説明

データ通信システム、端末装置、通信制御方法

【課題】ICカードを利用したコンテンツデータ等の無線提供システムの実現及びセキュリティの確保。
【解決手段】無線通信機能を備えた携帯端末装置にICカードを装着できるようにする。コンテンツ提供端末は、無線通信機能と、ICカードに対する非接触無線通信機能を備える。そしてコンテンツ提供端末に載置することで、ICカードの非接触通信によって認証が行われる。認証OKであればコンテンツ提供端末の携帯端末装置に対して無線通信でコンテンツデータをダウンロードさせる。携帯端末装置ではICカード装着時には無線通信機能の通信可能距離が至近距離に制限される。コンテンツ提供端末の無線通信距離も至近距離に制限されている。これにより、他の通信装置への無線送受信データの漏洩を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の端末装置と、第2の端末装置と、非接触無線通信を行うICカードとから成るデータ通信システムに関する。また第1,第2の端末装置となる端末装置とその通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−31803号公報
【特許文献2】特開2000−11251号公報
【特許文献3】特開平11−252157号公報
【0003】
無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。ブルートゥース(Bluetooth)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11に加え、最近では、UWB(Ultra Wide Band:ウルトラワイドバンド)伝送方式などの高速かつ大容量で通信が行える無線通信システムも実用化されてきている。
例えば、最近ではブルートゥース無線技術を備えた携帯型音楽プレーヤーが実用化され、同じくブルートゥース無線技術を備えたヘッドホンと無線接続により音楽再生やプレーヤーの操作が行えるなど使用者の利便性が向上している。
【0004】
一方、非接触ICカードを利用して、近距離でのデータ通信を行うことが各種実用化されている。例えば、鉄道等の乗車券として非接触ICカードが実用化されている。具体的には、改札口に非接触ICカードのリーダ/ライタを設置し、改札口を通過するときに、非接触ICカードをリーダ/ライタに近接させて、非接触ICカードに記憶されたデータを読み出して認証処理などを行うことが行われている。また乗車券以外でも、電子マネー用のカード、社員証などの個人認証用のカードなどに、非接触ICカードが使われている。さらに近年では、非接触ICカード機能を内蔵した携帯電話器も実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、音楽や映像といったコンテンツを、従来のテープやコンパクトディスクといった有形の媒体による販売に加え、近年は、インターネット回線によるダウンロードといったような通信回線経由による無形のデジタルデータによる販売が普及してきた。
当然、無線通信システムを利用して、このようなデジタルコンテンツを流通されることも可能であり、実用化されている。
【0006】
ここで、例えばコンビニエンスストアなどの店舗に無線機能を備えたデジタルコンテンツの販売機を設置して、無線機能を備えた携帯型音楽記録再生機に無線を経由して音楽データを転送して販売するシステムを考える。
この場合に、無線機能を備えたデジタルコンテンツ販売機に、非接触ICカードのリーダ/ライタ機能を搭載し、また無線機能を備えた携帯型音楽記録再生機に非接触ICカード機能を内蔵していれば、使用者の個人認証や電子マネーによるデジタルコンテンツ購入代金の支払いを行うことも実現できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、無線機能を備えた携帯型音楽記録再生機に更に非接触ICカード機能を内蔵するとなると、非接触通信機能を実現する部品や制御回路の追加などコストの増大を招き、まだデザイン上の制約が発生する場合がある。
さらに、無線通信によるデジタルコンテンツの販売等を想定した場合、そのセキュリティ確保が要求される。例えば或るユーザが、上記のデジタルコンテンツ販売機を利用して自分の携帯型音楽記録再生機に音楽データを転送させる場合、その近辺にいる他人の携帯型音楽記録再生機に受信される可能性もある。これはコンテンツ販売者にとっては非常に不都合となる。
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みて、非接触ICカードを利用して各種コンテンツデータ等の供を行うシステムを想定したときに、端末装置(例えば一般ユーザが使用する音楽記録再生機等)において構成の複雑化を招かないようにし、またコンテンツデータ等の通信の際のセキュリティ確保を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデータ通信システムは、第1の端末装置と、第2の端末装置と、非接触無線通信を行うICカードを有する。上記第1の端末装置は、上記第2の端末装置との間で無線通信を行う無線通信部と、上記ICカードを装着するICカード装着部と、上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するカード装着検出部と、上記カード装着検出部により上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御する制御部とを備える。また上記第2の端末装置は、上記ICカードとの間で非接触無線通信を行うICカード通信部と、上記第1の端末装置との間で無線通信を行うとともに、その通信可能距離が、上記ICカード通信部の非接触無線通信の通信可能距離と略同等となるようにされている無線通信部と、上記ICカードを装着した上記第1の端末装置が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記第1の端末装置へのデータ提供の実行可否を判断し、実行可であれば、上記無線通信部に上記第1の端末装置へのデータ送信を実行させる制御部とを備える。
【0010】
上記第1の端末装置に相当する本発明の端末装置は、外部機器との間で無線通信を行う無線通信部と、非接触無線通信を行うICカードを装着するICカード装着部と、上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するカード装着検出部と、上記カード装着検出部により上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御する制御部とを備える。
また上記第2の端末装置に相当する本発明の端末装置は、非接触無線通信を行うICカードとの間で非接触無線通信を行うICカード通信部と、外部機器との間で無線通信を行うとともに、その通信可能距離が、上記ICカード通信部の非接触無線通信の通信可能距離と略同等となるようにされている無線通信部と、上記ICカードを装着した外部機器が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記外部機器へのデータ提供の実行可否を判断し、実行可であれば、上記無線通信部に上記外部機器へのデータ送信を実行させる制御部とを備える。
【0011】
上記第1の端末装置に相当する端末装置の通信制御方法は、上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するステップと、上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御するステップとを備える。
上記第2の端末装置に相当する端末装置の通信制御方法は、上記ICカードを装着した外部機器が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記外部機器へのデータ提供の実行可否を判断するステップと、実行可と判断されることに応じて、上記無線通信部による上記外部機器へのデータ送信を実行するステップとを備える。
【0012】
以上の本発明において、上記第1の端末装置は、例えば携帯用の音楽記録再生機などとして実現される端末装置であり、上記第2の端末装置は、例えば音楽コンテンツ等のデジタルコンテンツ販売機などとして実現される端末装置である。
この第1の端末装置と第2の端末装置は、それぞれの無線通信部により、コンテンツデータ等の通信が可能とされる。例えば第2の端末装置から第1の端末装置に音楽コンテンツを送信することができる。
また第2の端末装置は、ICカードとの間で非接触無線通信が可能とされる。
第1の端末装置はICカードを装着できる。
この場合、第1の端末装置にICカードを装着し、この第1の端末装置を第2の端末装置に近接されると、第2の端末装置とICカードの非接触無線通信により、認証や課金処理などが可能となる。例えば第2の端末装置から第1の端末装置に音楽コンテンツを提供する場合の条件等を確認できる。
そして第1の端末装置と第2の端末装置のそれぞれの無線通信部は、その通信可能距離がICカードによる非接触無線通信の距離と略同等に制限されていれば、通信データが他の装置に漏洩するということを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の端末装置は、非接触IC通信機能を内蔵せずに、別体のICカードを利用できる。従って、非接触通信機能を実現する部品や制御回路の追加などによる構成の複雑化やコストの増大を招かないまま、ICカードによる非接触無線通信の機能を利用した通信が可能となる。例えばICカードによる認証や課金処理を用いたデジタルコンテンツの購入などの通信が可能となる。
また、第1,第2の端末装置のそれぞれの無線通信部において、デジタルコンテンツ等の送受信を行う際に、それらの無線通信部の通信可能距離がICカードによる非接触無線通信の距離と略同等に制限されていることで、通信データが他の装置に漏洩するということを防止し、コンテンツデータ等の適切な販売や提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、本発明の第1の端末装置に相当する機器として携帯端末装置1を挙げる。この携帯端末装置1は、オーディオプレーヤ/レコーダとしての機器であるとする。また本発明の第2の端末装置に相当する機器としてコンテンツ提供端末20を挙げる。このコンテンツ提供端末は、例えば店頭等に設置されて音楽コンテンツ等を販売する装置であるとする。
【0015】
図1は携帯端末装置1と非接触無線通信機能付ICカード30(以下、ICカード30という)を模式的に示している。この携帯端末装置1とICカード30は例えば一般ユーザが所有する。図1(a)は携帯端末装置1を正面側から見た状態、図1(b)(c)は携帯端末装置1を背面側から見た状態である。
図1(a)のように、例えばオーディオプレーヤ/レコーダとしての携帯端末装置1は、ユーザインターフェースとして、各種操作のための操作キー等が配置された操作部4や、各種表示を行う表示部6が設けられている。
携帯端末装置1の筐体内には、ICカード30を装着できる装着部9が設けられており、図1(b)(c)に示すように、ICカード30を装着部9に装着できるようにされている。また携帯端末装置1内には、例えば機械的なスイッチ機構、或いはフォトカプラなどを利用した光学的な検出機構などとして、ICカード30の装着を検出できるカード検出部8が設けられ、図1(c)のようなICカード30の装着状態が検出できるようにしている。
【0016】
なお、例えば携帯端末装置1の筐体が樹脂で成形されている場合は不要であるが、筐体が金属など、ICカード30の非接触無線通信を阻害する材質の場合は、装着状態におけるICカード30のアンテナ部分を筐体で遮蔽しないようにする開口部を設けるようにするとよい。
【0017】
図2に携帯端末装置1の内部構成例を示す。なお図2(a)はICカード30が装着されていない状態、図2(b)はICカード30が装着されている状態を示している。
携帯端末装置1は、制御部2、無線部3、操作部4、音声出力部5、表示部6、記憶部7と、カード検出部8を有する。また機構は図示していないが、上述のようにICカード30を装着保持する機構がカード装着部9として設けられている。
【0018】
制御部2は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有するマイクロコンピュータにより構成され、上記各部に対する制御や所定の演算処理を行い、携帯端末装置1の各種動作を制御する。
【0019】
無線部3は、ブルートゥース無線技術などの無線システムによって、離れて設置された同じ無線システムを搭載した外部機器との間で双方向無線通信を行う。例えばオーディオデータ等の送受信を行う。外部機器とは、例えば後述するコンテンツ提供端末20や、スピーカ機器、ヘッドホンなどが考えられる。外部のスピーカ機器、ヘッドホンなどに対しては、オーディオデータを送信してそれらの機器から音声出力させることなどが可能である。
またコンテンツ提供端末20やその他の外部機器から、オーディオコンテンツデータを無線部3で受信することも行う。受信したオーディオコンテンデータは、制御部2の制御に従って記憶部7に保存される。
【0020】
記憶部7は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性固体メモリや、或いはHDD(Hard Disk Drive)などで構成され、各種情報を記憶する。例えば音楽等のオーディオコンテンツを記憶する。制御部2は、無線部3で受信したオーディオコンテンツ等のデータを、記憶部7に書き込んで保存させることができる。
音声出力部5は、オーディオデータのデコーダ、D/A変換器、アンプ回路、スピーカ又はヘッドホン端子等を備え、音楽等のオーディオデータに関する再生出力を行う。制御部2は、例えば記憶部7からオーディオコンテンツデータを読み出して音声出力部5に供給し、音声出力させることができる。
【0021】
操作部4には、例えば操作キー或いはジョグダイヤルなどの操作子或いはタッチパッドなどが設けられ、ユーザの操作入力に供される。制御部2は操作部4による操作情報を入力することに応じて、ユーザ操作に従った動作制御を行う。例えば再生、停止、早送り、早戻しなどの操作に応じて制御部2が音声出力部5による音楽等の再生動作を制御する。
表示部6は、制御部2からのデータ、例えば操作に応じた動作を示したり、あるいは記憶部7に蓄えられている音楽データに付随する曲名、アーティスト名、演奏時間などの情報を表示するように動作する
【0022】
カード検出部8は、カード装着部9にICカード30が装着された際に、装着状態を示す検出信号を制御部2に供給する。
【0023】
図2(b)には、カード装着部9に装着されたICカード30の内部構成を示している。ICカード30は、制御部31,記憶部32,非接触通信部33を有するICチップと、図示しないアンテナコイルを有している。
制御部31は例えばCPUで構成され、記憶部32に対する読出及び書込、非接触通信部33による通信動作の制御を行う。
記憶部32は、ROM、RAM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等を有し、各種情報を記憶する。
非接触通信部33は、外部のICカード対応のリーダ/ライタ装置との間で非接触無線通信を行う。
このICカード30は、既に公知のとおり、リーダ/ライタ装置に近づけられることで電磁波によるリーダ/ライタ装置との通信を行う。ICカード30側では、リーダ/ライタ装置側のコイル通電により発生する電磁界を受けて、アンテナコイルで誘起される電圧により動作電力を発生させ、リーダ/ライタ装置との間で通信を行う。
【0024】
なお、ICカード30は、単に携帯端末装置1の内部に装着されるのみのものである。つまり携帯端末装置1はICカード30に対するリーダ/ライタ機能を備えていないため、携帯端末装置1とICカード30の間で通信が行われるものではない。
【0025】
続いて図3(a)(b)により、コンテンツ提供端末20の構成を説明する。
図3(a)はコンテンツ提供端末20の外観例を示している。このコンテンツ提供端末20は、例えば店頭などに設置されてオーディオコンテンツ等の販売を行う機器とされる。
コンテンツ提供端末20には、携帯端末装置1を所持するユーザがオーディオコンテンツ等を購入しようとする際に、必要な操作を行う操作部24と、ユーザに対して各種情報を提示する表示部26が設けられている。
またユーザが、所持する携帯端末装置1を置くクレードル21が形成されている。
【0026】
図3(b)にコンテンツ提供端末20の内部構成例を示す。
コンテンツ提供端末20は、制御部22、無線部23、操作部24、非接触IC通信部25、表示部26、記憶部27を有する。
【0027】
制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有するマイクロコンピュータにより構成され、上記各部に対する制御や所定の演算処理を行い、コンテンツ提供端末20の各種動作を制御する。
【0028】
このコンテンツ提供端末20は、非接触IC通信部25を有することでICカード30に対応するリーダ/ライタ装置としての機能を備える。非接触IC通信部25は、無線装置25aを駆動してICカード30との間の通信を行う。
【0029】
無線部23は、例えば上記した携帯端末装置1の無線部3と共通の無線システムにより、外部機器との間の双方向無線通信を行う。例えばブルートゥース無線技術を用いて通信を行う。
例えば携帯端末装置1と双方向の無線通信を行い、携帯端末装置1の記憶部7へ蓄積することが可能なオーディオコンテンツデータとしての音楽ファイルなどの情報データを、無線通信により送出する機能を備えている。
なお、無線部23の通信可能距離は、無線出力レベルおよび受信感度が低く設定されていることで、ICカード30と無線装置25aが通信可能な距離とほぼ等しい距離となるように制限されている。
【0030】
記憶部27は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性固体メモリや、或いはHDD(Hard Disk Drive)などで構成され、各種情報を記憶する。例えば一般ユーザに販売する音楽等のオーディオコンテンツを多数格納している。制御部22は、記憶部32に格納されているオーディオコンテンツ等を無線部23から外部機器(携帯端末装置1)に送信させることができる。
【0031】
操作部24には、例えば操作キー、タッチパッド、ジョグダイヤルなどが設けられ、ユーザの操作入力に供される。制御部22は操作部24による操作情報を入力することに応じて、ユーザ操作に従った動作制御を行う。例えばユーザは、オーディオコンテンツ等の購入のための操作を操作部24により行う。
表示部26は、制御部2の制御に基づいて各種の表示動作を行う。例えばユーザの操作ガイド、操作メニュー、販売可能なオーディオコンテンツ等の提示のためなどの表示を行う。
なお、表示部26にタッチパネルを設け、表示画面に対するユーザのタッチによりユーザが操作入力を行うことができるようにしてもよい。
【0032】
携帯端末装置1及びICカード30を所持するユーザは、このようなコンテンツ提供端末20を利用することで、音楽等のオーディオコンテンツを購入することができる。
図4は、コンテンツ提供端末20を利用する際の様子を示している。
コンテンツ提供端末20のクレードル21は、携帯端末装置1などを載置する載置台であり、クレードル61を構成する壁面や底面には、無線部23のアンテナ部分および非接触型IC通信部25のアンテナ部分が内蔵されている。
ユーザは、図1(c)のように携帯端末装置1にICカード30を装着した状態で、図4のように携帯端末装置1をクレードル21に載置する。
この状態で、ICカード30と非接触IC通信部25の通信と、携帯端末装置1の無線部3とコンテンツ提供端末20の無線部23との間の通信が可能な状態とされ、それらの通信により、コンテンツデータ等の販売が行われる。
【0033】
以下、携帯端末装置1にICカード30を装着した際の携帯端末装置1の動作と、ICカード30を装着した携帯端末装置1を図4のようにコンテンツ提供端末20のクレードル21に載置した際の動作を説明する。
【0034】
まず図5は、ICカード30の装着に関する携帯端末装置1の制御部2の処理を示している。
制御部2は、カード検出部8からの検出信号により、ICカード30の装着の有無を検知できる。
カード検出部8からの検出信号によってICカード30が挿入されたことを検知したら、制御部2はステップF101からF102に進む。そして無線部3の通信可能距離を至近距離に制限する制御を行う。即ち制御部2は、無線部3の送信出力と受信感度を低下させるように制御して、無線通信可能な距離を至近距離に制限する。ここで言う至近距離とは、ICカード30がリーダ/ライタ装置と通信が可能な距離とほぼ等しい距離を意味する。
【0035】
ICカード30が装着されている間は、ステップF103で、ICカード30が脱却されたか否かを監視している。ICカード30が脱却された場合は、ステップF104に進み、無線部3の送信出力と受信感度を通常レベルに回復させ、無線通信可能距離を通常距離とする。例えばブルートゥース通信としての本来の通信可能距離となるようにする。
以上のように携帯端末装置1の制御部2は、ICカード30の装着/脱却に応じて、無線部3の通信可能距離を制御する。
【0036】
携帯端末装置1を所持するユーザが、コンテンツ提供端末20を利用してオーディオコンテンツを購入しようとする場合は、携帯端末装置1にICカード30を装着した状態で図4のようにクレードル21に載置する。従って携帯端末装置1の無線部3の通信可能距離は、ICカード30の通信可能距離と略同等の短い距離に制限されていることになる。
【0037】
ICカード30を装着した携帯端末装置1がクレードル21に載置された際には、携帯端末装置1(制御部2)、ICカード30(制御部31)、コンテンツ提供端末20(制御部22)で図6のような処理が行われる。
【0038】
携帯端末装置1が無線端末装置20のクレードル21に載置されると、まずICカード30と、コンテンツ提供端末20の非接触IC通信部25との通信が行われる。
即ちICカード30は非接触IC通信部25の無線装置25aが発生させている電磁界に反応して通信を開始する。これによって、ICカード30と非接触IC通信部25の通信が確立され、認証処理が行われる(ステップF301,F401)。
特にここでは、個人認証や、ICカード30によりコンテンツ購入代金の決済が可能であるか否かの認証、或いはコンテンツ提供端末20に対応するICカード30であるか否かの認証などが行われる。
【0039】
コンテンツ提供端末20の制御部22は、ICカード30との通信による認証処理結果として、コンテンツ提供可能なユーザであるか否かを判断する。取引不能と判断すればステップF402から処理を終える。つまりコンテンツ提供のための動作を終了する。
一方、個人認証や電子マネー残高等の情報を確認して取引可能であると認識した場合は、制御部22はステップF402からF403に進み、記憶部27に蓄積されている音楽ファイルなどのコンテンツのメニュー等を表示部26において表示し、ダウンロードによる購入が可能であることを、ユーザ(携帯端末装置1の所有者)へ知らせる。
【0040】
ユーザは、表示部26に表示された情報から、入手したいコンテンツを判断し、操作部24を操作して選択する。
コンテンツ提供端末20の制御部22は、このようなユーザの選択操作があったら、ステップF404からF405に進む。
即ち、ユーザが希望するコンテンツデータを携帯端末装置1へ伝送するために、まず無線部23の通信機能を動作させ、携帯端末装置1の無線部3との間の通信を確立する(F405,F201)。
【0041】
携帯端末装置1の制御部2は、無線部3による通信が開始されたら、ステップF202でユーザのダウンロード開始操作を待機する。
ユーザは、携帯端末装置1の操作部4を操作して、コンテンツ提供端末20からのコンテンツデータ伝送を受信するように携帯端末装置1にダウンロード開始を指示する。このユーザ操作に応じて制御部2は、無線部3からコンテンツ提供端末20に対して送信要求情報を送信させる(F203)。
コンテンツ提供端末20の制御部22は、無線部23によって送信要求情報が受信されたらステップF406からF407に進み、コンテンツ送信処理を開始する。
即ち、ユーザが選択したコンテンツデータを記憶部27から読み出し、無線部23から送信出力させる。
携帯端末装置1側では、ステップF204として、このように送信されてくるコンテンツデータを無線部3で受信し、記憶部2に保存する処理を行う。
【0042】
コンテンツ提供端末20から携帯端末装置1へ、コンテンツデータの伝送が完了すると、携帯端末装置1の制御部2は受信が完了した通知を無線部3からコンテンツ提供端末20の無線部23へ送る(F205→F206)。
そして携帯端末装置1の制御部2は、ステップF207で無線部3による通信動作を停止させる。
【0043】
コンテンツ提供端末20の制御部22は、携帯端末装置1からの受信完了通知を受け取ると、無線部23の無線機能を停止する(F408→F409)。
次にコンテンツ提供端末20の制御部20は、ステップF410で精算処理を行う。即ち非接触IC通信部25に指示して、ICカード30との通信により、コンテンツデータの販売代金の精算を実行させる。ICカード30側では精算のための電子マネー情報の更新を行う(F302)。これによりICカード30の電子マネーによる精算が実行される。
精算を完了したら、ステップF411で制御部22は表示部26に結果表示を行う。例えばコンテンツ伝送の通信完了と、電子マネーの精算完了についての表示を実行させ、ユーザに通知する。
【0044】
以上の処理により、ユーザは、コンテンツ提供端末20を利用して、携帯端末装置1にコンテンツデータをダウンロードするという形態でコンテンツデータの購入を行うことができる。
なお、以上の処理ではコンテンツ提供端末がコンテンツデータを有料で販売するとして説明したが、無料でコンテンツデータ等を提供するシステムでも同様に適用できる。無料の場合は、ステップF401での電子マネー決済が可能か否かの確認や、ステップF410での精算処理が不要となる。
また、特定の団体の構成員、会員など、特定の条件を備えたユーザに対して各種情報を無料提供するようなシステムとすることもできる。これはICカード30との通信により個人認証がOKとなることを条件として上記のデータダウンロード処理が実行されるようにすればよい。
【0045】
このような実施の形態によれば、無線部3として無線インタフェースは有していながら、非接触ICカード機能を備えていない携帯端末装置1において、ICカード30を装着するという手法で、非接触ICカード通信機能を持たせることができる。
従って、携帯端末装置1として、非接触ICカード通信機能を組み込むための構成の複雑化やコストアップを生じさせることなく、個人認証が必要な限定されたコンテンツの無線伝送や、有料コンテンツの無線伝送による購入精算が可能な無線通信システムを提供することができる。
ユーザにとっては、自分が所有するICカード30をそのまま携帯端末装置1に装填して利用できるため、便利なものとなる。
【0046】
また、コンテンツデータのダウンロードを行う際には、携帯端末装置1の無線部3およびコンテンツ提供端末20の無線部23の双方とも、無線伝送可能な通信距離は至近距離に制限されているので、外部の無線通信機器と誤って接続する可能性は極めて低い。
特に、ブルートゥースや無線LANといった2.4GHz以上の周波数を用いるものは、空間減衰が大きいので、例えば、数センチメートル程度の通信可能距離に制限しておけば、数メートル離れた同じ周波数帯の無線機器と接続することは不可能である。
このため通信のセキュリティが確保され、コンテンツデータが他の機器に受信されたり、通信情報が漏洩することもない。
【0047】
なお、コンテンツ提供端末20の無線部23の通信可能距離は、無線出力と受信感度が低く設定されることで、ICカード30と無線装置25aの通信可能距離とほぼ等しい距離となるように制限されていると述べたが、クレードル21によって通信可能距離を狭くするようにしてもよい。例えばクレードル21を略密閉型の空間にして、その内部に携帯端末装置1を入れるような構造とする。例えばユーザは、オーディオコンテンツ等の購入を行う場合は、クレードル21の蓋を開けて携帯端末装置1を内部空間に置き、蓋を閉めるようにする。
そのような構造において、クレードル21の内部空間の周壁を電波シールド効果を有する材質を利用し、無線部23と無線部3の間の通信は、当該クレードル21内部空間のみで行われるようにしてもよい。
この場合、携帯端末装置1とコンテンツ提供端末20の間の通信データが外部に漏洩することを防ぐだけでなく、他の通信装置の無線送信電波の影響もなくすことができる。
【0048】
また携帯端末装置1装着するICカード30は入れ替えができるため、各種サービス会社が発行する電子マネー用のICカードを利用できる。
例えばA社発行のICカード30に対応するコンテンツ提供端末20、B社発行のICカード30に対応するコンテンツ提供端末20が存在するような場合、ユーザは、コンテンツ提供端末毎に対応するICカード30を携帯端末装置1に装着して使用すればよい。このため、携帯端末装置1でコンテンツダウンロードを行う際の利用可能範囲を広げることができる。
【0049】
なお、携帯端末装置1において図5の処理が行われることで、ICカード30を装着しているときに無線部3の通信可能距離が制限され、ICカード30が抜かれることで、通常の通信可能距離に回復されるようにしたが、この場合、ユーザがICカード30を脱却するのを忘れ、ICカード30が装着されたままだと、携帯端末装置1の無線部3の通常の通信機能が低下することになる。
このため、ダウンロードが終了した際に、表示部6での表示や電子音或いはメッセージ音声出力などにより、ユーザにICカード30を取り外すことを通知するようにしてもよい。また、一定時間以上、ICカード30が装着されたままであったら、取り外しの通知を行っても良い。例えばダウンロードが実行されないまま一定時間経過した時点で取り外しの通知を行う。
また、ICカード30が引き抜かれなくとも、ダウンロードが終了した後の時点で、無線部3の通信可能距離が通常の距離に戻されるようにすることも考えられる。
【0050】
本発明の第1の端末装置の例としてオーディオプレーヤ/レコーダとしての携帯端末装置1を挙げたが、この第1の端末装置としては、携帯電話器、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯型ビデオプレーヤ、携帯型ゲーム器などとしても好適である。
また第2の端末装置としてのコンテンツ提供端末20が提供・販売するデータとしては、オーディオコンテンツだけでなく、電子書籍、ビデオコンテンツ、ゲームプログラム、アプリケーションプログラムなど、各種のデータ/プログラムが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の携帯端末装置とICカードの説明図である。
【図2】実施の形態の携帯端末装置とICカードのブロック図である。
【図3】実施の形態のコンテンツ提供端末の構成の説明図である。
【図4】実施の形態の携帯端末装置をコンテンツ提供端末に載置した状態の説明図である。
【図5】実施の形態の携帯端末装置の通信可能距離の制御処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態のコンテンツ提供のための通信及び処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 携帯端末装置、2 制御部、3 無線部、7 記憶部、8 カード検出部、9 カード装着部、20 コンテンツ提供端末、22 制御部、23 無線部、25 非接触IC通信部、27 記憶部、30 ICカード、31 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端末装置と、第2の端末装置と、非接触無線通信を行うICカードとを有するデータ通信システムであって、
上記第1の端末装置は、
上記第2の端末装置との間で無線通信を行う無線通信部と、
上記ICカードを装着するICカード装着部と、
上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するカード装着検出部と、
上記カード装着検出部により上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御する制御部と、
を備え、
上記第2の端末装置は、
上記ICカードとの間で非接触無線通信を行うICカード通信部と、
上記第1の端末装置との間で無線通信を行うとともに、その通信可能距離が、上記ICカード通信部の非接触無線通信の通信可能距離と略同等となるようにされている無線通信部と、
上記ICカードを装着した上記第1の端末装置が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記第1の端末装置へのデータ提供の実行可否を判断し、実行可であれば、上記無線通信部に上記第1の端末装置へのデータ送信を実行させる制御部と、
を備えたことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
外部機器との間で無線通信を行う無線通信部と、
非接触無線通信を行うICカードを装着するICカード装着部と、
上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するカード装着検出部と、
上記カード装着検出部により上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項3】
非接触無線通信を行うICカードとの間で非接触無線通信を行うICカード通信部と、
外部機器との間で無線通信を行うとともに、その通信可能距離が、上記ICカード通信部の非接触無線通信の通信可能距離と略同等となるようにされている無線通信部と、
上記ICカードを装着した外部機器が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記外部機器へのデータ提供の実行可否を判断し、実行可であれば、上記無線通信部に上記外部機器へのデータ送信を実行させる制御部と、
を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項4】
外部機器との間で無線通信を行う無線通信部と、非接触無線通信を行うICカードを装着するICカード装着部とを備えた端末装置の通信制御方法として、
上記ICカード装着部に上記ICカードが装着されているか否かを検出するステップと、
上記ICカードの装着が検出されたことに応じて、上記無線通信部の通信可能距離が通常時の通信可能距離より短くなるように制御するステップと、
を備えたことを特徴とする通信制御方法。
【請求項5】
非接触無線通信を行うICカードとの間で非接触無線通信を行うICカード通信部と、外部機器との間で無線通信を行うとともに、その通信可能距離が、上記ICカード通信部の非接触無線通信の通信可能距離と略同等となるようにされている無線通信部とを備えた端末装置の通信制御方法として、
上記ICカードを装着した外部機器が近接された際に、上記ICカード通信部による上記ICカードとの通信により、上記外部機器へのデータ提供の実行可否を判断するステップと、
実行可と判断されることに応じて、上記無線通信部による上記外部機器へのデータ送信を実行するステップと、
を備えたことを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−191973(P2008−191973A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26657(P2007−26657)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】