トラクタ
【課題】本発明の課題は、作業速の設定モードを作業内容の異なる水田モードと畑作モードとに区分設定し、メモリ変速で記憶した作業速を水田と畑で別々に記憶するようにすることで、より目標値に近い作業速を選択して操作性の向上を図ることにある。
【解決手段】 本発明は、複数段の変速位置を有する主変速装置4aと複数段の変速位置を有する副変速装置4bを備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置4bに対応して選択する主変速装置4aの中で最も長い時間使用した主変速装置4aを記憶する手段Aを設け、該記憶手段Aにて記憶する設定モードを、水田モード21と畑モード22に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置の構成とする。
【解決手段】 本発明は、複数段の変速位置を有する主変速装置4aと複数段の変速位置を有する副変速装置4bを備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置4bに対応して選択する主変速装置4aの中で最も長い時間使用した主変速装置4aを記憶する手段Aを設け、該記憶手段Aにて記憶する設定モードを、水田モード21と畑モード22に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置の構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの変速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数段の変速位置を有する主変速装置と複数段の変速位置を有する副変速装置を備えたトラクタにおいて、作業中に使用する頻度の高い変速位置を記憶する手段を設け、車体が作業中であるとき、副変速を切替え操作した場合の主変速の変速位置を記憶手段に記憶し、記憶された頻度の高い変速位置を再現する構成の変速制御手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−42288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業時に最も長い時間使用した作業速(変速段)を記憶手段によって記憶するようにしておくと、作業する圃場が変わっても、その記憶された作業速に直ちに変速操作することができて便利であるが、作業内容が変わった場合には使用する作業速度も異なってくる。例えば、同じトラクタでも作業内容の異なる水田と畑を兼用で作業することがよくあり、大抵作業速度は異なるものである。同じ水田作業に限って云えば圃場が変わっても使用する作業速は略同じとみてよく、また、畑作作業にあっても使用する作業速は略同じとみてよいものである。
【0005】
本発明の課題は、作業速の設定モードを作業内容の異なる水田モードと畑作モードとに区分設定し、メモリ変速で記憶した作業速を水田と畑で別々に記憶するようにすることで、より目標値に近い作業速を選択して操作性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、複数段の変速位置を有する主変速装置(4a)と複数段の変速位置を有する副変速装置(4b)を備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置(4b)に対応して選択する主変速装置(4a)の中で最も長い時間使用した主変速装置(4a)を記憶する手段(A)を設け、該記憶手段(A)にて記憶する設定モードを、水田モード(21)と畑モード(22)に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置とする。
【0007】
水田作業か畑作作業かによってそれぞれ別々にメモリ変速位置を記憶するので、作業内容が変わった場合でも、モード切り替えによってそれぞれで使用していたメモリ変速を使用することができ、より目標値に近い作業速でもって作業が行え、変速操作の煩わしさを軽減できて操作性が向上する。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記水田モード(21)と畑モード(22)に切り替える切替スイッチ(23)は単一のスイッチで共用したことを特徴とする請求項1記載のトラクタの変速制御装置とする。
【0009】
単一の切替スイッチ(23)で水田モード(21)又は畑モード(22)のいずれか一方に切り替える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の本発明によれば、作業モードが水田か畑作かによって別々にメモリ変速位置を記憶するので、作業内容が変わった場合でも、モード切り替えによってそれぞれに対応したメモリ変速を使用することができ、所望の作業速に瞬時に変速操作することが可能であり、変速操作の煩わしさがなく、操作性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2の本発明によれば、単一の切替スイッチ(23)で水田モード(21)又は畑モード(22)のいずれか一方に切り替えるので、両方のモードになることを防止でき、優先関係など制御が複雑になるのを防止できる。また、単一のスイッチとすることで、廉価な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの側面図
【図2】制御ブロック回路図
【図3】電子制御エンジン・パワーカーブの選択手段説明図
【図4】パワーカーブの自動選択フローチャート
【図5】パワーカーブ自動選択フローチャート
【図6】電子制御エンジン用車速設定カーブを示す図
【図7】ブレーキペダルとエンジンスロットルの連動機構を示す斜視図
【図8】トラクタ要部の側面図
【図9】安全フレームの要部の切断背面図
【図10】安全フレームの背面図
【図11】バッテリケーブルの側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1に示すトラクタは車体1の前後部に前輪2、2と後輪3、3を備え、車体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をミッションケース4内の主副変速装置4a,4bによって適宜減速して、これらの前輪2、2と後輪3、3に伝えるように構成している。ミッションケ−ス4の後上部には油圧シリンダケース5が搭載され、このシリンダケース5の左右両側部には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム13,13が回動自在に枢支されている。シリンダケース5内に収容されているリフトシリンダ5aに作動油を供給するとリフトアーム13が上方に回動し、排出するとリフトアーム13は下降するようになっており、昇降リンク機構14を介してロータリ作業機Rを昇降する構成としている。
【0014】
機体の中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が支持され、その後方には運転席8が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー9が設けられ、また、運転席8の左側前方位置には、例えば、1速から4速(又は1速〜8速)まで変速段を選択操作可能な主変速レバー10、該主変速レバー10の後方位置には低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー11、運転席の右側には作業機Rを昇降操作するポジションレバー12等が配置されている。
【0015】
また、1速から4速まで変速段を選択可能な主変速レバー10には、押しボタン式の増速用変速スイッチ15と減速用変速スイッチ16が設けられている。増速用変速スイッチ15を押すと主変速が「1速」から「4速」側へ順次シフトアップされ、減速用変速スイッチ16を押すと主変速が「4速」から「1速」側へ順次シフトダウンするようになっている。
【0016】
前記主変速装置4aには、主変速「1速〜4速」位置センサ17a〜17dが設けられ、副変速装置4bには「低速」・「中速」・「高速」・「中立」位置センサ18a〜18dが設けられている。これらの各位置センサ17a〜17d及び18a〜18dはコントローラ19に入力される。主変速装置からのシフト制御でコントローラから出力される主変速用ソレノイドバルブ20a〜20dが制御され、これにより変速シフト位置が切り替えられるようになっている。
【0017】
変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、この作業中に最も長い時間使用した作業速(変速段)を記憶する記憶手段(A)がコントローラ19に制御プログラム形式で備えられている。また、前記記憶手段(A)によって記憶する作業速の設定モードを水田モード21と畑モード22とに区分設定して別々に記憶するよう構成する。そして、切替スイッチ23によって水田モードと畑モードとに切替可能な作業モード切替手段(B)がコントローラ19に制御プログラム形式で備えられている。
【0018】
切替スイッチ23を操作して機体が作業中(水田又は畑)に切り替えられているとき、副変速を切替操作した場合の主変速の変速位置は、記憶手段(A)によって記憶されている最も長時間使用された作業変速位置とする。また、作業中において一番長く使用した主変速位置が変わると、その主変速位置が再記憶され、次回からはこの再記憶された主変速位置が再現される。
【0019】
例えば、水田モードにして副変速位置を中速に選択すると、過去の履歴で一番長く使用して記憶されている「主変速3速」となる(記憶位置が無い場合は、作業者が選択する主変速位置での作業となる)。そして、作業中において主変速を変更すると変更された主変速のうち一番長く使用した主変速位置「主変速4速」が記憶される。次回に水田モードにして副変速位置を中速に選択すると、主変速位置は記憶されている「主変速4速」となる。副変速位置を低速や高速を選択しても同じ制御が行われる。もちろん畑モードを選択しても同じ制御が行われる。主変速位置の手動変更は増減速のボタン操作としている。また、副変速位置の手動変更はレバーでの変更としている。また、作業中の主変速位置は変速モニタ24に表示される。副変速位置もモニタ24に表示してもよい。
【0020】
即ち、水田モードで作業を再開する場合は、副変速レバー11を「中速」位置に操作すると、主変速は記憶位置に入り、水田モードで記憶している変速位置の「主変速3速」で作業を再開することになる。また、畑モードで記憶されている主変速位置が例えば「主変速4速」である場合には、畑モードで記憶された主変速位置「主変速4速」で作業を行うことになる。この場合は、作業モードを水田モードから畑モードに切り替えれば良い。
なお、モード切替スイッチ23を水田モード「入り」に切り替えると、変速モニタ24にモニタランプが点灯し、水田モードのメモリ変速位置が表示され、また、畑モード「入り」に切り替えると、変速モニタ24にモニタランプが点灯し、畑モードのメモリ変速位置が表示される。
【0021】
また、単一の切替スイッチ23で水田モード21又は畑モード22のいずれか一方に切り替えるので、両方のモードになることを防止でき、優先関係など制御が複雑になるのを防止できる。また、単一のスイッチとすることで、廉価な構成となる。
【0022】
次に電子制御エンジンにおけるパワーカーブ選択方法について説明する。図3に示すように、エンジンコントローラ26を備えた単体のエンジンで複数のパワーカーブ一〜四を設定し、トラクタ本機コントローラ27からのCAN通信による自動選択モード設定と、手動スイッチ28等の別の方法による手動モード設定の2種類の設定モードを兼ね備えたものにおいて、手動モードとは無関係に複数個あるパワーカーブの中から本機コントローラの通信により本機情報を入手し、使用できるカーブを規定数(例えば2個)に限定させ、人為的使用が不可能となるよう構成している。これは法的要件、金銭的要件で使用カーブの限定が必要となる場合があるため、手動モードには関係なく使用できるカーブを本機のコントローラの情報から決定する(図4に示すフローチャート参照)ことができる。
【0023】
また、前記手動モードとは関係なしにトラクタの変速及びPTOの負荷で上方にカーブの移動が必要と認識された際には、自動モードを優先させるように構成している(図5のフローチャート参照)。
【0024】
なお、電子制御エンジンのPTO変速の関連構成において、軽負荷作業としてエコノミーPTOが使用される。これが重作業で使用されると、機械の破損につながるので、エコノミーPTO使用時は、手動スイッチに優先して下方カーブを選択することも可能である。
【0025】
電子制御エンジン用車速設定においては、図6に示すように、車速帯で重なるところを設け、クリープ入・切の違いでカーブが上方又は下方に自動的に選択できるように設定することができる。
【0026】
電子制御エンジンパワーカーブの選択において、本機及びエンジンに重要な欠陥、不具合が生じた際には、下方のパワーカーブを選択するよう制御する。また、クラッチペダルON・OFF(切)により、「切」が選択された際は、全て下方のカーブを選択するものとする。更に、変速中立「N」が選択された場合も、下方カーブを選択するが、負荷ダウンが認められた場合のみ上方へ自動的に移動させるものとする。
【0027】
また、エンジン負荷率が一定で且つ車速が一定になるようにエンジン回転数を制御するように構成すると、HSTレバーやアクセルペダルで設定した車速で走ることが可能となる。また、負荷率を設定する設定器を設ける構成としてもよい。
【0028】
次にHST付トラクタの緊急停止機構の実施例につき説明する。
電磁バルブ制御のHST付トラクタにおいて、図7に示す実施例では、ブレーキペダル40をブレーキ制動方向に踏み込むと、ケーブル41が矢印方向に引っ張られ、エンジンのスロットル42をアイドリング方向に戻すように連動構成している。アクセルワイヤ43はアクセルレバーに連動連結されている。上記構成によれば、走行中、緊急不安定状態になっても、ブレーキペダルを踏むことで、即座にエンジンをアイドリング状態にし、緊急停止がスムースに行える。
【0029】
また、上記とは別実施例として、本機が緊急不安定状態になって、異常ホーンが鳴った場合、数秒後にキーストップソレノイドを作動させ、エンジンへの燃料供給を遮断してエンジンを停止させることもできる。
【0030】
更に、上記のように、異常ホーンが鳴った場合、ブレーキペダルを踏むと、ペダル部分に設けたセンサによりコントローラに信号を送り、エンジンのキーストップソレノイドを作動させ、エンジンへの燃料供給を遮断し、エンジンを緊急停止させる手段をとることもできる。
【0031】
図8及び図9は、安全フレームに対するクッションゴムの取付構造を示すもので、次のような構成になっている。図例はトラクタの中間部に立設する安全フレーム45a,45bを示し、上部フレーム45aは、下部フレーム45bに対して連結軸46を支点として前後に起伏可能に構成してあり、正立(起立)時(イ)と転倒時(ロ)とにおいてロックピン47によりロックする構成としている。上部フレーム45aの基部側には、これと一体的に回動する2枚の支持プレート48L,48Rが左右に並設して設けられている。そして、この2枚の支持プレート48L,48R間には、2個のクッションゴム49a,49bが両プレートによって挟み込むように取付られ、上部フレーム45bの正立時と転倒時とのそれぞれにおいて上部フレームを直接支持するように構成している。つまり、正立時にはクッションゴム49aが下部フレーム45bに接当して上部フレームを支持し、転倒時にはクッションゴム49bが下部フレーム45bに接当して上部フレームを支持するようになっている。また、ゴム取付プレート50a,50bは、左右の支持プレート48a,48b間に挟み込むように取付支持することにより、ゴム取付プレートを取り付けるための別のブラケットが不要となる。従って、かかる構成によれば、従来構成に比べ多くの部品が不要となり、コストダウン化が期待できる。
【0032】
図10に示す実施例は、安全フレームにウインカを装着する構成例を示したもので、この安全フレーム45には、コの字型の取付ステー51を取り付け、この取付ステー51の上壁部51aに作業灯52を取り付けると共に、下壁部51bにはコの字型空間内に収まるようにしてウインカ(方向指示器)53を取り付けるように構成したものである。
【0033】
なお、図11に示す実施例は、バッテリケーブル54にオルタネ−タ(発電機)からの充電回路55を組み込んでロックバンド56で締付け保持した構成例を示している。
【符号の説明】
【0034】
4a 主変速装置
4b 副変速装置
10 主変速レバー
11 副変速レバー
19 コントローラ
21 水田モード
22 畑モード
A 記憶手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの変速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数段の変速位置を有する主変速装置と複数段の変速位置を有する副変速装置を備えたトラクタにおいて、作業中に使用する頻度の高い変速位置を記憶する手段を設け、車体が作業中であるとき、副変速を切替え操作した場合の主変速の変速位置を記憶手段に記憶し、記憶された頻度の高い変速位置を再現する構成の変速制御手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−42288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業時に最も長い時間使用した作業速(変速段)を記憶手段によって記憶するようにしておくと、作業する圃場が変わっても、その記憶された作業速に直ちに変速操作することができて便利であるが、作業内容が変わった場合には使用する作業速度も異なってくる。例えば、同じトラクタでも作業内容の異なる水田と畑を兼用で作業することがよくあり、大抵作業速度は異なるものである。同じ水田作業に限って云えば圃場が変わっても使用する作業速は略同じとみてよく、また、畑作作業にあっても使用する作業速は略同じとみてよいものである。
【0005】
本発明の課題は、作業速の設定モードを作業内容の異なる水田モードと畑作モードとに区分設定し、メモリ変速で記憶した作業速を水田と畑で別々に記憶するようにすることで、より目標値に近い作業速を選択して操作性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、複数段の変速位置を有する主変速装置(4a)と複数段の変速位置を有する副変速装置(4b)を備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置(4b)に対応して選択する主変速装置(4a)の中で最も長い時間使用した主変速装置(4a)を記憶する手段(A)を設け、該記憶手段(A)にて記憶する設定モードを、水田モード(21)と畑モード(22)に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置とする。
【0007】
水田作業か畑作作業かによってそれぞれ別々にメモリ変速位置を記憶するので、作業内容が変わった場合でも、モード切り替えによってそれぞれで使用していたメモリ変速を使用することができ、より目標値に近い作業速でもって作業が行え、変速操作の煩わしさを軽減できて操作性が向上する。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記水田モード(21)と畑モード(22)に切り替える切替スイッチ(23)は単一のスイッチで共用したことを特徴とする請求項1記載のトラクタの変速制御装置とする。
【0009】
単一の切替スイッチ(23)で水田モード(21)又は畑モード(22)のいずれか一方に切り替える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の本発明によれば、作業モードが水田か畑作かによって別々にメモリ変速位置を記憶するので、作業内容が変わった場合でも、モード切り替えによってそれぞれに対応したメモリ変速を使用することができ、所望の作業速に瞬時に変速操作することが可能であり、変速操作の煩わしさがなく、操作性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2の本発明によれば、単一の切替スイッチ(23)で水田モード(21)又は畑モード(22)のいずれか一方に切り替えるので、両方のモードになることを防止でき、優先関係など制御が複雑になるのを防止できる。また、単一のスイッチとすることで、廉価な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの側面図
【図2】制御ブロック回路図
【図3】電子制御エンジン・パワーカーブの選択手段説明図
【図4】パワーカーブの自動選択フローチャート
【図5】パワーカーブ自動選択フローチャート
【図6】電子制御エンジン用車速設定カーブを示す図
【図7】ブレーキペダルとエンジンスロットルの連動機構を示す斜視図
【図8】トラクタ要部の側面図
【図9】安全フレームの要部の切断背面図
【図10】安全フレームの背面図
【図11】バッテリケーブルの側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1に示すトラクタは車体1の前後部に前輪2、2と後輪3、3を備え、車体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をミッションケース4内の主副変速装置4a,4bによって適宜減速して、これらの前輪2、2と後輪3、3に伝えるように構成している。ミッションケ−ス4の後上部には油圧シリンダケース5が搭載され、このシリンダケース5の左右両側部には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム13,13が回動自在に枢支されている。シリンダケース5内に収容されているリフトシリンダ5aに作動油を供給するとリフトアーム13が上方に回動し、排出するとリフトアーム13は下降するようになっており、昇降リンク機構14を介してロータリ作業機Rを昇降する構成としている。
【0014】
機体の中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が支持され、その後方には運転席8が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー9が設けられ、また、運転席8の左側前方位置には、例えば、1速から4速(又は1速〜8速)まで変速段を選択操作可能な主変速レバー10、該主変速レバー10の後方位置には低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー11、運転席の右側には作業機Rを昇降操作するポジションレバー12等が配置されている。
【0015】
また、1速から4速まで変速段を選択可能な主変速レバー10には、押しボタン式の増速用変速スイッチ15と減速用変速スイッチ16が設けられている。増速用変速スイッチ15を押すと主変速が「1速」から「4速」側へ順次シフトアップされ、減速用変速スイッチ16を押すと主変速が「4速」から「1速」側へ順次シフトダウンするようになっている。
【0016】
前記主変速装置4aには、主変速「1速〜4速」位置センサ17a〜17dが設けられ、副変速装置4bには「低速」・「中速」・「高速」・「中立」位置センサ18a〜18dが設けられている。これらの各位置センサ17a〜17d及び18a〜18dはコントローラ19に入力される。主変速装置からのシフト制御でコントローラから出力される主変速用ソレノイドバルブ20a〜20dが制御され、これにより変速シフト位置が切り替えられるようになっている。
【0017】
変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、この作業中に最も長い時間使用した作業速(変速段)を記憶する記憶手段(A)がコントローラ19に制御プログラム形式で備えられている。また、前記記憶手段(A)によって記憶する作業速の設定モードを水田モード21と畑モード22とに区分設定して別々に記憶するよう構成する。そして、切替スイッチ23によって水田モードと畑モードとに切替可能な作業モード切替手段(B)がコントローラ19に制御プログラム形式で備えられている。
【0018】
切替スイッチ23を操作して機体が作業中(水田又は畑)に切り替えられているとき、副変速を切替操作した場合の主変速の変速位置は、記憶手段(A)によって記憶されている最も長時間使用された作業変速位置とする。また、作業中において一番長く使用した主変速位置が変わると、その主変速位置が再記憶され、次回からはこの再記憶された主変速位置が再現される。
【0019】
例えば、水田モードにして副変速位置を中速に選択すると、過去の履歴で一番長く使用して記憶されている「主変速3速」となる(記憶位置が無い場合は、作業者が選択する主変速位置での作業となる)。そして、作業中において主変速を変更すると変更された主変速のうち一番長く使用した主変速位置「主変速4速」が記憶される。次回に水田モードにして副変速位置を中速に選択すると、主変速位置は記憶されている「主変速4速」となる。副変速位置を低速や高速を選択しても同じ制御が行われる。もちろん畑モードを選択しても同じ制御が行われる。主変速位置の手動変更は増減速のボタン操作としている。また、副変速位置の手動変更はレバーでの変更としている。また、作業中の主変速位置は変速モニタ24に表示される。副変速位置もモニタ24に表示してもよい。
【0020】
即ち、水田モードで作業を再開する場合は、副変速レバー11を「中速」位置に操作すると、主変速は記憶位置に入り、水田モードで記憶している変速位置の「主変速3速」で作業を再開することになる。また、畑モードで記憶されている主変速位置が例えば「主変速4速」である場合には、畑モードで記憶された主変速位置「主変速4速」で作業を行うことになる。この場合は、作業モードを水田モードから畑モードに切り替えれば良い。
なお、モード切替スイッチ23を水田モード「入り」に切り替えると、変速モニタ24にモニタランプが点灯し、水田モードのメモリ変速位置が表示され、また、畑モード「入り」に切り替えると、変速モニタ24にモニタランプが点灯し、畑モードのメモリ変速位置が表示される。
【0021】
また、単一の切替スイッチ23で水田モード21又は畑モード22のいずれか一方に切り替えるので、両方のモードになることを防止でき、優先関係など制御が複雑になるのを防止できる。また、単一のスイッチとすることで、廉価な構成となる。
【0022】
次に電子制御エンジンにおけるパワーカーブ選択方法について説明する。図3に示すように、エンジンコントローラ26を備えた単体のエンジンで複数のパワーカーブ一〜四を設定し、トラクタ本機コントローラ27からのCAN通信による自動選択モード設定と、手動スイッチ28等の別の方法による手動モード設定の2種類の設定モードを兼ね備えたものにおいて、手動モードとは無関係に複数個あるパワーカーブの中から本機コントローラの通信により本機情報を入手し、使用できるカーブを規定数(例えば2個)に限定させ、人為的使用が不可能となるよう構成している。これは法的要件、金銭的要件で使用カーブの限定が必要となる場合があるため、手動モードには関係なく使用できるカーブを本機のコントローラの情報から決定する(図4に示すフローチャート参照)ことができる。
【0023】
また、前記手動モードとは関係なしにトラクタの変速及びPTOの負荷で上方にカーブの移動が必要と認識された際には、自動モードを優先させるように構成している(図5のフローチャート参照)。
【0024】
なお、電子制御エンジンのPTO変速の関連構成において、軽負荷作業としてエコノミーPTOが使用される。これが重作業で使用されると、機械の破損につながるので、エコノミーPTO使用時は、手動スイッチに優先して下方カーブを選択することも可能である。
【0025】
電子制御エンジン用車速設定においては、図6に示すように、車速帯で重なるところを設け、クリープ入・切の違いでカーブが上方又は下方に自動的に選択できるように設定することができる。
【0026】
電子制御エンジンパワーカーブの選択において、本機及びエンジンに重要な欠陥、不具合が生じた際には、下方のパワーカーブを選択するよう制御する。また、クラッチペダルON・OFF(切)により、「切」が選択された際は、全て下方のカーブを選択するものとする。更に、変速中立「N」が選択された場合も、下方カーブを選択するが、負荷ダウンが認められた場合のみ上方へ自動的に移動させるものとする。
【0027】
また、エンジン負荷率が一定で且つ車速が一定になるようにエンジン回転数を制御するように構成すると、HSTレバーやアクセルペダルで設定した車速で走ることが可能となる。また、負荷率を設定する設定器を設ける構成としてもよい。
【0028】
次にHST付トラクタの緊急停止機構の実施例につき説明する。
電磁バルブ制御のHST付トラクタにおいて、図7に示す実施例では、ブレーキペダル40をブレーキ制動方向に踏み込むと、ケーブル41が矢印方向に引っ張られ、エンジンのスロットル42をアイドリング方向に戻すように連動構成している。アクセルワイヤ43はアクセルレバーに連動連結されている。上記構成によれば、走行中、緊急不安定状態になっても、ブレーキペダルを踏むことで、即座にエンジンをアイドリング状態にし、緊急停止がスムースに行える。
【0029】
また、上記とは別実施例として、本機が緊急不安定状態になって、異常ホーンが鳴った場合、数秒後にキーストップソレノイドを作動させ、エンジンへの燃料供給を遮断してエンジンを停止させることもできる。
【0030】
更に、上記のように、異常ホーンが鳴った場合、ブレーキペダルを踏むと、ペダル部分に設けたセンサによりコントローラに信号を送り、エンジンのキーストップソレノイドを作動させ、エンジンへの燃料供給を遮断し、エンジンを緊急停止させる手段をとることもできる。
【0031】
図8及び図9は、安全フレームに対するクッションゴムの取付構造を示すもので、次のような構成になっている。図例はトラクタの中間部に立設する安全フレーム45a,45bを示し、上部フレーム45aは、下部フレーム45bに対して連結軸46を支点として前後に起伏可能に構成してあり、正立(起立)時(イ)と転倒時(ロ)とにおいてロックピン47によりロックする構成としている。上部フレーム45aの基部側には、これと一体的に回動する2枚の支持プレート48L,48Rが左右に並設して設けられている。そして、この2枚の支持プレート48L,48R間には、2個のクッションゴム49a,49bが両プレートによって挟み込むように取付られ、上部フレーム45bの正立時と転倒時とのそれぞれにおいて上部フレームを直接支持するように構成している。つまり、正立時にはクッションゴム49aが下部フレーム45bに接当して上部フレームを支持し、転倒時にはクッションゴム49bが下部フレーム45bに接当して上部フレームを支持するようになっている。また、ゴム取付プレート50a,50bは、左右の支持プレート48a,48b間に挟み込むように取付支持することにより、ゴム取付プレートを取り付けるための別のブラケットが不要となる。従って、かかる構成によれば、従来構成に比べ多くの部品が不要となり、コストダウン化が期待できる。
【0032】
図10に示す実施例は、安全フレームにウインカを装着する構成例を示したもので、この安全フレーム45には、コの字型の取付ステー51を取り付け、この取付ステー51の上壁部51aに作業灯52を取り付けると共に、下壁部51bにはコの字型空間内に収まるようにしてウインカ(方向指示器)53を取り付けるように構成したものである。
【0033】
なお、図11に示す実施例は、バッテリケーブル54にオルタネ−タ(発電機)からの充電回路55を組み込んでロックバンド56で締付け保持した構成例を示している。
【符号の説明】
【0034】
4a 主変速装置
4b 副変速装置
10 主変速レバー
11 副変速レバー
19 コントローラ
21 水田モード
22 畑モード
A 記憶手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の変速位置を有する主変速装置(4a)と複数段の変速位置を有する副変速装置(4b)を備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置(4b)に対応して選択する主変速装置(4a)の中で最も長い時間使用した主変速装置(4a)を記憶する手段(A)を設け、該記憶手段(A)にて記憶する設定モードを、水田モード(21)と畑モード(22)に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置。
【請求項2】
前記水田モード(21)と畑モード(22)に切り替える切替スイッチ(23)は単一のスイッチで共用したことを特徴とする請求項1記載のトラクタの変速制御装置。
【請求項1】
複数段の変速位置を有する主変速装置(4a)と複数段の変速位置を有する副変速装置(4b)を備え、変速操作によって作業中における作業速度を対象作業地に適応した変速位置に設定すると共に、作業中において各副変速装置(4b)に対応して選択する主変速装置(4a)の中で最も長い時間使用した主変速装置(4a)を記憶する手段(A)を設け、該記憶手段(A)にて記憶する設定モードを、水田モード(21)と畑モード(22)に区分設定して別々に記憶するように構成してあることを特徴とするトラクタの変速制御装置。
【請求項2】
前記水田モード(21)と畑モード(22)に切り替える切替スイッチ(23)は単一のスイッチで共用したことを特徴とする請求項1記載のトラクタの変速制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−174972(P2010−174972A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18035(P2009−18035)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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