説明

トラクタの操舵装置

【課題】構成を簡素化し、メンテナンスの容易なトラクタの前輪操舵装置を提供する。
【解決手段】フロントアクスルケース16の左右両側部に左右前輪を支架している左右前輪ケース17を操舵回動可能に設け、走行車体の前側部左右一側に前輪操舵シリンダ19を前後方向に沿わせて配置し、前記前輪操舵シリンダ19の後側から突出しているシリンダロッドの端部を走行車体から延出しているシリンダブラケット19dで支持し、前輪操舵シリンダ19の前側から突出しているシリンダロッドの端部を左右一側の前輪ケース17の操舵アームにピン連結し、左右前輪ケース17の左右ナックルアーム17cを前側タイロッド17dにより連動連結し、前記操舵油圧分配器により制御された油圧を前輪操舵シリンダ19の左右ポート19b、19cに給排可能に構成したことを特徴とするトラクタの操舵装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪操舵走行、後輪操舵走行及び前後輪操舵走行の可能なトラクタにおいて、前輪操舵系及び後輪操舵系の作動用マニホールド、操舵油圧分配器、前電磁バルブ及び後電磁バルブをハンドルポスト8部にまとめて配置し、ハンドルポスト8に設けたステアリングハンドルにより操舵バルブを操作するように構成したものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−87301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、構成を簡素化しメンテナンスの容易なトラクタの前輪操舵装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行車体の前後に左右前輪(3,3)及び左右後輪(4,4)を設け、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を設けてステアリングハンドル(9)で作動可能に構成したトラクタにおいて、フロントアクスルケース(16)の左右両側部に左右前輪(3,3)を支架している左右前輪ケース(17,17)を操舵回動可能に設け、走行車体の前側部左右一側に前輪操舵シリンダ(19)を前後方向に沿わせて配置し、前記前輪操舵シリンダ(19)の後側から突出しているシリンダロッド(19a)の端部を走行車体から延出しているシリンダブラケット(19d)で支持し、前輪操舵シリンダ(19)の前側から突出しているシリンダロッド(19a)の端部を左右一側の前輪ケース(17)の操舵アーム(17b)にピン連結し、左右前輪ケース(17,17)の左右ナックルアーム(17c,17c)を前側タイロッド(17d)により連動連結し、前記操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)に給排可能に構成したことを特徴とするトラクタの操舵装置とする。
【0005】
前記構成によると、操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)から給排すると、前輪操舵シリンダ(19)の前側に突出しているシリンダロッド(19a)が前後に移動し、左右一側の前輪ケース(17)の操舵アーム(17b)を操舵回動し、前側タイロッド(17d)を介して左右他側の前輪ケース(17)が操舵回動し、左右前輪(3,3)が操舵される。
【0006】
請求項2の発明は、走行車体の前後に左右前輪(3,3)及び左右後輪(4,4)を設け、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を設けてステアリングハンドル(9)で作動可能に構成したトラクタにおいて、フロントアクスルケース(16)の左右両側部に左右前輪(3,3)を支架している左右前輪ケース(17,17)を操舵回動可能に設け、走行車体の前側部に左右方向に沿わせて前輪操舵シリンダ(19)を配設し、前記前輪操舵シリンダ(19)の左右両側から突出しているシリンダロッド(19a)の左右端部を左右リンク(20,20)を介して前記左右前輪ケース(17,17)の左右操舵アーム(17b,17b)に連結し、前記操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)に給排可能に構成したことを特徴とするトラクタの操舵装置とする。
【0007】
前記構成によると、操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)から給排すると、前輪操舵シリンダ(19)の左右両側から突出しているシリンダロッド(19a)の左右端部が左右に移動し、左右リンク(20,20)を介して左右前輪ケース(17,17)の操舵アーム(17b,17b)が左右操舵回動し、左右前輪(3,3)が操舵される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を配置し、走行車体の前側部左右一側に前輪操舵シリンダ(19)を配設したので、構成を簡素化した前輪操舵装置を提供することができる。
【0009】
請求項2の発明は、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を配置し、前輪操舵シリンダ(19)の左右両側から突出しているシリンダロッド(19a)の左右端部を左右リンク(20,20)を介して左右前輪ケース(17,17)の左右操舵アーム(17b,17b)に連結したので、構成を簡素化した前輪操舵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいてこの発明を農業用トラクタに施した形態について説明する。
トラクタTは、図1に示すように、車体前側部のボンネット1内にエンジン(図示省略)を搭載し、エンジン(図示省略)の回転動力を、ミッションケース2内の油圧無段変速装置及びギヤ式の副変速装置を経由して左右前輪3,3及び左右後輪4,4へ伝達している。
【0011】
また、前記ミッションケース2の後側上部には、作業機昇降用の油圧シリンダ(図示省略)を内装するシリンダケース(図示省略)を設け、このシリンダケースの左右両側部にリフトアーム6,6を上下回動自在に軸架し、油圧シリンダ(図示省略)のピストンの伸縮作動により、リフトアーム6,6を上下回動するように構成している。また、前記ミッションケース2の後側部には、上部リンクと左右下部リンクとからなる三点リンク機構(図示省略)を設けて、各種作業機を連結するように構成している。
【0012】
また、エンジン(図示省略)の後方には、ハンドルポスト8を立設し、ハンドルポスト8の上部にステアリングハンドル9を軸支し、ハンドルポスト8の左右側に車体の前後進を切り替える所謂シャトル操作式の前後進切替レバー(図示省略)を設けている。また、ステアリングハンドル9の下方のフロア10上には、左右ブレーキペダル(図示省略)、クラッチペダル(図示省略)、アクセルペダル(図示省略)を設けている。
【0013】
また、ステアリングハンドル9の後方に操縦席11を設け、この操縦席11の左右両側に左右フェンダ12,12を設け、左フェンダ12の上方に前記リフトアーム6,6を上下回動操作する作業機昇降レバー(図示省略)、油圧無段変速装置の出力回転数を調整する主変速レバー(図示省略)、副変速装置切換用の副変速レバー(図示省略)を設けている。
【0014】
次に、図2及び図3に基づきステアリングハンドル9の操舵構成について説明する。
ミッションケース2の前側部から前側フレーム15を前方に延出し、前側フレーム15の前後中途部からハンドルポスト8を立設し、その上部にステアリングハンドル9を軸支している。前側フレーム15の前側部にはフロントアクスルケース16を左右に延出するように設け、フロントアクスルケース16の左右両側部に左右前輪ケース17,17を上下方向の軸心17a,17a回りに回動自在に支持している。ミッションケース2から前方へ延出している前輪伝動軸18により前輪動力を取り出し、フロントアクスルケース16内の前輪デフ装置(図示省略)、前輪伝動装置を経由して左右前輪3,3に伝達している。
【0015】
ハンドルポスト8のポストカバー8a内に操舵油圧分配器21を配設し、ステアリングハンドル9と連動連結している。また、前側フレーム15の前側部左側には前輪操舵シリンダ19を前後方向に沿わせて配置し、前輪操舵シリンダ19の前後両側部からシリンダロッド19aの両端を前後に突出させ、前輪操舵シリンダ19の左ポート19bを前側に右ポート19を後側配置するように構成している。
【0016】
前側フレーム15から延出しているシリンダブラケット19dによりシリンダロッド19aの後側端部を支持し しかして、ステアリングハンドル9の回転により操舵油圧分配器21を回動すると、油圧ポンプ(図示省略)から送られた油圧の左右ホース23,23への給排状態が切り換えられると共に、コントローラ(図示省略)により左右流量制御バルブ(図示省略)の流量が同時に制御されて、操舵シリンダ19の左右ポート19b,19cから給排され、シリンダロッド19aが前後に移動し、左右前輪3,3が操舵される。
【0017】
なお、フロントアクスルケース16の前側や後側に前輪操舵シリンダ19を左右方向に沿うように配置し、シリンダロッド19aの左側端部を左前輪ケース17の操舵アーム17bにピン連結し、左右前輪3,3を操舵するように構成してもよい。また、操舵油圧分配器21をフロントアクスルケース16の前側で且つ左右幅内に収まるように配設したり、また、ハンドルポスト8内の下方寄りあるいは上方寄りのポストカバー8a内に配設してもよい。
【0018】
次に、図4及び図5により他の実施例について説明する。
ハンドルポスト8のポストカバー8a内に操舵油圧分配器21を配設し、ステアリングハンドル9と連動連結している。また、前側フレーム15の前側部には前輪操舵シリンダ19を左右方向に沿わせて取り付け、前輪操舵シリンダ19の左右両側から突出しているシリンダロッド19aの左右両端と左右前輪ケース17,17の操舵アーム17b,17bとの間を左右リンク20,20により連結している。
【0019】
しかして、ステアリングハンドル9の操舵回転により操舵油圧分配器21が回動すると、油圧ポンプ(図示省略)から送られた油圧の左右ホース23,23への給排状態が切り換えられると共に、コントローラ(図示省略)の指令により左右流量制御バルブ(図示省略)の流量が同時に制御され、操舵シリンダ19の左右ポート19b,19cから油圧が給排される。すると、シリンダロッド19aが左右に移動し、左右リンク20,20、左右操舵アーム17b,17bにより左右前輪3,3が操舵される。
【0020】
なお、フロントアクスルケース16の後側に前輪操舵シリンダ19を左右方向に沿うように配置してもよい。
前記構成によると、単一の前輪操舵シリンダ19のシリンダロッド19aの左右両端を左右リンク20,20を介して左右前輪ケース17,17の左右操舵アーム17b,17bに伝達し左右前輪3,3を操舵する構成であるので、操舵構成を簡単化することができる。
【0021】
次に、図6により他の実施例について説明する。
前側フレーム15の下方で、前輪伝動軸18の支持筒体18aの上方部位で、且つ、フロントアクスルケース16の後側上方に前輪操舵シリンダ19を左右方向に沿うように配設し、シリンダロッド19aの右端部を前側フレーム15から延出しているブラケット(図示省略)で支持し、シリンダロッド19aの左端部を左前輪ケース17の操舵アーム17bにピン連結し、左右前輪ケース17,17の左右ナックルアーム17c,17cを前側タイロッド17dにより連動連結している。前記構成によると、前輪操舵シリンダ19を前輪伝動軸18の支持筒体18a及びフロントアクスルケース16により保護し、破損を防止することができる。
【0022】
次に、図7により他の実施例について説明する。
前側フレーム15の前後方向中途部下方における前輪伝動軸18の支持筒体18aの上方部位で、且つ、フロントアクスルケース16の後側上方に前輪操舵シリンダ19を配設している。前輪操舵シリンダ19のシリンダロッド19aの右側端部をブラケット(図示省略)で支持し、シリンダロッド19aの左側端部を左前輪ケース17の左操舵アーム17bにピン連結し、左右ナックルアーム17c,17cを前側タイロッド17dにより連動連結し、前側フレーム15の左側方に沿うように左右油圧ホース23,23を配索している。前記構成によると、前輪操舵シリンダ19への左右油圧ホース23,23を集中配索することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0023】
次に、図8及び図9に基づきフロア10のステップ構成について説明する。
ミッションケース2の後部上方にはシートフレーム31を設け、シートフレーム31の左右両側部に左右フェンダ12,12を取り付けている。ミッションケース2の前側部左右両側には左右フロア10,10の内側部をボルト・ナットで固着し、左右フロア10,10の前側部を前上り傾斜に延出して、エンジン側の後プレート33にボルト・ナットで固着し、左右フロア10,10の後側部を左右フェンダ12,12の前端下部に2本のボルト・ナット35で固着している。
【0024】
左右フロア10,10の左右両側部には左右補助ステップ34,34を吊り下げ状に取り付けている。この左右補助ステップ34,34は前取付板34a、ステップ板34b、後取付板34cにより側面視倒コ字状に構成し、前取付板34aの上側部を左右フロア10,10の前側部に2本のボルト・ナット35,35で固着し、後取付板34cの上側部を左右フロア10,10とを、2本のボルト・ナット35,35により左右フェンダ12,12に共締めして固着し、部品点数の削減を図っている。
【0025】
次に、図10に基づき燃料タンク41への給油構成について説明する。
トラクタTのコントローラ39の入力側には、バッテリ40を始動スイッチ42を経由して接続し、入力側には燃料タンク41のゲージ43を接続し、コントローラ39の出力側には左方ウインカランプ44L,44Rを接続している。
【0026】
始動スイッチ42には、OFF接点42a、通電接点42b、グロー接点42c、始動接点42dを設け、通電接点42bあるいはグロー接点42cが接続しているときに、給油制御モードが作動するように構成している。しかして、燃料の給油を開始すると、燃料ゲージ43が燃料タンク41の燃料残量を検出しコントローラ39に入力する。すると、給油中に燃料タンク41の給油可能残量が大のときには、コントローラ39の指令により左方ウインカランプ44L,44Rがゆっくり点滅し、また、給油可能残量が少なくなると、左方ウインカランプ44L,44Rが早く点滅する。
【0027】
前記構成によると、既存の左右ウインカランプ44L,44Rを有効に活用して、燃料タンク41の給油可能残量を知ることができ、適正な燃料供給をすることができる。また、左方ウインカランプ44L,44Rの点滅により始動スイッチ42の切り忘れを防止することができる。
【0028】
また、始動スイッチ42の通電接点42bが接続状態にあるときにだけ、給油制御モードが所定時間(例えば、5分)にわたり作動し、所定時間が終了すると給油制御モードが終了するように構成してもよい。
【0029】
次に、図11に基づきトラクタにおける作業機の昇降制御装置について説明する。
操縦席11の左側に設けている第1作業機昇降レバー(図示省略)を前後方向に操作することにより機体後部の作業機が昇降するように構成し、ステアリングハンドル9の近傍に設けている第2作業機昇降レバー46を指先で上げ下げすることにより作業機昇降スイッチ(図示省略)が作動し、機体後部の作業機が昇降するように構成したトラクタにおいて、コントローラ(図示省略)に接続している所定のスイッチ操作によりシステム設定モードを選択設定すると、操作パネル48の表示画面48aにシステム設定の画面が表示され、所定のスイッチ操作さにより、「水田用」あるいは「畑用」に設定できるように構成している。
【0030】
「畑用」に設定されると、第2作業機昇降レバー46の操作により作業機昇降スイッチ(図示省略)を昇降作動しようとしても、コントローラの指令により当該スイッチ入力を無効とし、作業機を昇降させないように制御している。
【0031】
簡単な指先操作できる第2作業機昇降レバー46による作業機の昇降は水田作業では便利であるが、畑作業では不要であるばかりか、危険な場合がある。即ち、畑で移植機により苗の移植作業をする場合には、移植機に補助作業者が乗っており、移植作業中に移植機が不意に昇降すると、補助作業者には危険である。
【0032】
前記構成によると、システム設定で畑用に設定されていると、指先で簡単に操作できる第2作業機昇降レバー46による作業機の昇降はできないので、ステアリングハンドル9の操作時に誤操作により第2作業機昇降レバー46の昇降操作による作業機の昇降を防止でき安全である。
【0033】
次に、図12に基づきトラクタの他の制御装置について説明する。
この制御は、1本の変速レバーで超低速から最高速まで全ての変速段数を選択できると共に、移動走行時及び作業開始時にも適切な変速を選択できる自動変速機能を備えたコントローラを有するトラクタにおいて、第1作業機昇降レバー(図示省略)を前後方向に操作すると機体後部の作業機が昇降するように構成し、ステアリングハンドル9の近傍に設けている第2作業機昇降レバー46を指先での上げ下げ操作により作業機昇降スイッチ(図示省略)を作動し機体後部の作業機が昇降できるように構成している。
【0034】
また、自動変速入切スイッチ47の切り操作がコントローラに入力されると、システム設定モードに移行し、自動変速入切スイッチ47を「水田用」あるいは「畑用」に切り換えることにより、「水田用」あるいは「畑用」に設定できるように構成し、「畑設定」を選択すると、畑ランプ47aが点灯し、「水田設定」を選択すると、水田ランプ47bが点灯するように構成している。
【0035】
そして、自動変速入切スイッチ47が入り状態で「水田設定」の場合には、第2作業機昇降レバー46を一瞬でも押し操作すると、作業機が昇降作動し、また、「畑設定」の場合には、第2作業機昇降レバー46を所定時間(例えば2秒)連続して押し続けないと、作業機が昇降作動しないように構成している。
【0036】
なお、コントローラによる前記自動変速機能は、自動変速入切スイッチ47の畑設定あるいは水田設定により、別々の変速基準により自動変速される構成である。
前記構成によると、一本の変速レバーにより変速操作を簡単容易にしながら、畑作業での第2作業機昇降レバー46の誤操作による作業機の昇降が防止できて安全である。
【0037】
また、自動変速入切スイッチ47が水田設定の場合には、第1作業機昇降レバー(図示省略)及び第2作業機昇降レバー46を操作すると、作業機が高速で昇降作動し、畑設定の場合には、低速で昇降作動するように構成してもよい。
【0038】
次に、トラクタの走行制御について説明する。
エンジンの回転動力を前後進切換クラッチ(図示省略)、油圧無段変速型の主変速装置(図示省略)、歯車変速型の副変速装置(図示省略)を経由して前輪及び後輪へ伝達し、スロットルレバーの操作状態を検出するスロットルセンサを備え、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ及びトラクタの車速を検出する車速センサを備え、ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキセンサを備え、自動変速レバーを高速変速領域に操作した路上走行時にはエンジンの回転数に応じて自動的に減速変速あるいは増速変速をする自動変速機能を備えたトラクタにおいて、エンジンの回転数がアイドリング回転数まで低下した状態でブレーキが踏み込まれた場合には、コントローラの指令により前記前後進切換クラッチを自動的に中立に切り換えて惰性走行とし、次いで、オペレータがブレーキを踏み込み走行が停止すると、コントローラからの指令で旋回時に作動する左右旋回ブレーキ装置を制動するようにしている。
【0039】
また、トラクタの走行停止状態からスロットルセンサがスロットルレバーの開調節を検出すると、コントローラの指令で前記左右旋回ブレーキの制動を解除し、次いで、前後進切換クラッチを前進接続に切り換え走行を開始するようにしている。
【0040】
前記構成によると、トラクタの走行開始及び走行停止時にオペレータのクラッチ操作を省略することができ、また、走行停止状態では左右旋回ブレーキ装置が自動的に作動するので、オペレータが降車してもトラクタが走行を再開するようなこともなく安全である。
【0041】
また、これに加えて、シートにシートスイッチを設け、オペレータがシートに座っているか否かを検出し、シートスイッチがOFFしオペレータがシートから離れたことを検出すると、前記左右旋回ブレーキを制動し、トラクタの停止状態を保持するように構成してもよい。
【0042】
また、パーキングブレーキの作動を検出するパーキングブレーキセンサを設け、パーキングブレーキを制動させた場合には、前記左右旋回ブレーキを作動しトラクタの停止状態を保持するように構成してもよい。
【0043】
また、エンジンの回転数をエンジン負荷により自動的に制御するエンジン回転数制御装置を備えたトラクタにおいて、シートの下方のフロアに振動センサ(図示省略)を設け、作業走行中に振動センサの検出振動が基準値を超えたときには、作業能率が変化しない程度にコントローラの指令でエンジン回転数を下げる制御を実施する。また、自動変速レバーの走行変速時に振動センサの検出振動が基準値を超えたときには、次の自動変速レバーの変速操作時には、コントローラの指令により自動的にクラッチの接続時間を長くし、また、自動変速レバーの変速時における振動センサの検出振動が基準値を超えないときには、はコントローラの指令により自動的にクラッチの接続時間を短くするように制御する。
【0044】
いずれのトラクタのエンジンにも振動が特別に高くなる回転数領域がある。しかし、前記構成によると、エンジンの共振回転数を回避し、変速時のショックを和らげながら作業をすることができる。
【0045】
次に、図13について説明する。トラクタのボンネット1の前側部には前照灯52を設け、補助ステップ34の前側部には左右前輪ランプ51,51を設け、左右前輪3,3の後側部を照らすようにしている。前記構成によると、夜間作業時には前照灯52で前方を照らすと共に、左右前輪ランプ51,51により左右前輪3,3の後方近傍を照らしながら、楽に安全に作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】トラクタの側面図。
【図2】トラクタの一部省略した側面図。
【図3】トラクタの一部省略した前側部の平面図。
【図4】ステアリングハンドル部の一部省略した側面図。
【図5】前輪ケースと前輪操舵シリンダ部の平面図。
【図6】トラクタ前側部の一部省略した斜視図。
【図7】トラクタ前側部の一部省略した斜視図。
【図8】補助ステップ部の斜視図。
【図9】補助ステップ部の斜視図。
【図10】制御回路図、燃料タンクの側面図。
【図11】ステアリングハンドル及び操作パネルの斜視図。
【図12】操作パネルの正面図。
【図13】トラクタの側面図。
【符号の説明】
【0047】
3 前輪
4 後輪
8 ハンドルポスト
8a ポストカバー
9 ステアリングハンドル
16 フロントアクスルケース
17 前輪ケース
17b 操舵アーム
17c ナックルアーム
17d 前側タイロッド
19 前輪操舵シリンダ
19a シリンダロッド
19b 左ポート
19c 右ポート
19d シリンダブラケット
20 リンク
21 操舵油圧分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の前後に左右前輪(3,3)及び左右後輪(4,4)を設け、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を設けてステアリングハンドル(9)で作動可能に構成したトラクタにおいて、フロントアクスルケース(16)の左右両側部に左右前輪(3,3)を支架している左右前輪ケース(17,17)を操舵回動可能に設け、走行車体の前側部左右一側に前輪操舵シリンダ(19)を前後方向に沿わせて配置し、前記前輪操舵シリンダ(19)の後側から突出しているシリンダロッド(19a)の端部を走行車体から延出しているシリンダブラケット(19d)で支持し、前輪操舵シリンダ(19)の前側から突出しているシリンダロッド(19a)の端部を左右一側の前輪ケース(17)の操舵アーム(17b)にピン連結し、左右前輪ケース(17,17)の左右ナックルアーム(17c,17c)を前側タイロッド(17d)により連動連結し、前記操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)に給排可能に構成したことを特徴とするトラクタの操舵装置。
【請求項2】
走行車体の前後に左右前輪(3,3)及び左右後輪(4,4)を設け、ハンドルポスト(8)部に操舵油圧分配器(21)を設けてステアリングハンドル(9)で作動可能に構成したトラクタにおいて、フロントアクスルケース(16)の左右両側部に左右前輪(3,3)を支架している左右前輪ケース(17,17)を操舵回動可能に設け、走行車体の前側部に左右方向に沿わせて前輪操舵シリンダ(19)を配設し、前記前輪操舵シリンダ(19)の左右両側から突出しているシリンダロッド(19a)の左右端部を左右リンク(20,20)を介して前記左右前輪ケース(17,17)の左右操舵アーム(17b,17b)に連結し、前記操舵油圧分配器(21)により制御された油圧を前輪操舵シリンダ(19)の左右ポート(19b,19c)に給排可能に構成したことを特徴とするトラクタの操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−76644(P2010−76644A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248406(P2008−248406)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】