説明

デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療のための医薬組合せ剤

1種以上の補助化合物と共に、1種以上の式(I)又は(II)の化合物を含む(又は本質的にこれらからなる)組合せ剤、これらの組合せ剤の調製方法、及びこれらの組合せ剤の種々の治療的使用。これらの組合せ剤を含有する医薬組成物、並びにこれらの組合せ剤を使用したデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、1種以上の補助化合物と共に、1種以上の式(I)又は(II)の化合物を含む(又は本質的にこれらからなる)組合せ剤に、これらの組合せ剤の調製方法に、又これらの組合せ剤の種々の治療的使用に関する。これらの組合せ剤を含有する医薬組成物、並びにこれらの組合せ剤を使用したデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
デュシェンヌ筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy)(DMD)は、フランスの神経科医Duchenne de Boulogneにより150年以上前に最初に記述され、その人に因んで疾患が命名された、筋肉機能の進行性悪化に関連した一般的な遺伝性神経筋疾患である。DMDは、ジストロフィン遺伝子の突然変異に起因して男性3500人中1人に影響を及ぼすX連鎖劣性障害として特徴付けられている。この遺伝子はヒトゲノム中最大のものであり、260万個のDNAの塩基対を包含し、79個のエキソンを含有する。ジストロフィン突然変異のおよそ60%が、下流のフレームシフト誤差につながる大型の挿入又は欠失であり、一方およそ40%が点突然変異又は小型のフレームシフト再構成である。DMD患者の大多数は、ジストロフィンタンパク質を欠いている。ベッカー(Becker)筋ジストロフィーは、ジストロフィンタンパク質の量的減少又は大きさの変化に起因するDMDのはるかにより穏やかな形態である。DMDの高い出現率(精子又は卵子10,000個中1個)は、遺伝子検査では決してこの疾患はなくならないであろうこと、したがって有効な治療法が非常に望まれていることを意味する。
【0003】
いくつかの自然の及び作り出されたDMD動物モデルが存在し、前臨床試験のための主要部を提供している(Allamand,V.及びCampbell,K.P.の論文(筋ジストロフィーのための動物モデル:治療法開発の貴重なツール(Animal models for muscular dystrophy:valuable tools for the development of therapies))(Hum.Mol.Genet.9,2459〜2467(2000)))。マウス、ネコ及びイヌモデルはすべてDMD遺伝子の突然変異を有し、ヒトにおいて見られるのと同様な生化学的ジストロフィン異常症が現われるが、それらの表現型に関して驚くべき且つ重要な変異を示す。ヒトのように、イヌ(ゴールデンレトリーバー(Golden retriever)筋ジストロフィー及びジャーマンショートヘアドポインター(German short-haired pointer))モデルは、厳格な表現型を有する;これらのイヌは通例心不全で死亡する。イヌは、ヒト疾患のための最良のフェノコピー(phenocopy)を提供し、前臨床試験向けの高度な指標と見なされる。残念なことに、これらの動物の飼育には費用が掛かり且つ困難であり、同腹仔の間で臨床時間経過が変動する恐れがある。
【0004】
mdxマウスは、入手し易さ、短い在胎期間、成熟期間及び比較的低コストのため、最も広く使用されるモデルである(Bulfield,G.,Siller,W.G.,Wight,P.A.及びMoore,K.J.の論文(マウスにおけるX染色体連鎖筋ジストロフィー(X chromosome-linked muscular dystrophy(mdx)in the mouse))(Proc.Natl Acad.Sci.USA 81,1189〜1192(1984)))。
【0005】
約20年前のDMD遺伝子発見以来、前臨床動物試験において、DMDの治療における様々な度合いの成功が達成され、そのいくつかはヒトで追跡調査されている。現在の治療戦略は、広く3つの群:第1に遺伝子治療の取組み;第2に細胞治療;最後に薬理学的治療に分類することができる。遺伝子ベース及び細胞ベースの治療は、特に疾患の進行初期に開始した場合、二次的欠陥/病状(例えば拘縮)を別個に癒す必要性をなくしているという基本的な利点を提供する。残念なことに、これらの取組みはいくつかの技術的ハードルに直面している。毒性、安定な発現性の欠如及び送達の困難性の他に、ウイルス性ベクター、筋原細胞及び新たに合成されるジストロフィンに対する免疫学的応答が報告されている。
【0006】
筋ジストロフィーを治療するための薬理学的取組みは、欠失遺伝子及び/又はタンパク質いずれかを送達するように設計されていないという点で遺伝子ベース及び細胞ベースの取組みと異なっている。一般に、薬理学的戦略では、炎症を軽減する、カルシウムのホメオスタシスを改善する、及び筋肉前駆体の増殖又は関係付けを強化するなどの手段によって表現型を改善する試みとして薬物/分子を使用する。これらの戦略は、それらが容易に全身的に送達され、ベクター及び細胞ベース治療に関連している多くの免疫学的及び/又は毒性組織を巧みに回避することができる利点を提供する。炎症を軽減するコルチコステロイド及びクロモグリク酸ナトリウム、カルシウムホメオスタシスを維持するダントロレン、並びに筋力を増強するクレンブテロールに関する研究が有望な結果をもたらしているが、これらの可能性ある治療法はいずれも、単独でDMDを治療するのに有効であることが未だ示されていない。
【0007】
代替的な薬理学的取組みは、上方制御(アップレギュレーション)治療法である。上方制御治療法は、欠陥遺伝子を置き換える代替的遺伝子の発現を増加させることに基づいており、予め不在のタンパク質に対する免疫応答が存在する場合に、特に利点がある。ジストロフィンの常染色体パラローグ(paralogue)であるユートロフィン(utrophin)の上方制御が、DMDの可能性ある治療法として提案されている(Perkins及びDaviesの論文(Neuromuscul Discord,S1:S78〜S89(2002))、Khurana及びDaviesの論文(Nat Rev Drug Discov 2:379〜390(2003)))。遺伝子導入mdxマウスにおいてユートロフィンが過剰発現される場合、ユートロフィンは筋肉細胞の筋細胞膜に局在化し、ジストロフィン付随タンパク質複合体(dystrophin-associated protein complex)(DAPC)の成分を回復し、それによりジストロフィン発現を予防し、次に骨格筋肉の機能改善につながる。イヌにおけるユートロフィンのアデノウイルス性送達は病状を予防することが示されている。マウスモデルの出生直後にユートロフィン発現増加が開始されることが有効である可能性があり、ユートロフィンが偏在的に発現される場合何ら毒性が観察されず、このことはこの治療法をヒトに翻訳するのに有望なことである。病状を緩和するのに十分なレベルまで内因性ユートロフィンを上方制御することが、拡散可能な小化合物を送達することにより達成される可能性がある。
【0008】
(補助薬)
下記において詳細に記述されるように、本発明の組合せ剤において、広く様々な補助薬が用途を見出している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明者らはここに、予防的検査において内因性ユートロフィンを上方制御する、したがってDMDの治療に役立つ可能性のある一群の化合物を見出している。
【0010】
本発明により、本発明者らは、補助剤と、式(I)又は(II)の化合物又はその医薬として許容し得る塩とを含む(又は本質的にこれらからなる)組合せ剤であって、任意にデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置のための前記組合せ剤
【化1】

(式中、
同一又は異なり得るA1、A2、A3、A4及びA5は、N又はCR1を表し、
R9は-L-R3(Lは単結合又はリンカー基であり、R3は水素又は置換基を表す)を表し、
さらに、
A1-A4の隣接する1対がそれぞれCR1を表す場合、これらの隣接する炭素原子は、それらの置換基と一緒になって環Bを形成でき、
A5がCR1を表す場合、A5及びN-R9は、それらの置換基と一緒になって環Cを形成できる)を提供する。
【0011】
R9がHを表す場合、式Iの化合物は、式IIの化合物の互変異性体である。
式Iの化合物は、互変異性体、鏡像異性体及びジアステレオマー形態で存在でき、それらの全てが本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
なし
【発明を実施するための形態】
【0013】
全ての式Iの化合物は、従来の方法で製造できる。ヘテロ芳香環系の製造方法は当技術分野でよく知られている。特に、合成方法は文献(総合ヘテロ環化学、第1巻(Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Vol. 1)(編集:AR Katritzky, CW Rees)(Pergamon Press, Oxford, 1984)、及び総合ヘテロ環化学II:文献1982〜1995の総説ヘテロ環化合物の構造、反応、合成及び使用(Comprehensive Heterocyclic Chemistry II: A Review of the Literature 1982〜1995 The Structure, Reaction, Synthesis, and Uses of Heterocyclic Compounds)、Alan R. Katritzky(編集者), Charles W. Rees(編集者), E.F.V. Scriven(編集者)(Pergamon Pr, 1996年6月))中で考察されている。考察の対象となっている化合物の合成を助ける他の一般的供給源は、文献(マーチの先進有機化学:反応、機構及び構造(March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure)、(Wiley-Interscience;第5版(2001年1月15日)))を含む。
【0014】
式Iの化合物又はその医薬として許容し得る塩は、式IIの化合物から調製できる。
【0015】
【化2】

(式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の通り定義される)から、例えば欧州特許第0751134号中に記述されているチオ尿素-S,S-ジオキシド又は亜ジチオ酸塩例えばアルカリ金属塩、との反応によって行われる還元的閉環として調製できるものである。この反応は、水溶液好ましくはアルコール水溶液中において、温度60〜80℃で実施できる。環化は、ある種の官能基が存在すると、例えば-NH2又は-OH官能基が存在すると起こらないであろう。これらの基は、環化の前に保護する必要があるであろう。例えば、-NH2基はアミドとして保護でき、-OH基はエーテルとして保護できる。適切に保護する方策は、例えば欧州特許第0751134号中に開示されている。
【0016】
式IIの化合物は、式IIIのジアゾニウム化合物
【化3】

(式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の通り定義される)の、式IVのフェニル誘導体
【化4】

(式中、A9は、上記の通り定義される)とのジアゾニウムカップリング反応により調製できる。カップリングのための条件は、合成化学者にはよく知られている。例えば反応は、24時間までにわたって、わずかに酸性の条件下のメタノール中で実施できる。
【0017】
式IIIの化合物は、式V:
【化5】

(式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の通り定義される)の適正なアミンのジアゾ化によって調製できる。ジアゾ化の方法は、当技術分野でよく知られており、例えば0〜10℃における水溶液中のNaNO2/AcOHとの反応による。
【0018】
式Vの化合物は、式VIの化合物
【化6】

(式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の通り定義され、Pはニトロ化条件に適した保護基を表す)のニトロ化、及びその後の脱保護により合成できる。ニトロ化は、例えば、反応条件に適した溶媒中におけるcHNO3/cH2SO4により行うことができるであろう。式IV及びVIの化合物は、それ自体知られている従来の技術により製造できる。式Iの2-フェニルインダゾールは、下記のスキームにおいて概説している、様々な方法によって、製造することができる。
【0019】
【化7】

【0020】
フェニルインダゾールは、知られている方法を使用して製造できる。例えば、Song,J.J.らの論文(Organic Letters,2000,2(4),519〜521)により記述されているPd(II)触媒を使用して式VIIのヒドラジンを環化できる。
【0021】
別法として、Akazome,M.らの論文(J.Chem.Soc.Chemical Communications,1991,20,1466〜7)により記述されているPd(0)媒介による環化を使用して、イミンVIIIから式VIIのフェニルインダゾールを合成できる。
【0022】
次いで、フェニルインダゾールは、当業者に知られている方法を使用して処理できる。例えばニトロ化(Elguero,J.らの論文(Bulletin des Societes Chimiques Belges,1996,105(6),355〜358)により記述されている)により、ニトロ化合物IXが得られる。当業者は、ニトロ化合物を処理して広い範囲の官能性を得ることができる方法について十分承知している。例えばこのニトロ化合物を、例えばSn/HClを使用して還元し、続いて、例えばCH2Cl2中の酸塩化物及びトリエチルアミンを使用しアシル化することによりアミドXが得られる。
【0023】
上記の工程において、出発物質中に存在する任意の官能基、例えばヒドロキシ又はアミノ基を保護することが必要になり得る。したがって、式Iの化合物を生成させるためには、1個以上の保護基を除去することが必要になり得る。
【0024】
適切な保護基及びそれらの除去方法は、例えばT.Green及びP.G.M.Wuttsの文献「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthsis)」(John Wiley and Sons Inc.,1991)中で記述されているものである。ヒドロキシ基は、例えば、フェニルメチル、ジフェニルメチル又はトリフェニルメチルなどのアリールメチル基;アセチル、トリクロロアセチル又はトリフルオロアセチルなどのアシル基により;或いはテトラヒドロピラニル誘導体として保護できる。適切なアミノ保護基には、ベンジル、(R,S)-α-フェニルエチル、ジフェニルメチル又はトリフェニルメチルなどのアリールメチル基、及びアセチル、トリクロロアセチル又はトリフルオロアセチルなどのアシル基が含まれる。水素化分解、酸若しくは塩基加水分解又は光分解を含む従来の脱保護方法が使用できる。アリールメチル基は、例えば、金属触媒例えば木炭上のパラジウムの存在における水素化分解により除去できる。テトラヒドロピラニル基は、酸性条件下の加水分解により分解できる。アシル基は、水酸化ナトリウム又は炭酸カリウムなどの塩基による加水分解によって除去でき、或いはトリクロロアセチルなどの基は、例えば亜鉛及び酢酸による還元によって除去できる。
式Iの化合物及びそれらの塩は、従来の技術を使用してそれらの反応混合物から単離できる。
【0025】
式Iの化合物の塩は、その遊離酸若しくはその塩、或いはその遊離塩基又はその塩若しくは誘導体を、1当量以上の適正な塩基又は酸と反応させることにより形成できる。この反応は、この塩が不溶である溶媒若しくは媒質中で、或いはこの塩が可溶である溶媒、例えば真空中で又は凍結乾燥により除去できるエタノール、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル中で実施できる。この反応は、メタセシス過程であってもよく、或いはイオン交換樹脂上で実施できる。
【0026】
式Iの化合物の医薬として許容し得る塩には、アルカリ金属塩、例えばナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム及びマグネシウム塩;III族元素の塩、例えばアルミニウム塩;並びにアンモニウム塩が含まれる。適切な有機塩基との塩、例えばヒドロキシルアミン;低級アルキルアミン、例えばメチルアミン若しくはエチルアミン;置換されている低級アルキルアミン、例えばヒドロキシ置換アルキルアミンとの;又は単環窒素複素環式化合物、例えばピペリジン若しくはモルホリンとの塩;並びにアミノ酸との、例えばアルギニン、リシンなど、又はそれらのN-アルキル誘導体との;又はアミノ糖、例えばN-メチル-D-グルカミン若しくはグルコサミンとの塩。他の塩も例えば生成物を単離又は精製するのに有用であるが、無毒性の生理学的に許容し得る塩が好ましい。
【0027】
ジアステレオ異性体は、従来の技術、例えばクロマトグラフィー又は分別晶出を使用して分離できる。種々の光学異性体は、従来の例えば分別晶出又はHPLC技術を使用して本化合物のラセミ体又は他の混合物を分離することによって単離できる。別法として、所望の光学異性体は、ラセミ化を生じさせない条件下で適正な光学的に活性な出発物質を反応させることによって製造できる。
【0028】
アルキルが表し得る置換基には、メチル、エチル、ブチル、例えばsecブチルが含まれる。ハロゲンはF、Cl、Br及びI、特にClを表し得る。
式Iの化合物におけるR3が表し得る置換基の例には、アルキル、アルコキシ又はアリールが含まれ、それぞれ、同一又は異なり得る1種以上の、好ましくは1〜3個の置換基R2により任意に置換されている。
【0029】
さらに、挙げることができる化合物には、
A5がNを表す請求項1の式I又は請求項1の式IIの化合物
(式中、
Lは単結合であり、R3は、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているO-アリール若しくはチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NR10R11
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R16及びR17は、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11は、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12は、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17はそれぞれ、
1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシにより任意に置換されているアリール若しくは任意に置換されているアリール、
任意に置換されているアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方は、任意に置換されているCOアルキル又は任意に置換されているCOアリールをさらに表すことができ、
R17と共用される定義の他に、R16はヒドロキシルを表すことができる);
又は、請求項1の式IIの化合物(式中、A5はCHを表し、式中
Lは単結合であり、R3は、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
OC(=W)NR10R11
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11は、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12は、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17はそれぞれ、
1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシにより任意に置換されているアリール若しくは任意に置換されているアリール、
任意に置換されているアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方は、任意に置換されているCOアルキル又は任意に置換されているCOアリールをさらに表すことができ、
R17と共用される定義の他に、R16はヒドロキシルを表すことができる)
が含まれる。
【0030】
挙げることができる化合物には、化合物であって、同一又は異なり得るR1及びR2が、
1以上のハロゲン、アルコキシ又は任意に置換されているアリール、チオアリール若しくはアリールオキシにより、任意に置換されているアルキル、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているアルコキシ、
ヒドロキシ、
OC(=W)NR10R11
アリール、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
P(=O)OR40R41
を表すことができ、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R40及びR41が、水素、任意に置換されているアリールにより任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
NR10R11が、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12が、NR10R11と同一の意味を有することができ、
R17がNR10R11を表す場合、そのNR10R11が、水素、COアルキル及びCOにより任意に置換されているアリールを表すことができ、
R16が、ヒドロキシ、アルコキシ又はNR10R11を表すことができ、
R17が、1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシ、任意に置換されているアリール又はNR10R11を表すことができる前記化合物が含まれる。
【0031】
挙げることができる他の化合物には、
A5がNを表す請求項1の式I又は請求項1の式IIいずれかの化合物(式中、
Lは、
O、S、若しくはNR18
1以上のO、S、NR18、又は1つ以上のC-C単結合、二重結合若しくは三重結合によりそれぞれ任意に中断され得るアルキレン、アルケニレン、アルキニレン
であるリンカー基を表し、
R18は、水素、アルキル、COR16を表す)、
又は、A5がCHを表す請求項1の式IIの化合物(式中、
Lは、
O、S、NR18
1以上のO、S、NR18、又は1つ以上のC-C単結合、二重結合若しくは三重結合によりそれぞれ任意に中断され得るアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、
-N-N-単結合若しくは二重結合
であるリンカー基を表し、
R18は、水素、アルキル、COR16を表す)が含まれる。
【0032】
アルキルは任意のアルキル鎖を表し得る。アルキルには直鎖及び分岐、飽和及び不飽和アルキル、並びに、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどの環状アルキルが含まれる。しかし、任意の置換基がアルキルを表す場合、アルキルは飽和、線状又は分岐しているものであり、炭素原子1〜10個、好ましくは炭素原子1〜8個、より好ましくは炭素原子1〜6個を有することが好ましい。任意の置換基がアルキルを表す場合、特に好ましい基はシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。
【0033】
アリールは任意の芳香族系を表し得る。式Iの化合物においてアリールは芳香族炭化水素又は、炭素の他に環構成成分として酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10員の芳香族複素環であるのが好ましい。本発明者らは、ヘテロ原子1又は2個を含有する複素環を好む。挙げることができる芳香族複素環にはフラン、チオフェン、ピロール及びピリジンが含まれる。アリールが芳香族炭化水素である場合、アリールは6〜10員単環又は二環系、例えばフェニル又はナフタレンを表すことが特に好ましい。
【0034】
挙げることができる飽和及び不飽和複素環には、N、S及びOから選択されるヘテロ原子1〜2個を含有することが好ましい環原子4〜7個、好ましくは環原子5若しくは6個を含有するものが含まれる。挙げることができる複素環には、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピペラジン及びモルホリンが含まれる。例えばNR10R11が複素環を形成する場合、N-含有複素環が特に好ましい。
【0035】
上記において詳述したように、A1-A4の隣接する1対がそれぞれCR1を表す場合、隣接する炭素原子は、それらの置換基と一緒になって環Bを形成できる。また、A5がCR1を表す場合、A5及びCR1はそれらの置換基と一緒になって環Cを形成できる。環B及び/又は環Cは、飽和若しくは不飽和3〜10員炭素環又は複素環であることが好ましい。特に好ましい環Bは、ベンゼン環である。特に好ましい環Cは、3〜10員飽和若しくは不飽和複素環である。
本発明者らは、少なくとも1つのR1がNR15C(=W)R17、最も詳細には基NR15COR17を表す化合物を特に好む。本発明者らは、少なくとも1つのR1がCONR10R11を表す化合物をも好む。
【0036】
一群の特に好ましい化合物について、少なくとも1つのR1はアミド基NHCOR17を表し、ここで、R17は、
アルキルC1〜C6
フェニルにより置換されているアルキルC1〜C6
アルコキシC1〜C6により置換されているアルキルC1〜C6
ハロアルキルC1〜C6
ペルフルオロアルキルC1〜C6
1以上のハロゲン、アルキルC1〜C6、アルコキシC1〜C6、アミノ、(アルキルC1〜C6)アミノ、ジ(アルキルC1〜C6)アミノ若しくはフェニルにより任意に置換されているフェニル、
CH:CHフェニル、
ナフチル、ピリジニル、チオフェニル及びフラニル
から選択される。
【0037】
本発明者らは、R1及びR2の一方又は両方が、-COOH以外である化合物を好む。
特に好ましい化合物の他の群について、少なくとも1つのR1は基NR15COR10R11を表し、その場合、同一又は異なり得るR10及びR11は、任意に置換されているアリール、アルキル及び任意に置換されているCOアリールから選択される。少なくとも1つのR1が表し得る特に好ましい基はNHCONHR15であり、R15は、フェニル、アルキルC1〜C6及び1以上のハロゲンにより任意に置換されているCOフェニルから選択される。
【0038】
特に好ましい化合物の他の群について、少なくとも1つのR1は、フェニルにより任意に置換されているアルキルC1〜C6、又はN、S及びOから選択されるヘテロ原子1〜2個を含有する5若しくは6員の飽和若しくは不飽和複素環を表す。好ましい複素環には、チオフェン、フラン、ピリジン及びピロールが含まれる。
特に好ましい化合物の他の群について、少なくとも1つのR1はCOR16を表し、R16は、アルコキシC1〜C6、アミノ、(アルキルC1〜C6)アミノ又はジ(アルキルC1〜C6)アミノである。
【0039】
特に好ましい化合物の他の群について、少なくとも1つのR1は:
NO2
ハロゲン、
アルキルC1〜C6がフェニル又は5若しくは6員の飽和若しくは不飽和複素環により任意に置換されている、アミノ又は(アルキルC1〜C6)アミノ又はジ(アルキルC1〜C6)アミノ、
NHSO2アルキルC1〜C6、NHSO2フェニル、
SO2アルキルC1〜C6
C1〜C6アルコキシC1〜C6により任意に置換されているフェニル、
N、S及びOから選択されるヘテロ原子1〜3個を含有する5〜10員飽和若しくは不飽和単環若しくは二環式複素環
を表す。
【0040】
基R3についても、広い変動範囲が存在する。R3はアリールを表すことが好ましく、同一又は異なり得る1〜3個の置換基R2により任意に置換されている。R3は、5〜10員芳香族単環又は二環系、特に炭化水素5〜10員芳香族単環又は二環系、例えばベンゼン又はナフタレンであることが特に好ましい。
【0041】
別法として、この5〜10員芳香族単環又は二環系は、N、O及びSから選択されるヘテロ原子3個までを含有する複素環系、例えばチオフェン、フラン、ピリジン又はピロールとすることができる。
【0042】
置換基R2は、
それぞれハロゲンにより任意に置換されているチオフェニル又はフェノキシにより任意に置換されているアルキルC1〜C6
アルコキシC1〜C6
フェニル、
チオアルキルC1〜C6
ハロゲンにより任意に置換されているチオフェニル、
NO2
CN、
NR10R11(式中、同一又は異なり得るR10及びR11は、水素、アルキルC1〜C6を表し、又はそれらが結合している窒素と一緒になって、N、O及びSから選択される1個以上のさらなるヘテロ原子を含有できる5〜7員環を形成する)、
ハロゲン、
SO2R12(式中R12は、N、O及びSから選択される1個以上のさらなるヘテロ原子を含有できる5〜7員環を表す)、
NHCOR17(式中R17は、
アルキルC1〜C6(任意に、
フェニル若しくはハロゲン、又は
アルコキシC1〜C6、カルボキシ若しくはハロゲンにより任意に置換されているフェニル、又は
5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環
により置換されている)、
ハロゲン、アルコキシC1〜C6、カルボキシ若しくは基SO2NR10R11により任意に置換されているフェニル又は5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環
を表す)
から選択されることが好ましい。
【0043】
R2がNR10R11を表す場合、NR10R11は、N-ピロール、N-ピペリジン、N'(C1〜C6)アルキルNピペラジン又はN-モルホリンを表すことが特に好ましい。
リンカー基Lは、
-NH.NH-、
-CH=CH-、
-C≡C-、又は
-NCOR16(式中R16は、ハロゲン、アルコキシC1〜C6、カルボキシにより任意に置換されているフェニル又は5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環を表す)
を表すことが好ましい。
【0044】
A1-A4はN又はCR1を表し得る。したがって、6員環は窒素原子1、2、3又は4個を含有できる。A1-A4のうち2つが窒素を表し、A1-A4のうち1つが窒素を表し、すべてのA1-A4がCR1を表す本発明の実施態様が存在する。
【0045】
任意にデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置のための、特に好ましい一群の化合物又はその医薬として許容し得る塩において、
同一又は異なり得るA1、A2、A3、A4及びA5は、N又はCR1を表し、
R9は-L-R3(式中Lは単結合又はリンカー基である)を表し、
この化合物が式I又は式IIの化合物(式中、A5はNを表し、
Lは単結合であり、R3は、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NR10R11
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R16及びR17は、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11は、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12は、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17はそれぞれ、
1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシにより任意に置換されているアリール若しくは任意に置換されているアリール、
任意に置換されているアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方は、任意に置換されているCOアルキル又は任意に置換されているCOアリールをさらに表すことができ、
R17と共用される定義の他に、R16はヒドロキシルを表すことができる)であるか;
或いはこの化合物が式IIの化合物(式中、A5はCHを表し、Lは単結合であり、R3は、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
OC(=W)NR10R11
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11は、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12は、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17はそれぞれ、
1以上のハロゲン、アルコキシにより任意に置換されるアリール若しくは任意に置換されるアリール、により置換されるアルキル
任意に置換されるアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方は、任意に置換されるCOアルキル又は任意に置換されるCOアリールをさらに表すことができ、R17と共用される定義のほかに、R16はヒドロキシルを表すことができる。)であるかいずれかであり、
さらに、
同一又は異なり得るR1及びR2が、
1以上のハロゲン、アルコキシ又は任意に置換されるアリール、チオアリール若しくはアリールオキシにより、任意に置換されるアルキル、
アルキル若しくは任意に置換されるアリールにより任意に置換されるアルコキシ、
ヒドロキシル、
OC(=W)NR10R11
アリール、
アルキル若しくは任意に置換されるアリールにより任意に置換されるチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されるチオアリール、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17が、水素、任意に置換されるアリールにより任意に置換されるアルキル、任意に置換されるアリールを表し、
さらに、
NR10R11が、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12が、NR10R11と同一の意味を有することができ、
R17がNR10R11を表す場合、そのNR10R11が、水素、COアルキル及びCOにより任意に置換されるアリールを表すことができ、
R16が、ヒドロキシ、アルコキシ又はNR10R11を表すことができ、
R17が、1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシ、任意に置換されているアリール又はNR10R11を表すことができ、
A1-A4の隣接する1対がそれぞれCR1を表す場合、これらの隣接する炭素原子が、それらの置換基と一緒になって環Bを形成できる。
【0046】
本発明者らは、それらを必要とする患者におけるデュシェンヌ筋ジストロフィー、ベッカー筋ジストロフィー又は悪液質の治療又は予防方法であって、有効な量の本発明の組合せをその患者に投与することを含む前記方法をも提供する。
【0047】
(一般的優先性及び定義)
本発明の組合せ剤は、別個に投与された場合の個々の化合物の治療効果に比べて治療的に効力のある効果をもたらすことができる。
【0048】
用語「効力のある(efficaceous)」には、加成性、相乗作用、副作用低減、毒性低減、病気進行までの時間遅延、生存期間の延長、一方の薬剤の他方への増感若しくは再増感、又は応答速度の改善などの有利な効果が含まれる。効力のある効果により、患者に投与されるそれぞれの若しくはいずれかの成分のより少ない用量が可能になり、そのため化学療法の毒性を軽減しながら、同一の治療効果が発揮及び/若しくは維持される。
【0049】
本文脈における「相乗作用(synergistic)」効果は、別々に提供された場合の組合せ剤成分の治療効果の合計を超える、組合せ剤によりもたらされる治療効果を指す。
「加成性(additive)」効果は、別々に提供された場合の、組合せ剤の任意の成分の治療効果を超える、組合せ剤によりもたらされる治療効果を指す。
【0050】
「医薬組成物(pharmaceutical composition)」は、投与した際、所望の生理学的変化を誘発することができる、患者(例えばヒト若しくは動物患者)に投与するのに適した形態、濃度及び純度レベルにおける固体若しくは液体組成物である。医薬組成物は通例、無菌及び/又は非発熱性である。本発明の医薬組成物に適用される用語、非発熱性は、患者に投与される場合に望ましくない炎症性応答を誘発しない医薬組成物を定義している。
【0051】
本明細書において使用される用語、動員剤(mobilizing agent)及び動員(mobilization)は、骨髄から末梢血へのCD34+、幹細胞、前駆細胞及び/若しくは前駆体細胞の移動を促進する役割を果たす薬剤及び処置を指す当分野の用語である。(総説については、例えばCottler-Foxらの論文(2003)「幹細胞の動員(Stem cell mobilization)」(Hematology: 419〜437)を参照されたい)。本発明により使用するのに適した現在の標準的動員剤には、G-CSF(Filgrastim(商標)、Amgen社)、GM-CSF(Sargramostim(商標)、Berlex社、Richmond、CA(カリフォルニア)州)、及びエリトロポイエチン(CD34+細胞に関して、いくらかの動員活性を有する)が含まれる。代替的薬剤には、幹細胞因子(stem cell factor)(SCF)(G-CSFと組み合わせて使用する場合特に有効である)、並びにG-CSF(Pegfilgrastim(商標)、Amgen社)及びエリトロポイエチン(Darbopoietin(登録商標)、Amgen社)の種々の誘導体が含まれる。後者の薬剤は、半減期が延長され、したがって収集のため利用可能な一時的ウインドウを広げるのに有利である。間質由来因子(stromal derived factor)(SDF-1a)の、その同族受容体CXCR4への結合の可逆性阻害剤であるAMD3100(AnorMed(商標)、Vancouver、カナダ)は、目下動員剤として臨床試験中である。他の薬剤には、ドセタキセルが含まれる(例えばPrinceらの論文(2000)(Bone Marrow Transplantation 26: 483〜487)を参照されたい)。
【0052】
本明細書において使用される用語「ユートロフィンの上方制御(upregulation of utrophin)」には、遺伝子増幅(すなわち多重遺伝子コピー)及び転写効果による発現増加を含むユートロフィンの発現の高まり若しくは過剰発現、並びに、突然変異による活性化を含むユートロフィンの活動過多及び活性化が含まれる。用語「ユートロフィン上方制御剤(utrophin upregulating agent)」は、それに応じて理解されるべきである。したがって、ユートロフィンの上方制御は、DNAコード化のレベル、並びに転写、翻訳若しくは翻訳後レベルにおけるユートロフィン活性増加にわたっている。好ましい式(I)及び(II)の化合物は、ユートロフィン上方制御剤(本明細書において開示される)である。
【0053】
本明細書において使用される用語「組合せ剤(combination)」は、2種以上の化合物及び/又は薬剤(本明細書において成分(component)とも呼ばれる)に適用され、2種以上の化合物/薬剤が会合されている物質を定義することを意図している。本文脈における用語「組み合わされる(combined)」及び「組み合わせる(combining)」は、それに応じて理解されるべきである。
【0054】
組合せ剤における2種以上の化合物/薬剤の会合は、物理的若しくは非物理的とすることができる。物理的に会合し組み合わされる化合物/薬剤の例には:
混合物として(例えば同一の単位用量以内で)2種以上の化合物/薬剤を含む組成物(例えば単位製剤);
2種以上の化合物/薬剤が化学的/物理化学的に連結されている(例えば架橋、分子的集合(molecular agglomeration)、又は共通のビヒクル部分への結合による)物質を含む組成物;
2種以上の化合物/薬剤が化学的/物理化学的に共包装され(co-packaged)ている(例えば脂質小胞、粒子(例えばミクロ若しくはナノ粒子)又はエマルション液滴上若しくはそれら内に置かれる)物質を含む組成物;
2種以上の化合物/薬剤が共包装若しくは共提供され(co-presented)ている(例えば一連の単位用量の一部として)医薬キット、医薬パック、又は患者用パック
が含まれる。
【0055】
非物理的に会合し組み合わされる化合物/薬剤の例には:
2種以上の化合物/薬剤の少なくとも1種を含む物質であり、この少なくとも1種の化合物/薬剤に即時調合的に会合させることにより2種以上の化合物/薬剤の物理的な会合を形成させる指示を伴う前記物質(例えば非単位製剤);
2種以上の化合物/薬剤の少なくとも1種を含む物質であり、この2種以上の化合物/薬剤による併用療法の指示を伴う前記物質(例えば非単位製剤);
2種以上の化合物/薬剤の少なくとも1種を含む物質であり、この2種以上の化合物/薬剤のうちの他の1種以上が投与されている(投与されつつある)患者集団に投与する指示を伴う前記物質;
2種以上の化合物/薬剤の少なくとも1種を含む物質であり、量又は形態として、この2種以上の化合物/薬剤のうちの他の1種以上と組み合わせて使用するように特に適応されている物質
が含まれる。
【0056】
本明細書において使用される用語「併用療法(combination therapy)」は、2種以上の化合物/薬剤の組合せ剤の使用を含む療法を定義することを意図している(上記に定義した通り)。したがって、本出願において「併用療法」、「組合せ剤」、並びに「組み合わせて」化合物/薬剤を使用することに言及する場合、それは同一の全体的治療計画の一環として投与される化合物/薬剤を指すことができる。したがって、2種以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量は、異なってよい:それぞれ同時に又は異なる時間に投与できる。したがって、本組合せ剤の化合物/薬剤は、同一の医薬製剤(すなわち一緒に)或いは異なる医薬製剤(すなわち別々に)のいずれかとして、順次(例えば前又は後)、又は同時に投与できることが理解されるであろう。同一製剤で同時にということは単位製剤としてであり、一方異なる医薬製剤で同時にということは非単位製剤としてである。併用療法における2種以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量は、投与経路に関して異なってもよい。
【0057】
本明細書において使用される用語「医薬キット(pharmaceutical kit)」は、一連の1種以上の単位用量の医薬組成物を、投与手段(例えば計量デバイス)及び/又は送達手段(例えば吸入器又は注射器)と共に、任意に全てのものを共通の外部包装に納めたものと定義される。2種以上の化合物/薬剤の組合せ剤を含む医薬キットにおいて、個々の化合物/薬剤は、単位若しくは非単位製剤とすることができる。1種以上の単位用量は、ブリスターパック内に入れることができる。医薬キットは、任意に使用指示書をさらに備えることができる。
【0058】
本明細書において使用される用語「医薬パック(pharmaceutical pack)」は、一連の1種以上の単位用量の医薬組成物を、任意に共通の外部包装に納めたものと定義される。2種以上の化合物/薬剤の組合せ剤を含む医薬パックにおいて、個々の化合物/薬剤は、単位若しくは非単位製剤とすることができる。1種以上の単位用量は、ブリスターパック内に入れることができる。医薬パックは、任意に使用指示書をさらに備えることができる。
【0059】
本明細書において使用される用語「患者用パック(patient pack)」は、患者に処方され、全体の治療過程についての医薬組成物を入れた包装物と定義される。患者用パックには通常1種以上のブリスターパックが入っている。患者が常に、患者パックに入っている包装挿入紙(通例では患者の処方箋に紛れ込んでいる)を見ることができる点で、患者用パックは、薬剤師が、患者の医薬支給分を大量の支給物から取り分けている従来の処方箋に優る利点を有する。包装挿入紙を含むことにより、医師の指示への患者の順守性向上が示されている。
本発明の併用薬は、別個に投与された場合の個々の化合物/薬剤の治療効果に比べて治療的に効力のある効果をもたらすことができる。
【0060】
本明細書において使用される用語「補助薬(ancillary agent)」は、本明細書において定義された式(1)の化合物と組み合わせる場合に、効力のある組合せ剤(本明細書において定義された)をもたらす化合物/薬剤と定義できる。したがって、補助薬化合物は、本明細書において定義された式(1)の化合物への補助剤として作用でき、そうでなくとも組合せ剤の効力の一助となり得る(例えば、本明細書において定義したように、相乗作用若しくは加成性効果をもたらすことによって、又は応答速度を増すことによって)。
【0061】
本明細書において使用される用語「抗体(antibody)」は、抗体全体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体(monoclonal antibodies)(Mab)を含む)を定義している。この用語は、組換えDNA技術により、又は無傷抗体の酵素的若しくは化学的切断により生成され得るF(ab)、F(ab')、F(ab')2、Fv、Fc3及び単鎖抗体(及びこれらの組合せ)を含む抗体断片を指すためにも本明細書において使用される。用語「抗体」は、2つの異なる重/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する合成複合抗体である二重特異性若しくは二官能性抗体を包含するためにも本明細書において使用される。二重特異性抗体は、ハイブリドーマ融合又はFab'断片の結合を含む様々な方法により生成させることができる。やはり用語「抗体」に包含されるのは、キメラ抗体(1つ以上の非ヒト変異性抗体免疫グロブリン領域に組み合わせて、ヒト定常性抗体免疫グロブリン領域を有する抗体、又はこれらの断片)である。したがってこのようなキメラ抗体は、「ヒト化(humanized)」抗体を含む。やはり用語「抗体」に包含されるのは、ミニボデイ(mimibodies)(WO 94/09817参照)、単鎖Fv-Fc融合物、及びヒト抗体(遺伝子導入動物により生成される抗体)である。用語「抗体」には、多量体抗体及びタンパク質の高次錯体も含まれる(例えば、ヘテロ二量体抗体)。
【0062】
(本発明で使用する補助薬)
本発明の組合せ剤において、任意の広く様々な補助薬を使用することができる。本明細書において記述される本発明の組合せ剤中に使用する補助薬は、下記の分類から選択されることが好ましい:
1. 抗炎症薬;
2. プロテアーゼ阻害薬;
3. ミオスタチンアンタゴニスト;
4. サイトカイン及び動員剤;
5. コルチコステロイド;
6. アナボリックステロイド;
7. TGF-βアンタゴニスト;
8. 抗酸化剤及びミトコンドリア保持剤;
9. ジストロフィン発現増強剤;
10. 遺伝子置換/修復剤;
11. 細胞ベース組成物;
12. クレアチン;
13. 抗骨粗しょう症薬;
14. 補助的ユートロフィン上方制御剤;
15. cGMPシグナル伝達調節剤;並びに
16. 上述の分類の2つ以上の組合せ。
【0063】
本明細書において特定の補助薬に言及する場合、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体及び保護形態を含むことを意図している(その塩又は互変異性体又は異性体又はN-オキシド又は溶媒和物が好ましく、又その塩又は互変異性体又はN-オキシド又は溶媒和物がより好ましい)。
【0064】
(1. 抗炎症薬)
DMDによって影響を受ける筋肉は、大量のマクロファージを含む、炎症の兆候を示す。したがって、以下に考察するように、筋ジストロフィーの治療において、広い範囲の抗炎症薬を使用することができる。
【0065】
(1.1 ベータ2-アドレナリン作動性受容体アゴニスト)
本発明の一実施態様において、補助薬はベータ2-アドレナリン作動性受容体アゴニスト(例えば、アルブテロール)である。
定義及び技術的背景:用語、ベータ2-アドレナリン作動性受容体アゴニストは、ベータ2-アドレナリン作動性受容体に作用し、それにより平滑筋弛緩を引き起こし、気管支通路の拡張、筋肉及び肝臓における血管拡張、子宮筋の弛緩並びにインスリン放出をもたらす薬物の種類を定義するため本明細書において使用される。本発明により使用するための好ましいベータ2-アドレナリン作動性受容体アゴニストは、喘息向け吸入剤の形態で広く使用されている免疫抑制薬であるアルブテロールである。アルブテロールは、炎症組織損傷の一因となるマクロファージ及び他の免疫細胞の浸透を抑制することによって、疾患の進行を遅らせると考えられる。アルブテロールはまた、いくらかのタンパク質同化効果をも有し、筋肉組織の成長を増進するように見える。アルブテロールはまた、タンパク質分解をも抑制できる(おそらくカルパイン抑制による)。
【0066】
(1.2 nNOS刺激剤)
ジストロフィンの減少は、膜における破壊を招き、通例一酸化窒素(NO)を生成させるタンパク質である、ニューロン一酸化窒素合成酵素(neuronal nitric oxide synthase)(nNOS)を不安定化する。DMD患者において観察される筋肉縮退の少なくとも一部は、筋肉の膜関連ニューロン一酸化窒素合成酵素生成の減少に起因し得ると考えられる。この減少が、血管収縮神経応答の制御の障害、及び究極的な筋肉損傷につながり得る。
【0067】
(1.3 核因子カッパ-B阻害薬)
本発明の組合せ剤における使用に適した抗炎症薬の好ましい種類は、核因子カッパ-B(Nuclear Factor Kappa-B)(NF-kB)阻害薬である。NF-kBは、細胞の免疫、炎症及び増殖応答を調節する主な転写因子である。NF-kBは、マクロファージを活性化して炎症及び筋肉壊死を促進させ、筋肉前駆体細胞を阻害することにより骨格筋肉線維の再生を制約する機能がある。DMDにおけるこの因子の活性化は、疾患の症状に寄与する。したがって、NF-kBは、筋ジストロフィーの進行において重要な役割を演じ、IKK/NF-Bシグナル経路は、DMD治療のための可能性のある治療標的である。NF-kBの阻害薬(例えば、IRFI 042、ビタミンE類似体)は、筋肉機能を回復させ、血清CKレベル及び筋肉壊死を少なくし、筋肉再生を増進させる。その上、NF-kB/IKK媒介シグナルの特異的阻害により、同様な利益を有する。
【0068】
(1.4 TNFαアンタゴニスト)
TNFαは、炎症応答の引き金を引き、持続させる重要なサイトカインの1つである。本発明の一実施態様において、補助薬はTNFαアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ)である。
優先性及び特定の実施態様:本発明により使用するための好ましいTNFαアンタゴニストは、マウスVK及びVH領域と、ヒト定常性Fc領域とを有するキメラ型モノクローナル抗体である、インフリキシマブ(Remicade(商標))を含む。この薬剤は、TNFαと結合することによりTNFαの作用を遮断し、細胞表面上のTNFα用受容体へのシグナル発信を抑止する。本発明により使用するための他の好ましいTNFαアンタゴニストは、アダリムマブ(Humira(商標))である。アダリムマブは、完全にヒトのモノクローナル抗体である。本発明により使用する他の好ましいTNFαアンタゴニストは、エタネルセプト(Enbrel(商標))である。エタネルセプトは、IgG1のFc部分に結合した可溶性ヒトTNF受容体を含む二量体融合タンパク質である。エタネルセプトは大分子であり、TNFαに結合し、その作用を遮断する。エタネルセプトは、天然産生の可溶性TNF受容体の阻害効果を模倣しているが、融合タンパク質として、血流中における大きく延長された半減期を有し、したがってより深い、長期継続性阻害効果を有する。Enbrelは、25mgバイアル中の凍結乾燥粉末として販売されており、希釈剤で再構成し、次いで、通例は在宅の患者により、皮下注射しなければならない。
【0069】
本発明により使用するための他の好ましいTNFαアンタゴニストは、化学名1-(5-オキソヘキシル)-3,7-ジメチルキサンチンであるペントキシフィリン(Trental(商標))である。徐放性錠剤形態における通常の投与量は1錠(400mg)ずつ、食事と一緒に1日3回である。
薬量:Remicadeは、通例は2か月の間隔で、静脈内注入により投与される。推奨される用量は、静脈内注入として与えられる3mg/kgであり、続いて最初の注入後2及び6週間、次いでその後8週間毎にさらなる同様の用量である。不完全な応答を有する患者については、用量を10mg/kgまで調節し、又は4週間毎に治療する考慮を払うことができる。Humiraは、予め充填された0.8ml注射器でも、又予め充填されたペン型デバイスでも販売され、いずれも通例は在宅の患者により、皮下注射される。エタネルセプトは、25mg(週2回)又は50mg(週1回)の用量で投与することができる。
【0070】
(1.5 シクロスポリン)
本発明の一実施態様において、抗炎症薬はシクロスポリンである。この薬剤の主形態であるシクロスポリンAは、菌類トリポクラジウムインフラトゥム(Tolypocladium inflatum)により産生されるアミノ酸11個の環状非リボソームペプチドである。シクロスポリンは、免疫適格性リンパ球(特にT-リンパ球)の細胞質ゾルタンパク質であるシクロフィリン(イムノフィリン)に結合すると考えられる。このシクロスポリンとシクロフィリンとの錯体は、正常な環境下でインターロイキン-2の転写の活性化に応答するカルシニューリンを抑制する。この錯体は、リンホカイン産生及びインターロイキン放出をも抑制し、したがってエフェクターT-細胞の機能低下へと導く。この錯体は、細胞増殖抑制活性に影響しない。この錯体はミトコンドリアにも効果があり、ミトコンドリアPTコアの開口を妨げ、こうしてシトクロムcの放出を阻害する(強力なアポトーシス刺激因子)。シクロスポリンは、1〜10mg/kg/日の用量で投与できる。
【0071】
(2. プロテアーゼ阻害薬)
骨格筋内のタンパク質は、少なくとも3つの異なるタンパク質分解経路;(a)リソソームプロテアーゼ(例えばカテプシン);(b)非リソソームCa2+依存性プロテアーゼ(例えばカルパイン);及び(c)非リソソームATP-ユビキチン依存性プロテアーゼ(例えば多触媒プロテアーゼ錯体又はプロテアソーム)によって分解される。いくつかの証拠の方向は、プロテアーゼ性分解経路の活性化促進が、筋ジストロフィーの原因の根底にあることを示唆している。したがって、以下に考察するように、プロテアーゼ阻害薬を筋ジストロフィーの治療に使用することができる。
【0072】
本発明により使用するのに好ましいプロテアーゼ阻害薬は、具体的には上述の3つの分解経路の1つを目標とすることができる。特に好ましいものは、以下に記述するように非リソソームCa2+依存性経路(カルパイン阻害薬)又は非リソソームATP-ユビキチン依存性経路(プロテアソーム阻害薬)を目標とするプロテアーゼ阻害薬である。
【0073】
(2.1 カルパイン阻害薬)
本発明の一実施態様において、補助薬はカルパイン阻害薬である。
【0074】
定義及び技術的背景:用語「カルパイン阻害薬(calpine inhibitor)」は、カルパインの活性を抑制することが可能な任意の薬剤を定義するため、本明細書において使用される。カルパインは、偏在性カルシウム依存性システインプロテアーゼであり、多くの細胞骨格性及びミエリンタンパク質を切断する。カルパインは、Ca2+活性化細胞内プロテアーゼのファミリーに属し、その活性は、いくつかの外傷性若しくは虚血性事象、及び/又は遺伝性欠陥の結果として膜透過性が高まるため、細胞内に異常な量のCa2+が入る場合に、加速される。カルパインは、システインプロテアーゼの比較的小さいファミリーの1つであり、計画された細胞死、すなわちアポトーシスを促進する活性がある。カルパインは、壊死及びアポトーシス的細胞死の両方の開始に関係している。カルパインが異常に上方制御されると、促進された分解過程により、細胞及び組織が、それらが再生され得るよりも急速に分解され、いくつかの重大な神経筋性及び神経変性疾患の原因となる。カルパインは、筋ジストロフィー(DMDを含む)に付随した組織分解の促進に関係している。カルパインを活性化する引き金は、一般にそのレベルが非常に低い細胞内に漏洩するCa2+イオンである。膜の完全性を維持することに、ジストロフィン遺伝子が関わっており、この遺伝子が突然変異すると、カルシウムイオンに対して膜がより透過性となる。したがって、DMD患者の筋肉中のカルパイン活性を抑制すれば、筋肉の完全性を保全し、筋肉の分解を妨げ若しくは遅くすることができる。
【0075】
優先性及び特定の実施態様:本発明により使用するカルパイン阻害薬は、担体に連結した(又は会合した)カルパイン抑制部分を含むことが好ましい(この担体は、カルパイン抑制部分が筋肉組織に標的を定めるのを促進する作用がある)。この標的を定める部分は、カルパイン抑制部分に化学的に連結でき、或いはそれと物理的に会合できる(リポソーム担体)。好ましい標的を定める部分は、カルニチン又はアミノカルニチンを含む。カルパイン抑制部分はロイペプチンとすることができる。特に好ましいものは、Ceptor社のMyodur(商標)とすることができる。他のこのようなカルパイン阻害薬は、WO 2005124563に記載されている(その内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。他の適切なカルパイン阻害薬は、WO2004/078908中に開示されているα-ケトカルボニルカルパイン阻害薬である(その内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。WO2004/078908中に記載されているカルパイン阻害薬について、好ましいものは、カルパイン及びプロテアソームの両方を標的とするものとしてよい。
【0076】
本発明により使用するカルパイン阻害薬は、カルパイン抑制部分がROS阻害薬に会合している(例えば、結合した、同時投与される、又は共有結合している)キメラ化合物又は組合せ剤とすることができる。このような薬剤は、酸化性ストレスの解放を、カルパイン媒介による筋肉組織分解の軽減と結び付ける。適切な二元作用性カルパイン/ROS阻害薬は、例えばWO01/32654、WO2007/045761、WO2005/056551及びWO2002/40016中に記載されている(それらの内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0077】
他の適切なカルパイン阻害薬は、市販の試験キットを使用して特定することができる(例えば、Oncogene Research Products社、San Diego、CA(カリフォルニア)州からの蛍光原基質に基づくカルパイン活性キット)。この試験では、カルパインが合成基質Suc-LLVY-AMCを消化する能力を測定する。遊離AMCを、励起360〜380nm及び発光440〜460nmにおいて蛍光光度法により測定することができる。
【0078】
(2.2 プロテアソーム阻害薬)
定義及び技術的背景:本発明の組合せ剤において使用するのに適した他の種類の補助薬は、プロテアソーム阻害薬である。プロテアソームは、多くの短命な生物学的過程の半減期を制御する。骨格筋線維の原形質膜において、ジストロフィンは多量体タンパク質錯体と会合しており、ジストロフィングリコプロテイン錯体(dystrophin-glycoprotein complex)(DGC)と称する。この錯体のタンパク質メンバーは、ジストロフィンのない骨格筋線維では通例不在若しくは大きく減少しており、プロテアソーム性分解経路を阻害すれば、ジストロフィン会合タンパク質の発現及び細胞下介在から逃れられる。したがって、プロテアソーム阻害薬は、DMD治療向けの可能性のある治療薬として最近特定されている(Bonuccelliらの論文((2003)Am J Pathol. October; 163(4):1663〜1675)を参照されたい)。本明細書において使用する用語「プロテアソーム阻害薬」は、プロテアソーム(他の細胞タンパク質の代謝回転に関わりのある大タンパク質錯体)の作用を直接若しくは間接的に混乱、撹乱、遮断、調節若しくは抑制する化合物を指す。この用語は、上述のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体及び保護形態をも包含する(その塩又は互変異性体又は異性体又はN-オキシド又は溶媒和物が好ましく、又その塩又は互変異性体又はN-オキシド又は溶媒和物がより好ましい)。
【0079】
優先性及び特定の実施態様:ペプチドアルデヒド(MG-132など)、及びプロテアソームのより特異的な阻害薬であるジペプチジルホウ素酸ボルテジミブ(Velcade(商標);以前はPS-341として知られる)を含む、本発明の組合せ剤において使用するのに適したいくつかの種類のプロテアソーム阻害薬がある。したがって、本発明に従って使用する好ましいプロテアソーム阻害薬は、ボルテジミブ([(1R)-3-メチル-1-[[(2S-1-オキソ-3-フェニル-2-[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]-ホウ素酸)を含む。ボルテジミブは、例えば商標名VelcadeのもとにMillennium Pharmaceuticals Inc社から市販され、或いはPCT特許明細書番号WO 96/13266中に記載されるように、又はそれと同様な方法によって調製できる。ボルテジミブは、特に、プロテアソ-ムの触媒部位内で基本アミノ酸、すなわちトレオニンと相互作用する。本発明の組合せ薬において使用する他の好ましいプロテアソーム阻害薬は、細胞透過性プロテアソーム阻害薬CBZ-ロイシル-ロイシル-ロイシナール(MG-132)(Bonuccelliらの論文((2003)Am J Pathol. October; 163(4):1663〜1675)中に記述され、その内容がこの化合物に関して、引用により本明細書中に組み込まれている)である。他の阻害薬には、MG-115(CBZ-ロイシル-ロイシル-ノルバリナール)及びALLN(N-アセチル-ロイシル-ロイシル-ノルロイシナール)(N-acetyl-leucyl-leucyl-norleucinal)(やはりBonuccelliらの論文((2003)Am J Pathol. October; 163(4):1663〜1675)中に記述され、その内容がこの化合物に関して、引用により本明細書中に組み込まれている。)を含む、構造的にMG-132に関連しているものが含まれる。
【0080】
薬量:プロテアソーム阻害薬(ボルテジミブなど)は、100〜200mg/m2などの投与量で投与することができる。これらの投与量は、例えば、治療経過当り1回、2回若しくはそれ以上投与でき、これを、例えば、7、14、21又は28日毎に反復できる。MG-132は、10μg/kg/日の用量で投与することができる。
【0081】
(3. ミオスタチンアンタゴニスト)
定義及び技術的背景:本発明の組合せ剤において使用するのに適した他の種類の補助薬は、ミオスタチンアンタゴニストである。成長/分化因子8(growth/differentiation factor 8)(GDF-8)としても知られるミオスタチンは、骨格筋量の制御に関わる変異成長因子-β(transfor分g growth factor-β)(TGF-β)ファミリーメンバーである。TGF-β-GDFファミリーの大抵のメンバーは、広く発現され、多面的である:しかしミオスタチンは、主として骨格筋組織内で発現され、そこで骨格筋成長を負方向に制御する。ミオスタチンは、不活性なプレプロタンパク質として合成され、タンパク質分解性切断により活性化される。前駆体タンパク質は切断されて、およそアミノ酸109個のCOOH末端タンパク質を生成し、それが、約25kDaのホモ二量体の形態として成熟した活性形態である。成熟した二量体は、プロペプチドに結合した不活性な不顕性錯体として、血液内を循環するように見える。本明細書において使用する用語「ミオスタチンアンタゴニスト」は、ミオスタチンの少なくとも1つの活性を阻害若しくは遮断する、又は別法としてミオスタチン若しくはその受容体の発現を遮断若しくは低減させる(例えば、その受容体へのミオスタチンの結合を妨げ、及び/又はその受容体へのミオスタチンの結合がもたらすシグナル伝達を遮断する)種類の薬剤と定義される。したがって、このような薬剤には、ミオスタチンそれ自体に、若しくはその受容体に結合する薬剤が含まれる。
【0082】
優先性及び特定の実施態様:本発明により使用するためのミオスタチンアンタゴニストには、GDF-8への抗体;GDF-8受容体への抗体;可溶性GDF-8受容体及びその断片(例えば、US 10/689,677に記載されるActRIIB融合ポリペプチドであって、免疫グロブリンのFc部分にActRIIBが結合する可溶性ActRIIB受容体を含むもの);GDF-8プロペプチド及びその改変形態(例えば、WO02/068650又はUS10/071499に記載されるものであって、GDF-8プロペプチドが免疫グロブリンのFc部分に結合する形態、及び/又はGDF-8が、アスパルテート(asp)残基(例えば、マウスGDF-8ポリペプチドのasp-99、及びヒトGDF-8ポリペプチドのasp-100)において突然変異される形態を含む);GDF-8の小分子阻害剤;フォリスタチン(例えば、US6,004,937に記載されるもの)又はフォリスタチン領域含有タンパク質(例えば、US10/369,736及びUS10/369,738に記載されるGASP-1又は他のタンパク質);並びに、US10/662,438に記載されるGDF-8活性化に影響を及ぼすメタロプロテアーゼ活性の調節剤が含まれる。
【0083】
好ましいミオスタチンアンタゴニストには、ミオスタチンに結合し、阻害し若しくは中和するミオスタチン抗体(ミオスタチンプロタンパク質及び/又は単量体若しくは二量体形態の成熟タンパク質を含む)が含まれる。ミオスタチン抗体は、哺乳動物若しくは非哺乳動物由来抗体、例えばサメ由来のIgNAR抗体、又はヒト化抗体が好ましい(又は、抗体由来の官能性断片を含む)。このような抗体は、例えば、US 2004/0142383、US 2003/1038422、WO2005/094446及びWO2006/116269に記載される(これらの内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。ミオスタチン抗体には、ミオスタチンプロタンパク質に結合し、開裂して成熟活性形態になるのを妨げるものも含まれる。本発明の組合せ剤において使用するため特に好ましいミオスタチン抗体は、Wyeth社のスタムルマブ(Stamulumab)(MYO-029)である。MYO-029は、組換え型ヒト抗体であり、ミオスタチンに結合し、その活性を抑制する。他の好ましい抗体アンタゴニストには、US6096506及びUS6468535に記載される抗体が含まれる(引用により本明細書中に組み込まれている)。いくつかの実施態様において、GDF-8阻害薬は、GDF-8がその受容体に結合するのを遮断するモノクローナル抗体又はその断片である。他の例示的実施態様には、マウスモノクローナル抗体JA-16(US 2003/0138422中に記載(ATCCデポジットNo. PTA-4236));そのヒト化誘導体、並びに、US 2004/0142382に記載され、引用により本明細書中に組み込まれている完全ヒトモノクローナルGDF-8抵抗性抗体(例えば、Myo-29、Myo-28及びMyo-22、それぞれATCCデポジットNo. PTA-4741、PTA-4740及びPTA-4739、又はこれらの誘導体)が含まれる。
【0084】
他の好ましいミオスタチンアンタゴニストには、ミオスタチンに結合し、その少なくとも1つの活性を抑制する可溶性受容体が含まれる。ここで用語「可溶性受容体(soluble receptor)」には、ミオスタチン受容体の切断バージョン又は断片が含まれ、それらは、具体的には、ミオスタチンに結合し、それによりミオスタチンのシグナル伝達を遮断若しくは抑制する。例えばミオスタチン受容体の切断バージョンには、天然産の可溶性領域、並びにN-若しくはC-末端のタンパク質分解により合成された変形形態が含まれる。可溶性領域には、受容体の細胞外領域の全部若しくは一部が、単独で又はさらなるペプチド若しくは他の部分に結合して含まれる。ミオスタチンは、アクチビン受容体(アクチビン型IEB受容体(activin type IEB receptor)(ActRHB)及びアクチビン型HA受容体(activin type HA receptor)(ActRHA)を含む)に結合するので、アクチビン受容体は可溶性受容体アンタゴニストのベースを形成することができる。可溶性受容体Fcを含む、可溶性受容体融合タンパク質を使用することもできる(両方が引用により本明細書中に組み込まれている、US2004/0223966及びWO2006/012627を参照されたい)。
【0085】
ミオスタチン受容体に基づく他の好ましいミオスタチンアンタゴニストは、ALK-5及び/又はALK-7阻害薬である(例えばWO2006025988及びWO2005084699を参照されたい。これらの開示は引用により本明細書中に組み込まれている)。TGF-βサイトカインとして、ミオスタチンは、単一の膜介在セリン/トレオニンキナーゼ受容体を通ってシグナルを送る。これらの受容体は、I型又はアクチビン様キナーゼ(activin like kinase)(ALK)受容体及びII型受容体の2種類に分けることができる。ALK受容体は、(a)セリン/トレオニンに富む細胞内尾部が欠けており、(b)I型受容体間で非常に相同性のあるセリン/トレオニンキナーゼ領域を有し、又(c)グリシン及びセリン残基に富む区域からなるGS領域と呼ばれる共通のシーケンスモチーフを共有している点で、II型受容体と区別される。GS領域は、細胞内キナーゼ領域のアミノ末端端部にあり、II型受容体による活性化のため重要と考えられる。いくつかの研究は、TGF-βシグナル発生にはALK(I型)受容体及びII型受容体の両方を要とすることを示している。具体的には、II型受容体は、TGF-[ベータ]が存在する状態で、TGF-[ベータ]ALK5についてI型受容体のGS領域をリン酸化する。次に、ALK5は、原形質タンパク質smad2及びsmad3を、2つのカルボキシ末端セリンでリン酸化する。一般に、多くの種において、II型受容体は細胞増殖を制御し、I型受容体は基質産生を制御すると考えられる。種々のALK5受容体阻害薬が記述されている(例えばUS 6,465,493、US2003/0149277、US2003/0166633、US20040063745、及びUS2004/0039198を参照されたい。これらの開示は引用により本明細書中に組み込まれている)。したがって、本発明により使用するためのミオスタチンアンタゴニストは、ALK5及び/又はALK7受容体のミオスタチン結合領域を含むことができる。
【0086】
他の好ましいミオスタチンアンタゴニストには、ミオスタチン受容体に結合する場合に、ミオスタチンと競合する可溶性リガンドアンタゴニストが含まれる。ここで用語「可溶性リガンドアンタゴニスト」は、1つ以上のミオスタチン受容体(例えば、アクチビン型HB受容体(ActRHA))に非増殖的に結合し、それによってミオスタチン受容体のシグナル伝達を競合的に遮断することが可能な可溶性ペプチド、ポリペプチド又はペプチド模倣薬を指す。可溶性リガンドアンタゴニストには、ミオスタチンと相同性を有するが、ミオスタチンの活性を有しない「ミオスタチン類似体」とも呼ばれるミオスタチンの変形形態が含まれる。このような類似体には、切断体(truncates)(N-若しくはC-末端の切断、置換、欠落など、並びに、非アミノ酸置換物を有する変形形態などのアミノ酸配列における他の変更)が含まれる。
【0087】
他の好ましいミオスタチンアンタゴニストには、ポリヌクレオチドアンタゴニストがさらに含まれる。これらのアンタゴニストには、目標mRNA(センス)若しくはDNA(アンチセンス)配列と結合可能な一本鎖ポリヌクレオチド配列(RNA又はDNAのいずれか)を有するアンチセンス若しくはセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明により使用するためのアンチセンス若しくはセンスオリゴヌクレオチドは、ミオスタチン又はその受容体をコード化した目標ポリヌクレオチド配列、ミオスタチン又はその受容体の発現に関わる転写因子、又は他のポリヌクレオチドの断片を含む。このような断片は、一般に少なくとも約14個のヌクレオチド、通例は約14〜約30個のヌクレオチドを含む。アンチセンス若しくはセンスオリゴヌクレオチドは、改変された糖-ホスホジエステル主鎖(又はWO91/06629中に記載されるものなどの他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドをさらに含み、この場合このような糖結合は内在性ヌクレアーゼに抵抗性があるものである。このような、抵抗性糖結合を有するオリゴヌクレオチドは、インビボで安定であるが、目標ヌクレオチド配列に結合することができる配列の特異性を保持している。他のセンス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチドの例には、WO90/10448中に記載されるものなどの有機部分に共有結合しているオリゴヌクレオチド、並びに、ポリ-(L)-リシン及びモルホリノなどの目標核酸配列についてのオリゴヌクレオチドの親和力を増加させる他の部分に共有結合しているオリゴヌクレオチドが含まれる。その上さらに、エリプチシンなどのインターカレーション剤及びアルキル化剤又は金属錯体をセンス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させて、目標ヌクレオチド配列のためアンチセンス若しくはセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を改変できる。したがって、特異的な小干渉性RNA(small interfering RNA)(siRNA)の導入によって生成されるRNA干渉剤(RNA interference)(RNAi)も、ミオスタチンの活性を抑制し又は無くするため使用できる。
【0088】
特に好ましいミオスタチンアンタゴニストには、フォリスタチン、ミオスタチンプロドメイン、成長及び分化因子11(GDF-11)プロドメイン、プロドメイン融合タンパク質、ミオスタチンに結合するアンタゴニスト抗体、アクチビン型IEB受容体、可溶性アクチビン型IHB受容体、可溶性アクチビン型IEB受容体融合タンパク質、可溶性ミオスタチン類似体(可溶性リガンド)、オリゴヌクレオチド、小分子、ペプチド模倣薬、及びミオスタチン結合剤、開示ミオスタチン抵抗性抗体が含まれるがこれらに限定されない。他の好ましいアンタゴニストには、免疫応答を誘発し、それによりミオスタチン活性を遮断することが可能である、US6369201及びWO01/05820に記載される(引用により本明細書中に組み込まれている)ペプチド免疫原、並びにミオスタチン多量体及び免疫複合体が含まれる。他の好ましいアンタゴニストは、WO02/085306に記載される(又、引用により本明細書中に組み込まれている)ミオスタチンのタンパク質阻害剤を含み、これには切断されたアクチビンII型受容体、ミオスタチンプロドメイン、及びフォリスタチンが含まれる。他のミオスタチン阻害剤には、ミオスタチンを過剰発現した細胞から培養物中に放出されるもの(WO00/43781参照)、ピエモンテ対立形質(Piedmontese allele)を含む、ミオスタチンの顕性不活性物(WO01/53350参照)、並びに、アミノ酸位置335〜375の位置における、若しくは335〜375間の位置におけるC-末端切断を有する成熟ミオスタチンペプチドが含まれる。アミノ酸配列WMCPPを含むUS2004/0181033に記載された(引用により本明細書中に組み込まれている)小ペプチドも、本発明の組合せ剤において使用するのに適している。
【0089】
(4. サイトカイン及び動員剤(mobilizing agents))
定義及び技術的背景:本発明の組合せ剤において使用するのに適した他の種類の補助薬は、サイトカイン、並びに特にアナボリックサイトカイン及びインスリン様成長因子(insulin-like growth factors)(IGF-1又はIGF-2など)である。筋肉へのIGF-1のタンパク質同化効果は、非常に良好に確立されている。筋ジストロフィーでは、衛星細胞の増殖能力の進行性低下が起こり、IGF-1で治療することによりこの増殖能力の喪失が軽減できる。したがって、IGF-1(及びこの種類のサイトカインの他のメンバー)は、休止中の衛星細胞の活性化を促進することによって、ジストロフィン異常症の進行遅延を助けることができる。インスリン様成長因子(IGF)は、インスリン、IGF-I、IGF-II、リラキシン、前胸腺刺激ホルモン(prothoraciotropic hormone)(PTTH)及び軟体動物インスリン関連ペプチドを含む、非常に多岐にわたるインスリン遺伝子ファミリーのメンバーである。IGFは、インビボ及びインビトロの両方で成長、分化、代謝及び再生を刺激する点で重要な役割を有する循環性、分裂促進性ペプチドホルモンである。
【0090】
優先性及び特定の実施態様:本発明により使用するため好ましいサイトカインには、IGF-1及びIGF-2が含まれる。健康な個体ではIGF-1の約99%が、IGFBP-3と結合して血流内を循環し、この場合、酸性易動性サブユニットタンパク質(acid-labile subunit protein)(ALS)と会合した後で大きな三元150kD錯体を形成している。この三元錯体は、毛細管内皮により循環に限定され、したがってIGF-1の循環容器の役割を果たす。したがって、本発明による治療用途のためIGF-1は、錯体の形で投与されることが好ましい。例えば、本発明の組合せ剤において使用するための好ましいサイトカインは、IPLEX(商標)(インスリン様成長因子(insulin-like growth factor-1)(IGF-I)と、その最も豊富な結合タンパク質である、インスリン様成長因子結合タンパク質-3(insulin-like growth factor binding protein-3)(IGFBP-3)との組換えタンパク質錯体)である。他の適切なサイトカインは、G-CSF(又は、本明細書において定義した他の動員剤、例えばGM-CSF)であり、骨髄から幹細胞を動員することにより、筋肉再生を助けることができる。他の好ましいサイトカインには、WO2006056885に記載された(その内容は、引用により本明細書中に組み込まれている。)IGF-1誘導体(IGF-1Eペプチド)が含まれ、完全長IGF-1の機能と、特にその再生能力との適切なサブセットを有する。したがって、好ましい実施態様において、本発明の組合せ剤は、IGF-1Eaペプチド(すなわちIGF-Iプロペプチドの一部として、IGF-I遺伝子のエキソン4及び5の部分から翻訳され、翻訳後処理の間に切断された35アミノ酸C末端ペプチド)、及び/又はIGF-IEbペプチド(すなわちIGF-Iプロペプチドの一部として、IGF-1遺伝子のエキソン4、5及び6の部分から翻訳され、翻訳後処理の間に切断された41アミノ酸C末端ペプチド)を含む。
【0091】
薬量:IPLEX(商標)は、1日1回与えられ、初期用量0.5mg/kgで皮下注射により投与し、治療用量範囲1〜2mg/kgに増量することができる。IPLEX(商標)は、午前中又は夕方与えることができるが、毎日およそ同じ時刻に投与すべきである。IPLEX(商標)への許容度を確立するため、治療開始時、及び用量を増加している場合にブドウ糖モニタリングを考慮すべきである。頻繁な低血糖症状、又は重い低血糖が起こる場合、摂食前のブドウ糖モニタリングを続けるべきである。最近無症候性若しくは症候性低血糖が起こっている患者についても、ブドウ糖モニタリングが勧められる。投与時に低血糖の兆候が存在する場合、投与を差し控えるべきである。
【0092】
投与量は、前回の投与の8〜18時間後に得られたIGF-1レベルの測定に基づいて、最大毎日2mg/kgまで増減することができる。副作用(低血糖を含む)がある場合、及び/又はIGF-1の通常の基準範囲を超えて標準偏差の3倍以上のIGF-1レベルとなる場合、投与量を下方調節すべきである。
【0093】
(5. コルチコステロイド)
本発明の一実施態様において、補助薬はコルチコステロイド(副腎皮質ステロイド)である。
定義及び生理活性:本明細書において使用する用語「コルチコステロイド(corticosteroid)」は、副腎皮質から分泌される、任意のいくつかのステロイドホルモンを指し、これらは1つ以上の次の生理学的過程:ストレス応答、免疫応答、並びに炎症、炭水化物代謝、タンパク質異化作用及び血液電解質レベルの調節に関わっている。この用語には、上述の性質を共有する合成類似体も含まれる。コルチコステロイドには、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)及び鉱質コルチコイドが含まれる。グルココルチコイドは炭水化物、脂肪及びタンパク質の代謝を制御し、抗炎症性である。鉱質コルチコイドは、主として腎臓内のナトリウム保有量を高めることにより、電解質及び水レベルを制御する。いくつかのコルチコステロイドは、二重グルココルチコイド及び鉱質コルチコイド活性を有する。例えば、プレドニゾン(下記参照)及びその誘導体は、グルココルチコイド効果のほかにいくらかの鉱質コルチコイド作用を有する。コルチコステロイドが抗ジストロフィー効果をもたらす正確な細胞性機序はまだ知られていない。多因子性機序が見込まれ、コルチコステロイドの効果は、おそらく炎症の軽減、免疫系の抑制、カルシウムホメオスタシス向上、代償性タンパク質発現の上方制御、及び筋芽細胞増殖性の高まりを包含する。
【0094】
問題点:コルチコステロイドの使用は、副作用に関連しており、副作用は人によって異なり、使用した投与計画によって変わるが、重篤となる恐れがある。最も一般的な副作用は、体重増加及び気分変動である。体重増加(及び筋肉活性及び使用の付随的変化)により、いくらかの治療の利益が取り消される可能性がある。長期使用により、成長抑制、白内障、骨粗しょう症及び筋委縮(DMD及びBMDにより影響される同一の基部筋肉に影響する)を招く恐れがある。これらの副作用は、コルチコステロイド治療の長期有効性を制約する恐れがある。他の副作用には、高血圧、糖尿病、皮膚委縮、傷の治りの悪さ、及び免疫抑制が含まれる。デフラザコートは、プレドニゾンよりも副作用が少ないであろうとの希望のもとに評価された。
【0095】
優先性及び特定の実施態様:好ましいものは、グルココルチコイド(又は二重グルココルチコイド及び鉱質コルチコイド活性を有するコルチコステロイド)である。合成コルチコステロイドが好ましい。一実施態様において、コルチコステロイドは、プレドニゾン(prednisone)(プロドラッグ)又はプレドニゾロン(prednisolone)(プレドニゾンの肝臓代謝産物及び活性薬)である。他の実施態様において、コルチコステロイドは、デフラザコート(deflazacort)である。デフラザコートは、プレドニゾンのオキサゾリン類似体である。本発明の組合せ剤において使用するのに適した他の合成コルチコステロイドには、下記から選択される1種以上のコルチコステロイドが含まれる:アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む)、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチバゾール、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フォルモコルタール、ハロシノニド、ハロメタゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニソン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタソン、プレドニカルベート、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン及びウロベタゾール(或いは1種以上の上述のものの組合せ及び/又は誘導体(例えば医薬として許容し得る塩))。本発明の組合せ剤において使用するための適切な内因性コルチコステロイドには、下記から選択される1種以上のコルチコステロイドが含まれる:アルドステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール及びデソキシコルトン(或いは1種以上の上述のものの組合せ及び/又は誘導体(例えば医薬として許容し得る塩))。
【0096】
薬量:プレドニゾンは、0.3〜1.5mg/kg(通例0.7mg/kg)の範囲にある投与量で毎日投与できる。1日おき≧2.5mg/kgに、より良好に応答する患者もある。デフラザコートとプレドニゾンの間の生理学的等価性は調査下にある特定の作用によっても決まるが、デフラザコートは、プレドニゾンに比べて1:1.3の推定投与等価量を有する。コルチコステロイド(デフラザコート及びプレドニゾンを含む)は、通常経口的に摂取されるが、筋肉内注射により送達することができる。
【0097】
(6. アナボリックステロイド)
本発明の一実施態様において、補助薬はアナボリックステロイドである。
定義及び生理活性:本明細書において使用する用語「アナボリックステロイド」は、男性ホルモンであるテストステロン及びその合成類似体に関連する、任意のいくつかのステロイドホルモンを指す。このようなステロイドは、「アナボリック-アンドロゲン性ステロイド(anabolic-androgenic steroids)」又は「AAS」とも呼ばれる。アナボリックステロイドは、細胞内のタンパク質産生を増加させ、同化作用を増進させる(特に筋肉内で)。アナボリックステロイドが抗ジストロフィー効果をもたらす正確な細胞性機序はまだ知られていないが、筋肉内におけるそれらのタンパク質同化効果は、筋肉の損耗を効果的に補償すると思われる。オキサンドロロンはDMD筋肉へのタンパク質同化効果を有し、加えて筋肉縮退を少なくし、したがって筋肉再生への要求を和らげることを示している。再生力を保全することにより、オキサンドロロンなどのアナボリックステロイドは筋肉機能を延命できる。
【0098】
問題点:アナボリックステロイドの使用は、重篤な副作用に関連している。最も一般的な副作用は、肝臓及び腎臓の障害、不妊、成長の阻止、及び激しい気分変動である。又アナボリックステロイドにより男性化し易く、ひげ及び体毛の成長、生殖器の成熟及びざ瘡の発現を促進する可能性がある。中止により、筋肉量及び機能の急速な、且つ激しい低下を招く恐れがある。
【0099】
優先性及び特定の実施態様:好ましいものは、オキサンドロロン(Anavar)、ノルエタンドロロン及びメタンドロステノロン(Dianabol)などの合成アナボリックステロイドである。オキサンドロロン(テストステロンの経口用合成類似体)は、そのタンパク質同化性状のほかに、筋肉上のグルココルチコイド受容体へのコルチゾールの結合を遮断し、こうして筋肉の分解をも妨げるので、特に好ましいものとすることができる。本発明の組合せ剤において使用するのに適した他のアナボリックステロイドには、下記から選択される1種以上のアナボリックステロイドが含まれる:DHEA、DHT、メテノロン、オキシメトロン、キノボロン、スタノゾロール、エチルエストレノール、ナンドロロン(Deca Durabolin)、シピオン酸オキサボロン、ウンデシレン酸ボルデノン(Equipoise)、スタノゾロール(Winstrol)、オキシメトロン(Anadrol-50)、フルオキシメステロン(Halotestin)、トレンボロン(Fina)、エナント酸メテノロン(Primobolan)、4-クロルデヒドロメチルテストステロン(Turinabol)、メステロロン(Proviron)、ミボレロン(Cheque Drops)、テトラヒドロゲストリノン及びテストステロン(或いは1種以上の上述のものの組合せ及び/又は誘導体(例えば医薬として許容し得る塩))。
【0100】
薬量:アナボリックステロイドは、丸剤の形態で経口的に、注射により、又は皮膚貼剤を介して投与できる。経口投与が最も便利であるが、ステロイドは、それが血流に到達するまでに肝臓によって分解することができないように化学的に改質しなければならないので、これらの製剤は高用量の場合、肝臓障害を招く恐れがある。注射可能なステロイドは、通例筋肉内に投与される。経皮性貼剤は、定常的な用量を、皮膚を通して、血流中に送達するのに適合させることができる。オキサンドロロンは、毎日0.1mg/kgの投与量を経口的に投与できる。
【0101】
(7. TGF-βアンタゴニスト)
定義及び技術的背景:変異成長因子β(transfor分g growth factor beta)(TGF-β)は、DMDに付随した筋肉組織損傷に応答した線維症を増進させ、疾患の症状に寄与することができる。本発明の一実施態様において、補助薬はTGF-βアンタゴニストである。
【0102】
用語TGF-βアンタゴニストは、本明細書において使用され、TGF-βの作用を直接若しくは間接的に混乱、撹乱、遮断、調節若しくは阻害する化合物を指す。この用語は、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体及び保護された形態をも包含する(その塩又は互変異性体又は異性体又はN-オキシド又は溶媒和物が好ましく、又その塩又は互変異性体又はN-オキシド又は溶媒和物がより好ましい)。
【0103】
優先性及び特定の実施態様:本発明により使用するため好ましいTGF-βアンタゴニストには、TGF-β抵抗性抗体である、タモキシフェン、ロサルタン及びピルフェニドンが含まれる。ピルフェノドン(pirfenodone)は、2,4-ジカルボン酸ピリジンと構造的に類似した経口活性な合成抗線維症薬である。ピルフェニドンは、線維芽細胞、表皮、血小板由来及びTGF-β-1成長因子を阻害し、且つ又I及びIII型コラーゲン向けDNA合成及びmRNA生成をも阻害し、放射線誘発による線維症の軽減をもたらす。ロサルタンは、商標名Cozzar(商標)のもとにMerck & Co.社により目下販売されている、主として高血圧を治療するのに使用されるアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト薬である。しかし、ロサルタンは、TGF-βI及びII型受容体の発現をも下方制御する。タモキシフェンは、乳癌の治療において使用される経口活性な選択的エストロゲン受容体調節薬(selective estrogen receptor modulator)(SERM)であり、この適応症向けに目下世界最大の販売薬である。タモキシフェンは、商標名Nolvadex(商標)、Istubal(商標)及びValodex(商標)のもとに販売されている。タモキシフェンは、1日当り10〜100mg(例えば20〜40mg/日)の用量で投与できる。
【0104】
(8. 抗酸化剤及びミトコンドリア保持剤)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)では、細胞骨格タンパク質ジストロフィンが不在となり、筋肉細胞壊死で最高に達する数多くの細胞性機能障害につながる。その後、壊死性筋肉組織中に炎症応答が発現し、さらなる組織損傷の原因となる酸化性ストレスの増加を招く。mdxジストロフィーマウスにおいて、炎症及び酸化性ストレスの両方が、疾患の経過についての憎悪因子として特定されている。
【0105】
GTE及びEGCGも、予期されないプロ筋原性性状を示す。正常マウス及びジストロフィーマウスの両方から骨格筋肉細胞の初代培養物を作り、GTE及びEGCGで1〜7日間処理した。ミオシン重鎖(myosin heavy chain)(MyHC)のその場染色により判定し、本発明者らは、適用して最初の2〜4日以内に、GTE及びEGCGが筋管の形成速度を濃度依存的に刺激することを見出した。その後筋管の量は、対照標準と比較して両薬剤について同様なレベルに達した。7日間処理した筋管培養物についてウェスタンブロット解析を行った。GTE及びEGCGは、ジストロフィン(対照標準培養物について)、サルコメア(筋節)アルファアクチニン及びMyHCなどのいくつかの筋肉特異性タンパク質の発現を増進させたが、ミオゲニンは変わらなかった。これに反して、デスミンの発現は下方制御され、Z板に再分布された。本発明者らの結果は、緑茶ポリフェノールが、骨格筋細胞に直接作用することにより、プロ筋原性性状を示すことを示唆する。これらの結果は、ジストロフィー状態における、筋肉再生及び強化に有利な作用を示唆している。
【0106】
没食子酸エピガロカテキン(epigallocatechin gallate)(EGCG)などの緑茶ポリフェノールは、強力な抗酸化剤であることが知られている。MDにおける筋肉組織の分解中に炎症を伴うので、酸化性ストレスが、この過程においてある役割を果たすと考えられる。したがって、緑茶及びその活性成分(EGCG及び他のポリフェノールを含む)は、この酸化性ストレスを軽減することにより、MD予後を改善できる。mdxマウスについての給餌試験により、大量の第一波の壊死に対するEGCGの保護効果が示されている。EGCGは又、より強い且つより抵抗性のあるフェノタイプへの筋肉適応性をも刺激している。有効な投与量は、ヒトにおいて1日当り約7杯の発酵緑茶に相当する。
【0107】
補酵素Q10(CoQ10;ユビキチンとも呼ばれる)は強力な抗酸化剤、及びミトコンドリア呼吸鎖補因子である。補酵素Q10は、膜安定化性状を有し、細胞膜及びミトコンドリアを透過可能である。3か月間毎日100mgのCoQ10投与量が、より高い投与量でより良好な結果をもたらしそうであるが、ヒトにおける治験で有益であることが示されている。
【0108】
イデベノンは、補酵素Q10の合成類似体であり、自動酸化の危険がなくてCoQ10と同じ機能を発揮すると考えられる。したがって、CoQ10と同様、イデベノンは、正しい電子平衡を維持する一助となることができ、これは細胞エネルギーを生成させるのに必要である。筋肉細胞は特にエネルギー要求性であるので、イデベノン及びCoQ10はミトコンドリア機能を保全し、細胞を酸化性ストレスから守ることができる。
【0109】
グルタミンは、重要なエネルギー源であり、急性的なグルタミン経口投与は、タンパク質節約効果を有するように見える。アルギニン(及び他のNO経路の薬理学的活性化剤)は、MDXマウスにおけるユートロフィン産生を促進できる。この増加は、アルギニンを燃料とした一酸化窒素(NO)の生成により媒介される可能性があり、一酸化窒素は血管機能において重要な役割を演じ、MDを有する人では一般により低い。MDXマウスについての研究では、アルギニンとデフラザコートとの組合せが、デフラザコート単独よりも有益であることも示されている。
【0110】
本発明により使用するのに適した他の抗酸化剤は、ROS阻害剤が、カルパイン阻害部分に会合している(例えば、結合した、同時投与される、又は共有結合している)キメラ化合物又は組合せ剤である。このような薬剤は、酸化性ストレスの解放を、カルパイン媒介による筋肉組織分解の軽減と結び付ける。適切な二元作用カルパイン/ROS阻害薬は、例えばWO01/32654、WO2007/045761、WO2005/056551及びWO2002/40016中に記載されている(それらの内容は、引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0111】
(9. ジストロフィン発現増強剤)
(9.1 読み過ごし剤)
DMD患者の一サブセット(15%前後)は、彼らのRNA中に成熟前の終止シグナルをもたらすナンセンス突然変異を有し、その結果タンパク質翻訳の異常な切り詰めを招いている。本発明の一実施態様において、補助薬は、成熟前終止コドンの読み過ごしを進める薬剤(「読み過ごし剤(read-through agent)」)であり、それにより成熟前終止コドンをバイパスして、完全長の機能的ジストロフィンの発現を回復させる。
【0112】
本発明により使用するための適切な読み過ごし剤は、US6992096中に記載されている(引用により本明細書中に組み込まれている)1,2,4-オキサジアゾール化合物:
【化8】

である。
【0113】
1つのこのような化合物は、3-[5-(2-フルオロ-フェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸である。好ましい読み過ごし剤は、PTC124である。PTC124は284ダルトンの1,2,4-オキサジアゾールであり、それによりmRNAにおける成熟前終止コドンのリボソーム読み過ごしを進める。したがって、本発明の組合せ剤は、1,2,4-オキサジアゾール安息香酸化合物(3-[5-(2-フルオロ-フェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸が含まれる)を含むことができる(例えば、その内容が引用により本明細書中に組み込まれているWO2006110483を参照されたい)。
【0114】
PTC124、3-[5-(2-フルオロ-フェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物は、それを必要とする患者に0.1mg/kgと500mg/kg、1mg/kgと250mg/kg、1mg/kgと150mg/kg、1mg/kgと100mg/kg、1mg/kgと50mg/kg、1mg/kgと25mg/kg、1mg/kgと10mg/kg又は2mg/kgと10mg/kg、の間の単回若しくは分割(例えば毎日3回)用量として投与することができる。特定の実施態様において、3-[5-(2-フルオロ-フェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物若しくは水和物は、約4mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約10mg/kg、約14mg/kg又は約20mg/kgの用量で投与される。
【0115】
本発明により使用するための他の読み過ごし剤には、ゲンタマイシンを含むアミノグリコシド抗生物質が含まれる。特に好ましいものは、6'ヒドロキシル基を含むアミノグリコシド(例えばパロモマイシン)とすることができ、このものはより低い用量で有効とすることができ、ゲンタマイシンなどの化合物よりも低い毒性を呈する。
【0116】
(9.2 エキソンスキッピング)
大抵の場合のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、mRNAのリーディングフレーム(読み枠)を撹乱するジストロフィン遺伝子突然変異に起因する。いくつかの場合、単一エキソンの強制排除(スキッピング)によってリーディングフレームを回復し、より短いが、依然として機能的なジストロフィンタンパク質(いわゆる擬似ジストロフィン)を生じさせることができる。エキソンスキッピングを起すように設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)(AON)は、誤りを含む遺伝子指示の部分を排除し、周囲の正しい指示を加えるように細胞を誘導することによって、成熟前終止コドンを細胞に知らせないようにする化合物よりも広い範囲の突然変異を目指すことができる。しかし、AONは自己更新性ではないので、長期間の補正を達成することができない。この限界を克服するため、核内低分子RNA(small nuclear RNA)(snRNA)中にアンチセンス配列を導入し、AAV及びレンチウイルスベクターでベクター化することができる。
【0117】
(10. 遺伝子置換/修復剤)
本発明の一実施態様において、補助薬は、非機能性の内在遺伝子物質を置換若しくは修復するため適応された核酸構成物である。遺伝子治療は、微小ジストロフィン遺伝子を用いることが好ましい、アデノ関連ウイルス(adeno-associated virus)(AAV)ベクター媒介による遺伝子治療とすることができる。アデノ関連ウイルス(AAV)媒介DMD遺伝子治療のため、高度に省略された微小ジストロフィンcDNAが開発されている。これらの中で、C-末端切断ΔR4-R23/ΔC微小遺伝子(AR4/AC)は、非常に有望な治療用候補遺伝子である。
【0118】
目標とするゲノム中の突然変異の補正は、突然変異に起因する疾患の、それら自体の影響された組織への直接適用による修復/治療、又は幹細胞移植などの他の技術と組み合せた修復/治療に向けて大きな将来性を有する。特定の突然変異体座位を変化させるため、キメラプラスト、一本鎖オリゴヌクレオチド、トリプレックス形成オリゴヌクレオチド及びSFHRなどの種々のDNA若しくはRNA/DNAベースのコレクティブ核酸(Corrective Nucleic Acid)(CNA)分子が使用されている。MyoDys(登録商標)は、完全長のヒトジストロフィン遺伝子をコード化したプラスミドDNAから構成される。患者の肢骨格筋にpDNAを投与するため、Mirus社のPathway IV(商標)送達技術が使用される。
【0119】
(11. 細胞ベース療法)
本発明の一実施態様において、補助薬は、筋原性細胞若しくは組織組成物である。臍帯からの幹細胞、間葉幹細胞及び筋肉由来幹細胞を含む、種々の型の筋原性細胞が、DMDの治療において可能性を有することが示されている。
【0120】
(12. クレアチン)
定義及び生理活性:クレアチンは、体により天然に産生されるエネルギー前駆体である。クレアチンキナーゼ(creatine kinase)(CK)は、後で収縮性筋肉フィラメントに供与するためクレアチンをリン酸化する:ホスホクレアチンは、筋肉細胞に入り、タンパク質合成を促進し、一方タンパク質分解を低減させる。健康な個体では、アデノシン三リン酸の欠乏を防ぐことにより耐久性を増し、エネルギーレベルを高めることが示されている。MD患者の中では、クレアチンの追加が筋肉性能及び強さを改善し、疲労を減らし、骨塩量を幾分か増加させることが、研究により示唆されている。
【0121】
問題点:クレアチンの高用量は、腎臓障害の原因となる恐れがあり、同時水分補給を要する。行動性変化が記録されている。
薬量:クレアチンは、栄養サプリメント粉末として投与することができる。DMD患者についての最近の治験では、低レベル(1〜10g/日)のクレアチン一水和物の投与で筋力の幾分の増加が記録されている。間欠投与(1〜数週間の中断を含む)は副作用を緩和するが、一定の使用が同じ利益をもたらす。100mg/kg/日の領域の投与量が十分許容されて、骨分解が減り、強さ及び除脂肪体重が増加することが見出されている。クレアチンの、複合リノール酸(アルファリポ酸)、酪酸ヒドロキシル-ベータ-メチル及びプレドニゾロンとの同時投与について、利点が報告されている。
【0122】
(13. 抗骨粗しょう症薬)
種々の抗骨粗しょう症薬を含む組合せ剤により、骨再吸収を抑制し、骨粗しょう症を予防し、骨格破損を減らし、骨折の治癒を促進し、骨形成を刺激し、又骨塩量を増加させる併用療法を実現することができる。好ましいものは、アレンドロネート、チルドロネート、ジメチル-APD、リセドロネート、エチドロネート、YM-175、クロドロネート、パミドロネート及びBM-210995(イバンドロネート)を含むビスホスホネートである。他には、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストが含まれる。用語エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、エストロゲン受容体に結合し、骨代謝回転を抑制し、骨減少を予防する化合物を指す。特に、本明細書においてエストロゲンアゴニストは、哺乳動物組織中のエストロゲン受容体部位に結合し、1つ以上の組織においてエストロゲンの作用を模倣することが可能な化学的化合物と定義される。例示的なエストロゲンアゴニスト/アンタゴニストには、ドロロキシフェン及び関連化合物(US5047431参照)、タモキシフェン及び関連化合物(US4536516参照)、4-ヒドロキシタモキシフェン(US4623660参照)、ラロキシフェン及び関連化合物(US4418068参照)、並びにイドキシフェン及び関連化合物(US4839155参照)が含まれる。
【0123】
(14. 補助的ユートロフィン上方制御剤)
本明細書において定義している式(I)の化合物のほかに、本発明の組合せ剤は、1種以上の補助的ユートロフィン上方制御剤を含むことができる。このような補助的ユートロフィン上方制御剤は、上方制御する(すなわちユートロフィンの発現又は活性を増加させる)、且つ本明細書において定義している式(I)の構造(又はそのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体及び保護された形態)に一致しない化合物である。本発明の組合せ剤において使用するための補助的ユートロフィン上方制御剤は、本明細書において記述している式(I)及び(II)の化合物のそれとは異なっている機序によりユートロフィンを上方制御することが好ましい。
【0124】
(15. cGMPシグナル伝達調節剤)
ホスホジエステラーゼ5(phosphodiesterase 5)(PDE5)阻害剤であるシルデナフィルの投与による、cGMPシグナル伝達の強化により、mdxの心臓における心筋収縮性能の悪化が予防されることが、最近示されている(Khairallahらの論文(2008)(PNAS 105(19):7028〜7033))。
【0125】
したがって、特に選択的PDE5阻害剤を含む(例えばシルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル及びアバナフィルを含む)cGMPシグナル伝達強化剤は、DMD又はBMDを治療する本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。このような組合せ剤は、ジストロフィー性心筋疾患の治療において特に用途を見出し、DMD/BMD進行の診断過程につれて、ジストロフィン関連心筋疾患の開始を予防若しくは遅延するため使用できる。
【0126】
したがって、本発明は、本発明の化合物の、特に選択的PDE5阻害剤を含むcGMPシグナル伝達強化剤との組合せ剤を企図している。好ましい組合せ剤は、本発明の化合物と、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル及びアバナフィルから選択されたPDE5阻害剤とを含む。特に好ましいものは、本発明の化合物と、シルデナフィルとを含む組合せ剤である。前述の組合せ剤において使用するための本発明の化合物は、5-(エチルスルホニル)-2-(ナフタレン-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾールである表1の化合物番号390が好ましい。
【0127】
(製剤及び薬量)
DMDの治療において使用する式Iの化合物は、医薬組成物の形態で一般に投与されるであろう。
したがって、本発明のさらなる態様により、好ましくは80重量/重量%未満の、より好ましくは50重量/重量%未満例えば0.1〜20%の、上記において定義した式Iの化合物又はその医薬として許容し得る塩を、医薬として許容し得る希釈剤若しくはビヒクルと混合して含む医薬組成物が提供される。
【0128】
本発明者らは、これらの成分を混合することを含むこのような医薬組成物の製造方法をも提供する。使用できる医薬製剤及び適切な希釈剤若しくはビヒクルの例は、下記の通りである:
静脈内注射薬又は注入液用-純水又は生理的食塩水;
吸入組成物用-粗粒乳糖;
錠剤、カプセル剤及び糖剤用-微結晶セルロース、リン酸カルシウム、珪藻土、乳糖、ブドウ糖又はマンニトールなどの糖、タルク、ステアリン酸、デンプン、重炭酸ナトリウム及び/又はゼラチン;
坐薬用-天然若しくは硬化油又はワックス。
【0129】
本化合物を、水溶液として例えば注入液用に使用しようとする場合、他の賦形剤を配合することが必要となり得る。特にキレート又は金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、等張化剤、pH調整剤及び緩衝剤を挙げることができる。
式Iの化合物を含有する溶液は、所望される場合、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥によって蒸発させて固体組成物を得ることができ、これは使用前に再構成できるものである。
【0130】
溶液としない場合、式Iの化合物は、0.01〜10μmの質量中央径を有する形態とすることが好ましい。この組成物は、適切な保存、安定化及び湿潤剤、可溶化剤例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースポリマー又はプロピレングリコールなどの水溶性グリコール、甘味及び着色剤並びに芳香剤をも含有できる。適正な場合、この組成物は徐放性形態として製剤できる。
医薬組成物中の式Iの化合物の含量は、製剤全体に対して一般に約0.01〜約99.9重量%、好ましくは約0.1〜約50重量%である。
式Iの化合物の用量は、年令、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組合せ、その時患者が治療下にある疾患のレベル及び他の因子を考慮して決定される。
【0131】
用量は、標的疾患、状態、投与の対象、投与方法などに応じて変動するが、デュシェンヌ筋ジストロフィーの治療向け治療薬として経口投与するには、このような疾患に罹っている患者において、0.01mg〜10g、好ましくは0.1〜100mgを、1日当たり単回用量として又は2〜3回に分割して投与することが好ましい。
【実施例】
【0132】
DMDの治療に使用する式Iの化合物の潜在活性は、次の予測的アッセイ及び検査において実証されるであろう。
(1. ルシフェラーゼレポーターアッセイ(ネズミのH2K細胞))
検査に使用している細胞系は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に結合した最初の非翻訳エキソンを含むユートロフィンAプロモーターの≒5kb断片を含有するプラスミドを安定して形質移入している不死化mdxマウスH2K細胞系である。
【0133】
低温及びインターフェロン含有培地の条件下で、これらの細胞は筋原細胞として残留する。これらを96ウェルプレート中に展開し、化合物が存在する状態で3日間培養する。次いでルシフェラーゼのレベルを、細胞溶解及び、プレートルミノメーターを用い、発現されるルシフェラーゼ遺伝子からの光出力を読み取ることにより測定する。
【0134】
このアッセイにおける化合物の薬理学的用量応答性の例を図1に示している。
【0135】
(2. mdxマウス)
ADMETデータから得られるデータを優先させた。mdx証明の概念的研究における試験について最良のインビトロルシフェラーゼ活性及び合理的なADMETデータを有する化合物を優先させ、その成果は、ビヒクルのみを投与した対照動物と比較した場合に、いずれかの化合物が、ジストロフィン欠損筋肉中のユートロフィンタンパク質のレベルを増加させる能力を有するかどうかを識別することであった。
【0136】
化合物50mg/kgまで(例えば、10mg/kg)を2匹の動物に腹腔内投与により28日間毎日注入し、これに年令の一致する対照動物を加えた。筋肉試料を採取し、切片法(筋細胞膜のユートロフィン染色部分の増加を識別する)及びウェスタンブロット法(全体的なユートロフィンレベルの増加を識別する)のため処理した。
【0137】
図2は、マウスユートロフィンに特異的な抗体で染色されたTAの筋肉切片の一例を示している。ビヒクルのみを注入したmdxの筋肉と比較して、筋細胞膜に結合したユートロフィン量の増加が示される。
上記の治療したマウスからの筋肉を切除し、ウェスタンブロット法向けにも処理し且つ特異的抗体で染色した(図3を参照されたい)。再び、CPD-Aを投与した筋肉を用いると、TAの脚部筋肉及び横隔膜の両方に存在する全体のユートロフィンレベルの著しい上昇を示している。CPD-A(V2及びV3)の作用を受けた両方のマウスで、対照標準に比べてユートロフィン発現レベルの上昇を示した。
【0138】
次いで、さらなる2匹のマウスについての28日試験で、最初の28日試験からの正の上方制御データが繰り返された。合計して3種の異なる化合物が、28日間毎日腹腔内経路により送達される場合、mdxマウスにおけるユートロフィン発現レベルを上昇させる能力を繰り返し示している。このデータは、腹腔内送達されるとmdx筋肉内に見出されるユートロフィンレベルの著しい上昇をもたらすこの化合物の能力を実証しており、したがって、この手法が、今日までのすべての出版データにより3倍を超えるユートロフィンレベルのどんな上昇もジストロフィン欠陥性筋肉への著しい機能的効果を有することが実証されているように、この疾患を改善するものであるとの確信を本発明者らにもたらしている。
【0139】
(H2K/mdx/ユートロ(Utro)Aレポーター細胞系の維持)
H2K/mdx/ユートロAレポーター細胞系は、≦30%集密性となるまで週に2回継代接種した。細胞は、CO2 10%が存在する状態で、33℃で成長させた。
細胞培養向けに筋原細胞を取り出すため、それらを、単層が剥離し始めるまでトリプシン/EDTAによりインキュベートした。
成長培地
DMEM Gibco 41966
20%FCS
1%Pen/Strep
1%グルタミン
10mlニワトリ胚エキス
インターフェロン(1276905 Roche)添加新液10μl/50ml培地
【0140】
(96ウェルプレートについてのルシフェラーゼアッセイ)
H2K/mdx/ユートロAレポーター細胞系の細胞を96ウェルプレート(Falcon 353296、白色不透明)に、190μl通常成長培地中およそ細胞5000個/ウェルの密度で展開した。次いでプレートは、CO2 10%が存在する状態で、33℃で24時間インキュベートした。
それぞれのウェルに、希釈した化合物10μlを添加することにより化合物を投与し、最終濃度10μMをもたらした。次いでプレートをさらに48時間インキュベートした。
次いで細胞を、製造のプロトコルに従って(Promega Steady-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(E2520))、その場所で溶解した。次いでプレートルミノメーター(Victor 1420)を使用し10秒間計数した。
(化合物貯蔵)
検査用化合物は100% DMSO中の10mM貯蔵液として、必要とされるまで-20℃で貯蔵した。
【0141】
(mdxマウスへの化合物の注入)
試験のため、飼育コロニーからのmdxを選択した。マウスには、ビヒクル又は10mg/kgの化合物いずれかを腹腔内経路(intreperitoneal route)(ip)を用い毎日注入した。マウスの体重を計り、PBS中5% DMSO、0.1%ツイーン中に化合物を希釈した。
マウスは、所望の時点で頸椎脱臼により犠牲として、解析のため筋肉を切除した。
【0142】
(筋肉解析)
(免疫組織化学)
切片用組織を切開し、OCT(Bright社Cryo-M-Bed)に浸漬し、液体窒素冷却イソペンタン上で凍結させた。切り離した8μM凍結切片をBright社クリオスタット上で切断し、-80℃で貯蔵した。
【0143】
染色の準備として、切片を、PBS中の5%ウシ胎児血清中において30分間ブロックした。一次抗体を遮断剤中で希釈し、湿った室内において切片上で1.5時間インキュベートし、次いでPBS中で3回5分間洗浄した。二次抗体も、遮断剤中で希釈し、湿った室内の暗所で1時間インキュベートした。最後に、切片をPBS中で3回5分間洗浄し、ハイドロマウント(hydromount)によりカバーガラスにマウントした。Leica社蛍光顕微鏡を使用してスライドを解析した。
【0144】
(結果)
ネズミH2K細胞においてルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して評価した生物学的活性は、次のように分類される:
+ 対照標準に対して200%まで、
++ 対照標準に対して201%と300%の間、
+++ 対照標準に対して301%と400%の間、
++++ 対照標準に対して401%を超える。
【0145】
【表1】



【0146】
【表2】

【0147】
(実験)
HPLC-UV-MSは、Gilson社321 HPLC上で実施し、Gilson 170 DAD及びFinnigan社AQA質量分析計により検出を行い、電子スプレーイオン化方式で操作した。使用したHPLCカラムは、Phenomenex社Ge分i C18 150×4.6mmである。分取HPLCは、Gilson 321上で実施し、Gilson 170 DADにより検出を行った。Gilson 215フラクションコレクターを使用して分取分を集めた。使用した分取HPLCカラムは、Phenomenex社Ge分i C18 150×10mmであり、移動相はアセトニトリル/水である。
【0148】
1H NMRスペクトルは、300MHzで操作されるBruker社機器上に記録した。NMRスペクトルは、CDCl3溶液として得られ(ppmで報告)、比較標準としてクロロホルム(7.25ppm)又はDMSO-D6(2.50ppm)を使用した。ピークの多重度を報告する場合、次の略号を使用している:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、m(多重線)、br(広がっている)、dd(二重線の二重線)、dt(三重線の二重線)、td(二重線の三重線)。カップリング定数は、示される場合ヘルツ(Hz)で報告される。
【0149】
カラムクロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィー(40〜65μmシリカゲル)によるか、又は自動化精製システム(Biotage(登録商標)からのSP1(商標)精製システム)を使用するかいずれかで実施した。マイクロ波中の反応は、Initiator 8(商標)(Biotage社)内で行われた。
【0150】
使用される略語は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、HCl(塩酸)、MgSO4(硫酸マグネシウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、NaHCO3(重炭酸ナトリウム)、THF(テトラヒドロフラン)である。
【0151】
【化9】

【0152】
(方法1:化合物I)
(2-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-5-アミン)
亜硝酸ナトリウム(764mg、11.1mmol)水溶液(10mL)を、氷冷下N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(1.54mL、9.3mmol)の10%塩酸水溶液(50mL)溶液に滴下添加した。15分後、スルファミン酸アンモニウム(1.58g、13.8mmol)を加え、得られた混合物を15分間攪拌した。酢酸ナトリウムを用いてpHをpH5に合わせた後、1,3-フェニレンジアミン(1g、9.2mmol)を加え、混合物をさらに2時間攪拌し、次いで1M水酸化ナトリウムを用いてpH9に塩基性化した。酢酸エチルを加え、有機層をブラインで2回洗浄した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させて、赤色固体を得た。硫酸銅(10g)のアンモニア水(水30mL中の28%アンモニア30mL)溶液を、ピリジン(40mL)中で上記得られた赤色固体に加えた。次いで溶液を16時間還流させた。冷却後、酢酸エチルを加え、有機層をブラインで2回洗浄した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させて、暗赤色固体を得、これをジエチルエーテルで摩砕して、標題化合物1.09g(42%)を得た。(LCMS RT= 7.06分, MH+282.1)
【化10】

【0153】
下のすべての化合物は同様の一般的手順に従って調製し、ジエチルエーテルで摩砕することにより、又は酢酸エチル/ヘキサン類の濃度勾配で溶離するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによりのいずれかで精製した。
【化11】

【0154】
(方法2:化合物II)
(N-(2-(4-クロロフェニル)-6-メチル-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-5-イル)ニコチンアミド)
2-(4-クロロフェニル)-6-メチル-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-5-アミン(50mg、0.19mmol)及びトリエチルアミン(108μL、0.77mmol)のジクロロメタン(4mL)溶液に、塩化3-ニコチノイル塩酸塩(38mg、0.21mmol)を加えた。得られた混合物を室温で終夜攪拌した。ジクロロメタンを加え、有機層を飽和Na2CO3水溶液で2回洗浄した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄して、標題化合物7mg(10%)を得た。(LCMS RT= 6.30分, MH+364.2)
【化12】

【0155】
以下のすべての化合物は同様の一般的手順に従って調製した。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0156】
【化19】

【0157】
(方法3:化合物III)
(2-(4-クロロフェニル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール1-オキシド)
(4-クロロフェニル)ヒドラジン塩酸塩(1.64g、9.17mmol)、1-フルオロ-4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンゼン(1.00g、4.56mmol)及び酢酸ナトリウム3水和物(1.87g、13.7mmol)をエタノール(15mL)に懸濁させ、6時間加熱還流させた。次いで混合物を室温に冷却し、生成物を濾別した。残渣をメタノール、水次いで再度メタノールで洗浄して、標題化合物1.13g(77%)を得た。
(LCMS RT= 5.92分, (MH++MeCN) 364.9)
【化20】

6-(メチルスルホニル)-2-(ナフタレン-2-イル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール1-オキシド
【化21】

【0158】
(方法4:化合物IV)
(2-(4-クロロフェニル)-5-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール)
2-(4-クロロフェニル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール1-オキシド(157mg、0.49mmol)及び塩化アンモニウム(52mg、0.97mmol)のテトラヒドロフラン/水5:1容量/容量(6mL)懸濁液に、80℃で鉄粉(136mg、2.43mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で3時間攪拌した。冷却後、溶液をCelite(登録商標)のパッドを通し、テトラヒドロフランで洗浄した。次いで濾液を真空濃縮し、水に懸濁させ、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル:ヘキサン類25:75容量/容量で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物29.7mg(20%)を得た。(LCMS RT= 6.59分)
【化22】

【0159】
以下の化合物は同様の一般的手順に従って調製した。
【化23】

【0160】
(方法5:化合物V)
(2-(3,4-ジクロロフェニル)-5-(エチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール)
窒素下乾燥シュレンクフラスコに、2-(3,4-ジクロロフェニル)-5-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール(93.5mg、0.27mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(5mL)を加えた。次いで溶液を-78℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.30mL、0.30mmol)を加えた。反応物を-78℃で1時間攪拌を続け、次いでヨウ化メチル(35μL、0.55mmol)を加えた。溶液を室温に16時間加温した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を溶液に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル:ヘキサン類20:80容量/容量で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物52mg(54%)を得た(LCMS RT= 7.65分)
【化24】

【0161】
以下の化合物は同様の一般的手順に従って調製した。
2-(4-クロロフェニル)-5-(エチルスルホニル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール
【化25】

【0162】
【化26】

【0163】
(方法6:化合物VI)
((E)-4-クロロ-N-(4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンジリデン)アニリン)
モレキュラーシーブスを含むエタノール(5mL)中の4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンズアルデヒド(250mg、1.09mmol)に、室温で4-クロロアニリン(139mg、1.09mmol)を加えた。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、次いで70℃で1時間加熱した。冷却後、混合物を濾別し、濾液を真空で濃縮して、標題化合物を得、これを粗製物で次の工程に使用した。
【0164】
(方法7:化合物VII)
(2-(4-クロロフェニル)-6-(メチルスルホニル)-2H-インダゾール)
(E)-4-クロロ-N-(4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンジリデン)アニリン(133mg、0.39mmol)のリン酸トリエチル(2mL)懸濁液を105℃で3時間攪拌した。冷却後、固体を濾別し、ヘキサン類で洗浄して、標題化合物89mg(74%)を得た
(LCMS RT= 6.17分, MH+ 307.0)
【化27】

【0165】
以下の化合物は同様の一般的手順に従って調製した。
2-(4-クロロフェニル)-6-ニトロ-2H-インダゾール
【化28】

【0166】
(方法8:化合物VIIa)
(2-(4-クロロフェニル)-2H-インダゾール-6-アミン)
テトラヒドロフラン:水4:1容量/容量(5mL)中の2-(4-クロロフェニル)-6-ニトロ-2H-インダゾール(103mg、0.37mmol)に、室温で塩化アンモニウム(40mg、0.75mmol)を加えた。混合物を80℃で加熱し、鉄粉(105mg、1.87mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で3時間攪拌した。冷却後、Celite(登録商標)のパッドを通して溶液を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄した。溶媒を蒸発させた後、水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させて、標題化合物84mg(92%)を得た。
【0167】
(方法9:化合物VIII)
(N-(2-(4-クロロフェニル)-2H-インダゾール-6-イル)イソブチルアミド)
2-(4-クロロフェニル)-2H-インダゾール-6-アミン(84mg、0.34mmol)のピリジン(5mL)溶液に、室温で塩化イソブチリル(43μL、0.41mmol)を加えた。得られた混合物を室温で16時間攪拌した。酢酸エチルを加え、有機層を飽和硫酸銅水溶液で2回、続いてブライン及び水で洗浄した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル:ヘキサン類25:75容量/容量で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物11mg(10%)を得た。(LCMS RT= 6.38分, MH+ 314.2)
【化29】

【0168】
(方法10:化合物IX)
(2-(4'-クロロフェニル)-6-(イソプロピルスルホニル)-2H-インダゾール)
窒素下乾燥シュレンクフラスコに、2-(4-クロロフェニル)-6-(メチルスルホニル)-2H-インダゾール(200mg、0.65mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(9mL)を加えた。次いで溶液を-78℃に冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.72mL、0.72mmol)を加えた。反応物を-78℃で1時間攪拌を続け、次いでヨウ化メチル(81μL、1.31mmol)を加えた。溶液を室温に16時間加温した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を溶液に加え、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル:ヘキサン類1:2容量/容量で溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物20mg(9%)を得た(LCMS RT= 6.53分, MH+ 335.2)
【化30】

【0169】
表2に記載した化合物は、上述した方法と同様の方法により、又は同業者に知られているか又は適応される文献方法により調製できる。
【0170】
(等価物)
前述の実施例は、本発明を例示する目的で提示しており、本発明の範囲にどんな制約を課するものとも解釈すべきではない。本発明の基礎をなす原理から逸脱せずに、上述し、且つ実施例中に例示した本発明の特定の実施態様に対して数多くの修正及び変更を行い得ることは、すぐにも明らかであろう。全てのこのような修正及び変更は、本出願により包含されることを意図するものである。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助剤と、式(I)又は(II)の化合物又はその医薬として許容し得る塩とを含む(又は本質的にこれらからなる)組合せであって、任意にデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置のための前記組合せ剤:
【化1】

(式中、
同一又は異なり得るA1、A2、A3、A4及びA5は、N又はCR1を表し、
R9は-L-R3(Lは単結合又はリンカー基であり、R3は水素又は置換基を表す)を表し、
さらに、
A1-A4の隣接する1対がそれぞれCR1を表す場合、これらの隣接する炭素原子は、それらの置換基と一緒になって環Bを形成でき、
A5がCR1を表す場合、A5及びN-R9は、それらの置換基と一緒になって環Cを形成できる)。
【請求項2】
式1の化合物におけるR3が、それぞれ、同一又は異なり得る1〜3個の置換基R2により任意に置換されているアルキル、アルコキシ又はアリールを表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項3】
A5がNを表す請求項1記載の式I又は請求項1記載の式IIの化合物において、
Lが単結合であり、R3が、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
該アリールが任意に置換されているO-アリール又はチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NR10R11
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R16及びR17が、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11が、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12が、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17がそれぞれ、
1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシにより任意に置換されているアリール若しくは任意に置換されているアリール、
任意に置換されているアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、かつ
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方が、任意に置換されているCOアルキル又は任意に置換されているCOアリールをさらに表すことができ、かつ
R17と共用される定義の他に、R16がヒドロキシルを表すことができ;
又は請求項1記載の式IIの化合物(式中、A5はCHを表す)において、
Lが単結合であり、R3が、
アルキル若しくは任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
任意に置換されているアリール、
ヒドロキシル、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
OC(=W)NR10R11
NR15C(=W)R17
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17が、水素、任意に置換されているアリールによって任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
R10及びR11が、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12が、NR10R11と同一の意味を有することができ、
同一又は異なり得るR16及びR17がそれぞれ、
1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシにより任意に置換アリール若しくは任意に置換されているアリール、
任意に置換されているアリールオキシ、
アリール又はNR10R11を表すことができ、かつ
R16又はR17がNR10R11を表す場合、R10及びR11の一方が、任意に置換されているCOアルキル又は任意に置換されているCOアリールをさらに表すことができ、
R17と共用される定義の他に、R16がヒドロキシルを表すことができる、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項4】
同一又は異なり得るR1及びR2が、
1以上のハロゲン、アルコキシ又は任意に置換されているアリール、チオアリール若しくはアリールオキシにより、任意に置換されているアルキル、
アルキル又は任意に置換されているアリールにより任意に置換されているアルコキシ、
ヒドロキシル、
OC(=W)NR10R11
アリール、
アルキル又は任意に置換されているアリールにより任意に置換されているチオアルキル、
そのアリールが任意に置換されているチオアリール、
NO2
CN、
NR10R11
ハロゲン、
SO2R12
NR13SO2R14
C(=W)R16
NR15C(=W)R17
P(=O)OR40R41
を表し、
同一又は異なり得るR10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R40及びR41が、水素、任意に置換されているアリールにより任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリールを表し、
さらに、
NR10R11が、それらが結合している窒素と一緒になって環を形成でき、
R12が、NR10R11と同一の意味を有することができ、
R17がNR10R11を表す場合、そのNR10R11が、水素、COアルキル及びCOで任意に置換されているアリールを表すことができ、
R16が、ヒドロキシ、アルコキシ又はNR10R11を表すことができ、かつ
R17が、1以上のハロゲンにより置換されているアルキル、アルコキシ、任意に置換されているアリール又はNR10R11を表すことができる、請求項2記載の組合せ剤。
【請求項5】
A5がNを表す請求項1記載の式I又は請求項1記載の式IIいずれかによる化合物において、
Lが、
O、S又はNR18
1以上のO、S、NR18、又は1つ以上のC-C単結合、二重結合若しくは三重結合によりそれぞれが任意に中断され得るアルキレン、アルケニレン、アルキニレン
であるリンカー基を表し、かつ
R18が、水素、アルキル、COR16を表し、
又はA5がCHを表す請求項1記載の式IIの化合物において、
Lが、
O、S、NR18
1以上のO、S、NR18、又は1つ以上のC-C単結合、二重結合若しくは三重結合によりそれぞれ任意に中断され得るアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、
-N-N-単結合若しくは二重結合
であるリンカー基を表し、かつ
R18が、水素、アルキル、COR16を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項6】
いずれかの置換基がアルキルを表す場合、アルキルが飽和しており、かつ炭素原子1〜10個を有する、請求項1から5のいずれか1項記載の組合せ剤。
【請求項7】
アリールが、芳香族炭化水素、又は炭素に加えて環構成成分として酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10員芳香族複素環である、請求項1から6のいずれか1項記載の組合せ剤。
【請求項8】
アリールが、フェニル又はナフタレンである、請求項1から7のいずれか1項記載の組合せ剤。
【請求項9】
アリールが、フラン、チオフェン、ピロール又はピリジンである、請求項1から8のいずれか1項記載の組合せ剤。
【請求項10】
環B又は環Cが、飽和若しくは不飽和3〜10員炭素環又は複素環である、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項11】
環Bが、ベンゼン環である、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項12】
環Cが、3〜10員飽和又は不飽和炭素環である、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項13】
少なくとも1つのR1がNR15C(=W)R17を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項14】
少なくとも1つのR1がNR15C(=O)R17を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項15】
少なくとも1つのR1がCONR10R11を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項16】
少なくとも1つのR1がNHCOR17を表し、ここで、R17が、
アルキルC1〜C6
フェニルにより置換されているアルキルC1〜C6
アルコキシC1〜C6により置換されているアルキルC1〜C6
ハロアルキルC1〜C6
ペルフルオロアルキルC1〜C6
1以上のハロゲン、アルキルC1〜C6、アルコキシC1〜C6、アミノ、(アルキルC1〜C6)アミノ、ジ(アルキルC1〜C6)アミノ又はフェニルにより任意に置換されているフェニル、
CH:CHフェニル、
ナフチル、ピリジニル、チオフェニル及びフラニル
から選択される、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項17】
R1及びR2の一方又は両方が、-COOH以外である、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項18】
少なくとも1つのR1がNR15CONR10R11を表し、ここで、同一又は異なり得るR10及びR11が、任意に置換されているアリール、アルキル及び任意に置換されているCOアリールから選択される、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項19】
少なくとも1つのR1が、NHCONHR15を表し、R15が、フェニル、アルキルC1〜C6及び1以上のハロゲンにより任意に置換されているCOフェニルから選択される、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項20】
少なくとも1つのR1が、フェニルにより任意に置換されているアルキルC1〜C6、又はN、S及びOから選択されるヘテロ原子1〜2個を含有することが好ましい4〜7員、好ましくは5又は6員の飽和若しくは不飽和複素環を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項21】
少なくとも1つのR1がCOR16を表し、R16が、アルコキシC1〜C6、アミノ、(アルキルC1〜C6)アミノ又はジ(アルキルC1〜C6)アミノである、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項22】
少なくとも1つのR1が、
NO2
ハロゲン、
アルキルC1〜C6がフェニル又は5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環により任意に置換されている、アミノ又は(アルキルC1〜C6)アミノ又はジ(アルキルC1〜C6)アミノ、
NHSO2アルキルC1〜C6、NHSO2フェニル、
SO2アルキルC1〜C6
C1〜C6アルコキシC1〜C6により任意に置換されているフェニル、
N、S及びOから選択されるヘテロ原子1〜3個を含有する5〜10員飽和若しくは不飽和単環若しくは二環式複素環
を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項23】
R3がアリールを表し、同一又は異なり得る1〜3個の置換基R2により任意に置換されている、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項24】
R3が、5〜10員芳香族単環又は二環系である、請求項22記載の組合せ剤。
【請求項25】
前記芳香族系が、炭化水素である、請求項23記載の組合せ剤。
【請求項26】
前記芳香族炭化水素が、ベンゼン又はナフタレンである、請求項24記載の組合せ剤。
【請求項27】
前記芳香族系が、N、O及びSから選択される、同一又は異なり得るヘテロ原子3個までを含有する複素環系である、請求項23記載の組合せ剤。
【請求項28】
前記複素環系が、チオフェン、フラン、ピリジン又はピロールである、請求項27記載の組合せ剤。
【請求項29】
前記置換基R2が、
それぞれハロゲンにより任意に置換されているチオフェニル又はフェノキシにより任意に置換されているアルキルC1〜C6、アルコキシC1〜C6、フェニル、チオアルキルC1〜C6、ハロゲンにより任意に置換されているチオフェニル、NO2、CN;NR10R11(式中、同一又は異なり得るR10及びR11は、水素、アルキルC1〜C6を表し、又はそれらが結合している窒素と一緒になって、N、O及びSから選択される1個以上のさらなるヘテロ原子を含有できる5〜7員環を形成する)、ハロゲン、SO2R12(式中R12は、N、O及びSから選択される1個以上のさらなるヘテロ原子を含有できる5〜7員環を表す)、NHCOR17(式中R17は、アルキルC1〜C6(任意に、
フェニル若しくはハロゲン、又は
アルコキシC1〜C6、カルボキシ若しくはハロゲンにより任意に置換されているフェニル、又は
5又は6員の飽和又は不飽和複素環
により任意に置換されている)、
ハロゲン、アルコキシC1〜C6、カルボキシ又は基SO2NR10R11により任意に置換されているフェニル又は5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環
を表す)
から選択される、請求項2記載の組合せ剤。
【請求項30】
NR10R11が、N-ピロール、N-ピペリジン、N'(C1〜C6)アルキルNピペラジン又はN-モルホリンを表す、請求項29記載の組合せ剤。
【請求項31】
A5がCHを表す請求項1記載の式IIの化合物を含む組合せであって、
Lが、
-NH.NH-、
-CH=CH-、
-C≡C-又は
-NCOR16(式中R16は、ハロゲン、アルコキシC1〜C6、カルボキシにより任意に置換されているフェニル又は5若しくは6員飽和若しくは不飽和複素環を表す)、
を表す前記組合せ。
【請求項32】
A1-A4のうち2つが窒素を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項33】
A1-A4のうち1つが窒素を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項34】
すべてのA1-A4がCR1を表す、請求項1記載の組合せ剤。
【請求項35】
請求項1記載の、表1に掲げている組合せ剤。
【請求項36】
前記補助薬と、式(I)又は(II)の化合物とが物理的に会合している、請求項1から35のいずれか一項記載の組合せ剤。
【請求項37】
前記補助薬と、式(I)又は(II)の化合物とが:(a)混合されている(例えば同一の単位用量以内で);(b)化学的/物理化学的に連結されている(例えば架橋、分子的集合、又は共通のビヒクル部分への結合により);(c)化学的/物理化学的に共包装されている(例えば脂質小胞、粒子(例えばミクロ-若しくはナノ粒子)又はエマルション液滴上若しくはそれら内に置かれている);(d)混合されていないが、共包装若しくは共提供されている(例えば一連の単位用量の一部として)、請求項36記載の組合せ剤。
【請求項38】
前記補助薬と、式(I)又は(II)の化合物とが非物理的に会合している、請求項1から36のいずれか一項記載の組合せ剤。
【請求項39】
(a)少なくとも1種の化合物を即時調合的に会合させて2種以上の化合物の物理的な会合を形成させる指示を伴う該2種以上の化合物の少なくとも1種;又は(b)該2種以上の化合物による併用療法の指示を伴う該2種以上の化合物の少なくとも1種;(c)該2種以上の化合物のうちの他の1種以上が投与されている(投与されつつある)患者集団に投与する指示を伴う該2種以上の化合物の少なくとも1種;(d)量若しくは形態として、該2種以上の化合物のうちの他の1種以上と組み合わせて使用するのに特に適応されている量又は形態で該2種以上の化合物の少なくとも1種を含む、請求項38記載の組合せ剤。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか一項において定義された組合せを備える、医薬パック、キット又は患者用パック。
【請求項41】
請求項1から39のいずれか一項において定義された式(I)又は(II)の化合物との併用療法において使用するための補助薬。
【請求項42】
補助薬との併用療法において使用するための請求項1から39のいずれか一項において定義された式(I)又は(II)の化合物。
【請求項43】
前記併用療法が、本明細書において定義された予防、治療又は方法、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置を含む、請求項41記載の補助薬又は請求項42記載の化合物。
【請求項44】
請求項1から36のいずれか一項において定義された式(I)又は(II)の化合物により治療を受けている患者における、治療又は予防(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置)において使用する薬物の製造のための補助薬の使用。
【請求項45】
補助薬により治療を受けている患者における、治療又は予防(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー又は悪液質の治療的及び/又は予防的処置)において使用する薬物の製造のための請求項1から36のいずれか一項において定義された式(I)又は(II)の化合物の使用。
【請求項46】
前記補助薬が:(a)抗炎症薬;(b)プロテアーゼ阻害薬;(c)ミオスタチンアンタゴニスト;(d)サイトカイン又は動員剤;(e)コルチコステロイド;(f)アナボリックステロイド;(g)TGF-βアンタゴニスト;(h)抗酸化剤又はミトコンドリア保持剤;(1)ジストロフィン発現増強剤;(j)遺伝子置換/修復剤;(k)細胞ベース組成物;(l)クレアチン;(m)抗骨粗しょう症薬;(n)補助的ユートロフィン上方制御剤;(o)cGMPシグナル伝達調節剤;及び(p)上記分類(a)から(o)の2種以上の組合せから選択される、請求項1から45のいずれか一項記載の組合せ剤。
【請求項47】
前記補助薬がコルチコステロイドである、請求項1から46のいずれか一項記載の発明。
【請求項48】
前記コルチコステロイドが、プレドニゾン、プレドニゾロン又はデフラザコートから選択される、請求項47記載の発明。
【請求項49】
請求項1から48のいずれか一項において定義された式(I)又は(II)の化合物を、1種以上の補助薬(本明細書において定義された)と組み合わせる工程を含む、請求項1から48のいずれか一項において定義された組合せ剤の製造方法。

【公表番号】特表2010−535709(P2010−535709A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518751(P2010−518751)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050649
【国際公開番号】WO2009/019505
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(310013956)ビオマリン アイジーエー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】