説明

トイレ装置

【課題】 老人その他のハンディのある者がトイレ空間で倒れ込んでも、その旨を通報できる装置を簡素化すること。
【解決手段】 トイレ空間90内に設置された便器TW上に、便座14に使用者が着座したときに洗浄機構60が作動する温水洗浄便座装置10を備え、前記便座14周辺の所定領域Bに前記使用者が存在する時間が所定値を超えたとき、前記使用者は被救助状態に至ったものと判断され、その旨が前記トイレ空間90の外部に通報されるようにした、トイレ装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関し、特に一般家庭やシルバーマンションなどのトイレ空間での倒れ込みを早期発見を可能とするトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭は固よりシルバーマンションでは、老人がトイレ空間(個室のトイレ室や集合トイレのブース)で急に体調が悪くなり、倒れ込んでしまう場合がある。このような場合、発見が遅れると人命にかかわることがある。そこで、従来は、人の動きがあると人体熱検知信号を送出する熱線式検知器をトイレ室の天井に取り付けると共に、人の体重を感知すると人体圧検知信号を送出するフロアマットをトイレ室の床に布設し、前記人体熱検知信号と人体圧検知信号とをそれぞれ管理人室に設置してある受信機で受信できるようにした倒れ込み警報装置があった。かような警報装置においては、受信機が、人体熱検知信号を受信した後、人体圧検知信号が所定時間以上継続すると倒れ込み警報を発報するようにされている。そこで、この倒れ込み警報を認知した家人若しくは管理人は、トイレ空間へ急行し、倒れ込んでいる老人を救出するのである。
【0003】
しかしながら、上述のような倒れ込み警報装置にあっては、老人がトイレ空間に手荷物を持ち込み、この手荷物をトイレ室の床に置き忘れたような場合、フロアマットは人体圧検知信号の送出を継続することになる。従って、受信機は老人が倒れ込んでいるのではないにもかかわらず、老人が倒れ込んでいるとして倒れ込み警報を発報してしまう。このため、倒れ込み警報があってトイレ室に急行したものの、誤報であったということがしばしばあると言う問題点が有った。
【0004】
かような問題点を解消すべく、特許文献1は、誤報の少ない倒れ込み警報装置を提供する。すなわち、この倒れ込み警報装置は、部屋の天井に設置され人の動きがあると人体熱検知信号を送出する熱線式検知器と、部屋の床に布設され人の体重を感知すると人体圧検知信号を送出するフロアマットと、人体熱検知信号を受信した後、人体圧検知信号が所定時間以上継続すると倒れ込み警報を発報する受信機とを備える倒れ込み警報装置において、前記フロアマットを、部屋の床に布設する複数のフロアマット要素にて構成すると共に、前記受信機を、人体熱検知信号を受信した後、複数のフロアマット要素の中の所定数以上のフロアマット要素が人体圧検知信号を共に送出する状態が所定時間以上継続すると倒れ込み警報を発報するように構成される。
【0005】
かような構成により、部屋の床に手荷物などを置き忘れて放置しても、複数のフロアマット要素の中の所定数以上のフロアマット要素が人体圧検知信号を共に送出する確率は少なくなる。
【特許文献1】特開平6−168391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術によれば、確かに、老人が倒れ込んでいるのではないにもかかわらず、老人が倒れ込んでいるという倒れ込み警報(誤報)が発せられるという不具合がなくなり、機能的には、優れたものである。しかしながら、トイレ空間の床に人の体重を感知すると人体圧検知信号を送出するフロアマットを多数、布設することは、一般家庭においては費用的に負担できず、また、構造的にも複雑で、事実上、画餅に帰するものといわねばならなかった。
【0007】
それ故に、本発明は、老人その他のハンディのある者がトイレ空間で倒れ込んでも、その旨を通報できる装置を簡素化することを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために請求項1で講じた技術的手段は、
「トイレ空間内に設置された便器上に、便座に使用者が着座したときに洗浄機構が作動する温水洗浄便座装置を備え、前記便座周辺の所定領域に前記使用者が存在する時間が所定値を超えたとき、前記使用者は被救助状態に至ったものと判断され、その旨が前記トイレ空間の外部に通報されるようにした、トイレ装置。」
を構成したことである。
【0009】
上記した技術的手段における、便座周辺の所定領域内における前記使用者の存在は、請求項2が示すように、洗浄機構を作動する操作装置に設けられたセンサにより検知されるのが望ましく、また、この操作装置は、トイレ空間の壁面に設置されるリモコン装置である(請求項3)であるのが、実用的である。
【0010】
尚、センサは、洗浄機構を作動する操作装置とは、独立的に設けても良い(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
上記した請求項1記載の構成においては、便座周辺の所定領域に前記使用者が存在する時間が所定値を超えたとき、使用者が被救助状態に至ったものと判断されるので、トイレ空間の床面の全領域を検知する必要が無く、検知領域が局所的に止まるので、トイレ空間の床面の全領域を検知する場合に比べて、構成を簡素にすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施態様例を図面に基づいて詳しく説明する。
【0013】
図1に示すように、トイレ空間90内には、温水洗浄便座装置10が装着された便器TWが設置されている。しかして、温水洗浄便座装置10は、トイレ空間90を画成する壁面92に設置されており、温水洗浄便座装置10の便座14に着座した使用者が、壁面92に設置されたリモコン装置38を操作することにより、後述するような、人体局部への洗浄がなされる。
【0014】
図2及び図3において、温水洗浄便座装置10は、便器TWの後部上面に固定されるケース14を備える。ケース14内には、第1制御機構20、第2制御機構30、電磁弁40、ヒータ52により加熱された温水を貯溜する温水タンク50及びノズル機構60が配設されている。
【0015】
ケース14の内部の一方側に配置される電磁弁40は、ホース42を介して給水源70と、ホース44を介して温水タンク50と、夫々、連結されており、第1制御機構20の作用により、電磁弁40が開かれると、温水タンク50内の温水を、切換弁66を介して肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)に供給され、肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)を便器TW内に伸長し、この温水が、周知のように、肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)から噴射されて、使用者の肛門(ビデ)を洗浄する。何れのノズルに温水が供給されるかは、切換弁66の作用位置による。
【0016】
温水タンク50は、ケース14の内部の他方側に配置される。温水タンク50内の水はヒータ52により加熱される。水温は、温度センサ54により常時、検知されており、当該温度が信号として、第2制御機構30のCPU32に送られる。CPU32は水温が所定値に達したら、トライアック34を断続させて電源98からヒータ22への通電制御をなし、常時、水温を所定値に維持するようになっている。
【0017】
便座14の後方に位置すべく、ケース12の前方の中央部には、発光センサ52が設けられており、領域A内に入るように人が便座14上に着座したとき、第2制御装置20が、人の便座14上の着座を認識する。この状態において、壁面92に設置されたリモコン装置38を操作することにより、前述した人体局部への洗浄が可能となる。言い換えれば、人が便座14上に着座していない限り、リモコン装置38を操作しても、局部洗浄は行われない。
【0018】
壁面92に設置されたリモコン装置38は発光センサ38aを備える。発光センサ38aからは、光が、トイレ空間の床面の領域Bを投影する。この領域Bは、便器TWの前方の近傍に設定される。この領域B内に人体の一部が入ると、その旨、第2制御装置20に伝達がなされる。
【0019】
上記した温水洗浄便座装置10を用いた排便・排尿は、通常、次のような過程でなされる。
【0020】
(1)トイレ空間90への入室
(2)領域Bの通過
(3)便座14への着座
(4)排便及び/又は排尿
(5)洗浄機構60による局部洗浄
(6)便座14からの起立
(7)領域Bの通過
(8)トイレ空間90からの退室
(尚、男子が排尿のみを立ったままで行うときは、上記(5)は省略され、上記(3)及び(6)は、夫々、便座14の起立及び便座14の下降と読み替えるものとするが、読み替えられた(6)は失念されることがある)。
【0021】
しかして、使用者がトイレ空間90への入室後、倒れ込み等の被救助状態になるのは、トイレ空間90への入室直後、便座14上で排便・排尿中(若しくは排便・排尿直後)及びトイレ空間90からの退室直前の何れかであるが、何れの場合でも、領域Bを普通に通過するに必要な時間tよりも十分に長い時間Tの間、領域Bの全部若しくは一部を占有する態様で、倒れ込み等の被救助状態が持続する。このことから、リモコン装置38の発光センサ38aが領域B内での対象を検知したことを第1制御機構20が認識すると、第1制御機構20は、警報装置58を作動せしめて、倒れ込み等の被救助状態を周囲に通報する。これにより、救助を早急に行うことが出来る。
【0022】
上記した領域Bは、使用者が排便・排尿の前後(つまりトイレ空間の入室・退室の際)に必ず通過する領域であって且つ使用者が倒れた場合に占有する蓋然性が高い領域である。具体的には、トイレ空間の床面の面積・便器TWの設置位置によって、適宜、変更される。
【0023】
尚、発光センサ38aは、リモコン装置38とは別のユニット(図示略)に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る温水洗浄便座装置がトイレ空間内で設置されている状態を示す平面図。
【図2】図1の温水洗浄便座装置の斜視図。
【図3】図1の温水洗浄便座装置のブロック図。
【符号の説明】
【0025】
10:温水洗浄便座装置
12:ケース
14:便座
38:リモコン装置
B:領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間内に設置された便器上に、便座に使用者が着座したときに洗浄機構が作動する温水洗浄便座装置を備え、前記便座周辺の所定領域に前記使用者が存在する時間が所定値を超えたとき、前記使用者は被救助状態に至ったものと判断され、その旨が前記トイレ空間の外部に通報されるようにした、トイレ装置。
【請求項2】
前記便座周辺の所定領域内における前記使用者の存在は、前記洗浄機構を作動する操作装置に設けられたセンサにより検知される、請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記操作装置は、前記トイレ空間の壁面に設置されるリモコン装置である、請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記センサは、前記洗浄機構を作動する操作装置とは、独立的に設けられている、請求項2記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−11529(P2006−11529A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183719(P2004−183719)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】