説明

データ伝送制御方法

【課題】装置間の回線をIP化する際に、ハードウェア制御などにより所定間隔で適正にデータを転送する回線とIP回線との間で、データを適切に伝送できるようにする。
【解決手段】IP回線を介して受信したデータを、周期的にデータを伝送する他回線に伝送する際のデータ伝送制御方法であって、IP回線からの受信データを一時記憶部に記憶する際、前記一時記憶部にデータが既に保存されているか否かを確認し、保存されていれば前記受信データを前記一時記憶部に格納し、保存されていなければ予め設定された空データを前記一時記憶部に格納した上で前記受信データを格納し、前記一時記憶部から記憶された順に周期的にデータを読み出して前記他回線に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIP(Internet Protocol)パケットなどのデータの伝送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、市町村防災移動系無線通信システムなどの無線通信システムでは、統制台と移動局とが通話するように構成されている(特許文献1参照)。
このような無線通信システムは、統制台と、移動局と無線通信を行う基地局装置との間に、回線制御を行う回線制御装置を備えている。
【0003】
従来は、統制台を含む統制台制御装置と回線制御装置との間は、アナログインタフェースのODT(Out-Band Dialing Trunk)を用いて音声伝送を行っていた。また、音声制御はハードウェアで行っていた。
【特許文献1】特開2007−74453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接続の容易性、拡張性を持たせるために、統制台制御装置と回線制御装置との間をIP接続し、ソフトウェアで音声のIPパケットを伝送制御することが考えられる。
しかし、回線制御装置内はハードウェアで同期を取りながら一定間隔で音声を転送するが、統制台制御装置と回線制御装置との間のIP回線ではハードウェアでの同期を取ることができないため、IPパケットの伝送に揺らぎが発生するおそれがある。
【0005】
ここで、回線制御装置は、音声データを基地局無線装置に送信するために、ハードウェアで同期を取りながら回線制御装置内で音声データを転送している。なお、この回線制御装置内のデータ転送に使用する回線を、以下、同期回線という。
そして、揺らぎが発生しIPパケットが遅延してしまうと、回線制御装置は自装置内の同期回線に正しいタイミングで音声データを転送できなくなってしまう。
【0006】
また、回線制御装置内の同期回線からIP回線に音声データを転送する際、つまり、基地局無線装置からの音声を統制台に送信する際、ソフトウェアにより音声データを所定間隔で読出し、音声パケット(RTP:Real-Time Transport Protocol)に変換して転送するが、ソフトウェアのタイマ制御はハードウェアのタイマ制御に比べ精度が低いため、ソフトウェアのタイマを使用して音声パケットを転送すると正しいタイミングで音声パケットを転送することができなくなってしまう。さらに、長時間の運用を行うと、タイミングの誤差が蓄積され音声が適切に転送できなくなってしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑み、装置間の回線をIP化する際に、ハードウェア制御などにより周期的にデータを転送する回線とIP回線との間で、データを適切に伝送できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係るデータ伝送制御方法は、IP回線を介して受信したデータを、周期的にデータを伝送する他回線に伝送する際の方法であって、IP回線からの受信データを一時記憶部に記憶する際、前記一時記憶部にデータが既に保存されているか否かを確認し、保存されていれば前記受信データを前記一時記憶部に格納し、保存されていなければ予め設定された空データを前記一時記憶部に格納した上で前記受信データを格納し、前記一時記憶部から記憶された順に周期的にデータを読み出して前記他回線に送信することを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明に係るデータ伝送制御方法は、IP回線に、周期的にデータを伝送する他回線から受信したデータを伝送する際の方法であって、 前記他回線から受信した受信データを一時記憶部に記憶し、前記一時記憶部に予め設定された所定量の受信データが保存されているか否かを確認し、保存されていれば前記所定量分の受信データを前記一時記憶部から読み出して前記IP回線に送信し、保存されていなければ前記一時記憶部に保存されているデータ量と前記所定量とに応じた時間待機した後に、再度、前記所定量の受信データが保存されているか否かを確認することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るデータ伝送制御方法によれば、IP回線と周期的にデータを転送する他回線との間で、IP回線における揺らぎによって伝送遅延が発生することを抑止して、データを適切に伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態としての無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての無線通信システムの回線制御装置のIP−IF基板の機能構成を示す機能ブロック図。
【図3】本発明の一実施形態としての無線通信システムの回線制御装置が有するメディア情報管理テーブルを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態としての無線通信システムの回線制御装置が有するRTP情報管理テーブルを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての無線通信システムの統制台制御装置と回線制御装置との接続時の処理手順を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の一実施形態としての無線通信システムの回線制御装置から統制台制御装置への音声データ伝送時の処理手順を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の一実施形態としての無線通信システムの統制台制御装置から回線制御装置への音声データ伝送時の処理手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る無線機を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態としての無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、無線通信システムは、統制台制御装置101、回線制御装置102、SWITCH108、基地局109、及び、移動局110を備えている。
【0013】
統制台制御装置101は、ユーザインタフェースを制御する操作部PC(Personal Computer)103、操作部PC103からの入力を受けて音声伝送を行う副操作部104から構成される。
回線制御装置102は、統制台制御装置101の操作部PC103及び副操作部104と呼制御信号、音声データ等をやり取りするIP−IF基板(データ伝送装置)105、無線通信システム全体の呼制御を管理する呼制御基板106、無線通信システム全体の音声データを管理するTSW基板107から構成される。
【0014】
SWITCH108は、操作部PC103からの入力と副操作部104からの入力とを切り換えるものである。SWITCH108は、例えば汎用品のL2Switchである。ただし、SWITCH108は、ハブ、L3
Switch、Routerであってもよい。
基地局109は、移動局110と無線通信を行うものである。
なお、ここでは基地局109及び移動局110は一つしか示していないが、通常これらは複数備えられている。
また、統制台制御装置101も一つしか示していないが、複数の統制台制御装置101を備え、それらが回線制御装置102に接続されていてもよい。
【0015】
そして、SWITCH108と回線制御装置102のIP−IF基板105、即ち、統制台制御装置101と回線制御装置102とは、IP回線111により接続される。
ここで、副操作部104は、起動時の電源投入後、IP−IF基板105に対して音声接続を要求する。以降、定期的、例えば20msec毎にIP−IF基板105にRTPパケットを送信する。つまり、副操作部104は、ユーザの操作部PC103の操作や音声入力の有無にかかわらず、起動すると回線制御装置102との回線111を確立し、無音であっても常に音声データであるRTPパケットを送信する。これにより、ユーザは操作部PC103を操作するとすぐに回線制御装置102に音声を送信でき、通話操作後に回線制御装置102との回線を確立するよりも、通話確立までの時間を短縮できる。
なお、副操作部104が送信するRTPパケットは、例えば、μLAW符号の音声データである。
【0016】
一方、IP−IF基板105は、副操作部104とのIP回線111が確立されると、定期的、例えば20msec毎に副操作部104へRTPパケットを送信する。
副操作部104は一定時間、IP−IF基板105からRTPパケットが受信できない場合は回線断と判断し、再度、IP−IF基板105に対して音声接続を要求する。
【0017】
ここで、IP回線111を介して副操作部104から回線制御装置102のIP−IF基板105へ伝送されるデータは、厳格に同期がとれて一定周期で送られるものではなく、揺らぎにより遅延が発生するおそれがある。つまり、IP回線111は非同期回線である。一方、回線制御装置102内のIP−IF基板105(後述するFPGA206)からTSW基板107へ送信されるデータは、FPGA206によって同期がとられて一定周期で転送される。つまり、IP−IF基板105からTSW基板107への回線は同期回線である。
【0018】
図2にIP−IF基板105の機能ブロック図を示す。IP−IF基板105は統制台制御装置101の操作部PC103及び副操作部104との呼制御データを管理し、呼制御基板106と制御データの橋渡しを行う呼制御タスク201、副操作部104との音声データを管理し、TSW基板107と音声データの橋渡しをするメディア制御タスク202、TCP/IP制御を行うSOCKET制御タスク203、音声パケットの送受信制御を行うRTP制御タスク204、FPGA206を制御するHighway制御タスク205、及び、TSW基板107との音声データ送受信制御を行うFPGA(Field-Programmable Gate Array)206から構成される。
【0019】
FPGA206は、μLAW符号の音声データを定期的にTSW基板107との間で転送する。電源投入後、125μsec毎に8bitの音声データをTSW基板107へ転送し、125μsec毎に8bitの音声データをTSW基板107から受信している。
FPGA206は、Highway制御タスク205に対する送信バッファ(一時記憶部;図示せず)と受信バッファ(一時記憶部;図示せず)とを備えている。そして、Highway制御タスク205が送信バッファに音声データを書き込むと125μsec毎に8bitの音声データをTSW基板107へ転送するが、送信バッファが空の場合は125μsec毎に無音データを転送する。
【0020】
また、FPGA206は、TSW基板107から受信した音声データを125μsec毎に受信バッファに書き込む。
さらに、FPGA206はHighway制御タスク205に対し、送信バッファと受信バッファのカウント数(データ量)を読み出すインタフェースを提供する。Highway制御タスク205が送信バッファのカウント数を読み出すと、FPGA206は送信バッファに書き込まれている音声データ数をバイト単位で通知する。受信バッファのカウント数を読み出すと、FPGA206は受信バッファに書き込まれている音声データ数をバイト単位で通知する。これにより、Highway制御タスク205は後述する図6、図7に示す処理を実現する。
【0021】
図3にIP−IF基板105のメディア制御タスク202が管理するメディア管理テーブルを示す。図3に示すように、メディア情報管理テーブル500は、メディア管理番号、RTPセッション番号、スロット番号、及び、音声転送状態を管理する。
メディア管理番号は、メディア制御タスク202が付与するものであり、例えば、統制台制御装置101の通話装置(マイク、ハンドセット、電話機など)毎に付与される。
【0022】
RTPセッション番号は、RTP通信を開始する際にRTP制御タスク204が付与するものである。
スロット番号は、FPGA206が音声データを処理する際に使用する番号であり、RTPセッション番号とスロット番号の対応付けをメディア情報管理テーブル500を用いて行う。
【0023】
音声転送状態には、送信状態、送受信状態があり、送信状態はIP−IF基板105から副操作部104への送信のみを許可している状態であり、送受信状態はIP−IF基板105と副操作部104間の双方向を許可している状態である。
【0024】
図4にIP−IF基板105のRTP制御タスク204が管理するRTP情報管理テーブルを示す。図4に示すように、RTP情報管理テーブル501は、RTPセッション番号、受信ポート番号、送信先IPアドレス、及び、送信先ポート番号を管理する。
受信ポート番号、送信先IPアドレス、及び、送信先ポート番号は、メディア制御タスク202からRTP通信開始を要求された際に通知され、RTP制御タスク204は受信ポート番号、送信先IPアドレス、送信先ポート番号を一意に識別するRTPセッション管理番号を付与する。
【0025】
図5は、統制台制御装置101(副操作部104)と回線制御装置102(IP−IF基板105)との接続シーケンスを示す図である。
図5に示すように、副操作部104は、電源投入後、呼制御タスク201へ音声データ接続要求を送信する(ステップ1001)。
呼制御タスク201は、メディア制御タスク202へ音声送受信開始要求を送信する(ステップ1002)。その際、音声送受信開始要求にはRTPの送信処理のみを行うように指示する。
【0026】
メディア制御タスク202は、RTP制御タスク204へRTP送受信開始要求を送信する(ステップ1003)。その際、メディア制御タスク202は、RTPパケットを受信する受信ポート番号、送信先IPアドレス、送信先ポート番号をテーブル501に記録するとともに、RTP制御タスク204に通知する。
RTP制御タスク204は、メディア制御タスク202へRTP送受信開始応答を送信し(ステップ1004)、指定されたポート番号でRTPパケット受信待ちを行う(ステップ1005)。このRTP送受信開始応答には、RTP接続情報を識別するRTPセッション番号を指定する。
【0027】
そして、メディア制御タスク202は、RTP情報管理テーブル501にRTPセッション番号、受信ポート番号、送信先IPアドレス、送信先ポート番号を最終設定する)。また、メディア制御タスク202は、通知されたRTPセッション番号を送信処理のみ動作するよう設定し(送信状態)、さらにRTPセッション番号に対応付けるHighwayのスロット番号をメディア情報管理テーブル500から読み出す(ステップ1006、1007)。
【0028】
次に、メディア制御タスク202は、Highway制御タスク205へHighway送受信開始要求を送信する(ステップ1008)。Highway制御タスク205は、Highway送受信開始応答をメディア制御タスク202へ送信し、FPGA206の送信バッファ、受信バッファをクリアし、指定されたスロット番号の音声データ読出し処理を起動する(ステップ1009、1010)。
【0029】
メディア制御タスク202は、Highway制御タスク205からHighway送受信開始応答を受けると、音声送受信開始応答を呼制御タスク201へ送信するとともに、音声送受信開始応答にはメディア管理番号を指定する(ステップ1011、1012)。
呼制御タスク201は、メディア制御タスク202から音声送受信開始応答を受けると、音声データ接続応答を副操作部104へ送信する(ステップ1013)。
【0030】
そして、ステップ1013以降は、副操作部104は20msec毎にRTPパケットをRTP制御タスク204へ送信する(ステップ1014)。RTP制御タスク204は、RTPパケットを受信すると、メディア制御タスク202へRTP受信通知を行う。この際、RTP情報管理テーブル501及び受信ポート番号から対応するRTPセッション番号を読み出し、メディア制御タスク202に通知する(ステップ1015)。
【0031】
メディア制御タスク202は、通知されたメディア管理テーブル500及び通知されたRTPセッション番号から音声転送状態を読み出し、送信処理に設定されているためRTPパケットを破棄する(ステップ1016)。
このように、上記ステップ1010でFPGA206の送信バッファをクリアし、上記ステップ1016でRTPパケットを破棄しているので、FPGA206の送信バッファカウント数は“0”のままとなり、FPGA206は無音データをTSW基板107へ送信し続けることになる。また、ステップ1010以降、Highway制御タスク205はRTPパケットの送信を20msec毎に行う。そのときのシーケンスを図6に示す。
【0032】
図6は、回線制御装置102(IP−IF基板105)から統制台制御装置101(副操作部104)へのRTP送信手順を示すシーケンス図である。
図6に示すように、Highway制御タスク205は、FPGA206の受信バッファカウント数を読み出す(ステップ2001)。受信バッファカウント数が所定量(ここでは160byte)以上の場合は、Highway制御タスク205は受信バッファから160byte分のデータを読み出す(ステップ2002)。
【0033】
一方、160byteより少ない場合は、Highway制御タスク205は受信バッファカウント数から受信データ読み出し時間を算出し(例えば、受信データ読み出し時間=(160byte−受信バッファカウント数)×0.125msec)、算出した受信データ読み出し時間経過後に再び受信バッファカウント数を読み出す(ステップ2002)。
【0034】
つまり、Highway制御タスク205は、受信バッファから所定量のデータを周期的に読み出して送信させるべく、周期的に受信バッファカウント数をチェックする。しかし、受信バッファカウント数が、所定量より少ない場合には、所定量になるまでの残り予測時間である受信データ読み出し時間を算出し、所定量のデータが受信バッファにたまったであろう算出時間経過後に、受信バッファカウント数を再度読み出す。即ち、Highway制御タスク205は、受信バッファに予め設定された所定量の受信データが保存されているか否かを確認し、保存されている場合にのみ所定量分の受信データを受信バッファから読み出してIP回線111に送信するように制御し、所定量分の受信データが保存されていなければ、受信バッファに保存されているデータ量と、所定量とに応じた時間を算出してその時間分待機した後に、再度、所定量の受信データが保存されているか否かを確認する。これにより、できる限り定期的にデータを副操作部104へ送信できるようになる。
【0035】
Highway制御タスク205は、受信バッファカウント数が160byte以上であった場合には、メディア制御タスク202へ音声データ受信通知を送信する(ステップ2003)。
その後、Highway制御タスク205は、すぐに受信バッファカウント数を再度読み出し、受信データ読み出し時間を上記と同様に算出する(ステップ2004)。つまり、160byteのデータを読み出した後に、次にどのタイミングで160byteのデータがたまるかを監視する。そして、Highway制御タスク205は、受信データ読み出し時間経過後にステップ2001に戻り、受信バッファカウント数を読み出す(ステップ2005)。
【0036】
また、音声データ受信通知を受け取ったメディア制御タスク202は、RTP制御タスク204へRTP送信通知を通知する(ステップ2006)。RTP送信通知を受けたRTP制御タスク204は、RTPパケットを副操作部104へ送信する(ステップ2007)。
【0037】
次に、統制台制御装置101(副操作部104)から回線制御装置102(IP−IF基板105)へのデータ伝送について説明する。
図7は、統制台制御装置101から回線制御装置102への音声データ伝送時の処理手順を示すシーケンス図である。
【0038】
図7に示すように、例えば、ユーザの通話操作に応じて、まず、統制台操作部PC103、呼制御タスク201、呼制御基板106の間で呼接続が行われる(ステップ3001)。
そして、呼制御タスク201は、音声送受信更新要求をメディア制御タスク202へ送信する(ステップ3002)。音声送受信更新要求ではメディア管理番号を指定する。
【0039】
メディア制御タスク202は、通知されたメディア管理番号の音声転送状態を送受信状態に設定する(ステップ3003)。
RTP制御タスク204は、副操作部104からRTPパケットを受信するとメディア制御タスク202へRTP受信通知を通知する(ステップ3004、3005)。RTP受信通知ではRTPセッション番号を指定する。
【0040】
メディア制御タスク202は、RTP情報管理テーブル501及び通知されたRTPセッション番号から送信先のスロット番号を読み出し、Highway制御タスク205へ音声データ送信要求を送信する(ステップ3006、3007)。
Highway制御タスク205は、指定されたスロット番号の送信バッファカウントを読み出す(ステップ3008)。送信バッファカウントが“0”の場合は予め設定されている揺らぎ吸収時間分の無音データ(空データ)を送信バッファに書き込む(ステップ3009)。その後、Highway制御タスク205は、通知された音声データを送信バッファに書き込む(ステップ3010)。なお、送信バッファカウントの確認は、RTPパケットの受信の度に実施することが好ましく、これにより、連続した音声データを同期回線に確実に伝送することができる。
【0041】
そして、操作部PC103、呼制御タスク201、呼制御基板106の間で呼解放が行われると、呼制御タスク201は、メディア制御タスク202へ音声送受信更新要求を送信する(ステップ3011、3012)。音声送受信更新要求ではメディア管理番号を指定する。
メディア制御タスク202は、通知されたメディア管理番号の音声転送状態を送信状態に設定する(ステップ3013)。
【0042】
RTP制御タスク204は、副操作部104からRTPパケットを受信すると、メディア制御タスク202へRTP受信通知を通知する(ステップ3014、3015)。RTP受信通知ではRTPセッション番号を指定する。
メディア制御タスク202は、通知されたRTPセッション番号が送信状態に設定されているため、RTPパケットを破棄する(ステップ3016)。
【0043】
上記ステップ3011以降、RTPパケットを破棄しているので、FPGA206の送信バッファは全ての音声データの送信を終えると、カウント数は“0”のまま無音データをTSW基板107へ送信し続けることになる。
【0044】
このように、本発明の一実施形態としての無線通信システムによれば、非同期回線であるIP回線111から受信したRTPパケットを同期回線に転送する際、FPGA206の送信バッファが空の状態であるか否かを、データ送信の度に確認し、バッファが空の状態である場合には、揺らぎ吸収時間分の無音データ(例えば、20msec間隔でRTPパケットを送受信する場合はその時間分の160byte)を送信バッファの先頭部分に記憶させる(設定しておく)ことで、IP回線111を介して受信したRTPパケットが揺らぎなどにより遅延した場合でも、その遅延分を、無音データでカバーして、連続した音声データを連続して周期的に同期回線に送信することができる。
【0045】
また、FPGA206の送信バッファが空の状態の時に揺らぎ吸収時間分の無音データを設定することで、RTPパケットが20msec以上遅延した場合、またRTPパケットが欠落した場合でも、再び揺らぎ吸収時間を再設定できる。
さらに、本発明の一実施形態としての無線通信システムによれば、同期回線からIP回線111に音声データを転送する際には、ソフトウェアによるタイマ間隔で送信せず、FPGA206の受信バッファカウント数を確認し、所定データ量毎に読み出すように構成し、受信バッファに記憶されたデータ量が所定データ量に満たない場合にはその時点から所定データ量たまるまでの音声データ読み出し時間を算出してデータを送信するので、RTPパケットの送信間隔を補正しながら同期回線からのRTPパケットを適切に送信することができる。
【0046】
なお、市町村防災無線移動系システムでは、緊急時に一刻もはやく統制台制御装置101と移動局110とが通話できるようにするために、統制台制御装置101と回線制御装置104との間の回線は常に接続状態であり、通話していないときは無音の音声パケットの転送を常時行っている。この場合、かなり長い期間中、通話状態を維持するので、IPパケットの揺らぎが蓄積されて、転送遅延が発生するおそれがある。しかし、本発明によれば、音声転送を行う必要がある時のみ、RTPパケットを同期回線に転送しているので、長いスパンでパケットの揺らぎが蓄積されることがなくなり、転送遅延が発生することもなくなる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態としての無線通信システムについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、統制台制御装置101と回線制御装置102との間のIP回線111が非同期回線であり、回線制御装置102内の回線を同期回線である場合を例にあげて説明した。しかし、本発明は非同期回線と、同期回線との間のデータ伝送に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0048】
101 統制台制御装置
102 回線制御装置
103 操作部PC
104 副操作部
105 IP−IF基板
106 呼制御基板
107 TSW基板
108 SWITCH
109 基地局
110 移動局
111 IP回線
201 呼制御タスク
202 メディア制御タスク
203 SOCKET制御タスク
204 RTP制御タスク
205 Highway制御タスク
206 FPGA
500 メディア情報管理テーブル
501 RTP情報管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP回線を介して受信したデータを、周期的にデータを伝送する他回線に伝送する際のデータ伝送制御方法であって、
IP回線からの受信データを一時記憶部に記憶する際、前記一時記憶部にデータが既に保存されているか否かを確認し、保存されていれば前記受信データを前記一時記憶部に格納し、保存されていなければ予め設定された空データを前記一時記憶部に格納した上で前記受信データを格納し、
前記一時記憶部から記憶された順に周期的にデータを読み出して前記他回線に送信することを特徴とする、データ伝送制御方法。
【請求項2】
IP回線に、周期的にデータを伝送する他回線から受信したデータを伝送する際のデータ伝送制御方法であって、
前記他回線から受信した受信データを一時記憶部に記憶し、
前記一時記憶部に予め設定された所定量の受信データが保存されているか否かを確認し、保存されていれば前記所定量分の受信データを前記一時記憶部から読み出して前記IP回線に送信し、保存されていなければ前記一時記憶部に保存されているデータ量と前記所定量とに応じた時間待機した後に、再度、前記所定量の受信データが保存されているか否かを確認することを特徴とする、データ伝送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169933(P2012−169933A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30189(P2011−30189)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】