説明

トランスポートストリーム処理装置

【課題】 再生までの待ち時間を短くし、パケットを破棄することがないトランスポートストリーム処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明のトランスポートストリーム処理装置は、パケットを入力し、登録されたPIDを有するパケットのみを選択し、選択されたパケットのペイロード部にPIDが書き込まれていればそのPIDを更に登録し、選択されたパケットが映像及び音声パケットであれば出力する抽出部と、トランスポートストリーム出力装置が出力するトランスポートストリームの中に含まれる映像及び音声のパケットのPIDを取得し、PIDをペイロード部に書き込んで固有のPIDを付したダミーパケットを生成し、ダミーパケットのPIDを抽出部に登録し、トランスポートストリーム出力装置が出力するトランスポートストリームの先頭にダミーパケットを付加する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル映像信号及び/又はデジタル音声信号を処理するトランスポートストリーム処理装置に関し、特に蓄積媒体に記録されたトランスポートストリームを再生する蓄積媒体制御装置が出力するデジタル映像信号及び/又はデジタル音声信号を処理するのに適したトランスポートストリーム処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルテレビ放送が始まり、デジタル映像信号及び/又はデジタル音声信号を処理する製品が市場に広まりつつある。デジタル映像信号を処理する製品は、デジタル映像信号については、MPEG(Moving Picture Experts Group)の規格に沿って映像データを所定の大きさのパケットとして取り扱い、その伝送およびその他の処理を行う。
【0003】
図11に、MPEG方式を用いた伝送データの構成を示す。番組の映像データ及び音声データは、複数のパケットに分解され、それらを連ねた1つのデータストリームとして表される。図11は、2つのデータストリームを示す。2つのデータストリームを、それぞれトランスポートストリーム(以下「TS」と記す)1および2と呼ぶ。
現行の衛星放送(例えばBS放送等)では、1つの伝送帯域をトランスポートと呼び、1つのトランスポートで1つのTSが伝送される。従って、図11の2つのTSはそれぞれ別々の伝送帯域で伝送される。
【0004】
TSには、複数の番組データを含めることができる。図11のTS1には、番組Aおよび番組Bが含まれている。番組に関するデータは、主として映像データ、音声データからなり、その他のデータを含めることもできる。このようにTSには複数の番組に関する映像、音声をはじめとする種々のデータがパケット単位で時分割されて放送される。
またこれらのパケットにはPID(Packet Identifier)と呼ばれるパケット識別子(識別番号)がついており、PIDに基づいて、それぞれのパケットの種類、もしくは属性を識別することができる。また、パケットで実際の情報が書き込まれている部分をペイロード部と呼ぶ。
【0005】
図10は、TS中に含まれるパケットの構成を階層的に示す。まずPAT(Program Association Table)パケットと呼ばれるパケットがTSに含まれる。PATパケットはPATを有する。PATには、PMT(Program Mapping Table)パケットというパケットのPIDが書き込まれている。各PMTパケットはPMTを有する。PMTには、TS中に含まれる番組に関する情報が記録されている。
図10では、TS1のPATパケットのPAT中には、TS1が番組Aと番組Bとを含むこと、番組AのPMTパケットのPIDが「100」であること、及び番組BのPMTパケットのPIDが「200」であること、が書き込まれている。TS2のPATパケットのPAT中には、TS2が番組Cと番組Dとを含むこと、番組CのPMTパケットのPIDが「300」であること、及び番組DのPMTパケットのPIDが「400」であること、が書き込まれている。なお、以下本明細書中ではPIDを10進の数字として説明を行う。
【0006】
次に番組AのPMTパケットのPMT中には、番組Aの映像データが含まれるパケット(以下「映像パケット」と呼ぶ。)のPIDが110であること、及び番組Aの音声データが含まれるパケット(以下「音声パケット」と呼ぶ。)のPIDが120であることが書き込まれている。すなわち、TS1の中でPIDが110であるパケットは、番組Aの映像パケットであり、PIDが120であるパケットは、番組Aの音声パケットであることがわかる。
同様に番組B、C及びDに関するPMTパケットのPMTには、それぞれの番組の映像パケット、音声パケットのPIDが書き込まれている。なお、PATには、PMTパケット以外のパケットのPIDを書き込むことができる。PMTには、映像パケット、音声パケット以外のパケットのPIDが書き込まれる場合がある。
なお、階層の最上位に位置するPATパケット自体のPIDは、「000」と決められる場合が多い。
【0007】
番組を構成する情報は映像データと音声データが大部分を占めるため、TS中には映像パケットと音声パケットの数が多い。これらのパケットの流れの中の所々にPATパケットやPMTパケットを含むパケットが配置される。現在行われているBSデジタル放送では、100msecから数100msecに1回程度の割合で、PATパケットやPMTパケットが配置されている。
このような構成の放送波であるTSを受信する受信機は、TSの中から、PATパケット、PMTパケットを順番に抜き取り、それぞれのパケットの中身を見て、所望の番組に関する映像パケットや音声パケットを取得する。
【0008】
図7に、このTSからユーザが希望する番組に関するデータを選別する従来例のトランスポートストリーム処理装置を有するデジタル放送受信機を示す。従来例のデジタル放送受信機は、放送電波を受信するアンテナ101、放送電波から1つのTSを選択して復調するチューナ102、スクランブルをかけられたTSをデスクランブルするデスクランブラ103、IEEE1394の規格に準じた外部入力端子105、入力切換スイッチ106、従来例のトランスポートストリーム処理装置700、AVデコーダ107及び蓄積媒体制御装置104を有する。
【0009】
蓄積媒体制御装置104は、送信部141、受信部142、バッファ143、蓄積媒体133、制御部(図示しない。)を有する。マイクロコンピュータで構成された制御部は、トランスポートストリーム装置700と通信する。受信部142は、トランスポートストリーム処理装置700が出力した圧縮されたデジタル映像パケット及び/又は圧縮されたデジタル音声パケットを含むTSをバッファ143に一時格納した後、蓄積媒体144に記録する。蓄積媒体144は任意の記録媒体であって、例えば、光ディスク、磁気テープ、半導体メモリカード、ハードディスク等である。再生時、蓄積媒体制御装置104は、蓄積媒体144から読み出されたデジタル映像パケット及び/又は圧縮されたデジタル音声パケットを含むTSをバッファ143に一時格納した後、送信部141を通じて出力する。
【0010】
入力切換スイッチ106は、デスクランブラ103が出力するTS、外部入力端子105が出力するTS及び蓄積媒体制御装置104が出力するTSのいずれかを選択して出力してトランスポートストリーム処理装置700に入力する。
【0011】
従来例のトランスポートストリーム処理装置700は、番組情報管理部711、DEMUX部(抽出部)109を有する。DEMUX部(抽出部)109は、PIDフィルタ121、セクションフィルタ122を有する。PIDフィルタ121は、PIDテーブル131、PID比較器132、出力切換スイッチ133を有する。
【0012】
トランスポートストリーム処理装置700は入力切換スイッチ106によって選択されたTSを入力する。入力されたTSは、PIDフィルタ121によって、パケット毎のPIDが調べられる。PIDフィルタ121は、選択すべきパケットのPIDを番組情報管理部711から選択すべきパケット番号Npとして通知をうける。この通知については番組情報管理部711の説明の際に同時に説明する。
【0013】
PIDフィルタ121は、そのパケットが選択すべき映像パケット及び/又は音声パケットである場合は、選択されたパケットPsavとしてAVデコーダ107へ送る。PIDフィルタ121がパケットPsavをバッファメモリ(図示しない。)に記録し、AVデコーダ107がバッファメモリからパケットPsavを読み出す構成としても良い。AVデコーダ107は、圧縮された映像データ及び/又は音声データであるパケットPsavを伸長し、出力する。ユーザからの指示に応じて、選択されたパケットPsavが蓄積媒体144に記録される。
【0014】
PIDフィルタ121は、パケットのPIDを調べて、そのパケットが映像及び/又は音声パケット以外のパケットで、PATパケットやPMTパケットやその他の取得する必要があるパケットであれば、そのパケットを管理情報パケットPiとしてセクションフィルタ122へ送る。セクションフィルタ122は、管理情報パケットPiの内容を解析し、その内容Diを番組情報管理部711へ送る。
【0015】
番組情報管理部711は、メモリ、メモリコントローラ等からなり、デジタル放送受信機全体のシステム制御部(図示せず)から処理すべき番組の情報を受け取っている。番組情報管理部711は、PATの内容から取得すべきPMTパケットのPIDを知り、PMTの内容から取得すべき映像パケット及び/又は音声パケット等のPIDを知る。番組情報管理部711は、PATパケットのPID、取得すべきPMTパケットのPID、取得すべき映像パケット及び/又は音声パケット等のPIDを、選択すべきパケットの番号NpとしてPIDフィルタ121に通知する。
【0016】
従来例のようにトランスポートストリーム処理装置700を含む機器(ここではデジタル放送受信機)にテープ、ディスク、固体記憶素子などの蓄積媒体144が接続されており、PIDフィルタ121が蓄積媒体144に指定された番組に関するパケットを送信する場合、PIDフィルタ121はPATパケットと、選択される番組に関するPMTパケットと、指定された番組の映像及び/又は音声のパケット等をパーシャルストリーム(Ps)として蓄積媒体144に送る。
外部入力端子105は、IEEE1394以外の伝送規格又は専用規格のTSを入力しても良い。
【0017】
図8を用いて、PIDフィルタ121の動作を中心にさらに詳しい説明を行う。PIDフィルタ121は、PIDテーブル131とPID比較器132とスイッチ133を含む構成である。ここでは、図11のTS1が入力され、その中の番組Aを選択する場合について説明を行う。
PIDテーブル131は、PIDフィルタ121が選択して出力するパケットのPIDを登録するテーブルである。入力されたTS1は、1パケットずつPID比較器132に入力される。PID比較器132は、PIDテーブル131に書き込まれたPIDを有するパケットについて後段に通過させ、それ以外のパケットを破棄する。
【0018】
初期状態においては、PIDテーブル131には「000」というPATパケットを示すパケット番号がセットされる(St100)。このPIDテーブル131に書き出された番号を有するパケットをPID比較器132は後段の処理へ通過させる(Fp100)。すなわち、通常、PIDフィルタ121は最初のPATパケットを受信するまでは、入力されたパケットを破棄する。PATパケットのPIDが「000」であるのは、特に必然性があるものではないが、運用上そのようにされる場合が多い。
【0019】
スイッチ133では、PATパケットをセクションフィルタ122に送る(Pi100)。セクションフィルタ122では、PATパケットのペイロード部に格納されたPATの内容を解析し、その内容を番組情報管理部へ送る(Di100)。
番組情報管理部711では、選択すべき番組Aに関する情報はPIDが「100」であるPMTパケットのペイロード部に格納されたPMTに書かれてあることを知り、PIDテーブル131にその番号を通知する(Np100)。PIDテーブル131にはPID「100」がセットされる(St200)。
【0020】
次にPID比較器132は、「100」のPIDが付与されたPMTパケットが来るまでは、入力されるパケットを破棄し続ける。PID比較器132は、PIDが「100」のPMTパケットを認識したらPMTパケットを通過させる(Fp200)。通過したPMTパケットは、スイッチ133を介してセクションフィルタ122に送られる(Pi200)。セクションフィルタ122は、PMTパケットのペイロード部に格納されたPMTの内容を解析し、その内容を番組情報管理部711へ送る(Di200)。
番組情報管理部711では、選択すべき番組Aの映像情報が「110」のPIDを有するパケットに、また音声情報は「120」のPIDを有するパケットに入っていることを知り、これらの番号をPIDテーブル131に通知する(Np200)。PIDテーブル131にはこれらのPIDがセットされる(St300)。なお、これらのパケットはAVデコーダに送られることを示すフラグも、PIDテーブル131にセットされる。図ではこのフラグを黒丸で示した。
【0021】
これ以降PID比較器132は、番組Aに関するそれぞれ映像および音声情報を有する「110」と「120」のPIDを有するパケットを通過させる。それらのパケットはAVデコーダに送られるフラグがあることによって、スイッチ133を介してAVデコーダ107に送られる(Psav)。
デジタルストリームメモリ(DSM)である蓄積媒体144に選択された番組を記録する場合には、PATパケット、PMTパケット、映像及び/又は音声のパケットを蓄積媒体制御装置104の受信部142に出力する(Ps)。
【0022】
図9には、PIDテーブル131、PID比較器132、スイッチ133を含むDEMUX部109の動作のフローチャートを示す。
まずDEMUX部109がパケットを入力する(ステップ910)。PID比較器132は、このパケットのPIDがPIDテーブル131にあるか否かを判断し(ステップ912)、PIDテーブル131に無い場合は、再度パケットの入力のステップ910に戻る。
入力されたパケットのPIDがPIDテーブル131に有った場合、PID比較器132は、TSpとして出力するか否かを判断し(ステップ914)、出力する場合はTSpとして出力する(ステップ916)。このTSpは蓄積媒体144などに送られる。
【0023】
TSpとして出力するか否かにかかわらず、PID比較器132は、パケットをAVデコーダ107に送るか否かを、PIDテーブル131のフラグに基づいて判断する(ステップ918)。パケットをAVデコーダ107に送らない場合は、PID比較器132は、パケットをセクションフィルタ122に送る(ステップ922)。セクションフィルタ122は、そのパケットの内容を番組情報管理部711に送る(ステップ924)。パケットをAVデコーダ107に送る場合は、PID比較器132は、パケットをPsavとしてAVデコーダに送る(ステップ920)。そして再びパケット入力のステップ910に戻る。
【0024】
このようにして外部に出力されるパケット群は、図10のTS1から番組Aに関する情報およびPATパケットやPMTパケットを抜き取ったパケット群であり、図12のようになる。この図12に示されるように、元のTSから不要なパケットを抜いたTSをパーシャルストリーム(以後「TSp」という)と呼ぶ。
これらの技術に関しては、特許文献1に開示されている(特許文献1参照)。
【0025】
【特許文献1】特開2000−341597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
図7を用いて、従来例のトランスポートストリーム処理装置700が蓄積媒体144から再生したパーシャルストリームTSpを順に入力する場合の動作を説明する。なお、図示していないが、デジタル放送受信機全体のシステム制御部から番組情報管理部711には、予め蓄積媒体制御装置104の蓄積媒体144中のどの番組を再生するかが通知されており、また蓄積媒体制御装置104にも同様にどの番組を再生するかについて通知が行われているものとする。
【0027】
トランスポートストリーム処理装置700は、蓄積媒体144から再生されたTSpから目的の番組の映像および音声のパケットを取り出す際には、従来技術で説明したようにPIDフィルタ部121の中のPIDテーブル131に目的の番組の映像および音声のパケットに関するPIDをセットしなければならない。
これらの映像および音声データのパケットのPIDは、再生されるTSpの中のPMTパケットのPMTに書き込まれており、またそのPMTパケットのPIDは同じく再生されるTSp中のPATパケットのPATに記載されている。
【0028】
従って、蓄積媒体144から新しい番組を再生する場合、再生されたTSp中のPATパケットとPMTパケットがPIDフィルタ121を通過しないとPIDテーブル131に映像および音声のパケットに関するPIDは設定されない。そのPATパケットとPMTパケットは、100msから数100ms程度の時間間隔でしか埋め込まれていない。
すなわち、蓄積媒体144から番組を再生する場合、トランスポートストリーム処理装置700は、ストリームの入力を開始してからPIDテーブル131に目的の番組の映像および音声パケットのPIDがセットされるまで、パケットを破棄する。従って、ストリームの入力を開始してからPIDテーブル131に目的の番組の映像および音声パケットのPIDがセットされるまでの時間は、待ち時間となってしまうという問題があった。
【0029】
特に蓄積媒体144から連続して番組を再生する場合には(例えば番組Aから番組C)、現在再生中の番組(番組A)が終了してから、次の番組(番組C)の再生まで、一定以上の時間が必要になるという課題が生じる。このような時間間隔は、短いようであるが、利用者に不快感を感じさせるには十分な時間である。また、次の番組のPATパケット及びPMTパケットを受信するまでの間に入力する映像および音声パケットを破棄することにより、その間の映像および音声を視聴できないという問題があった。
【0030】
本発明は、再生までの待ち時間を短くし、パケットを破棄することがないトランスポートストリーム処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するため、本発明は下記の構成を有する。請求項1に記載の発明は、パケット識別子を有するパケットを入力し、その中から所定の登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択し、選択された前記パケットのペイロード部にパケット識別子が書き込まれていればそのパケット識別子を更に登録し、選択された前記パケットが映像及び/又は音声のパケットであれば出力する抽出部と、トランスポートストリーム出力装置が出力するトランスポートストリームの中に含まれる少なくとも映像及び/又は音声のパケットの前記パケット識別子を取得し、前記パケット識別子をペイロード部に書き込んでパケット識別子を付したダミーパケットを生成し、前記ダミーパケットの前記パケット識別子を前記抽出部に登録し、前記トランスポートストリーム出力装置が出力する前記トランスポートストリームの先頭に前記ダミーパケットを付加する制御部と、を有するトランスポートストリーム処理装置である。
【0032】
請求項2に記載の発明は、前記制御部は前記ダミーパケットの前記パケット識別子として、固有のパケット識別子を付することを特徴とする請求項1記載のトランスポートストリーム処理装置である。
【0033】
請求項3に記載の発明は、前記制御部は前記ダミーパケットとしてNULLパケットを使用し、通常のNULLパケットと識別するための情報を前記NULLパケット内に付加することを特徴とする請求項1記載のトランスポートストリーム処理装置である。
【0034】
請求項4に記載の発明は、前記抽出部が、入力したパケットの中から所定の登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択するパケット識別子フィルタを有し、前記パケット識別子フィルタは、パケット識別子を登録するパケット識別子テーブルを有し、前記ダミーパケットを検出した場合、前記ダミーパケット内の映像及び/又は音声のパケットのパケット識別子を抽出して、パケット識別子テーブルに登録し、その後に続くトランスポートストリームから、登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択することを特徴とする請求項1に記載のトランスポートストリーム処理装置である。
【発明の効果】
【0035】
蓄積媒体に番組を記録する際にその番組の映像および音声のパケットPIDを別途記録しておく。本発明では、蓄積媒体から再生されるTSpの先頭にそのTSp中の映像パケットや音声パケットなどのPIDを予め書き込んだダミーパケットを付加するようにしたので、TSp中のPATパケットやPMTパケットの到来を待たずとも、映像パケットや音声パケットをAVデコーダに送ることができるので、再生までの待ち時間を短くすることができるという効果を得ることができる。
【0036】
また、PATパケット、PMTパケットを受信するまでの、映像および音声パケットを破棄することなく、映像および音声をTSpのはじめから視聴できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
【0038】
《実施の形態》
図1に本発明の実施の形態に係るトランスポートストリーム処理装置を有するデジタル放送受信機の構成を示す。本実施の形態に係るデジタル放送受信機は、放送電波を受信するアンテナ101、放送電波から1つのTSを選択して復調するチューナ102、スクランブルをかけられたTSをデスクランブルするデスクランブラ103、IEEE1394の規格に準じた外部入力端子105、入力切換スイッチ106、トランスポートストリーム処理装置100、AVデコーダ107、蓄積媒体制御装置104、及びシステム制御部(図示しない。)を有する。
【0039】
本発明の実施の形態のデジタル放送受信機は、従来例のトランスポートストリーム処理装置700に代えて、トランスポートストリーム処理装置100を有する。蓄積媒体制御装置104は、トランスポートストリーム処理装置100が出力した圧縮されたデジタル映像パケット及び/又は圧縮されたデジタル音声パケットを含むTSを蓄積媒体144に記録する時、その番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDを、TSと別個に、蓄積媒体144に記録する。蓄積媒体制御装置104は、トランスポートストリーム処理装置100からの問い合わせに応じて、記録した番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDを直ぐに知らせることが出来る。本発明のデジタル放送受信機は、それ以外の構成要素については従来例と同一である。
【0040】
トランスポートストリーム処理装置100は、PIDフィルタ121およびセクションフィルタ122を含むDEMUX部(抽出部)109と、番組情報管理部111とダミーパケット挿入部112とを含む制御部108と、を有する。DEMUX部109は従来技術での説明と同じである。
また、PIDフィルタ121が、入力されたTSから蓄積媒体144へパーシャルストリームTSpを出力する動作についても、従来技術での説明と同じである。
【0041】
まず、本実施の形態に係るトランスポートストリーム処理装置100が、入力されたTSからある番組を選択し、その番組に係るTSpを蓄積媒体に記録する場合について説明する。トランスポートストリーム処理装置100が出力するパケットをPsとも表示し、TSpとも表示する。
デジタル放送受信機全体のシステム制御部(図示せず)は、番組情報管理部111にTS1中の所定の番組に関するパーシャルストリームTSpを蓄積媒体制御装置104に出力することを指示する。
説明のために図10の2つのストリームTS1とTS2のうち、番組Aと番組Cを蓄積媒体144に記録するものとする。TS1とTS2は別々のトランスポンダによって送信されるため、チューナ102がこれらのトランスポンダを適切に選局する。また、番組Cは時間的に番組Aより後に放送されているものとする。
蓄積媒体144は、ハードディスクや光ディスクなどの板状の記録媒体、テープ状の記録媒体、固体メモリ等の任意の記録再生可能な記録媒体である。記録媒体は、取り換え可能であっても取り換えできなくても良い。
【0042】
トランスポートストリーム処理装置100は、従来技術で説明したようにTS中の所望の番組について、関連するパケットを抜き取り、蓄積媒体制御装置104へ送信する。すなわち、TS1中のPATパケットおよびPMTパケットを取得し、映像および音声パケットのPIDを検出し、そのPIDに該当するパケット群をTSp(Ps)として蓄積媒体制御装置104に送信する。蓄積媒体制御装置104は、TS1中の番組AとTS2中の番組Cに関するTSp(Ps)を蓄積媒体144に記録する。
【0043】
番組情報管理部111は、蓄積媒体144に送信するパケットのPIDの情報を、蓄積媒体制御装置104に別途通知する(Ri1)。番組情報管理部111は、この通知情報Ri1を、TSp(Ps)の送信に先駆けて蓄積媒体制御装置104に通知しても良いし、TSp(Ps)の送信の後に通知しても良い。また、図ではパーシャルストリームPsの伝送ラインと別の通信ラインによってRi1が通知されるように示したが、Psと同じ通信ラインを用いてもよい。TSpおよびRi1の通信にはIEEE1394などの規格によるプロトコルを用いても良く、専用の回線およびプロトコルを用いても良い。
【0044】
実施の形態の構成に代えて、番組情報管理部111は蓄積媒体144に記録するパケットのPIDの情報を、蓄積媒体144に通知するのではなく、内蔵するメモリ(好ましくは不揮発性メモリ)に格納しても良い。
蓄積媒体制御装置104は、トランスポートストリーム処理装置100を含む機器に含まれる構成であってもよいし、機器と別個の装置であってもよい。
【0045】
次に、蓄積媒体144から番組AとCのTSpが再生される場合について説明する。デジタル放送受信機全体のシステム制御部(図示しない。)が、蓄積媒体制御装置104及びトランスポートストリーム処理装置100に、蓄積媒体144に記録された番組に関するTSpの再生を指示する。
これに代えて、システム制御部(図示しない。)が、蓄積媒体制御装置104のみに、蓄積媒体144に記録された番組に関するTSpの再生を指示しても良い。蓄積媒体制御装置104は、再生する番組を直接又はデジタル放送受信機のシステム制御部(図示しない。)を介して、トランスポートストリーム処理装置100に伝える。
又は、システム制御部(図示しない。)が、トランスポートストリーム処理装置100のみに、蓄積媒体144に記録された番組に関するTSpの再生を指示しても良い。トランスポートストリーム処理装置100は、再生する番組を直接又はデジタル放送受信機のシステム制御部(図示しない。)を介して、蓄積媒体制御装置104に伝える。
【0046】
番組情報管理部111は、蓄積媒体144から再生される番組のTSpに属するパケット(映像パケット及び/又は音声パケットを含む。)のPIDの情報を、蓄積媒体制御装置104から取得する(Ri2)。番組情報管理部111は再生番組のTSpに属するパケットのPIDの情報を、蓄積媒体制御装置104から直接取得しても良く、デジタル放送受信機のシステム制御部(図示しない。)を介して取得しても良い。番組情報管理部111が上記のPIDの情報を内蔵するメモリに格納してる場合は、PIDの情報をメモリから読み出す。
【0047】
番組情報管理部111が蓄積媒体制御装置104に上記のPIDの情報を要求し、それに応じて蓄積媒体制御装置104がPIDの情報を送る構成であっても良く、蓄積媒体制御装置104が自動的にPIDの情報を自ら送出し、番組情報管理部111がその情報を取得する構成であっても良い。さらに、通知の際に使われる回線が特に限定されないのは、これらの情報を番組情報管理部111から蓄積媒体制御装置104に伝送する場合と同様である。
【0048】
番組情報管理部111は、ダミーパケット挿入部112に、再生する番組のTSp中にある映像及び/又は音声パケットのPIDを通知する(Np1)。ダミーパケット挿入部112は、固有のPIDをつけたパケットを用意し、そのパケットのペイロード部に再生する番組の映像及び/又は音声パケットのPIDを書き込む。従って、用意されたパケットはPMTパケットと同じ形式のパケットとなる。
ダミーパケットとは、蓄積媒体144に記録したTSpには、もともとないパケットで、TSp(TSを含む)を扱う機器が取り扱いの都合上付加したパケットをいう。ペイロード部の内容によらない。
【0049】
ダミーパケット挿入部112は、蓄積媒体144からの再生されたTSpを待って、その先頭に用意したダミーパケットを付加してDEMUX部109へ送る。従って再生されるTSpは図4に示すダミーパケットとそれに続くTS1のようになる。
【0050】
図3にダミーパケット挿入部112の構成を示す。ダミーパケット挿入部112は、ダミーパケット生成部220と、送信部240と、バッファ260とからなる。
ダミーパケット挿入部112の動作を説明する。番組情報管理部111はダミーパケット生成部220に、再生するTSpに含まれるパケット(映像及び/又は音声のパケットを含む。)のPIDの情報を送信する(Np1)。ダミーパケット生成部220は、これらのPIDをペイロード部に書き込んだダミーパケットを生成する。ダミーパケット自体のPIDは通常TSでは使用される可能性が低い、ユニークな数値を使用する。ここでは説明のために「1000」とする。ダミーパケット生成部220は作成したダミーパケットを送信部240へ送る。
一方バッファ260は、蓄積媒体制御装置104からのTSpの到着を待っており、パケットを受け取ったらそれを蓄えておく。
【0051】
なお、ダミーパケットとして、1000というユニークな値をつけるのではなく、NULLパケットのPIDを付与しても良い。例えば、Np1によって通知された、これから再生するTSpの映像及び/又は音声等のパケットのPIDと、通常のNULLパケットと識別するためのフラグと、をペイロード部に書き込んだダミーパケットを作成して、NULLパケットのPIDを付与する。
送信部240は、バッファ260に蓄積媒体144からのTSpのパケットが貯まっていることを検知して、最初にダミーパケット生成部220から受け取ったダミーパケットをDEMUX部109(PID比較器132)に送信する。
【0052】
ダミーパケットの送信後一定時間の間隔を空けて、送信部240は、バッファ260に蓄積されたTSpをDEMUX部109(PID比較器132)に送信開始する。一定時間の間隔を、TS内での通常のパケットの間隔より大きくすることにより、TSpの先頭のパケットがDEMUX部109に到達する前に、番組情報管理部111が、ダミーパケットから抽出された再生番組のパケットのPIDの情報を取得し、PIDテーブル131に書き込むことを確実に完了出来る。
【0053】
または、ダミーパケット送信後、ダミーパケットにつけたPIDとは別のPIDを付与したペイロード部が空のパケット(例えばNULLパケット)を数個送ってもよい。この空のパケットをダミーパケットの送信に先駆けて数個送っておいてもよい。これにより、DEMUX部109はこれらの空のパケットを受信する中で同期を確立できる。例えばDEMUX部109のPLLは、パケット中に含まれるクロック情報と同期を確立できる。DEMUX部109は、バッファ260から読み出されたTSpを最初から確実に読み取ることが出来る。
上記のようにして、ダミーパケット挿入部112は所望の映像及び/又は音声等のパケットのPIDを書き込んだダミーパケットを蓄積媒体144から読み出したTSpの先頭に付加する。
【0054】
次に映像及び/又は音声のPIDが書き込まれたダミーパケットを先頭に付加されたTSpが、DEMUX部109でどのように処理されるかを図2を参照しながら説明する。図2はDEMUX部109内部の構成を示す。
DEMUX部109に入力された上記のダミーパケット付のTSpは、PIDフィルタ121に入力される。PIDフィルタ121の構成は従来例において説明した。
【0055】
初期状態において、PIDテーブル131には「000」というPATパケットのPID(St10)と、「1000」というダミーパケットのPID(St20)と、がセットされる。実施の形態のPIDテーブル131は、限られた数のPIDを登録できるテーブルである。PIDテーブル131の容量は小さく、現在PIDフィルタ121が選択して出力しているパケットのPIDを登録するのに必要な記憶容量を多少上回る程度の容量しかない。PIDテーブル131に、将来PIDフィルタ121が選択して出力するパケットのPIDを登録すると、PIDテーブル131の記憶容量が足りなくなる恐れがある。そこで、番組情報管理部111が、できるだけPIDフィルタ121が現在選択して出力している又は今から選択して出力しようとしているパケットのPIDのみを登録することが好ましい。
【0056】
番組情報管理部111は、ダミーパケット挿入部112に再生番組の映像及び/又は音声パケットのPIDを通知(Np1)する時と同時に、ダミーパケットのPIDをPIDテーブル131にセットする。DEMUX部109がダミーパケット挿入部112からダミーパケットを受ける前であれば、番組情報管理部111がダミーパケットのPIDをPIDテーブル131にセットするタイミングが時間的に前後するのはかまわない。
しかし、この時、PIDテーブル131の記憶容量が不足することを防止するために、番組情報管理部111は再生番組の映像及び/又は音声パケットのPIDをPIDテーブル131に記録しない。
【0057】
PID比較器132の動作も従来技術の場合と同様である。PID比較器132は、PIDテーブル131に書き出されたPIDを有するパケットを通過させてスイッチ133に送る(Fp10)。すなわち、PIDフィルタ121は最初のPATパケットもしくはPIDが「1000」であるダミーパケットを受信するまでは、入力されたパケットを破棄する。
【0058】
本発明の場合、蓄積媒体144からのストリームの先頭にはPIDが「1000」のダミーパケットが付加されているので、PIDフィルタ121はそのダミーパケットを通過させる。
スイッチ133では、そのパケットをセクションフィルタ122に送る(Pi10)。セクションフィルタ122は、入力したダミーパケットのペイロード部に格納されたPIDを抽出し、そのPIDの情報を番組情報管理部111へ送る(Di10)。ここでのPIDの情報(Di10)は、蓄積媒体144からの再生されるTSpに含まれる映像及び/又は音声等のパケットのPIDである。
【0059】
番組情報管理部111は、選択すべき番組Aに属するパケットが、PIDが「110」である映像パケットと、PIDが「120」の音声パケットと、であることをTSp中のPMTパケットを取得せずとも知る。番組情報管理部111は、PIDテーブル131に、これらのパケットのPIDを書き込む。ダミーパケットは、蓄積媒体制御装置104が再生出力するTSpの先頭に付加されている故に、番組情報管理部111は、PIDフィルタ121が今から選択して出力しようとしているパケットのPIDを、それらのパケットが入力開始される寸前に登録することができる。
【0060】
番組情報管理部111は、PID比較器132が選択するパケットのPIDと、選択したパケットの中でAVデコーダ107へ送るパケットを示すフラグと、通知する(Np10)。PIDテーブル131にはこれらのPID及びフラグがセットされる(St30)。図2ではパケットのPIDの横に、フラグを黒丸で示した。PID比較器132は、黒丸のフラグが付加されたPIDのパケットを、AVデコーダ107に送出する。
これ以降PID比較器132は、番組Aに関する映像及び/又は音声情報を有するPIDが「110」及び「120」であるパケットを通過させる。それらのパケットにはAVデコーダ107へ送るフラグがあることに基づいて、スイッチ133は、それらのパケットをAVデコーダ107に送る(Psav)。
【0061】
DEMUX部は、図13に示す構成であっても良い。図13は、本発明のDEMUX部1309の構成を示すブロック図である。図13において、DEMUX部1309(抽出部)は、PIDフィルタ1321とセクションフィルタ122とを有する。PIDフィルタ1321は、PIDテーブル131、PID比較器132、出力切換スイッチ133、PID抽出器1334を有する。DEMUX部1309は、DEMUX部109の構成に加えてPID抽出器1334を有する。それ以外の点において両者は同一である。
【0062】
PID比較器132は、検出したダミーパケットをPID抽出器1334に送る。PID抽出器1334は、ダミーパケットから映像及び/又は音声パケットのPIDを直接抽出してPIDテーブル131に設定する(NP10a)。この構成によれば、PID抽出部1334を追加したことによりDEMUX部の回路規模は増加するが、PIDテーブル131にPIDを設定するスピードが向上する。それ故に、ダミーパケットの送信後、バッファ260に格納された次の番組であるTSpを直ちにDEMUX部109に送信することができる。先に説明したタイミング調整が不要となる。
【0063】
次にTS1中の番組Aの再生に続いてTS2中の番組Cの再生を行う場合について説明する。蓄積媒体制御装置104が番組Cを再生開始する前に、番組情報管理部111は、デジタル放送受信機全体のシステム制御部(図示しない。)から番組Cの再生指令を受ける。例えば番組Aの再生指令と同時に又は番組Aの再生中に、番組情報管理部111は、システム制御部(図示しない。)から番組Cの再生指令を受ける。
番組Cの再生指令を受けると、番組情報管理部111はダミーパケット挿入部112に番組Cについて取得すべきパケットのPIDを通知する。例えば番組Cの映像パケットと音声パケットのPIDである「310」と「320」である。
【0064】
蓄積媒体制御装置104は番組Aの再生を終了し、番組Cの再生に切り替わる際には、所定の通知信号を発する。この信号は図1に示すRi3として番組情報管理部111に伝えられる。番組情報管理部111はこの信号を受けて、ダミーパケット挿入部112に番組CのTSpの先頭にダミーパケットを付加することを指示する(Np2)。これ以降の処理は、番組Aを再生する場合と同様である。先のTS1と、ダミーパケットと、次のTS2との関係は、図4に示すようになる。すなわちTSp1に続いてダミーパケットが挿入され、TSp2が続くようになる。
実施の形態において、ダミーパケット挿入部112には予め番組Cに属するパケットのPIDが通知されていた。これに代えて、蓄積媒体制御装置104から番組情報管理部111にこの番組Cへの切り替え通知の際に、これらのPIDの情報を蓄積媒体制御装置104からダミーパケット挿入部112に通知するようにしても良い。
【0065】
図5および図6に、番組情報管理部111の主要な動作をフローチャートとして示す。図5は、番組情報管理部111が、チューナー102又は外部入力端子(図1ではIEEE1394)105からのTSを選局するよう、システム制御部(図示しない。)から指令された場合のフローチャートである。
動作をスタートさせた後、番組情報管理部111は、DEMUX部109にPATパケットのPIDである「000」を指定する(ステップ512)。ステップ514に移って、番組情報管理部111はDEMUX部109からの回答を待つ。DEMUX部109の動作については、すでに図9で説明を行った。
【0066】
DEMUX部109は、PIDが「000」であるPATパケットのPATの中のPID情報を番組情報管理部111に回答する。番組情報管理部111は、PID情報の中から所望の番組(番組Aとする)のPMTパケットのPIDを得て、それをDEMUX部109に再度設定する(ステップ516)。そして再度DEMUX部109からの回答を待つ(ステップ518)。
DEMUX部109は、番組AのPMTパケットのPMTの中のPID情報を番組情報管理部111に回答する。番組情報管理部111は、そこに記載された映像パケット及び/又は音声パケット等のPIDをDEMUX部109に設定する(ステップ520)。すでに説明したように番組情報管理部111は、この時、映像パケットと音声パケットとはAVデコーダ107へ送信するパケットであることを示すフラグを同時にDEMUX部109に送信する。番組情報管理部111は、番組Aに属する映像及び/又は音声のパケットのPIDだけでなく、番組Aに属する他のパケットのPID、例えばタイムスタンプに関する情報を有するパケットのPIDをDEMUX部109に設定しても良い。
【0067】
次に図6を参照して、番組情報管理部111が蓄積媒体制御装置104が再生したTSpを入力する場合の、番組情報管理部111の動作について説明する。番組情報管理部111は、蓄積媒体制御装置104が再生モードであることを、デジタル放送受信機のシステム制御部(図示しない。)から通知される。
番組情報管理部111は、蓄積媒体制御装置104が再生する番組Aの選局指令を受ける(ステップ610)。番組情報管理部111は、再生される番組Aに属するパケットのPIDの情報を、蓄積媒体制御装置104から得る(ステップ612)。再生される番組Aに属するパケットは、映像及び/又は音声のパケットを含み、タイムスタンプ情報を有するパケット等を含めてもよい。
【0068】
次に番組情報管理部111は、これらのパケットのPIDをダミーパケット挿入部112へ通知する(ステップ614)。ダミーパケット挿入部112の動作については、図3を用いて説明した。番組情報管理部111は、ダミーパケット特有のPIDをDEMUX部109に設定する(ステップ616)。図1でいうNp1の通知がこれに相当する。ダミーパケットのPIDに関しては予め決めておいてもよいし、番組情報管理部111が随時決めて、ダミーパケット挿入部112に指示してもよい。またダミーパケット挿入部112が任意に若しくはいくつかの範囲の中からダミーパケットのPIDを随時選択して決め、それを番組情報管理部111に通知する構成にしてもよい。
以上のように準備ができたら、番組情報管理部111はダミーパケット挿入部112に、TSpの送信を指示する(ステップ618)。この指示に基づき、ダミーパケット挿入部112の送信部240がダミーパケットを送出し、その後バッファ260に蓄えられた蓄積媒体制御装置104からのTSpを送出する。
【0069】
番組情報管理部111はDEMUX部109からの回答を待つ(ステップ620)。
DEMUX部109は、ダミーパケットにセットしたPID情報、即ち、蓄積媒体制御装置104が出力した再生TSpに含まれる映像及び/又は音声等のパケットのPIDの情報を番組情報管理部111に回答する。番組情報管理部111は、これらのPIDをDEMUX部109に再度設定する(ステップ622)。この時、映像、音声パケットについてはAVデコーダ107へ送信することを示すフラグを同時にDEMUX部109にセットする。それ以降、DEMUX部109は、上述のように、入力したパケットをPIDテーブルの指示に従い処理する。
【0070】
図5および図6の説明は番組情報管理部111の主要な動作についてのフローチャートである。これらのフローチャートの中に随時別の処理フローを挿入したり、図5および図6のフローチャートのうち、置き換え可能なステップを他のステップに置き換えたり、他の処理方法で代用したりすることは、単に設計事項であることは言うまでも無い。
実施の形態のトランスポートストリーム処理装置は、デジタル放送受信機に組み込まれていたが、これに限られない。例えばトランスポートストリーム処理装置は、蓄積媒体制御装置に組み込まれていても良い。又は、トランスポートストリーム処理装置は、単体であっても良い。本発明は、ダミーパケットをパーシャルストリームの先頭に挿入することに限られるものではない。ダミーパケットをフルストリームの先頭に挿入してもよい。
【0071】
実施の形態においては、本発明のトランスポートストリーム処理装置と蓄積媒体制御装置104とを有するデジタル放送受信機を例示した。しかしこの構成に限られるものではない。本発明のトランスポートストリーム処理装置は、下記の構成を有する任意のトランスポートストリーム出力装置と組み合わせることが出来る。
【0072】
トランスポートストリーム出力装置は、トランスポートストリームを少なくとも一時蓄積可能で、トランスポートストリームの中の番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDを抽出しそれを別途記憶する。トランスポートストリーム処理装置等の他の装置がPIDを記憶しても良い。トランスポートストリーム処理装置からの問い合わせに応じて番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDをトランスポートストリーム処理装置に知らせる。所定の指令に応じて蓄積したトランスポートストリームを出力開始する。
【0073】
例えばデスクランブラ103が出力するトランスポートストリームを一時蓄積する大容量のRAMとその制御部とを設ける。RAMにトランスポートストリームを一時蓄積する時、その制御部は、PATパケットとPMTパケットとを検出し、各番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDを、RAMの所定の場所に格納する。トランスポートストリーム処理装置からの問い合わせに応じて、制御部は番組の映像パケット及び/又は音声パケットのPIDをトランスポートストリーム処理装置に知らせる。システム制御部(又はトランスポートストリーム処理装置)からの指令に応じて、制御部はRAMに蓄積したトランスポートストリームを出力開始する。この構成により、少なくともユーザが映像及び/又は音声の出力を指令してから、トランスポートストリーム処理装置が実際に映像及び/音声を出力するまでの間のパケットを破棄することがない。ユーザが映像及び/又は音声の出力を指令した時に、既にチューナ等が目的の番組を含むトランスポートストリームを出力していれば、従来より再生までの待ち時間が短くなる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、映像パケット及び/又は音声パケットを含むトランスポートストリームを処理するトランスポートストリーム処理装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置を有するデジタル放送受信機の構成図
【図2】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置のDEMUX部の詳細な構成図
【図3】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置のダミーパケット挿入部の構成を示す図
【図4】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置によってダミーパケットを挿入されたパーシャルストリームの構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置がチューナ等から入力したトランスポートストリームから所定の番組を選択する場合の動作フローを示す図
【図6】本発明の実施の形態のトランスポートストリーム処理装置が蓄積媒体等からの再生ストリームから所定の番組を選択する場合の動作フローを示す図
【図7】従来例のトランスポートストリーム処理装置を有するデジタル放送受信機の構成図
【図8】従来例のトランスポートストリーム処理装置のDEMUX部の詳細な構成図
【図9】DEMUX部の動作を示すフローチャート
【図10】トランスポートストリームの階層的な構成を示す図
【図11】トランスポートストリームの構成を示す図
【図12】本発明の実施の形態のパーシャルトランスポートストリームの構成を示す図
【図13】本発明の他の実施の形態のDEMUX部の構成を示す図
【符号の説明】
【0076】
100、700 トランスポートストリーム処理装置
101 アンテナ
102 チューナ
103 デスクランブラ
104 蓄積媒体制御装置
105 外部入力端子
106 入力切換スイッチ
107 AVデコーダ
108 制御部
109、1309 DEMUX部(抽出部)
111、711 番組情報管理部
112 ダミーパケット挿入部
121、1321 PIDフィルタ
122 セクションフィルタ
131 PIDテーブル
132 PID比較器
133 スイッチ
141 送信部
142 受信部
143 バッファ
144 蓄積媒体
1334 PID抽出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット識別子を有するパケットを入力し、その中から所定の登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択し、選択された前記パケットのペイロード部にパケット識別子が書き込まれていればそのパケット識別子を更に登録し、選択された前記パケットが映像及び/又は音声のパケットであれば出力する抽出部と、
トランスポートストリーム出力装置が出力するトランスポートストリームの中に含まれる少なくとも映像及び/又は音声のパケットの前記パケット識別子を取得し、前記パケット識別子をペイロード部に書き込んでパケット識別子を付したダミーパケットを生成し、前記ダミーパケットの前記パケット識別子を前記抽出部に登録し、前記トランスポートストリーム出力装置が出力する前記トランスポートストリームの先頭に前記ダミーパケットを付加する制御部と、
を有するトランスポートストリーム処理装置。
【請求項2】
前記制御部は前記ダミーパケットの前記パケット識別子として、固有のパケット識別子を付することを特徴とする請求項1記載のトランスポートストリーム処理装置。
【請求項3】
前記制御部は前記ダミーパケットとしてNULLパケットを使用し、通常のNULLパケットと識別するための情報を前記NULLパケット内に付加することを特徴とする請求項1記載のトランスポートストリーム処理装置。
【請求項4】
前記抽出部が、入力したパケットの中から所定の登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択するパケット識別子フィルタを有し、前記パケット識別子フィルタは、パケット識別子を登録するパケット識別子テーブルを有し、前記ダミーパケットを検出した場合、前記ダミーパケット内の映像及び/又は音声のパケットのパケット識別子を抽出して、パケット識別子テーブルに登録し、その後に続くトランスポートストリームから、登録されたパケット識別子を有する前記パケットのみを選択することを特徴とする請求項1に記載のトランスポートストリーム処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−115398(P2006−115398A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303052(P2004−303052)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】