説明

トナー用樹脂、該トナー用樹脂を含有するトナー及び現像剤、並びに該現像剤を用いた画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジ

【課題】結晶性樹脂骨格を有する樹脂を含有するトナーにおいて、低温定着での定着性を十分に発揮できるトナーを提供することを目的とする。
【解決手段】結晶性ポリエステルユニット(CU)と、エステル結合密度が6〜18mmol/gの非結晶性ポリマーユニット(AU)が化学的に結合していることを特徴とするトナー用樹脂、及び該トナー用樹脂を含有するトナー。前記結晶性ポリエステルユニット(CU)は、直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位を主な単位として含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の現像剤に用いられるトナーの結着樹脂に関する。また、該樹脂を用いたトナー及び現像剤、並びに該現像剤を用いた画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置を利用するプリンタやMFPは、近年環境に配慮したものが求められており、例えば、プリンタやMFPが消費する電力を抑えることでCO2排出量を削減することや、原材料としてバイオマスマテリアルを活用することでカーボンニュートラルに近づけることなどが試みられている。このような背景において、電子写真用トナーとしては定着温度を下げることが望まれており、例えばトナーに用いられる結着樹脂として、定着時の加熱により瞬時に溶融するような結晶性樹脂を添加することが提案されている。またさらには、結着樹脂として結晶性樹脂を主成分として用いる方法も既に知られている。
しかし、今までの結晶性樹脂を主成分として用いられるトナーにおいては、確かに加熱により瞬時に溶融するものの、トナーの定着性としては不十分である問題があった。
【0003】
例えば特許文献1(特開2010−77419号公報)には、低温定着性および耐ブロッキング性に優れた樹脂粒子を提供する目的で、特定の貯蔵弾性率および損失弾性率を有する結晶性微粒子について開示され、さらに該結晶性微粒子に含有される結晶性樹脂としては、結晶性部と非結晶性部とで構成されるブロック樹脂が使用できることが開示されている。また、特許文献2(特開2009−300848号公報)等にも、結晶性ポリエステルブロック及び非結晶性ポリエステルブロックよりなるブロック共重合体を含むトナーが開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載のものは確かに結晶性部と非結晶性部とから構成されるブロック樹脂を使用しているが、非結晶性部に関しては特に規定がなく、例えば特許文献1の実施例における非結晶部は、エステル結合密度が5.0mmol/g程度のものであり、定着性としては不十分であるという問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、結晶性樹脂骨格を有する樹脂を含有するトナーにおいて、低温定着での定着性を十分に発揮できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、特定の結晶性樹脂骨格を有する樹脂を結着樹脂として含有するトナーが上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)結晶性ポリエステルユニット(CU)と、エステル結合密度が6〜18mmol/gの非結晶性ポリマーユニット(AU)が化学的に結合していることを特徴とするトナー用樹脂。
(2)前記結晶性ポリエステルユニット(CU)が、直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位を主な単位として含むことを特徴とする前記(1)に記載のトナー用樹脂。
(3)前記直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び前記直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位における直鎖状飽和脂肪族部分の少なくとも70個数%が、炭素数4〜10であることを特徴とする前記(2)に記載のトナー用樹脂。
(4)前記非結晶性ポリマーユニット(AU)が、非結晶性ポリエステルのユニットであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(5)前記非結晶性ポリエステルユニットが、ラセミポリラクチドを主成分とするユニットであることを特徴とする前記(4)に記載のトナー用樹脂。
(6)前記非結晶性ポリエステルユニットが、ラセミポリラクチドユニットであることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載のトナー用樹脂。
(7)前記トナー用樹脂における結晶性ポリエステルユニット(CU)と非結晶性ポリマーユニット(AU)の構成比が、質量比で99.5/0.5〜90/10であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(8)少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂として、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のトナー用樹脂を含むことを特徴とするトナー。
(9)前記トナー用樹脂が、前記結着樹脂の主成分であることを特徴とする前記(8)に記載のトナー。
(10)前記結着樹脂における結晶性ポリエステルユニットと非結晶性ポリマーユニットの構成比が、質量比で99.5/0.5〜85/15であることを特徴とする前記(8)又は(9)に記載のトナー。
(11)前記(8)〜(10)のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
(12)更にキャリアを含むことを特徴とする前記(11)に記載の現像剤。
(13)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が、前記(11)又は(12)に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
(14)静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、前記現像剤が、前記(11)又は(12)に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
(15)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記現像剤が、前記(11)又は(12)に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の特定の結晶性樹脂骨格を有する樹脂を含有するトナーは、低温定着においても十分な定着性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】プロセスカートリッジの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
通常、トナーで形成した画像を加熱定着する場合、定着部材表面の温度は100℃前後に達する。そのため、トナーは少なくとも100℃前後の温度で軟化しており、紙へのアンカリングおよびトナー同士の融着をするためには適度な粘度をもっている必要がある。したがって、トナー用の結着樹脂として非結晶性樹脂を用いるときには通常その樹脂のガラス転移温度が70℃未満に設定されることが多い。尤も、ガラス転移温度が低すぎる場合はトナーそのものの保存安定性が損なわれてしまうため、大抵の場合ガラス転移温度は少なくとも30℃以上に設定される。一方、トナー用の結着樹脂の主成分として結晶性樹脂が用いられる場合、樹脂の融点あるいは溶融し始めの温度を非結晶性樹脂のガラス転移温度と同じような考え方で設定することができる。つまり、融点あるいは溶融し始めの温度としては30〜70℃となる。そのような樹脂としては、主鎖に炭素数が4〜12程度のアルキレンを繰り返し単位にもつポリマーや、側鎖に炭素数が12以上のアルキル基を有するポリマーがあるが、いずれも1〜2価の炭化水素基を多く有するため、相対的に芳香族官能基やエステル、エーテル、ウレア、ウレタンなどの極性の比較的高い部位が少なくなり、その結果樹脂全体としても極性が低くなる。そのため、樹脂の溶融時にも界面自由エネルギーが低く、紙などへの接着性が従来の非結晶性樹脂ほど高くなかったと考えられる。
【0009】
そのような場合、比較的極性の高い樹脂、例えば従来公知の非結晶性樹脂を併用する方法も考えられるが、樹脂構造が大きく異なるため両者の樹脂は相溶せず、樹脂組成比に応じて島構造部分の特性しか発現されなかった。
そこで、結晶性ポリマーユニットと、適度に柔軟性を有しかつ極性の高い非結晶性ポリマーユニットとを好適な割合で結合させた樹脂(以下ハイブリッド樹脂とも称す)を得、それをトナー用結着樹脂として使用することにより、定着時の加熱により結晶性ポリマーユニットが瞬時に溶融すると同時に、極性の高い非結晶性ポリマーユニットが紙などへの接着性を発現することで低温での定着性を達成することができることを見出した。
【0010】
−ハイブリッド樹脂−
本発明におけるハイブリッド樹脂は、結晶性ポリエステルユニット(CU)と、エステル結合密度が6〜18mmol/gの非結晶性ポリマーユニット(AU)が化学的に結合した樹脂である。
【0011】
−結晶性ポリエステルユニット−
本発明における結晶性ポリエステルユニットとは、それ単体のポリマーのみで融点を有するようなポリエステルユニットのことである。このようなユニットがハイブリッド樹脂において結晶性を発現すれば、定着プロセスにおいてトナーが加熱された時に瞬時に溶融・低粘度化するため、定着部材から受ける圧力に対して容易に変形することができるようになる。
融点は示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークとして観測される。DSCにおける具体的な測定方法については後述する。
前記結晶性ポリエステルユニットは、直鎖状飽和脂肪族の連結基を主鎖に多く含むポリエステルユニットが好ましい。直鎖状飽和脂肪族の連結基を主鎖に多く含むことで、トナーとして好適な融点を持つ結晶構造をとることができる。直鎖状飽和脂肪族の連結基を主鎖に多く含むポリエステルユニットの構造は、直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位、直鎖状飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を主な単位として含むポリエステルユニットである。
【0012】
前記直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位としては、炭素数が2〜22の二価アルコールから誘導されるものが好ましく挙げられ、具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
【0013】
また、前記直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位としては、炭素数が2〜22の二価のカルボン酸から誘導されるものが挙げられ、具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
これらの多価アルコール、多価カルボン酸は、それぞれ1種類のみからなるポリエステルユニットであるほうが結晶性が高いため好ましいが、融点の調整の目的などで2種類以上の多価アルコールあるいは多価カルボン酸を用いても良い。
【0014】
一方、直鎖状飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位としては、炭素数が4〜22のヒドロキシカルボン酸もしくはこれらが環化したラクトンから誘導されるものが挙げられ、たとえば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、η-カプリロラクトン、λ-ラウロラクトンなどがある。これも、1種類のみからなるポリエステルユニットであるほうが結晶性が高いため好ましいが、融点の調整の目的などで2種類以上のラクトンを用いても良いし、前述の多価アルコール、多価カルボン酸と併用しても良い。
【0015】
さらには、結晶性を発現できる範囲において、直鎖状不飽和脂肪族基を導入しても良い。具体例としては、マレイン酸、フマル酸、1,3−n−プロペンジカルボン酸、1,4−n−ブテンジカルボン酸等の直鎖状不飽和二価カルボン酸由来の直鎖状不飽和脂肪族基などである。またさらに、環状構造を導入することもできる。フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などである。
【0016】
前記直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び前記直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位における直鎖状飽和脂肪族部分の少なくとも70個数%、好ましくは少なくとも80個数%が、炭素数4〜10であることが好ましい。炭素数が4未満のものや10を超えるものが多く存在すると、結晶性ポリエステルユニット部分に由来する融点が高すぎる、あるいは低すぎることになり、トナーの定着可能温度が高くなる、あるいは保存安定性に悪影響を及ぼすことがあるため、好ましくはない。
【0017】
−非結晶性ポリマーユニット−
本発明における非結晶性ポリマーユニットとは、それ単体のポリマーのみで融点を有さないようなポリマーユニットのことである。本発明において好適な非結晶性ポリマーユニットとしては、適度に柔軟性を有しかつ極性の高い非結晶性ポリマーユニットを用いることでトナーが定着プロセスにて定着される時に溶融状態になった後、非結晶性ポリマーユニットが紙などへの定着界面に濡れ、極性基などに起因する分子間力を発現するために定着性が良好になるものと考えられる。具体的には、十分なエステル結合密度を有するものを使用する。十分なエステル結合密度をしては、6〜18mmol/g、好ましくは10〜18mmol/g、さらに好ましくは12〜15mmol/gの範囲であるのがよい。エステル結合密度が6mmol/g未満であると紙などへの接着性が不十分となり、また18mmol/gを超えるようなユニットは加水分解をしやすいため好ましくはない。なお、極性という観点から考えればウレア結合やウレタン結合も極性の高い連結基ではあるが、これらの結合が多い場合は結合部位の分極が大きすぎるために結合同士の間で凝集力がはたらき定着時の粘度低下を阻害し易いため、これらの結合の多いポリマーユニットは好ましくない。
【0018】
上記のエステル結合密度を持つポリマーユニットを形成するためには、エステル結合を有する比較的低分子量のモノマーを重合させる、エステル結合部位の多いモノマーを重合させる、重合によりエステル結合を形成するような比較的低分子量のモノマーを重合させる、などの方法が考えられる。これらのひとつあるいはいくつかを満足しうるモノマーとしては、ビニル系ユニットを形成するものとしてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸エチルメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸エチルメチル、イタコン酸ジエチルなどがあり、ポリエステルユニットを形成するものとしてはグリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸などが挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルやラクチドが好ましいものとして挙げられる。非結晶性ポリマーユニットとしては非結晶性ポリエステルユニットが好ましく、非結晶性ポリエステルユニットの中でもラセミポリラクチドを主成分とするユニット、ラセミポリラクチドからなるユニットであることが特に好ましい。なお、非結晶性ユニットとしてポリエステルユニットを形成させる場合、例示したモノマーからなるユニットは場合によっては結晶性を発現してしまう場合がある。これらの骨格からなる結晶は融点が高く定着性能を著しく悪化するため、結晶化しないような設計を行わなければならない。具体的には、ユニットを小さくする、異種の構造や光学異性体モノマーを併用する等の方法で、ユニットの構造の規則性を低下させることで結晶化を抑えることができる。
また、上記のエステル結合密度の範囲になるのであれば、例示したモノマー以外の従来公知のビニルモノマーやポリエステルを供するモノマーを使用しても良い。
【0019】
エステル結合密度は、生成するユニット中のエステル結合のモル数を計算し、それを生成するユニットの質量で除することで求められる。
たとえば、モノマーがスチレンのみであれば、モノマーにはエステル結合は存在せず、重合によってもエステル結合は生成しないため、エステル密度は0mmol/gとなる。
【0020】
一方、モノマーがビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(以下BPA−2EO)633g、テレフタル酸332gの2種類であり、これらを縮重合させてユニットを得る場合を考えると、これらの場合もモノマー自身はエステル結合を持っていないが、縮重合の過程でエステル結合が形成される。
【0021】
分子量が十分に長いものとして考えれば、BPA−2EO1分子あたりエステル結合はひとつ、同じくテレフタル酸1分子あたりひとつのエステル結合が形成するので、生成するユニット中のエステル結合のモル数は、
633/316.39 + 332/166.13×1 = 4.00
から、4.00molであることが分かる。
縮重合においてBPA−2EO1分子あたり水(分子量18.02)が1分子、同じくテレフタル酸1分子あたり水が1分子離脱するので、理論上生成するユニットの量は以下のように算出される。
理論上生成する樹脂の量
=633[g]−(633[g]/316.39[g/mol])×18.02[g/mol]
+332[g]−(332[g]/166.13[g/mol])×18.02[g/mol]
=892.9[g]
したがってエステル密度は、
4.00/892.9 = 4.48 × 10-3
となり、4.48×10-3mol/g = 4.48mmol/gと算出できる。
【0022】
また、モノマーとしてラクチド1mol(144g)を開環重合させてポリラクチドユニットを形成する場合は、ラクチド1分子には2つのエステル結合があり、開環重合の過程でもエステル結合の数は変わらないため、
2/144 = 1.39×102
であり、1.39×102mol/g = 13.9mmol/gと算出できる。
【0023】
エステル結合密度の別の計算例として、モノマーがメタクリル酸メチル(分子量99.11)198gのみであり、これを付加重合させてポリメタクリル酸メチルのユニットを得る場合、重合反応によってエステル結合の生成はないが、モノマー1分子中にエステル結合が1つ存在するため、生成するユニット中のエステル結合のモル数はモノマーのモル数と同じであり、
198/99.11 = 2.00
となる。
理論上生成するユニットは198gであるから、エステル密度は、
2.00/198 = 1.019×10-2
となり、1.019×10-2mol/g = 10.19mmol/gと算出できる。
【0024】
最後に、特開2010−77419号公報の結晶性樹脂A14の非晶部に用いられている非結晶性部c1’について計算例を示す。非結晶性部c1’の重合にはモノマーとして1,2−プロピレングリコール831部(10.9mol/部)、テレフタル酸750部(2.18mol/部)が用いられている。
これらを縮重合させてユニットを得る場合、ジオールである1,2−プロピレングリコールはジカルボン酸であるテレフタル酸に対して過剰にあるため、過剰分は重合反応に関与せず後の工程で留去されるものと考えられる。したがって、この2つのモノマーが等モル(2.18mol/部)で反応すると考えると、生成するユニット中のエステル結合のモル数は、
2.18+2.18 = 4.16
から、4.16mol/部であることが分かる。
縮重合において各モノマー1分子あたり水(分子量18.02)が1分子離脱するので、理論上生成するユニットの量は以下のように算出される。
理論上生成する樹脂の量
=166[部]−(166[部]/76.09[g/mol])×18.02[g/mol]
+750[部]−(750[部]/344.45[g/mol])×18.02[g/mol]
=837.5[部]
したがってエステル密度は、
4.16/837.5 = 4.97 × 10-3
となり、4.97×10-3mol/g = 4.97mmol/gと算出できる。
【0025】
なお、上記の縮重合の場合において、縮重合をある程度行わせた後にカルボン酸あるいはアルコールを添加するような場合は、ポリマー末端にそれらの化合物が結合すると考える。このときそれらの化合物1分子あたり0.5個のエステル結合が形成するとして計算する。
【0026】
本発明で導入する非結晶性ポリマーユニットの割合では、非結晶性ポリマーユニット部分のガラス転移温度を明確に測定しにくいが、組成上はそのガラス転移温度は40〜80℃程度になっていることが好ましい。40℃を下回るとトナーの保存安定性が損なわれる可能性があり、80℃を超えると定着性に不利に働く可能性がある。ただし、非結晶性ポリマーユニットが短い場合はFox-Floryの経験則からも考えられるように実際のガラス転移は組成上推定されるガラス転移温度よりも低くなるはずであるため、特に非結晶性ポリマーユニットが少ない場合(ハイブリッド樹脂中で重量比で5%未満の場合)は組成から推定されるガラス転移温度が80℃を超えても構わない。
【0027】
−ユニットの比率−
ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステルユニット(CU)と非結晶性ポリマーユニット(AU)は、重量比率でCU/AU=99.5/0.5〜90/10が好ましく、99/1〜92/8がより好ましく、98/2〜95/5がさらに好ましい。非結晶性ポリマーユニットが少なすぎるとそのユニットの効果つまり接着性発現がしにくくなり、一方で非結晶性ポリマーユニットが多すぎる場合には、結晶性ポリエステルユニットの結晶性を阻害してしまうために結晶性ポリエステルユニットの中でアモルファス状態になる部分が多くなり、その結果トナーの保存安定性が損なわれてしまう。
【0028】
−他のポリマーとの比率−
また、本発明のトナーは、結着樹脂として上記にて説明したハイブリッド樹脂以外にも、本発明の効果を損なうことのない範囲において従来公知の結着樹脂や結晶性ポリエステル樹脂を併用しても良い。
その場合において、結着樹脂全体にしめる結晶性ポリエステルユニット(つまり、本願ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステルユニット(CU)と従来公知の結着樹脂や結晶性ポリエステル樹脂に含まれる結晶性ポリエステル部分)と非結晶性ポリマーユニット(つまり、本願ハイブリッド樹脂を構成する非結晶性ポリマーユニット(AU)と従来公知の結着樹脂や結晶性ポリエステル樹脂に含まれる非結晶性ポリマー部分)の比率は、99.5/0.5〜85/15の範囲にあることが好ましく、99/1〜90/10の範囲にあることがより好ましく、98/2〜95/5がさらに好ましい。
【0029】
−ハイブリッド樹脂を合成する方法−
ハイブリッド樹脂を合成する方法としては、
1)あらかじめ結晶性ポリエステルユニット(CU)と非結晶性ポリマーユニット(AU)を合成した後に結合する方法、
2)一方のユニットを合成し、得られたユニットと他方のユニットを形成するモノマーを共存させた状態で他方のユニットを合成することで一方のユニットと他方のユニットが結合した樹脂を得る方法
がある。
1)について具体的には、
1−1)CUもしくはAUの一方の側鎖の一部あるいは末端にイソシアネート基を導入し、他方の側鎖の一部あるいは末端にヒドロキシル基もしくはメルカプト基などイソシアネートと反応し易い官能基を導入しておき、CUとAUを混合し反応させることでウレタン結合を形成してハイブリッド樹脂を得る方法
1−2)CUもしくはAUの一方の側鎖の一部あるいは末端をカルボキシル基もしくは酸ハロゲン化物とし、他方の側鎖の一部あるいは末端をヒドロキシル基としておき、CUとAUを混合して反応させることでエステル結合を形成してハイブリッド樹脂を得る方法
等が挙げられる。
【0030】
1−1)のイソシアネートの導入方法としては、あらかじめユニット中にヒドロキシル基を導入しておき、導入したヒドロキシル基にポリイソシアネートを反応させてウレタン結合を経由したイソシアネート基を導入する方法、ユニット形成時にモノマーとしてイソシアネート基を有するモノマー(たとえば2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート、もしくはこれらのイソシアネートを保護基でブロックしたものなど)を添加してユニット中にイソシアネート基を導入する方法などがある。
ユニット中にヒドロキシル基を導入する方法としては、ポリオールとポリカルボン酸もしくはそのエステルとの縮重合によってユニットを得る場合は両論比でポリオールを若干過剰に仕込み反応させればユニット末端の多くがヒドロキシル基となるし、開環重合によってユニットを得るのであればアルコールを反応開始剤として重合すれば反応末端はヒドロキシル基となり、ビニルモノマーの付加重合でユニットを合成する場合は開始剤がヒドロキシル基を形成するもの(たとえば過酸化水素)を使用することや、モノマーとしてヒドロキシル基を有するもの(たとえばヒドロキシエチルアクリレートやヒドロキシエチルメタクリレートなど)を添加する方法で、末端あるいは側鎖にヒドロキシル基を導入することができる。
【0031】
一方、2)の具体的な方法としては、たとえば
2−1)結晶性ポリエステルユニットを合成した後、非結晶性ポリマーユニットを形成するモノマーを共存させて重合を行う方法
2−2)非結晶ポリマーユニットを合成した後、結晶性ポリエステルユニットを形成するモノマーを共存させて重合を行う方法
がある。
2−1)については、非結晶性ポリマーユニットがポリエステルユニットである場合は結晶性ポリエステルユニットを合成するのと同様に反応を行えばよく、非結晶性ポリマーユニットがビニルポリマーユニットである場合は、結晶性ポリマーユニット残基と反応するビニルモノマー(残基がヒドロキシル基であればアクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するモノマー、残基がカルボキシル基であればヒドロキシエチルアクリレートやヒドロキシエチルメタクリレートなど)とともにビニルポリマーユニットを形成させればよい。後者の場合、あらかじめ結晶性ポリマーユニット残基と反応するビニルモノマーを反応させた後に所望のビニルユニットを合成しても良いし、結晶性ポリマーユニット残基と反応するビニルモノマーと所望のビニルユニットを形成するためのモノマーを同時に添加して反応させてもよいが、あらかじめ結晶性ポリマーユニット残基と反応するビニルモノマーを反応させておいたほうがハイブリッド樹脂が確実に得られ易い。
【0032】
−ハイブリッド樹脂の物性−
ハイブリッド樹脂は結晶性ポリエステルユニットに由来する融点を有する。ハイブリッド樹脂の融点の下限は35℃、好ましくは45℃、より好ましくは50℃である。融点が低い場合は保存安定性が不十分となる。一方、融点の上限は80℃、好ましくは70℃、より好ましくは60℃である。80℃を超えると定着性への効果が発揮しにくくなる。なお、融点は後述のとおり示唆走査熱量計(DSC)によって測定される値を言う。
もしハイブリッド樹脂のガラス転移温度が観測される場合、その温度は40〜70℃であることが好ましい。40℃を下回るとトナーの保存安定性が損なわれる可能性があり、70℃を超えると定着性に不利に働く可能性がある。
【0033】
<融点、ガラス転移温度(Tg)測定(DSC)>
樹脂の融点及びガラス転移温度(Tg)を測定する装置として、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を使用した。
試料約10mgをアルミニウム製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットした。まず、室温から昇温速度10℃/分で200℃まで加熱した後、180℃で10分間放置し、その後、0℃まで試料を冷却して10分間放置し、窒素雰囲気下で再度200℃まで昇温速度10℃/分で加熱してDSC測定を行った。Tgは、TAS−100システム中の解析システムを用いて、Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出した。
また、吸熱ピークにおける極小点となる温度を融点とした。なお、本発明において「明確な吸熱ピーク」とは、吸熱ピークの吸熱量が20J/g以上のものを指す。
【0034】
ハイブリッド樹脂の好ましい分子量は、Mwでは10,000〜50,000、好ましくは20,000〜40,000、より好ましくは25,000〜35,000である。10,000を下回るとこのハイブリッド樹脂を主たる結着樹脂として用いたトナーの耐熱保存性が悪化し易く、50,000を上回る場合は定着性能を十分に発揮できない。
また、数平均分子量(Mn)の好ましい範囲は1,000〜30,000であり、より好ましい範囲は5,000〜25,000、さらに好ましい範囲は8,000〜20,000である。1,000未満である場合、つまり低分子量成分が多い場合はトナーの耐熱保存性の悪化を招きやすく、30,000を上回る場合は定着性能が劣りやすい。
結晶性ポリエステルユニットの好ましい分子量は、Mwでは10,000〜50,000、好ましくは20,000〜40,000、より好ましくは25,000〜35,000である。Mwが10,000を下回る結晶性ポリエステルユニットを原材料としてハイブリッド樹脂を得てトナーに適用した場合、トナーの耐熱保存性が悪化し易くい。これは、結晶性部位が結晶化するのに不十分となるため全体としてアモルファス樹脂に近いものとなってしまい、結晶性ポリエステルユニット部分がアモルファスのようになると考えられる。また、Mwが50,000を上回る場合は定着性能を十分に発揮できない。
【0035】
次に本発明のトナーについて説明する。本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂として、結晶性ポリエステルユニット(CU)と、エステル濃度が6〜18mmol/gの非結晶性ポリマーユニット(AU)が化学的に結合したハイブリッド樹脂を含む。
上述したように、結着樹脂として上記にて説明したハイブリッド樹脂以外に、本発明の効果を損なうことのない範囲において従来公知の結着樹脂や結晶性ポリエステル樹脂を併用することもできるが、前記ハイブリッド樹脂が結着樹脂の主成分であることが好ましい。前記ハイブリッド樹脂以外の樹脂を併用する場合は、上述のとおり、結着樹脂全体における結晶性ポリエステルユニットと非結晶性ポリマーユニットの構成比は、質量比で99.5/0.5〜85/15の範囲にあることが好ましい。
【0036】
(着色剤)
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用できる。
例えば、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。
また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、
ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
これらは、1種または2種以上を使用することができる。
【0037】
トナー中における着色剤の含有量は、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0038】
本発明のトナーは、必要に応じて離型剤、帯電制御剤、外添剤、更に必要に応じてその他の成分を用いることができる。
(離型剤)
本発明においてトナーに使用される離型剤としては公知のものが全て使用できるが、特にパラフィンワックス、脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散した時の粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。その理由は本発明のトナー結着樹脂に対してこれらのワックスは適度に微分散するため後述するようにオフセット防止性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なためである。これらワックス類は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
その他の離型剤としては、固形シリコーンワックス、高級脂肪酸高級アルコール、モンタン系エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、従来公知のいかなる離型剤をも混合して使用できる。
本発明のトナーに使用する離型剤のTgは70〜90℃が好ましい。70℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃超では低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生する。これらの離型剤の使用量は、トナー樹脂成分に対し、1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%である。1質量%未満ではオフセット防止効果が不十分であり20質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
【0040】
(帯電制御剤:CCA)
本発明のトナーは必要に応じ帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Bas ic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など及びこれらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、或いはジブチル又はジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0041】
前記帯電制御剤の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。前記含有量が、0.01質量部以上であると、帯電制御性が得られ、2質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、主帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0042】
(外添処理)
本発明のトナーはその流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、製造されたトナー母体粒子に更に無機微粒子(外添剤)を添加混合してもよい。このような添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。なお、添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。又はじめに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーが得られる。
【0043】
(外添剤)
本発明に用いられる外添剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、流動性付与、帯電性や現像性付与の目的から、無機微粒子が好ましく用いられる。この無機微粒子の一次粒子径は、5×10-3〜2μmであることが好ましく、特に5×10-3〜0.5μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の添加量は、画像形成用トナーの0.01〜5wt%であることが好ましい。
【0044】
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
このような外添剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0045】
(その他の成分)
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられ、これらは公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
トナーの製造方法
本発明におけるトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナーにおいて、結着樹脂として上記ハイブリッド樹脂を含有するものであれば、いかなる製造方法で得られたものであってもよい。
【0047】
本発明におけるトナーはどのような方法および過程で製造されたトナーであってもよいが、トナーを製造する方法として、次のような製造方法により得られたものであることが、粒径が均一な樹脂粒子となることからさらに好ましい。
(重合トナーの製造例)
本発明のトナーが水系媒体中で生成されるもの(重合トナー)では、先ず、上記の着色剤、ハイブリッド樹脂、離型剤等のトナー材料を有機溶媒中に分散あるいは溶解させトナー材料液を作る。
着色剤、ハイブリッド樹脂、離型剤は、予め有機溶媒に分散あるいは溶解させておいたものを混合しても良い。
【0048】
(有機溶媒)
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチルが好ましい。有機溶媒の使用量は、前記トナー材料100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0049】
次にトナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
(水系媒体)
水系媒体は、水単独でもよいし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0050】
(界面活性剤、樹脂微粒子)
また、水系媒体中に界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加えるのは、着色剤、ハイブリッド樹脂、離型剤等の分散を良好にするためである。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0051】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0052】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0053】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0054】
(樹脂微粒子)
樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。
このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。例えばビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等の樹脂が挙げられる。樹脂微粒子の平均粒径は5〜200nm、好ましくは20〜300nmである。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0055】
(分散剤)
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0056】
(分散の方法)
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0057】
(有機溶媒の除去、洗浄、乾燥)
乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添剤として母体粒子に付着させ、トナーを得る。なお、荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0058】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0059】
粒径均一性の観点から、本発明のトナーの[体積平均粒径/個数平均粒径]の値は、1.0〜1.4であるのが好ましく、1.0〜1.3であるのがさらに好ましい。トナーの体積平均粒径は、用途により異なるが、一般的には0.1〜16μmが好ましい。上限は、さらに好ましくは11μm、特に好ましくは9μmであり、下限は、さらに好ましくは0.5μm特に好ましくは1μmである。なお、体積平均粒径および個数平均粒径は、マルチサイザーIII(コールター社製)で同時に測定することができる。
【0060】
<粒径測定>
着色樹脂粒子の体積平均粒径はコールターカウンター法により行われる。測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII、コールターマルチサイザーIII(いずれもコールター社製)があげられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、上記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径、個数平均粒径を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00〜40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0061】
<分子量測定(GPC)>
樹脂の分子量測定は、GPC(gel permeation chromatography)によって、以下の条件で測定した。
・装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
・カラム:KF801〜807(ショウデックス社製)、温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
・試料:濃度0.05〜0.6%の試料を0.1mL注入した。
以上の条件で測定した樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量を算出した。検量線作製用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製のShowdexSTANDARDのStd.No S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580、トルエンを用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0062】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明のトナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0063】
(キャリア)
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている静電潜像担持体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記芯材の粒径としては、平均粒径(重量平均粒径(D50))で、10〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。前記平均粒径(重量平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、200μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0065】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー(フッ化三重(多重)共重合体)、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0066】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、一般的に知られているシリコーン樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性したシリコーン樹脂、などが挙げられる。
前記シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。
前記変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)、などが挙げられる。
なお、シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
【0067】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
【0068】
前記焼付の方法としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0069】
前記現像剤が二成分現像剤である場合には、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分系現像剤のトナーとキャリアの好ましい混合割合は、一般にキャリア100質量部に対しトナー1〜10.0質量部である。
【0070】
(画像形成装置)
本発明のトナーを用いる画像形成装置の概略について以下述べる。
本発明の画像形成装置は静電潜像担持体(感光体)と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有しており、使用するトナーとして本発明のトナーを用いる。
本発明の電子写真式画像形成装置の一例としての複写機を図1に示す。
図1は、本発明の一実施の形態に係るカラー画像形成装置の内部構成図の一例を示す。この具体例はタンデム型間接転写方式の電子写真複写装置であるが、本発明の画像形成装置は本具体例に限ったものではない。
【0071】
図中符号100は複写装置本体、200は複写装置本体100を載せる給紙テーブル、300は複写装置本体100上に取り付けるスキャナ(読取り光学系)、400はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体100の中央位置には、横方向へ延びる無端ベルト状の中間転写体10を設ける。そして、図示例では中間転写体を3つの支持ローラ14・15・16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。この図示例では、3つの支持ローラの中で、第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設ける。また、3つの支持ローラの中で第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間に張り渡した中間転写体10上には、その搬送方向に沿って、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム画像形成部20を構成する。タンデム画像形成部20の直上には、図に示すように、さらに露光装置21を設ける。一方、中間転写体10を挟んでタンデム画像形成部20と反対の側には、2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、図示例では、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写体10上の画像をシートに転写する。2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置25を設ける。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。上述した2次転写装置22は、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。なお、図示例では、このような2次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成部20と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置28を備える。
【0072】
さて、いまこのカラー電子写真装置を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16のうちの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体10を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18でその感光体40を回転して各感光体40上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。
【0073】
そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写体10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着した後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。一方、画像転写後の中間転写体10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0074】
さて、上述したタンデム画像形成部20において、個々の画像形成手段18は、ドラム状の感光体40のまわりに、帯電装置60、現像装置61、1次転写装置62、除電装置64などを備えている。感光体クリーニング装置63は少なくともブレードクリーニング部材を持つ。
【0075】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含み、現像剤として本発明の画像形成用トナーを含む現像剤を用いる。
【0076】
本発明の画像形成用トナーを前記静電潜像担持体と、現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジに収容して用いることもできる。
図2に本発明の画像形成用トナーを有するプロセスカ−トリッジを備えた画像形成装置の概略構成を示す。
図2において、1はプロセスカ−トリッジ全体を示し、2は感光体、3は帯電手段、4は現像手段、5はクリーニング手段を示す。
本発明においては、上述の感光体2、帯電手段3、現像手段4及びクリ−ニング手段5等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ−トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ−トリッジを複写機やプリンタ−等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。
【0077】
本発明の画像形成用トナーを有するプロセスカ−トリッジを備えた画像形成装置の動作を説明すると次の通りである。
感光体2が所定の周速度で回転駆動される。感光体2は回転過程において、帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレ−ザ−ビ−ム走査露光等の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして感光体の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで現像手段4によりトナ−現像され、現像されたトナ−像は、給紙部から感光体と転写手段との間に感光体の回転と同期されて給送された転写材に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた転写材は感光体面から分離されて像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピ−)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体の表面は、クリ−ニング手段によって転写残りトナ−の除去を受けて清浄面化され、更に除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【実施例】
【0078】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。尚、部は質量部を示す。
(ハイブリッド樹脂1の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,10−デカンジオール353部、アジピン酸289部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット1]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット1]は、数平均分子量が14000、重量平均分子量が33200、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が65℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット1]190部、L−ラクチド8.5部、D−ラクチド1.5部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂1]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂1]の数平均分子量は15000、重量平均分子量は345000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が64℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット1]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0079】
(ハイブリッド樹脂2の合成)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,10−デカンジオール337部、1,6−ヘキサンジオール11部、アジピン酸286部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット2]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット2]は、数平均分子量が9100、重量平均分子量が26500、融点が61℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット2]180部、L−ラクチド17部、D−ラクチド3部、オクチル酸錫0.3部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂2]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂2]の数平均分子量は19000、重量平均分子量は30100、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が59℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット2]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0080】
(ハイブリッド樹脂3の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット1]174部、L−ラクチド22部、D−ラクチド4部、オクチル酸錫0.33部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂3]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂3]の数平均分子量は16600、重量平均分子量は359000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が58℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット1]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0081】
(ハイブリッド樹脂4の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,10−デカンジオール312部、1,6−ヘキサンジオール26部、アジピン酸287部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット4]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット4]は、数平均分子量が11400、重量平均分子量が33100、融点が57℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット4]197部、L−ラクチド2部、D−ラクチド1部、オクチル酸錫0.1部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して1時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂4]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂4]の数平均分子量は11800、重量平均分子量は34000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が56℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット4]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0082】
(ハイブリッド樹脂5の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット4]196部、L−ラクチド2部、D−ラクチド2部、オクチル酸錫0.1部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して1時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂5]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂5]の数平均分子量は11900、重量平均分子量は34400、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が54℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット4]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0083】
(ハイブリッド樹脂6の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール246部、アジピン酸60部、セバシン酸320部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット6]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット6]は、数平均分子量が7000、重量平均分子量が22900、融点が54℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット6]186部、L−ラクチド14部、オクチル酸錫0.4部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂6]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂6]の数平均分子量は7500、重量平均分子量は25000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が52℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット6]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0084】
(ハイブリッド樹脂7の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前述の[結晶性ポリエステルユニット1]190部、L−ラクチド7部、D−ラクチド1部、ε−カプロラクトン2部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂7]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂7]の数平均分子量は14900、重量平均分子量は348000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が60℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット1]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0085】
(ハイブリッド樹脂8の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前述の[結晶性ポリエステルユニット1]190部、L−ラクチド6.5部、D−ラクチド0.5部、グリコリド3部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂8]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂8]の数平均分子量は14600、重量平均分子量は349000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が62℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット1]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0086】
(ハイブリッド樹脂9の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前述の[結晶性ポリエステルユニット1]190部、L−ラクチド2.7部、D−ラクチド0.3部、グリコリド7部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂9]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂9]の数平均分子量は13800、重量平均分子量は341000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が61℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット1]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0087】
(ハイブリッド樹脂10の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール230部、アジピン酸54部、セバシン酸332部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット10]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット10]は、数平均分子量が9500、重量平均分子量が26700、融点が57℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット10]400部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを12部、オクチル酸錫1部を仕込み、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。その後、温度を85℃まで下げてから、メタクリル酸メチル40部とアゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合液を2時間かけて滴下し、さらに4時間反応を行い、[ハイブリッド樹脂10]を得た。得られた[ハイブリッド樹脂10]の数平均分子量は11200、重量平均分子量は45000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が54℃であった。
明確な吸熱ピークがひとつだけであったことから、[結晶性ポリエステルユニット10]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0088】
(ハイブリッド樹脂11の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール238部、アジピン酸10部、セバシン酸385部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット11]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット11]は、数平均分子量が14800、重量平均分子量が36100、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が66℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット11]190部、L−ラクチド8.5部、D−ラクチド1.5部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂11]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂11]の数平均分子量は16100、重量平均分子量は37000、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が65℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット11]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0089】
(ハイブリッド樹脂12の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール239部、セバシン酸395部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット12]を合成した。 得られた[結晶性ポリエステルユニット12]は、数平均分子量が9000、重量平均分子量が22300、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が63℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット12]190部、L−ラクチド8.5部、D−ラクチド1.5部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂12]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂12]の数平均分子量は9800、重量平均分子量は24400、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が61℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット12]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0090】
(ハイブリッド樹脂13の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール240部、セバシン酸389部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット13]を合成した。 得られた[結晶性ポリエステルユニット13]は、数平均分子量が5500、重量平均分子量が13100、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が61℃であった。
ついで、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、上記の[結晶性ポリエステルユニット13]190部、L−ラクチド8.5部、D−ラクチド1.5部、オクチル酸錫0.15部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[ハイブリッド樹脂13]を取り出した。得られた[ハイブリッド樹脂13]の数平均分子量は6000、重量平均分子量は14500、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が57℃であった。
なお、明確な吸熱ピークがひとつだけであったこと、一般にポリラクチドの融点は170〜180℃であるがこの温度域には吸熱ピークが見られなかったことから、[結晶性ポリエステルユニット13]に付加重合されたポリマーユニットは非結晶性であることがわかる。
【0091】
(ハイブリッド樹脂101の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前述の[結晶性ポリエステルユニット1]190部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物6部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物7部、テレフタル酸7部、及びジブチルスズオキシド0.2部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[ハイブリッド樹脂101]を得た。得られた[ハイブリッド樹脂101]の数平均分子量は15200、重量平均分子量は35200、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が63℃であった。
【0092】
(ハイブリッド樹脂102の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,10−デカンジオール356部、アジピン酸280部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステルユニット102]を合成した。得られた[結晶性ポリエステルユニット102]は、数平均分子量が4900、重量平均分子量が11600、融点が62℃であった。
別途、冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、トルエンジイソシアネート39部および2−ブタノン100部を仕込み、攪拌して均一な溶液を作製した。ここに1,2−プロピレングリコール15部を投入し80℃で2時間反応させ、末端にイソシアネート基を有する非結晶性ポリウレタンユニットを合成した。ここに、上記の[結晶性ポリエステルユニット102]130部と2−ブタノン130部を混合した溶液を投入し、80℃で4時間反応したのち溶媒を除去して、[ハイブリッド樹脂102]を得た。得られた[ハイブリッド樹脂102]の数平均分子量は9500、重量平均分子量は34200、DSCで吸熱ピークは明確な吸熱ピークが一つだけ観測され、融点が61℃であった。
【0093】
得られた[ハイブリッド樹脂1]〜[ハイブリッド樹脂102]の非結晶性ポリマーユニット(AU)の含有率、結晶性ポリエステルユニット(CU)の直鎖状飽和脂肪族部分の炭素数4〜10の個数%、非結晶性ポリマーユニット(AU)のエステル結合密度を表1に示す。
【表1】

【0094】
(結晶性ポリエステル樹脂1の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,10−デカンジオール353部、アジピン酸289部、及びジブチルスズオキシド0.8部を仕込み、常圧下、180℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で、4時間反応させて、[結晶性ポリエステル樹脂1]を合成した。得られた[結晶性ポリエステル樹脂1]は、数平均分子量が14000、重量平均分子量が33200、DSCで吸熱ピークは一つだけ観測され、融点が65℃であった。
【0095】
(非結晶性樹脂1の製造)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、L−ラクチド207部、D−ラクチド69部、ε−カプロラクトン20部、ステアリルアルコール4.7部、オクチル酸錫3部を投入し、5時間真空乾燥後、窒素置換を行った。その後、窒素雰囲気下攪拌をしながら190℃で2時間反応を行った。さらに190℃のまま窒素導入を停止して2時間減圧を行った。その後再度窒素導入を行って常圧に戻し、反応釜中の[非結晶性樹脂1]を取り出した。得られた[非結晶性樹脂1]の数平均分子量は15000、重量平均分子量は345000、DSCで明確な吸熱ピークは見られず、ガラス転移温度が45℃付近に見られた。
【0096】
(着色剤分散液の製造)
ビーカー内に銅フタロシアニン20部と着色剤分散剤(ソルスパーズ28000;アビシア株式会社製)4部、および酢酸エチル76部を入れ、攪拌して均一分散させた後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散して、[着色剤分散液1]を得た。[着色剤分散液1]を堀場製作所製粒子径測定装置LA−920で測定した体積平均粒径は0.3μmであった。
【0097】
(変性ワックスの製造)
温度計および撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン454部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業(株)製サンワックス LEL−400:軟化点128℃)150部を投入し、窒素置換後170℃に昇温して十分溶解し、スチレン595部、メタクリル酸メチル255部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34部およびキシレン119部の混合溶液を170℃で3時間で滴下して重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、[変性ワックス1]を得た。[変性ワックス1]のMnは1872、Mwは5194、Tgは56.9℃であった。
【0098】
(ワックス分散液の製造)
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、パラフィンワックス(融点73℃)10部、[変性ワックス1]1部、酢酸エチル33部を投入し、78℃に加熱して充分溶解し、1時間で30℃まで冷却を行いワックスを微粒子状に晶析させ、さらにウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、[ワックス分散液1]を得た。
【0099】
(樹脂溶液の製造)
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、[ハイブリッド樹脂1]100部、酢酸エチル100部を入れ、50℃まで加温し攪拌して均一相を作製して[樹脂溶液1]を得た。
【0100】
[実施例1]
ビーカー内に[樹脂溶液1]60部、[ワックス分散液1]27部、および[着色剤分散液1]10部を入れ、50℃にてTK式ホモミキサーで8,000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させて[トナー材料液1]を得た。
ビーカー内にイオン交換水97部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25wt%水性分散液6部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1部、およびドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(三洋化成工業製、「エレミノールMON−7」)10部を入れ均一に溶解した。
ついで50℃で、TK式ホモミキサーを10,000rpmに撹拌しながら、[トナー材料液1]75部を投入し2分間撹拌した。
ついでこの混合液を撹拌棒および温度計付のコルベンに移し、55℃で濃度が0.5%以下となるまで酢酸エチルを留去し、[樹脂粒子の水性樹脂分散体1]を得た。
次いで、[樹脂粒子の水性樹脂分散体1]これを室温まで冷ました後、濾別し、
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。
得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。
得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
得られたケーキを解砕した後40℃にて22時間乾燥を行い、体積平均粒径が6.5μmの[樹脂粒子1]を得た。
【0101】
得られた[樹脂粒子1]を100質量部と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、トナー1を作製した。
【0102】
得られたトナーについて以下のように評価した。
[定着性]
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した電子写真方式の複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、定着ベルトの温度を100℃または120℃になるように設定し、普通紙及び厚紙の転写紙タイプ6200(株式会社リコー製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cm2のベタ画像を形成した。
定着画像について、上島製作所製描画試験器AD−401を使用し、定着画像の着色部分にサファイヤ針(半径125μm)、針回転直径8mm、荷重1gの条件で当接した状態で走行させ、サファイヤ針尖端部の走行面を目視により観察した。観察の観点は以下のとおりである。
◎:引っかき痕がまったく見られず、
引っかいた部分をガーゼで擦っても画像はまったく剥がれない
○:引っかき痕がまったく見られないが、
引っかいた部分をガーゼで擦ると引っかき痕部分の画像はわずかに剥がれる
△:引っかき痕がわずかに見られ、
引っかいた部分をガーゼで擦ると引っかき痕部分の画像が剥がれる
×:引っかき痕が見られる。
◎、○であれば、問題なく使用できる。
【0103】
次に、ベタ画像上にガムテープを張り、ゆっくりとはがしたときの画像剥がれの様子を観察した。
◎:画像はまったく剥がれない
○:画像はわずかに剥がれる
△:画像が全体の1割以上剥がれる
×:画像全体が剥がれる
◎、○であれば、実使用上問題ないと判断した。
【0104】
[保存安定性]
トナー試料20gを20mlのガラス瓶に入れ、開放した状態で50℃/70%の恒温高湿槽にて24時間静置した後、このトナーを24℃/50%の環境に移して24時間静置した。このサンプルについて、針入度試験(JIS K2235−1991)にて針入度の測定を行った。この値が大きいトナー程、熱に対する保存性が優れている。この値が10mm未満の場合は、使用上問題が発生する可能性が高い。
針入度に基づく熱保存性の判定基準は次の通りである。
◎:20mm以上
○:15mm〜20mm未満
△:10mm〜15mm未満
×:10mm未満
【0105】
評価結果は表2に示す。
【0106】
実施例2〜10
ハイブリッド樹脂1を、ハイブリッド樹脂2〜10に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー2〜10を作製し、評価を行った。
【0107】
実施例11
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、[ハイブリッド樹脂1]95部、[結晶性ポリエステル樹脂1]5部、酢酸エチル100部を入れ、50℃まで加温し攪拌して均一相を作製して[樹脂溶液11]を得た。
以降、[樹脂溶液1]を[樹脂溶液11]に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー11を作製し、評価を行った。
【0108】
実施例12
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、[ハイブリッド樹脂4]95部、[非結晶性樹脂1]5部、酢酸エチル100部を入れ、50℃まで加温し攪拌して均一相を作製して[樹脂溶液12]を得た。
以降、[樹脂溶液1]を[樹脂溶液12]に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー12を作製し、評価を行った。
【0109】
実施例13〜15
ハイブリッド樹脂1を、ハイブリッド樹脂11〜13に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー13〜15を作製し、評価を行った。
【0110】
比較例1〜2
ハイブリッド樹脂1を、ハイブリッド樹脂101〜102に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー101〜102を作製し、評価を行った。
比較例3
ハイブリッド樹脂1を、結晶性ポリエステル樹脂1に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー103を作製し、評価を行った。
【0111】
比較例4
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、[結晶性ポリエステル樹脂1]95部、[非結晶性樹脂1]5部、酢酸エチル100部を入れ、50℃まで加温し攪拌して均一相を作製して[樹脂溶液104]を得た。
以降、[樹脂溶液1]を[樹脂溶液104]に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー104を作製し、評価を行った。
【0112】
比較例5
温度計および撹拌機の付いた反応容器中に、[結晶性ポリエステル樹脂1]5部、[非結晶性樹脂1]95部、酢酸エチル100部を入れ、50℃まで加温し攪拌して均一相を作製して[樹脂溶液105]を得た。
以降、[樹脂溶液1]を[樹脂溶液105]に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー105を作製し、評価を行った。
【0113】
比較例6
ハイブリッド樹脂1を、非結晶性樹脂1に変更したこと以外は実施例1と同様にしてトナー106を作製し、評価を行った。
【0114】
【表2】

【符号の説明】
【0115】
(図1について)
10 中間転写体
14・15・16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム画像形成部
22 2次転写装置
24 2次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 感光体
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
60 帯電装置
61 現像装置
62 1次転写装置
64 除電装置
63 感光体クリーニング装置
61 現像装置
100 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
(図2について)
1 プロセスカートリッジ
2 感光体
3 帯電手段
4 現像手段
5 クリーニング手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特開2010−77419号公報
【特許文献2】特開2009−300848号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルユニット(CU)と、エステル結合密度が6〜18mmol/gの非結晶性ポリマーユニット(AU)が化学的に結合していることを特徴とするトナー用樹脂。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステルユニット(CU)が、直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位を主な単位として含むことを特徴とする請求項1に記載のトナー用樹脂。
【請求項3】
前記直鎖状飽和脂肪族多価アルコール単位及び前記直鎖状飽和脂肪族多価カルボン酸単位における直鎖状飽和脂肪族部分の少なくとも70個数%が、炭素数4〜10であることを特徴とする請求項2に記載のトナー用樹脂。
【請求項4】
前記非結晶性ポリマーユニット(AU)が、非結晶性ポリエステルのユニットであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項5】
前記非結晶性ポリエステルユニットが、ラセミポリラクチドを主成分とするユニットであることを特徴とする請求項4に記載のトナー用樹脂。
【請求項6】
前記非結晶性ポリエステルユニットが、ラセミポリラクチドユニットであることを特徴とする請求項4又は5に記載のトナー用樹脂。
【請求項7】
前記トナー用樹脂における結晶性ポリエステルユニット(CU)と非結晶性ポリマーユニット(AU)の構成比が、質量比で99.5/0.5〜90/10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項8】
少なくとも結着樹脂、着色剤からなるトナーにおいて、前記結着樹脂として、請求項1〜7のいずれかに記載のトナー用樹脂を含むことを特徴とするトナー。
【請求項9】
前記トナー用樹脂が、前記結着樹脂の主成分であることを特徴とする請求項8に記載のトナー。
【請求項10】
前記結着樹脂における結晶性ポリエステルユニットと非結晶性ポリマーユニットの構成比が、質量比で99.5/0.5〜85/15であることを特徴とする請求項8又は9に記載のトナー。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項12】
更にキャリアを含むことを特徴とする請求項11に記載の現像剤。
【請求項13】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が、請求項11又は12に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、前記現像剤が、請求項11又は12に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記現像剤が、請求項11又は12に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−185451(P2012−185451A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50260(P2011−50260)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】