トラクションエレベーター
【課題】
乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上し得るトラクションエレベーターを提供することにある。
【解決手段】
かごガイドレール8a,8bに沿って動くかご1と、カウンターウエイトガイドレール9a,9bに沿って動くカウンターウエイト2と、かご1およびカウンターウエイト2が懸架された1組の巻上ロープ3と、かご1とエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレール9a,9bの上方に配置され巻上ロープ3と係合するトラクションシーブ7を含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置6とを備えたトラクションエレベーターにおいて、駆動機械装置6の近傍にこの駆動機械装置6を駆動する制御装置20を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に制御装置20に指令を与える指令装置21を配置したのである。
乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上し得るトラクションエレベーターを提供することにある。
【解決手段】
かごガイドレール8a,8bに沿って動くかご1と、カウンターウエイトガイドレール9a,9bに沿って動くカウンターウエイト2と、かご1およびカウンターウエイト2が懸架された1組の巻上ロープ3と、かご1とエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレール9a,9bの上方に配置され巻上ロープ3と係合するトラクションシーブ7を含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置6とを備えたトラクションエレベーターにおいて、駆動機械装置6の近傍にこの駆動機械装置6を駆動する制御装置20を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に制御装置20に指令を与える指令装置21を配置したのである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクションエレベーターに係り、特に、ガイドレールの上部にトラクションシーブを含む駆動機械装置を設置したトラクションエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクションシーブ駆動のエレベーターでは、エレベーターシャフトの最上部に機械室を設け、この中に駆動機械装置を配置したレイアウトが基本であった。しかし、この基本形は建屋全体の空間の利用と外観に関して建屋の設計をかなり制約していた。
【0003】
そこで、近年、建屋設計の自由度を増し併せて建屋空間の効率的かつ経済的に利用する解決策として、巻上機モータを含む巻上機装置をエレベーターシャフト内に設置するトラクションエレベーターが提唱されている。例えば、特開平8−208152 号公報に記載のトラクションエレベーターによれば、かごとエレベーターシャフトの壁との間で、カウンターウエイトガイドレールの上方端に機械土台を設け、この上に駆動機械装置を設置し、さらに、前記駆動機械装置は前記エレベーターシャフトに対して、水平の力を吸収するがどんな垂直の支持力も実質的に吸収しない補強要素によって、シャフトの壁または、天井に固定している。
【0004】
また、建屋全体の空間を更に有効利用する解決策の一例として、例えば、特開平8−40665号公報に開示のように、機械盤(電気制御装置)を最上階の乗り場の出入り口の脇に設置している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−208152号公報
【特許文献2】特開平8−40665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術は、次のような課題を有する。
【0007】
即ち、エレベーターの駆動モータを制御する装置およびホール呼び,かご呼びに応じて運転指令を発する装置などを纏めて最上階の乗り場の出入り口の脇に設置する場合、奥行きが広くなり乗り場からみて出っ張りが大きく、意匠上から好ましくない問題があった。
【0008】
本発明の目的は、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上し得るトラクションエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明は、かごガイドレールに沿って動くかごと、カウンターウエイトガイドレールに沿って動くカウンターウエイトと、かごおよびカウンターウエイトが懸架された1組の巻上ロープと、かごとエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレールの上方に配置され前記巻上ロープと係合するトラクションシーブを含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置とを備えたトラクションエレベーターにおいて、前記駆動機械装置の近傍に前記駆動機械装置を駆動する制御装置を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に前記制御装置に指令を与える指令装置を配置したものである。
【0010】
上記構成によれば、駆動機械装置を駆動する制御装置をエレベーターシャフト内に設置することにより、乗り場の出入り口付近に設置する指令装置を小形,薄形化することができるので、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、制御装置と駆動機械装置間の給電線が短小となり、無線機への障害となる電気的ノイズが低減される。
【0012】
さらに、本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、乗場の出入り口付近に設置する電気盤が小形・薄形化が可能となり、その結果、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上することができる。
【0013】
このほか、本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、乗場の出入り口付近に設置する電気盤の指令装置と制御装置間との給電ケーブルが細くなり、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図1により説明する。
【0015】
かご1とカウンターウエイト2がエレベーターの巻上ロープ3に懸架されている。かご1は下部両側に軸支した転向プーリ4に巻掛けた巻上ロープ3により支持され、カウンターウエイト2はその上部に軸支した転向プーリ5に巻掛けて保持されている。巻上ロープ3を巻掛けるトラクションシーブ7を有するエレベーターの駆動機械装置6は、エレベーターシャフトの上部に配置されている。
【0016】
かご1とカウンターウエイト2はそれぞれを案内するかごガイドレール8a,8bおよびカウンターウエイトガイドレール9a,9bに沿ってエレベーターシャフト内を走行する。かご1とカウンターウエイト2を各ガイドレールに案内支持するかごガイドとカウンターウエイトガイドは図示しない。また、各ガイドレールはエレベーターシャフトの壁または建屋梁14によりガイドレール支え(図示せず)によって支持される。
【0017】
巻上ロープ3は次のように走っている。巻上ロープ3の一方の端部はエレベーターシャフトの上部内のカウンターウエイト2の通路より上方の固定手段12に固定されている。固定手段12からの巻上ロープ3はカウンターウエイト2の転向プーリ5に会うまで下降する。転向プーリ5を巻回すると巻上ロープ3は再び駆動機械装置6のトラクションシーブ7側へ上昇し、トラクションシーブ7に巻掛けられる。トラクションシーブ7から巻上ロープ3は、かご1側へ下降し、かご1を支持している転向プーリ4を経由し、ガイドレール8aの最上部の固定手段13まで上昇する。ここで巻上ロープ3の他方の端部が固定される。
【0018】
次に、図1を用いて駆動機械装置6と、これを駆動する制御装置20と、最上階乗り場出入り口付近に設けた指令装置21の配置を説明する。
【0019】
カウンターウエイトガイドレール9aおよび9bの上端部には機械土台枠10が積載固定されている。この機械土台枠10は機械土台10a,継ぎ柱10b,10cおよび補助部材10dから構成されている。この機械土台10aには駆動機械装置6と巻上ロープ3の一方端の固定手段12を取付け固定し、それぞれの垂直荷重を堅持している。また、継ぎ柱10b,10cの上端部はエレベーターシャフトの最上部位置にある建屋梁14に固定する。また、左右の継ぎ柱10b,10cを連結する補助部材10dは支え金具11を介して駆動機械装置6の水平方向荷重を支えている。なお、支え金具11は駆動機械装置6の上端部に設けるのが最適である。また、継ぎ柱10b,10cは駆動機械装置6とエレベーターシャフトの壁との間が広ければ、機械土台10aから1本の継ぎ柱を設け、補助部材10dをなくし、支え金具11を直接に1本の継ぎ柱に取付けてもよい。駆動機械装置6を駆動する制御装置20は、継ぎ柱10b,10cに固定されている。
【0020】
最上階乗場の扉24a,24bの脇に、縦寸法が扉24a,24b程度で、幅が約300mm、厚さ(d)が100〜150mmの小形・薄形の電気盤23が設置され、内部に制御装置20に駆動信号を与える装置などを含む指令装置21を収納している。電気盤23には扉23aがあり、開くことにより内部が点検可能である。制御装置20と指令装置21との間はケーブル22で接続されている。
【0021】
図1の実施形態では、カウンターウエイトガイドレール9aと9bの間隔が狭く駆動機械装置6がその間に納まらない場合を示したが、駆動機械装置6がカウンターウエイトガイドレール9aと9bの間に納まるように配置した例を図2により説明する。
【0022】
図2中、図1と同符号は同一部品を示すので、再度の説明は省略する。図2において、カウンターウエイトガイドレール9aと9bはエレベーターシャフトの最上部位置にある建屋梁14のところまで延長し固定する。機械土台10aはカウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定する。機械土台10aを固定する手段として、駆動機械装置6の垂直荷重を堅持するためには、ストッパー付きガイドレールで固定するのが好適である。補助部材10dはカウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定し、支え金具11を固定する。駆動機械装置6を駆動する制御装置20は、カウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定する。
【0023】
エレベーターシャフト内のレイアウト上からの制約で、図1および図2の実施例のように制御装置20の取付けが困難な場合について説明する。
【0024】
図8はかごガイドレール8bと機械土台枠の継ぎ柱10bが近い場合を示すもので、制御装置20の一方をかごガイドレール8bに、他方を継ぎ柱10bに固定する例を示す。
【0025】
図9はかごガイドレール8bとカウンターウエイトガイドレール9aが近い場合を示すもので、制御装置20の一方をかごガイドレール8bに、他方をカウンターウエイトガイドレール9aに固定する例を示す。
【0026】
図10は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方をかごガイドレール8bに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0027】
図11は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方を継ぎ柱10bに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0028】
図12は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方をカウンターウエイトガイドレール9aに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0029】
次に、エレベーターシャフト内で頂部空間に余裕がある場合の装置の配置を図3に沿って説明する。図3は、かご1が最上階の床レベルAに位置した時の、各装置の配置を示したものである。駆動機械装置6は、かご1の天井近くに配置されており、その上部のエレベーターシャフトの頂部に駆動機械装置6を駆動する制御装置20が設置される。図中の4aと4bはかご1を支える転向プーリである。
【0030】
ここで、駆動機械装置6の近くに制御装置20を配置する利点を説明する。図4は、エレベーターの制御回路の全体図を示す。駆動機械装置6には、ブレーキ40と回転速度を検出する速度検出器41が備えられている。駆動機械装置6はインバータ装置32の出力により回転制御される。インバータ装置32の入力電力は建屋電源56から給電線56a,ノーヒューズブレーカ(NFB)55および電源を入り切りするコンタクタ54を介して給電ケーブル22a,給電線56bを通り変換器30で直流に変換して給電される。31は、変換器30の出力を平滑するコンデンサ、35は回生電力を抵抗器で吸収する回生電力吸収回路である。インバータ装置32の出力は速度検出器41の信号Spsと電流検出器33の信号isを帰還信号として、速度指令装置53の速度指令信号Spcに従い、CONTROL34 のパルス幅信号PWによりパルス状の交流電圧を駆動機械装置6に印加し、回転制御を行う。ブレーキ40はコンタクタ52による開閉で、ブレーキを開いたり,閉じたりする。51は、ブレーキ回路の電源、42は、ブレーキ40への給電線である。制御装置20は、インバータ装置32,電流検出器33,平滑コンデンサ31,回生電力吸収回路35,変換器30,CONTROL34 から構成されている。指令装置21は、速度指令信号Spcを発する速度指令装置53,電源51,コンタクタ52,54とNFB55およびかご呼び,ホール呼びを取り込み、かごを起動,停止する機能を含む装置(図示しない)などから構成されている。図4中のVmは駆動機械装置6のモータ電圧、ACは建屋電源56の電圧を示す。
【0031】
エレベーター制御回路の全体で、体積が大きな部分は、駆動機械装置6を駆動するインバータ装置32を含む制御装置20である。すなわち、電力を変換する機能は、半導体の進歩で小形化は進んでいるが、信号装置の小形・軽量化のレベルまでは達していない。指令装置21は、近年の半導体の集積技術の著しい進歩により小形化がますます進んでおり、図1に説明したように小形・薄形化が実現可能である。
【0032】
インバータ装置32に使用されている素子は、低騒音を目的として、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT素子)を使用し、スイッチング周波数を10〜15kHzまで上げている。スイッチング周波数を高くするほど無線機器への障害となる電気的ノイズが発生することから、インバータ装置32を駆動機械装置6にできるだけ近づけた方が、インバータ装置32と駆動機械装置6の給電線22aから発生する電気的ノイズが少なくなることは周知である。
【0033】
図5に、定格積載荷重で上昇運転する時のエレベーター速度(Sp)と駆動機械装置6のモータ電流(im)と変換器30の入力電流(ia)の波形を示す。
【0034】
時刻t0時点でかご1とカウンターウエイト2とのアンバランストルクを補償するモータ電流(im1)を流す。ブレーキはt1の時点で解放され、t2の時点まで加速状態となる。このときのモータ電流(im2)は、アンバランストルクを補償するモータ電流(im1)の約2倍となる。目的階に近づくとt3の時点からt4の時点まで減速状態となり、t4の時点でブレーキが拘束した後にt5の時点でモータ電流(im)が零となる。
【0035】
モータ電流(im)と変換器30の入力電流(ia)の関係は、下式となり、
入力電流(ia)≒モータ電流(im)×エレベーター速度(Sp)
÷電源電圧(AC)
モータ電圧(Vm)≒電源電圧(AC)
からim1≒ia1とim2≒ia2となる。
【0036】
図5から分かるように入力電流(ia)の実効値はモータ電流(im)の実効値より小さくなることは分かる。全ての負荷条件などで実効電流の関係を求めると
入力電流(ia)≒0.7×モータ電流(im)
となる。
【0037】
すなわち、制御装置20を駆動機械装置6の近傍に配置することにより、指令装置21からの電力給電ケーブル22aの線サイズが細くなり、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価となる。
【0038】
上記は、指令装置21を収納した電気盤23を最上階に設置した例で説明したが、意匠上の制約で最上階では好ましくない場合は、最上階より下の階に設置することは当業者では明らかである。すなわち、制御装置20を駆動機械装置6の近傍に配置し、指令装置21を乗場に近傍に設けることにより、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価となる効果が大きくなる。
【0039】
図6は、制御装置20を、インバータ装置32,平滑コンデンサ31,回生電力吸収回路35,変換器30,電流検出器33とで構成した制御回路を示すもので、インバータ装置32にパルス幅信号を与えるCONTROL34 を指令装置21に移した例である。
【0040】
図7は、制御装置20を、インバータ装置32,平滑コンデンサ31,インバータ装置から発生する回生電力を電源側に回生する機能を備えた変換器39,インバータ装置32にパルス幅信号PWを発生するCONTROL34 ,変換器39にパルス幅信号を与えるAVR36,AVR36に電源電圧信号Vcを与えるための電圧検出器37,AVR36に電源電流信号icを与えるための電流検出器38とで構成した制御回路を示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるトラクションエレベーターの一実施の形態を示す要部斜視図。
【図2】本発明によるトラクションエレベーターの他の実施の形態を示す要部斜視図。
【図3】本発明によるトラクションエレベーターのかごが最上階床レベルにある時の各装置の配置図。
【図4】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置と指令装置の関係を示す制御回路図。
【図5】本発明によるトラクションエレベーターの運転時のかご速度とモータ電流と入力電流波形を示す関係線図。
【図6】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置と指令装置の関係を示す他の制御回路図。
【図7】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の他の実施の形態を示す制御回路図。
【図8】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の一例を示す斜視図。
【図9】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の他の例を示す斜視図。
【図10】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法のさらに他の例を示す斜視図。
【図11】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の別の例を示す斜視図。
【図12】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法のさらに別の例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1…かご、2…カウンターウエイト、3…巻上ロープ、4,4a,4b,5…転向プーリ、6…駆動機械装置、8a,8b…かごガイドレール、9a,9b…カウンターウエイトガイドレール、10…機械土台枠、11…支え金具、14…建屋梁、20…制御装置、21…指令装置、22…ケーブル、23…電気盤、30,39…変換器、32…インバータ装置、34…CONTROL 、53…速度指令装置。
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクションエレベーターに係り、特に、ガイドレールの上部にトラクションシーブを含む駆動機械装置を設置したトラクションエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクションシーブ駆動のエレベーターでは、エレベーターシャフトの最上部に機械室を設け、この中に駆動機械装置を配置したレイアウトが基本であった。しかし、この基本形は建屋全体の空間の利用と外観に関して建屋の設計をかなり制約していた。
【0003】
そこで、近年、建屋設計の自由度を増し併せて建屋空間の効率的かつ経済的に利用する解決策として、巻上機モータを含む巻上機装置をエレベーターシャフト内に設置するトラクションエレベーターが提唱されている。例えば、特開平8−208152 号公報に記載のトラクションエレベーターによれば、かごとエレベーターシャフトの壁との間で、カウンターウエイトガイドレールの上方端に機械土台を設け、この上に駆動機械装置を設置し、さらに、前記駆動機械装置は前記エレベーターシャフトに対して、水平の力を吸収するがどんな垂直の支持力も実質的に吸収しない補強要素によって、シャフトの壁または、天井に固定している。
【0004】
また、建屋全体の空間を更に有効利用する解決策の一例として、例えば、特開平8−40665号公報に開示のように、機械盤(電気制御装置)を最上階の乗り場の出入り口の脇に設置している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−208152号公報
【特許文献2】特開平8−40665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術は、次のような課題を有する。
【0007】
即ち、エレベーターの駆動モータを制御する装置およびホール呼び,かご呼びに応じて運転指令を発する装置などを纏めて最上階の乗り場の出入り口の脇に設置する場合、奥行きが広くなり乗り場からみて出っ張りが大きく、意匠上から好ましくない問題があった。
【0008】
本発明の目的は、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上し得るトラクションエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明は、かごガイドレールに沿って動くかごと、カウンターウエイトガイドレールに沿って動くカウンターウエイトと、かごおよびカウンターウエイトが懸架された1組の巻上ロープと、かごとエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレールの上方に配置され前記巻上ロープと係合するトラクションシーブを含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置とを備えたトラクションエレベーターにおいて、前記駆動機械装置の近傍に前記駆動機械装置を駆動する制御装置を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に前記制御装置に指令を与える指令装置を配置したものである。
【0010】
上記構成によれば、駆動機械装置を駆動する制御装置をエレベーターシャフト内に設置することにより、乗り場の出入り口付近に設置する指令装置を小形,薄形化することができるので、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、制御装置と駆動機械装置間の給電線が短小となり、無線機への障害となる電気的ノイズが低減される。
【0012】
さらに、本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、乗場の出入り口付近に設置する電気盤が小形・薄形化が可能となり、その結果、乗り場出入り口周辺の意匠効果を向上することができる。
【0013】
このほか、本発明になるトラクションエレベーターは、駆動機械装置の近傍に制御装置を配置することにより、乗場の出入り口付近に設置する電気盤の指令装置と制御装置間との給電ケーブルが細くなり、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図1により説明する。
【0015】
かご1とカウンターウエイト2がエレベーターの巻上ロープ3に懸架されている。かご1は下部両側に軸支した転向プーリ4に巻掛けた巻上ロープ3により支持され、カウンターウエイト2はその上部に軸支した転向プーリ5に巻掛けて保持されている。巻上ロープ3を巻掛けるトラクションシーブ7を有するエレベーターの駆動機械装置6は、エレベーターシャフトの上部に配置されている。
【0016】
かご1とカウンターウエイト2はそれぞれを案内するかごガイドレール8a,8bおよびカウンターウエイトガイドレール9a,9bに沿ってエレベーターシャフト内を走行する。かご1とカウンターウエイト2を各ガイドレールに案内支持するかごガイドとカウンターウエイトガイドは図示しない。また、各ガイドレールはエレベーターシャフトの壁または建屋梁14によりガイドレール支え(図示せず)によって支持される。
【0017】
巻上ロープ3は次のように走っている。巻上ロープ3の一方の端部はエレベーターシャフトの上部内のカウンターウエイト2の通路より上方の固定手段12に固定されている。固定手段12からの巻上ロープ3はカウンターウエイト2の転向プーリ5に会うまで下降する。転向プーリ5を巻回すると巻上ロープ3は再び駆動機械装置6のトラクションシーブ7側へ上昇し、トラクションシーブ7に巻掛けられる。トラクションシーブ7から巻上ロープ3は、かご1側へ下降し、かご1を支持している転向プーリ4を経由し、ガイドレール8aの最上部の固定手段13まで上昇する。ここで巻上ロープ3の他方の端部が固定される。
【0018】
次に、図1を用いて駆動機械装置6と、これを駆動する制御装置20と、最上階乗り場出入り口付近に設けた指令装置21の配置を説明する。
【0019】
カウンターウエイトガイドレール9aおよび9bの上端部には機械土台枠10が積載固定されている。この機械土台枠10は機械土台10a,継ぎ柱10b,10cおよび補助部材10dから構成されている。この機械土台10aには駆動機械装置6と巻上ロープ3の一方端の固定手段12を取付け固定し、それぞれの垂直荷重を堅持している。また、継ぎ柱10b,10cの上端部はエレベーターシャフトの最上部位置にある建屋梁14に固定する。また、左右の継ぎ柱10b,10cを連結する補助部材10dは支え金具11を介して駆動機械装置6の水平方向荷重を支えている。なお、支え金具11は駆動機械装置6の上端部に設けるのが最適である。また、継ぎ柱10b,10cは駆動機械装置6とエレベーターシャフトの壁との間が広ければ、機械土台10aから1本の継ぎ柱を設け、補助部材10dをなくし、支え金具11を直接に1本の継ぎ柱に取付けてもよい。駆動機械装置6を駆動する制御装置20は、継ぎ柱10b,10cに固定されている。
【0020】
最上階乗場の扉24a,24bの脇に、縦寸法が扉24a,24b程度で、幅が約300mm、厚さ(d)が100〜150mmの小形・薄形の電気盤23が設置され、内部に制御装置20に駆動信号を与える装置などを含む指令装置21を収納している。電気盤23には扉23aがあり、開くことにより内部が点検可能である。制御装置20と指令装置21との間はケーブル22で接続されている。
【0021】
図1の実施形態では、カウンターウエイトガイドレール9aと9bの間隔が狭く駆動機械装置6がその間に納まらない場合を示したが、駆動機械装置6がカウンターウエイトガイドレール9aと9bの間に納まるように配置した例を図2により説明する。
【0022】
図2中、図1と同符号は同一部品を示すので、再度の説明は省略する。図2において、カウンターウエイトガイドレール9aと9bはエレベーターシャフトの最上部位置にある建屋梁14のところまで延長し固定する。機械土台10aはカウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定する。機械土台10aを固定する手段として、駆動機械装置6の垂直荷重を堅持するためには、ストッパー付きガイドレールで固定するのが好適である。補助部材10dはカウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定し、支え金具11を固定する。駆動機械装置6を駆動する制御装置20は、カウンターウエイトガイドレール9aと9bに固定する。
【0023】
エレベーターシャフト内のレイアウト上からの制約で、図1および図2の実施例のように制御装置20の取付けが困難な場合について説明する。
【0024】
図8はかごガイドレール8bと機械土台枠の継ぎ柱10bが近い場合を示すもので、制御装置20の一方をかごガイドレール8bに、他方を継ぎ柱10bに固定する例を示す。
【0025】
図9はかごガイドレール8bとカウンターウエイトガイドレール9aが近い場合を示すもので、制御装置20の一方をかごガイドレール8bに、他方をカウンターウエイトガイドレール9aに固定する例を示す。
【0026】
図10は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方をかごガイドレール8bに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0027】
図11は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方を継ぎ柱10bに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0028】
図12は、制御装置20にブラケット60を取付け、一方をカウンターウエイトガイドレール9aに固定し、ブラケット60をエレベーターシャフト内の壁などに固定する例を示す。
【0029】
次に、エレベーターシャフト内で頂部空間に余裕がある場合の装置の配置を図3に沿って説明する。図3は、かご1が最上階の床レベルAに位置した時の、各装置の配置を示したものである。駆動機械装置6は、かご1の天井近くに配置されており、その上部のエレベーターシャフトの頂部に駆動機械装置6を駆動する制御装置20が設置される。図中の4aと4bはかご1を支える転向プーリである。
【0030】
ここで、駆動機械装置6の近くに制御装置20を配置する利点を説明する。図4は、エレベーターの制御回路の全体図を示す。駆動機械装置6には、ブレーキ40と回転速度を検出する速度検出器41が備えられている。駆動機械装置6はインバータ装置32の出力により回転制御される。インバータ装置32の入力電力は建屋電源56から給電線56a,ノーヒューズブレーカ(NFB)55および電源を入り切りするコンタクタ54を介して給電ケーブル22a,給電線56bを通り変換器30で直流に変換して給電される。31は、変換器30の出力を平滑するコンデンサ、35は回生電力を抵抗器で吸収する回生電力吸収回路である。インバータ装置32の出力は速度検出器41の信号Spsと電流検出器33の信号isを帰還信号として、速度指令装置53の速度指令信号Spcに従い、CONTROL34 のパルス幅信号PWによりパルス状の交流電圧を駆動機械装置6に印加し、回転制御を行う。ブレーキ40はコンタクタ52による開閉で、ブレーキを開いたり,閉じたりする。51は、ブレーキ回路の電源、42は、ブレーキ40への給電線である。制御装置20は、インバータ装置32,電流検出器33,平滑コンデンサ31,回生電力吸収回路35,変換器30,CONTROL34 から構成されている。指令装置21は、速度指令信号Spcを発する速度指令装置53,電源51,コンタクタ52,54とNFB55およびかご呼び,ホール呼びを取り込み、かごを起動,停止する機能を含む装置(図示しない)などから構成されている。図4中のVmは駆動機械装置6のモータ電圧、ACは建屋電源56の電圧を示す。
【0031】
エレベーター制御回路の全体で、体積が大きな部分は、駆動機械装置6を駆動するインバータ装置32を含む制御装置20である。すなわち、電力を変換する機能は、半導体の進歩で小形化は進んでいるが、信号装置の小形・軽量化のレベルまでは達していない。指令装置21は、近年の半導体の集積技術の著しい進歩により小形化がますます進んでおり、図1に説明したように小形・薄形化が実現可能である。
【0032】
インバータ装置32に使用されている素子は、低騒音を目的として、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT素子)を使用し、スイッチング周波数を10〜15kHzまで上げている。スイッチング周波数を高くするほど無線機器への障害となる電気的ノイズが発生することから、インバータ装置32を駆動機械装置6にできるだけ近づけた方が、インバータ装置32と駆動機械装置6の給電線22aから発生する電気的ノイズが少なくなることは周知である。
【0033】
図5に、定格積載荷重で上昇運転する時のエレベーター速度(Sp)と駆動機械装置6のモータ電流(im)と変換器30の入力電流(ia)の波形を示す。
【0034】
時刻t0時点でかご1とカウンターウエイト2とのアンバランストルクを補償するモータ電流(im1)を流す。ブレーキはt1の時点で解放され、t2の時点まで加速状態となる。このときのモータ電流(im2)は、アンバランストルクを補償するモータ電流(im1)の約2倍となる。目的階に近づくとt3の時点からt4の時点まで減速状態となり、t4の時点でブレーキが拘束した後にt5の時点でモータ電流(im)が零となる。
【0035】
モータ電流(im)と変換器30の入力電流(ia)の関係は、下式となり、
入力電流(ia)≒モータ電流(im)×エレベーター速度(Sp)
÷電源電圧(AC)
モータ電圧(Vm)≒電源電圧(AC)
からim1≒ia1とim2≒ia2となる。
【0036】
図5から分かるように入力電流(ia)の実効値はモータ電流(im)の実効値より小さくなることは分かる。全ての負荷条件などで実効電流の関係を求めると
入力電流(ia)≒0.7×モータ電流(im)
となる。
【0037】
すなわち、制御装置20を駆動機械装置6の近傍に配置することにより、指令装置21からの電力給電ケーブル22aの線サイズが細くなり、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価となる。
【0038】
上記は、指令装置21を収納した電気盤23を最上階に設置した例で説明したが、意匠上の制約で最上階では好ましくない場合は、最上階より下の階に設置することは当業者では明らかである。すなわち、制御装置20を駆動機械装置6の近傍に配置し、指令装置21を乗場に近傍に設けることにより、取付け作業性が向上するとともに材料費が安価となる効果が大きくなる。
【0039】
図6は、制御装置20を、インバータ装置32,平滑コンデンサ31,回生電力吸収回路35,変換器30,電流検出器33とで構成した制御回路を示すもので、インバータ装置32にパルス幅信号を与えるCONTROL34 を指令装置21に移した例である。
【0040】
図7は、制御装置20を、インバータ装置32,平滑コンデンサ31,インバータ装置から発生する回生電力を電源側に回生する機能を備えた変換器39,インバータ装置32にパルス幅信号PWを発生するCONTROL34 ,変換器39にパルス幅信号を与えるAVR36,AVR36に電源電圧信号Vcを与えるための電圧検出器37,AVR36に電源電流信号icを与えるための電流検出器38とで構成した制御回路を示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるトラクションエレベーターの一実施の形態を示す要部斜視図。
【図2】本発明によるトラクションエレベーターの他の実施の形態を示す要部斜視図。
【図3】本発明によるトラクションエレベーターのかごが最上階床レベルにある時の各装置の配置図。
【図4】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置と指令装置の関係を示す制御回路図。
【図5】本発明によるトラクションエレベーターの運転時のかご速度とモータ電流と入力電流波形を示す関係線図。
【図6】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置と指令装置の関係を示す他の制御回路図。
【図7】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の他の実施の形態を示す制御回路図。
【図8】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の一例を示す斜視図。
【図9】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の他の例を示す斜視図。
【図10】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法のさらに他の例を示す斜視図。
【図11】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法の別の例を示す斜視図。
【図12】本発明によるトラクションエレベーターの制御装置の固定方法のさらに別の例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1…かご、2…カウンターウエイト、3…巻上ロープ、4,4a,4b,5…転向プーリ、6…駆動機械装置、8a,8b…かごガイドレール、9a,9b…カウンターウエイトガイドレール、10…機械土台枠、11…支え金具、14…建屋梁、20…制御装置、21…指令装置、22…ケーブル、23…電気盤、30,39…変換器、32…インバータ装置、34…CONTROL 、53…速度指令装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごガイドレールに沿って動くかごと、カウンターウエイトガイドレールに沿って動くカウンターウエイトと、かごおよびカウンターウエイトが懸架された1組の巻上ロープと、かごとエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレールの上方に配置され前記巻上ロープと係合するトラクションシーブを含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置とを備えたトラクションエレベーターにおいて、前記駆動機械装置の近傍に前記駆動機械装置を駆動する制御装置を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に前記制御装置に指令を与える指令装置を配置することを特徴とするトラクションエレベーター。
【請求項2】
前記指令装置を、最上階乗場の扉の脇に配置したことを特徴とする請求項1記載のトラクションエレベーター。
【請求項3】
前記制御装置は、前記駆動機械装置を駆動するインバータ部とインバータ部に直流電力を与える変換装置を備えたことを特徴とする請求項1,2記載のトラクションエレベーター。
【請求項1】
かごガイドレールに沿って動くかごと、カウンターウエイトガイドレールに沿って動くカウンターウエイトと、かごおよびカウンターウエイトが懸架された1組の巻上ロープと、かごとエレベーターシャフトの壁との間でカウンターウエイトガイドレールの上方に配置され前記巻上ロープと係合するトラクションシーブを含みエレベーターシャフトの上部に配置された駆動機械装置とを備えたトラクションエレベーターにおいて、前記駆動機械装置の近傍に前記駆動機械装置を駆動する制御装置を配置し、最上部または最上部より下の乗場出入り口の近傍に前記制御装置に指令を与える指令装置を配置することを特徴とするトラクションエレベーター。
【請求項2】
前記指令装置を、最上階乗場の扉の脇に配置したことを特徴とする請求項1記載のトラクションエレベーター。
【請求項3】
前記制御装置は、前記駆動機械装置を駆動するインバータ部とインバータ部に直流電力を与える変換装置を備えたことを特徴とする請求項1,2記載のトラクションエレベーター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−284254(P2007−284254A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179176(P2007−179176)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【分割の表示】特願2004−236276(P2004−236276)の分割
【原出願日】平成10年7月31日(1998.7.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【分割の表示】特願2004−236276(P2004−236276)の分割
【原出願日】平成10年7月31日(1998.7.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]