説明

データ送受信装置及び通信システム

【課題】通信効率の低下を招くことなく、低消費電力化を図ることができるようにする。
【解決手段】フレームが送信される際の処理遅延時間と、停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と、制御フレームから抽出された送信許可時刻とから、送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻を算出し、現在の時刻が起動時刻になると、送信MAC部17及び送信PONIF部18を停止状態から動作状態に移行させ、送信MAC部17及び送信PONIF部18からフレームが送信されると、送信MAC部17及び送信PONIF部18を動作状態から停止状態に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、加入者宅側に設置されるONU(Optical Network Unit)に適用されるデータ送受信装置と、そのデータ送受信装置を実装している通信システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、装置内部のブロック単位に、クロックの供給または電源の供給を停止することで、低消費電力化を行うデータ送受信装置が、以下の特許文献1に開示されている。
即ち、以下の特許文献1に開示されているデータ送受信装置では、待ち状態にある場合、低消費電力化を図るために、一部のブロックを除いてクロックの供給を停止し、フレームを受信すると、受信フレームを処理するブロックへのクロックの供給を開始する。また、送信データを入力すると、送信処理を行うブロックへのクロックの供給を開始する。
【0003】
なお、近年の集積回路の微細化によって、リーク電流による電力消費の割合が増大している。
リーク電流を抑えるためには、集積回路への電源供給を停止させる方法がよく用いられる。
ただし、クロックの供給を停止する場合と比べて、電源の供給を停止する場合の方が、一般的に、再起動に必要な時間が長くなる。
その理由は、例えば、電源の供給を停止すると、記憶素子に記録されている内容が消えてしまうため、記憶素子に記録されている内容を別の記憶素子に退避させて、再起動時に退避させた内容を復帰させるなどの処理が必要となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−160684号公報(段落番号[0008]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のデータ送受信装置は以上のように構成されているので、装置内部のブロック単位に、電源の供給を停止する場合、クロックの供給を停止する場合より、リーク電流を抑えることができる。しかし、該当ブロックの動作が必要となった時点で、停止していたブロックに電源の供給を開始して再起動するため、再起動に要する時間と処理に必要な遅延時間が転送遅延となり、通信効率が低下してしまう(1回の送信に対して応答を得るまでの待ち時間が増える)などの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、通信効率の低下を招くことなく、低消費電力化を図ることができるデータ送受信装置を得ることを目的とする。
【0007】
また、この発明は、上記のデータ送受信装置を適用することができる通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るデータ送受信装置は、フレーム送信手段からフレームが送信される際の処理遅延時間及びフレーム送信手段が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻とから、フレーム送信手段の起動時刻を算出する起動時刻算出手段を設け、起動停止手段が、現在の時刻が起動時刻算出手段により算出された起動時刻になると、フレーム送信手段を停止状態から動作状態に移行させ、フレーム送信手段からフレームが送信されると、フレーム送信手段を動作状態から停止状態に移行させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、フレーム送信手段からフレームが送信される際の処理遅延時間及びフレーム送信手段が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻とから、フレーム送信手段の起動時刻を算出する起動時刻算出手段を設け、起動停止手段が、現在の時刻が起動時刻算出手段により算出された起動時刻になると、フレーム送信手段を停止状態から動作状態に移行させ、フレーム送信手段からフレームが送信されると、フレーム送信手段を動作状態から停止状態に移行させるように構成したので、通信効率の低下を招くことなく、低消費電力化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるデータ送受信装置を実装している通信システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるデータ送受信装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるデータ送受信装置のスケジュール部19を示す構成図である。
【図4】OLT2とONU4間の通信プロトコルの一例を示す説明図である。
【図5】スケジュール部19の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】各時刻の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるデータ送受信装置を実装している通信システムを示す構成図である。
図1において、OLT(Optical Line Terminal)2は収容局側に設置されている通信装置であり、収容局側のネットワーク1と接続されている。
スプリッタ3はOLT2とONU(Optical Line Terminal)4間を接続する光ファイバ上に設置され、光ファイバ上を伝送される光信号の分岐処理や合流処理を行う装置である。
【0012】
ONU4はOLT2から送信された下りフレームを受信して、その下りフレームを端末5に転送し、端末5から送信された上りフレームを受信して、その上りフレームをOLT2に転送するデータ送受信装置である。
この実施の形態1では、データ送受信装置がONU4である例を説明するが、これは一例に過ぎず、データ送受信装置がONU4以外の装置であってもよい。
端末5は例えばPCやIP電話などの端末装置であり、1台のONU4に対して複数の端末5を接続することが可能である。
【0013】
図2はこの発明の実施の形態1によるONU4(データ送受信装置)を示す構成図である。
図2において、CPU11はONU4内の各ブロックの制御と管理を実施するブロックである。
受信PONIF部12はOLT2からスプリッタ3を介して送信された下りフレーム又は制御フレームを受信して、その下りフレーム又は制御フレームを復号する処理を実施する。
【0014】
受信MAC部13は受信PONIF部12により復号された受信フレーム(下りフレーム又は制御フレーム)を解析し、その受信フレームが制御フレームであれば、その制御フレームからリンク識別子であるLLID、上りフレームの送信許可時刻及び送信時間を抽出して、そのLLID、上りフレームの送信許可時刻及び送信時間をスケジュール部19に出力する処理を実施する。また、その受信フレームが下りフレームであり、OLT2に対して応答が必要な受信フレームであれば、応答通知を送信MAC部17及びスケジュール部19に出力し、端末5に転送する受信フレームであれば、その受信フレームをブリッジ部14に出力する処理を実施する。
なお、受信PONIF部12及び受信MAC部13から送信許可時刻受信手段が構成されている。
【0015】
ブリッジ部14は受信MAC部13から出力された下りフレームを受信UNI部15に出力する一方、送信UNI部16から出力された上りフレームを送信MAC部17に出力し、また、送信フレームである上りフレームの有無をスケジュール部19に出力する処理を実施する。
受信UNI部15はブリッジ部14から出力された下りフレームを端末5に転送する処理を実施する。
送信UNI部16は端末5から送信された上りフレームをブリッジ部14に出力する処理を実施する。
【0016】
送信MAC部17はブリッジ部14から出力された上りフレーム、または、受信MAC部13から応答通知を受けて作成した応答用の送信フレームを送信PONIF部18に出力する処理を実施する。
送信PONIF部18は送信MAC部17から出力された上りフレーム又は応答用の送信フレームをスプリッタ3を介してOLT2に送信する処理を実施する。
なお、送信MAC部17及び送信PONIF部18からフレーム送信手段が構成されている。
【0017】
スケジュール部19は送信MAC部17及び送信PONIF部18から上りフレーム又は応答用の送信フレームが送信される際の処理遅延時間、送信MAC部17及び送信PONIF部18が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間及び上りフレームの送信許可時刻などから、送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻(電源の供給を再開する時刻、または、クロックの供給を再開する時刻)や、上りフレーム等の送信チェック時刻を算出する処理を実施する。
また、スケジュール部19は現在の時刻が上りフレーム等の送信チェック時刻になると、OLT2に送信する上りフレーム又は応答用の送信フレームが存在するか否かをチェックし、OLT2に送信する上りフレーム又は応答用の送信フレームが存在する場合、現在の時刻が起動時刻になると、電源供給の再開指令を電源制御部20に出力する。あるいは、クロック供給の再開指令をクロック制御部21に出力するなどの処理を実施する。
なお、スケジュール部19は起動時刻算出手段を構成している。
【0018】
電源制御部20はスケジュール部19の指示の下、ONU4内の各ブロックに対する電源の供給を制御する処理を実施する。特に、現在の時刻が起動時刻(電源の供給を再開する時刻)になり、スケジュール部19から電源供給の再開指令を受けると、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源の供給を再開し、その後、現在の時刻が上りフレームの送信許可時刻から送信時間を経過して、スケジュール部19から電源供給の停止指令を受けると、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源の供給を停止する処理を実施する。
【0019】
クロック制御部21はスケジュール部19の指示の下、ONU4内の各ブロックに対するクロックの供給を制御する処理を実施する。特に、現在の時刻が起動時刻(クロックの供給を再開する時刻)になり、スケジュール部19からクロック供給の再開指令を受けると、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対するクロックの供給を再開し、その後、現在の時刻が上りフレームの送信許可時刻から送信時間を経過して、スケジュール部19からクロック供給の停止指令を受けると、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対するクロックの供給を停止する処理を実施する。
なお、電源制御部20及びクロック制御部21から起動停止手段が構成されている。
【0020】
図3はこの発明の実施の形態1によるONU4(データ送受信装置)のスケジュール部19を示す構成図である。
図3において、テーブル部30は受信MAC部13から出力されたLLID、上りフレームの送信許可時刻及び送信時間を格納するテーブルを備え、上りフレームの送信許可時刻が早い順にLLIDや送信時間を管理する処理を実施する。
【0021】
判定部31はテーブル部30により格納されている上りフレームの送信許可時刻、送信MAC部17及び送信PONIF部18から上りフレーム又は応答用の送信フレームが送信される際の処理遅延時間、送信MAC部17及び送信PONIF部18が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間などを考慮して、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源・クロックの供給を継続するか停止するかを判定する処理を実施する。
また、判定部31は送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源又はクロックの供給を停止する場合、上述した上りフレームの送信許可時刻、処理遅延時間及び再起動時間から、電源の供給を再開する起動時刻、あるいは、クロックの供給を再開する起動時刻を算出するとともに、上りフレーム又は応答用の送信フレームの送信チェック時刻を算出する処理を実施する。
【0022】
タイマー部32は判定部31により算出された起動時刻が設定され、現在の時刻が起動時刻になると、その旨を電源・クロック状態管理部33に通知する処理を実施する。
電源・クロック状態管理部33は送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源及びクロックの供給状態を管理し、例えば、タイマー部32から現在の時刻が起動時刻になった旨の通知を受けると、電源供給の再開指令を電源制御部20に出力する。あるいは、クロック供給の再開指令をクロック制御部21に出力する処理を実施する。
【0023】
図4はOLT2とONU4間の通信プロトコルの一例を示す説明図である。図4では、縦方向が時間軸であり、時間の経過を表している。
図5はスケジュール部19の処理内容を示すフローチャートである。
【0024】
次に動作について説明する。
最初に、OLT2とONU4間の通信プロトコルを説明する。
通信システムにおいて、新規のONU4をOLT2に登録する場合、新規のONU4とOLT2が通信を開始し、新規のONU4内の時刻をOLT2内の時刻に同期させる処理が行われる。時刻の同期処理は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0025】
新規のONU4とOLT2の時刻同期が完了すると、OLT2が上りフレームの送信許可時刻T1と送信時間L1をONU4に通知する(図4のステップST1)。
ONU4は、OLT2から上りフレームの送信許可時刻T1と送信時間L1の通知を受けると、その送信許可時刻T1から時刻T1+L1に至るまでの間に、送信要求フレーム量R1(次回、送信する上りフレームの容量R1)をOLT2に通知する(ステップST2)。
【0026】
OLT2は、ONU4から送信要求フレーム量R1の通知を受けると、その送信要求フレーム量R1に応じて、次回、上りフレームの送信を許可する送信許可時刻T2と送信時間L2をONU4に通知する(ステップST3)。
ONU4は、OLT2から上りフレームの送信許可時刻T2と送信時間L2の通知を受けると、送信許可時刻T2から時刻T2+L2に至るまでの間に、容量R1の上りフレームをOLT2に送信するとともに、送信要求フレーム量R2(次回、送信する上りフレームの容量R2)をOLT2に通知する(ステップST4)。
なお、OLT2から送信要求フレーム量R1の送信に見合うだけの送信時間L2が割り当てられず、送信が出来た上りフレームの容量がR1に満たない場合、未送信分のデータ量が、送信要求フレーム量R2に含まれていることがある。
【0027】
OLT2からONU4に下りフレームが送信される場合は、任意の時刻に下りフレームが送信される(ステップST5)。
なお、送信許可時刻Tと送信時間Lは、LLIDと呼ばれるリンク識別子単位に割り当てられ、1台のONU4で複数のLLIDを使用することも可能である。
【0028】
次に、ONU4の処理内容を説明する。
ONU4のスケジュール部19は、CPU11の指示の下、ONU4内の全てのブロックに対して電源及びクロックが供給されるように、電源制御部20及びクロック制御部21を制御するなどの初期動作を行う(図5のステップST11)。
なお、ONU4のCPU11は、OLT2とのリンクを確立するため、受信PONIF部12及び送信PONIF部18を介して、OLT2と通信を開始し、ONU4内の時刻をOLT2内の時刻に同期させる処理を行う。
【0029】
ONU4の受信PONIF部12は、OLT2からスプリッタ3を介して、LLID、送信許可時間T、送信時間Lを含む制御フレームが送信されてくると、その制御フレームを受信し、その制御フレームを復号して受信MAC部13に出力する。
受信MAC部13は、受信PONIF部12から復号された制御フレームを受けると、その制御フレームからLLID、上りフレームの送信許可時刻T及び送信時間Lを抽出して、そのLLID、上りフレームの送信許可時刻T及び送信時間Lをスケジュール部19に出力する。
【0030】
スケジュール部19のテーブル部30は、受信MAC部13からLLID、上りフレームの送信許可時刻T及び送信時間Lを受けると、そのLLID、上りフレームの送信許可時刻T及び送信時間Lを内部のテーブルに格納する。
このとき、テーブル部30は、上りフレームの送信許可時刻Tが早い順にLLIDや送信時間Lを管理する。
即ち、テーブル部30は、テーブル内のエントリ(LLID、上りフレームの送信許可時刻T、送信時間Lの組)を送信許可時刻Tが早い順にソートする。
【0031】
スケジュール部19の判定部31は、テーブル部30におけるテーブル内の先頭エントリ(最も早い送信許可時刻:以下、「Tg」と称する)が更新されると(ステップST12)、現在の時刻から最も早い送信許可時刻Tgまでの時間と、送信MAC部17及び送信PONIF部18が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間とを比較して、送信MAC部17及び送信PONIF部18を起動する時刻の候補(以下、「起動時刻候補」と称する)を算出する(ステップST13)。
以下、判定部31による起動時刻候補の算出処理を具体的に説明する。図6は各時刻の関係を示す説明図である。
【0032】
まず、判定部31は、送信PONIF部18がレーザOFFの状態からレーザONの状態に変化して最初の同期データを出力するタイミングに間に合うように、送信PONIF部18の処理遅延時間を考慮して、最も早い送信許可時刻Tgから送信MAC部17の次回の出力開始時刻Tmoを算出する。
Tmo=Tg+レーザON時間−送信PONIF部18の処理遅延時間
また、判定部31は、送信PONIF部18の次回の出力開始時刻Tpoを時刻Tgに設定する。
【0033】
次に、判定部31は、CPU11から再起動時間Tpwp(電源供給が停止されている送信PONIF部18に対して電源の供給を開始して、送信PONIF部18が再起動するまでに要する再起動時間)の設定を受けると、下記に示すように、送信PONIF部18の次回の出力開始時刻Tpoから再起動時間Tpwpを減算して、第1の起動時刻候補Tpcpを算出する。
Tpcp=Tpo−Tpwp
ただし、現在、送信PONIF部18に対して電源が供給されている場合には、電源が供給されている状態から、電源の供給が停止されるまでに要する時間が、再起動時間Tpwpに加算される。
【0034】
次に、判定部31は、CPU11から再起動時間Tpwc(クロック供給が停止されている送信PONIF部18に対してクロックの供給を開始して、送信PONIF部18が再起動するまでに要する再起動時間)の設定を受けると、下記に示すように、送信PONIF部18の次回の出力開始時刻Tpoから再起動時間Tpwcを減算して、第2の起動時刻候補Tpccを算出する。
Tpcc=Tpo−Tpwc
ただし、現在、送信PONIF部18に対してクロックが供給されている場合には、クロックが供給されている状態から、クロックの供給が停止されるまでに要する時間が、再起動時間Tpwcに加算される。
【0035】
次に、判定部31は、CPU11から再起動時間Tmwp(電源供給が停止されている送信MAC部17に対して電源の供給を開始して、送信MAC部17が再起動するまでに要する再起動時間)の設定を受けると、下記に示すように、送信MAC部17の次回の出力開始時刻Tmoから再起動時間Tmwpを減算して、第3の起動時刻候補Tmcpを算出する。
Tmcp=Tmo−Tmwp
ただし、現在、送信MAC部17に対して電源が供給されている場合には、電源が供給されている状態から、電源の供給が停止されるまでに要する時間が、再起動時間Tmwpに加算される。
【0036】
次に、判定部31は、CPU11から再起動時間Tmwc(クロック供給が停止されている送信MAC部17に対してクロックの供給を開始して、送信MAC部17が再起動するまでに要する再起動時間)の設定を受けると、下記に示すように、送信MAC部17の次回の出力開始時刻Tmoから再起動時間Tmwcを減算して、第4の起動時刻候補Tmccを算出する。
Tmcc=Tmo−Tmwc
ただし、現在、送信MAC部17に対してクロックが供給されている場合には、クロックが供給されている状態から、クロックの供給が停止されるまでに要する時間が、再起動時間Tmwcに加算される。
【0037】
判定部31は、上記のようにして、起動時刻候補Tpcp,Tpcc,Tmcp,Tmccを算出すると、現在の時刻に任意のマージンを加えた時刻Tと、起動時刻候補Tpcp,Tpcc,Tmcp,Tmccを比較することで、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源・クロックの供給を継続するか停止するかを判定する(ステップST14)。
また、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する起動時刻を設定する(ステップST15)。
以下、判定部31による判定処理と起動時刻の設定処理を具体的に説明する。
【0038】
判定部31は、時刻Tと第1の起動時刻候補Tpcpを比較し、下記の式(1)が成立する場合、送信PONIF部18に対する電源の供給を停止する旨の判定を行う。
T < Tpcp (1)
そして、判定部31は、送信PONIF部18の起動時刻Tpk(送信PONIF部18に対して、電源供給を再開する時刻)として、第1の起動時刻候補Tpcpを設定する。
Tpk = Tpcp
【0039】
判定部31は、上記の式(1)が成立しない場合、時刻Tと第2の起動時刻候補Tpccを比較し、下記の式(2)が成立すれば、送信PONIF部18に対する電源の供給は継続するが、クロックの供給を停止する旨の判定を行う。
T < Tpcc (2)
そして、判定部31は、送信PONIF部18の起動時刻Tpk(送信PONIF部18に対して、クロック供給を再開する時刻)として、第2の起動時刻候補Tpccを設定する。
Tpk = Tpcc
【0040】
判定部31は、上記の式(1)(2)が成立しない場合、送信PONIF部18に対する電源及びクロックの供給を継続する旨の判定を行う。
そして、判定部31は、送信PONIF部18の起動時刻Tpk(送信PONIF部18に対して、電源及びクロック供給を再開する時刻)として、第2の起動時刻候補Tpccを設定する。
なお、判定部31は、送信PONIF部18に対する電源又はクロックの供給を停止する場合、送信PONIF部18の起動時刻Tpk(送信PONIF部18に対して、電源又はクロック供給を再開する時刻)として、第2の起動時刻候補Tpccを設定する。
【0041】
次に、判定部31は、時刻Tと第3の起動時刻候補Tmcpを比較し、下記の式(3)が成立する場合、送信MAC部17に対する電源の供給を停止する旨の判定を行う。
T < Tmcp (3)
そして、判定部31は、送信MAC部17の起動時刻Tmk(送信MAC部17に対して、電源供給を再開する時刻)として、第3の起動時刻候補Tmcpを設定する。
Tmk = Tmcp
【0042】
判定部31は、上記の式(3)が成立しない場合、時刻Tと第4の起動時刻候補Tmccを比較し、下記の式(4)が成立すれば、送信MAC部17に対する電源の供給は継続するが、クロックの供給を停止する旨の判定を行う。
T < Tmcc (4)
そして、判定部31は、送信MAC部17の起動時刻Tmk(送信MAC部17に対して、クロック供給を再開する時刻)として、第4の起動時刻候補Tmccを設定する。
Tmk = Tmcc
【0043】
判定部31は、上記の式(3)(4)が成立しない場合、送信MAC部17に対する電源及びクロックの供給を継続する旨の判定を行う。
そして、判定部31は、送信MAC部17の起動時刻Tmk(送信MAC部17に対して、電源及びクロック供給を再開する時刻)として、第4の起動時刻候補Tmccを設定する。
なお、判定部31は、送信MAC部17に対する電源又はクロックの供給を停止する場合、送信MAC部17の起動時刻Tmk(送信MAC部17に対して、電源又はクロック供給を再開する時刻)として、第4の起動時刻候補Tmccを設定する。
【0044】
判定部31は、上記のようにして、送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻Tmk,Tpkを設定すると、上りフレーム又は応答用の送信フレームの送信チェック時刻Tckを算出する(ステップST16)。
即ち、判定部31は、下記の式(5)に示すように、送信MAC部17の起動時刻Tmkと送信PONIF部18の起動時刻Tpkのうち、早い方の時刻から判定時間M(送信チェックに要する時間であり、CPU11により設定される)を引いた時刻を送信チェック時刻Tckに決定する。
Tck = MIN(Tmk,Tpk)−M (5)
【0045】
タイマー部32は、判定部31により送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻Tmk,Tpkが設定されると、現在の時刻と起動時刻Tmk,Tpkを比較し、現在の時刻が起動時刻Tmk,Tpkになると、その旨を電源・クロック状態管理部33に通知する。
【0046】
電源・クロック状態管理部33は、判定部31が送信MAC部17に対する電源の供給を停止する旨の判定を行うと、送信MAC部17に対する電源供給の停止指令を電源制御部20に出力し、判定部31が送信PONIF部18に対する電源の供給を停止する旨の判定を行うと、送信PONIF部18に対する電源供給の停止指令を電源制御部20に出力する。
電源制御部20は、電源・クロック状態管理部33から送信MAC部17に対する電源供給の停止指令を受けると、送信MAC部17に対する電源供給を停止する。これにより、送信MAC部17は動作状態から停止状態に移行する。
また、電源制御部20は、電源・クロック状態管理部33から送信PONIF部18に対する電源供給の停止指令を受けると、送信PONIF部18に対する電源供給を停止する。これにより、送信PONIF部18は動作状態から停止状態に移行する。
【0047】
電源・クロック状態管理部33は、判定部31が送信MAC部17に対するクロックの供給を停止する旨の判定を行うと、送信MAC部17に対するクロック供給の停止指令をクロック制御部21に出力し、判定部31が送信PONIF部18に対するクロックの供給を停止する旨の判定を行うと、送信PONIF部18に対するクロック供給の停止指令をクロック制御部21に出力する。
クロック制御部21は、電源・クロック状態管理部33から送信MAC部17に対するクロック供給の停止指令を受けると、送信MAC部17に対するクロック供給を停止する。これにより、送信MAC部17は動作状態から停止状態に移行する。
また、クロック制御部21は、電源・クロック状態管理部33から送信PONIF部18に対するクロック供給の停止指令を受けると、送信PONIF部18に対するクロック供給を停止する。これにより、送信PONIF部18は動作状態から停止状態に移行する。
【0048】
電源・クロック状態管理部33は、現在の時刻と判定部31により算出された送信チェック時刻Tckを比較し(ステップST17)、現在の時刻が送信チェック時刻Tckになると、OLT2に送信する上りフレーム(テーブル内の先頭エントリのLLIDに対応する上りフレーム)がブリッジ部11内に存在するか否かをチェックする(ステップST18)。
電源・クロック状態管理部33は、OLT2に送信する上りフレームが存在しない場合、受信MAC部13から応答通知が出力されているか否かをチェックする(ステップST18)。
【0049】
電源・クロック状態管理部33は、OLT2に送信する上りフレームがブリッジ部11内に存在する場合、あるいは、受信MAC部13から応答通知が出力されている場合(ステップST19)、タイマー部32から現在の時刻が起動時刻Tmk,Tpkになった旨の通知を受けるまで待機する。
電源・クロック状態管理部33は、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源及びクロックの供給状態を管理しており、タイマー部32から起動時刻Tmkになった旨の通知を受けると、送信MAC部17に対して、現在、電源が供給されていなければ、送信MAC部17に対する電源供給の再開指令を電源制御部20に出力する。また、送信MAC部17に対して、現在、クロックが供給されていなければ、送信MAC部17に対するクロック供給の再開指令をクロック制御部21に出力する。
【0050】
電源制御部20は、電源・クロック状態管理部33から送信MAC部17に対する電源供給の再開指令を受けると、送信MAC部17に対する電源供給を再開する。
クロック制御部21は、電源・クロック状態管理部33から送信MAC部17に対するクロック供給の再開指令を受けると、送信MAC部17に対するクロック供給を再開する。
これにより、送信MAC部17が再起動して、停止状態から動作状態に移行する(ステップST20)。
【0051】
電源・クロック状態管理部33は、タイマー部32から起動時刻Tpkになった旨の通知を受けると、送信PONIF部18に対して、現在、電源が供給されていなければ、送信PONIF部18に対する電源供給の再開指令を電源制御部20に出力する。また、送信PONIF部18に対して、現在、クロックが供給されていなければ、送信PONIF部18に対するクロック供給の再開指令をクロック制御部21に出力する。
【0052】
電源制御部20は、電源・クロック状態管理部33から送信PONIF部18に対する電源供給の再開指令を受けると、送信PONIF部18に対する電源供給を再開する。
クロック制御部21は、電源・クロック状態管理部33から送信PONIF部18に対するクロック供給の再開指令を受けると、送信PONIF部18に対するクロック供給を再開する。
これにより、送信PONIF部18が再起動して、停止状態から動作状態に移行する(ステップST20)。
【0053】
送信MAC部17は、停止状態から動作状態に移行すると、ブリッジ部14から出力された上りフレーム、または、受信MAC部13から応答通知を受けて作成した応答用の送信フレームを送信PONIF部18に出力する。
送信PONIF部18は、停止状態から動作状態に移行し、送信MAC部17から出力された上りフレーム又は応答用の送信フレームを受けると、スプリッタ3を介して、上りフレーム又は応答用の送信フレームをOLT2に送信する。
【0054】
電源・クロック状態管理部33は、OLT2に送信する上りフレームがブリッジ部11内に存在せず、かつ、受信MAC部13から応答通知が出力されていない場合(ステップST19)、タイマー部32に設定されている起動時刻Tmk,Tpkをキャンセルして、現在の時刻が起動時刻Tmk,Tpkになっても、送信MAC部17及び送信PONIF部18の停止状態を維持するようにする(ステップST21)。
【0055】
テーブル部30は、送信PONIF部18から上りフレーム又は応答用の送信フレームがOLT2に送信されると、あるいは、電源・クロック状態管理部33によりタイマー部32に設定されている起動時刻Tmk,Tpkがキャンセルされると、テーブル内の先頭エントリを削除して、再度、テーブル内のエントリを送信許可時刻が早い順にソートする(ステップST22)。
以後、ステップST12の処理に戻り、ステップST12〜ST22の処理が繰り返し実施される。
【0056】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、送信MAC部17及び送信PONIF部18からフレームが送信される際の処理遅延時間と、送信MAC部17及び送信PONIF部18が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と、受信MAC部13により制御フレームから抽出された送信許可時刻とから、送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻Tmk,Tpkを算出し、現在の時刻が起動時刻Tmk,Tpkになると、送信MAC部17及び送信PONIF部18を停止状態から動作状態に移行させ、送信MAC部17及び送信PONIF部18からフレームが送信されると、送信MAC部17及び送信PONIF部18を動作状態から停止状態に移行させるように構成したので、通信効率の低下を招くことなく、低消費電力化を図ることができる効果を奏する。
即ち、ブロック毎に、再起動に要する時間と処理遅延時間とを考慮して、電源又はクロックの停止を判定して起動時刻Tmk,Tpkを設定しているため、再起動のために無駄な遅延が発生して転送遅延が増えることがなくなり、通信効率を下げずに低消費電力化を図ることができる効果を奏する。
【0057】
また、この実施の形態1によれば、現在の時刻が起動時刻Tmk,Tpkになっても、OLT2に送信する上りフレーム又は応答用の送信フレームが存在しない場合、送信MAC部17及び送信PONIF部18の停止状態を維持するように構成したので、無駄な電力消費が避けられ、低消費電力化を高めることができる効果を奏する。
【0058】
また、この実施の形態1によれば、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源の供給又はクロックの供給を制御することで、送信MAC部17及び送信PONIF部18の状態を切り換えるように構成したので、効率的に低消費電力化を図ることができる効果を奏する。
【0059】
さらに、この実施の形態1によれば、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対する電源の供給を再開する時刻、または、送信MAC部17及び送信PONIF部18に対するクロックの供給を再開する時刻を送信MAC部17及び送信PONIF部18の起動時刻Tmk,Tpkとして算出するように構成したので、送信MAC部17及び送信PONIF部18が動作している状態を短縮化して、低消費電力化を高めることができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 ネットワーク、2 OLT(収容局の通信装置)、3 スプリッタ、4 ONU(データ送受信装置)、5 端末、11 CPU、12 受信PONIF部(送信許可時刻受信手段)、13 受信MAC部(送信許可時刻受信手段)、14 ブリッジ部、15 受信UNI部、16 送信UNI部、17 送信MAC部(フレーム送信手段)、18 送信PONIF部(フレーム送信手段)、19 スケジュール部(起動時刻算出手段)、20 電源制御部(起動停止手段)、21 クロック制御部(起動停止手段)、30 テーブル部、31 判定部、32 タイマー部、33 電源・クロック状態管理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容局側から送信されたフレームの送信許可時刻を受信する送信許可時刻受信手段と、現在の時刻が上記送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻になると、フレームを上記収容局側に送信するフレーム送信手段と、上記フレーム送信手段からフレームが送信される際の処理遅延時間及び上記フレーム送信手段が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と上記送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻とから、上記フレーム送信手段の起動時刻を算出する起動時刻算出手段と、現在の時刻が上記起動時刻算出手段により算出された起動時刻になると、上記フレーム送信手段を停止状態から動作状態に移行させ、上記フレーム送信手段からフレームが送信されると、上記フレーム送信手段を動作状態から停止状態に移行させる起動停止手段とを備えたデータ送受信装置。
【請求項2】
起動停止手段は、現在の時刻が起動時刻算出手段により算出された起動時刻になっても、フレーム送信手段から送信されるフレームが存在しない場合、フレーム送信手段の停止状態を維持することを特徴とする請求項1記載のデータ送受信装置。
【請求項3】
起動停止手段は、フレーム送信手段に対する電源の供給又はクロックの供給を制御することで、上記フレーム送信手段の状態を切り換えることを特徴とする請求項1または請求項2記載のデータ送受信装置。
【請求項4】
起動時刻算出手段は、フレーム送信手段に対する電源の供給を再開する時刻、または、上記フレーム送信手段に対するクロックの供給を再開する時刻をフレーム送信手段の起動時刻として算出することを特徴とする請求項3記載のデータ送受信装置。
【請求項5】
収容局の通信装置から送信された下りフレームを受信して、上記下りフレームを端末装置に転送し、上記端末装置から送信された上りフレームを受信して、上記上りフレームを上記収容局の通信装置に転送するデータ送受信装置を実装している通信システムにおいて、上記データ送受信装置が、上記収容局の通信装置から送信された上りフレームの送信許可時刻を受信する送信許可時刻受信手段と、現在の時刻が上記送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻になると、上りフレームを上記収容局側に送信するフレーム送信手段と、上記フレーム送信手段から上りフレームが送信される際の処理遅延時間及び上記フレーム送信手段が停止状態から動作状態に至るまでに要する再起動時間と上記送信許可時刻受信手段により受信された送信許可時刻とから、上記フレーム送信手段の起動時刻を算出する起動時刻算出手段と、現在の時刻が上記起動時刻算出手段により算出された起動時刻になると、上記フレーム送信手段を停止状態から動作状態に移行させ、上記フレーム送信手段から上りフレームが送信されると、上記フレーム送信手段を動作状態から停止状態に移行させる起動停止手段とを備えていることを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−206402(P2010−206402A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48378(P2009−48378)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】