説明

デュアル光線診断および療法のための化合物

本発明は、腫瘍および他の障害のデュアル光線療法および治療と診断の組合せのための化合物および組成物を開示する。化合物は、光活性化された場合1型メカニズムおよび/または2型メカニズムにより作用するDyeを有する。他のDyeまたはアジド成分は同じかまたは相違するメカニズムにより作用し得る。化合物中に特定成分を選別すること、および組成物中に化合物を製剤化することにより、異なる治療で用いるための異なる活性化波長を可能にすることができる。標的化部分は、Dyeが診断および/または治療の目的となる特定部位、例えば、ホルモン−感受性腫瘍に位置づけられるように、化合物または組成物に付加され得る。化合物および組成物はリポソーム内に組み込まれ得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関係出願の相互参照
本願は、2001年7月3日に出願された米国特許出願番号09/898,885の一部継続出願である。これは現在係属しており、出典明示によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的にデュアル光線診断(photodiagnostic)および光線療法(phototherapy)の手法で有用な新規化合物に関する。
【0003】
背景技術
臨床実務における可視および近赤外(NIR)光の使用は、急速に成長している。電磁スペクトルの可視、NIRまたは長波長(UV−A、>350nm)領域で吸光または発光する化合物は、光学的断層撮影、内視鏡的可視化および光線療法に潜在的に有用である。しかしながら、生物医学光学の主要な利点は、その治療的潜在能力にある。光線療法は、内外両側の各種表面病変の処置に安全かつ効果的な手法であると立証されてきた。その有効性は、放射線療法のそれに匹敵するが、有利なことに重要な非標的器官に対する有害な放射性毒性がない。
【0004】
光線療法は多世紀に渡り存在し、様々な皮膚表面の病気の処置に使用されてきた。インドでは早くも紀元前1400年に、植物抽出物(ソラレン)が太陽光と組合せて白斑の処置に使用された。1903年、Von Tappeiner と Jesionek は、皮膚癌、皮膚の狼瘡および女性性器の湿疣を処置するために、光増感剤としてエオシンを使用した。長年に渡ってソラレンと紫外線A(低エネルギー)照射は、乾癬、類乾癬、皮膚T細胞性リンパ腫、湿疹、白斑、円形脱毛症(areata)および新生児ビリルビン血症を含む幅広い皮膚科学的疾患の処置に使用されてきた。癌の光線療法の可能性は1900年代初期から認識されてきたが、安全性と有効性を立証する系統的な研究は、乳癌腫の処置で1967年にようやく始まった。1975年に、Dougherty らは、光力学的療法(PDT)による長期治癒が可能であることを決定的に確立した。現在、光線療法の方法は、アテローム性動脈硬化症や血管再狭窄などの心血管障害の処置、リウマチ性関節炎の処置、およびクローン病などの炎症性疾患の処置のためにも研究されている。
【0005】
光線療法の手法は、高い吸光性を有する光増感剤(即ち、発色団)を必要とする。これらの化合物は、好ましくは化学的に不活性であり、適切な波長の光による照射の際にのみ活性化されるべきである。光増感剤が、直接的に、または生体活性担体への付着を介して標的組織に結合すると、光により選択的組織傷害を誘導できる。さらに、光増感剤が化学療法剤でもあるならば(例えば、アントラサイクリン系抗腫瘍剤)、増強された治療効果を達成できる。効果的な光線療法剤は、以下の特性を有するべきである:(a)高モル濃度の減衰係数;(b)長い三重項寿命;(c)高収率の一重項酸素および/または他の反応性中間体、即ち、フリーラジカル、ナイトレン(nitrene)、カルベン、カボニウム(cabonium)イオンなどの開殻(open-shell)イオン種など;(d)細胞成分への効率的なエネルギーまたは電子伝達;(e)水性環境で凝集を形成する傾向が低いこと;(f)効率的かつ選択的な病変標的化;(g)血液および非標的組織からの迅速なクリアランス;(h)低い全身的毒性;および(i)変異原性の欠如。
【0006】
光増感剤は、1型および2型と称する2つの別個の経路を介して作用する。1型のメカニズムは、次のスキームで示される。
【化1】

1型メカニズムは、光増感剤から細胞成分への直接的なエネルギーまたは電子の伝達を伴い、それにより細胞死を引き起こす。2型メカニズムは、次のスキームで示される通りの別個の二段階を伴う:
【化2】

第1段階で、三重項励起状態の光増感剤から組織周辺の酸素分子へのエネルギー伝達により、一重項酸素が生成される。第2段階で、一重項酸素と組織との衝突が組織損傷を進める。1型と2型の両メカニズムにおいて、最も低い三重項状態の増感剤を介して光反応が進行する。故に、効果的な光線療法には、比較的長い三重項寿命が必要とされる。対照的に、光増感剤に起因する組織への光損傷を避けるには、比較的短い三重項寿命が必要とされる。
【0007】
腫瘍光線療法剤によりもたらされる組織傷害の生物学的根拠は、集約的研究の対象であった。これらの研究で採用された光増感剤のタイプと数は比較的少ないとはいえ、組織損傷についての各種の妥当な生化学的メカニズムが仮定されてきた。これらの生化学的メカニズムは、以下の通りである:a)癌細胞は低密度リポタンパク質(LDL)受容体の発現を上方調節し、PDT剤はLDLおよびアルブミンに選択的に結合する;(b)ポルフィリン様物質は、増殖する新生血管構造に選択的に取込まれる;(c)腫瘍はしばしば数が増えた脂質体を含有し、従って疎水性光増感剤に結合できる;(d)「漏れ易い」腫瘍血管構造とリンパ排出の減少の組合せは、ポルフィリン蓄積をもたらす;(e)腫瘍細胞は、ポルフィリン凝集体の食作用または飲作用について、増大した能力を有し得る;(f)腫瘍関連マクロファージは、腫瘍における光増感剤濃縮の大部分を担い得る;そして(g)癌細胞は光増感剤に誘導されるアポトーシスを受け得る。これらのメカニズムの中で、(f)と(g)が最も一般的であり、これら2つの選択肢の中で、(f)がポルフィリン様化合物の光線療法効果が誘導される最も起こり得るメカニズムであるという一般的同意がある。
【0008】
現在知られている光増感剤の殆どは、一般にPDT剤と呼ばれ、2型メカニズムを介して作用する。例えば、ヘマトポルフィリン誘導体である Photofrin II は、米国食品医薬品局により膀胱、食道および後期肺癌の処置に承認された。しかしながら、Photofrin II は、いくつかの欠点を有すると示されてきた:低モル濃度の吸光度(=3000M−1)、低い一重項酸素収量(Φ=0.1)、化学的不均一性、凝集および長時間の皮膚感光性。故に、Photofrin II と比較して改善された吸光特性、より良好なクリアランスおよび低減された皮膚感光性を示す、より安全かつ効果的なPDT用光増感剤の開発には、相当な努力がなされてきた。これらには、単量体ポルフィリン誘導体、コリン、シアニン、フタロシアニン、フェノチアジン、ローダミン、ヒポクレリン(hypocrellin)などが含まれる。しかしながら、これらの光線療法剤も、主に2型メカニズムを介して作用する。
【0009】
驚くべきことに、本来1型メカニズムは2型メカニズムよりも効率的であるという事実にも関わらず、1型光増感剤の開発にはあまり注意が向けられてこなかった。第一に、2型と異なり、1型光増感剤は、細胞傷害を引き起こすのに酸素を必要としない。第二に、1型メカニズムは2段階(光励起と直接的エネルギー伝達)を伴い、一方2型メカニズムは3段階(光励起、一重項酸素生成およびエネルギー伝達)を伴う。さらに、いくつかの腫瘍は、2型メカニズムを無効する低酸素領域を有する。しかしながら、2型メカニズムに付随する欠点にも関わらず、1型メカニズムを通して作用する化合物は、少数しか開発されてこなかった(例えば、アントラサイクリン抗腫瘍剤)。
【0010】
従って、効果的な光増感剤を開発する必要がある。
【0011】
発明の概要
一般式E-L-DYE-X-N3(化合物1)および/またはE-L-DYE-X-Y(化合物2)を有するデュアル光線療法のための薬剤を開示する。これらは、光活性化されると1型メカニズム、2型メカニズム、または1型/2型の組合せのメカニズムによってこれらの化合物を含有する組織を損傷する、これらの色素含有化合物の1またはそれ以上を含む組成物を含む。
【0012】
本発明は化合物それ自体を含む。また、本発明はインビボまたはインビトロで生細胞にあらゆる経路で投与されるための化合物の製剤として決められた、化合物の生理学的に許容される組成物を含む。また、本発明は組成物を投与し、および光活性化することによる光線療法のための方法を含む。これらのそれぞれについては、詳細に記載されている。
【0013】
組成物は、光活性化された化合物が腫瘍または他の部位で1型、2型、または1型/2型の組合せのメカニズムによって作用することができるように調製され得る。多くの製剤が可能である;例えばおよび更に記載されているように、同一化合物中に1型および2型の両方の成分を有し得る組成物;異なる化合物を含有する混合物中に1型および2型の両方の成分を有し得る組成物;同一化合物中に、または異なる化合物を含有する混合物中に2の1型成分を有し得る組成物;同一化合物中に、または異なる化合物を含有する混合物中に2の2型成分を有し得る組成物である。
【0014】
光活性化成分はDye、Y、およびDyeおよび大きな環状のまたは芳香環を一般的に含むY成分を伴うアジド(N3)である。Dyeは、化合物を特定の場所に標的化させるために選択されることができるか、または水素であることができる、一般的にEと指定された部分に連結される。Dyeはまたもう1つの光活性化成分(化合物1中のN3、または化合物2で一般的にYと指定される)に連結され、光活性化されると、1型メカニズムもしくは2型メカニズムを介してさらに組織を損傷する。DyeおよびYのそれぞれに対して特定の成分を選択することによって、光活性化(光線診断および/または光線療法)の1型メカニズムおよび/または2型メカニズムを選択できることは理解されるであろう。また、Eに対して特定の成分を選択することによって、化合物または組成物が特定の体の部位、例えば光活性化が腫瘍細胞を破壊する腫瘍部位に到達するように狙えることも理解されるであろう。また、連結成分をかさ高いDyeとY構造との間隔をあけるために選択できることも理解されるであろう。
【0015】
選択されたDyeおよびYの同一性、およびN3の存在、非存在に依存して、多様な組成物が可能であり、本発明の範囲に含まれる。例えば、組成物または製剤は、単一化合物中に1型メカニズムで活性化される1成分と2型メカニズムで活性化されるもう1の成分を含有し得る。あるいは、組成物または製剤は、それぞれの化合物が、活性化されると、1型メカニズム、または2型メカニズムにより作用し、または少なくとも1化合物が1型メカニズムにより作用し、少なくとも1の他の化合物が2型メカニズムによって作用する、少なくとも2化合物を含有し得る。
【0016】
記載するように、所望の作用メカニズムを提供するために、多くの光活性化成分(Dye、YおよびN3)の組合せが可能である。したがって、また、記載されているように、使用され得るリンカーおよび標的化部分(targeting moiety)が多様であるので、多くの製剤が可能であることは理解されるであろう。ここで用いられるように、製剤または組成物とは患者に投与される医薬的に許容される製剤を言う。したがって、記載されているように、製剤とは、1型および2型の両方の官能基を含有する単一化合物、または少なくとも2化合物であり得る。
【0017】
一実施態様では、製剤は更に化合物のための担体または媒体としてリポソームを含む。Dyeおよび/またはY成分は脂溶性二重層の一部であり、およびもし存在すれば(すなわち、Eが水素でなければ)、標的化部分はリポソームの外側表面上にある。あるいは、標的化部分は、リポソーム含有の本発明の化合物を所望の部位に標的化させるための製剤化をした後に、外部からリポソームに付着させることができる。
【0018】
組成物は光線診断、光線療法、または光線診断および光線療法の組合せのために使用されることができる。後者の実施態様において、組成物は投与され、適切な波長で光活性化されて、化合物が特定部位(例えば、腫瘍部位)に存在することを確認する。確認(光線診断)において、化合物は適切な波長で光活性化され、化合物の領域において細胞または組織を破壊する(光線療法)。
【0019】
新規組成物は腫瘍および他の病変の光線療法のために使用される。製剤は、また、光線診断および光線療法処置の組合せに用いることができ、製剤を患者に投与した後、処置の光線診断の部分に続いて光線療法部分が実施される。
【0020】
一実施態様において、本発明は一般式1
E----L----DYE----X-----N3
を有する1またはそれ以上の化合物を開示する。Dyeはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、カルコゲノピリリウム(chalcogenopyrylium)類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素、クロリン、ナフタロシアニン、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素のいずれかであり、これらは全て2型メカニズムによって作用する。Dyeはまた、ペルオキシド、スルフェナート、アゾ、ジアゾ、アントラサイクリン、またはそれらの誘導体または類であり;これら全ては1型メカニズムによって作用する。フェノキサジン、フェノチアジン、およびフェノセレナジンはまた1型メカニズムによって作用し得る。ここで用いられるように、Dyeは、親化合物それ自体、および親から派生したいずれかの芳香族または複素環芳香族ラジカル、および親化合物と同じ類のメンバーを包含する。
【0021】
アジド(N3)成分は1型メカニズムによって活性化される。したがって、本実施態様では、式1の化合物はデュアル光線療法のための単一化合物であり得る(すなわち、1型および2型の両方の成分を単一化合物内に含む)。本実施態様では、式1の化合物は、異なる2化合物中に1型および2型の両方の成分を含有する2またはそれ以上の化合物の混合物であり得る。本実施態様では、式1の化合物は1型薬剤のみ、および例えば、もう1つの1型作用メカニズムを提供するアゾDyeを含む2またはそれ以上の化合物の混合物であり得る。式1中のアジドの存在は1型作用メカニズムを提供するであろう。所望のDyeを有する化合物を含む製剤を提供することにより、製剤の作用メカニズムを予め決めておくことができる。
【0022】
別の実施態様において、本発明は一般式2
E----L----DYE----X-----Y
を有する化合物を開示する。DyeおよびYは式1で開示された化合物のいずれかであり得る。さらに、Yは水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル(sulfenatoalkyl)、スルフェナートアリール(sulfenatoaryl)、またはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、アゾ色素、ジアゾ色素、クロコニウム、カルコゲノピリリウム(chalcogenopyrylium)類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素のいずれかより、派生した、または類にある芳香族または複素環芳香族のラジカル;クロリン、ナフタロシアニン、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素であり得る。
【0023】
本実施態様において、多様な組合せが可能である。例えば、1化合物中に、DyeおよびY成分は両方とも1型メカニズムによって作用し得る、または両方とも2型メカニズムによって作用し得る、または一方は1型メカニズムによって作用し(DyeまたはY)、および他方は2型メカニズムによって作用し得る。他の実施例として、製剤は少なくとも2化合物を含有し得る。1化合物においては、DyeおよびY成分は両方とも1型メカニズムによって作用し、他方の化合物においては、DyeとYは両方とも2型メカニズムによって作用し得る。もしくは、1化合物において、1成分は1型または2型メカニズムによって作用し、その化合物中に、異なる型の他方の成分がある。そして、他方の化合物の両成分は同じであっても異なっていてもよい。さらに、YがDyeである式2の化合物は、診断薬としておよび治療薬としての両方に機能し得る。
【0024】
式2の他の別の本実施態様では、Yは水素であり得る。1型メカニズムによって作用するDyeが選択され、他の光活性化合物が存在しない場合、組成物は1型メカニズムによって作用し得る。2型メカニズムによって作用するDyeが選択され、他の光活性化合物が存在しない場合、組成物は2型メカニズムによって作用し得る。少なくとも1の他の光活性化合物が存在する場合、Yはまた水素か、前記したdyeのいずれかであり得る。
【0025】
式1または式2のどちらの化合物についても、Eは水素であるか、標的化部分であり得る。標的化部分は、限定はされないが、特定の抗原結合部位に結合する抗体の領域にある特定のアミノ酸配列のように、特定の相補的部位に結合する分子の1またはそれ以上の特定部位を含む。本発明で用いられるように、標的化部分は特定の配列や部位に限られないが、本発明の化合物および/または組成物を特定の解剖学的および/または生理学的部位に標的化させるいずれかのものを含有する。上記式1および2において、標的化部分Eとして使用され得る化合物の例は、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質(carbohydrate)受容体結合分子を含む。
【0026】
式1または式2のリンカーLは、-(CH2)a-、-(CH2)bCONR1-、-N(R2)CO(CH2)c-、-OCO(CH2)d-、-(CH2)eCO2-、-OCONH-、-OCO2-、-HNCONH-、-HNCSNH-、-HNNHCO-、-OSO2-、-NR3(CH2)eCONR4-、-CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-の基から選択される。Xは単結合または-(CH2)h-、-OCO-、-HNCO-、-(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-の基から選択され;R乃至Rは独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10の基から選択される。R9およびR10は独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され;a乃至lは独立して0乃至10の範囲である。
【0027】
本発明は、また本発明化合物を用いた治療処置の実施方法を開示する。E、L、Dye、X、およびYの定義が前記された通りである、式1
E----L----DYE----X-----N3
式2
E----L----DYE----X-----Y
、または式1および2の組合せの少なくとも2化合物を含有する製剤の有効量が対象に投与される。投与後、光増感剤は、もし標的化されていれば、標的組織で蓄積することができ、当該標的組織は励起状態の化合物が直接に標的組織を損傷させることが可能な波長の光によって暴露される。例えば、活性化は標的組織のネクローシスまたはアポトーシスを惹起するのに十分な出力とフルエンス率でされ得る。
【0028】
光活性化により特定の組成物で特定の作用メカニズムを達成するために必要な特定の波長は、多様な方法で決定され得る。一例として、それは、合成された化合物を多様な波長の光に暴露し、その後試験して、標的部位における組織の損傷の程度を測定することから実験的に決定され得る。また、それは、DyeおよびYとして選択された特定成分における既知の光活性化の最大値に基づいて決定され得る。一般的に、1型メカニズムによって作用する薬剤は約300nm乃至約950nmの広い波長域で活性化され得る。したがって、1型成分のまたは組成物の活性化はこの領域の活性化波長を用いて達成される。一般的に、2型メカニズムによって作用する薬剤は一実施態様として、約600nm乃至約800nm、もう一つの実施態様として約600nm乃至約700nm、もう一つの実施態様として約600nm乃至約675nm、もう一つの実施態様として約625nm乃至675nm、およびもう一つの実施態様として650nmの付近で光によって活性化され得る。一実施態様では、アジン化合物(例えば、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン)は1型メカニズムによって作用することができ、約950nmまでの波長で光活性化されるが、それよりも低い波長、例えば、約600nm乃至約700nmの領域で、また吸収する。これにより、アジド化合物は、活性化に高波長が選択される場合、1型メカニズムによって作用でき、また活性化に約600nm乃至約700nmの領域の波長が選択されると2型メカニズムによって作用できる。
【0029】
本発明に係る方法の別の実施態様では、組成物は光線療法および/または光線診断の処置の実施に用いられる。製剤は、賦形剤、緩衝液等とともに、前記した化合物のいくつかを用いて調製され、多様な経路のうちのいずれか1による投与のための組成物が提供される。組成物は、例えば注射され、摂取され、局所適用され、エアロゾル製剤により投与され、または吸入され得る。投与後、例えば、標的化部分が化合物中に含まれる場合は、組成物は標的組織で蓄積する。選択された標的部位、または診断または治療を必要とする部位は診断および/または治療のために十分な出力およびフルエンス率を有する光で暴露される。少なくとも式2の2化合物が組成物として投与される実施態様において、Dyeは1の化合物は診断薬であり、他方の1化合物は治療剤であるように選択され得る。
【0030】
ポルフィリンは光力学治療で用いられる光活性化薬剤の例である。プロトポルフィリンはまた良好な光増感剤であり;プロトポルフィリンIXはヘムの生合成経路において5-アミノレブリン酸(ALA)から内因性に形成される光活性化合物である。ALAは局所的に適用されることができ、代謝されて活性型の光増感剤であるプロトポルフィリンとなる。照射は約630nmの領域の波長で、または約670nmの領域の波長でなされる。他の使用することができる光増感剤は、限定されないが、最大吸収が約660乃至690nmの領域にある、ベンゾポルフィリン誘導体モノアシドチューブA(BPD-MA)およびモノ−1−アスパルチルクロリン6(NPe6)、およびATX-6およびインドシアニングリーン(ICG)が挙げられる。使用することができる他の光増感剤は、合成クロリン様ポルフィリン、ベルテポルフィンである。それは689nm付近の波長で活性化される。一度活性化されると、それは選択的に組織を損傷させる、一重項酸素および他の反応性酸素ラジカルを生成する。
【0031】
式2の2化合物を含有する組成物を調製することができ、したがって、当該組成物はデュアル機能剤として、およびデュアル光線療法剤として機能し得る。すなわち、当該組成物は光線診断を可能にする成分を有する式2の1化合物を、光線療法を可能にする成分を有する式2の他方の1化合物とともに有する。例えば、1化合物中にある光線療法のDyeはポルフィリン類の化合物のメンバー、またはフェノキサジン、フェノチアジン等の類の化合物のメンバーであり得る。ポルフィリンを代表例として、しかしながら非限定的な例として用い記載するように、組成物のこの化合物は活性化されると光線療法を提供し得る。他方の化合物中のDyeはシアニン、インドシアニン、フルオレセイ等の類の化合物のメンバーであり得る。組成物のこの化合物、式2の2化合物は診断薬として使用される。式2の化合物はポルフィリンDye、および非ポルフィリン成分Yを含有し得る。
【0032】
これらのおよび他の有利性および本発明の化合物および方法の実施態様は、下記図、記載、および実施例を考慮して明らかであろう。
【0033】
図面の簡単な説明
図1は本発明化合物の活性化メカニズムの図解である。
図2はフタロシアニン誘導体の合成メカニズムの図解である。
図3はシアニン誘導体の合成メカニズムの図解である。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は光活性化されて、1型メカニズムまたは2型メカニズムによって組織を損傷させることができる反応性種を形成するDye成分を有する化合物を開示する。本発明はまた、患者に投与され、光活性化されたとき、化合物中の選択された特定のDyeおよび/または活性化波長に依存して、1型および2型のいずれかまたは両方のメカニズムによって組織を損傷させることができる、少なくともこれらの2化合物を含む組成物または製剤を提供する。化合物は、1またはそれ以上のエピトープを含み得、そして当該化合物を部位特異的光線療法のための特定の生理学的または解剖学的部位に標的化する標的化部分を含むことができる。これらは、腫瘍および他の病変の光線療法に用いられ、またはその後続いてバイオコンジュゲートが部位から取り除かれる前に適切な量の時間で腫瘍を光線療法する、腫瘍および他の病変の光線診断に用いられる。この例では、組成物は望ましいことに、一回患者に投与されることのみを必要とする。式1および式2の化合物および組成物は当業者に既知の方法を用いて合成することができる。
【0035】
デュアル光線療法は異なる4形態:(a)異なる1型の少なくとも2化合物の組成物;(b)異なる2型の少なくとも2化合物の組成物;(c)1型の少なくとも1化合物および2型の少なくとも1化合物の組成物;(d)1型および2型の両方の機能性を含む単一化合物、に分類され得る。違いは化合物のいずれかの部分、つまりE、L、X、DyeまたはYにあり得る。
【0036】
一実施態様では、本発明は1またはそれ以上の化合物1
E----L----DYE----X-----N3
を開示する。
Dyeはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、カルコゲノピリリウム(chalcogenopyrylium)類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素、クロリン、ナフタロシアニン、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素のいずれかである。Dyeはまた、ペルオキシド、スルフェナート、アゾ、ジアゾ、アントラサイクリン、またはそれらの誘導体または類であり;これら全ては1型メカニズムによって作用する。ここで用いられるように、Dyeは、親化合物それ自体、および親から派生したいずれかの芳香族または複素環芳香族ラジカル、および親化合物と同じ類のメンバーを包含する。
【0037】
アジド(N3)成分は1型メカニズムによって活性化される。したがって、本実施態様では、化合物1はデュアル光線療法のための単一化合物であり得る(すなわち、1型および2型の両方の成分を単一化合物内に含む)。それはまた、異なる2化合物中に1型および2型の両方の成分を含有する2またはそれ以上の化合物であり得る。それはまた、1型作用メカニズムをまた提供するN3とともに1型薬剤のみを含有する2またはそれ以上の化合物であり得る。特定の化合物を選択することによって、およびそれぞれの化合物中に特定のDyeおよび/またはYを選択することによって、組成物の作用メカニズムを予め決めておくことができる。
【0038】
別の実施態様では、本発明は1またはそれ以上の化合物2
E----L----DYE----X-----Y
を開示する。
DyeおよびY成分の同一性は式1で開示される化合物のいずれかであり得る。さらに、Yは水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル(sulfenatoalkyl)、スルフェナートアリール(sulfenatoaryl)、またはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、アゾ色素、ジアゾ色素、クロコニウム、カルコゲノピリリウム(chalcogenopyrylium)類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素のいずれかより、派生した、または類にある芳香族または複素環芳香族のラジカル;クロリン、ナフタロシアニン、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素であり得る。
【0039】
本実施態様において、多様な組合せが可能である。例えば、1化合物中に、DyeおよびY成分は両方とも1型メカニズムによって作用し得る、または両方とも2型メカニズムによって作用し得る、または一方は1型メカニズムによって作用し(DyeまたはY)、および他方は2型メカニズムによって作用し得る。他の実施例として、製剤は少なくとも2化合物を含有し得る。1化合物においては、DyeおよびY成分は両方とも1型メカニズムによって作用し、他方の化合物においては、DyeおよびYは両方とも2型メカニズムによって作用し得る。もしくは、1化合物において、1成分は1型または2型メカニズムによって作用するが、その化合物中に、異なる型の他方の成分があり、そして、他方の化合物の両成分は同じであっても異なっていてもよい。さらに、YがDyeである化合物2は、診断薬としておよび治療薬としての両方に機能し得る。
【0040】
化合物2の他の別の本実施態様では、Yは水素であり得る。1型メカニズムによって作用するDyeが選択され、他の光活性化合物が存在しない場合、組成物は1型メカニズムによって作用し得る。2型メカニズムによって作用するDyeが選択され、他の光活性化合物が存在しない場合、組成物は2型メカニズムによって作用し得る。少なくとも1の他の光活性化合物が存在する場合、Yはまた水素か、前記した色素のいずれかであり得る。
【0041】
式1または式2のどちらの化合物についても、Eは水素であるか、化合物を特定の解剖学的および/または生理学的部位に標的化する標的化部分であり得る。そのような標的化部分は、限定はされないが、特定の相補的部位に結合する分子の1またはそれ以上の特定部位を含む。一例としては、特定の抗体結合部位に結合する抗体の領域にある特定のアミノ酸配列である。本発明で用いられるように、標的化部分は特定の配列や部位に限られないが、本発明の化合物および/または組成物を特定の解剖学的および/または生理学的部位に標的化させるいずれかのものを含有する。それは、タンパク質またはペプチドのような完全な生体分子に限られないが、それは分子全体、および生体分子に接触すると言われているようなものを含み得る。化合物IおよびIIにおいて、標的化部分Eとして使用され得る化合物の例は、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質(carbohydrate)受容体結合分子を含む。
【0042】
化合物1または化合物2のいずれかで、DyeおよびEの間のリンカー成分Lは、-(CH2)a-、-(CH2)bCONR1-、-N(R2)CO(CH2)c-、OCO(CH2)d-、-(CH2)eCO2-、-OCONH-、-OCO2-、-HNCONH-、-HNCSNH-、-HNNHCO-、-OSO2-、-NR3(CH2)eCONR4-、-CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-の基から選択される。DyeとN3(化合物1)またはY(化合物2)の間のリンカー成分Xは単結合または-(CH2)h-、-OCO-、-HNCO-、-(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-の基から選択され;R乃至Rは独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10の基から選択される。R9およびR10は独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され;a乃至lは独立して0乃至10の範囲である。
【0043】
本発明はまた、本発明の化合物を用いた光活性化処置の実施方法を開示する。少なくとも2の化合物1
E----L----DYE----X-----N3
少なくとも2の化合物2
E----L----DYE----X-----Y
または、化合物1と2の組合せ(ここで、E、L、Dye、XおよびYは前記の通りである)を含む有効量の製剤が患者に投与される。投与後、光増感剤は、もし標的化されていれば、標的組織で蓄積することができ、当該標的組織は励起状態の化合物が直接に標的組織を損傷させることが可能な波長の光によって暴露される。例えば、活性化は標的組織のネクローシスまたはアポトーシスを惹起するのに十分な出力とフルエンス率でされ得る。
【0044】
光活性化により特定の組成物で特定の作用メカニズムを達成するために必要な特定の波長は、多様な方法で決定され得る。一例として、それは、合成された化合物を多様な波長の光に暴露し、その後試験して、標的部位における組織の損傷の程度を測定することから実験的に決定され得る。また、それは、DyeおよびYとして選択された特定成分における既知の吸収最大値に基づいて決定され得る。一般的に、1型メカニズムによって作用する薬剤は、例えば約300nm乃至約950nm、または約700nm乃至約950nmの広い波長域で活性化され得る。したがって、1型成分のまたは組成物の活性化はこの領域の活性化波長を用いて達成される。一般的に、2型メカニズムによって作用する薬剤は一実施態様として、約600nm乃至約800nm、もう一つの実施態様として約600nm乃至約700nm、もう一つの実施態様として約600nm乃至約675nm、およびもう一つの実施態様として650nmの付近で光によって活性化され得る。一実施態様では、アジン化合物(例えば、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン)は1型メカニズムによって作用することができ、約950nmまでの波長で光活性化されるが、それよりも低い波長、例えば、約600nm乃至約700nmの領域で、また吸収する。これにより、アジン化合物は、約600nm乃至約700nmの領域で吸収する場合、2型メカニズムによって作用でき、他の波長が選択される場合、1型メカニズムによって作用できる。
【0045】
本発明の方法の別の実施態様では、組成物は光線療法および/または光線診断の処置の実施に用いられる。製剤は、賦形剤、緩衝液等とともに、前記した化合物のいくつかを用いて調製され、多様な経路のうちのいずれか一による投与のための組成物が提供される。組成物は、例えば注射され、摂取され、局所適用され、エアロゾル製剤により投与され、または吸入され得る。投与後、例えば、標的化部分が化合物中に含まれる場合は、組成物は標的組織で蓄積する。選択された標的部位、または診断または治療を必要とする部位は診断および/または治療のために十分な出力およびフルエンス率を有する光で暴露される。少なくとも2の化合物2が組成物として投与される実施態様において、Dyeは、1の化合物が診断薬であり、他方の1化合物が治療剤であるように選択され得る。
【0046】
ポルフィリンは光力学治療で用いられる光活性化薬剤の例である。プロトポルフィリンはまた良好な光増感剤であり;プロトポルフィリンIXはヘムの生合成経路において5-アミノレブリン酸(ALA)から内因性に形成される光活性化合物である。ALAは局所的に適用されることができ、代謝されて活性型の光増感剤であるプロトポルフィリンとなる。照射は約630nmの領域の波長で、または約670nmの領域の波長でなされる。他の使用することができる光増感剤は、限定されないが、最大吸収が約660乃至690nmの領域にある、ベンゾポルフィリン誘導体モノアシドチューブA(BPD-MA)およびモノ−1−アスパルチルクロリン6(NPe6)、およびATX-6およびインドシアニングリーン(ICG)が挙げられる。使用することができる他の光増感剤は、合成クロリン様ポルフィリン、ベルテポルフィンである。それは689nm付近の波長で活性化される。一度活性化されると、それは選択的に組織を損傷させる、一重項酸素および他の反応性酸素ラジカルを生成する。
【0047】
2の化合物2を含有する組成物を調製することができ、したがって、当該組成物はデュアル機能剤として機能し得る。すなわち、当該組成物は光線診断を可能にする成分を有する1の化合物2を、光線療法を可能にする成分を有する他の1の化合物2とともに有する。例えば、1化合物中にある光線療法のDyeはポルフィリン類の化合物のメンバー、またはフェノキサジン、フェノチアジン等の類の化合物のメンバーであり得る。ポルフィリンを代表例として、しかしながら非限定的な例として用い記載したように、組成物のこの化合物は活性化されると光線療法を提供し得る。他方の化合物中のDyeはシアニン、インドシアニン、フルオレセイ等の類の化合物のメンバーであり得る。
【0048】
カチオンであるDyeまたはYとして選択される成分は環構造のヘテロ原子上に正電荷を運ぶ。カチオン性色素は細胞内で結合する傾向があり、いくつかの色素、例えばローダミンは選択的に生細胞のミトコンドリアに取り込まれる。カチオンでないDyeまたはYとして選択される成分は細胞内取り込みを促進するポリカチオン性ペプチドに結合され得る。そのようなポリカチオン性ペプチドにはポリミキシンBナノペプチドおよびポリ−L-リジンが挙げられる。
【0049】
メチレンブルー、ローダミンおよびカルコゲノピリリウム類似体のようなカチオン性色素は、テルルまたはセレンのような重原子によって置換された中心の酸素または窒素原子の1を有し得る。さらに、フタロシアニンおよびナフタロシアニン色素はそれらの環構造の中心にアルミニウム、亜鉛またはスズのような反磁性金属を含み得る。そのような置換は、活性化された化合物の長寿命の三重項状態を産み出し、順々にDyeの光力学的療法(PDT)の効果を増強すると予想される。
【0050】
化合物1または化合物2の一実施態様として、Dyeおよび/またはYはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、アゾ色素、ジアゾ色素、クロコニウム、カルコゲノピリリウム類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素のいずれかから派生した、またはその類にある、芳香族または複素環芳香族のラジカル;クロリン、ナフタロシアニン、ポリカチオン性ペプチドに結合した非カチオン性色素、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素である;Eは水素であるか、またはソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン(ST)受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン(CCK)受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質受容体結合分子の群から選択される;Lは-HNCO-、 -CONR1-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -(CH2)aCONR1-、 -CONR1(CH2)aNR2CO-、および-NR1CO(CH2)aCONR2-からなる群から選択される;R1およびR2は独立して水素、C1-C10アルキル、C1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択される;およびa、bおよびcは独立して0乃至6の範囲である。
【0051】
化合物1または化合物2のいずれかの別の実施態様では、Dyeは、シアニン、フタロシアニン、ローダミン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、コリンから派生する、またはその類にある、芳香族または複素環芳香族のラジカルである;Yは水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル(sulfenatoalkyl)、スルフェナートアリール(sulfenatoaryl)、またはシアニン、フタロシアニン、ポリフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、アゾ色素、ジアゾ色素、クロコニウム、カルコゲノピリリウム(chalcogenopyrylium)類似体、ポリカチオン性ペプチドに結合された非カチオン性色素のいずれかより、派生した、または類にある芳香族または複素環芳香族のラジカル;クロリン、ナフタロシアニン、カチオン性色素、メチン色素、およびインドレニウム色素であり得る;Eはオクトレオチドおよびオクトレオテートペプチド、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合ペプチド、抗癌胎児性抗原抗体(anti-CEA)、ボンベシン受容体結合ペプチドおよびエストロゲンステロイドの群から選択される;Lは-HNCO-、 -CONR1-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -(CH2)aCONR1-、 -CONR1(CH2)aNR2CO-、および-NR1CO(CH2)aCONR2-からなる群から選択される;R1およびR2は独立して水素、C1-C10アルキル、C1-C5ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択される;およびa、bおよびcは独立して0乃至6の範囲である。
【0052】
これらの化合物は図1に示されるようにデュアルメカニズムによって作用する。1型薬剤は光励起によって直接フリーラジカルのような反応性中間体を生成し、酸素を必要としない。2型薬剤は光励起された色素から組織の酸素にエネルギーが転移することにより一重項酸素を生成する。
【0053】
1型薬剤は所望の波長の光の直接照射により光開裂を受ける不安定な前駆体を含み、ニトレン、カルベン、またはフリーラジカルのような反応性中間体を生成する。例えば、アジド(R-N3)はニトレン(R-N:)を生成する;ジアゾアルカン(R-CHN2)はカルベン(R-CH:)を生成する;ペルオキシド(RO-OR)はアルコキシラジカル(RO.)を生成する;アルキルイオダイド(R-I)はアルキルラジカル(R.)を生成する;およびスルフェネート(RS-OR)はアルコキシラジカル(RO.)およびメルカプトラジカル(RS.)を生成する。あるいは、反応性中間体はまた、芳香族発色団の励起によって間接的に生成される(例えば、Dye成分および励起されたDyeは分子内でエネルギーをアジドに転移することができ、光開裂させることができる。)光励起により、2型薬剤は、Dyeの光励起により組織中に存在する通常の三重項酸素から一重項酸素を生成する。この後、励起されたDyeから酸素への衝突エネルギーの転移が起こる。エネルギーの転移はDyeが約650nmに吸収極大を有する場合、最も効果的であるが、他の波長では大幅に減少する。フェノキサジン、フェノチアジンおよびフェノセレナジンはまた、処置に用いられる光の波長に依存して、1型メカニズムまたは2型メカニズムによって作用する。
【0054】
脂肪族アジド化合物はまた光治療に用いられることができるが、アジド部分が接合されたポリエンシステムに結合されてない限り、活性化に高エネルギー光を必要とし得る。
【0055】
Dye成分はリンカーLを介して化合物の標的化に用いられることができる部分に接続されている。標的化部分Eは、胸部および前立腺の病変の治療におけるステロイドホルモン;神経内分泌腫瘍の治療における完全なまたは断片化されたソマトスタチン、ボンベシン、およびニューロテンシン受容体結合分子;肺癌の治療のための完全なまたは断片化されたコレシストキニン(CCK)受容体結合分子;結腸直腸癌の治療における完全なまたは断片化された熱感受性バクテリオエンドトキシン(ST)受容体および癌胎児性抗原結合分子;メラノーマに対するジヒドロキシインドールカルボン酸および他のメラニン酸性生合成中間体;血管障害の治療における完全なまたは断片化されたインテグリン受容体およびアテローム斑結合分子;および脳の病変の治療における完全なまたは断片化されたアミロイド斑結合分子、を含む。標的化部分は1またはそれ以上のエピトープと呼ばれる特定領域を有し、それは細胞上の標的部位により認識され、結合する。
【0056】
これらの標的化部分は生体分子に結合されている、つまり一部であり、それらには、ホルモン、アミノ酸、ペプチド、ペプチド模倣体、蛋白質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、酵素、糖、糖模倣体、脂質、アルブミン、完全なまたは断片化されたモノおよびポリクローナル抗体、受容体、シクロデキストリンのような包接化合物、および受容体結合分子を含む。本発明に使用される生体分子にはまた合成ポリマーも含まれ得る。合成ポリマーの例はポリアミノ酸、ポリオール、ポリアミン、ポリアシド、オリゴヌクレオチド、アボロール(aborol)、デンドリマーおよびアプタマーが含まれる。診断および放射線治療の薬剤を生体分子に結合することは、Hnatowichら、Radioactive Labeling of Antibody:A simple and efficient method. Science, 1983, 220, 613-615; A. Pelegrinら、 Photoimmunodiagnosis with antibody-fluorescein conjugates:in vitro and in vivo preclinical studies. Journal of Cellular Pharmacology, 1992, 3, 141-145; および米国特許第5,714,342号(それぞれは引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)に開示される、本分野でよく知られる方法により成し遂げられる。腫瘍の診断イメージングにおける抗体およびペプチドを用いた腫瘍への蛍光色素の特異的な標的化の成功は我々および他、例えば、S.A. Achilefuら、 Novel receptor-targeted fluorescent contrast agents for in vivo tumor imaging, Investigative Radiology, 2000, 35(8), 479-485; B. Ballouら、Tumor labeling in vivo using cyanine-conjugated monoclonal antibodies. Cancer Immunology and Immunotherapy, 1995, 41, 257-263;およびK. Lichaら、 New contrast agents for optical imaging: acid-cleavable conjugates of cyanine dyes with biomolecules. In Biomedical Imaging: Reporters, Dyes, and Instrumentation、 D.J. Bornhop, C. ContagおよびE.M. Sevick-Muraca (編集者), Proceedings of SPIE, 1999, 3600, 29-35、(それぞれは引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)。したがって、本発明の受容体−標的化光線療法剤は多様な病変の治療に有効であると予想される。
【0057】
本発明では、1型および2型メカニズムを必要とする光線療法効果は、従来型のPDT色素に反応性中間体前駆体を組み込み、反応性中間体の生成および一重項酸素の生成をもたらすデュアル波長光源を使用することにより成し遂げることができる。いくつかの場合では、同一の波長光を使用して、1型および2型メカニズムの両方を活性化できる。アジド基を含むDyeは、S. Sunthankarら、 Reactive disperse dyes. 1. Reactivity involving nitrene intermediate from azido group. Indian Journal of Chemistry, 1973, 11(5), 503-504(引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)にあるように、以前より調製されてきた。
【0058】
図1に概略化された過程では、芳香族発色団の光励起はアジド基への急速な分子内エネルギー転移をもたらし、その結果、結合開裂およびニトレンおよび分子窒素の生成が生じる。放出される窒素は振動励起状態にあり、これにより更なる細胞損傷が生じる。
【0059】
標的化の目的で、標的化部分を外から付加することが用いられている。しかしながら、芳香族アジド化合物がそれ自体、標的化組織で好んで蓄積するのであれば、付加的な結合基は必要ない。例えば、Yがアントラサイクリン部分であれば、それは、癌に直接結合し、標的化の目的にエピトープを必要としない。アントラサイクリン化合物はアジド基を有していないが、光励起は1型メカニズムのためのフリーラジカルを生成する。
【0060】
本発明のDye−アジド派生物は、多様な目的の器官または組織への特異的な送達することを目的として、多様な型の生体分子、合成ポリマーおよび組織化された凝集体を取り付けるために用いられ得る付加機能を含む。フタロシアニンおよびシアニン派生物に基づく1型および2型メカニズムを組み込んだ典型的なデュアル光線療法剤の合成は、例えば、図2および3のそれぞれのようである。図2に示すように、ジアシド1は、J.E. van Lier および J.D. Spikes, The chemistry, photophysics, and photosensitizing properties of phthalocyanines, In Photosensitizing Compounds: Their Chemistry, Biology, and Clinical Use (Ciba Foundation Symposium 146), G. BockおよびS. Harnett (編集者), J. Wiley & Sons, 1989, pp. 17-32(引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)に以前に記載されたフタロシアニンそれ自体に類似した方法によって製造され得る。ジアシド1は対応する2価の活性エステルに変換されることができ、その活性エステルのうちの1はアジドと縮合することができ(1型部分によって)、他の1の活性エステルは目的の生体分子と縮合することができフタロシアニン派生物2を生成する。図3に示すように、シアニン色素3は2-メチルベンゾチアゾールのN-スクシンイミジルブロモアセテートとのアルキル化に、それに続く、マロンアルデヒドテロラメチルアセタールとの縮合により調製される。シアニンDye3中の活性エステルの1は1型部分に結合されることができ、他の1のエステルは生体分子に結合され、デュアル光線療法剤4を提供する。とくに、生体分子は結腸直腸の、子宮頸部の、卵巣の、肺の、および神経内分泌の腫瘍に結合し、ソマトスタチン、コレシストキニン、ボンベシン、神経内分泌、および熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子を含む。他の1の活性エステルは励起のための所望の波長により芳香族または脂肪族アジドに結合され得る。
【0061】
本発明の新規化合物は、意図された適用によって幅広く変わり得る。腫瘍の標的化のためには、標的化部分は、限定はされないが、完全なまたは断片化されたソマトスタチン、ボンベシン、ニューロテンシン、コレシストキニン、熱感受性バクテリオエンドトキシン、エストロゲンおよびプロゲストロン受容体結合化合物を含む、腫瘍マーカーの類から選択される。血管障害については、標的化部分はインテグリン、セレクチン、血管内皮成長因子、フィブリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、トロンビン、LDL、HDL、シアリルルイスXおよびその模倣物、およびアテローム斑結合化合物の類から選択され得る。
【0062】
本発明の化合物を用いた治療処置の実施方法もまた開示される。医薬的に許容される製剤中にある有効量の本発明の化合物が患者に投与される。例えば、非経腸投与は、有利には、濃度約1nM乃至約0.5Mの光増感剤の滅菌水溶液または懸濁液を含む。多様な実施態様では、非経腸製剤は1μM乃至10mMの濃度の光増感剤を含み得る。そのような溶液は、また医薬的に許容し得る緩衝剤、乳化剤、界面活性剤および場合により塩化ナトリウムなどの電解質も含み得る。経腸投与のための製剤は、当技術分野でよく知られたように広く変化し得る。一般的に、そのような製剤は、有効量の複合体を水性溶液または懸濁液に含む液体である。そのような経腸製剤は、場合により緩衝液、界面活性剤、乳化剤チキソトロープ剤などを含み得る。経口投与用組成物は、官能的な品質を高めるために、着香料および他の成分も含有し得る。局所送達のための製剤は、また光増感剤の浸透を補助するために液体または半固体の賦形剤を含み得る。化合物はまたエアロゾルスプレーによって送達され得る。光増感剤の投与量は体重当たり0.1乃至500mg/ kg、好ましくは体重当たり0.5乃至2mg/ kgで変化し得る。光増感剤を目的の領域に蓄積させ、その後、損傷部位に300乃至1200nm、好ましくは350乃至850nmの波長の光で照射する。病変が皮膚表面にある場合、光増感剤は直接光を当てられる;もしくは、光源を備えた内視鏡カテーテルが光線療法効果を達成させるために採用され得る。照射の強度、出力、期間および光の波長は病変の場所および部位によって幅広く変わり得る。フルエンス率は、好ましくは、しかし必ずしも常にではないが、温度効果を最小限にするために200mW/cm2以下を保つ。適切な出力は病変の大きさ、深さおよび病状に依存する。本発明の化合物は、限定はされないが、腫瘍、炎症過程および損傷された血管に対する光線療法を含む幅広い臨床有用性を有する。
【0063】
化合物を含むDyeは診断薬としておよび光力学治療剤として両方同時に使用され得る。例えば、医薬的に共用される製剤にある有効量の本発明の化合物は、光線療法処置の実施方法として前記したように患者に投与される。投与後、光線診断および光線療法を組み合わせた処置がなされる。例えば、光線診断および光線療法の組合せのための化合物を含む組成物は患者に投与され、そして、濃度、場所、または他のパラメーターは目的の標的部位で決定される。標的化部位の場所を決定するために、1以上の測定がなされ得る。化合物が標的部位に蓄積する時間は薬物動態等の因子に依存し、30分乃至2日の幅がある。一度、部位が同定されれば、処置の光線療法部分は、部位決定後直ぐかまたは薬物が部位から除去される前になされ得る。除去は薬物動態、組織の種類(例えば、脂質貯蔵)等の因子に依存する。
【0064】
本発明の化合物は、経腸、非経腸、局所、エアロゾル、吸入または皮膚投与のための診断または療法用化合物に製剤され得る。光増感剤の局所または皮膚送達はまた、エアロゾル剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤なども含み得る。化合物は所望の診断または治療目的を達するのに効果的な用量で投与される。かかる用量は、組成物中に用いられる特定の化合物、検査される器官または組織、臨床手法で用いられる設備、達成される処置の効力などに応じて幅広く変化し得る。これらの組成物は、企図する投与タイプに適する従来の医薬担体および賦形剤と共に、有効量の化合物を含有する。これらの組成物はまた、安定化剤および皮膚浸透促進剤を含み得る。
【0065】
他の実施態様として、光線診断剤および光線治療薬は、ミセル、リポソーム、マイクロカプセルまたは他の微小粒子として製剤化される。これらの製剤は送達、局在化、標的特異性、投与等を促進し得る。一例として、本発明組成物のリポソーム製剤は、化合物が特異的標的部分を含んでない(例えば、Eが水素である)場合、有利であり得る。他の一例として、本発明組成物のリポソーム製剤は、化合物の溶解性が制限されている場合、有利であり得る。これらを調製することおよび装填することは当該技術分野でよく知られている。
【0066】
一例として、リポソームは、低熱遷移であることから、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)または卵ホスファチチジルコリン(PC)から調製され得る。リポソームは当業者に知られた標準的手法を用いて作成される(例えば、Braun-Falcoら、(編集者), Griesbach Conference, Liposome Dermatics, Springer-Verlag, Berlin (1992))。ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ無水物または脂質はミクロスフェアとして製剤化され得る。実例として、光学的薬剤がポリビニルアルコール(PVA)と混合され、そして該混合物は乾燥され、エチレン酢酸ビニルで被覆され、その後またPVAとともに冷却される。リポソームでは、光学的薬剤は一方または両方の脂質二重層内、脂質二重層間の水性層、または中心または核とともに存在し得る。リポソームは他の分子および脂質で修飾されてカチオン性リポソームを形成し得る。リポソームはまた脂質で修飾されることにより、その表面がより親水性になり、血流における循環時間が増加する。上述の修飾リポソームはステルスリポソームまたは長寿命リポソームと呼ばれ、米国特許第6,277,403; 6,610,322; 5,631,018; 5,395,619;および6,258,378号(それぞれは引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)およびStealth Liposomes, LasicおよびMartin (編集者) 1995, CRC Press, Londonの特定のページに記載されている。カプセル化の方法は、当業者に知られているように、および例えば、米国特許第6,406,713号(引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)に開示されるように、洗浄剤の透析(detergent dialysis)、凍結乾燥、フィルム形成、注入を含む。
【0067】
リポソーム、マイクロカプセル等に製剤化された化合物は前記したいずれかの経路で投与され得る。局所的に適用される製剤では、光学的薬剤は時間をかけて徐々に放出される。注射製剤では、リポソームカプセルは血流により循環し所望の部位に送達される。リポソーム、マイクロカプセル、または他の微小粒子の使用は、相違する種類および性能の2またはそれ以上の本発明の化合物を組成物中に組み入れることを可能にする。
【0068】
化合物はまた抗菌剤として使用され、Hamblinら "Targeted photodynamic therapy for infected wounds in mice"、Optical Methods for Tumor Treatment and Detection: Mechanisms and Techniques Photodynamic Tharapy XI (SPIE 2002議事録)(引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)に記載されるように、感染症、創傷および火傷治療に用いられることができる。この点において、化合物の輸送媒体としてのリポソーム等の使用は望まれるものである。
【0069】
例えば、いずれかの中性またはアニオン性色素を有する式1、式2または両方を、DyeまたはY成分中のクロリン、ポルフィリン、フタロシアニンおよびフェノチアジンに対するもののような、カチオン性色素または光増感剤との組合せで、部分的にまたは全体的にリポソームまたは他の微粒子にカプセル化される。それぞれの式のE成分は前記したように水素または標的化部分であり得る。化合物は患者に投与され、感染部位に位置づけられる。光線診断および光線療法の処置は、感染部位に化合物を検出し、その後病原菌を殺傷するために化合物を活性化させることにより感染領域を治療するために実施される。
【0070】
以下の例は、生理活性ペプチドであるボンベシン;1型発色団である4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロフェニルベンゾイルヒドラジド;およびPDT発色団であるカルボキシメチルシアニン色素に由来する典型的なバイオコンジュゲートの調製および特性に関する本発明の非限定的な実施態様である。上記された化合物は当業者によく知られており、その化合物の一般的な記載およびそれらの合成は、米国特許番号第6,180,085号;Jori, G., Far-red-absorbing photosensitizers: their use in the photodynamic therapy of tumours, J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 62, (1992), 371-378; Patonay, G.およびM. Antoine, Near-Infrared Fluorogenic Labels: New Approach to an Old Problem, Anal. Chem., 63:6, (1991) 321A-327A;および、Jori, G.およびE. Reddi, Second Generation Photosensitizers for the Photodynamic Therapy of Tumours、 Light in Biology and Medicine, Volume 2 (編集者 R.H. Douglasら), Plenum Press, New York, (1991), 253-266(引用されることにより、その全内容が明示的に本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0071】
当業者に明らかなように、多様な変更および修飾が可能であり、記載された発明の範囲内で意図される。本明細書で示され、記載された本発明の実施態様は、当業者である発明者の単なる具体的実施態様であり、決して限定するものではないと理解されるであろう。したがって、本発明の精神および下記請求項の範囲を離れずに、それらの実施態様に対する多様な変更、修飾または改変がなされ、またはそれらが手段として使われ得る。例えば、本発明の化合物は主に治療に向けられるが、多環芳香族発色団を含む化合物のほとんどは光学的診断イメージングの目的にもまた使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は本発明化合物の活性化メカニズムの図解である。
【図2】図2はフタロシアニン誘導体の合成メカニズムの図解である。
【図3】図3はシアニン誘導体の合成メカニズムの図解である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E--L--DYE--X--N3(式1)、E−L--DYE--X--Y(式2)、またはそれらの組み合わせの、少なくとも1の化合物の医薬的に許容される製剤を光感受性組成物として含む、光活性化組成物。
但し、式中、
DYEは、シアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、アゾ色素、メチン色素、およびインドレニウム色素からなる群から選択され、
Yは、いずれかのDye、水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル、スルフェナートアリール、ジアゾ色素、クロリン、ナフタロシアニン、メチレンブルー、およびカルコゲノピリリウム類似体からなる群から選択され、
Eは、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質受容体結合分子、および水素からなる群から選択され、
Lは、-(CH2)a-、 -(CH2)bCONR1-、 -N(R2)CO(CH2)c-、 -OCO(CH2)d-、 -(CH2)eCO2-、 -OCONH-、 -OCO2-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -OSO2-、 -NR3(CH2)eCONR4-、 -CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-からなる群から選択され、
Xは、単結合または-(CH2)h-、 -OCO-、 -HNCO-、 -(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-からなる群から選択され、
R1乃至R8は、独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10からなる群から選択され、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され、
a乃至lは、独立して0乃至10の範囲にある。
【請求項2】
化合物が式2であり、DyeまたはYの少なくとも1が、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、アントラサイクリン、およびアジドからなる群から選択され、他のDyeまたはYが存在しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式1の少なくとも1化合物と式2の少なくとも1化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式2の少なくとも2化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
式1の少なくとも2化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
フタロシアニンまたはナフタロシアニンと配位された反磁性金属を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1のDyeまたはYがポリカチオン性ペプチドに結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
テルルまたはセレンの少なくとも1が、ローダミン、メチレンブルー、およびカルコゲノピリリウム類似体からなる群から選択されるDyeまたはYの少なくとも1にある中心の酸素または窒素を置換する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(a) E--L--DYE--X--N3 (式1)、E--L--DYE--X--Y (式2)、またはそれらの組合せの少なくとも1の化合物の医薬的に許容される製剤の有効量を動物の組織を標的として投与すること、
但し、式中、
DYEは、シアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、アゾ色素、メチン色素、およびインドレニウム色素からなる群から選択され、
Yは、いずれかのDye、水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル、スルフェナートアリール、ジアゾ色素、クロリン、ナフタロシアニン、メチレンブルー、およびカルコゲノピリリウム類似体からなる群から選択され、
Eは、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質受容体結合分子からなる群から選択され、
Lは、-(CH2)a-、 -(CH2)bCONR1-、 -N(R2)CO(CH2)c-、 -OCO(CH2)d-、 -(CH2)eCO2-、 -OCONH-、 -OCO2-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -OSO2-、 -NR3(CH2)eCONR4-、 -CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-からなる群から選択され、
Xは、単結合または-(CH2)h-、 -OCO-、 -HNCO-、 -(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-からなる群から選択され、
R1乃至R8は、独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10からなる群から選択され、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され、
a乃至lは、独立して0乃至10の範囲にある。
および、
(b)当該標的組織を十分な出力とフルエンス率で300および950nmの間の波長の光に暴露すること、
を含む光活性化方法。
【請求項10】
2型メカニズムによる活性化のために、約600nm乃至約700nmの間の範囲、または、1型メカニズムによる活性化のために約300nm乃至約950nmの間の範囲の波長で光に暴露することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
当該光増感剤が当該標的組織中に蓄積することを可能にする工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、体重当たり約0.1mg/kg乃至体重当たり約500mg/kgの範囲で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、体重当たり約0.5mg/kg乃至体重当たり約2mg/kgの範囲で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、経腸、非経腸、局所、エアロゾル、皮下(subdermal)、皮下(subcutaneous)、または吸入の少なくとも1から選択される経路で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
組成物が約1nM乃至約0.5nMの範囲の濃度で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、混合物(mixture)または混合剤(admixture)中に式1の少なくとも2化合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、DyeまたはYの少なくとも1がフェノキサジン、フェノチアジン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、およびクロリンからなる群から選択される、光力学的治療方法のための少なくとも2化合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
結果として、ネクローシスの効果、抗菌効果、またはアポトーシスの効果の少なくとも1を生じる、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
式1、E----L----DYE----X-----N3を含む化合物。
但し、式中、
DYEは、シアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、アゾ色素、メチン色素、およびインドレニウム色素の少なくとも1から選択され、
Eが、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質受容体結合分子からなる群から選択され、
Lは、-(CH2)a-、 -(CH2)bCONR1-、 -N(R2)CO(CH2)c-、 -OCO(CH2)d-、 -(CH2)eCO2-、 -OCONH-、 -OCO2-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -OSO2-、 -NR3(CH2)eCONR4-、 -CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-からなる群から選択され、
Xは、単結合または-(CH2)h-、 -OCO-、 -HNCO-、 -(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-からなる群から選択され、
R1乃至R8は、独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10からなる群から選択され、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され、
a乃至lは、独立して0乃至10の範囲にある。
【請求項20】
式2、E----L----DYE----X-----Yを含む化合物。
但し、式中、
DYEは、シアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、アゾ色素、メチン色素、およびインドレニウム色素の少なくとも1から選択され、
Yは、いずれかのDye、水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル、スルフェナートアリール、ジアゾ色素、クロリン、ナフタロシアニン、メチレンブルー、およびカルコゲノピリリウム類似体からなる群から選択され、
Eは、ソマトスタチン受容体結合分子、熱感受性バクテリオエンドトキシン受容体結合分子、ニューロテンシン受容体結合分子、ボンベシン受容体結合分子、コレシストキニン受容体結合分子、ステロイド受容体結合分子、および糖質受容体結合分子からなる群から選択され、
Lは、-(CH2)a-、 -(CH2)bCONR1-、 -N(R2)CO(CH2)c-、 -OCO(CH2)d-、 -(CH2)eCO2-、 -OCONH-、 -OCO2-、 -HNCONH-、 -HNCSNH-、 -HNNHCO-、 -OSO2-、 -NR3(CH2)eCONR4-、 -CONR5(CH2)fNR6CO-、および-NR7CO(CH2)gCONR8-からなる群から選択され、
Xは、単結合または-(CH2)h-、 -OCO-、 -HNCO-、 -(CH2)iCO-、および-(CH2)jOCO-からなる群から選択され、
R1乃至R8は、独立して、水素、C1-C10アルキル、-OH、C1-C10ポリヒドロキシアルキル、C1-C10アルコキシル、C1-C10アルコキシアルキル、-SO3H、-(CH2)kCO2H、および-(CH2)lNR9R10からなる群から選択され、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-C10アルキル、C5-C10アリール、およびC1-C10ポリヒドロキシアルキルからなる群から選択され、
a乃至lは、独立して0乃至10の範囲にある。
【請求項21】
(a)光活性化でDyeまたはYの少なくとも1が2型メカニズムにより作用する、E--L--DYE--X--N3(式1)の化合物またはE--L--DYE--X--Y(式2)の化合物のいずれかの少なくとも1;
(b)光活性化で少なくとも1のDyeが2型メカニズムにより作用する、E--L--DYE--X--N3(式1)の少なくとも2化合物;
(c)光活性化で少なくとも1のDyeまたはYが2型メカニズムにより作用する、E--L--DYE--X--Y(式2)の少なくとも2化合物;および
(d)光活性化でDyeまたはYの少なくとも1が2型メカニズムにより作用する、E--L--DYE--X--Y(式2)の少なくとも1化合物、
(ここで、Dyeは、シアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クロコニウム、アゾ色素、メチン色素、およびインドレニウム色素からなる群から選択され、
YはいずれかのDye、水素、ハロゲン、アントラサイクリン、アジド、C1-C20ペルオキシアルキル、C1-C20ペルオキシアリール、C1-C20スルフェナートアルキル、スルフェナートアリール、ジアゾ色素、クロリン、ナフタロシアニン、メチレンブルー、およびカルコゲノピリリウム類似体からなる群から選択され、
Eは所望により受容体結合因子または水素であり、LおよびXはDyeを式1のN3または式2のYのいずれかに結合する)
から選択される医薬的に許容される製剤を含む、光活性組成物。
【請求項22】
リポソームに製剤化された、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508385(P2007−508385A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535550(P2006−535550)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/032859
【国際公開番号】WO2005/037928
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】