説明

トリプレート型平面アンテナ

【課題】従来のトリプレート型平面アンテナの特性を損なうことなく、所望の放射面内でのビーム幅設定自由度が高く、かつ、広範囲に制御することのできるトリプレート型平面アンテナを提供する。
【解決手段】二次元的に縦横に配列された複数の放射素子と給電線路を含むアンテナ回路が形成されたアンテナ回路基板と、前記アンテナ回路基板を両面から挟む2枚の誘電体と、一方の誘電体に対して重ね合わせた地導体と、他方の誘電体に対して重ね合わせたスロット板と、を備えたトリプレート型平面アンテナにあって、
前記スロット板は、複数のスロット開口を有し、各スロット開口は前記スロット開口の長手方向に、無給電素子,給電素子,無給電素子の順に配列された素子群に対応して形成されているトリプレート型平面アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプレート型平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロストリップ型平面アンテナは、大容量高速無線通信端末として使用される。マイクロストリップ型平面アンテナの構造を、図1を使用して説明すると、各スロット開口9の長手方向に、無給電素子4,給電素子5,無給電素子4の順に配列された素子群に対応して形成されるような構成で、給電素子5がスロット開口9の長手方向に対して、90°の角度で給電線路3が設けられている90°給電タイプがあったが、トリプレート型平面アンテナでは、2つの無給電素子4に給電素子5が挟まれたタイプはなかった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−82405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面アンテナでは、多分野において使用できるようにするために、広角なビームを有するアンテナが求められている。トリプレート型平面アンテナでは、パラレルプレートモードという特殊な設計要因を有するので、マイクロストリップ型平面アンテナのような構成を一様に適用できないという問題点があった。本発明は、従来のトリプレート型平面アンテナの特性を損なうことなく、所望の放射面内でのビーム幅設定自由度が高く、かつ、広範囲に制御することのできるトリプレート型平面アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、以下に関する。
(1)二次元的に縦横に配列された複数の放射素子2と給電線路3を含むアンテナ回路が形成されたアンテナ回路基板1と、前記アンテナ回路基板1を両面から挟む2枚の誘電体6と、一方の誘電体6bに対して重ね合わせた地導体7と、他方の誘電体6aに対して重ね合わせたスロット板8と、を備えたトリプレート型平面アンテナにあって、
前記スロット板8は、複数のスロット開口9を有し、各スロット開口9は前記スロット開口9の長手方向に、無給電素子4,給電素子5,無給電素子4の順に配列された素子群に対応して形成されていることを特徴とするトリプレート型平面アンテナである。
(2)前記給電素子5は、前記スロット開口9の長手方向に対して、45°の角度で給電線路3が設けられていることを特徴とする項(1)に記載のトリプレート型平面アンテナである。
(3)2つの前記無給電素子4及び前記給電素子5を前記スロット開口9に対応させて得られるアンテナエレメントが前記スロット開口9の長手方向に垂直な方向に自由空間波長の0.85倍以上0.93倍以下のピッチで配列されていることを特徴とする項(1)又は(2)に記載のトリプレート型平面アンテナである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトリプレート型平面アンテナによれば、従来のトリプレート型平面アンテナの特性を損なうことなく、所望の放射面内でのビーム幅設定自由度が高く、かつ、広範囲に制御することのできるトリプレート型平面アンテナを提供することが実現できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の形態を、図を使用して説明する。地導体7及びスロット板8は、どのような金属板あるいはプラスチックにメッキした板でも用いることが出来るが、特にアルミニウム板を用いれば、軽量で安価に製造でき好ましい。また、フィルムを基材とし、その上に銅箔を張り合わせたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去しても構成でき、さらにガラスクロスに樹脂を含浸させた薄い樹脂板に銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも構成することができる。
【0008】
誘電体6には、空気,比誘電率の低い発泡体などを用いるのが好ましい。
アンテナ回路基板1は、フィルム基材とし、その上に銅箔を張り合わせたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去して、放射素子2,給電線路3を形成して構成できるが、ガラスクロスに樹脂を含浸させた薄い樹脂板に銅箔を張り合わせた銅張り積層板でも構成できる。
また、放射素子2,スロット開口9の形状は、菱形又は丸形であってもかまわない。
【実施例】
【0009】
実施例1
図2、3において、地導体7として厚さ2mmのアルミニウム板を用い、誘電体6として比誘電率が略1.16で厚みが0.7mmの発泡ポリエチレンを用いた。またアンテナ回路基板13として厚さ25μmのポリイミドフィルムに厚さ18μmの銅箔を張り合わせたフィルム基板を用い、エッチングにより不要な銅箔を除去して放射素子2及び給電線路3を形成した。また、スロット板8として厚さ1mmのアルミニウム板をプレス工法による打ち抜きでスロット開口9を形成したものを用いた。
【0010】
本構成において、アンテナ回路基板13に、一辺の長さが利用周波数24.0GHzの自由空間波長λの略0.4倍となる正方形の給電素子5を形成し、給電素子5の水平側両隣に給電素子5と同じλの略0.4倍となる無給電素子4を設けた。さらにスロット開口9の長手方向に、無給電素子4,給電素子5,無給電素子4の順に配列された素子群に対応して形成し、前記給電素子5は、前記スロット開口9の長手方向に対して、90°の角度で給電線路3を設けた。さらにスロット板8に、短辺がλの略0.55倍となる長方形のスロット開口9を形成した。また、各アンテナの出力端の変換は、導波管変換とし短絡板10にて変換を行い構成とした。
【0011】
以上の構成により、放射素子2とスロット開口9の配列間隔を、水平方向にλの略0.5〜0.67倍、垂直方向にλの略0.73〜0.9倍とし、1×4素子アンテナ1個を構成した。
この結果、従来のトリプレート型平面アンテナでは、ビーム形状が狭角約5°だったのに対して、所望の放射面内でのビーム幅設定自由度が高く、かつ、広角なビーム形状約87°を実現できた。
【0012】
実施例2
図4,5において、アンテナ回路基板14の給電素子5は、前記スロット開口9の長手方向に対して、45°の角度で給電線路3を設けた以外は、実施例1と同じとして1×4素子アンテナ1個を構成したものである。
【0013】
この結果、実施例1と同様に、従来のトリプレート型平面アンテナでは、ビーム形状が狭角約5°だったのに対して、所望の放射面内でのビーム幅設定自由度が高く、かつ、広角なビーム形状約87°を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マイクロストリップ型平面アンテナの要部を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例1を示すアンテナ回路基板13の正面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例2を示すアンテナ回路基板14の正面図である。
【図6】本発明の実施例1、2のアンテナにおける水平面指向性を示す線図である。
【符号の説明】
【0015】
1 アンテナ回路基板
2 放射素子
3 給電線路
4 無給電素子
5 給電素子
6 誘電体
7 地導体
8 スロット板
9 スロット開口
10 短絡板
11 短絡調整板
12 導波管スペーサ
13 アンテナ回路基板(90°給電タイプ)
14 アンテナ回路基板(45°給電タイプ)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元的に縦横に配列された複数の放射素子(2)と給電線路(3)を含むアンテナ回路が形成されたアンテナ回路基板(1)と、前記アンテナ回路基板(1)を両面から挟む2枚の誘電体(6)と、一方の誘電体(6b)に対して重ね合わせた地導体(7)と、他方の誘電体(6a)に対して重ね合わせたスロット板(8)と、を備えたトリプレート型平面アンテナにあって、
前記スロット板(8)は、複数のスロット開口(9)を有し、各スロット開口(9)は前記スロット開口(9)の長手方向に、無給電素子(4),給電素子(5),無給電素子(4)の順に配列された素子群に対応して形成されていることを特徴とするトリプレート型平面アンテナ。
【請求項2】
前記給電素子(5)は、前記スロット開口(9)の長手方向に対して、45°の角度で給電線路(3)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトリプレート型平面アンテナ。
【請求項3】
2つの前記無給電素子(4)及び前記給電素子(5)を前記スロット開口(9)に対応させて得られるアンテナエレメントが前記スロット開口(9)の長手方向に垂直な方向に自由空間波長の0.85倍以上0.93倍以下のピッチで配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトリプレート型平面アンテナ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−281679(P2007−281679A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103098(P2006−103098)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】