説明

データ編集方法、データ編集装置

【課題】記録媒体に記録されるストリームデータについての編集処理の負担軽減を図り、より高速な編集動作を得る。
【解決手段】記録媒体に記録されるストリームデータは、ファイルシステムによってファイルとして管理することを前提とし、ファイルシステムによって管理されるトラック管理用データファイルにより、ストリームデータをトラック単位で管理するようにされる。そして、トラック単位による分割、消去の編集は、トラック管理用データファイルにおいて各トラックを規定するトラック管理情報の内容を書き換えることで実行することとする。この構成であれば、トラック単位による分割、消去編集処理にあたっては、ファイルシステムを書き換える必要はないことになる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の記録媒体に記録されたデータを編集するためのデータ編集方法、データ編集装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータには、記憶媒体としてHDD(ハードディスクドライブ)が備えられる。
そして、周知のようにして、このようなHDDに対するファイルの記録再生は、いわゆるファイルシステムが採用される。例えばこのようなファイルシステムとしては、FAT(File Allocation Table)が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、近年においては、上記したパーソナルコンピュータの周辺機器として、ビデオ、オーディオなどのコンテンツデータを記録再生できるAV機器が提案され、また、知られるようになってきている。
このようなAV機器は、例えば携帯可能な程度のサイズ形状とされる。そして、所定のデジタルインターフェイスによって、パーソナルコンピュータと接続されることで、例えばパーソナルコンピュータ側から、コンテンツデータを取り込み、装填された所定の記録媒体に記録して保存することができる。
そして、このようにして記録媒体にコンテンツデータを保存した後は、AV機器単体で、記録媒体からコンテンツデータを再生して音声、画像として出力することが可能とされている。
【0004】
【非特許文献1】
Microsoft Extensible Firmware Initiative FAT32 File System Specifiation
http://www.microsoft.com/hwdev/hardware/fatgen.asp
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、上記したようなAV機器において、記録媒体に記録したコンテンツデータを管理するのにあたっては、例えば、ファイルシステムを採用することも提案され、また、実現されてきている。このようにすれば、ファイル管理の形態は、データインターフェイスを介して接続されるパーソナルコンピュータと同様となるから、それだけ、パーソナルコンピュータとの親和性が高まり、この点で、有用性が高い。
【0006】
また、上記したようなAV機器においては、コンテンツデータの分割、消去などの、いわゆる編集機能が与えられることが、ユーザの使い勝手上好ましい。
しかしながら、記録データの管理に、上記のようにしてファイルシステムを採用した場合には、次のような問題を有することになる。
ファイルシステムによるデータ管理は、記録媒体に物理的に記録されたデータを直接的に管理するものである。従って、例えば、コンテンツデータに対する分割、消去等の編集に応じては、その編集結果が適切に得られるように、ファイルシステムの内容そのものを更新する必要が生じる。
例えば、上記したようなAV機器にとっては、ファイルシステムの更新は、相応に重い処理であり、システムにもかなりの負荷がかかる。このため、上記した分割、消去などの編集処理に際しては、ファイルシステムの更新の終了に或る程度の時間を要することになるので、結果として、編集処理には相応の時間がかかることになってしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、先ずは、ファイルシステムによりファイルとして管理されるコンテンツデータ(ストリームデータ)についての編集処理について、より軽い処理負担により実行できるようにしてシステムの効率化を図ることを目的とする。
【0008】
そこで先ず、データ編集方法として次のように構成する。
つまり、本発明のデータ編集方法としては、所定の記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムに基づくファイル単位で管理する第1のデータ管理手順と、ファイル単位のストリームデータの範囲内におけるデータ部分をトラックとし、トラックごとに対応する情報であって、ファイル単位のストリームデータとの対応を示す情報要素と、対応するファイル単位のストリームデータにおけるそのトラックのデータ位置を示す情報要素とを有して形成されるトラック管理情報を含むトラック管理用データファイルに基づいて、トラック単位での管理を行う第2のデータ管理手順とを実行するものとされる。
そして、上記ファイル単位のストリームデータを分割して複数トラックを形成するトラック分割、又はトラックを消去するトラック消去を行う場合には、第2のデータ管理手順が、トラック分割又はトラック消去の態様に応じて、トラック管理用データファイルにおけるトラック管理情報の内容について更新処理を実行するように構成する。
【0009】
また、データ編集装置として次のように構成する。
本発明のデータ編集装置は、所定の記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムに基づくファイル単位で管理する第1のデータ管理手段と、ファイル単位のストリームデータの範囲内におけるデータ部分をトラックとし、トラックごとに対応する情報であって、ファイル単位のストリームデータとの対応を示す情報要素と、対応するファイル単位のストリームデータにおけるそのトラックのデータ位置を示す情報要素とを有して形成されるトラック管理情報を含むトラック管理用データファイルに基づいて、トラック単位での管理を行う第2のデータ管理手段とを備える。
そして、ファイル単位のストリームデータを分割して複数トラックを形成するトラック分割、又はトラックを消去するトラック消去を行う場合には、第2のデータ管理手段が、上記トラック分割又はトラック消去の態様に応じて、トラック管理用データファイルにおけるトラック管理情報の内容について更新処理を実行するように構成することとした。
【0010】
上記各構成によれば本発明は、先ずは、記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムによってファイルとして管理するようにされる。その下で、ファイルシステムによって管理されるトラック管理用データファイルにより、ストリームデータをトラック単位で管理するという管理構造を有するようにされている。そして、トラック単位による分割、消去などの編集(トラック分割、トラック消去)は、上記トラック管理用データファイルにおいて各トラックを規定する情報内容を有するトラック管理情報の内容を書き換えることで行われる。このような構成であれば、トラック単位による分割、消去編集を行うのにあたっては、ファイルシステムの書き換えに依存する必要はないこととなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明を行うこととする。なお、以降の説明は次の順序で行う。
1.記録再生装置の構成
2.ディスク及びストレージ部の構成
3.AVデータの管理
4.トラック分割、消去編集
5.ディスク上消去
6.ブロック暗号化されたAV Stream Fileのディスク上消去
【0012】
1.記録再生装置の構成
実施の形態としての記録再生装置は、一例として、磁界変調方式でデータ記録が行われる光磁気ディスクであるミニディスク(MD)方式のディスクに対する記録再生装置とする。但し、既に普及している音楽用途のミニディスクのみではなく、より高密度記録を可能とし、ビデオデータの他、コンピュータユースの各種データのストレージに利用できる高密度ディスクについても対応可能な記録再生装置である。
【0013】
図1により本実施の形態の記録再生装置の構成を説明する。
図1においては、本実施の形態の記録再生装置1が、例えばパーソナルコンピュータ(或いはネットワーク)100として外部の機器との間でデータ通信可能な機器として示している。
例えば記録再生装置1は、パーソナルコンピュータ100とUSBケーブル等の伝送路101で接続されることで、パーソナルコンピュータ100に対する外部ストレージ機器として機能できる。また、パーソナルコンピュータ100を介したり、或いは直接ネットワークと接続できる機能を備えるなどしてネットワーク接続されることで、音楽や各種データをダウンロードし、記録再生装置1においてストレージ部2に装填されたディスクに保存できるものともなる。
【0014】
一方、この記録再生装置1はパーソナルコンピュータ100等に接続しなくとも、例えばAV(オーディオ・ビデオ)機器として機能する。例えば他のAV機器等から入力されたオーディオデータやビデオデータ(AVデータ)をディスクに記録したり、ディスクに記録された音楽データ等を再生出力することができる。
即ち本実施の形態の記録再生装置1は、パーソナルコンピュータ100等に接続されることで汎用的なデータストレージ機器として利用でき、かつ単体ではAV対応の記録再生機器としても利用できる装置である。
【0015】
記録再生装置1は、ストレージ部2、キャッシュメモリ3、USBインターフェース4、入出力処理部5、表示部6、操作部7、システムコントローラ8、ROM9、RAM10、キャッシュ管理メモリ11、NV−RAM12を備える。
【0016】
ストレージ部2は、装填されたディスクに対する記録/再生を行う。本実施の形態で用いるいわゆるミニディスク方式のディスク及びそれに対応するストレージ部2の構成については後述する。
【0017】
キャッシュメモリ3は、ストレージ部2でディスクに記録するデータ、或いはストレージ部2によってディスクから読み出されたデータについてのバッファリングを行うキャッシュメモリである。例えばD−RAM2より構成される。
キャッシュメモリへのデータの書込/読出は、システムコントローラ(CPU)8において起動されるタスクによって制御される。
【0018】
USBインターフェース4は、例えばパーソナルコンピュータ100とUSBケーブルとしての伝送路101で接続された際の、データ伝送のための処理を行う。
入出力処理部5は、例えば記録再生装置1が単体でオーディオ機器として機能する場合に記録再生データの入出力のための処理を行う。
【0019】
システムコントローラ8は、記録再生装置1内の全体の制御を行うと共に、接続されたパーソナルコンピュータ100との間の通信制御を行う。
ROM9にはシステムコントローラ8の動作プログラムや固定パラメータ等が記憶される。
RAM10はシステムコントローラ8によるワーク領域として用いられ、また各種必要な情報の格納領域とされる。
例えばストレージ部2によってディスクから読み出された各種管理情報や特殊情報を記憶する。例えばP−TOCデータ、U−TOCデータ、プレイリストデータ、FATデータ、ユニークID、ハッシュ値等を記憶する。P−TOCデータ、U−TOCデータはミニディスクに記録されている音楽トラック等の管理情報である。また後述もするが本実施の形態の記録再生装置1が対応できるミニディスク方式に準拠した高密度ディスクは、P−TOC、U−TOCによる管理形式のうえに、FATファイルシステムを構築したものである。プレイリストは、高密度ディスクにおいてATRAC方式などによる音楽データ等のアドレス等を管理する情報であって、FATシステム上の1つのファイルとして記録されるものである。高密度ディスクが装填された場合には、これらFATやプレイリストの情報も読み込むことになる。ユニークID、ハッシュ値等はパーソナルコンピュータ100等との間でのデータ伝送に際しての認証処理や暗号化/復号に用いられる情報である。
【0020】
キャッシュ管理メモリ11は、例えばS−RAMで構成され、キャッシュメモリ3の状態を管理する情報が格納される。システムコントローラ8はキャッシュ管理メモリ11を参照しながらデータキャッシュ処理の制御を行う。キャッシュ管理メモリ11の情報については後述する。
NV−RAM(不揮発性RAM)12は、電源オフ時にも消失させないデータの格納領域として用いられる。
【0021】
表示部6は、システムコントローラ8の制御に基づいて、ユーザーに対して提示すべき各種情報の表示を行う。例えば動作状態、モード状態、楽曲等のデータの名称情報、トラックナンバ、時間情報、その他の情報表示を行う。
操作部7には、ユーザーの操作のための各種操作子として、操作キーやジョグダイヤルなどが形成される。ユーザーは記録・再生、データ通信のための所要の動作を操作部7を操作して指示する。システムコントローラ8は操作部7によって入力された操作情報に基づいて所定の制御処理を行う。
【0022】
パーソナルコンピュータ100等が接続された際の、システムコントローラ8による制御は例えば次のようになる。
システムコントローラ8は、USBインターフェース4を介して接続されたパーソナルコンピュータ100との間で通信可能とされ、書込要求、読出要求等のコマンドの受信やステイタス情報その他の必要情報の送信などを行う。
システムコントローラ8は、例えばディスクがストレージ部2に装填されることに応じて、ディスクからの管理情報等の読出をストレージ部2に指示し、キャッシュメモリ3を介して取り込んでRAM10に格納させる。
P−TOC、U−TOCの管理情報を読み込ませることで、システムコントローラ8はディスクのトラック記録状態を把握できる。
またCATを読み込ませることによりデータトラック内の高密度データクラスタ構造を把握でき、パーソナルコンピュータ100からのデータトラックに対するアクセス要求に対応できる状態となる。
またユニークIDやハッシュ値により、ディスク認証その他の処理を行ったり、或いはこれらの値をパーソナルコンピュータ100に送信して処理させることができる。
【0023】
パーソナルコンピュータ100からの或るデータの読出要求があった場合は、システムコントローラ8はストレージ部2に、当該データの読出を実行させる。読み出されたデータは、必要に応じてAV信号処理部3にて信号処理が施された上で、キャッシュメモリ3に書き込まれる。但し、既に当該要求されたデータが既にキャッシュメモリ3に格納されていた場合は、ストレージ部2による読出は必要ない。いわゆるキャッシュヒットである。
そしてシステムコントローラ8はキャッシュメモリ3に書き込まれているデータを読み出させ、USBインターフェース4を介してパーソナルコンピュータ100に送信させる制御を行う。
【0024】
パーソナルコンピュータ100からの或るデータの書込要求があった場合は、システムコントローラ8は、伝送されてくるデータをキャッシュメモリ3に格納させる。そして、キャッシュメモリ3に格納されたデータをストレージ部2によってディスクに記録させる。
なお、ディスクへのデータ記録は、クラスタという単位が最小単位で行われるものとされる。例えばクラスタは32FATセクターである。
もし、パーソナルコンピュータ100等が記録要求したデータ量が数セクターなどであって1クラスタに満たない場合、ブロッキングと呼ばれる処理が行われる。即ちシステムコントローラ8は、ストレージ部2に、まず当該FATセクターを含むクラスタの読出を実行させる。読み出されたクラスタデータはキャッシュメモリ3に書き込まれる。
そしてシステムコントローラ8は、パーソナルコンピュータ100からのFATセクターのデータ(記録データ)をUSBインターフェース4を介してキャッシュメモリ3に供給させ、格納されているクラスタデータに対して、該当するFATセクターのデータの書換を実行させる。
そしてシステムコントローラ8は、必要なFATセクターが書き換えられた状態でキャッシュメモリ3に記憶されているクラスタデータを、記録データとしてストレージ部2に転送させる。ストレージ部2では、当該クラスタ単位のデータをディスクに書き込む。
【0025】
なお、以上は例えばパーソナルコンピュータ100との伝送を伴うデータの記録再生のための制御であり、例えばミニディスク方式のオーディオデータなどのの記録再生時のデータ転送は、入出力処理部5を介して行われる。
入出力処理部5は、例えば入力系として、ライン入力回路/マイクロホン入力回路等のアナログ音声信号入力部、A/D変換器や、デジタルオーディオデータ入力部を備える。またATRAC圧縮エンコーダ/デコーダを備える。ATRAC圧縮エンコーダ/デコーダは、ATRAC方式によるオーディオデータの圧縮/伸長処理を実行するための回路である。なお、もちろんのこと、本実施の形態の記録再生装置としては、例えばMP3などの他のフォーマットによる圧縮オーディオデータが記録再生可能な構成を採ってもよく、この場合には、これらの圧縮オーディオデータのフォーマットに対応したエンコーダ/デコーダを備えればよい。
また、本実施の形態としは、ビデオデータに関しては、特に記録再生可能なフォーマットの限定は行わないが、例えばMPEG4などが考えられる。そして、入出力処理部5としては、このようなフォーマットに対応したエンコーダ/デコーダを備えればよいこととなる。
さらに入出力処理部5は、出力系として、デジタルオーディオデータ出力部や、D/A変換器及びライン出力回路/ヘッドホン出力回路等のアナログ音声信号出力部を備える。
【0026】
また、この場合の入出力処理部5内には、暗号処理部5aが備えられる。暗号処理部5aにおいては、例えばディスクに記録すべきAVデータについて、所定のアルゴリズムによる暗号化処理を施すようにされる。また、例えばディスクから読み出されたAVデータについて暗号化が施されている場合には、必要に応じて暗号解読のための復号処理を実行するようにもされている。
【0027】
入出力処理部5を介した処理としてディスクにオーディオデータが記録されるのは、例えば入力TINとして入出力処理部5にデジタルオーディオデータ(又はアナログ音声信号)が入力される場合である。入力されたリニアPCMデジタルオーディオデータ、或いはアナログ音声信号で入力されA/D変換器で変換されて得られたリニアPCMオーディオデータは、ATRAC圧縮エンコードされてキャッシュメモリ3に蓄積される。そして所定タイミング(ADIPクラスタ相当のデータ単位)でキャッシュメモリ3から読み出されてストレージ部2に転送される。ストレージ部2では、転送されてくる圧縮データを所定の変調方式で変調してディスクに記録する。
【0028】
ディスクからミニディスク方式のオーディオデータが再生される場合は、ストレージ部2は再生データをATRAC圧縮データ状態に復調してキャッシュメモリ3に転送する。そしてキャッシュメモリ3から読み出されて入出力処理部5に転送される。入出力処理部5は、供給されてくる圧縮オーディオデータに対してATRAC圧縮デコードを行ってリニアPCMオーディオデータとし、デジタルオーディオデータ出力部から出力する。或いはD/A変換器によりアナログ音声信号としてライン出力/ヘッドホン出力を行う。
【0029】
なお、この図1の記録再生装置1の構成は一例であり、例えば入出力処理部5は、オーディオデータだけでなく、ビデオデータに対応する入出力処理系を備えるようにしてもよい。
また、パーソナルコンピュータ100との接続はUSBでなく、IEEE1394等の他の外部インターフェイスが用いられても良い。
【0030】
2.ディスク及びストレージ部の構成
本実施の形態の記録再生装置1で記録媒体とされるディスクは、例えばミニディスク方式のディスクである。特に従前の音楽用のミニディスクだけではなく、コンピュータユースの各種データを記録できる高密度ディスクにも対応する。
【0031】
ここで図2(a)(b)に、オーディオ用ミニディスク(及びMD−DATA)と、高密度ディスクの規格を比較して示す。
図2(a)に示すように、ミニディスク(及びMD−DATA)のフォーマットとしては、トラックピッチは1.6μm、ビット長は0.59μm/bitとなる。また、レーザ波長λ=780nmとされ、光学ヘッドの開口率NA=0.45とされる。
記録方式としては、グルーブ記録方式を採っている。つまり、グルーブ(ディスク盤面上の溝)をトラックとして記録再生に用いるようにしている。
アドレス方式としては、シングルスパイラルによるグルーブ(トラック)を形成したうえで、このグルーブの両側に対してアドレス情報としてのウォブルを形成したウォブルドグルーブを利用する方式を採るようにされている。
なお、本明細書では、ウォブリングにより記録される絶対アドレスをADIP(Address in Pregroove)とも呼ぶ。
【0032】
記録データの変調方式としてはEFM(8−14変換)方式を採用している。また、誤り訂正方式としてはACIRC(Advanced Cross Interleave Reed−Solomon Code) が採用され、データインターリーブには畳み込み型を採用している。データの冗長度は46.3%となる。
【0033】
また、データの検出方式はビットバイビット方式である。ディスク駆動方式としてはCLV(Constant Linear Verocity)が採用されており、CLVの線速度としては、1.2m/sとされる。
そして、記録再生時の標準のデータレートとしては、133kB/sとされ、記録容量としては、164MB(MD−DATAでは140MB)となる。
またクラスタというデータ単位がデータの最小書換単位とされるが、このクラスタは、32個のメインセクターと4個のリンクセクターによる36セクターで構成される。
【0034】
一方、高密度ディスクは、現状において、2つの規格が存在する。ここでは、2つの高密度ディスクの規格を、それぞれ、高密度ディスク(1)(2)として示す。
先ず、高密度ディスク(1)は、トラックピッチが1.5〜1.6μm、線密度0.437μm/bitであり、記録容量としては300MBまで高くなっている。また、標準速度における転送レートは、4.37Mbps、線速度は、2.4m/secとなっている。
また、高密度ディスク(2)は、トラックピッチが1.25μm、線密度0.16μm/bitであり、記録容量は1GBにまで高められている。また、標準速度における転送レートは、9.83Mbps、線速度は、1.98m/secとなっている。
【0035】
なお、図2(b)には示していないが、記録データの変調方式としては、高密度記録に適合するとされるRLL(1,7)PP方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))が採用され、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。データインターリーブにはブロック完結型が採用される。データの冗長度は20.50%とされる。
またデータの検出方式はパーシャルレスポンスPR(1,2,1)MLを用いたビタビ復号方式とされる。
なおRLL(1−7)変調及びRS−LDC誤り訂正方式については、例えば「特開平11−346154号公報」や、「国際特許公開公報WO 00/07300」などに開示されている技術である。
またディスク駆動方式はCLV(Constant Linear Verocity)又はZCAV(Zone Constant Angular Verocity)である。
【0036】
ディスク上のエリア構造を図3に模式的に示す。
図3に示すように、ディスクの最内周側はP−TOC(プリマスタードTOC)領域とされ、ここは物理的な構造としてはプリマスタードエリアとなる。即ち、エンボスピットによる再生専用データが記録されるエリアであり、その再生専用データとして管理情報であるP−TOCが記録される。
【0037】
プリマスタードエリアより外周はレコーダブルエリア(光磁気記録可能な領域)とされ、記録トラックの案内溝としてのグルーブが形成された記録再生可能領域となっている。
このレコーダブルエリアの最内周側はU−TOC領域とされる。
なおU−TOC領域では、プリマスタードエリアとの緩衝エリアや、レーザー光の出力パワー調整等のために用いられるパワーキャリブレーションエリアが設けられ、またU−TOC領域内の特定の3クラスタの区間にU−TOCデータが3回繰り返し記録される。
U−TOCの内容の詳細については省略するが、プログラムエリアに記録されている各トラックのアドレス、フリーエリアのアドレス等が記録され、また各トラックに付随するトラックネーム、記録日時などの情報が記録できるようにU−TOCセクターが規定されている。
【0038】
レコーダブルエリアにおいてU−TOC領域より外周側にアラートトラック及びデータエリアが形成される。アラートトラックは、このディスクが高密度ディスクであって、従前のミニディスクプレーヤでは再生できないことを示す警告音が記録された警告トラックである。データエリアは、オーディオデータやコンピュータユースのデータなどの記録に用いられるエリアとなる。
即ち、通常の音楽用ミニディスクの場合であれば、データエリアに1又は複数の音楽トラックが記録される。
高密度ディスクの場合は、データエリアが各種データのストレージ領域として用いられるものとなる。
【0039】
図4によりディスクの管理構造を説明する。
図4(b)は、音楽用ミニディスクシステムでの管理構造を示している。
この場合、管理情報としては、P−TOC、U−TOCが記録される。
P−TOCは書き換え不能な情報としてピットにより記録される。このP−TOCには、ディスクの基本的な管理情報として、ディスクの総容量、U−TOC領域におけるU−TOC位置、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)などが記録されている。
【0040】
一方、レコーダブルエリアに記録されるU−TOCは、トラック(オーディオトラック/データトラック)の記録、消去などに応じて書き換えられる管理情報であり、各トラック(トラックを構成するパーツ)について開始位置、終了位置、やモードを管理する。また、データエリアにおいて未だトラックが記録されていないフリーエリア、つまり書込可能領域としてのパーツも管理する。
例えば図示するようにデータエリア内に、ATRACデータとして3曲のオーディオトラックが記録されている場合、U−TOCでは、3つのトラックをそれぞれスタートアドレス、エンドアドレス、モード情報、さらには記録日時や名称情報を管理することになる。
【0041】
高密度ディスクの場合は図4(a)のようになる。
高密度ディスクの場合も、U−TOC及びP−TOCは、従前のミニディスクシステムに準拠する方式で記録される。
そして図4(a)のデータエリアには、1つの高密度データトラックを示しているが、U−TOCでは、この高密度データトラックを1つのトラックとして管理する状態となっている。
つまりU−TOCからは、ディスク上における、データトラックの全体としての1又は複数のパーツ位置を管理するものとなる。なお、上述したアラートトラックの位置もU−TOCに管理される。
【0042】
高密度データトラックは、RS−LDC及びRLL(1−7)PP方式で変調された高密度データによって形成されるトラックとされる。
高密度データトラック内には、該データトラックに含まれる高密度データクラスタを管理するクラスタアトリビュートテーブル(CAT:Cluster Attribute Table)が記録される。CATでは、データトラックを構成する高密度データクラスタのそれぞれについての属性(公開可能/不可、正常/不良等)を管理する。
【0043】
このデータトラック内で公開不可とされる高密度データクラスタを用いて、著作権保護等のために用いられる、ディスクに固有のユニークID(UID)や、データ改竄チェックのためのハッシュ値(hash)が記録される。もちろんこれ以外にも、各種の非公開情報が記録されても良い。
この公開不可とされる領域には、特別に許可された機器のみが限定的にアクセスすることができるものとする。
【0044】
データトラック内で公開可能とされる高密度データクラスタによる領域(エクスポータブルエリア)は、例えばUSBやSCSIなどの汎用データインターフェースを経由して、外部のコンピュータなどがアクセスし、記録領域として利用できる領域とされる。
例えばこの図4(a)の場合、エクスポータブルエリアには、FAT及びFAT管理のデータファイルによる、FATファイルシステムが構築されている状態を示している。
つまり、エクスポータブルエリアに記録されるデータは、U−TOCによっては管理されず、FATなどの汎用的な管理情報により管理される形態となり、ミニディスクシステムに準拠しない外部のコンピュータなどによって認識可能なデータとなる。
【0045】
ATRAC方式等の音楽データ等がFATシステム上で記録される場合は、その音楽データ等のファイルを管理する管理情報としてプレイリストが記録される。このプレイリストはFATシステム上の1つのファイルとして記録されるものであり、記録再生装置1のシステムコントローラは、音楽データファイルの再生時にはプレイリストからアドレス等を把握するものとなる。
【0046】
なお、このような構造のデータトラックが、ディスク上に複数記録される場合もある。その場合、各データトラックが、それぞれ1つのトラックとしてU−TOCから管理され、それぞれのデータトラック内のエクスポータブルエリア内のデータについては、FAT等により管理される。例えば各データトラックがそれぞれ独自にFATファイルシステムを持つものとなる。あるいは、複数のデータトラックに渡って一つのFATファイルシステムが記録されるようにしてもよい。
【0047】
また、ユニークID等の情報は、データトラック内であって、FAT管理されないデータとする例を述べたが、FAT管理されない情報とするなら、どのような論理形態で記録されてもよい。例えばU−TOCから直接的に管理されるトラックとして、非公開情報用のトラックを設けるようにしたり、あるいはU−TOC/P−TOC内に記録してもよい。更に、U−TOC領域内で、U−TOCに使用されていない部分を用いて、非公開情報用の記録領域を設けてもよい。
【0048】
なお、説明上、従前のミニディスクを「音楽用ミニディスク」と呼ぶが、いわゆるMD−DATAとして知られているミニディスクも、この音楽用ミニディスクの範疇となる。
また、高密度ディスクに対してデータファイルとして音楽データが記録されることも当然にあり得る。例えばネットワークやパーソナルコンピュータからの音楽ファイルのダウンロードの場合などである。
【0049】
図1に示したストレージ部2は、以上のような音楽用ミニディスクと汎用データ記録媒体としての高密度ディスクに対応できるディスクドライブ部とされる。
このストレージ部2の構成例を図5に示す。
【0050】
図示するディスク90は、上述した音楽用ミニディスク或いは高密度ディスク(1)又は高密度ディスク(2)である。
ストレージ部2においては、装填されたディスク90をスピンドルモータ29によってCLV方式で回転駆動させる。
このディスク90に対しては記録/再生時に光学ヘッド19によってレーザ光が照射される。
光学ヘッド19は、記録時には記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ出力を行い、また再生時には磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力を行う。このため、光学ヘッド19には、ここでは詳しい図示は省略するがレーザ出力手段としてのレーザダイオード、偏光ビームスプリッタや対物レンズ等からなる光学系、及び反射光を検出するためのディテクタが搭載されている。光学ヘッド19に備えられる対物レンズとしては、例えば2軸機構によってディスク半径方向及びディスクに接離する方向に変位可能に保持されている。
【0051】
また、ディスク90を挟んで光学ヘッド19と対向する位置には磁気ヘッド18が配置されている。磁気ヘッド18は記録データによって変調された磁界をディスク90に印加する動作を行う。
また、図示しないが光学ヘッド19全体及び磁気ヘッド18をディスク半径方向に移動させためスレッドモータ及びスレッド機構が備えられている。
【0052】
このストレージ部2では、光学ヘッド19、磁気ヘッド18による記録再生ヘッド系、スピンドルモータ29によるディスク回転駆動系のほかに、記録処理系、再生処理系、サーボ系等が設けられる。
記録処理系では、音楽用ミニディスクに対する記録時に第1の変調方式の変調(EFM変調・ACIRCエンコード)を行う部位と、高密度ディスクに対する記録時に第2の変調方式(RLL(1−7)PP変調、RS−LDCエンコード)の変調を行う部位が設けられる。
再生処理系では、音楽用ミニディスク(及び高密度ディスクのU−TOC)の再生時に第1の変調方式に対する復調(EFM復調・ACIRCデコード)を行う部位と、高密度ディスクの再生時に第2の変調方式に対する復調(パーシャルレスポンスPR(1,2,1)及びビタビ復号を用いたデータ検出に基づくRLL(1−7)復調、RS−LDCデコード)を行う部位が設けられる。
【0053】
光学ヘッド19のディスク90に対するレーザ照射によりその反射光として検出された情報(フォトディテクタによりレーザ反射光を検出して得られる光電流)は、RFアンプ21に供給される。
RFアンプ21では入力された検出情報に対して電流−電圧変換、増幅、マトリクス演算等を行い、再生情報としての再生RF信号、トラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FE、グルーブ情報(ディスク90にトラックのウォブリングにより記録されているADIP情報)等を抽出する。
【0054】
音楽用ミニディスク再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、EFM復調部24及びACIRCデコーダ25で処理される。
即ち再生RF信号は、EFM復調部24で2値化されてEFM信号列とされた後、EFM復調され、さらにACIRCデコーダ25で誤り訂正及びデインターリーブ処理される。即ちこの時点でATRAC圧縮データの状態となる。
そして音楽用ミニディスク再生時には、セレクタ26はB接点側が選択されており、当該復調されたATRAC圧縮データがディスク90からの再生データとして出力される。この場合、図1のキャッシュメモリ3に圧縮データが供給されることになる。
【0055】
一方、高密度ディスク再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部22及びRS−LDCデコーダ25で処理される。
即ち再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部22において、PR(1,2,1)及びビタビ復号を用いたデータ検出によりRLL(1−7)符号列としての再生データを得、このRLL(1−7)符号列に対してRLL(1−7)復調処理が行われる。そして更にRS−LDCデコーダ23で誤り訂正及びデインターリーブ処理される。
そして高密度ディスク再生時には、セレクタ26はA接点側が選択されており、当該復調されたデータがディスク90からの再生データとして出力される。この場合、図1のキャッシュメモリ3に復調データが供給されることになる。
【0056】
RFアンプ21から出力されるトラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FEはサーボ回路27に供給され、グルーブ情報はADIPデコーダ30に供給される。
【0057】
ADIPデコーダ30は、グルーブ情報に対してバンドパスフィルタにより帯域制限してウォブル成分を抽出した後、FM復調、バイフェーズ復調を行ってADIPアドレスを抽出する。
抽出された、ディスク上の絶対アドレス情報であるADIPアドレスは図1に示したシステムコントローラ8に供給される。システムコントローラ8ではADIPアドレスに基づいて、所要の制御処理を実行する。
またグルーブ情報はスピンドルサーボ制御のためにサーボ回路27に供給される。
【0058】
サーボ回路27は、例えばグルーブ情報に対して再生クロック(デコード時のPLL系クロック)との位相誤差を積分して得られる誤差信号に基づき、CLVサーボ制御のためのスピンドルエラー信号を生成する。
またサーボ回路27は、スピンドルエラー信号や、上記のようにRFアンプ21から供給されたトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、或いはシステムコントローラ8からのトラックジャンプ指令、アクセス指令等に基づいて各種サーボ制御信号(トラッキング制御信号、フォーカス制御信号、スレッド制御信号、スピンドル制御信号等)を生成し、モータドライバ28に対して出力する。即ち上記サーボエラー信号や指令に対して位相補償処理、ゲイン処理、目標値設定処理等の必要処理を行って各種サーボ制御信号を生成する。
【0059】
モータドライバ28では、サーボ回路27から供給されたサーボ制御信号に基づいて所要のサーボドライブ信号を生成する。ここでのサーボドライブ信号としては、二軸機構を駆動する二軸ドライブ信号(フォーカス方向、トラッキング方向の2種)、スレッド機構を駆動するスレッドモータ駆動信号、スピンドルモータ29を駆動するスピンドルモータ駆動信号となる。
このようなサーボドライブ信号により、ディスク90に対するフォーカス制御、トラッキング制御、及びスピンドルモータ29に対するCLV制御が行われることになる。
【0060】
ディスク90に対して記録動作が実行される際には、キャッシュメモリ3からデータが供給される。
音楽用ミニディスク記録時には、セレクタ16がB接点に接続され、従ってACIRCエンコーダ14及びEFM変調部15が機能することになる。
この場合、オーディオ処理部10からの圧縮データはACIRCエンコーダ14でインターリーブ及びエラー訂正コード付加が行われた後、EFM変調部15でEFM変調が行われる。
そしてEFM変調データがセレクタ16を介して磁気ヘッドドライバ17に供給され、磁気ヘッド18がディスク90に対してEFM変調データに基づいた磁界印加を行うことでデータ記録が行われる。
【0061】
高密度ディスク記録時には、セレクタ16がA接点に接続され、従ってRS−LDCエンコーダ12及びRLL(1−7)PP変調部13が機能することになる。
この場合、メモリ転送コントローラ3からの高密度データはRS−LDCエンコーダ12でインターリーブ及びRS−LDC方式のエラー訂正コード付加が行われた後、RLL(1−7)PP変調部13でRLL(1−7)変調が行われる。
そしてRLL(1−7)符号列としての記録データがセレクタ16を介して磁気ヘッドドライバ17に供給され、磁気ヘッド18がディスク90に対して変調データに基づいた磁界印加を行うことでデータ記録が行われる。
【0062】
レーザドライバ/APC20は、上記のような再生時及び記録時においてレーザダイオードにレーザ発光動作を実行させるが、いわゆるAPC(Automatic Lazer Power Control)動作も行う。
即ち、図示していないが、光学ヘッド19内にはレーザパワーモニタ用のディテクタが設けられ、そのモニタ信号がレーザドライバ/APC20にフィードバックされる。レーザドライバ/APC20は、モニタ信号として得られる現在のレーザパワーを、設定されているレーザパワーと比較して、その誤差分をレーザ駆動信号に反映させることで、レーザダイオードから出力されるレーザパワーが、設定値で安定するように制御している。
なお、レーザパワーとしては、再生レーザパワー、記録レーザパワーとしての値がシステムコントローラ8によって、レーザドライバ/APC20内部のレジスタにセットされる。
【0063】
以上の各動作(アクセス、各種サーボ、データ書込、データ読出の各動作)は、システムコントローラ8からの指示に基づいて実行される。
【0064】
3.AVデータの管理
これまでの説明からも分かるように、例えば音楽用ミニディスクが原則オーディオデータのみを記録可能とされるのに対して、高密度ディスクは、汎用データが記録可能なディスクとされる。
そして、このような汎用データのなかにも、例えばオーディオデータやビデオデータなどのAVデータが含まれる。つまり、本実施の形態の高密度ディスクに対しても、AVデータが記録可能である。特に、AVデータの記録に関していえば、高密度ディスクは、音楽用ミニディスクと比較して大容量であるから、データレートの高いストリームデータである、ビデオデータの記録に適しているということがいえる。
【0065】
そして、本実施の形態においては、高密度ディスクに記録されるAVデータは、図6に示すようにしてFATファイルシステム上で管理される。
先ず、FATファイルシステムにおいては、AVデータ用のディレクトリが存在するようにして管理が行われる。ここでは、AVデータ用のディレクトリについては、ここでは仮に、「Hi−MDV」というディレクトリ名としている。
そして、このディレクトリHi−MDVには、図示するように、少なくとも3種類のファイルが格納されることになる。
まず、AVデータの実体は、AV Stream Fileとしてファイル単位により管理されて、このディレクトリHi−MDVに格納される。そして、このディレクトリHi−MDVに格納されるAV Stream Fileごとに対応付けられるようにして、AV Header Fileが格納される。このAV Header Fileには、後述するようにして、対応付けられたAV Stream Fileに関する所定内容の情報が格納される。また、AV Header Fileと、AV Stream Fileとの対応付けは、ここでは、各ファイルのファイル名の拡張子以外の部分を同一とすることで行うこととしている。
【0066】
AV Track Index Fileは、ディレクトリHi−MDVに格納されるAVデータを、トラック単位で管理するための管理情報が記述されたファイルである。以降の説明により理解されることであるが、本実施の形態では、ディレクトリHi−MDVに格納されるAVデータとして、1つのAV Stream Fileは、あくまでも、FATファイルシステム上で管理されるファイルであり、トラックとしては扱わない。トラックは、AV Track Index Fileによって管理される。
【0067】
図7(a)にはAV Track Index Fileの構造例が示されている。この図に示すようにして、AV Track Index Fileは、Play Order Tableと、Track Information
Tableとにより成る。
先ず、Track Information Tableは、1以上のTrack Descriptorから成る。各Track Descriptorは、トラックごとに対応して設けられるもので、図示するようにして、Track Descriptor#1,#2,・・・#nのようにしてナンバが付されている。なお、このTrack Descriptorナンバは、分割消去などによる編集結果に応じて欠落してもよいものであり、必ずしも連番となる必要はない。
【0068】
また、Play Order Tableは、トラック単位での再生順を規定する。例えば、この場合のPlay Order Tableには、左から順に、格納位置番号P1〜P(n)により示される格納位置があるものとされ、これらの格納位置に対しては、Track Descriptorナンバが格納される。ここでは、格納位置番号P1に#2、格納位置番号P2に#1、・・・格納位置番号P(n−1)に#nが格納されていることから、トラック再生順としては、Track Descriptor#2が示すトラック→Track Descriptor#1が示すトラック→・・・・→Track Descriptor#nが示すトラックの順となる。なお、この場合のPlay Order Tableとしては、例えば格納位置番号P3が「−」と記載されており、これはTrack Descriptorナンバが格納されていないことを示す。つまり、本実施の形態としては、この図の場合であれば、再生順に従って、格納位置番号P1から左詰めとなるようにしてTrack Descriptorナンバを格納していく必要はない。再生順は、格納位置番号に従って、格納されているTrack Descriptorナンバを順次ピックアップしていくことで得られるものである。
【0069】
1つのTrack Descriptorは、図7(b)に示す情報内容を有している。つまり、Track File ID,Play From,Play To,CODEC Informationを有する。
Track File IDは、現Track Descriptorが示すトラックとしてのデータを含むAV Stream File(及びAV Header File)のファイルIDを示す。このファイルIDは、例えばAV Stream File(及びAV Header File)に与えられたファイル名と対応している。
Play Fromは、現Track Descriptorが示すトラックについての、上記ファイルIDが示すAV Stream Fileにおいて再生が開始されるべき時間を示す。Play Toは、再生が終了すべき時間を示す。
CODEC Informationは、AV Stream Fileのコーデックの方式や、コーデック後のデータについての時間情報などに関する情報が格納される。
【0070】
図8(a)は、1つのAV Stream Fileの構造を示している。
この図において、矢印aで示すAV Stream Fileとしてのデータ開始位置からは、ES(Elementary Stream) Offsetとしての領域が設けられる場合がある。ES Offsetは、本実施の形態のAV Stream FileがFATファイルシステムによって管理されることに応じて付加されるものである。FATファイルシステムでは、例えばクラスタ単位によりデータの記録再生を行うという条件が存在する。矢印bにより示す、コンテンツデータの再生開始位置(再生時間“0”)は、記録時の書き込みや、後述するような分割、ディスク上消去などの処理によって、必ずしもセクターの先頭から開始されるとは限らない。このようにして、コンテンツデータの再生開始位置を含むクラスタにおける空き領域を埋めるために、ES Offsetが定義されている。
そして、このES Offsetに続けて、AVデータとしての実体であるコンテンツデータが配置される。
【0071】
ここで、先に図7(b)に示したPlay From及びPlay Toは、例えば図8(a)において、矢印c,dで示すように、そのトラックの開始位置及び終了位置となるコンテンツデータの再生時間を示す。
つまり、本実施の形態でいうトラックは、コンテンツデータ(AV Stream File)の一部データにより形成することができるようになっている。もちろんのこと、Play Fromがコンテンツデータの再生時間“0”を示し、Play Toがコンテンツデータにおいて、図8(a)に矢印eで示す終端位置の時間を示すのであれば、トラックとしては、1つのAV Stream Fileの全部分のコンテンツデータとされることになる。
【0072】
図8(b)は、1つのAV Header Fileが有する情報内容例を示している。
先ず、ES Offset Sizeは、現AV Header Fileが対応するAV Stream FileのES Offsetについてのデータサイズを示す。
また、本実施の形態の場合、詳しいことは後述するが、例えばAVデータに対する分割編集処理などによって、1つのAV Stream Fileにおいて複数のトラックが存在するようにして管理される場合が生じる。この場合、1つのAV Stream Fileに対して、複数の参照すべきTrack Descriptorが存在することになる。つまり、1つのAV Stream Fileに対応して参照すべきTrack Descriptor数は、変わり得るものとなる。
Reference Counterは、この参照すべきTrack Descriptorの数を示す。例えばReference Counterの示す値が“2”であれば、このAV Header Fileが対応するAV Stream Fileについて、参照すべきTrack Descriptorの数は2であることになる。そしてこれは、そのAV Stream Fileにおいて2つのトラックとしてのデータ部分が存在していることを示している。
【0073】
Erase Flagは、そのAV Header Fileが対応するAV Stream Fileについて、「トラック消去」によって消去されたトラックが存在する場合に立つフラグが格納される。詳細については後述するが、「トラック消去」は、編集処理として、AV Track Index File上での書き換えによりトラック消去を行う処理であり、逆にいえば、FATファイルシステムの書き換えは行わない。つまり、AV Track IndexFile上で消去されたとみなされるものであって、FATファイルシステム上では、このトラック消去されたデータ部分を含むAV Stream Fileそのものがディスクに記録されているものとして管理されている。
【0074】
Total Play Timeは、そのAV Header Fileが対応するAV Stream Fileの総再生時間を示す。つまり、図8(a)において矢印eにより示す終端の再生時間を示す。
なお、このような構造及び情報内容を有するAV Header Fileであれば、上記した情報内容は、それぞれ所定のバイト数を割り当てるようにして固定長とすることが可能である。つまり、AV Header Fileとしても固定長とすることができる。AV Header Fileが固定長であれば、例えば既にディスクに記録済みとされているAV Header Fileを更新する場合においてもそのサイズは変化しないから、例えば、1つのAV Header Fileを形成する複数のデータ部分が、ディスク上において物理的に離散して記録されるようなことにはならない。これによっては、FATによるAV Header Fileの管理が、より単純なものになって、読み出し、アクセスなどが容易になるというメリットが得られる。このようにして、本実施の形態では、AV Header Fileについて固定長とすることによっても、FATファイルシステムに対する処理負担を軽減している。
【0075】
続いて、これまでの説明を踏まえて、図9を参照して、1つのAV Stream Fileに対するトラック管理例について説明する。この図9に示すトラック管理は、最も単純な例であり、1つのAV Stream Fileが1つのトラックとして管理される場合を示している。例えば、1つのAV Stream Fileをディスクに記録する場合において、特に、その途中でトラック分割などのマーキング操作を行わなければ、このようなAV Stream Fileとトラックの関係が得られる。
【0076】
先ず、図9(b)に示すAV Stream Fileは、ここでは、MP000007.VSFというファイル名及び拡張子であるとする。つまり、拡張子VSFにより、AV Stream Fileであることが示された上で、このAV Stream Fileは、MP000007というファイル名によって特定されることになる。
そして、このAV Stream Fileは、データ開始位置から1KバイトのES Offsetの領域を有するものとされ、これに続けて総再生時間“100”のコンテンツデータが配置されてディスクに記録されていることとする。
【0077】
このAV Stream Fileに対応付けられたAV Header Fileは、図9(c)に示される。このAV Header Fileは、MP000007.VHFというファイル名及び拡張子を有している。拡張子VHFにより、このファイルはAV Header Fileであることが示され、さらに、AV Header Fileにおいて、MP000007というファイル名によって特定がされることになる。
そして、図9(b)のAV Stream Fileと、図9(c)のAV Header Fileは、拡張子以外のファイル名部分である「MP000007」が同一であり、これによって、両者の対応付けが行われているものである。
なお、確認のために述べておくと、AV Stream FileとAV Header Fileのファイル名(+拡張子)は、FATファイルシステムによる管理の下で与えられるものである。
【0078】
そして、図9(c)のAV Header Fileにおいて、ES Offset Sizeは、図9(b)のAV Stream FileのES Offsetが1Kバイトであることに対応して、この1Kバイトを示す1000が格納される。
また、Reference Counterは、1とされており、参照すべきTrack Descriptorは1つであることが示される。
また、Erase Flagは、0となっており、これは、図9(b)に示すAV Stream File(コンテンツデータ)について、「トラック消去」によって消去されたトラックは存在していないことを示している。
また、Total Play Timeは、図9(b)に示すコンテンツデータの終端の再生時間が“100”であることに対応して、100が格納されている。
【0079】
そして、図9(a)に示すAV Track Index File内のTrack Information Tableにおいて、図9(b)のAV Stream Fileに対応して参照すべき1つのTrack Descriptor#nが示されている。
このTrack Descriptor#nのTrack File IDは、図では7が記載されているが、これは、図9(b)のAV Stream Fileと、図9(c)のAV Header Fileで共通となっているファイル名「MP000007」における「000007」を示している。つまり、この場合のTrack File IDとしては、ファイル名としてAV Stream FileとAV Header Fileに対して共通に与えられた数値を示すこととしており、これによって、AV Stream File、AV Header File、及びTrack Descriptorとの対応関係を特定する仕組みとしている。
【0080】
また、Track Descriptor#nのPlay Fromは、コンテンツデータの再生時間“0”を示す、0が格納される。また、Play Toは、コンテンツデータの終端の再生時間“100”に対応する100が格納される。このTrack Descriptor#nのPlay From、Play Toを参照するによっては、図9(b)のAV Stream Fileのコンテンツデータは、その開始位置(再生時間“0”)から終了位置(再生時間“100”)まで、1つのトラックとして再生されるべきであることが分かる。
【0081】
また、ここでのCODEC Informationは、typeXであることとして、実際には、所要のコーデックに関する情報を格納しているものとされる。
【0082】
続いては、図10のフローチャートを参照して、n番目に再生すべきトラックを再生するための処理動作について説明する。なお、この図に示す処理は、本実施の形態の記録再生装置1のシステムコントローラ8が実行する。
先ず、システムコントローラ8は、ステップS101により、トラック再生指示が得られるのを待機している。そして、例えばユーザの操作部7に対する操作などによって、n番目に再生すべきトラックの指定と共に、再生開始の指示が行われ、これに応じたコマンドが発生したとされるとステップS102以降の処理に進むことになる。
【0083】
ステップS102では、AV Track Index Fileの読み込みを実行する。なお、この読み込みは、ディスクから読み出しを行うようにしてもよいが、RAM10から読み込むようにすればよい。つまり、ディスク装填時において、AV Track Index Fileをディスクから読み出してRAM10に保持させておくようにして、以降は、このRAM10にアクセスして、必要に応じてAV Track Index Fileの読み込みを行うようにするものである。このようにすれば、逐一ディスクにアクセスする必要が無くなって、それだけ短時間で処理を実行することができる。
【0084】
次のステップS103では、読み込みを行ったAV Track Index FileにおけるPlay Order Tableを参照して、再生順がn番目となっているTrack Descriptorのナンバを特定する。このためには、例えばPlay Order Tableの格納位置P1から順次スキャンしていき、n番目にヒットしたTrack Descriptorナンバを参照すればよい。
【0085】
そして、次のステップS104では、先ず、上記ステップS103により特定されたナンバのTrack Descriptorに格納されているTrack File IDを認識する。そして、この認識したTrack File IDに対応するファイル名が与えられているAV Header File及びAV Stream Fileを特定する。
【0086】
ステップS105においては、上記ステップS104にて特定したAV Header Fileに格納されているES Offset Sizeを参照することで、同じく上記ステップS104にて特定したAV Stream Fileの再生開始位置を特定する。つまり、コンテンツデータの開始位置である再生時間“0”の位置を特定するものである。
【0087】
続くステップS106においては、先のステップS104にて特定したAV Header Fileに格納されているPlay Fromの値を認識する。そして、上記ステップS105にて特定したコンテンツデータの再生時間“0”の位置を基点として、Play Fromの時間分シフトした再生時間位置にアクセスする。そして、このアクセスした再生時間位置から、コンテンツデータの再生を開始する。
【0088】
そして、ステップS107においては、先のステップS104にて特定したAVHeader Fileに格納されているPlay Toの値を認識した上で、このコンテンツデータの再生時間“0”の位置を基点として、Play Toの時間分シフトした再生時間位置を認識する。そして、このPlay Toの時間が示すとされる再生時間位置までの再生が終了するのを待機する。
そして、Play Toの時間が示すとされる再生時間位置までの再生が終了したとされると、n番目のトラックを完全に再生終了したこととなって、例えばステップS108により再生終了処理を実行する。
このようにして、本実施の形態では、AV Track Index File及びAV Header Fileの内容を参照することで、トラック単位によるデータ管理、及び再生制御が可能であることが分かる。これは即ち、トラック単位によるデータ管理、及び再生制御を実行するのにあたり、FATファイルシステムのレベルでの管理情報内容を使用するのではなく、このFATファイルシステムにより管理されるインデックス情報ファイル(AV Track Index File)及びヘッダファイル(AV Header File)などを使用する構成となっていることを意味する。
【0089】
4.トラック分割、消去編集
上記したトラック管理の下では、AV Track Index File及びAV Header Fileの内容を変更することによって、トラック単位での編集を行うことが可能とされる。ここでは、このような編集処理として、トラックの分割編集、及びトラック消去編集について説明する。
【0090】
先ず、トラック分割編集について説明する。
ここで、トラック分割編集前のトラックの管理状態としては、先に図9に示したとおりであるとする。つまり、図9(b)に示すファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileは、1つのトラックとして管理されている状態である。以降においては、この図9(b)に示されるファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileについて、トラック分割、及びトラック消去の各編集を行う場合について説明する。
【0091】
そして、上記図9(b)に示すようにして1トラックとして管理されるAV Stream Fileについて、図10(b)に示すようにしてトラック分割を行ったとする。つまり、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileのコンテンツデータにおいて、再生時間“0”〜“80”までのデータ部分から成るトラックと、再生時間“80”〜“100”までのデータ部分から成るトラックとに分割したものとする。なお、ここでは、前者をトラック#n、後者をトラック#mということにする。
【0092】
そして、上記のようにして分割編集されたものとして管理が行われるようにするためには、AV Track Index FileとAV Header Fileとについて、それぞれ、図9(a)(c)から図11(a)(c)に示すようにして内容を変更することになる。
先ず、AV Header Fileについては、図11(c)に示すようにして、Reference Counterの値について1から2となるように変更され、これにより、参照すべきTrack Descriptorが2つ(AV Stream Fileが含むトラックが2つ)であることを示すようにされる。なお、ここまでの段階でのファイル名=MP000007.VSFのAVStream Fileについて、ES Offsetのサイズ及びコンテンツの終端の再生時間が“100”であることに変わりはないから、AV Header FileにおけるES Offset Size及びTotal Play Timeの値は変化しない。さらに、Erase Flagについても、ここまでの段階では、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileのコンテンツデータにおいて、消去されたトラックは存在しないから、0のまま変わらない。
【0093】
そして、AV Track Index Fileにおいて、AV Header File及びAV Stream Fileのファイル名に対応する、Track File IDを有するTrack Descriptorを参照すると、例えば図11(a)に示すようにして、Track Descriptor#n,#mの2つが存在していることになる。このTrack Descriptorの数は、図11(c)に示したReference Counterの値である2と一致している。つまり、トラック分割によってトラックが1つ増えるのに対応して、Track Descriptor#nに、Track Descriptor#mが追加されているものである。
【0094】
Track Descriptor#nは、コンテンツデータにおける再生時間“0”〜“80”までのデータ部分によるTrack #nについて定義しているものとなる。そして、この場合においては、図9(a)に示したTrack Descriptor#nについて、下記のようにして必要な情報を書き換えることで得られたものとされる。
先ず、Track Descriptor#nにおけるTrack File IDは、図9(a)と同様に、7を示している。これにより、このTrack Descriptor#nが、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream File内のトラックについて記述したものであることが特定される。
そして、Play From及びPlay Toは、それぞれ0、80を示すことで、図1111に示すトラック#nとしてのデータ部分の再生開始時間が“0”、再生終了時間が“80”であることを示すようにされる。従って、ここではPlay Toの値が書き換えられていることになる。
なお、CODEC Informationは、TypeXを示すという点では同じである。ただし、例えば再生時間に関する情報などは、必要に応じて、そのトラックごとに対応した内容に変更される場合がある。
【0095】
また、分割編集に応じて新たに生成されたTrack Descriptor#mは、コンテンツデータにおける再生時間“80”〜“100”までのデータ部分によるTrack#mについて定義する。
Track Descriptor#nにおけるTrack File IDも7を示すことになる。つまり、Track Descriptor#mも、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream File内のトラックについて記述したものであることが特定される。
また、Play From及びPlay Toは、それぞれ80、100を示し、Track #mについての、コンテンツデータの再生開始位置(再生時間“0”)を基点とした、再生開始時間と再生終了時間を示すようにされる。
このように、図11(a)(c)に示すAV Track Index File及びAV Header Fileの内容とすることによって、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileが図11(b)に示すようにしてトラック分割されるように管理する。
【0096】
続いては、図12(b)に示すようにして、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileについて、トラック#nを消去する編集を行って、結果的にトラック#mを残すという場合を考えてみる。
なお、確認のために述べておくと、ここでの消去は、あくまでも、AV Track Index File及びAV Header Fileによってトラックを消去したものとして管理するものであって、FATファイルシステムによって、ディスクに実際に記録されているデータ部分を消去するものではない。つまり、ユーザインターフェイス上は、消去したものとしてみえるが、FATファイルシステム上で消去したとして管理していない以上、ディスクから消去されてはいないものである。
本明細書では、AV Track Index File及びAV Header Fileによって管理される消去を「トラック消去」といい、FATファイルシステム上で管理される消去については、「ディスク上消去」ということにしている。
【0097】
そして、図12(b)に示すようにしてトラック消去されたものとして管理されるためには、先ず、AV Track Index FileにおけるTrack Descriptorとしては、図12(a)に示すようになる。
つまり、トラック#nを消去することに応じて、ファイル名=MP000007.VSFのAVStream Fileに対応するTrack Descriptorのうち、Track Descriptor#nは削除され、Track Descriptor#mのみが存在することとなる。このTrack Descriptor#mの内容については、図11(a)におけるTrack Descriptor#mと同様である。
【0098】
また、このトラック消去編集に応じて、AV Header Fileの内容は、図11(c)から図12(c)に示すようにして更新される。つまり、Reference Counterは2から1となって、参照すべきTrack Descriptorの数(ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream File内のトラック数)が1になったことを示すようにされる。
そして、この段階では、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileについて、トラック消去されたトラックが存在していることになるから、Erase Flagが立つこととなって、その値は0から1に書き換えられることになる。
【0099】
ところで、上記図9、及び図11、図12により説明したようにして、本実施の形態ではトラック分割、トラック消去の編集が可能とされるが、このような編集処理にあってはいわゆるアンドゥといわれる、編集前の状態に戻すことが可能なように構成されることが、例えばユーザにとっての利便性などを考慮すると好ましい。
本実施の形態において、トラック分割、及びトラック消去についてのアンドゥは可能であり、例えば次のようにして実行させることができる。
【0100】
先ず、トラック分割のアンドゥについて、再度図9及び図11を例に説明する。
先ず、アンドゥを可能とすることを前提とした場合には、編集対象となっているAV Stream Fileに対応するTrack Descriptor及びAV Header Fileの内容について、編集処理前の内容を、例えばRAM10上の所定の待避領域に待避させるようにして保持しておくようにされる。
従って、図9から図11に示すようにしてトラック分割のための編集を行ったとした場合においては、図9(a)に示すTrack Descriptor#nと、図9(c)に示すAV Header Fileの内容を、上記待避領域に保持しておくことになる。
【0101】
そして、このトラック分割のアンドゥを実行するとした場合には、先ず、図11(a)に示すTrack Descriptor#n,#mの2つのTrack Descriptorを、AV TrackIndex Fileから削除し、かわりに、待避領域に保持させておいた図9(a)に示すTrack Descriptor#nを、AV Track Index Fileに格納する。
また、AV Header Fileについても、図11(c)に示す内容から、待避領域に保持させておいた、図9(c)に示す内容に書き換えを行うようにされる。
このような処理を実行することで、AV Track Index File及びAV Header Fileは、図11(a)(c)から図9(a)(c)に示す内容に変更されることとなり、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileのコンテンツデータは、1つのトラックとして管理されることになる。つまり、トラック分割編集についてのアンドゥが行われたことになる。
なお、上記したトラック分割編集のアンドゥに際して、図11(a)(c)に示す内容のAV Track Index File及びAV Header Fileを待避領域に保持させておくようにすれば、さらに、図9に示す管理状態から、図11に示されるトラック分割後の管理状態にアンドゥさせることが可能である。
【0102】
また、図12に示すトラック消去が行われた状態から、図11に示す状態となるようにアンドゥを実行する場合も、上記と同様にすればよい。
つまり、先ずは、図11に示す管理状態から図12に示す管理状態となるようにしてトラック消去を実行した際において、図11(a)(c)に示すTrack Descriptor#n,#m、及びAV Header Fileを、待避領域に保持させる。
そして、アンドゥを実行する際には、図12(a)に示すTrack Descriptor#mをAV Track Index Fileから削除し、かわりに、待避領域に保持させておいた図11(a)に示すTrack Descriptor#n,#mを、AV Track Index Fileに格納する。
また、AV Header Fileについて、図12(c)に示す内容から、待避領域に保持させておいた、図11(c)に示す内容に書き換えを行うようにされる。
この結果、AV Track Index File及びAV Header Fileによる、ファイル名=MP000007.VSFのAV Stream Fileの管理は、図12(a)(c)から図11(a)(c)に示す内容に変更され、トラック削除編集についてのアンドゥが行われたことになる。
【0103】
5.ディスク上消去
続いては、ファイルシステム上で、トラックに相当するAV Stream Fileのデータ部分を削除する、ディスク上消去の処理について説明を行うこととする。
本実施の形態では、これまでの説明から分かるように、AV Stream File(コンテンツデータ)は、FATファイルシステムによる管理と、このFATファイルシステム下での、AV Track Index File(インデックス情報)による管理とが行われる。ここで、着目すべきことは、ディスクに記録されるデータについて、FATファイルシステムによるデータ管理単位のサイズと、コンテンツデータとして管理する場合のデータ管理単位のサイズには、相違を有することである。先ず、この点について図1313を参照して説明しておく。
【0104】
図13は、ある1つのAV Stream Fileに対する、コンテンツデータのデータ管理単位と、ファイルシステムのデータ管理単位との関係を概念的に示している。
先ず、図13(a)に示すように、コンテンツデータとして、領域Aによる1つのAV Stream Fileがあるとして、このAV Stream Fileに対するコンテンツのデータ管理単位は、図13(b)に示すようにして、A〜Jの10のデータ管理単位により等分割することとする。
これに対して、FATファイルシステムのデータ管理単位は、AV Stream Fileを、A〜Dの4等分に分割しているものとする。
なお、図13(b)に示すコンテンツのデータ管理単位は、AV Track Index Fileの仕様によって決定されるインデックス単位となる。また、図13(c)に示すFATファイルシステムのデータ管理単位は、例えばクラスタ単位となる。
【0105】
そして、上記のように説明した図13は、次のようなことを意味する。
先ず、図13(a)のAV Stream File(A)としてのコンテンツデータについて、トラック分割、トラック消去を行う場合には、図13(b)に示すコンテンツのデータ管理単位A〜Jにおける境界位置のいずれかを分割位置、消去位置とすることになる。
これに対して、例えばFATファイルシステム上での管理により、ディスク上消去を行おうとした場合には、図13(c)に示すファイルシステムのデータ管理単位A〜Dにおける境界位置の何れかを、消去されるデータ部分の境界位置とすることになる。
そして、図13(b)(c)を比較すれば、コンテンツのデータ管理単位の境界位置と、ファイルシステムのデータ管理単位との境界位置とは必ずしも一致していないことがわかる。
例えばこの図では、説明の便宜上、ファイルシステムのデータ管理単位のサイズを、コンテンツのデータ管理単位のサイズの2.5倍としているのであるが、この場合には、ファイルシステムのデータ管理単位B,Cの境界は、コンテンツのデータ管理単位E,Fの境界と一致はしているものの、ファイルシステムのデータ管理単位A,B、及びC,Dの境界は、コンテンツのデータ管理単位C,H内に含まれるような状態で、ずれが生じている。また、コンテンツのデータ管理単位B,D,G,Iなどは、ファイルシステムのデータ管理単位のブロック内に収まっている。
【0106】
そして、上記図13に示す状態から、領域AのAV Stream Fileについて、図14(a)に示すようにして領域A−1,A−2の各データ部分に分割することで、トラック#n,#mの2つのトラックとなるようにトラック分割編集を行ったとする。この場合には、図14(b)におけるコンテンツのデータ管理単位G,Hの境界位置によりトラック分割編集を行っている。
なお、確認のために述べておくと、図14(b)(c)には、図13(b)(c)と同一のパターンが示されている。
【0107】
そして、上記図14に示すようにして分割編集を行った後において、AV Stream File(A)から、領域A−1に対応するトラック#mについてディスク上消去を行うとした場合を、図15により説明する。
ここで仮に、トラック#mをディスク上消去するために、図15(a)に示される、全体領域AとされるAV Stream Fileにおける領域A−1を完全に、FATの書き換えにより消去することを考えてみる。すると、領域A−1,A−2の境界は、図15(c)に示すファイルシステムデータ管理の境界とは一致しておらず、ファイルシステムデータ管理Cのブロック内に在る。
従って、領域A−1を完全にディスク上消去しようとすれば、ファイルシステム管理単位A,B,Cの連続した3ブロック分に対応するAV Stream Fileのデータ部分を消去することになる。しかしながら、コンテンツのデータ管理単位Cのブロックは、図15(b)に示すコンテンツのデータ管理単位Hの前半を含んでいる。つまり、図15(a)に示すAV Stream Fileの領域A−2における、コンテンツのデータ管理単位Hの前半のデータ部分もディスク上消去されてしまうことになる。
【0108】
このため、トラック#mに相当するデータ部分をディスク上消去しようとする場合には、領域A−2の冒頭部分の消去を避けるために、ファイルシステム管理単位A,Bの連続した2ブロック分に対応したAV Stream Fileのデータ部分をを消去することになる。
これにより、図13(a)において領域A−3が、FATの書き換えによってディスクから消去されることになる。しかし、領域A−1において、領域A−3に続く領域A−4としてのデータ部分が残ってしまうことになる。この領域A−4は、図15から分かるように、ファイルシステム管理単位Cの先頭位置から開始され、コンテンツのデータ管理単位G,Hの境界位置で終了するデータ部分となる。
【0109】
このようにして、コンテンツのデータ管理単位によりトラック分割(或いはトラック消去)されたトラックについてディスク上消去を行う場合には、そのトラックとしてのデータ部分の終端部分で、実際には、ディスク上において消去されずに残ることがある。
このような場合には、実際にディスク上で消去されたとされるデータサイズと、ユーザ側からディスク上で消去したように見えるデータサイズの間に、領域A−4分の差分が生じる。そして、このような差分となるデータ部分は、ディスク上消去が実行される回数に応じて増加することにもなるので、実際にディスク上で消去されたデータサイズと、ユーザ側からディスク上で消去したように見えるデータサイズの誤差は拡大していくことになってしまう。
そこで、このような不都合を回避するために、本実施の形態では、図15(a)に示すように、この領域A−4を、後に続く領域A−2の先頭に付加されるESOffsetとして扱うようにされる。従って、この図15に示すディスク上消去の結果、図15(a)に示すAV Stream Fileとして、ディスクに記録されているものとしてFATファイルシステム上で管理されるのは、領域A−4(ES Offset)+領域A−2で表される領域となる。
【0110】
これまでの説明によると、本実施の形態では、前提として、ディスクに記録されるデータは、FATファイルシステムによって管理される。そのうえで、コンテンツデータ(AV Stream File)のトラック分割、トラック消去編集はFATの書き換えに依存することなく、このFATにより管理されるデータファイル(AVTrack Index File、AV Header File等)の内容を書き換えることで以て行うことが可能となっている。
例えば、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)の書き換えによるトラック分割、トラック消去編集を行わず、FATの書き換えのみに依存して、コンテンツデータ(AV Stream File)の編集を行うこととした場合には、トラック分割、トラック消去編集の都度、FATの書き換えが行われることになる。FATの書き換えは、例えば、データファイルを操作する場合よりも重い処理となることから、それだけシステムの負担が大きくなる。このため、例えば編集処理の終了(FATの書き換えの完了)に時間がかかることになってしまうという不都合が生じる。
これに対して本実施の形態のようにして、データファイルに対する書き換えによって編集が行えるようにすれば、編集の都度、FATを書き換える必要はなくなるので、より軽い負担で編集処理を実行することができ、より迅速な編集処理動作を得ることが可能となる。
【0111】
ここで、上記したように、データファイル(AV Track Index File、AV HeaderFile等)の書き換えによるトラック分割、トラック消去が行われる環境の下で、例えばトラックとしてのデータ部分をディスク上消去(FATの書き換え)によって消去することには次のような意味がある。
先ず、FATの書き換えによりデータを積極的に消去する場合とは、不要なデータをユーザが任意に削除する場合であるということになるが、これは即ち、必要なデータのみがディスクに記録されるようにして、できるだけディスクの記録容量が節約できるようにすることを目的としている、ということがいえる。これは、本実施の形態に限ることなく、他の書き換え可能なメディアを使用する場合にもいえることである。
そして、本実施の形態においては、上記した記録容量の節約とも関わるものの、次のような意味合いも有している。
つまり、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)の書き換えによるトラック消去を行っただけでは、FAT上では、トラック消去されたデータ部分はディスクに記録されているものとして管理されるから、トラック消去が行われれば、ユーザから見たコンテンツの総データサイズよりも実際にディスクに消去されずに記録されているコンテンツの総データサイズのほうが大きくなるようにして差が生じることになる。
【0112】
そして、トラック消去について回数を重ねていくと、ユーザから見た、データファイルにより管理される全トラックの総データサイズ(総再生時間)と、実際にディスクに消去されずに記録されている全コンテンツ(AV Stream File)の総データサイズとの差は拡大していくことになる。このような差分の拡大が大きくなるのは、例えばユーザが思っている以上にディスクの記録済み容量が大きくなっており、あるときに、記録できると思ったコンテンツが容量不足で記録できなくなるなど、ユーザにとって好ましくない不都合を生じる原因となる。
そこで、例えばトラック消去により消去されたトラックをディスク上消去するようにすれば、上記したようなユーザ側とFAT管理上との間でのデータサイズの差分の問題を解消できることになる。
【0113】
このことから、例えば実際の記録再生装置のアプリケーションとしては、次のような自動のディスク上消去動作を考えることができる。
つまり、データファイルの書き換えによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックの総データサイズが一定以上となった場合、これは、データファイルによって管理される全トラックの総データサイズと、実際にディスクに消去されずに記録されている全コンテンツ(AV Stream File)の総データサイズとの差が一定以上となったということになる。
そして、このような条件を満たした場合には、トラック消去されたデータ部分を対象として、必要とされるデータサイズ分のディスク上消去を実行するようにされる。
【0114】
図16及び図17のフローチャートは、上記のような自動のディスク上消去動作のための処理動作を示している。なお、この図に示す処理も、記録再生装置1のシステムコントローラ8が実行する。
【0115】
先ず、システムとしては、一定期間ごとに、データサイズチェックを行うこととしている。ここでいうデータサイズチェックとは、上記もしているように、データファイルによって管理される全トラックの総データサイズと、実際にディスクに消去されずに記録されている全コンテンツ(AV Stream File)の総データサイズとの差をチェックするものとされる。
そして、システムにおいては一定時間間隔ごとに上記データサイズチェックのためのコマンドを内部で発生させることとしている。そして、システムコントローラ8は、図16のステップS201の処理として、このデータサイズチェックのためのコマンドが得られるのを待機している。そして、このコマンドが取得されるとステップS202以降の処理に進む。
【0116】
ステップS202においては、AV Track Index File内のTrack Information Tableを読み込む。そして、読み込んだTrack Information Table内に格納されている各Track DescriptorのPlay From−Play Toにより示される時間幅を認識し、これらのPlay From−Play Toの時間幅を加算する。これにより、現在、データファイル(AV Track Index File,AV Header File)により管理される全トラックの再生時間を総計した総再生時間aの値が算出される。
そして、例えば次のステップS203により、所定の演算規則に従って、上記総再生時間aの値を、ディスク上に記録されているデータサイズbの値に変換する。
【0117】
続いては、ステップS204により、FATの読み込みを実行する。そして、次のステップS205において、読み込みを行ったFATを参照することで、FATによりディスク上に記録されているものとして管理されている全てのAV Stream Fileの総データサイズcを算出する。
【0118】
そして、次のステップS206においては、上記ステップS203により得られた値bと、上記ステップS205により得られた値cとについて、c−bが予め設定された一定値以上であるか否かについて判別する。
ここで、肯定結果が得られたのであれば、データファイルの書き換えによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックの総データサイズが一定以上となっているということになる。そこで、この場合には、ステップS207によるディスク上消去処理を実行する。このディスク上消去処理によっては、データファイルの書き換えによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックとしてのデータ部分について、必要なデータサイズ分に応じた消去をトラック単位で実行することになる。
これに対して、ステップS206において否定結果が得られた場合には、このまま処理を終了し、再度、ステップS201の処理により次のデータサイズチェックコマンドが得られるのを待機することになる。
【0119】
そして、ステップS207におけるディスク上消去の処理は、例えば図17に示す手順によって実行することができる。
図17に示すディスク上消去処理としては、先ず、ステップS301において、AV Header Fileの読み込みを行い、読み込みを行ったAV Header Fileのうちから、Erase Flag=1となっているAV Header Fileを検索する。
ここで、Erase Flag=1となっているAV Header Fileを検索するということは、そのAV Header Fileのファイル名を特定することになる。これは、データファイルによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックとしてのデータ部分を含むAV Stream Fileを特定することを意味する。
【0120】
つまり、本実施の形態では、AV Header FileにErase Flagを格納することで、データファイルによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックとしてのデータ部分を含むAV Stream Fileと、これを含まないAV Stream Fileとを区別して認識することが可能となるものである。
仮に、AV Header FileにはErase Flagを格納しないこととすれば、AV Stream Fileにおいて、データファイルによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックとしてのデータ部分が存在するか否かについては、判断することができなくなる。つまり、AV Stream Fileから、データファイルによってトラック消去されてはいるが、FATによっては消去されていないトラックとしてのデータ部分のみをディスク上消去しようとした場合にも、このようなデータ部分がAV Stream Fileに存在するかどうかを判断することができない以上、適正に実行することはできないことになる。
AV Header FileにはErase Flagを格納しない場合には、例えばAV Stream Fileを形成する全てのトラックについて、データファイルによるトラック消去が行われて、AV Header FileのReference Counterが0となったときにはじめて、そのAV Stream File全体をディスク消去することが可能となる。
【0121】
そして、次のステップS302においては、先ず、Track Information Tableの読み込みを実行し、このTrack Information Tableに格納されるTrack Descriptorのうちから、上記ステップS301において検索したAV Header Fileのファイル名に対応するTrack File IDを格納したTrack Descriptorを認識する。
【0122】
次のステップS303においては、上記ステップS302により認識したTrack Descriptorと、先にステップS301により読み込みを行ったAV Header Fileの内容に基づいて、各AV Stream Fileにおけるトラック消去済みとされているデータ部分の再生時間幅を認識する。
このステップS303による再生時間幅認識のための処理を、図18の模式図により説明する。
【0123】
ここで、トラック消去済みの(かつ、ディスク上消去(FAT書き換え)による消去はされていない)データ部分を含むAV Stream Fileとして、図18(a)(b)(c)に示す3つが存在しているとする。
ここでは仮に、図18(a)(b)(c)に示す各AV Stream Fileに対応するTrack File IDは、それぞれ、Track File ID=0,Track File ID=1,Track File ID=2であるとする。
先ず、図18(a)に示すAV Stream Fileにおいては、コンテンツデータ全体の再生時間幅が“400”とされるうち、トラック消去済みのデータ部分は、再生時間“150”〜“400”の範囲となる領域Bであり、その再生時間幅は“250”となる。
また、図18(b)に示すAV Stream Fileでは、コンテンツデータ全体の再生時間幅は、図18(a)と同じ“400”とされる。しかし、トラック消去済みのデータ部分である領域Bは、この場合、再生時間“250”〜“400”の範囲であるから、その再生時間幅は“150”となる。
さらに、図18(c)に示すAV Stream Fileのコンテンツデータ全体の再生時間幅は“600”とされる。そして、この場合のトラック消去済みのデータ部分は領域A〜Eのうち、領域B,Dとなる。領域Bは、再生時間“200”〜“300”の範囲で、その再生時間幅は“100”となる。領域Cは、再生時間“500”〜“550”の範囲で、その再生時間幅は“50”となる。
【0124】
ここで、例えば図18(a)に示すAV Stream Fileに対応するAV Header Fileとしては、Total Play Timeは、400を示すことになる。また、図18(a)に示すAV Stream Fileに対応するTrack Descriptorでは、領域Aをトラックとして管理するための内容が格納され、そのPlay From,Play Toは、それぞれ0、150を示すことになる。
そして、上記したTotal Play Time=400、Play From=0,Play To=150の情報から、トラック消去済みのデータ部分である領域Bの再生時間幅は、“250”(=400−150)であることが認識できることになる。
【0125】
そして、図18(b)(c)に示すAV Header Fileについても同様にして、対応するAV Header FileのTotal Play Timeと、参照すべきTrack Descriptorに格納されるPlay From,Play Toの値を利用することで、トラック消去済みのデータ部分である各領域の再生時間幅を特定することができる。
【0126】
そして、上記のようにして、ステップS303において、トラック消去済みのデータ部分ごとの再生時間幅を認識した後は、次のステップS304によって、トラック消去済みのデータ部分について、再生時間幅順のリストを作成する。
このリストは、例えば図19に示すものとなる。この図19に示すリストは、トラック消去済みのデータ部分を含むAV Header Fileが、図18(a)(b)(c)に示したものである場合を例にしている。
【0127】
図19に示すリストは、リスト順ごとに対応して、トラック消去済みデータ部分を特定するアドレス的な情報と、その再生時間幅の情報を格納する構造を有している。ここでのトラック消去済みデータ部分を特定する情報としては、先ず、そのトラック消去済みデータ部分を含むAV Header FileのファイルID(Track File ID)と、そのトラック消去済みデータ部分についてのPlay From/Play Toの値を格納することとしている。
【0128】
ここで、図18(a)(b)(c)に示すAV Header Fileのトラック消去済みのデータ部分のうち、、図18(a)に示すAV Header Fileにおける領域Bが、再生時間幅“250”とされて、最も長い再生時間幅を有している。また、次に長いのは、図18(b)のAV Header Fileにおける領域Bの再生時間幅“150”である。さらに続いて、図18(c)のAV Header Fileにおける領域Bの再生時間幅“100”、領域Dの再生時間幅“50”となる。
【0129】
従って、図19に示すリスト順1には、図18(a)に示すAV Header Fileにおける領域Bについての情報が格納される。この場合、トラック消去済みデータ部分を特定する情報としては、ID=0,Play From/Play To=150/400の情報が格納されることで、図18(a)に示すAV Header Fileにおける領域Bであることが特定される。また、再生時間幅の情報としては250が格納される。
以降、リスト順2〜リスト順4には、上記した再生時間幅順に従って、図18(b)のAV Header Fileにおける領域B、図18(c)のAV Header Fileにおける領域B、Dについての情報が格納される。
【0130】
次のステップS305においては、上記ステップS304により作成したリストの内容を参照して、リスト順に従って、トラック消去済みのデータ部分についてのディスク上消去を実行する。つまりは、必要なディスク上でのデータ消去量が得られるように、リスト順に従って、トラック消去済みのデータ部分についてのディスク上消去を実行する。
【0131】
ここで、例えば図19に示すようにして作成されるリスト順により、トラック消去済みのデータ部分を、ディスク上消去していくということは、できるだけ再生時間幅が長い、つまり、ひとまとまりのデータサイズが大きい領域から消去していくということを意味する。
本実施の形態の記録再生装置1としては、ディスクに対するAV Stream Fileの書き込みは、できるかぎり、ディスク上において物理的に連続するようにして行うようにされており、なるべく離散して記録されることが無いように配慮される。
これは、記録媒体がディスクであることから、離散記録されたデータにアクセスしながらストリームデータの記録再生を行うのは、アクセスタイム、及びシークタイムが必要となる関係上、システムに負担がかかることが理由となっている。
【0132】
このようなことを考慮すれば、トラック消去済みのデータ部分についてのディスク上消去によってディスクに空き容量を形成するとした場合にも、ディスク上において物理的にできるだけ長く連続した空き容量を形成することが好ましいということになる。
そこで、本実施の形態では、上記したように再生時間幅が最も長いトラック消去済みのデータ部分から、優先的にディスク上消去を実行することとしているものである。これにより、トラック消去済みのデータ部分についてのディスク上消去によっても、できるだけ長く連続した空き容量が得られるようにしている。
なお、ディスク上消去のリスト順を形成するのは、あくまでもトラック消去済みのデータ部分の再生時間幅に依るから、必ずしも、この再生時間幅を有するデータ部分が、そのまま、ディスク上における物理的な連続性を有しているとは限らず、ディスク上では離散的に記録されている可能性を有してはいる。
しかしながら、本実施の形態の記録再生装置1としては、先にも述べたようにして、先ずは、できるだけディスク上において物理的に連続した領域に1つのAVStream Fileが記録されるようにして書き込みを実行することとしている。このため、上記した効果は相当に高い確率で得ることができるものである。
【0133】
6.ブロック暗号化されたAV Stream Fileのディスク上消去
また、本実施の形態の記録再生装置1では、図1にも示したようにして、例えば入出力処理部5内に、暗号化及び暗号復号化処理を実行する暗号処理部5aを備える。つまり、本実施の形態において、ディスクに対して記録されるデータとしては、暗号化される場合があるということになる。
そして、暗号化のアルゴリズムの1つとしてブロック暗号化が知られているが、さらに、このブロック暗号化のモードの1つとしてCBCモードが知られている。
ここでCBCモードによる暗号化処理を簡単に述べておくと、次のようになる。
・平文データDを同じデータ長のブロックd1,d2,..,dnに分ける。
・上記のブロックと同じ長さのIV(Intialization Vector)を用意する。
・d1とIVの排他的論理和を暗号化し、これをe1とする。
・d2とe1の排他的論理和を暗号化し、これをe2とする。
・d3とe2の排他的論理和を暗号化し、これをe3とする。
・以下同様の処理を繰り返し、得られたe1、e2、…をつなげたものを暗号文とする。
【0134】
そして、ここで暗号処理部5aが、上記CBCモードによるブロック暗号化に対応した暗号化/復号化処理を実行可能であるとした場合における、AV Stream File、コンテンツのデータ管理単位、FATファイルシステムのデータ管理単位、及びブロック暗号化単位の関係例を、図20に示す。なお、この図に示すAV Stream Fileに対する各単位の関係は、あくまでも説明の便宜のための概念的なものであって、必ずしも実際と同一ではない。
【0135】
そして、この図20によると、図20(a)に示すAV Stream Fileは、全体で領域Aを有している。そして、このAV Stream Fileの領域Aは、図20R>0(b)のコンテンツのデータ管理単位としては、管理単位A〜Eの5つ分のサイズに相当することになる。
また、図20(c)に示すFATファイルシステムのデータ管理単位は、AV Stream Fileの領域Aに対して、管理単位A,Bと、これに続く管理単位Cの一部が対応するようになっている。また、図20(b)に示すコンテンツのデータ管理単位の2つ分のサイズが、1つのFATファイルシステムのデータ管理単位のサイズと同じになる関係を有している。
さらに、図20(d)に示すブロック暗号化単位は、8つ分で、1つのFATファイルシステムのデータ管理単位と同じサイズになる関係を有する。従って、4つ分であれば、1つのコンテンツのデータ管理単位と同じサイズとなる。
【0136】
そして、ここでは、図20に示す分割位置により、図20(a)のAV Stream Fileについて、領域Aを領域A−1と領域A−2とに分割するようにしてトラック分割編集したとする。この分割位置は、図20(b)に示すように、コンテンツデータの管理単位B,Cの境界位置に対応する。また、この場合には、この分割位置は、図20(c)に示すファイルシステムのデータ管理単位A,Bの境界とも一致している状態となっている。
さらに、この図に示す分割位置は、図20(d)に示すブロック暗号化単位A,Bの境界にも対応している。
【0137】
そして、上記のようにしてAV Stream Fileのトラック分割を行ったところ、図に示すブロック暗号化単位のシーケンスにおいて、分割位置に対応する境界の直前のブロック暗号化単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分は、IV(Intialization Vector)として必要なデータを含むデータ部分であったとする。なお、この場合には、例えば図20(a)に示すAV Stream File全体を、暗号化ブロックのチェーン範囲としているものとする。
【0138】
そして、上記図20に示すようにしてトラック分割編集した後において、例えば、AV Stream Fileの領域A−1のデータ部分について、ディスク上消去を行ったとする。このような編集結果に対応する状態を図21に示す。
この図から分かるように、AV Stream Fileの領域A−1のデータ部分についてディスク上消去を行うということは、ファイルシステムのデータ管理単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分がディスク上から消去されるようにFATを書き換えるということである。
しかしながら、この場合において、単純に、FATの書き換えによってファイルシステムのデータ管理単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分をディスクから消去したとすると、ブロック暗号化単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分に含まれるIVも消去されてしまうこととなる。
このIVは、以降のブロック暗号化単位のデータ部分についての暗号復号化処理に必要な情報である。従って、このIVをそのままディスク上から消去してしまったのでは、以降の領域A−2としてのAV Stream Fileのデータ部分について、適正に暗号復号化処理を施して再生出力することができなくなってしまう。
【0139】
従来における、上記のような不都合への対策として、例えば1つには、このブロック暗号化単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分のように、IVを含むとされるデータ部分については、ディスク上からの消去は行わずに残すということが行われている。
しかしながら、例えば図20からも分かるように、IVを含むブロック暗号化単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分を、ディスクから消去しないように残そうとすれば、結局、ファイルシステムのデータ管理単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分をまるごとディスクから消去せずに残さなければならない。従って、この図の場合には、結局、AV Stream Fileの領域A−1としてのデータ部分は、ディスクから消去されずに残ってしまうことになる。
これは、実際においては、IVを含むブロック暗号化単位のデータ部分を残すために、例えばこれよりデータサイズの大きなファイルシステムのデータ管理単位分のデータを残さなければならないことを意味する。つまり、この場合には、ディスク空き容量を有効に確保できないという問題を有することになる。
【0140】
また、対策の1つとして、ブロック暗号化単位Aに対応するAV Stream Fileのデータ部分のように、IVを含む1ブロック暗号化単位のデータを、例えばディスク上において確保された所定の待避用のアドレス領域に書き込んでおき、そのIVが必要となった場合に、この待避用のアドレス領域からデータ読み出しを行って使用する、ということも行われている。
しかしながら、この場合には、ディスク上に、IVのデータを待避させる領域を確保しなければならないために、その分、ユーザデータを書き込み可能なディスク容量が減少してしまうという不都合が生じる。また、待避用のアドレス領域と、ここに記録されるIVのデータをFATによって管理することになるので、FATファイルシステムもそれだけ複雑になって、処理も重くなってしまうことにもなる。
【0141】
そこで、本実施の形態としては、図22に示すようにして上記問題を解決することとしている。なお、図22において、図22(a)(b)(c)(d)は、図21(a)(b)(c)(d)と同一であることから、ここでの説明は省略する。
図22(e)には、暗号化チェーン単位が示されている。この図22(e)に示す暗号化チェーン単位と、図22(b)に示すコンテンツのデータ管理単位とを比較して分かるように、ここでは、暗号化チェーン単位とコンテンツのデータ管理単位とについて同じとなるようにしているものである。
そして、この図に関しては、1つの暗号化チェーン単位は、図22(d)に示すブロック暗号化単位の4つ分に相当させることとしている。
つまり、本実施の形態では、少なくとも、1つの暗号化チェーン単位を、1つのコンテンツのデータ管理単位の範囲内に納めることとしているものである。その例として、図22では、暗号化チェーン単位とコンテンツのデータ管理単位とについて同じとなるようにしているものである。従って、例えば2以上の暗号化チェーン単位を、1つのコンテンツのデータ管理単位の範囲内に納めるようにしても構わないことになる。なお、このような場合、全てのIVについて定数(例えば0)とすることになる。
【0142】
上記図22に示す手法を採ることで、先に述べたように、ディスク消去時において、IVを含むデータ部分についてはファイルシステムのデータ管理単位分により未消去としたり、また、ディスク上に設けた待避領域にIVを待避させる必要はなくなって、上記した問題は解決されることになる。
なお、図22に示す手法を実現するのには、暗号処理部5aについて、ディスクに記録すべきAV Stream Fileに対して、上記図22の説明に基づいて定められた所定のチェーン範囲によって暗号化処理を施すように構成すればよい。
【0143】
これまで説明してきた実施の形態については、次のようなことがいえる。
先ず、AV Stream Fileとしてのコンテンツデータのトラック分割、トラック消去の編集としては、図6〜図12により説明したように、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)の書き換えにより行うようにしている。これにより、本実施の形態としては、AV Stream Fileとしてのコンテンツデータのトラック分割、トラック消去の編集までの段階では、FATの書き換えに依存しないことになるので、FAT書き換えのための処理負担が軽減され、例えばそれだけ高速な編集処理動作を得ることができる。
【0144】
また、そのうえで、図15に示したようにして、AV Stream Fileについてディスク上消去を実行した場合において、このディスク上消去すべきデータ領域の終端部分について、消去されずに残る場合には、この消去されずに残ったデータ部分をES Offsetとして、このデータ部分に続くトラックデータ部分の先頭に付加してAV Stream Fileを形成することとしている。これにより、実際にディスク上で消去されたとされるデータサイズと、ユーザ側からディスク上で消去したように見えるデータサイズの間に生じる差分を解消することが可能となる。
つまり、これはファイルシステムによるファイル管理の下で、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)によりトラック管理を行う場合において、このような場合における不整合を解消し、より効率的なデータ管理が行われるようにしているということができる。
【0145】
さらに、本実施の形態では、図17により説明したようにして、AV Header FileにErasse Flagを設けるようにしている。そして、このErasse Flagの状態を見ることで、1つのAV Stream Fileにおいてトラック消去済みとされているデータ部分があるか否かを判定するようにしている。つまり、Erasse Flagを設けたことで、AV Stream Fileの一部であるとしても、ディスク上消去してもよいとされるデータ部分を適切に見つけだして、ディスクの空き容量を効率的に作り出していくことが可能とされているものである。
さらに、図17及び図18により説明したようにして、トラック消去済みのデータ部分のうちで、再生時間幅が長いものからディスク上消去していくようにし、できるだけ連続した空き容量が得られるようにしている。これによっては、上記したディスクの空き容量を、書き込み/読み出し効率を考慮して作り出していくことが可能となるものである。
そして、これらの手法を採ることによっても、ファイルシステムによるファイル管理の下で、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)によりトラック管理を行う場合において、より効率的なデータ管理を実現しているということがいえる。
【0146】
さらに、図22により説明したようにして、暗号化チェーン範囲を規定することで、例えばCBCモード等により暗号化されたAV Stream Fileをトラック分割したデータ部分を消去するときにも、IVを保存、待避させておく必要が無くなって、FAT書き換え処理等の負担の軽減や、ディスク容量の節約が図られる。
つまり、このような手法も、同じく、ファイルシステムによるファイル管理下で、データファイル(AV Track Index File、AV Header File等)によりトラック管理を行うという構成を採る場合において、より効率的なデータ管理を行うことを目的として行われるものである。
【0147】
ところで、上記のようにして各図により説明してきた手法は、例えばシステムコントローラ8がプログラムを実行することによって実現される。このためのプログラムは、例えば記録再生装置1のROM9に予め記憶して格納しておくものである。
【0148】
あるいは、プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。例えば、本実施の形態であれば、ディスク90にプログラムを記録し、パッケージソフトウェアとして提供することができる。これにより、記録再生装置1では、ディスク90を再生してプログラムを読み出し、ROM9に記憶させることでインストールできる。
また、例えば、本実施の形態としての処理を実行させるプログラムを各種記録媒体に記憶させておけば、本実施の形態としての動作を、汎用のパーソナルコンピュータなどにインストールして実行させることが可能になる。
なお、プログラムは、上記のようなリムーバブルな記録媒体からインストールする他、プログラムを記憶しているサーバなどから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
【0149】
また、本発明としてはこれまでに説明した構成に限定されるものではない。例えば、各図により説明した処理手順などは、実際に応じて適宜変更されてよい。また、本実施の形態において編集対象となっているAV Stream File(ストリームデータ)は、ビデオデータであることとしているが、前述もしているように、そのフォーマットについてここでは特に限定されるものではない。また、ビデオデータ以外にも、例えば圧縮符号化フォーマットを含む、各種フォーマットによるオーディオデータなどとされてもよいものである。
また、ここでは、記録再生装置としては、ミニディスク(MD)方式のディスクに対応するものとしているが、これに限定されるものではなく、他の各種方式による記録可能なディスクメディアに対応する構成とされてよい。さらには、ファイルシステムによって管理される下で、データファイルによってトラック管理されるデータ管理構造を採るのであれば、ディスクメディア以外の他のメディアを対象として本発明を適用することも考えられる。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムによってファイルとして管理するようにされる。これを前提として、ファイルシステムによって管理されるトラック管理用データファイルにより、ストリームデータをトラック単位で管理するようにされる。そして、トラック単位による分割、消去の編集(トラック分割、トラック消去)は、上記トラック管理用データファイルにおいて各トラックを規定するトラック管理情報の内容を書き換えることで実行される。
このような構成とされることで、トラック単位による分割、消去編集処理にあたっては、ファイルシステムを書き換える必要はないこととなって、それだけ、編集処理の負担は軽減され、例えばより高速な編集動作を得ることができる。
【0151】
また、ファイルシステムの書き換えによって、ファイルシステムのデータ管理単位に基づいて、ストリームデータを記録媒体から消去するときに、このファイルシステムのデータ管理単位に相当するデータ領域に、上記記録媒体からの消去対象であったデータ部分の一部が残る状態となった場合には、この残ったデータ部分の一部をオフセット領域として、ストリームデータの実体の先頭に付加する。そして、このオフセット領域+ストリームデータの実体が、新規なストリームデータのファイルとして管理されるようにする。
これにより、実際にディスク上で消去されたとされるデータサイズと、ユーザ側からディスク上で消去したように見えるデータサイズの間に生じる差分が解消される。
【0152】
さらに本発明では、トラック消去情報(Erasse Flag)を規定して、このトラック消去情報の状態を見ることで、1つのストリームデータのファイルにおいて、トラック消去編集が行われたデータ部分があるか否か判定し、このデータ部分の消去が行えるようにしている。これにより、例えばストリームデータのファイルの一部であっても、不要とされるデータ部分を適切にディスク上から消去して、ディスクの空き容量を効率的に得ていくことができる。
【0153】
さらには、トラック管理情報によりトラック単位でストリームデータを管理するための最小データ単位(コンテンツのデータ管理単位)の範囲内において、暗号ブロックをチェーン化する範囲が収まるようにして暗号化処理を実行するように構成される。これにより、暗号化されたストリームデータのファイルをトラック分割したデータ部分を消去するときにも、例えばIVなどの暗号化に必要となる情報を保存、待避させておく必要が無くなって、ファイルシステム書き換えのための処理等の負担を軽減し、ディスク容量の節約を図ることができる。
【0154】
このようにして、本発明としては、先ず、ファイルシステムによるファイル管理下で、データファイルによりトラック管理を行うという構成を採ることで処理負担の軽減効果などを得ており、さらにこのような構成を採る場合において、記録媒体に記録されるデータについて、より効率的な管理が行われるようにされるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の記録再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態のディスクのフォーマットの説明図である。
【図3】実施の形態のディスクのエリア構造の説明図である。
【図4】実施の形態のディスクの管理構造の説明図である。
【図5】実施の形態の記録再生装置のストレージ部のブロック図である。
【図6】実施の形態におけるディスク上でのファイル構成例を概念的に示す説明図である。
【図7】実施の形態のAV Track Index Fileの構造例を示す説明図である。
【図8】AV Stream File及びAV Header Fileの構造例を示す説明図である。
【図9】AV Track Index File及びAV Header Fileと、AV Stream Fileとの関係を示す説明図である。
【図10】トラック再生のための処理動作を示すフローチャートである。
【図11】トラック分割編集に対応するAV Track Index File及びAV Header Fileによるトラック管理例を示す説明図である。
【図12】トラック消去編集に対応するAV Track Index File及びAV Header Fileによるトラック管理例を示す説明図である。
【図13】AV Stream Fileに対する、コンテンツのデータ管理単位、及びファイルシステムのデータ管理単位の関係例を示す説明図である。
【図14】トラック分割されたAV Stream Fileに対する、コンテンツのデータ管理単位、及びファイルシステムのデータ管理単位の関係例を示す説明図である。
【図15】ディスク消去時におけるES Offsetの設定例を示す説明図である。
【図16】ディスク上消去開始のための処理動作を示すフローチャートである。
【図17】ディスク上消去のための処理動作を示すフローチャートである。
【図18】AV Stream Fileにおいてトラック消去された領域の再生時間幅を説明するための説明図である。
【図19】図17に示す処理において作成されるリストのデータの構造例を示す説明図である。
【図20】AV Stream Fileに対する、コンテンツのデータ管理単位、ファイルシステムのデータ管理単位、及びブロック暗号化単位の関係を示す説明図である。
【図21】暗号化されたAV Stream Fileを分割して形成したトラックをトラック消去した場合において、IVがトラック消去の対象データ部分となる事例を示す説明図である。
【図22】AV Stream Fileに対する、コンテンツのデータ管理単位、ファイルシステムのデータ管理単位、ブロック暗号化単位、暗号チェーン化単位の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 記録再生装置、2 ストレージ部、3 キャッシュメモリ、4 USBインターフェース、5 入出力処理部、5a 暗号処理部、6 表示部、7 操作部、8 システムコントローラ、9 ROM、10 RAM、11 キャッシュ管理メモリ、12 NV−RAM、100 パーソナルコンピュータ/ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムに基づくファイル単位で管理する第1のデータ管理手順と、
上記ファイル単位のストリームデータの範囲内におけるデータ部分をトラックとし、上記トラックごとに対応する情報であって、上記ファイル単位のストリームデータとの対応を示す情報要素と、対応する上記ファイル単位のストリームデータにおけるそのトラックのデータ位置を示す情報要素とを有して形成されるトラック管理情報を含むトラック管理用データファイルに基づいて、トラック単位での管理を行う第2のデータ管理手順とを実行するものとされ、
上記ファイル単位のストリームデータを分割して複数トラックを形成するトラック分割、又はトラックを消去するトラック消去を行う場合には、上記第2のデータ管理手順が、上記トラック分割又はトラック消去の態様に応じて、上記トラック管理用データファイルにおけるトラック管理情報の内容について更新処理を実行するようにされている、
ことを特徴とするデータ編集方法。
【請求項2】
上記第1のデータ管理手順は、
1ファイルとしてのストリームデータについて、先頭にオフセット領域を設け、このオフセット領域に続けて、ストリームデータの実体を配置するようにして管理可能とされていると共に、
上記ストリームデータにおけるトラック単位のデータ部分を、上記ファイルシステムの書き換えにより上記記録媒体上から消去する、上記媒体上消去を行う場合において、上記媒体上消去の対象となったトラック単位のデータ部分における終端位置を含む、ファイルシステムのデータ管理単位分のデータ部分に、上記媒体上消去の対象となったトラック単位のデータ部分のさらに一部データが残る状態となった場合には、この残った上記一部データを、上記オフセット領域として管理するようにされる、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ編集方法。
【請求項3】
上記第1のデータ管理手順は、1ファイルとしてのストリームデータを形成するトラックとしてのデータ部分の少なくとも何れか1つについて、上記トラック消去による消去が行われているか否かを示すトラック消去情報を生成して保持すると共に、
上記トラック消去情報を参照することにより、トラック消去可能なデータ部分を有するストリームデータを判定する判定手順と、
上記ストリームデータ判定手順の判定結果に基づいて、消去すべきトラックとしてのデータ部分を決定し、上記第1のデータ管理手順により、この決定されたトラックとしてのデータ部分がトラック消去されるように制御する制御手順とを実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ編集方法。
【請求項4】
少なくとも、上記記録媒体に記録すべきデータについて、暗号ブロックをチェーン化して暗号化を施す暗号化処理手順をさらに実行するものとされ、
上記暗号化処理手順は、
上記トラック管理情報によりトラック単位で上記ストリームデータを管理するための最小データ単位の範囲内において、上記暗号ブロックをチェーン化する範囲が収まるようにして暗号化処理を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ編集方法。
【請求項5】
所定の記録媒体に記録されるストリームデータを、ファイルシステムに基づくファイル単位で管理する第1のデータ管理手段と、
上記ファイル単位のストリームデータの範囲内におけるデータ部分をトラックとし、上記トラックごとに対応する情報であって、上記ファイル単位のストリームデータとの対応を示す情報要素と、対応する上記ファイル単位のストリームデータにおけるそのトラックのデータ位置を示す情報要素とを有して形成されるトラック管理情報を含むトラック管理用データファイルに基づいて、トラック単位での管理を行う第2のデータ管理手段とを備え、
上記ファイル単位のストリームデータを分割して複数トラックを形成するトラック分割、又はトラックを消去するトラック消去を行う場合には、上記第2のデータ管理手段が、上記トラック分割又はトラック消去の態様に応じて、上記トラック管理用データファイルにおけるトラック管理情報の内容について更新処理を実行するようにされている、
ことを特徴とするデータ編集装置。
【請求項6】
上記第1のデータ管理手段は、
1ファイルとしてのストリームデータについて、先頭にオフセット領域を設け、このオフセット領域に続けて、ストリームデータの実体を配置するようにして管理可能とされていると共に、
上記ストリームデータにおけるトラック単位のデータ部分を、上記ファイルシステムの書き換えにより上記記録媒体上から消去する、上記媒体上消去を行う場合において、上記媒体上消去の対象となったトラック単位のデータ部分における終端位置を含む、ファイルシステムのデータ管理単位分のデータ部分に、上記媒体上消去の対象となったトラック単位のデータ部分のさらに一部データが残る状態となった場合には、この残った上記一部データを、上記オフセット領域として管理するようにされる、
ことを特徴とする請求項5に記載のデータ編集装置。
【請求項7】
上記第1のデータ管理手段は、1ファイルとしてのストリームデータを形成するトラックとしてのデータ部分の少なくとも何れか1つについて、上記トラック消去による消去が行われているか否かを示すトラック消去情報を生成して保持すると共に、
上記トラック消去情報を参照することにより、トラック消去可能なデータ部分を有するストリームデータを判定する判定手段と、
上記ストリームデータ判定手段の判定結果に基づいて、消去すべきトラックとしてのデータ部分を決定し、上記第1のデータ管理手段により、この決定されたトラックとしてのデータ部分がトラック消去されるように制御する制御手段とを備える、
ことを特徴とする請求項5に記載のデータ編集装置。
【請求項8】
少なくとも、上記記録媒体に記録すべきデータについて、暗号ブロックをチェーン化して暗号化を施す暗号化処理手段をさらに備えるものとされ、
上記暗号化処理手段は、
上記トラック管理情報によりトラック単位で上記ストリームデータを管理するための最小データ単位の範囲内において、上記暗号ブロックをチェーン化する範囲が収まるようにして暗号化処理を実行するように構成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のデータ編集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2004−192685(P2004−192685A)
【公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−357159(P2002−357159)
【出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】