トラクタ
【課題】選択している標準モード又は低燃費モードでの残りの作業可能時間が認識できないので、作業能率が向上しない。
【解決手段】コモンレール1を備えたエンジンEと該エンジンEの制御を行うECU100、及び作業機21を搭載したトラクタにおいて、ECU100内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードラインL1と低燃費モードラインL2とから構成し、該標準モードラインL1と低燃費モードラインL2との切り換えは燃費モード変更手段36で行う構成とし、前記標準モードラインL1を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードラインL2を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段Mに表示するように構成したことを特徴とするトラクタの構成とする。
【解決手段】コモンレール1を備えたエンジンEと該エンジンEの制御を行うECU100、及び作業機21を搭載したトラクタにおいて、ECU100内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードラインL1と低燃費モードラインL2とから構成し、該標準モードラインL1と低燃費モードラインL2との切り換えは燃費モード変更手段36で行う構成とし、前記標準モードラインL1を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードラインL2を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段Mに表示するように構成したことを特徴とするトラクタの構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業機械であるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機体に装着している作業機の状態を判定して、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−76649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の公知技術は、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成である。しかしながら、標準モードと省エネモードを選択した状態で残りの作業可能時間を表示する構成ではないので、作業能率が向上しないという欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、ECU(100)内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、前記標準モードライン(L1)を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードライン(L2)を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とするトラクタとしたものである。
【0007】
標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)のいずれかへの切り換えは、燃費モード変更手段(36)で行う。そして、選択している標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)の残りの作業可能時間を表示手段(M)に表示する
請求項2に記載の発明では、トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときに操作するリセットボタン(37)を設け、該リセットボタン(37)を操作することで、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出すると共に前記標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間をモニター(M)に表示し、前記残りの燃料量も表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタとしたものである。
【0008】
燃料タンクが満量状態になると、リセットボタン(37)を入り状態とする。このときから、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出する。そして、標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間と、残りの燃料量も表示手段(M)に表示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、選択している標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)の残りの作業可能時間を常時確認できるので、作業能率が向上するようになる。
【0010】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、燃料タンクが満量状態で一旦リセットすることで、燃料噴射量と時間との関係から、精度良く残りの燃料量を算出可能となる。そして、残りの燃料量も数値で表示されることで、さらに作業能率が向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクターの左側面図
【図4】トラクターの平面図
【図5】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図6】残り作業可能時間表示のためのフローチャート図
【図7】表示手段(モニター)の平面図
【図8】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図9】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図10】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図11】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図12】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図13】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図14】エンジン回転数とエンジンアイドル負荷との関係を示す線図
【図15】(a)ボンネット内に収納した状態のエンジンの正面図 (b)ボンネット内に収納した状態のエンジンの側面図
【図16】ボンネット内に収納した状態のエンジンの側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0013】
このように、コモンレール1はエンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0014】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0015】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0016】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0017】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0018】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0019】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0020】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0021】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0022】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0023】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0024】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0025】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース35内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0026】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0027】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0028】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダである。
【0029】
図1に示しているECU100には本機側の制御装置200が接続している。この制御装置200には、圃場の耕耘深さを自動的に設定する耕深設定手段(自動耕深レバー)30、耕深設定手段30の機能を入り状態とする自動耕深スイッチ30a、耕深優先又は車速優先のいずれか一方を選択する選択スイッチ(30b)、及び表示手段(モニター)Mが接続している。また、図4にはこれらの配置位置が示されている。
【0030】
そして、前記自動耕深スイッチ30aが入り状態のときに前記選択スイッチ30bにより耕深優先又は車速優先のいずれか一方が選択された状態で作業機21を駆動して作業走行が開始されると、ECU100はエンジンの負荷率を検出して本機側の制御装置200に送信し、制御装置200は耕深を維持するための車速、又は車速を維持するための耕深を算出してモニターMに表示する構成としている。エンジンの負荷状態は、燃料の噴射状態とエンジン回転数センサE1から検出する構成としているが、その他の手段でもよい。
【0031】
これにより、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深がモニターMに表示されるので、エンジンEに負担を増すことなく良好な作業が可能となる。また、燃料の過剰な消費を抑制可能となる。特に、エンジンにはコモンレール1を搭載しているので、適正な車速を維持するための燃料噴射制御が精度良く行われるようになり、燃費も改善される。
【0032】
また、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示する構成としている。これにより、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示するので、作業者はエンジンEの負荷状態を容易に確認することができ、状況によっては自動耕深スイッチ30aと選択スイッチ30bを入り状態として、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深を速やかに把握可能となる。
【0033】
図5はエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能カーブであり、ラインL1が標準モード(パワーモード)を示し、ラインL2が低燃費モードを示している。標準モードラインL1の最大トルク点がT1で、低燃費モードラインL2の最大トルク点がT2である。この標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の切り換え選択は、燃費モードダイヤル36(図4)で行う構成とする。燃費モードダイヤル36の形態としては、オンオフ式のスイッチ(オン状態で燃費モード)やいずれか一方に切り換える切換スイッチ等の形態でもよい。
【0034】
図6に示すように、トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときにリセットボタン37(図4)を押し(S1)、エンジンの運転に伴う燃料噴射量と時間の関係から残りの燃料量を算出(S2,S3)して表示する(S4)。そして、前記標準モードラインL1と低燃費モードラインL2のそれぞれにおける作業可能時間を前記モニターMに表示する(S5)構成とする。図7はこの表示の一例を示している。これにより、標準モードラインL1と低燃費モードラインL2における作業を効率良く行うことが可能となる。
【0035】
また、前記燃費モードダイヤル36を設けない場合は、基本的に標準モードラインL1使用し、エンジン負荷率90%以下の状態が10秒間続くと、自動的に低燃費モードラインL2に移行する構成とする。この場合、燃費モードダイヤル36にて標準モードラインL1を選択していてもよい。そして、低燃費モードL2を使用中において、エンジン負荷率が90%を越えた瞬間に自動的に標準モードラインL1に戻す構成とする。これにより、短い時間でも低燃費モードを積極的に使用することで、その短い時間の積み重ねにより燃料消費を低減させることが可能となる。
【0036】
また、低燃費モードラインL2に切り換えた場合においては、トラクタのロータリ作業機による耕耘深さを自動的に所定量浅くしたりPTO回転数を減速する構成とする。これにより、更に燃費が向上するようになる。ただし、耕耘深さを浅くしたりPTO回転数を減速することを望まない作業者のために、前記機能を牽制するスイッチ等を設けておいてもよい。また、低燃費モードラインL2に切り換えた場合においては、自動的に主変速や副変速を減速して車速を落すように構成してもよい。この場合においても、このような機能を牽制するスイッチ等を設ける構成としてもよい。
【0037】
図8は性能カーブを複数(実施例では3つのライン)設ける構成である。この出力特性カーブL3,L4,L5については、エンジン回転数によって自動的に切り換える構成とする。即ち、エンジン回転数が特定の閾値を下回る場合は、上位出力の出力特性カーブに順次移行する構成とする。また、逆にエンジン回転数が閾値を上回る場合は、下位出力の出力特性カーブに順次移行する構成とする。そして、出力特性カーブ移行の有無や移行のためのエンジン回転数の閾値を作業者が任意に設定可能に構成する。低燃費の出力特性カーブが自律的に選択されるので、燃料消費量を抑制可能となる。
【0038】
図9は電子ガバナ特性を示したものである。P1は最低燃費ポイントであり、L6は全負荷性能特性である。そして、L7は従来のガバナ特性であり、L8は新規なガバナ特性を示している。
【0039】
エンジン固有の単位時間・単位出力あたりの燃料消費量(g/ps・h),燃費率の特性から求められるエンジンの運転条件に応じた燃費特性は、等燃費曲線上にて設定される、エンジンの全負荷性能について、そのガバナ特性は従来直線的(L7)であった。これに対して、全負荷に向かうガバナ特性を、等燃費曲線上のより燃費性能の良い領域を通過するように制御することにより、部分負荷時の燃費性能を向上させることが可能となる。実用性能を低下させることなく燃費改善が可能となる。
【0040】
図10はドループ制御とアイソクロナス制御との切換時に関する制御である。エンジンの全負荷性能特性L9の領域上にて、ガバナモードはドループ特性L10であり、アクセル開度(a%)にて任意の負荷条件で運転されている場合、この状態のままガバナモードをアイソクロナス特性L11に切り換えると、速度落差(b)が発生してしまう。
【0041】
そこで、現在の運転ポイントをP2とすると、切り換え時の負荷率に応じた速度落差予想値をマップとして持っておいて、速度落差(b0)を予想する。この予想値(b0)をベースにアイソクロナス制御の目標値を変更する構成とする。図10ではアイソクロナス特性をL11からL12に変更している。これにより、エンジン回転数の落差がない状態でガバナモードの切換えが可能となる。変更されたアイソクロナス特性のエンジン回転数の指示値(n)を記憶しておいて、このn回転数に基づいてアイソクロナス制御を行う構成とする。
【0042】
図12には負荷率の算出方法について示している。L13は全負荷特性を示している。現在、定格回転数を越える領域のポイントP3にて運転されているとすると、その回転数における負荷率はポイントP5に対する比率として算出される。しかしながら、実際にはポイントP3の状態からエンジン負荷がかかった場合には、ポイントP4にて全負荷(100%の負荷率)となり、ポイントP5に対する負荷率とは大きく異なることとなる。このため、作業負荷低減、車速低減等の制御には使用できない。
【0043】
そこで、定格点P7より高速側にL14の破線のように仮想全負荷特性を持たせ、この仮想全負荷特性L14上のポイントP6に対する負荷率を算出することにより、より実態に近い負荷率による制御が可能となる。
【0044】
図13は、前述した図12の構成について、より精度を向上させる構成である。即ち、図12のポイントP6をポイントP4に近づけるものである。現在、定格回転数を越える領域のポイントP3にて運転されている状態で、仮想全負荷性能特性L14によりポイントP6に対する負荷率が算出されるが、実際にはポイントP3に対する全負荷性能はポイントP11であり、ポイントP6で算出したものとは異なる。また、ポイントP8での運転の場合でも、仮想全負荷特性L14のポイントP6ではなく、ポイントP4が負荷率100%であり誤差が生じる。
【0045】
そこで、ポイントP5に対するポイントP3との差を(α)とし、ポイントP5に対するポイントP8との差を(β)とし、この(α)と(β)から補正量を算出し、その補正量を仮想全負荷特性L14上のポイントP6に加算したそれぞれの値のポイントP10、ポイントP9を100%とする負荷率を算出することにより、精度の高い制御が可能となる。
【0046】
図14の出力T構成はアイドル負荷制御を示している。電子制御により回転、負荷制御を行うエンジン(電子ガバナ)において、ローアイドルにて負荷率を上昇する場合、ある負荷率までは一定回転で、あるエンジン負荷のポイントからエンジン負荷が増加すると共に、エンジン回転数が増加する制御を行い、アイドル負荷特性を向上する構成としている。これにより、あるポイントからエンジン回転上昇と共にエンジン出力が上昇するため、フットペダル等で作業を行うローダ作業等に効果がある。また、アイドル発進等の操作特性が改善されるようになる。
【0047】
図15(a)はトラクタのボンネット38内にディーゼルエンジンを搭載した正面図であり、図15(b)はその左側面図である。39はディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)であり、排気ガス中の粒状化物質(PM)を除去するものである。41は冷却風を起風する冷却ファンである。前記DPF39は、エンジンE上部であって車体の前後方向に対して直行する向きに搭載する構成とする。そして、DPF39の略下側半分には、半円筒状の遮熱板40を配置する構成とする。
【0048】
前記冷却ファン41から起風された冷却風は、DPF39に直接当たることはなく、遮熱板40に沿って流れる。そして、ボンネット38の後方上部側面に設けているスリット42から冷却風が出て行く構成としている。これにより、DPF39に直接冷却風が当たることがないので、DPF39内部の温度を高温に維持することができ、DPF39内に捕集されているPMの燃焼が促進されるようになる。
【0049】
そして、冷却風は遮熱板40の外側を流れてボンネット38のスリット42から排出されるので、DPF39の強制再生時に発生する熱による周辺部品への熱害を防止できるようになる。前記スリット42については、別のスリット42aとしてボンネット38の後方上部に設けるように構成してもよい。
【0050】
また、図16に示すように、DPF39の後方に冷却風のガイドプレート43を設けるように構成してもよい。このガイドプレート43によって冷却風がスムーズにスリット42b方向に案内されるようになる。特に、スリット42bの位置は、図15のスリット42や42aの位置と少し異っている。即ち、図16に示すスリット42bの位置は、ボンネット38の上部位置であって、ガイドプレート43にて案内されてきた冷却風が当たる位置に構成している。これにより、冷却風の機外への排出効率が向上するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 コモンレール
21 作業機
36 燃費モード変更手段(燃費モードダイヤル)
37 リセットボタン
100 ECU
E エンジン
L1 標準モードライン
L2 低燃費モードライン
M 表示手段(モニター)
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業機械であるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機体に装着している作業機の状態を判定して、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−76649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の公知技術は、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成である。しかしながら、標準モードと省エネモードを選択した状態で残りの作業可能時間を表示する構成ではないので、作業能率が向上しないという欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、ECU(100)内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、前記標準モードライン(L1)を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードライン(L2)を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とするトラクタとしたものである。
【0007】
標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)のいずれかへの切り換えは、燃費モード変更手段(36)で行う。そして、選択している標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)の残りの作業可能時間を表示手段(M)に表示する
請求項2に記載の発明では、トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときに操作するリセットボタン(37)を設け、該リセットボタン(37)を操作することで、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出すると共に前記標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間をモニター(M)に表示し、前記残りの燃料量も表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタとしたものである。
【0008】
燃料タンクが満量状態になると、リセットボタン(37)を入り状態とする。このときから、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出する。そして、標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間と、残りの燃料量も表示手段(M)に表示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、選択している標準モードライン(L1)又は低燃費モードライン(L2)の残りの作業可能時間を常時確認できるので、作業能率が向上するようになる。
【0010】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、燃料タンクが満量状態で一旦リセットすることで、燃料噴射量と時間との関係から、精度良く残りの燃料量を算出可能となる。そして、残りの燃料量も数値で表示されることで、さらに作業能率が向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクターの左側面図
【図4】トラクターの平面図
【図5】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図6】残り作業可能時間表示のためのフローチャート図
【図7】表示手段(モニター)の平面図
【図8】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図9】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図10】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図11】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図12】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図13】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図14】エンジン回転数とエンジンアイドル負荷との関係を示す線図
【図15】(a)ボンネット内に収納した状態のエンジンの正面図 (b)ボンネット内に収納した状態のエンジンの側面図
【図16】ボンネット内に収納した状態のエンジンの側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0013】
このように、コモンレール1はエンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0014】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0015】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0016】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0017】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0018】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0019】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0020】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0021】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0022】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0023】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0024】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0025】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース35内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0026】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0027】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0028】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダである。
【0029】
図1に示しているECU100には本機側の制御装置200が接続している。この制御装置200には、圃場の耕耘深さを自動的に設定する耕深設定手段(自動耕深レバー)30、耕深設定手段30の機能を入り状態とする自動耕深スイッチ30a、耕深優先又は車速優先のいずれか一方を選択する選択スイッチ(30b)、及び表示手段(モニター)Mが接続している。また、図4にはこれらの配置位置が示されている。
【0030】
そして、前記自動耕深スイッチ30aが入り状態のときに前記選択スイッチ30bにより耕深優先又は車速優先のいずれか一方が選択された状態で作業機21を駆動して作業走行が開始されると、ECU100はエンジンの負荷率を検出して本機側の制御装置200に送信し、制御装置200は耕深を維持するための車速、又は車速を維持するための耕深を算出してモニターMに表示する構成としている。エンジンの負荷状態は、燃料の噴射状態とエンジン回転数センサE1から検出する構成としているが、その他の手段でもよい。
【0031】
これにより、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深がモニターMに表示されるので、エンジンEに負担を増すことなく良好な作業が可能となる。また、燃料の過剰な消費を抑制可能となる。特に、エンジンにはコモンレール1を搭載しているので、適正な車速を維持するための燃料噴射制御が精度良く行われるようになり、燃費も改善される。
【0032】
また、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示する構成としている。これにより、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示するので、作業者はエンジンEの負荷状態を容易に確認することができ、状況によっては自動耕深スイッチ30aと選択スイッチ30bを入り状態として、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深を速やかに把握可能となる。
【0033】
図5はエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能カーブであり、ラインL1が標準モード(パワーモード)を示し、ラインL2が低燃費モードを示している。標準モードラインL1の最大トルク点がT1で、低燃費モードラインL2の最大トルク点がT2である。この標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の切り換え選択は、燃費モードダイヤル36(図4)で行う構成とする。燃費モードダイヤル36の形態としては、オンオフ式のスイッチ(オン状態で燃費モード)やいずれか一方に切り換える切換スイッチ等の形態でもよい。
【0034】
図6に示すように、トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときにリセットボタン37(図4)を押し(S1)、エンジンの運転に伴う燃料噴射量と時間の関係から残りの燃料量を算出(S2,S3)して表示する(S4)。そして、前記標準モードラインL1と低燃費モードラインL2のそれぞれにおける作業可能時間を前記モニターMに表示する(S5)構成とする。図7はこの表示の一例を示している。これにより、標準モードラインL1と低燃費モードラインL2における作業を効率良く行うことが可能となる。
【0035】
また、前記燃費モードダイヤル36を設けない場合は、基本的に標準モードラインL1使用し、エンジン負荷率90%以下の状態が10秒間続くと、自動的に低燃費モードラインL2に移行する構成とする。この場合、燃費モードダイヤル36にて標準モードラインL1を選択していてもよい。そして、低燃費モードL2を使用中において、エンジン負荷率が90%を越えた瞬間に自動的に標準モードラインL1に戻す構成とする。これにより、短い時間でも低燃費モードを積極的に使用することで、その短い時間の積み重ねにより燃料消費を低減させることが可能となる。
【0036】
また、低燃費モードラインL2に切り換えた場合においては、トラクタのロータリ作業機による耕耘深さを自動的に所定量浅くしたりPTO回転数を減速する構成とする。これにより、更に燃費が向上するようになる。ただし、耕耘深さを浅くしたりPTO回転数を減速することを望まない作業者のために、前記機能を牽制するスイッチ等を設けておいてもよい。また、低燃費モードラインL2に切り換えた場合においては、自動的に主変速や副変速を減速して車速を落すように構成してもよい。この場合においても、このような機能を牽制するスイッチ等を設ける構成としてもよい。
【0037】
図8は性能カーブを複数(実施例では3つのライン)設ける構成である。この出力特性カーブL3,L4,L5については、エンジン回転数によって自動的に切り換える構成とする。即ち、エンジン回転数が特定の閾値を下回る場合は、上位出力の出力特性カーブに順次移行する構成とする。また、逆にエンジン回転数が閾値を上回る場合は、下位出力の出力特性カーブに順次移行する構成とする。そして、出力特性カーブ移行の有無や移行のためのエンジン回転数の閾値を作業者が任意に設定可能に構成する。低燃費の出力特性カーブが自律的に選択されるので、燃料消費量を抑制可能となる。
【0038】
図9は電子ガバナ特性を示したものである。P1は最低燃費ポイントであり、L6は全負荷性能特性である。そして、L7は従来のガバナ特性であり、L8は新規なガバナ特性を示している。
【0039】
エンジン固有の単位時間・単位出力あたりの燃料消費量(g/ps・h),燃費率の特性から求められるエンジンの運転条件に応じた燃費特性は、等燃費曲線上にて設定される、エンジンの全負荷性能について、そのガバナ特性は従来直線的(L7)であった。これに対して、全負荷に向かうガバナ特性を、等燃費曲線上のより燃費性能の良い領域を通過するように制御することにより、部分負荷時の燃費性能を向上させることが可能となる。実用性能を低下させることなく燃費改善が可能となる。
【0040】
図10はドループ制御とアイソクロナス制御との切換時に関する制御である。エンジンの全負荷性能特性L9の領域上にて、ガバナモードはドループ特性L10であり、アクセル開度(a%)にて任意の負荷条件で運転されている場合、この状態のままガバナモードをアイソクロナス特性L11に切り換えると、速度落差(b)が発生してしまう。
【0041】
そこで、現在の運転ポイントをP2とすると、切り換え時の負荷率に応じた速度落差予想値をマップとして持っておいて、速度落差(b0)を予想する。この予想値(b0)をベースにアイソクロナス制御の目標値を変更する構成とする。図10ではアイソクロナス特性をL11からL12に変更している。これにより、エンジン回転数の落差がない状態でガバナモードの切換えが可能となる。変更されたアイソクロナス特性のエンジン回転数の指示値(n)を記憶しておいて、このn回転数に基づいてアイソクロナス制御を行う構成とする。
【0042】
図12には負荷率の算出方法について示している。L13は全負荷特性を示している。現在、定格回転数を越える領域のポイントP3にて運転されているとすると、その回転数における負荷率はポイントP5に対する比率として算出される。しかしながら、実際にはポイントP3の状態からエンジン負荷がかかった場合には、ポイントP4にて全負荷(100%の負荷率)となり、ポイントP5に対する負荷率とは大きく異なることとなる。このため、作業負荷低減、車速低減等の制御には使用できない。
【0043】
そこで、定格点P7より高速側にL14の破線のように仮想全負荷特性を持たせ、この仮想全負荷特性L14上のポイントP6に対する負荷率を算出することにより、より実態に近い負荷率による制御が可能となる。
【0044】
図13は、前述した図12の構成について、より精度を向上させる構成である。即ち、図12のポイントP6をポイントP4に近づけるものである。現在、定格回転数を越える領域のポイントP3にて運転されている状態で、仮想全負荷性能特性L14によりポイントP6に対する負荷率が算出されるが、実際にはポイントP3に対する全負荷性能はポイントP11であり、ポイントP6で算出したものとは異なる。また、ポイントP8での運転の場合でも、仮想全負荷特性L14のポイントP6ではなく、ポイントP4が負荷率100%であり誤差が生じる。
【0045】
そこで、ポイントP5に対するポイントP3との差を(α)とし、ポイントP5に対するポイントP8との差を(β)とし、この(α)と(β)から補正量を算出し、その補正量を仮想全負荷特性L14上のポイントP6に加算したそれぞれの値のポイントP10、ポイントP9を100%とする負荷率を算出することにより、精度の高い制御が可能となる。
【0046】
図14の出力T構成はアイドル負荷制御を示している。電子制御により回転、負荷制御を行うエンジン(電子ガバナ)において、ローアイドルにて負荷率を上昇する場合、ある負荷率までは一定回転で、あるエンジン負荷のポイントからエンジン負荷が増加すると共に、エンジン回転数が増加する制御を行い、アイドル負荷特性を向上する構成としている。これにより、あるポイントからエンジン回転上昇と共にエンジン出力が上昇するため、フットペダル等で作業を行うローダ作業等に効果がある。また、アイドル発進等の操作特性が改善されるようになる。
【0047】
図15(a)はトラクタのボンネット38内にディーゼルエンジンを搭載した正面図であり、図15(b)はその左側面図である。39はディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)であり、排気ガス中の粒状化物質(PM)を除去するものである。41は冷却風を起風する冷却ファンである。前記DPF39は、エンジンE上部であって車体の前後方向に対して直行する向きに搭載する構成とする。そして、DPF39の略下側半分には、半円筒状の遮熱板40を配置する構成とする。
【0048】
前記冷却ファン41から起風された冷却風は、DPF39に直接当たることはなく、遮熱板40に沿って流れる。そして、ボンネット38の後方上部側面に設けているスリット42から冷却風が出て行く構成としている。これにより、DPF39に直接冷却風が当たることがないので、DPF39内部の温度を高温に維持することができ、DPF39内に捕集されているPMの燃焼が促進されるようになる。
【0049】
そして、冷却風は遮熱板40の外側を流れてボンネット38のスリット42から排出されるので、DPF39の強制再生時に発生する熱による周辺部品への熱害を防止できるようになる。前記スリット42については、別のスリット42aとしてボンネット38の後方上部に設けるように構成してもよい。
【0050】
また、図16に示すように、DPF39の後方に冷却風のガイドプレート43を設けるように構成してもよい。このガイドプレート43によって冷却風がスムーズにスリット42b方向に案内されるようになる。特に、スリット42bの位置は、図15のスリット42や42aの位置と少し異っている。即ち、図16に示すスリット42bの位置は、ボンネット38の上部位置であって、ガイドプレート43にて案内されてきた冷却風が当たる位置に構成している。これにより、冷却風の機外への排出効率が向上するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 コモンレール
21 作業機
36 燃費モード変更手段(燃費モードダイヤル)
37 リセットボタン
100 ECU
E エンジン
L1 標準モードライン
L2 低燃費モードライン
M 表示手段(モニター)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、ECU(100)内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、前記標準モードライン(L1)を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードライン(L2)を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときに操作するリセットボタン(37)を設け、該リセットボタン(37)を操作することで、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出すると共に前記標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間をモニター(M)に表示し、前記残りの燃料量も表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項1】
コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、ECU(100)内にはエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、前記標準モードライン(L1)を選択した場合の残り作業可能時間と、前記低燃費モードライン(L2)を選択した場合の残り作業可能時間を表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
トラクタの燃料タンクを満量状態にしたときに操作するリセットボタン(37)を設け、該リセットボタン(37)を操作することで、エンジン(E)の運転に伴う燃料噴射量と時間との関係から残りの燃料量を算出すると共に前記標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)のそれぞれにおける作業可能時間をモニター(M)に表示し、前記残りの燃料量も表示手段(M)に表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−94575(P2011−94575A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251554(P2009−251554)
【出願日】平成21年10月31日(2009.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月31日(2009.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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