説明

トラクタにおけるリヤサイドパネルの開閉機構

【課題】 開閉操作が簡単で、且つ全開に至る中間位置で停止させることができるリヤサイドパネルの開閉機構を提供することを課題としている。
【解決手段】 キャビン4とキャビン4における座席8の左右側方に位置するリヤサイドパネル11との間に設ける開閉規制具23を、リヤサイドパネル11の全開の開状態を許容し、且つリヤサイドパネル11を全開に至る途中の開度で位置決めすることができるように構成し、リヤサイドパネル11を外側に付勢して取り付け、開閉規制具23を、リヤサイドパネル11の閉状態から開方向への付勢移動時に、リヤサイドパネル11を自動的に全開に至る途中の開度に位置決めする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタにおけるリヤサイドパネルの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来トラクタのキャビンには、座席の左右側方に前開きの開状態となるようにリヤサイドパネルを開閉自在に設けたものがあった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3333088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記リヤサイドパネルは、全開時の開度が小さく設定されており、例えばキャビン内への外気取り込みには十分であるが、キャビンの外を見る等には十分に開くとはいえず、作業性が悪いという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明のトラクタにおけるリヤサイドパネルの開閉機構は、前後輪1,2を備えた機体3にキャビン4が設けられ、キャビン4における座席8の側方にリヤサイドパネル11を、前開きの開状態となるようにキャビン4のリヤ縦支柱12にヒンジ15を介して開閉自在に設ける一方、キャビン4の上方に設けられるルーフ13の後部は、リヤサイドパネル11の上方位置において外側に突出してリヤサイドパネル11上方の庇部14を構成し、さらに、キャビン4とリヤサイドパネル11との間に開閉規制具23を設け、リヤサイドパネル11を閉状態から開側へ回動させた際に、当該開閉規制具23によってリヤサイドパネル11の外端部が、庇部14の外側端より外側に突出しない開度で位置決めされ、リヤサイドパネル11がその開位置で維持される構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成される本発明の構造によると、リヤサイドパネルを閉じた状態から全開となるまでの間の所定の開度で位置決めすることができるため、例えばキャビン内への外気取り込みと、リヤサイドパネルの全開状態とを簡単に切り替えることができ、作業性が向上するという効果がある。このときリヤサイドパネルを外側に付勢して取り付けることによって、運転席内のオペレータは、リヤサイドパネルの閉じた状態を解除することによって、容易に各開位置に切り替えることができる。
【0006】
特に開閉規制具を、リヤサイドパネルの閉状態から開方向への付勢移動時に、リヤサイドパネルを全開に至る途中の開度に自動的に位置決めする構成とすることによって、リヤサイドパネルを全閉の状態から開く場合、必ず一度小開き状態(開角度が小さい方の固定位置)で停止することになり、オペレータが予期しないリヤサイドパネルの大開が防止されるという効果がある。
【0007】
さらに開閉規制具を揺動自在に設け、開閉規制具の揺動操作によって、リヤサイドパネルの中途位置での位置決めを解除する構成とすることによって、開閉規制具を揺動させることで、リヤサイドカバーを簡単に次に大きい開度での開状態に位置決めすることができ、切り替え操作がさらに容易となるという利点もある。
【0008】
また開閉規制具をリヤサイドパネルの上方位置に設けることによって、開閉規制具を容易に配置することができるだけでなく、開閉規制具と運転席内のオペレータとの接触が防止され、開閉作業の妨げにならないだけでなく、誤操作を防止することができるという効果もある。
【0009】
そして開閉規制具を、開閉規制具によりリヤサイドパネルが少なくとも全開を除く開位置に位置決めされた状態でリヤサイドパネルの前端が車体外側端より外側に突出しないように構成することによって、少なくとも全開状態以外では、リヤサイドパネルが機体の両側端より外側に突出しないため、リヤサイドパネルの取り扱いが容易となるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図3は、本発明のリヤサイドパネルの開閉機構を備えた作業車両であるトラクタの側面図,平面図,背面図であり、前後輪1,2を備えた機体3の後方側にキャビン4が設けられている。そして該キャビン4内に運転席6が設けられており、該運転席6内、すなわちキャビン4内には、エンジン7の上方に位置するように座席8が設けられている。
【0011】
そして上記キャビン4は、左側方に前開きの開状態となるドア9を備えており、オペレータ(操縦者)はドア9を開けてキャビン4内に乗り込み、運転席6内に入り、座席8に座り、トラクタの運転等を行う。
【0012】
キャビン4における座席8の左右両側方は、リヤサイドパネルとなっており、本実施形態のキャビン4の場合、上記リヤサイドパネルはガラスからなるリヤサイドガラス11となっている。このときリヤサイドガラス11は、キャビン4のリヤ縦支柱12にヒンジ15を介して取り付けられており、所定の開度(全閉状態から概ね90度)で全開となる前開きの開状態となるように開閉自在に支持されている。
【0013】
なおリヤサイドガラス11の前方には、キャビン内側にロックハンドル16が設けられており、該ロックハンドル16によって、リヤサイドガラス11を全閉状態でロックすることができ、このロックを解除することによって、リヤサイドガラス11を開けることが可能となる。
【0014】
そして図4に示されるように、リヤサイドガラス11とキャビン4のフレーム17との間には、リヤサイドパネル11の開閉機構18が介設されており、リヤサイドガラス11は、該開閉機構18によって、全閉から全開までの間の中間位置において所定の開度で開状態が維持され、すなわち全閉から全開まで段階的に開閉する。
【0015】
なお本実施形態において、リヤサイドガラス11は、開閉機構18によって全開に至る途中の所定の1つの開度(90度未満)で位置決めされ、つまりリヤサイドガラス11は2段階で開閉され、全閉と全開との間に1カ所の中間開位置を備える。
【0016】
一方上記キャビン4の上方には、ルーフ13が設けられており、運転席6の上方はルーフ13によって覆われている。このとき該ルーフ13の後部左右は、前述の左右のリヤサイドガラス11の上方位置において外側に突出しており、リヤサイドガラス11上方の庇部14を構成している。
【0017】
そしてリヤサイドガラス11の中間開位置は、リヤサイドガラス11の外端部(前端)が、庇部14の外側端(機体3の外側端)より外側に突出しない開度に設定されており、リヤサイドガラス11を中間開位置に開いた場合に、リヤサイドガラス11は庇部14(機体3)の外側に突出しない。
【0018】
これによりリヤサイドガラス11の開口部分は、リヤサイドガラス11が中間開位置の状態では、常に庇部14の下方に位置し、リヤサイドガラス11の開口部分からのキャビン4内への雨等の浸入が防止され、雨等の場合にもリヤサイドガラス11を開き、新鮮な空気をキャビン4内に取り込むことが可能となる。
【0019】
またリヤサイドガラス11の中間開位置においては、庇部14の最外側端が、常にリヤサイドガラス11の外側に位置するため庇部14によって、トラクタの周辺に位置する障害物等が開状態のリヤサイドガラス11側に接衝すること等が防止され、リヤサイドガラス11の取り扱いが容易となる。
【0020】
なおリヤサイドガラス11を全開状態とすることによって、リヤサイドガラス11の開口部分から顔や手を出し、ドアを開けることなく用事を済ませることもできる。例えば畦際等の狭い場所での作業・運転時に簡単に目視確認したり、トラクタ外の人とのコミュニケーションを簡単に行ったりすることができる。
【0021】
次に前述の開閉機構18について説明する。開閉機構18は、図5(a),(b)に示されるように、キャビン4のルーフ13側のフレーム17から突出する支点軸19と、リヤサイドガラス11の上部に固定されるブラケット21との間に設けられるガススプリング22及び開閉規制具23とによって構成されている。
【0022】
上記ガススプリング22は、ケース22aの端部が支点軸に、スライド杆22bの端部がブラケット21にそれぞれ回動自在に軸支されており、全閉状態ではリヤサイドガラス11を閉方向に付勢し、このガススプリング22の付勢力に抗して所定角度リヤサイドガラス11を開くと、スライド杆22bの端部が支点越えしてリヤサイドガラス11を開方向に付勢するように取り付けられている。なおロックハンドル16は、キャビン4のフレーム側のストッパプレート25への係止によって、リヤサイドガラス11を全閉状態にロックし、リヤサイドガラス11は、全閉状態で、前端側がウェザーストリップ20に押し付けられる。
【0023】
上記開閉規制具23は、一端が前述の支点軸19に回動自在に軸支されているリンクアーム23Aと、一端が前述のブラケット21に回動自在に軸支されているリンクアーム23Bとから構成されており、リンクアーム23Bに形成されるスライド孔24に、リンクアーム23Aに突設されるピン26が挿入され、ワッシャ27によって抜け止めされた構造となっている。
【0024】
スライド孔24は直線状の長孔24aのブラケット21側の端部に、該長孔24aに対してオフセットした係止孔24bが連続形成され、図5(a)に示されるリヤサイドガラス11の全閉状態でピン26が長孔24aのブラケット側の端部に、図6(a)に示されるリヤサイドガラス11の全開状態でピン26が長孔24aの支点軸19側の端部に位置するように配されている。
【0025】
これによりロックハンドル16による閉状態のロックを解除し、リヤサイドガラス11を徐々に開くと、ガススプリング22のスライド杆22bの端部が支点越えするまでは手動で開く必要があるが、スライド杆22bの端部が支点越えした以降は、ガススプリング22がリヤサイドガラス11を開方向に付勢し、リヤサイドガラス11は自動的に開く。
【0026】
ただしリヤサイドガラス11の開側への回動によって、リンクアーム23Bがブラケット21側の支点を中心に揺動し、図6(b)に示されるように、ピン26が係止孔24bと係合する。そしてこのピン26と係止孔24bとの係合によって、リヤサイドガラス11の開方向への揺動が規制され、すなわちリヤサイドガラス11が、全開に至る途中、ピン26と係止孔24bとが係合する開度で位置決めされ、リヤサイドガラス11が中間開位置で維持される。
【0027】
このとき上記リヤサイドガラス11の全閉状態から中間開位置への位置決めは、リヤサイドガラス11をスライド杆22bの端部が支点越えするまで手動で開くことのみで、スライド杆22bの端部が支点越えした後はガススプリング22の付勢力によって自動的に行われる。
【0028】
そしてリヤサイドガラス11が中間開位置に位置している状態ではガススプリング22が、リヤサイドガラス11を開方向に付勢しているため、リンクアーム23Bをリヤサイドガラス11の開方向と同じ方向(Y方向)に揺動させ、ピン26を長孔24a内に移行させると、ピン26が長孔24a内をスライドし、リヤサイドガラス11は自動的に全開状態に移行し、図6(a)に示される全開状態に維持される。
【0029】
以上のようにリヤサイドガラス11の全閉状態から中間開位置への切り替え及び開位置の切り替えは、簡単に行うことができ、特にリンクアーム23Bの揺動操作のみによってリヤサイドガラス11を中間開位置から、次に大きい開度での開状態(本実施形態の場合は全開)に位置決めすることができ、リヤサイドガラス11の開位置の切り替え操作はワンタッチで簡単に行うことができる。
【0030】
また閉状態から中間開位置への切り替えも、ロックハンドル16によるロックを解除してリヤサイドガラス11をスライド杆22bの端部が支点越えするまで手動で開くことのみで、簡単に行うことができる。このときロックハンドル16によるロックを解除だけでは、ガススプリング22はリヤサイドガラス11を閉側に付勢し、ロック解除とともにリヤサイドガラス11が急に開くという不都合はない。
【0031】
なおリヤサイドガラス11を閉じる場合は、オペレータがキャビン4内からロックハンドル16を持ち、手前側(キャビン側)に引くことで簡単に行うことができ、特にリヤサイドガラス11は全開でキャビンに対して略90度横開きするため、オペレータはリヤサイドガラス11の全開状態においてもロックハンドル16を簡単に持つことができ、閉操作も容易に行うことができる。
【0032】
そしてリヤサイドガラス11の重量はヒンジ15が受けるため、リヤサイドガラス11の全開状態でガススプリング22はリヤサイドガラス11の振動を防止する程度リヤサイドガラス11を付勢すればよいため、ガススプリング22を小型化し、ガススプリング22の付勢力を小さくすることができるため、大きな操作力は不要となる。
【0033】
開閉機構18は以上のように構成されており、リヤサイドガラス11を全閉の状態から開く場合、必ず一度小開き状態(中間開位置)で停止することになり、作業者が予期しないリヤサイドガラス11の大開き(全開)が防止され、リヤサイドガラス11の開操作の作業性が向上する。また開閉規制具23がガススプリング22とともに、リヤサイドガラス11の上方位置に設けられているため、開閉規制具23を含む開閉機構18が省スペースで容易に配置され、開閉機構18側、特に開閉規制具23と運転席6内のオペレータとの接触が防止され、開閉作業の妨げにならないだけでなく、誤操作が防止される。そして上記のように2つのリンクアーム23A,23Bからなる開閉規制具23とガススプリング22とによって少ない部品点数で簡単に構成されている。
【0034】
なお係止孔24bを、長孔24aの支点軸19側の端部に向かって複数段設けることによって、リヤサイドガラス11を全開に至るまでに複数段に位置決め維持することができ、開度が小さい方から大きい方には、リンクアーム23Bの揺動のみで簡単に且つ自動的に切り替えることができ、簡単な機構で操作性の高い開閉機構とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トラクタの平面図である。
【図3】トラクタの背面図である。
【図4】開閉機構部分を示すキャビンの斜視図である。
【図5】(a)は開閉機構部分の平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】(a)はリヤサイドガラスの全開状態を示す要部平面図、(b)はリヤサイドガラスの中間開位置の状態を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0036】
4 キャビン
8 座席
11 リヤサイドガラス(リヤサイドパネル)
23 開閉規制具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪(1),(2)を備えた機体(3)にキャビン(4)が設けられ、キャビン(4)における座席(8)の側方にリヤサイドパネル(11)を、前開きの開状態となるようにキャビン(4)のリヤ縦支柱(12)にヒンジ(15)を介して開閉自在に設ける一方、キャビン(4)の上方に設けられるルーフ(13)の後部は、リヤサイドパネル(11)の上方位置において外側に突出してリヤサイドパネル(11)上方の庇部(14)を構成し、さらに、キャビン(4)とリヤサイドパネル(11)との間に開閉規制具(23)を設け、リヤサイドパネル(11)を閉状態から開側へ回動させた際に、当該開閉規制具(23)によってリヤサイドパネル(11)の外端部が、庇部(14)の外側端より外側に突出しない開度で位置決めされ、リヤサイドパネル(11)がその開位置で維持される構成としたトラクタにおけるリヤサイドパネルの開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29421(P2009−29421A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219997(P2008−219997)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【分割の表示】特願2003−329828(P2003−329828)の分割
【原出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】