説明

トナー供給ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】現像ローラと供給ローラとのニップ部において発熱及びトナーと現像ローラに加わるストレスを抑制しつつ、メモリ画像および現像ローラのフィルミングの発生を防止する。
【解決手段】静電潜像担持体12の外周面に形成された静電潜像にトナー68を付着させて静電潜像を可視像化する現像ローラ48と、現像ローラ48との間でトナー68の供給と回収を行うトナー供給ローラ52とを備え、現像ローラ48とトナー供給ローラ52とが、それらの接触部において同一方向に移動するように回転するように配置された現像装置34に用いられるトナー供給ローラ52のポリウレタンフォーム層56に関して、その1インチ当たりのセル数を30個以上80個以下とし、セル壁面の開口率を3%以上50%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置、この画像形成装置に使用される現像装置、及びこの現像装置に使用されるトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、静電潜像を担持する静電潜像担持体を有し、現像装置から供給されるトナーにより静電潜像が顕像化することで、静電潜像担持体上にトナー像が形成される。静電潜像担持体上に形成されたトナー像は、直接または中間転写体を介して、用紙等の記録シートに転写される。トナー像が転写された記録シートは、定着装置により加熱および加圧され、これによりトナー像が記録シートに定着される。
【0003】
現像装置は、静電潜像担持体に対向配置される現像ローラと、現像ローラとの間でトナーの供給と回収を行う供給ローラとを有する。現像ローラと供給ローラの回転方向は任意に設定できるが、現像ローラと供給ローラの接触部(ニップ部)においてそれらのローラが互いに反対方向(いわゆるカウンタ方向)に移動するように回転する場合、より多くのトナーを供給・回収できる。
【0004】
供給ローラに関して、その表面層の材料としてポリウレタンフォームを使用する技術が提案されている(特許文献1)。かかる技術によれば、ポリウレタンフォームの優れた柔軟性により、供給ローラと現像ローラとのニップ部においてトナーが受けるストレスを軽減でき、トナーの劣化を抑制できる。
【0005】
一方、近年、画像形成プロセスの高速化、及び環境問題への配慮の観点から、定着温度(定着装置の加熱温度)の低減が一層求められている。定着温度の低減を図るためには、低温での定着が可能なトナー(低温定着トナー)を使用する必要がある。
【0006】
ところが、画像形成プロセスの高速化を図る場合、現像ローラと供給ローラを高速で回転させる必要があるため、現像ローラと供給ローラとの間に作用する大きな摩擦力により、現像ローラと供給ローラとのニップ部において発熱するとともに、トナー及び現像ローラに加わるストレスが増大する。そのため、高速プロセスの画像形成装置に低温定着トナーを使用すると、トナーの溶融、トナーの劣化に起因するかぶり(用紙の非画像部分にトナーが付着する現象)、現像ローラの摩耗、及び現像ローラのフィルミング(ローラ表面に被膜が発生する現象)が生じることがある。
【0007】
このような問題を解消するため、現像ローラと供給ローラを、それらのニップ部において互いに同一方向(いわゆるウィズ方向)に移動するように回転させ、これにより、現像ローラと供給ローラとの間に作用する摩擦力を低減させることが考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開2007−145904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現像ローラと供給ローラの回転方向をウィズ方向に設定すると、供給ローラにより現像ローラ上のトナーを掻き取る力が小さくなり、供給ローラによるトナー回収量が不足することがある。そのため、メモリ画像(供給ローラにより回収できなかったトナーが現像ローラ上に残留することに起因して表れる画像)、または現像ローラのフィルミングが生じることがある。
【0010】
そこで、本発明は、現像ローラと供給ローラとのニップ部における発熱、及びトナーと現像ローラに加わるストレスを抑制しつつ、メモリ画像および現像ローラのフィルミングの発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るトナー供給ローラは、
静電潜像担持体の外周面に対向配置され、上記静電潜像担持体の外周面に形成された静電潜像にトナーを付着させて上記静電潜像を可視像化する現像ローラと、
該現像ローラの外周面に接触しながら回転駆動され、上記接触部において上記現像ローラとの間でトナーの供給と回収を行うトナー供給ローラとを備え、
上記現像ローラと上記トナー供給ローラとが、それらの接触部において同一方向に移動するように回転するように配置された現像装置に用いられるトナー供給ローラであって、
芯金と、該芯金の外周面を覆うポリウレタンフォーム層とを有し、
上記ポリウレタンフォーム層は、1インチ当たりのセル数が30個以上80個以下であり、
上記ポリウレタンフォーム層のセルの壁面の開口率が3%以上50%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る現像装置は、上記のトナー供給ローラを備えていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る画像形成装置は、上記の現像装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層のセル数が、30個/inch以上であるため、供給ローラと現像ローラとのニップ部においてトナーに多数のセルを接触させることができる。また、ポリウレタンフォーム層のセル数は80個/inch以下であり、各セルがある程度の大きさを有するため、セルにトナーが詰まり難い。さらに、ポリウレタンフォーム層のセル壁面の開口率が3%以上50%以下とされており、これにより、ポリウレタンフォーム層の構造が、独立気泡構造に近い連続気泡構造となる。そのため、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォーム層よりも多くのトナーを内部に取り込むことができるとともに、一般的な連続気泡構造と比較すると内部でのトナーの凝集が生じ難い。そのため、現像ローラと供給ローラを所謂ウィズ方向に回転させても、供給ローラのトナーの回収性能を十分に確保でき、そのトナー回収性能を長期に亘って良好に維持できる。したがって、現像ローラと供給ローラをウィズ方向に回転させることで、現像ローラと供給ローラとのニップ部における発熱、及びトナーと現像ローラに加わるストレスを抑制しつつ、ポリウレタンフォーム層の上記物性により供給ローラのトナー回収性能を向上させることで、メモリ画像および現像ローラのフィルミングの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の説明では、特定の方向を意味する用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、およびそれらを含む他の用語、「時計回り方向」、「反時計回り方向」)を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明は限定的に解釈されるべきものでない。
【0016】
〔1.画像形成装置〕
図1は、本発明に係る電子写真式画像形成装置の画像形成に関連する部分を示す。画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびそれらの機能を複合的に備えた複合機のいずれであってもよい。画像形成装置1は、静電潜像坦持体である感光体12を有する。実施形態において、感光体12は円筒体で構成されているが、本発明はそのような形態に限定されるものでなく、代わりに無端ベルト式の感光体も使用可能である。感光体12は、図示しないモータに駆動連結されており、モータの駆動に基づいて矢印14方向に回転するようにしてある。感光体12の周囲には、感光体12の回転方向に沿って、帯電ステーション16、露光ステーション18、現像ステーション20、転写ステーション22、およびクリーニングステーション24が配置されている。
【0017】
帯電ステーション16は、感光体12の外周面である感光体層を所定の電位に帯電する帯電装置26を備えている。実施形態では、帯電装置26は円筒形状のローラとして表されているが、これに代えて他の形態の帯電装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式帯電装置、ワイヤ放電式帯電装置)も使用できる。露光ステーション18は、感光体12の近傍又は感光体12から離れた場所に配置された露光装置28から出射された画像光30が、帯電された感光体12の外周面に向けて進行するための通路32を有する。露光ステーション18を通過した感光体12の外周面には、画像光が投射されて電位の減衰した部分とほぼ帯電電位を維持する部分からなる、静電潜像が形成される。実施形態では、電位の減衰した部分が静電潜像画像部、ほぼ帯電電位を維持する部分が静電潜像非画像部である。現像ステーション20は、粉体現像剤を用いて静電潜像を可視像化する現像装置34を有する。現像装置34の詳細な構成は後に説明する。転写ステーション22は、感光体12の外周面に形成された可視像を紙やフィルムなどのシート38に転写する転写装置36を有する。実施形態では、転写装置36は円筒形状のローラとして表されているが、他の形態の転写装置(例えば、ワイヤ放電式転写装置)も使用できる。クリーニングステーション24は、転写ステーション22でシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残留する未転写トナーを感光体12の外周面から回収するクリーニング装置40を有する。実施形態では、クリーニング装置40は板状のブレードとして示されているが、代わりに他の形態のクリーニング装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式クリーニング装置)も使用できる。
【0018】
このような構成を備えた画像形成装置1の画像形成時、感光体12はモータ(図示せず)の駆動に基づいて時計周り方向に回転する。このとき、帯電ステーション16を通過する感光体外周部分は、帯電装置26で所定の電位に帯電される。帯電された感光体外周部分は、露光ステーション18で画像光30が露光されて静電潜像が形成される。静電潜像は、感光体12の回転と共に現像ステーション20に搬送され、そこで現像装置34によって現像剤像として可視像化される。可視像化された現像剤像は、感光体12の回転と共に転写ステーション22に搬送され、そこで転写装置36によりシート38に転写される。現像剤像が転写されたシート38は図示しない定着ステーションに搬送され、そこでシート38に現像剤像が固定される。転写ステーション22を通過した感光体外周部分はクリーニングステーション24に搬送され、そこでシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残存する現像剤が回収される。
【0019】
〔2.現像装置〕
現像装置34は、現像剤と以下に説明する種々の部材を収容するハウジング42を備えている。図面を簡略化することで発明の理解を容易にするため、ハウジング42の一部は削除してある。
【0020】
ハウジング42は感光体12に向けて開放された開口部44を備えており、この開口部44の近傍に形成された空間46に現像ローラ48が設けてある。現像ローラ48は、所定の現像ギャップ50を介して、感光体12の外周面に対向配置されている。現像ローラ48は、感光体12と平行に配置されている。現像ローラ48は、図示しないモータに駆動連結され、モータの駆動に基づいて矢印78方向に回転するようにしてある。画像形成プロセスの高速化の観点から、現像ローラ48の周速度は、300mm/s以上600mm/s以下に設定することが好ましい。現像ローラ48には、感光体12と現像ローラ48との間に所定の電界を形成するための図示しない電源が接続されている。
【0021】
現像ローラ48としては、例えば金属ローラが用いられ、この場合、金属ローラの表面を酸化処理することが好ましい。ただし、金属ローラ48の素材としては、金属以外の素材を使用することもでき、例えば、導電性を有する弾性素材を用いてもよい。現像ローラ48に使用される具体的な弾性素材としては、ゴム又はポリウレタンフォーム等が挙げられ、カーボン、金属粉又はイオン導電性材料等を弾性素材に含有させることで、現像ローラ48に導電性が付与される。現像ローラ48の素材として弾性素材を使用する場合、ローラの表面に、フッ素等の離型性に優れた樹脂からなるコート層を設けるようにしてもよい。また、弾性素材からなる現像ローラ48の表面には、樹脂ビーズ又は無機粉体を分散させることなどにより、トナー層厚を制御するための凹凸を設けるようにしてもよい。
【0022】
現像ローラ48の背後には、供給ローラ52が、現像ローラ48の外周面に接触して配置されている。供給ローラ52は、芯金54と、芯金54の外周面を覆うポリウレタンフォーム層56とを有する。ポリウレタンフォーム層56の具体的な構成については、後に詳述する。
【0023】
供給ローラ52は、現像ローラ48と平行に、且つ、回転可能に配置されている。供給ローラ52は、図示しないモータに駆動連結され、モータの駆動に基づいて矢印80方向に回転するようにしてある。これにより、供給ローラ52と現像ローラ48は、それらの接触部(ニップ部)66において同一方向に移動するように回転する。供給ローラ52の周速度は、現像ローラ48の周速度に応じて決定される。具体的に、現像ローラ48の周速度Vに対する供給ローラ52の周速度Vの比率R(V/V)は、例えば0.5以上3.0以下となるように設定される。なお、供給ローラ52にモータを駆動連結せず、供給ローラ52を現像ローラ48に従動させてもよい。この場合、周速比R(V/V)は1.0となる。
【0024】
供給ローラ52は、その周方向において供給ローラ52と現像ローラ48との接触ニップ幅が3mm以上6mm以下となるように配置することが好ましい。接触ニップ幅を3mm以上とすることで、供給ローラ52による現像ローラ48上のトナー68の掻き取り力を十分に確保できる。また、接触ニップ幅を6mm以下とすることで、供給ローラ52と現像ローラ48とのニップ部66における発熱とトナー68のストレスを抑制できる。
【0025】
現像ローラ48へのポリウレタンフォーム層56の食い込み量は、ポリウレタンフォーム層56の厚みの5%以上40%以下とすることが好ましい。
【0026】
なお、供給ローラ52には、現像ローラ48と供給ローラ52との間に電界を形成するための図示しない電源を接続するようにしてもよい。
【0027】
現像ローラ48の回転方向における供給ローラ52とのニップ部66よりも下流側において、現像ローラ48の外周面に規制部材60が接触して配置されている。ただし、規制部材60は、現像ローラ48の外周面に対して僅かな隙間を空けて近接して配置するようにしてもよい。規制部材60は、現像ローラ48と供給ローラ52とのニップ部66よりも低い位置に配置されており、下方向に位置する規制部入口にトナーが重力により効率的に侵入しやすくなり、供給不良などの問題が生じにくいという効果が得られる。現像ローラ48と規制部材60とのニップ部を通過する現像ローラ48上のトナー68は、規制部材60との摩擦接触により帯電されるとともに、トナー68の層厚が規制される。現像ローラ48の回転方向における供給ローラ52とのニップ部66よりも上流側において、現像ローラ48の外周面に除電部材62が接触して配置されている。現像ローラ48と除電部材62とのニップ部を通過する現像ローラ48上のトナー68は、除電部材62に接触することで除電される。
【0028】
空間46の背後には、トナーを貯蔵するトナー貯蔵部50が配置されている。トナー貯蔵部50には撹拌部材64が矢印82の方向に回転可能に設けられている。撹拌部材64が回転すると、トナー貯蔵部50に貯蔵されたトナーは、撹拌されながら空間46へ適宜補給される。
【0029】
現像装置34には、1成分現像剤が使用される。現像剤を構成するトナー68としては、低温で定着可能なもの(低温定着トナー)を使用することが好ましく、これにより、定着温度を低減できる。そのため、定着装置の加熱に要する時間を短縮でき、画像形成プロセスの高速化に貢献できる。また、トナー68としては、内部材料と該内部材料を覆う外殻とからなるカプセル構造のものを使用することが好ましい。この場合、内部材料には、低温での定着が容易となるように低い融点とガラス転移点を有する材料が使用され、外殻には、保管時または流通時の耐熱性が向上するように内部材料よりも高い融点とガラス転移点を有する材料が使用される。また、この場合、トナー68について示差走査熱量分析(DSC)により測定されるガラス転移時の吸熱ピークが、第1のピーク(内部材料のガラス転移点)と第2のピーク(外殻のガラス転移点)とを有する。第1のピークは10℃以上30℃以下であることが好ましく、第2のピークは50℃以上65℃以下であることが好ましい。また、トナー68についてフローテスターにより測定される軟化点は70℃以上110℃以下であることが好ましい。さらにこの場合、内部材料には、従来の粉砕トナーよりも多量の離型剤を含ませることが好ましい。
【0030】
このように構成された現像装置34の動作を説明する。画像形成時、図示しないモータの駆動に基づいて、現像ローラ48と供給ローラ52はそれぞれ矢印78,80方向に回転する。供給ローラ52に担持されたトナー68は、供給ローラ52の回転により現像ローラ48とのニップ部66に搬送され、このニップ部66において現像ローラ48と供給ローラ52との摩擦接触により帯電されながら現像ローラ48へ供給される。供給ローラ52から供給された現像ローラ48上のトナー68は、現像ローラ48の回転により、規制部材60とのニップ部に搬送されると、規制部材60により摩擦帯電されるとともに層厚が規制される。さらに、現像ローラ48の回転により、感光体12の対向部に搬送された現像ローラ48上のトナー68は、現像ローラ48と感光体12との間に形成された電界の作用により、感光体12の外周面の静電潜像部分に移動し、これによって静電潜像が顕像化される。感光体12との対向部を通過した後に現像ローラ48の外周面に残留したトナー68は、現像ローラ48の回転により除電部材62とのニップ部に搬送されて、除電部材62により除電された後、再び供給ローラ52とのニップ部66に搬送される。供給ローラ52とのニップ部66に搬送された現像ローラ48上のトナーは、供給ローラ52により機械的に現像ローラ48の外周面から掻き取られる。
【0031】
〔3.供給ローラのポリウレタンフォーム層〕
ポリウレタンフォーム層56のセルの壁面の開口率は、3%以上50%以下とされている。かかる開口率は、公知のメカニカルフロス法等で製造される一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームの開口率(1%程度)よりも高く、公知の化学的発泡法等で製造される一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率(60%程度)よりも低い。すなわち、ポリウレタンフォーム層56は、独立気泡構造に近い連続気泡構造を有する。そのため、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォーム層よりも多くのトナーを内部に取り込むことができるとともに、一般的な連続気泡構造と比較すると内部でのトナーの凝集が生じ難い。したがって、供給ローラ52のトナーの回収性能を十分に確保でき、そのトナー回収性能を長期に亘って良好に維持できる。
【0032】
その上、ポリウレタンフォーム層56は、その1インチ当たりのセル数が30個以上80個以下とされている。このセル数は、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームのセル数(100個/inch程度)よりも少なく、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームのセル数(25個/inch)程度よりも多い。すなわち、ポリウレタンフォーム層56は、供給ローラと現像ローラとのニップ部66において、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームよりも多数のセルをトナーに接触させることができる。また、ポリウレタンフォーム層56の各セルが、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームよりは大きいため、各セルにトナーが詰まり難い。
【0033】
また、ポリウレタンフォーム層56は、一般的な連続気泡構造のものと同程度に低い硬度を有する。本明細書において、ポリウレタンフォーム層56の硬度は、ポリウレタンフォーム層56が、その厚さの表面側30%分の深さまで(ポリウレタンフォーム層56の厚みが元の70%になるまで)所定の押し当て面に押し込まれたときに該押し当て面が受ける単位長さ当たりの荷重の大きさで表す。具体的に、ポリウレタンフォーム層56の硬度は、1gf/mm以上6gf/mm以下であることが好ましい。この硬度は、ポリウレタンフォーム層が一般的な独立気泡構造を有する場合の硬度(8.5gf/mm程度)よりも小さく、ポリウレタンフォーム層が一般的な連続気泡構造を有する場合の硬度(0.8gf/mm程度)に近似する。すなわち、ポリウレタンフォーム層56は、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォーム層と同程度の柔軟性を有するため、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォーム層と比較して、現像ローラ48と供給ローラ52とのニップ部66におけるトナー68のストレスを軽減でき、トナー68の劣化を抑制できる。
【0034】
さらに、ポリウレタンフォーム層56のセルの径の平均値は、100μm以上500μm以下であることが好ましい。このセルの径の平均値は、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォーム層のセル径(700μm程度)よりも小さく、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォーム層のセル径(80μm程度)よりも大きい。すなわち、ポリウレタンフォーム層56は、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォーム層よりも微細なセルを有するため、一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォーム層よりも優れたトナー掻き取り性能を有する。
【0035】
さらにまた、ポリウレタンフォーム層56は、一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォーム層よりも低密度である。具体的に、ポリウレタンフォーム層56の密度は0.03g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。これにより、ポリウレタンフォーム層56の柔軟性を十分に確保して、供給ローラ52と現像ローラ48とのニップ部66におけるトナー68のストレスを抑制できる。
【0036】
ポリウレタンフォーム層56の体積抵抗率は10Ωcm以上10Ωcm以下であることが好ましい。これにより、ポリウレタンフォーム層56が適度な導電性を備え、供給ローラ52と現像ローラ48との間に適正な電界を形成できる。
【0037】
〔4.ポリウレタンフォームの製造方法〕
以上の構成からなるポリウレタンフォーム層56に関して、その材料であるポリウレタンフォームの製造方法について説明する。
【0038】
本発明に使用されるポリウレタンフォームは、公知のメカニカルフロス法と公知の化学的発泡法とを組み合わせた方法で製造される。
【0039】
メカニカルフロス法と化学的発泡法は、ポリオールとイソシアネートとを混合して発泡を行う点では共通している。ところが、メカニカルフロス法では、原料として発泡剤を使用せず、不活性ガス等の気泡形成用の気体を混入することにより物理的な発泡を行うのに対して、化学的発泡法では、原料として発泡剤を使用し、イソシアネートと発泡剤との化学反応により化学的な発泡を行う点で相違する。メカニカルフロス法を採用する場合、均質な独立気泡構造のポリウレタンフォームを製造できるが、低密度である連続気泡構造のポリウレタンフォームを製造することが困難である。一方、化学的発泡法を採用する場合、低密度である連続気泡構造のポリウレタンフォームを容易に製造できるが、均質な独立気泡構造のポリウレタンフォームを製造することが困難である。
【0040】
これらの従来の製造方法に対して、本発明に使用するポリウレタンフォームの製造方法では、メカニカルフロス法で使用されるポリオール、イソシアネート及び気泡形成用の気体に加えて、化学的発泡法で使用される発泡剤が原料として使用され、これにより、気泡形成用の気体の混入による物理的発泡と、イソシアネートと発泡剤の化学反応に伴う化学的発泡とが組み合わされることとなる。そのため、物理的発泡により形成された均質なセル同士が、化学的発泡により繋ぎ合わされ、均質で且つ低密度のポリウレタンフォーム、すなわち、独立気泡構造に近い連続気泡構造のポリウレタンフォームを製造できる。以下、具体的な製造方法について説明する。
【0041】
本発明に使用されるポリウレタンフォームは、最初から順に原料調整工程、混合工程、加熱工程を経て製造される。
【0042】
原料調整工程では、ポリウレタンフォームの製造に使用される各原料が調整される。原料としては、ポリオール、イソシアネート、不活性ガス等の気泡形成用の気体、発泡剤、および触媒等の副原料が使用される。
【0043】
ポリオールとしては、例えば、活性水素基を有する公知のポリオールが単独で又は2種類以上が併せて使用される。具体的に、使用されるポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はポリジエン系ポリオール等が挙げられる。イソシアネートとしては、例えば、トルエンジフェニルジイソシアネート(TDI)、TDIプレポリマー、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、クルードMDI、ポリメリックMDI、ウレトジオン変性MDI又はカルボジイミド変性MDI等の公知の芳香族系、脂肪族系または脂環族系等の各種ポリイソシアネートが使用される。気泡形成用の気体としては、例えば窒素が使用される。発泡剤としては、イソシアネートとの化学反応により気体を発生させる原料が用いられ、具体的には水等が使用される。発泡剤は、混合工程の前に予めポリオールに混合される。触媒としては、例えば、アミン系触媒と有機酸塩系触媒が使用される。アミン系触媒は、主として迅速な化学的発泡を促すために使用され、有機酸塩系触媒は、主としてポリウレタンフォームの骨格を硬化させるために使用される。有機酸塩系触媒としては、所要の加熱によって触媒効果を発揮する感熱性触媒を使用することが好ましい。これにより、ポリウレタンフォームの骨格の硬化を、アミン系触媒が担う化学的発泡よりも遅らせることができ、化学的発泡を確実に起こすことができる。
【0044】
ポリウレタンフォームの硬度を決定する要因として、例えば、ポリオールの種類とイソシアネートインデックスが挙げられる。なお、本明細書において、イソシアネートインデックスとは、発泡剤の水酸基とポリオールの水酸基の合計モル数Mに対する、イソシアネートのイソシアネート基のモル数Nの比率N/Mの百分率を指す。ポリウレタンフォームを上述した所望の硬度となるように形成するためには、ポリオールとして、例えば、分子量が1000〜6000で且つ官能基数が2〜5であるポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが好適に使用され、イソシアネートインデックスは90〜110に調整することが好ましい。
【0045】
発泡剤として水を使用する場合、各原料を混合したときに、水とイソシアネートとの化学反応により二酸化炭素が発生し、これにより気泡(セル)が形成される。微細なセルを有し且つ低密度のポリウレタンフォームを形成するためには、水とイソシアネートとの化学反応により発生する二酸化炭素を、気泡形成用の気体により物理的に生じる気泡(セル)の内部に入り込ませる必要がある。かかる目的を達成するためには、水の混合量を、ポリオール100質量部に対して0.3〜1.5質量部に調整することが好ましい。
【0046】
混合工程では、水等の発泡剤が混合されたポリオール、イソシアネート、気泡形成用の気体、および触媒等が混合される。これにより先ず、物理的な発泡が生じ、気泡形成用の気体を核とする均質な気泡(セル)が形成される。その後、ポリオールに含まれる発泡剤とイソシアネートとが化学反応を起こすことで、二酸化炭素等の気体が発生し、この気体が、物理的発泡により形成されたセルに入り込んで、全体的にセルの径が大きくなり、セル同士が繋げられる。これにより、均質でありながら、大きな径を有するセルが形成される。
【0047】
加熱工程では、混合原料に所要の加熱を行うことで、樹脂化反応を促進させ、ポリウレタンフォームの骨格を硬化させる。加熱工程における加熱温度および加熱時間は、公知のメカニカルフロス法に準じ、ポリウレタンフォームの原料に応じて適宜決定される。
【0048】
以上に説明した製造方法によれば、メカニカルフロス法で製造されるポリウレタンフォームに比べて、セル壁面の開口率が高いポリウレタンフォームが形成される。そのため、導電性物質等を含有する溶液にポリウレタンフォームを含浸させるとき、ポリウレタンフォームに溶液が浸透しやすいことから、導電性等の機能を容易に付与できる。
【0049】
このようにして製造されたポリウレタンフォームを、所望の形状に加工し、芯金に固定することで、トナー供給ローラ52が製造される。なお、必要に応じて、ポリウレタンフォームに芯金を固定する前に、導電性物質等を含有する溶液へポリウレタンフォームを含浸させる工程と、溶液へ含浸させた後のポリウレタンフォームを乾燥させる工程を設けてもよい。
【0050】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明において、ポリウレタンフォーム層の製造方法は、必ずしも上述の実施形態に限られず、別の方法でポリウレタンフォーム層を製造することを妨げないものとする。
【実施例】
【0051】
(試験1)
高速プロセスの画像形成装置に低温定着トナーを使用する場合、現像装置の内部でトナーの凝集と溶融を防止するのに好適なプロセス条件を確認する試験を行った。具体的に、プロセス条件として、現像ローラの周速度Vに対する供給ローラの周速度Vの比率R(V/V)と、現像ローラへの供給ローラの接触圧の好適な大きさを確認した。
【0052】
画像形成装置としては、コニカミノルタ社製のMagicolor5570の画像形成装置を使用し、この画像形成装置に搭載される現像装置としては、コニカミノルタ社製のMagicolor5570の現像装置を適宜改造したものを使用した。低温定着トナーとしては、上述したようなカプセル構造を有するトナーaとトナーbを使用した。トナーaは、示差走査熱量分析(DSC)により測定されるガラス転移時の第1の吸熱ピーク(内部材料のガラス転移点)が10℃であり、第2の吸熱ピーク(外殻のガラス転移点)が50℃であり、フローテスターにより測定される軟化点は70℃である。トナーbは、示差走査熱量分析(DSC)により測定されるガラス転移時の第1の吸熱ピーク(内部材料のガラス転移点)が30℃であり、第2の吸熱ピーク(外殻のガラス転移点)が65℃であり、フローテスターにより測定される軟化点は110℃である。供給ローラの材料には、1インチ当たりのセル数が35個、セル壁面の開口率が55%であり、ローラの硬度が6.5gf/mmであるポリウレタンフォームを使用した。
【0053】
表1に示すように、現像ローラの周速度を600mm/sに設定し、トナーaを使用する場合に関して、周速比R(V/V)と供給ローラの回転方向を異ならせた実験例1−1〜実験例1−8を設定した。同様に、現像ローラの周速度を450mm/sに設定し、トナーaを使用する場合に関して、実験例2−1〜実験例2−8を設定した。さらに同様に、現像ローラの周速度を300mm/sに設定し、トナーbを使用する場合に関して、実験例3−1〜実験例3−8を設定した。周速比R(V/V)は、供給ローラの周速度を変化させることで調整した。なお、表1の回転方向の欄における「従動」との記載は、供給ローラが現像ローラに従動回転することを意味し、「従動」と「ウィズ」は同一の回転方向を示す。
【表1】

【0054】
各実験例についてトナーの溶融防止性能を評価するため、実験例ごとに、発熱が生じやすい高温高湿環境下(雰囲気温度30℃、相対湿度85%)において上記の画像形成装置を使用して白紙画像を10万枚連続プリントし、連続プリント終了後、現像装置内部のトナーの溶融の有無と、供給ローラの表面の破損の有無を目視により観察した。また、各実験例について供給ローラのトナー回収性能を評価するため、実験例ごとに、メモリ不良が生じやすい低温低湿環境下(雰囲気温度10℃、相対湿度15%)において上記の画像形成装置を使用して白紙画像を10万枚連続プリントし、連続プリント中1万枚毎に、かぶりの発生の有無を確認するとともに、メモリ画像確認用の画像をプリントしてメモリ画像の発生の有無を確認した。また、この連続プリントにおける現像ローラの汚染(フィルミング)の有無を目視により確認した。かぶり及びメモリ画像に関する評価は、連続プリントの初期から発生したものを「×」、1万枚プリント終了時点で発生したものを「△」、5万枚プリント終了時点で発生したものを「○」、5万枚以上のプリントでも発生しなかったものを「◎」で表し、現像ローラの汚染に関する評価は、1万枚プリントまでに現像ローラのフィルミングが発生したものを「×」、3万枚プリントまでに発生したものを「△」、5万枚プリントまでに発生したものと「○」、5万枚以上のプリントでも発生しなかったものを「◎」で表した(表1参照)。これらの評価において、「○」および「◎」を合格基準とする。
【0055】
表1に示すトナーの溶融に関する評価結果より、実験例1−6〜実験例1−8、実験例2−6〜実験例2−8及び実験例3−6〜実験例3−8で、トナーの溶融に起因する供給ローラの破損が発生した。これは、現像ローラと供給ローラとのニップ部の発熱が大きな要因であると考えられる。トナーの溶融に起因する供給ローラの破損が発生した実験例では、供給ローラが現像ローラに対して所謂カウンタ方向に回転するように設定され、その他の実験例では、供給ローラが現像ローラに対して所謂ウィズ方向に回転するように設定されている。このことから、現像ローラの周速度を高速(300〜600mm/s)に設定したときに低温定着トナーを使用する場合、現像装置内部のトナーの溶融と、これに起因する供給ローラの破損を防止するためには、供給ローラが現像ローラに対してウィズ方向に回転するように設定することが好ましいことを確認できた。しかし、供給ローラが現像ローラに対してウィズ方向に回転するように設定した実験例1−1〜1−5、実験例2−1〜2−5及び実験例3−1〜3−5では、メモリ画像が発生し、現像ローラの汚染が、画質上問題があるレベルであった。メモリ画像は、現像ローラ上の残留トナーが供給ローラにより十分に回収されずに次の現像時まで現像ローラ上に残留するために生じる。一方、現像ローラの汚染は、供給ローラにより回収されずに現像ローラ上に残留したままのトナーが繰り返しストレスを受けることで、トナーの外添剤等が現像ローラの外周面に付着して生じるものと考えられる。この結果より、高速プロセスの画像形成装置に低温定着トナーを使用し、現像ローラと供給ローラを所謂ウィズ方向に回転させる場合であっても、十分なトナー回収性能を発揮する供給ローラの開発が必要であることが分かった。
【0056】
(試験2)
高速プロセスの画像形成装置を使用し、供給ローラが現像ローラに対して所謂ウィズ方向に回転するように設定し、低温定着トナーを使用する場合において、供給ローラのポリウレタンフォーム層の好適な物性を確認する試験を行った。具体的に、ポリウレタンフォーム層の物性として、セル数、セル壁面の開口率、硬さ、密度、及び体積抵抗率の好適な値を確認した。
【0057】
画像形成装置としては、コニカミノルタ社製のMagicolor5570の画像形成装置を使用し、この画像形成装置に搭載される現像装置としては、コニカミノルタ社製のMagicolor5570の現像装置を適宜改造したものを使用した。
【0058】
現像装置に取り付ける供給ローラのポリウレタンフォーム層としては、表2に示す材料A〜材料Lのいずれかの材料からなるものを使用した。これら材料A〜材料Lは、原料としてポリオール、イソシアネート、アミン系触媒、有機酸塩系触媒、水(発泡剤)および整泡剤を使用して、上述の実施形態で説明した方法により製造した。具体的に、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール(商品名 アクトコールED−37B(数平均分子量3000);三井武田化学製)を使用した。イソシアネートしては、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(商品名 ミリオネート MTL−S;日本ポリウレタン製)を使用した。アミン系触媒としては、花王製のカオライザー No.23NPを使用した。有機酸塩系触媒としては、PANTECHNOLOGY製のEP73660Aを使用した。整泡剤としては、直鎖ジメチルポリシロキサン(商品名 Niaxsilicone L5614;GESilicones製)を使用した。各原料の使用量は、表2に示す通りである。
【0059】
【表2】

【0060】
材料A〜材料Lの物性値の測定方法について説明する。セル数に関しては、供給ローラの表面(軸方向3箇所×周方向8箇所)を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、観察箇所毎に1インチ当たりのセルの個数を計測し、それらの平均値を算出した。セル壁面の開口率に関しては、供給ローラの外周面を走査電子顕微鏡(SEM)により100倍の倍率で観察し、観察した表面のセルの壁面について開口の面積Sと全体の面積Sを算出して、開口率(S/S×100)を求めた。硬さに関しては、直径55mmのアルミニウム製の円板をポリウレタンフォーム層に押し込み、ポリウレタンフォーム層の厚みが元の70%になったときの単位長さ当たりの押し込み軸方向の反発力を計測し、この計測値(gf/mm)を硬さとした。密度については、供給ローラの重量から芯金の重量を減算することでポリウレタンフォーム層の重量を求め、寸法に基づきポリウレタンフォーム層の体積を求めて、それらの重量と体積より密度を算出した。体積抵抗率は、JIS法K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製高抵抗計R8340にて100Vを印加して得た測定値を、供給ローラの厚みで正規化することにより求めた。
【0061】
使用するポリウレタンフォームの材料ごとに、プロセス条件が異なる複数の実験例を設定した。具体的には、材料Aを使用する実験例A1〜A5、材料Bを使用する実験例B1〜B5、材料Cを使用する実験例C1〜C5、材料Dを使用する実験例D1〜D5、材料Eを使用する実験例E1〜E5、材料Fを使用する実験例F1〜F5、材料Gを使用する実験例G1〜G5、材料Hを使用する実験例H1〜H5、材料Iを使用する実験例I1〜I5、材料Jを使用する実験例J1〜J5、材料Kを使用する実験例K1〜K5及び材料Lを使用する実験例L1〜L5を設定した。全ての実験例において、供給ローラの回転方向を現像ローラに対して所謂ウィズ方向に設定した。各実験例について、現像ローラの周速度Vに対する供給ローラの周速度Vの比率R(V/V)、供給ローラと現像ローラとの接触ニップ幅、現像ローラへの供給ローラの食い込み量、現像ローラの周速度、示差走査熱量分析(DSC)により測定されるガラス転移時の第1の吸熱ピーク(内部材料のガラス転移点)と第2の吸熱ピーク(外殻のガラス転移点)、及びトナーの軟化点を、表3と表4に示すように設定した。
【0062】
試験1と同様、実験例ごとに、上記の画像形成装置を使用して白紙画像を10万枚連続プリントし、1万枚毎に、メモリ画像確認用の画像をプリントした。また、トナーの溶融、かぶり、メモリ画像および現像ローラの汚染に関する評価を、試験1と同様に行った。
【0063】
表3及び表4に示す試験結果について検討する。
【0064】
全ての実験例について、トナーの溶融が発生せず、かぶりの評価も良好であった。これは、供給ローラが現像ローラに対してウィズ方向に回転するように設定したことにより、現像ローラと供給ローラとの間に作用する摩擦力が小さくなり、それらのローラのニップ部における発熱とトナーのストレスが抑制されたためであると考えられる。
【0065】
材料Aを使用した実験例A1〜A5、材料Bを使用した実験例B1〜B5、材料Cを使用した実験例C1〜C5、材料Dを使用した実験例D1〜D5、材料Eを使用した実験例E1〜E5、材料Fを使用した実験例F1〜F5、材料Gを使用した実験例G1〜G5、及び材料Hを使用した実験例H1〜H5については、メモリ及び現像ローラの汚染の評価がいずれも合格基準を満たしている。
【0066】
これに対して、材料Iを使用した実験例I1〜I5、材料Jを使用した実験例J1〜J5、材料Kを使用した実験例K1〜K5、及び材料Lを使用した実験例L1〜L5については、いずれも現像ローラの汚染の評価が悪く、メモリの評価も実験例J3以外は悪かった。
【0067】
実験例I1〜I5でメモリ及び現像ローラの汚染の評価が悪い理由は、材料Iのセル数(27個/inch)が他の材料のセル数(30〜90個/inch)よりも少ないことから、現像ローラに接触するポリウレタンフォーム層のセル数が少なく、現像ローラ上のトナーを供給ローラにより十分に掻き取れないためであると考えられる。このことから、ポリウレタンフォーム層のセル数は30個/inch以上であることが好ましいことが分かった。
【0068】
実験例J1〜J5で現像ローラの汚染の評価が悪く、実験例J1,J2,J4及びJ5でメモリの評価が悪い理由は、材料Jのセル数(90個/inch)が他の材料のセル数(27〜80個/inch)よりも多いことから、供給ローラ表面の細かすぎるセルがトナーにより埋め尽くされてしまい、供給ローラ表面のセル内でトナーが凝集して、供給ローラのトナー掻き取り力が低下するためだと考えられる。このことから、ポリウレタンフォーム層のセル数は80個/inch以下であることが好ましいことが分かった。したがって、ポリウレタンフォーム層のセル数は30個/inch以上80個/inch以下であることが好ましい。なお、実験例J3でメモリの評価が良好であった理由は、実験例J3の周速比R(3.0)が、実験例J1,J2,J4及びJ5の周速比R(0.5〜2.0)よりも高く、これにより供給ローラのトナー掻き取り力が大きくなったためだと考えられる。
【0069】
実験例K1〜K5でメモリ及び現像ローラの汚染の評価が悪い理由は、材料Kのセル壁面の開口率(58%)が、他の材料のセル壁面の開口率(1〜50%)よりも高いことから、ポリウレタンフォーム層の内部に入り込んだトナーが徐々に凝集し、供給ローラのトナー掻き取り力が低下するためだと考えられる。このことから、ポリウレタンフォーム層のセル壁面の開口率は、50%以下であることが好ましいことが分かった。
【0070】
実験例L1〜L5でメモリ及び現像ローラの汚染の評価が悪い理由は、材料Lのセル壁面の開口率(1%)が、他の材料のセル壁面の開口率(3〜58%)よりも低く、材料Lがほぼ完全な独立気泡構造を有するためだと考えられる。具体的に説明すると、ポリウレタンフォーム層が独立気泡構造を有する場合、ポリウレタンフォーム層の内部にはトナーが入り込み難く、供給ローラに保持されるトナーは、ポリウレタンフォーム層の表面付近のセル内に満たされる。そのようにトナーで満たされたローラ表面のセルは、現像ローラ上のトナーを掻き取り難く、供給ローラのトナー回収性能が低くなるものと考えられる。このことから、ポリウレタンフォーム層のセル壁面の開口率は3%以上であることが好ましいことが分かった。したがって、ポリウレタンフォーム層のセル壁面の開口率は、3%以上50%以下であることが好ましい。
【0071】
また、全ての評価項目で合格基準を満たした実験例A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5、D1〜D5、E1〜E5、F1〜F5、G1〜G5及びH1〜H5は、ポリウレタンフォーム層の硬さが1gf/mm又は6gf/mmである。このことから、ポリウレタンフォーム層の硬さが1gf/mm以上6gf/mm以下であれば、その他の条件を満たすことで良好に画像を形成できることを確認できた。
【0072】
さらに、全ての評価項目で合格基準を満たした実験例A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5、D1〜D5、E1〜E5、F1〜F5、G1〜G5及びH1〜H5は、ポリウレタンフォーム層の密度が0.03〜0.2g/cmである。このことから、ポリウレタンフォーム層の密度が0.03g/cm以上0.2g/cm以下であれば、その他の条件を満たすことで良好に画像を形成できることを確認できた。
【0073】
加えて、全ての評価項目で合格基準を満たした実験例A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5、D1〜D5、E1〜E5、F1〜F5、G1〜G5及びH1〜H5は、ポリウレタンフォーム層の体積抵抗率が10〜10Ωcmである。このことから、ポリウレタンフォーム層の体積抵抗率は10Ωcm以上10Ωcm以下であれば、その他の条件を満たすことで良好に画像を形成できることを確認できた。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成と本発明に係る現像装置の断面を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1:画像形成装置、12:感光体、16:帯電ステーション、18:露光ステーション、20:現像ステーション、22:転写ステーション、24:クリーニングステーション、26:帯電装置、28:露光装置、30:画像光、32:通路、34:現像装置、36:転写装置、38:シート、40:クリーニング装置、42:ハウジング、44:開口部、48:現像ローラ、50:現像ギャップ、52:供給ローラ、54:芯金、56:ポリウレタンフォーム層、66:現像ローラと供給ローラとの接触部(ニップ部)、68:トナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体の外周面に対向配置され、上記静電潜像担持体の外周面に形成された静電潜像にトナーを付着させて上記静電潜像を可視像化する現像ローラと、
該現像ローラの外周面に接触しながら回転駆動され、上記接触部において上記現像ローラとの間でトナーの供給と回収を行うトナー供給ローラとを備え、
上記現像ローラと上記トナー供給ローラとが、それらの接触部において同一方向に移動するように回転するように配置された現像装置に用いられるトナー供給ローラであって、
芯金と、該芯金の外周面を覆うポリウレタンフォーム層とを有し、
上記ポリウレタンフォーム層は、1インチ当たりのセル数が30個以上80個以下であり、
上記ポリウレタンフォーム層のセルの壁面の開口率が3%以上50%以下であることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
上記ポリウレタンフォーム層は、該ポリウレタンフォーム層の厚さの表面側30%分の深さまで所定の押し当て面に押し込まれたときに該押し当て面が受ける単位長さ当たりの荷重が1gf/mm以上6gf/mm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のトナー供給ローラ。
【請求項3】
上記ポリウレタンフォーム層の密度が0.03g/cm以上0.2g/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー供給ローラ。
【請求項4】
上記ポリウレタンフォーム層の体積抵抗率が10Ωcm以上10Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー供給ローラ。
【請求項5】
ポリオールと、イソシアネートと、気泡形成用の気体と、イソシアネートとの化学反応により気体を発生させる発泡剤とを混合して製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー供給ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のトナー供給ローラを備えた現像装置。
【請求項7】
上記現像ローラへの上記ポリウレタンフォーム層の食い込み量が、上記ポリウレタンフォーム層の厚みの5%以上40%以下であり、
上記供給ローラの周方向において上記供給ローラと上記現像ローラとの接触ニップ幅が3mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
上記現像ローラの周速度が300mm/s以上600mm/s以下であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の現像装置。
【請求項9】
上記現像ローラ上のトナーの層厚を規制するための規制部材が、上記現像ローラと上記トナー供給ローラとの接触部よりも低い位置で上記現像ローラの外周面に接触または近接して配置されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の現像装置。
【請求項10】
内部材料と該内部材料を覆う外殻とからなるカプセル構造のトナーを含み、
該トナーについて示差走査熱量分析(DSC)により測定されるガラス転移時の吸熱ピークが、10℃以上30℃以下の第1のピークと、50℃以上65℃以下の第2のピークとを有し、
上記トナーについてフローテスターにより測定される軟化点が70℃以上110℃以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の現像装置。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−175699(P2009−175699A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291129(P2008−291129)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】