よって、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、ハイレベルの分周比切替信号PSが入力されると、16分周回路として動作する。
【0052】
すなわち、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、フリップフロップU12のマスターラッチMのトランスミッションゲートTM1の出力側にインバータI1ではなく、一方の入力端子が分周比切替端子T−PSに接続されたNORゲートG1が配置されている。
【0053】
これにより、図7に示すORゲートU1が初段のフリップフロップU2にマージされ、フリップフロップ間の回路素子の個数が1つになる結果、ORゲートU1によるゲート遅延をなくすことができる。
【0054】
図1に戻り、フリップフロップDFF1の回路構成は、図8により示される。図8(a)に示すように、フリップフロップDFF1は、図2(a)に示すフリップフロップDFF2において、NORゲートG1をインバータI1で置き換えた以外は、フリップフロップDFF2と同一構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
図3は、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラのタイミングチャートを示している。図3においては、分周比切替信号PSはローレベルとされている。タイミングT1において、クロック信号CKが立ち上がると、この立ち上がりからフリップフロップU11のゲート遅延td11が経過したとき、フリップフロップU11の出力信号U11_Qが立ち上がる。
【0056】
これにより、初段のフリップフロップU12のD端子にハイレベルの信号が入力されると共に、NANDゲートU3の一方の入力端子にハイレベルの信号が入力される。次に、タイミングT2において、クロック信号CKが立ち上がると、フリップフロップU12は、出力信号U11_Qをラッチし、この立ち上がりからフリップフロップU12のゲート遅延td12が経過したとき、ハイレベルの出力信号U12_Qを出力する。
【0057】
また、NANDゲートU3は、2つの入力端子に共にハイレベルの信号(U11_Q及びU12_Q)が入力されているため、出力信号U12_Qの立ち上がりからNANDゲートU3のゲート遅延td3が経過したとき、ローレベルの出力信号U3_Qを出力する。
【0058】
このローレベルの出力信号U3_Qが出力された後、クロック信号CKが立ち上がると、フリップフロップU4は、このクロック信号CKの立ち上がりからゲート遅延td4(図略)が経過したとき、ローレベルの出力信号U4_Qを出力する。
【0059】
以降、フリップフロップU5〜U11は、クロック信号の立ち上がりに応じて順次、出力信号U5_Q〜U11_Qをローレベルにする。
【0060】
そして、フリップフロップU11の出力信号U11_Qがローレベルになると(タイミングT3)、NANDゲートU3は、フリップフロップU12からハイレベルの信号が入力されると、フリップフロップU11からローレベルの信号が入力されているため、ゲート遅延td3が経過した後に、ハイレベルの出力信号U3_Qを出力する。
【0061】
以降、フリップフロップU4〜U11は、クロック信号の立ち上がりに応じて順次、ハイレベルの出力信号U4_Q〜U11_Qを出力する。
【0062】
一方、フリップフロップU12は、フリップフロップU11の出力信号U11_Qがローレベルになると(タイミングT3)、D端子にローレベルの信号が入力されているため、クロック信号CKが立ち上がるとローレベルの出力信号U11_Qをラッチして、ゲート遅延td12が経過したとき、ローレベルの出力信号U12_Qを出力する(タイミングT4)。以上の処理が繰り返されてクロック信号CKは17分周される。
【0063】
ここで、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラは、図7に示すORゲートU1が省かれている。そのため、図3に示すように、フリップフロップU12は、出力信号U11_Qが立ち上がってから、ORゲートU1のゲート遅延td1を待つことなく、クロック信号CKが立ち上がったときに(タイミングT2)、出力信号U11_Qをラッチすることができる。
【0064】
よって、出力信号U11_Qの立ち上がりから次のクロック信号CKが立ち上がる(タイミングT2)までの期間TA1を、セットアップマージンとして確保することができる。そのため、フリップフロップU12は、出力信号U11_Qがハイレベル、又はローレベルになると、次のクロック信号の立ち上がりに応じて、この出力信号U11_Qを確実にラッチすることができる。
【0065】
一方、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいてはORゲートU1が存在するため、ORゲートU1のゲート遅延td1だけ、セットアップマージンが短くなる。そのため、本実施の形態によるデュアルモジュラスプリスケーラによれば、セットアップマージンが増大し、更なる高速動作を図ることが可能となる。
【0066】
また、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいてはORゲートU1が存在している。そして、このORゲートU1をC−MOSで構成するには、NORゲートにインバータを付け加える、或いはインバータとNANDゲートとを組み合わせて構成する必要がある。しかしながら、図1に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいては、ORゲートU1が存在しないため、従来の構成に比べてゲート数(トランジスタ数)が少なくて済み、回路面積の縮小を図ることができる。
【0067】
また、図7及び図8(a)に示すように、従来の構成では、フリップフロップU2のD端子の前段に、ORゲートU1が接続されている。この場合、図8(a)のトランスミッションゲートTM1が信号を通過させる以前に、ORゲートU1の出力が確定されている必要がある。
【0068】
一方、図1に示す構成では、フリップフロップU12のD端子には、ゲート遅延のない帰還信号が直接入力され、かつ、図2(a)に示すように分周比切替信号PSがトランスミッションゲートTM1を介することなく分周比切替端子T−PSから直接入力されている。
【0069】
したがって、分周比切替信号PSが遅延したとしてもトランスミッションゲートTM1を制御するクロック信号CK1,CKN1の源であるクロック信号CKに対するマージンを向上させることができる。
【0070】
なお、上記説明では、図1に示すように、初段のフリップフロップを図2(a)に示すフリップフロップDFF2で構成したが、本発明はこれに限定されず、分周比切替信号PSが初段のフリップフロップに入力されない形態のデュアルモアモジュラスプリスケーラを採用してもよい。
【0071】
また、図7に示すデュアルモジュラスプリスケーラにおいて、分周比切替信号PSが入力されるORゲートU1が初段のフリップフロップU2の前段以外の箇所に設けられたものも存在する。この場合、このORゲートの次段のフリップフロップを図2(a)に示すフリップフロップDFF2で構成することで、このORゲートを次段のフリップフロップにマージさせることができる。
【0072】
また、上記デュアルモジュラスプリスケーラは、分周比切替信号PSがローレベルのとき、17分周回路と機能し、分周比切替信号PSがハイレベルのとき、16分周回路として機能したが、これに限定されず、分周比切替信号PSがハイレベルのとき、17分周回路と機能し、分周比切替信号PSがローレベルのとき、16分周回路として機能するようにしてもよい。
【0073】
この場合、図2(a)に示すNORゲートG1を例えばNANDゲートのような別の論理ゲートに置き換えて、図2(a)に示すフリップフロップDFF2と同様に機能させるようにすればよい。すなわち、本発明は、図2(a)に示すNORゲートG1に限定されず、これ以外の論理ゲートを適宜採用してもよい。
【0074】
更に、本発明は、フリップフロップDFF2として、図2に示すものに代えて図4に示すものを採用してもよい。図4は、本発明の別の一実施の形態によるフリップフロップDFF2の回路図を示している。
【0075】
図4に示すフリップフロップDFF2は、NORゲートG1の入出力端子間に、クロックドインバータI2´が接続されて帰還ループが形成されていると共に、インバータI3の入出力端子間に、クロックドインバータI4´が接続されて帰還ループが形成されていることを特徴としている。
【0076】
ここで、クロックドインバータは、図2(a)の帰還ループに設けられたインバータとトランスミッションゲートとの機能を併せ持っており、クロック信号CK1,CKN1に従って、入力される信号を通過させたり遮断させたりする。
【0077】
図5は、図4にクロックドインバータの回路図を示している。図5に示すように、クロックドインバータとしては、(a)に示す回路を採用してもよいし、(b)に示す回路を採用してもよい。
【0078】
図5(a)に示すクロックドインバータは、電源電圧VDDとグラウンドとの間に、P−MOS1、P−MOS2、N−MOS1、N−MOS2がこの順で直列接続されている。
【0079】
P−MOS1のゲートにはクロック信号CKN1が入力され、N−MOS2のゲートには、クロック信号CK1が入力される。また、P−MOS2のゲート及びN−MOS1のゲートには、NORゲートG1から出力された信号が入力される。また、P−MOS2及びN−MOS1の接続点が出力端子となっている。
【0080】
図5(b)に示すクロックドインバータは、図5(a)に示すクロックドインバータとほぼ同一であるが、各MOSトランジスタのゲートに入力される信号が相違する。すなわち、P−MOS1及びN−MOS2のゲートには、NORゲートG1から出力された信号が入力され、P−MOS2のゲートにはクロック信号CKN1が入力され、N−MOS1のゲートにはクロック信号CK1が入力されている。
【0081】
一方、図2(a)の帰還ループに形成されたインバータ及びトランスミッションゲートは、図6に示すようにC−MOS及びトランスミッションゲートにより表される。
【0082】
図6及び図5を比較すると、図6及び図5ではMOSトランジスタの数は4個であり同一であるが、図5では、4個のMOSトランジスタが直列に接続されているため、レイアウトが容易となり、回路規模を小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
CK,CK1,CKN1 クロック信号
DFF1,DFF2 フリップフロップ
G1 NORゲート
g1,g2 ゲート端子
I1,I2,I3,I4,I5,I6,I7 インバータ
I2´,I4´ クロックドインバータ
M マスターラッチ
S スレイブラッチ
PS 分周比切替信号
T−PS 分周比切替端子
T−CKクロック端子
TA1 期間
TM1,TM2,TM3,TM4 トランスミッションゲート
U1 ORゲート
U12,U4〜U11 フリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に接続され、クロック信号に同期して入力信号のラッチ動作を行う複数のフリップフロップを備え、
前記複数のフリップフロップのうち何れか1つのフリップフロップは、分周比を切り替えるための分周比切替信号が入力され、
前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップは、マスタースレイブ方式のフリップフロップにより構成され、
当該フリップフロップのマスターは、
前記クロック信号に基づいて開閉制御される第1のトランスミッションゲートと、
前記第1のトランスミッションゲートからの信号と前記分周比切替信号とが入力される論理ゲートとを備えていることを特徴とするデュアルモジュラスプリスケーラ。
【請求項2】
前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップのマスターは、
前記論理ゲートの入出力端子間に接続され、前記クロック信号によって信号の通過が制御されるフィードバックループを備えることを特徴とする請求項1記載のデュアルモジュラスプリスケーラ。
【請求項3】
前記フィードバックループは、インバータと、前記クロック信号に基づいて開閉制御される第2のトランスミッションゲートとを備えることを特徴とする請求項2記載のデュアルモジュラスプリスケーラ。
【請求項4】
前記フィードバックループは、クロックドインバータを備えることを特徴とする請求項2記載のデュアルモジュラスプリスケーラ。
【請求項5】
前記分周比切替信号が入力されるフリップフロップのスレイブは、
第1のインバータと、
前記第1のインバータの入力端子に接続され、前記クロック信号に基づいて開閉制御される第3のトランスミッションゲートと、
前記第1のインバータの入出力端子間に接続され、前記クロック信号によって信号の通過が制御されるフィードバックループとを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデュアルモジュラスプリスケーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178120(P2010−178120A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19285(P2009−19285)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】