説明

トップロールの異物除去装置

【課題】連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を適切に除去することができるトップロールの異物除去装置を提供する。
【解決手段】このトップロールの異物除去装置10は、トップロール8に付着した異物を除去するために、トップロール8の表面に押し当てられて、回転しながらトップロール8の幅方向に移動するポリッシャー11と、そのポリッシャー11の下方に配置され、トップロール8の幅以上の幅を有し、先端がトップロール8に接するようにして、ポリッシャー11で発生した研磨粉を受け止めて回収するブレード12と、そのブレード12に併設されて、ブレード12で回収された研磨粉を吸引・確保するバキューム装置13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融金属めっきラインを走行する鋼帯の方向変更のために設けられた所謂「トップロール」に付着した異物を除去するためのトップロールの異物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板等の溶融金属めっき鋼板を製造するには、図3に示すような連続溶融金属めっき装置(ライン)が利用される。それは、焼鈍炉1で加熱した鋼帯2を溶融金属めっき(以下、めっき浴3という)を保持した槽4内に連続的に供給し、めっき浴3内に設けた浸漬ロール5で鋼帯2の進行方向を鉛直にして上昇させ、鋼帯2の表面に溶融金属めっきを付着させるものである。めっきが付着し、めっき浴3から抜け出した鋼帯2に対して、めっき付着量をワイピングと称するガスの吹き付けで調整した後、必要に応じ加熱装置6で加熱してめっき層を合金化する。そして、冷却装置7で冷却し、スキンパス圧延装置(図示せず)等を経てテンションリール(図示せず)に巻き取る。
【0003】
このような連続溶融金属めっきラインでは、鉛直上昇した鋼帯2は、上方に互いに離隔して設けた2個のロール8(ラインの最も高い位置にあるので、トップロールと称している)で進行方向を反転されて、下降するようになっている。なお、冷却装置7は、建家の高さの制約から、通常、鋼帯2の上昇側と下降側との2箇所に分けて設置されている。
【0004】
しかし、上記のような冷却装置7を設けていても、トップロール8は、操業中に300℃〜500℃の温度を有する鋼帯2と接触することになる。そのため、トップロール8の表面に亜鉛粉末等の異物が付着し、製品である溶融金属めっき鋼板の品質を劣化させるという問題が生じていた。
【0005】
したがって、連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着する異物を適切に除去することが溶融金属めっき鋼板の品質を確保する上で重要となっている。
【0006】
そこで、特許文献1では、図3に示すように、研磨ロール(ポリッシャー)9をトップロール8の表面に押し当てて回転させながら、トップロール幅方向に移動(横行)させることで、トップロール表面の異物を除去するようにしている。なお、その際に、モータ負荷に応じて研磨ロール9の押し込み量を変化させるようにしている。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3では、トップロールを直接の対象としているわけではないが、ロールと同じ幅もしくはそれ以上の幅を持つブレードをロールに押し当てることで、ロール表面の異物を除去するようにしている。なお、特許文献2では、ロールのたわみに沿って容易に変形するブレードを使用することで、ロール幅方向に均一なブレード押付圧を可能にしている。また、特許文献3では、多段ブレードを使用することで異物除去能力を高めている。
【特許文献1】特開2003−117782号公報
【特許文献2】特開2004−025004号公報
【特許文献3】特開2008−127723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記の特許文献1〜3に記載の技術では、連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を適切に除去することは困難である。
【0009】
まず、特許文献2、3に記載のブレードを用いる技術では、鋼帯温度が最大500℃程度と高温のためにトップロールにヒートクラウンが生じているので、ブレードが均一にトップロール表面に押し当てられないからである。しかも、特許文献2のようにロールの凹凸に応じて変形するブレードでは、異物除去に必要な押付圧が得られない。
【0010】
一方、特許文献1に記載のポリッシャー(研磨ロール)を用いる技術では、トップロール表面に付着している異物は除去できるが、ポリッシャーが研磨を行うことによって発生した研磨粉(除去された異物等)が鋼帯に付着して品質不良の原因となる。
【0011】
このように、ブレードでは異物の除去に必要な押付圧が得られず、ポリッシャーでは研磨粉自体が品質不良の原因となる。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を適切に除去することができるトップロールの異物除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0014】
[1]連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を除去するためのトップロールの異物除去装置であって、トップロールの表面に押し当てられて、回転しながらトップロールの幅方向に移動する研磨ロールと、該研磨ロールの下方に配置されて、研磨ロールで発生した研磨粉を回収するブレードと、該ブレードに併設されて、ブレードで回収された研磨粉を吸引するバキューム装置とを備えていることを特徴とするトップロールの異物除去装置。
【0015】
[2]研磨ロールを回転させるモータの負荷増分が予め定めた閾値を超えた場合は、研磨ロールはその位置に所定時間停止して研磨を行い、その後、再びトップロールの幅方向に移動することを特徴とする前記[1]に記載のトップロールの異物除去装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を異物除去能力に優れているポリッシャー11によって研磨・除去した後、その際に発生した研磨粉をブレードとバキューム装置で回収・吸引するようにしているので、トップロールに付着した異物を適切に除去することができる。その結果、溶融金属めっき鋼板の外観不良による品質低下を抑止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係るトップロールの異物除去装置が設置された連続溶融金属めっきラインを示すものであり、図1は、本発明の一実施形態に係るトップロールの異物除去装置の詳細を示すものである。
【0019】
図2に示すように、この実施形態における連続溶融金属めっきラインは、前述の図3と同様に、焼鈍炉1で加熱した鋼帯2をめっき浴3を保持した槽4内に連続的に供給し、めっき浴3内に設けた浸漬ロール5で鋼帯2の進行方向を鉛直にして上昇させ、鋼帯2の表面に溶融金属めっきを付着させるものである。めっきが付着し、めっき浴3から抜け出した鋼帯2に対して、めっき付着量をワイピングと称するガスの吹き付けで調整した後、必要に応じ加熱装置6で加熱してめっき層を合金化する。そして、冷却装置7で冷却し、スキンパス圧延装置(図示せず)等を経てテンションリール(図示せず)に巻き取る。その際に、鉛直上昇した鋼帯2は、上方に互いに離隔して設けた2個のトップロール8で進行方向を反転されて、下降するようになっている。なお、冷却装置7は、建家の高さの制約から、通常、鋼帯2の上昇側と下降側との2箇所に分けて設置されている。
【0020】
そして、この実施形態における連続溶融金属めっきラインは、トップロール8に付着した異物を除去するための異物除去装置10を備えている。
【0021】
図1に詳細を示すように、この実施形態に係るトップロールの異物除去装置10は、トップロール8に付着した異物を除去するために、トップロール8の表面に押し当てられて、回転しながらトップロール8の幅方向に移動(横行)するポリッシャー(研磨ロール)11と、そのポリッシャー11の下方(トップロール8の回転方向下流側)に配置され、トップロール8の幅以上の幅を有し、先端がトップロール8に接するようにして、ポリッシャー11で発生した研磨粉を受け止めて回収するブレード12と、そのブレード12に併設されて、ブレード12で回収された研磨粉を吸引・確保するバキューム装置13とを備えている。
【0022】
なお、この異物除去装置10を使用する環境は鋼帯2の温度が最大で500℃となるため、ブレード12は500℃に耐えられる材質を備えたもの(例えば:ドクター製作所 UH230Sブレード)であることとする。
【0023】
また、ポリッシャー11の押し込み量は、前記特許文献1と同様に、ポリッシャー11を回転させるモータの負荷電流に基づいて制御するようになっている。
【0024】
このような構成を備えた異物除去装置10を用いることによって、トップロール8に付着した異物は異物除去能力に優れたポリッシャー11により研磨・除去され、除去された異物を含んだ研磨粉はブレード12により回収された後、バキューム装置13により吸引・確保される。これにより、ポリッシャー11の研磨で発生した研磨粉が鋼帯2の品質不良を招くことを回避しながら、トップロール8に付着した異物を的確に除去することができる。
【0025】
なお、ポリッシャー11が異物を一度の横行で除去できずに、再度ポリッシャー11がその位置に戻って異物を除去するのは、時間を無駄にしてしまうので、この異物除去装置10においては、予め、トップロール8に異物が付着している場合と付着していない場合とで、ポリッシャー11のモータの負荷電流がどの程度増加するかを調べて、その間の閾値を定めておき、ポリッシャー11の横行中にモータの負荷電流の増加量が閾値を超えたら、その位置に異物が付着していると判断するようにしている。そして、その判断に基づいて、ポリッシャー11がその位置に所定時間停止して研磨を行い、その後、横行を再開するようにしている。
【0026】
これによって、トップロール8に異物が付着した異物がポリッシャー11で確実に研磨・除去されるようになり、一度の横行で除去できずに再度その位置に戻って研磨することが回避されて、効率的に異物の除去を行うことができる。
【0027】
ちなみに、上記のポリッシャー11の停止時間については、例えば、トップロール8の外周が4mでライン速度が0.5m/sの場合は、16秒間が好適である。この16秒は、トップロール8が2回転するに要する時間であり、この時間であれば確実に異物が研磨・除去されると考えられるからである。
【0028】
このようにして、この実施形態においては、トップロール8に付着した異物を適切に除去することができ、溶融金属めっき鋼板の外観不良による品質低下を抑止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における連続溶融亜鉛めっきラインを示す概略図である。
【図3】従来の連続溶融亜鉛めっきラインを示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 焼鈍炉
2 鋼帯
3 めっき浴
4 槽
5 浸漬ロール
6 加熱装置
7 冷却装置
8 トップロール
9 ポリッシャー(研磨ロール)
10 異物除去装置
11 ポリッシャー(研磨ロール)
12 ブレード
13 バキューム装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続溶融金属めっきラインのトップロールに付着した異物を除去するためのトップロールの異物除去装置であって、トップロールの表面に押し当てられて、回転しながらトップロールの幅方向に移動する研磨ロールと、該研磨ロールの下方に配置されて、研磨ロールで発生した研磨粉を回収するブレードと、該ブレードに併設されて、ブレードで回収された研磨粉を吸引するバキューム装置とを備えていることを特徴とするトップロールの異物除去装置。
【請求項2】
研磨ロールを回転させるモータの負荷増分が予め定めた閾値を超えた場合は、研磨ロールはその位置に所定時間停止して研磨を行い、その後、再びトップロールの幅方向に移動することを特徴とする請求項1に記載のトップロールの異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−94790(P2010−94790A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269376(P2008−269376)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】