説明

データ蓄積型転送方法及びそのシステム並びに装置

【目的】 IP網を介するメディア通信でも高い通信品質を維持可能なことを課題とする。
【構成】 複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送方法であって、話者端末10Aが話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置40にファイル転送し、データ蓄積型転送装置40が該転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末10Bに通知し、受話端末10Bが該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置40から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ蓄積型転送方法及びそのシステム並びに装置に関し、更に詳しくは、複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送方法及びそのシステム並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来技術を説明する図で、VoIP(Voice over Internet Protocol)機能を備えるIP電話端末70A〜70DがIP網200を介して全二重通信方式により接続する場合を示している。図において、ユーザAがユーザB宛に発呼すると、該呼はSIP(Session Initiation Protocol)サーバ80によってユーザBに着信され、これにユーザBが応答すると、両者は通話状態になる。その後、端末70AではユーザAのサンプリング音声データをフレーミング(パケット化)すると共に、生成した各音声パケットA1〜AnをRTP(Real-time Transport Protocol)によりユーザBに実質リアルタイムにストリーミング(streaming)伝送する。ユーザBからユーザAへの音声データについても同様である。
【0003】
更に、ユーザCがユーザDに発呼して後、両者が通話状態になると、IP網200の一部では、図示の如く、音声パケットA1〜Anと音声パケットC1〜Cmとが多重伝送されることとなり、各パケットの遅延や揺らぎが問題となる。
【0004】
RTPは音声や映像等のメディアデータをストリーミング(streaming)伝送するUDP(User Datagram Protocol) タイプの伝送プロトコルであり、基本的には、RTPヘッダのシーケンス番号とタイムスタンプ情報とを利用し、パケット送出タイミングを受信側でも復元できる様に制御して、音声の品質維持を図っている。
【0005】
この点に関して、例えば、従来は、クライアント装置とサーバ装置の一方から他方に向けて送信されるストリーミングパケットがその送信間隔と等しい間隔で前記クライアント装置又はサーバ装置に受信されるように、前記ストリーミングパケットを一時的にバッファリングして再送信するデータ中継装置をけたデータ伝送システムが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−77251(要約,図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、RTPによるストリーミング伝送では、ネットワークのトラヒック状況(ルータの過負荷,回線の輻輳等)によって発生するパケットの遅延や揺らぎが音声・画像の品質劣化に直結するため、回線が輻輳してくると、従来技術では十分な解決は得られない。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とする所は、IP網を介するメディア通信でも高い通信品質を維持可能なデータ蓄積型転送方法及びそのシステム並びに装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(1)のデータ蓄積型転送方法は、複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送方法であって、話者端末10Aが話者のメディアデ
ータをファイル化してデータ蓄積型転送装置40にファイル転送するステップと、データ蓄積型転送装置40が前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末10Bに通知するステップと、前記受話端末10Bが該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置40から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生するステップとを備えるものである。
【0009】
本発明(1)においては、話者Aのメディア(音声,画像等)データをファイルとして転送する構成により、データファイルの転送遅延や揺らぎは問題とはならない。また、話者Aからのメディアファイル(1又は2以上のメディアパケット)を一旦データ蓄積型転送装置40に蓄積する構成により、話者の連続した一連のメディアデータを一塊のメディアファイルとして蓄積できる。また、データ蓄積型転送装置40からデータ蓄積の旨の通知を受けた受話端末10Bが、該端末10Bの主導で前記一塊りの蓄積データを取得し、再生する構成により、ファイル全体としての受話に多少の遅れがあったとしても、各一塊りの通話品質を容易に維持できると共に、受話端末10Bの回線状況(輻輳等)によらず、蓄積データを確実に取得・再生できる。
【0010】
また、一般に半二重通信では話者Aが発話中は、受話者Bは発話できないが、本発明(1)によれば、話者Aの発話中でも受話者Bの発話データをデータ蓄積型転送装置40に蓄積できる構成により、実質複数のユーザが同時に発話可能となる。また、3以上のユーザ間で呼(会議等)を接続することも可能であり、この場合は1又は2以上のユーザの同時発話後、これらの音声を前記話者以外の全ての参加ユーザが効率よく受話できる。
【0011】
また本発明(2)のデータ蓄積型転送システムは、複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムであって、話者端末10Aは、話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送し、データ蓄積型転送装置40は、前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末10Bに通知し、前記受話端末10Bは、該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置40から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生するものである。
【0012】
また本発明(3)のデータ蓄積型転送装置は、複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記データ蓄積型転送装置であって、自装置を介する端末間の呼をセッションイニシエーションプロトコル(SIP)により接続する信号制御部30と、端末とデータ蓄積型転送装置間でやり取りするメディアデータをファイル転送プロトコル(FTP)によりファイル転送するメディア制御部40とを備えるものである。
【0013】
FTP(File Transfer Protocol)は、インターネット等のTCP/IPネットワークにおいてファイル転送に使用されるプロトコルであり、ファイルの転送を制御するコントロールコネクションと、ファイル内容を転送するデータコネクションとを分離することで、大容量データの転送制御(途中キャンセル等)をスムーズに行える。
【0014】
本発明(3)では、話者のメディアデータをFTPによりファイル転送することで、既存のインフラ(IP網)を効率よく利用できる。また、ファイル蓄積の通知を受けた宛先ユーザがメディア制御部40から当該蓄積ファイルを読み出す構成により、この様な端末側主導のデータ取得方法は、既存のWeb上におけるHTML(HyperText Markup Language)ファイルの取得方法とも似ており、既存のインフラ(IP網)におけるネットワークアクセスにも良くマッチする。
【0015】
本発明(4)では、上記本発明(3)において、前記信号制御部30とメディア制御部
40とがそれぞれ独立したサーバ装置としてIP網100を介して相互に接続しているものである。従って、本発明を既存のIP網上で容易に実現できる。
【0016】
本発明(5)の端末装置は、複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記端末装置であって、話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送する送信制御部と、データ蓄積型転送装置から自端末宛のファイル蓄積の通知を受けたことにより該転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生する受信制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
以上述べた如く本発明によれば、利用者が多く、ネットワークトラヒックが大幅に変動するようなIP網であっても、他の通信による影響を受けることなく、回線交換網同様のメディア伝送品質を維持可能となり、半二重通信サービスの普及・拡大に寄与するところが極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。図1は実施の形態によるデータ蓄積伝送システムの構成を示す図で、本発明の半二重通信方式による携帯端末への適用例を示している。図において、100は例えば携帯のインフラをIP化したIP網、10A〜10Cは話者A〜Cのメディア(音声、映像等)データをファイル(1又は2以上のデータブロック)化してメディア制御部40にFTP(File Transport Protocol)によりファイル転送すると共に、信号制御部30(又はメディア制御部40)から自端末宛のファイル蓄積の旨の通知を受けたことによりメディア制御部40から当該蓄積ファイルをFTPにより取得してメディア再生する携帯端末である。
【0019】
また、30は自装置を介する複数端末10間の呼をSIPにより接続すると共に、各端末10との間でメディアファイルの転送完了や蓄積完了に係る通知信号のやり取りを行う信号制御部、31は信号制御部30の主制御を行う主制御部、32はIP網100に接続する通信制御部(CIF)である。なお、信号制御部30を介する複数端末10間の呼は、従来のIP電話や多地点会議システムにおける呼の接続と同様の方法で行える。
【0020】
更に、40は話者端末10からFTPによりファイル転送されたメディアファイルを一時的に蓄積すると共に、宛先端末から要求により蓄積ファイルを読み出すメディア制御部、41はメディア制御部40の主制御を行う主制御部、42はメディアデータのデータ蓄積部、43はIP網100に接続する通信制御部(CIF)である。
【0021】
なお、信号制御部30とメディア制御部40とは、図示の如く、それぞれ独立したサーバ装置としてIP網100に接続しても良いが、他にも、信号制御部30とメディア制御部40とを単体の筐体に実装し、これを単一のデータ蓄積型転送サーバとして実現しても良い。
【0022】
図2は実施の形態による携帯端末10のブロック図で、図において、11はアンテナ、12は送受分波スイッチ、13はTDMA(又はCDMA)方式等による受信部、14は同方式による送信部、15は周波数シンセサイザ、16は同期制御部、17は音声ファイルを一時的に蓄えるバッファ(BUF)、18は音声ファイルとPCMデータ間での符号変換を行うコーデック(CODEC)、19はPCMデータと音声信号間の変換を行うベースバンド処理部、20はスピーカ(SPK)、21はマイク(MIC)、22は移動局装置の主制御・処理(コンソール制御,呼処理等)を行うCPU、23はCPU22が使
用する主メモリ(MEM)、24はユーザが使用するコンソール(CSL)、25は液晶等による表示部(DSP)、26はダイヤルキーやファンクションキー等を含むキーボード(KBD)、27は半二重通信における発話モードの制御を行うトークボタン(TB)、28はマイク21からの入力音声レベルが所定以下(実質無音状態)であることを検出する無音検出部である。
【0023】
ユーザがトークボタン27をOFFにした(離した)状態では、ユーザによる受話(聴取)が可能になると共に、メディア制御部40(基地局)からのパケット信号(音声ファイルデータ)は受信部13、同期制御部16、バッファ17、コーデック18、ベースバンド処理部19を介して音声信号に再生され、スピーカ20に出力される。また、ユーザがトークボタン27をONにした(押した)状態では、ユーザによる発話が可能になると共に、マイク21からの音声信号はベースバンド処理部19、コーデック18、バッファ17、同期制御部16、送信部14を介してメディア制御部40(基地局)に送られる。一方、SIPの呼処理等に関する制御信号(CD)に付いてはCPU22により処理される。
【0024】
図3は実施の形態による携帯端末の状態遷移を説明する図で、CPU22によって管理される。図3(A)は送信側の状態(ST)と、該状態を遷移させるイベント(EV)との関係をシーケンシャルに示している。図において、端末10が空き状態で、そのトークボタン27がONにされると、話中状態に遷移し、発話可能となる。また、この話中状態で、トークボタンがOFFにされると、送信中となり、話者の音声がファイルデータに変換されて、メディア制御部40にパケット(streaming)伝送される。また、この送信中に、ファイル送信を完了すると、空き状態となる。
【0025】
また、上記話中に所定時間以上の無音状態が検出されると、話中&送信中に遷移する。また、この話中&送信中にトークボタン27がOFFにされると、送信中となり、更に該送信中に送信完了すると、空き状態に戻る。また、前記話中&送信中にファイル送信が完了すると、*話中となり、更にこの*話中にトークボタンがOFFにされると、送信中に遷移する。但し、前記*話中こ追加の発話があれば、その音声ファイルが送信されるが、追加の発話が無い場合は、空き状態に戻る。
【0026】
図3(B)は受信側の状態(ST)とイベント(EV)との関係を示している。端末が空き状態で、信号制御部30(メディア制御部40)からファイル収集依頼通知が受信されると、受信中に遷移し、当該ファイルを受信して蓄積する。また、このファイル受信中に、受信完了になると、空き状態に戻る。
【0027】
図4は実施の形態による半二重通話のシーケンス図で、ユーザA,B間でプッシュアンドトークによるトランシーバ型通信を行う場合の基本的な動作を示している。図において、最初はユーザA、Bの何れも空き状態である。この状態で、ユーザAが端末10Aのトークボタン27をONにすると、話中状態となり、ユーザAは発話可能となる。ユーザAが発話すると、その音声信号はサンプリング及びデジタルデータに変換され、音声ファイルとしてバッファ17に蓄積される。ユーザAが発話を終了し、トークボタン27をOFFにすると、送信中になると共に、バッファ17に蓄積された音声ファイルをFTPによりメディア制御部40に送信する。
【0028】
この場合に、FTPは、ファイル転送を制御するコントロールコネクションと、ファイル内容を転送するデータコネクションとに分離されているが、一連の音声パケットの送信の終わり(ファイル送信完了通知)については、これをコントロールコネクションを介してメディア制御部40に通知しても良いし、又は音声パケットに付与されたヘッダ情報で通知しても良い。或いは、図の点線で示す如く、別途SIPでファイル送信完了通知を信
号制御部30に通知し、更に、該信号制御部30がその旨をメディア制御部40に通知しても良い。この点は、以下に述べる他の通話シーケンスの説明においても同様である。
【0029】
上記何れにしても、メディア制御部40は、受信ファイルをデータ蓄積部42に蓄積すると共に、信号制御部30に当該蓄積ファイルの収集依頼を通知し、これを受けた信号制御部30は宛先ユーザBにファイル収集依頼通知を送る。
【0030】
ユーザBはこのファイル収集依頼通知を受信したことにより、速やかに受信中となり、メディア制御部40からユーザAの蓄積音声ファイルを読み出し、自端末10Bのバッファ17に蓄積する。そして、蓄積ファイルを受信すると、受信完了し、空き状態に遷移する。一方、バッファ17に蓄積された音声ファイルは音声信号に変換され、スピーカ20から出力される。
【0031】
図5は実施の形態による話中無音検出時のシーケンス図で、ユーザAの発話中に所定時間以上の無音状態が検出された場合の通話処理を示している。図において、ユーザAが端末10Aのトークボタン27をONして後、発話すると、その音声信号は音声ファイルに変換され、端末10Aのバッファ17に蓄積される。トークボタン27をONにした状態でユーザAの発話が止まり、更に所定時間(例えば2〜3秒)が経過すると、無音検出部28により話中無音状態が検出され、トークボタン27がONのままでも送信中状態となると共に、バッファ17に蓄積された音声ファイルをFTPによりメディア制御部40に送信する。
【0032】
メディア制御部40は、端末10Aからの受信ファイルをデータ蓄積部42に蓄積すると共に、信号制御部30を介して宛先ユーザBに当該蓄積ファイルの収集依頼通知を送る。これを受信したユーザ端末10Bでは、受信中になると共に、メディア制御部40からユーザAの蓄積音声ファイルを読み出し、端末10Bのバッファ17に蓄積する。そして、該受信ファイルを再生し、空き状態に遷移する。
【0033】
一方、ユーザ端末10Aでは、上記ファイル送信後もトークボタン27はONにされており、もしこの状態で、ユーザAが再び発話すると、該音声は再びファイル蓄積される。但し、図示の例ではユーザAのその後の発話は無く、トークボタ27のみOFFにされており、この場合は、その後のファイル蓄積が無い為、ファイル送信中とはならずに、空き状態に遷移する。
【0034】
図6は実施の形態による2者同時発話時のシーケンス図で、ユーザA、Bが半二重通信路を介して同時に発話及び受話可能な場合を示している。図6のユーザ端末10A,10Bについては送信側及び受信側の状態をそれぞれ示している。但し、回線は半二重通信方式であるため、送信中と受信中の状態が重なることはない。
【0035】
図において、ユーザAが端末10Aのトークボタン27をオンすると、ユーザ端末10Aの送信側が話中状態に遷移する。一方、この区間にユーザBも端末10Bのトークボタン27をオンにしたことにより、話中状態に遷移する。こうして、ユーザA,Bは実質同時に発話すると共に、この例では、ユーザBが先に発話終了し、トークボタン27をオフにしたことにより、端末10Bは送信中状態に遷移し、メディア制御部40に音声ファイルをファイル転送する。
【0036】
これを受けたメディア制御部40は、ユーザBからの音声ファイルを蓄積すると共に、そのファイル送信完了を検出し、その宛先ユーザ端末10Aに蓄積ファイルの収集依頼通知を送信する。これを受けたユーザ端末10Aは、未だ話中状態であるが、受信側のプロセスは受信中状態に遷移可能であり、これによりメディア制御部40から端末10A宛の
蓄積ファイルを読み出し、バッファ17に蓄積する。そして、蓄積完了するとその受話音声を再生する。
【0037】
一方、その後、ユーザAも発話完了したことにより、端末10Aのトークボタン27をオフにすると、端末10Aは送信中状態に遷移してメディア制御部40に音声ファイルをファイル転送する。これを受けたメディア制御部40は、ユーザAからの音声ファイルを蓄積すると共に、そのファイル送信完了を検出すると、その宛先ユーザ端末10Bに対して蓄積ファイルの収集依頼通知を送信する。
【0038】
これを受けたユーザ端末10Bは、受信中状態に遷移すると共に、メディア制御部40から端末10B宛の蓄積ファイルを読み出し、バッファ17に蓄積する。そして、蓄積完了するとその受話音声を再生する。受話音声の再生はユーザA,Bにつき実質同時に行うことが可能であり、かくして、ユーザA,Bは半二重回線を介して実質同時に発話及び受話(全二重相当の通信)が可能となった。
【0039】
なお、端末中で送信中と受信中とが重なって生じるときは、早い方の処理を優先とし、その完了後に遅い方の処理を実行する。また、送信中と受信中とが同時に発生する時は、送信中の処理を優先して実行し、その完了後に受信中の処理を実行する。
【0040】
図7は実施の形態による多者通話時のシーケンス図で、ユーザA,B間でセッションが確立され、通話中状態であるときに、新たにユーザCが通話に参加する場合を示している。図において、予めユーザA,B間の呼が接続され、かつユーザAの話中に、新たにユーザCとユーザA又はBとの間で呼が接続される。信号制御部30は、ユーザA又はB等による呼接続範囲の申請や会議開催等の登録申請により予め定められた範囲内で第3のユーザの通話への参加/退出を許容するものとする。これにより、ユーザCは、ユーザA,Bの通話状態によらず、信号制御部30に対して当該呼へのセッション確立を要求できる。
【0041】
この場合のメディア制御部40は、信号制御部30よりユーザCが通話に加わった通知を受けると共に、その後は、ユーザA(又はB)からの音声ファイルを蓄積したときに、ユーザB(又はA)のみならず、ユーザCに対しても当該蓄積ファイルの収集依頼を通知する。この通知を受けたユーザB,Cは、それぞれにメディア制御部40から音声ファイルの収集を行い、収集後に再生する。ユーザCは任意のタイミングにセッションを開放でき、信号制御部30はセッション開放後のユーザCに対してはファイル蓄積の通知を行わない。
【0042】
なお、上記ユーザCがユーザA,B間の通話を聴取する場合を述べたが、これに限らない。ユーザCも通話(発話)に参加しても良い。この場合のユーザCからの音声ファイルはユーザA及びBによって取得される。
【0043】
図8は実施の形態による半二重通話の具体例を示すシーケンズ図で、ユーザA,Bと信号制御部30との間はSIPに従って通信し、ユーザA,Bとメディア制御部40との間はFTPに従って通信する場合を具体的に示している。この例の信号制御部30とメディア制御部40とは同一の筐体内に設けられており、これらの間の通信は内部I/Fを介して行われる。
【0044】
図9は他の実施の形態による半二重通信のシーケンス図で、発話端末Aからの音声ファイルを蓄積したメディア制御部40が、その宛先端末10Bに蓄積ファイルの取得要求を通知するのではなく、メディア制御部40の主導で蓄積ファイルを宛先端末10Bに自動的に転送する場合を示している。こうすれば、音声ファイルの転送遅延が改善され、リアルタイム性が向上する。
【0045】
なお、上記実施の形態は音声ファイルの転送を中心に述べたが、これに限らない。本発明は映像信号を含むマルチメディアファイルの転送に適用できることは言うまでも無い。また、メディアファイルの転送はFTP以外の同種の他のプロトクルで行っても良い。
【0046】
また、本発明は上記半二重通信による端末に適用して好適であるが、これに限らない。全二重通信による端末に本発明による半二重通話モードを併設しても良いし、或いは、各端末とデータ蓄積型転送装置との間を全二重通信方式により接続しても良い。この場合の話者は、発話と同時に相手端末からの蓄積ファイルを受信・再生できる。また、本発明は無線回線等で接続する携帯端末に限らず、メタリック回線や光ファイバ回線で接続した固定端末にも適用できる。
【0047】
また、上記本発明に好適なる複数の実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組合せの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【0048】
(付記1) 複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送方法であって、話者端末が話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送するステップと、データ蓄積型転送装置が前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末に通知するステップと、前記受話端末が該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生するステップとを備えることを特徴とするデータ蓄積型転送方法。
【0049】
(付記2) データ蓄積型転送装置は、自装置を介する端末間の呼をセッションイニシエーションプロトコル(SIP)により接続し、端末とデータ蓄積型転送装置間でやり取りするメディアデータをファイル転送プロトコル(FTP)により転送することを特徴とする付記1記載のデータ蓄積型転送方法。
【0050】
(付記3) 複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムであって、話者端末は、話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送し、データ蓄積型転送装置は、前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末に通知し、前記受話端末は、該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生することを特徴とするデータ蓄積型転送システム。
【0051】
(付記4) 複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記データ蓄積型転送装置であって、自装置を介する端末間の呼をセッションイニシエーションプロトコル(SIP)により接続する信号制御部と、端末とデータ蓄積型転送装置間でやり取りするメディアデータをファイル転送プロトコル(FTP)によりファイル転送するメディア制御部とを備えることを特徴とするデータ蓄積型転送装置。
【0052】
(付記5) 前記信号制御部とメディア制御部とがそれぞれ独立したサーバ装置としてIP網を介して相互に接続していることを特徴とする付記4記載のデータ蓄積型転送装置。
【0053】
(付記6) 複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記端末装置であって、話者のメデ
ィアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送する送信制御部と、データ蓄積型転送装置から自端末宛のファイル蓄積の通知を受けたことにより該転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生する受信制御部とを備えることを特徴とする端末装置。
【0054】
(付記7) 送信制御部は、話者が端末のトークボタンをON状態からOFFにしたことを検出したことにより、メディアデータをファイル転送することを特徴とする付記6記載の端末装置。
(付記8) 送信制御部は、話者が端末のトークボタンをON状態にしたまま所定時間以上無音であることを検出したことにより、メディアデータをファイル転送することを特徴とする付記6記載の端末装置。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態によるデータ蓄積伝送システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態による携帯端末のブロック図である。
【図3】実施の形態による携帯端末の状態遷移を説明する図である。
【図4】実施の形態による半二重通話のシーケンス図である。
【図5】実施の形態による話中無音検出時のシーケンス図である。
【図6】実施の形態による2者同時発話時のシーケンス図である。
【図7】実施の形態による多者通話時のシーケンス図である。
【図8】実施の形態による半二重通話の具体例を示すシーケンズ図である。
【図9】他の実施の形態による半二重通話のシーケンス図である。
【図10】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
10 携帯端末
30 信号制御部
31 主制御部
32 通信制御部(CIF)
40 メディア制御部
41 主制御部
42 データ蓄積部
43 通信制御部(CIF)
100 IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送方法であって、
話者端末が話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送するステップと、
データ蓄積型転送装置が前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末に通知するステップと、
前記受話端末が該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生するステップとを備えることを特徴とするデータ蓄積型転送方法。
【請求項2】
複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムであって、
話者端末は、話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送し、
データ蓄積型転送装置は、前記転送された受信ファイルを蓄積してその旨を予め自装置を介する呼を接続された受話端末に通知し、
前記受話端末は、該通知を受けたことによりデータ蓄積型転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生することを特徴とするデータ蓄積型転送システム。
【請求項3】
複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記データ蓄積型転送装置であって、
自装置を介する端末間の呼をセッションイニシエーションプロトコル(SIP)により接続する信号制御部と、
端末とデータ蓄積型転送装置間でやり取りするメディアデータをファイル転送プロトコル(FTP)によりファイル転送するメディア制御部とを備えることを特徴とするデータ蓄積型転送装置。
【請求項4】
前記信号制御部とメディア制御部とがそれぞれ独立したサーバ装置としてIP網を介して相互に接続していることを特徴とする請求項3記載のデータ蓄積型転送装置。
【請求項5】
複数の端末が半二重通信方式によりデータ蓄積型転送装置を介してメディアデータの通信を行うデータ蓄積型転送システムの前記端末装置であって、
話者のメディアデータをファイル化してデータ蓄積型転送装置にファイル転送する送信制御部と、
データ蓄積型転送装置から自端末宛のファイル蓄積の通知を受けたことにより該転送装置から当該蓄積ファイルを取得してメディア再生する受信制御部とを備えることを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−253864(P2006−253864A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64897(P2005−64897)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】