説明

トルクセンサ及びトルクセンサ付モータ

【課題】
回転出力軸を有する装置に特殊な加工が必要でなく、回転出力軸を有する装置に簡単に装着できるとともに容易に小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサ及びトルクセンサ付モータを提供する。
【解決手段】
トルクセンサ20は、一対の第1厚肉部21と一対の第2厚肉部22とが交互に配置されるとともに互いに隣接する第1厚肉部21と第2厚肉部22間に弾性変形可能な薄肉部23が連結された連結体と、各薄肉部23に配置された歪みゲージ30とを備える。第1厚肉部21が、減速機付モータ11のハウジング13と一体に連結可能に形成され、第2厚肉部22が、固定プレート12に一体に連結可能に形成され、第1厚肉部21と第2厚肉部22とが並んだ方向に変位可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサ及びトルクセンサ付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
多指ロボットハンドにおける物体の把持・操作は、多くの分野において実用化が望まれている。ロボットハンドにおいて、物体の把持・操作の力情報を得るためには、関節トルクの測定が重要となっている。トルクを直接計測する測定法では、歪みゲージや、磁歪式トルクセンサを用いる測定法(特許文献1〜3、非特許文献2)や、光学式トルクセンサ(非特許文献1,3)がある。
【0003】
特許文献1では、駆動プーリと従動プーリ間に巻掛けられた媒介節の往復両側に一対のテンションプーリが設けられ、同テンションプーリを支持する主フレームのはり部に歪みゲージが貼り付けられた構成になっている。そして、この歪みゲージの出力により従動プーリのトルク値を求めるようにしている。
【0004】
特許文献2では、モータの出力軸の先端に磁歪膜を形成し、その周囲を囲むようにして励磁コイルを配置して、磁歪式トルクセンサを構成し、磁歪膜の磁気特性変化に基づいてトルクを検出するようにしている。
【0005】
特許文献3では、指リンクの関節回転部に設けられたセンサは長尺状に形成されて、一方の端部がモータの回転軸に固定され、他端部が指リンクに設けられた一対の突起体間に挟まれて、長手方向と突起体周りの回転方向に変位可能となっている。そして、回転軸が回転すると、同センサにおいて、回転軸と突起体間に位置するくびれ部分に設けられたゲージの出力により、トルクを検出するようになっている。
【0006】
非特許文献1では、ダイレクト・ドライブ手首の回転駆動するモータのロータと関節軸を結合するハブに光学式トルクセンサが設けられている。
非特許文献2では、ハーモニックドライブ(登録商標)減速装置内のフレクススプラインのねじり変形を利用してトルクを計測するようにしている。
【0007】
非特許文献3では、検出器が、入力軸に連結されるリングと、同リング内に配置されるとともに出力軸に連結されるハブとを備え、前記ハブが前記リングに対して撓み可能な複数のスポークにて連結されることにより構成されている。前記リングには、固定されたフォトインタラプタの間を移動するシールドが設けられ、入力軸から出力軸に回転トルクが付与されたときに、前記フォトインタラプタに対する前記シールドの位置がスポークの歪みに応じて変化することに基づいてトルク検出を行うようにしている。
【特許文献1】実開平5−94737号公報
【特許文献2】特開2002−250662号公報
【特許文献3】特開2004−20368号公報
【非特許文献1】浅田春比古,金寧鐸,「光学式トルクセンサを内蔵したダイレクト・ドライブロボットの動的コンプライアンス制御」,日本ロボット学会誌,Vol.7,No.2,pp.3-12,1989
【非特許文献2】橋本稔,ゴドレール・イヴァン,「ハーモニックドライブ(登録商標)内蔵型トルクセンサの高精度化」,日本ロボット学会誌,Vol.15,No.5,pp.146-150,1997
【非特許文献3】ヅミトリ・ツェツェルコウ(Dzmitry Tsetserukou),リイチロウ・タダクマ(Riichiro Tadakuma),ヒロユキ・カジモト(Hiroyuki Kajimoto),ススム・タチ(Susumu Tachi),「オプティカル トルク センサーズ フォー ローカル インピーダンス コントロール リアリゼーション オブ アン アンスロポモルフィック ロボット アーム (Optical Torque Sensors for Local Impedance Control Realization of an Anthropomorphic Robot Arm)」,ジャーナル・オブ・ロボティクス・アンド・メカトロニクス(Jounal of Robotics and Mechatronics),Vol.18,No2,pp.121-130,2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1では、プーリー等の複数の部品をロボットハンドに追加する必要があり、ロボットハンドに簡単に装着することが困難な問題がある。従って、特許文献1の構成では、回転出力軸を有する装置にトルクセンサを簡単に取付することができない。特許文献2では、モータの出力軸の先に磁歪式トルクセンサを結合する構成をとることから、出力軸の全長が長くなり、回転出力軸を有する装置にトルクセンサを付設した構成の小型化は容易ではない問題がある。
【0009】
特許文献3では、ロボットハンド自体に特殊な加工が必要となるため、簡単にロボットハンドに装着することが困難である問題がある。従って、特許文献3では、ロボットハンド自体のように回転出力軸を有する装置側に特殊加工が必要となり、簡単にトルクセンサを装着することが困難である。
【0010】
非特許文献1では、出力ファイバーと、入力ファィバーとを相対させる必要があり、例えばロボットハンドのように限られた空間内において、両ファィバーの取付精度を維持することが難しい問題があり、又、小型化が難しい。又、非特許文献3では、フォトインタラプタとシールドと両者の位置関係の管理が難しい問題があり、又、小型化が難しい。
【0011】
非特許文献2では、ハーモニックドライブ(登録商標)減速装置という特定の減速装置機内部にトルク測定部位を設けることから、様々なモータへの取付が困難であり、汎用性に乏しい問題がある。
【0012】
本発明の目的は、回転出力軸を有する装置に特殊な加工が必要でなく、回転出力軸を有する装置に簡単に装着できるとともに容易に小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサを提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、回転出力軸を有する装置や、トルクセンサ付モータが取付けられる側に特殊な加工が必要でなくて、容易に小型化ができ、さらには汎用性が高いトルクセンサ付モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、厚肉部と弾性変形可能な薄肉部とが連結された連結体と、前記薄肉部に配置された歪みゲージとを備え、前記厚肉部は、回転出力軸を有する装置のハウジングに一体に連結可能に形成された第1厚肉部と、支持部材に一体に連結可能に形成された第2厚肉部を含み、前記第1厚肉部と前記第2厚肉部間に前記薄肉部が形成されて、第1厚肉部と第2厚肉部とが互いに並んだ方向に変位可能にされていることを特徴とするトルクセンサを要旨とするものである。
【0015】
請求項1の発明のトルクセンサは、第1厚肉部が回転出力軸を有する装置のハウジングに一体に連結され、第2厚肉部が支持部材に一体に連結される。このことにより、回転出力軸を有する装置は、トルクセンサを介して支持部材に取付支持される。
【0016】
このトルクセンサの配置の方法は、例えば、回転出力軸を有する装置と支持部材間にトルクセンサを配置する方法(以下、第1の方法という)と、支持部材とトルクセンサ間に回転出力軸を有する装置を配置する方法(以下、第2の方法という)がある。
【0017】
第1の方法の場合、回転出力軸を回転出力軸を有する装置のハウジングから支持部材側に突出させてもよく(第1実施形態参照)、或いは、前記ハウジングにおいて、支持部材側の端面とは180度反対側の端面から回転出力軸を突出させてもよい。
【0018】
第2の方法の場合、支持部材とトルクセンサの第2厚肉部とを連結する部材を、例えば、回転出力軸を回転出力軸を有する装置のハウジング内を貫通配置したり(第2実施形態参照)、ハウジング外に配置してもよい。
【0019】
請求項2の発明は、第1厚肉部と第2厚肉部とが交互に配置されるとともに互いに隣接する第1厚肉部と第2厚肉部間に弾性変形可能な薄肉部が連結された連結体と、前記薄肉部のうち少なくとも1つの薄肉部に配置された歪みゲージとを備え、前記第1厚肉部が、回転出力軸を有する装置に一体に連結可能に形成され、前記第2厚肉部が、支持部材に一体に連結可能に形成され、前記第1厚肉部と第2厚肉部とが並んだ方向に変位可能にされていることを特徴とするトルクセンサを要旨とするものである。
【0020】
請求項2の発明においても、トルクセンサを請求項1と同様に第1の方法及び第2の方法の取付が可能である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記連結体がリング状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、前記連結体が、円弧状に形成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のトルクセンサが、回転出力軸を有する装置であるモータに対して第1厚肉部にて取付けされていることを特徴とするトルクセンサ付モータを要旨とするものである。
【0022】
この場合、トルクセンサはモータのハウジングにおいて、回転出力軸が突出する側の面に第1厚肉部を取付けしてもよく、或いは、回転出力軸が突出する側とは180度反対側の面に対して第1厚肉部を取付けしてもよい。
【0023】
請求項6の発明は、請求項5において、前記モータが減速機付モータであることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6において、前記減速機付モータがロボットハンド用のモータであることを特徴とする。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5乃至請求項7のうちいずれか1項において、前記第2厚肉部が、支持部材に一体に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1乃至請求項4の発明によれば、トルクセンサを、支持部材と回転出力軸を有する装置のハウジング間や、或いは、回転出力軸を有する装置の同回転出力軸が突出する方向とは180度反対側の面に取付けする。このことにより、回転出力軸を有する装置に特殊な加工が必要でなく、回転出力軸を有する装置に簡単に装着できるとともに容易に小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサを提供することができる。
【0026】
請求項5乃至請求項8の発明によれば、回転出力軸を有する装置や、トルクセンサ付モータが取付けされる側に特殊な加工が必要でなくて、容易に小型化ができ、さらには汎用性が高いトルクセンサ付モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明をロボットハンドに使用されるトルクセンサ及びトルクセンサ付モータに具体化した第1実施形態を図1〜6を参照して説明する。
トルクセンサ付モータは、減速機付モータ11と、減速機付モータ11を図示しないロボットハンドに取付けするための支持部材としての固定プレート12と、減速機付モータ11と固定プレート12間に介在配置されたトルクセンサ20とから構成されている。
【0028】
減速機付モータ11は円柱状のハウジング13内にモータ本体と同モータ本体の出力を減速する減速歯車機構(ともに図示しない)を備えており、減速歯車機構の回転出力軸14がハウジング13の固定プレート12側の端面から突出されている。減速機付モータ11は、回転出力軸を有する装置に相当する。
【0029】
トルクセンサ20は、同じ大きさをなす一対の第1厚肉部21と、同じ大きさをなす一対の第2厚肉部22とが同一円上において交互に配置され、互いに隣接する第1厚肉部21と第2厚肉部22とが弾性変形可能に形成された薄肉部23により連結されている。第1厚肉部21,第2厚肉部22及び薄肉部23は、例えば、アルミニウムや或いは高力アルミニウム合金等から一体に形成されている。第1厚肉部21及び第2厚肉部22は、厚肉部を構成する。又、第1厚肉部21、第2厚肉部22及び薄肉部23により、円形リング状をなす連結体を構成する。連結体を構成するトルクセンサ20の外径は、減速機付モータ11のハウジング13の外径と同径にしてハウジング13と同軸となるように配置され、トルクセンサ20がハウジング13から径方向に突出しないようにされている。
【0030】
第1厚肉部21、第2厚肉部22及び薄肉部23の固定プレート12と対向する面21a,22a,23a及び減速機付モータ11に対向する面21b,22b,23bは平面に形成されている。第1厚肉部21の面21aは、第2厚肉部22の面22aに対して図2に示すようにオフセットされている。
【0031】
第1厚肉部21の面21aには、段付貫通孔24が形成されている。そして、第1厚肉部21は、段付貫通孔24にボルト31が挿通されてハウジング13の固定プレート12側の端面に設けられたネジ孔13aに螺合されることにより、面21bが図2に示すように減速機付モータ11のハウジング13の端面に対し当接された状態で締結されて一体に連結されている。
【0032】
ボルト31の頭部の頂面は、第1厚肉部21の面21aから突出しないように同面21aと面一、又は、段付貫通孔24内に位置する。又、図2に示すように、薄肉部23と第2厚肉部22はハウジング13のトルクセンサ20と対向する端面に対して間隙を介して離間され、ハウジング13に対してはフリーな状態となっている。
【0033】
第2厚肉部22の固定プレート12と対向する面22aには、雌ネジ孔25が形成されている。一方、固定プレート12には、雌ネジ孔25と相対して段付貫通孔15が形成されている。なお、段付貫通孔24と雌ネジ孔25の中心は、トルクセンサ20が減速機付モータ11に取付けされた際、後述する回転出力軸14の軸心を中心とする共通の円C上に位置するように配置されている(図4(a)参照)。
【0034】
そして、第2厚肉部22は、段付貫通孔15に挿通されたボルト32が雌ネジ孔25に螺合されることにより面22aが図2に示すように固定プレート12に対し当接された状態で締結されて一体に連結されている。ボルト32の頭部の頂面は、固定プレート12の上面(図3において)から突出しないように同面と面一、又は、段付貫通孔15内に位置する。又、図2に示すように、薄肉部23と第1厚肉部21は固定プレート12と間隙を介して離間され、固定プレート12に対してはフリーな状態となっている。
【0035】
各薄肉部23は、図4(a)に示すように、回転出力軸14を中心として90度間隔で配置されている。薄肉部23の内径側の面(すなわち、回転出力軸14に向かう面、以下、ゲージ面23cという)には、回転出力軸14の軸心に沿うように歪みゲージ30が貼着されている。
【0036】
固定プレート12の中央には、貫通孔18が形成され、回転出力軸14が突出されている。固定プレート12の各コーナには、固定プレート12を図示しないロボットハンドの関節に取付するためのボルト挿通孔19が設けられている。
【0037】
さて、上記のように構成されたトルクセンサ20及びトルクセンサ付モータの作用を図4(a)〜(c)を参照して説明する。なお、固定プレート12は、図示しないロボットハンドの関節に固定されているものとする。
【0038】
減速機付モータ11が回転し、関節トルクが発生すると、固定プレート12とモータは、ある程度の剛性を有するトルクセンサ20を介して結合されているため、相対的な変位が生ずる。すなわち、減速機付モータ11の回転出力軸14が回転すると、ハウジング13には回転出力軸14の回転方向とは反対方向に反力が働くことから、トルクセンサ20には第1厚肉部21と第2厚肉部22とが相対的に変位する。具体的には、第1厚肉部21は、減速機付モータ11のハウジング13に働いた反力により変位する。
【0039】
図4(a)において、回転出力軸14が反時計回り方向に回転すると、第1厚肉部21はA方向に変位し、回転出力軸14が時計回り方向に回転すると、第1厚肉部21はB方向に変位する。このように、第1厚肉部21は、第2厚肉部22と互いに並んだ方向に変位する。この並んだ方向は、本実施形態では、回転出力軸14を中心とした円Cの周方向である。
【0040】
一般的な片持ち梁による構造では、減速機付モータ11の反時計回り方向の回転により、A方向に負荷を生じると、図4(b)に示すように薄肉部23の(イ),(ハ)のゲージ面23cが圧縮力を受け、(ロ),(ニ)のゲージ面23cが引張力を受け、(イ)〜(ニ)のゲージ面23cに配置された歪みゲージ30が歪む。
【0041】
又、減速機付モータ11の時計回り方向の回転により、B方向に負荷を生じると、図4(c)に示すように薄肉部23の(イ),(ハ)のゲージ面23cが引張力を受け、(ロ),(ニ)のゲージ面23cが圧縮力を受け、(イ)〜(ニ)のゲージ面23cに配置された歪みゲージ30が歪む。
【0042】
上記のように構成されたトルクセンサ20では、前記各歪みゲージ30により、ゲージブリッジを構成して、トルク検出を行うことができる。図5は、4つの歪みゲージ30を4アクティブゲージ法によりゲージブリッジを構成したものである。この場合の出力は、
Vout=KεVin
なお、Kは歪みゲージ率、εは歪み、Vinはブリッジ電圧、Voutは出力電圧である。又、図5中、R1〜R4は、歪みゲージのゲージ抵抗である。4アクティブゲージ法では、歪みゲージ30を単独で使用した場合の4倍の出力が得られ、温度補償が可能となる。又、ロボットハンドの姿勢変化に伴うセンサ出力の重力補償も可能となる。
【0043】
図6は、本実施形態のトルクセンサの出力の特性図である。図6に示すように、トルクの増加に伴い、歪みが線形の関係で増加し、歪みからトルクの計算ができる。
以上のように構成された第1実施形態では、下記の特徴がある。
【0044】
(1) 本実施形態のトルクセンサ20は、第1厚肉部21と、第2厚肉部22を含む厚肉部と弾性変形可能な薄肉部23とが連結された連結体と、薄肉部23に配置された歪みゲージ30とを備える。又、厚肉部は、減速機付モータ11(回転出力軸を有する装置)のハウジング13に一体に連結可能に形成された第1厚肉部21と、固定プレート12(支持部材)に一体に連結可能に形成された第2厚肉部22とから構成されている。そして、第1厚肉部21と第2厚肉部22間に薄肉部23が形成されて、第1厚肉部21と第2厚肉部22とが互いに並んだ方向に変位可能にされているようにした。
【0045】
この結果、本実施形態のトルクセンサ20は、減速機付モータ11と固定プレート12間に配置されて、第1厚肉部21が減速機付モータ11のハウジング13に一体に連結され、第2厚肉部22が固定プレート12に一体に連結される。このことにより、減速機付モータ11は、トルクセンサ20を介して固定プレート12に取付支持できる。
【0046】
そして、上記のようにトルクセンサ20を、減速機付モータ11と固定プレート12との間に配置して取付けができるため、減速機付モータ11に特殊な加工が必要でなく、減速機付モータ11に簡単に装着できるとともにトルクセンサ付モータを容易に小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサとすることができる。
【0047】
(2) 本実施形態のトルクセンサ20は、一対の第1厚肉部21と一対の第2厚肉部22とが交互に配置されるとともに互いに隣接する第1厚肉部21と第2厚肉部22間に弾性変形可能な薄肉部23が連結された連結体と、各薄肉部23に配置された歪みゲージ30とを備えるようにした。又、第1厚肉部21が、減速機付モータ11のハウジング13と一体に連結可能に形成され、第2厚肉部22が、固定プレート12に一体に連結可能に形成され、第1厚肉部21と第2厚肉部22とが並んだ方向に変位可能にされている。
【0048】
この結果、トルクセンサ20を、減速機付モータ11と固定プレート12との間に配置して取付けができることから、減速機付モータ11に特殊な加工が必要でなくなる。又、減速機付モータ11にトルクセンサ20を簡単に装着できるとともに容易にトルクセンサ付モータを小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサとすることができる。
【0049】
(3) 本実施形態では、トルクセンサ20を構成する連結体を円形リング状に形成して、減速機付モータ11のハウジング13と同じ外径にした。この結果、トルクセンサ20がハウジング13の径方向へ突出することがなく、トルクセンサ付モータとして小型化ができる。
【0050】
(4) 本実施形態のトルクセンサ付モータでは、トルクセンサ20が取り付けされているモータを減速機付モータ11とした。この結果、トルクセンサ20により、減速機先端のトルクを測定することができる。すなわち、モータや、減速機内部の摩擦等を考慮した外部への実質的なトルクを測定できる。
【0051】
(5) 本実施形態のトルクセンサ付モータでは、減速機付モータ11がロボットハンド用のモータとしている。この結果、ロボットハンドの関節部に取付けする減速機付モータ11に特殊な加工が必要でないとともに、ロボットハンドの関節部側にもトルク検出するための特殊な加工を施す必要がなくて、容易に小型化ができる。
【0052】
(6) 本実施形態のトルクセンサ付モータでは、第2厚肉部22が、固定プレート12に一体に連結されている。この結果、トルクセンサ付モータを固定プレート12を介して例えばロボットハンドの関節部位に簡単に取付することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図7〜9を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成、又は相当する構成については同一符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0054】
第2実施形態のトルクセンサ20及びトルクセンサ付モータは、図7に示すように、トルクセンサ20と、固定プレート12との間に減速機付モータ11を配置したところが第1実施形態と異なっている。
【0055】
トルクセンサ20は、第1厚肉部21、第2厚肉部22及び薄肉部23とが第1実施形態と同様に形成されて配置されるとともにその外径は、減速機付モータ11のハウジング13の外径と同径にしてハウジング13と同軸となるように配置され、ハウジング13から径方向に突出しないようにされている。
【0056】
第2実施形態では、第1厚肉部21、第2厚肉部22及び薄肉部23の面21a,22a,23aは、それぞれ減速機付モータ11に対向するところが第1実施形態と異なっている。
【0057】
又、第1実施形態では、第1厚肉部21の面21aに段付貫通孔24が形成されているのに対して、第2実施形態では、第1厚肉部21の面21bに、段付貫通孔24が形成されているところが異なっている。そして、第1厚肉部21は、段付貫通孔24にボルト31が挿通されてハウジング13の下端面に設けられたネジ孔(図示しない)に螺合されることにより、面21aが図8に示すようにハウジング13の下端面に対し当接された状態で締結されて一体に連結されている。
【0058】
ボルト31の頭部の頂面は、第1厚肉部21の面21bから突出しないように同面21bと面一、又は、段付貫通孔24内に位置する。又、図8に示すように、薄肉部23と第2厚肉部22はハウジング13のトルクセンサ20と対向する下端面に対して間隙を介して離間され、ハウジング13に対してはフリーな状態となっている。
【0059】
なお、第2厚肉部22の固定プレート12と対向する面22aに設けられた雌ネジ孔25と、固定プレート12に設けられた段付貫通孔15の位置関係は第1実施形態と同じである。
【0060】
又、段付貫通孔24と雌ネジ孔25の位置関係は第1実施形態と同様にその中心が、トルクセンサ20が減速機付モータ11に取付けされた際、回転出力軸14の軸心を中心とする共通の円上に位置するように配置されている。
【0061】
そして、第2厚肉部22は段付貫通孔15に挿通されたボルト32がハウジング13に設けられた貫通孔13bを介して雌ネジ孔25に螺合されることにより、面22aがハウジング13の下端面とは離間された状態で(図8参照)、固定プレート12に対して締結され一体に連結されている。
【0062】
ボルト32の頭部の頂面は、固定プレート12の上面(図9において)から突出しないように同面と面一、又は、段付貫通孔15内に位置する。又、図8に示すように、薄肉部23と第1厚肉部21はハウジング13と間隙を介して離間され、減速機付モータ11及び固定プレート12に対してはフリーな状態となっている。薄肉部23の構成及び歪みゲージ30の配置は第1実施形態と同様である。
【0063】
上記のように構成された第2実施形態のトルクセンサ20及びトルクセンサ付モータは、第1実施形態と同様の機能を有するので、作用の説明は省略する。
第2実施形態は、第1実施形態で述べた(2)〜(6)の特徴を有する他、以下の特徴がある。
【0064】
(1) 第2実施形態では、減速機付モータ11の両端面に対してトルクセンサ20と固定プレート12とをそれぞれ配置して、減速機付モータ11を挟み込むようにし、減速機付モータ11を固定プレート12に対してトルクセンサ20を介して支持するようにした。
【0065】
この結果、減速機付モータ11に特殊な加工が必要でなく、減速機付モータ11にトルクセンサ20を簡単に装着できるとともにトルクセンサ付モータを容易に小型化ができ、さらには、汎用性が高いトルクセンサとすることができる。
【0066】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1実施形態及び第2実施形態のトルクセンサ付モータは、固定プレート付であったが、固定プレート12を省略したトルクセンサ付モータとしてもよい。この場合、減速機付モータ11のハウジング13において、回転出力軸14が突出する側の端面に第1厚肉部21を取付けすることにより、減速機付モータ11をトルクセンサ付モータとする。
【0067】
このような構成にすると、後に固定プレート12をトルクセンサ20の第2厚肉部22にボルト32にて締結するだけで、トルクセンサ付モータを固定プレート12を介して例えばロボットハンドの関節部位等に簡単に取付することができる。
【0068】
○ 第1実施形態では、回転出力軸14は、固定プレート12と対向するハウジング13の端面から突出されているが、回転出力軸14は、固定プレート12と対向する端面とは180度反対側の端面(図1においては、ハウジング13の下端面)から突出させてもよい。
【0069】
○ 又、第1実施形態及び第2実施形態のトルクセンサ付モータは、減速機付モータであったが、減速機を省略したモータに代えてもよい。
○ 第1実施形態及び第2実施形態では、回転出力軸を有する装置として、モータとしたが、回転出力軸を有する装置としては、モータに限定されるものではなく、増速歯車機構や、ハーモニックドライブ(登録商標)等の減速歯車機構等を内蔵した歯車機構の回転出力軸を備えた装置を回転出力軸を有する装置としてもよい。
【0070】
○ 第1実施形態では、トルクセンサ20を円形リング状に設けたが、リング状は、円形に限定されるものではなく、楕円、三角形、四角形、五角形以上の多角形等のリング状に形成してもよい。
【0071】
○ 第1実施形態のトルクセンサ20は、歪みゲージ30を各薄肉部23に対して配置して4個としたが、図10(a)に示すように、1つの薄肉部23に対して歪みゲージ30を配置するようにしてもよい。この場合、1アクティブゲージ法によりゲージブリッジを構成して、トルクを検出することができる。
【0072】
そして、この構成のトルクセンサ20を第1、又は第2実施形態と同様に減速機付モータ11に取付したり、減速機を省略したモータに対して取付してもよい。
○ 第1実施形態のトルクセンサ20は、歪みゲージ30を各薄肉部23に対して配置して4個としたが、図10(b)に示すように、第1厚肉部21に隣接する2つの薄肉部23に対して一対の歪みゲージ30を配置するようにしてもよい。この場合、2アクティブゲージ法によりゲージブリッジを構成して、トルクを検出することができる。
【0073】
そして、この構成のトルクセンサ20を第1、又は第2実施形態と同様に減速機付モータ11に取付したり、減速機を省略したモータに対して取付してもよい。
○ トルクセンサ20の構成として、第1厚肉部21及び第2厚肉部22を1つのみにし、第1厚肉部21に隣接する1つ又は一対の薄肉部23に対して1つ又は一対の歪みゲージ30を配置するようにしてもよい。図10(c)では、上記の一例として、1つの歪みゲージ30を備えた薄肉部23と、第1厚肉部21と、歪みゲージ30を備えていない薄肉部23と、第2厚肉部22とが交互に連結配置されて、全体が円形状に形成されたトルクセンサ20を図示している。
【0074】
○ 第1実施形態ではトルクセンサ20を円形リング状としたが、図11(a)に示すように、1つの第1厚肉部21の両側に一対の薄肉部23を介して第2厚肉部22を連結して、連結体を構成するトルクセンサ20を半円状に形成してもよい。そして、各薄肉部23に対して歪みゲージ30を取付する。
【0075】
この場合、減速機付モータ11に取付する場合は、図11(a)に示すように、一対のトルクセンサ20を使用して全体が、略円形状になるように配置して減速機付モータ11と固定プレート12に対して取付けするようにする。この場合においては、部品点数が増加するが、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。勿論、第2実施形態と同様にトルクセンサ20を減速機付モータ11に対して取付けしてもよい。
【0076】
○ 図10(a)に示す実施形態の変形例として、図11(b)又は図11(c)に示すように構成してもよい。すなわち、図11(b)の変形例では、トルクセンサ20の構成は1つとして、歪みゲージ30は、1つの薄肉部23のみに配置されたものである。
【0077】
又、図11(c)の変形例では、トルクセンサ20の構成は1つとして、一対の歪みゲージ30が一対の薄肉部23に配置されたものである。
この場合、図11(a)では一対のトルクセンサ20を介して減速機付モータ11を固定プレート12に固定する代わりに、減速機付モータ11を1つのトルクセンサ20とダミー40を介して固定プレート12に支持する。
【0078】
ダミー40はトルクセンサ20と同様に円弧状に形成され、歪みゲージ30を備えていない以外は、トルクセンサ20と同様に構成すればよい。
なお、説明の便宜上、ダミー40の構成体においても、本変形例のトルクセンサ20に相当する構成は、同一符号を付している。
【0079】
○ 又、図12に示すように、トルクセンサ20を構成してもよい。図12の例では、第1厚肉部21、第2厚肉部22の間に薄肉部23を間にするように連結されて、連結体を構成するトルクセンサ20が1/4円弧状に形成されている。このようにして、第1厚肉部21と第2厚肉部22とが、薄肉部23を挟んで互いに並んだ方向(すなわち、1/4円弧に沿った方向)に変位可能にされている。そして、薄肉部23のゲージ面23cに対して歪みゲージ30が取付けされている。
【0080】
○ 前記各実施形態では、歪みゲージ30を各薄肉部23の内径側のゲージ面23cに設けたが、外径側の面や面23a、23bに配置してもよい。又、ゲージ面23c,及び面23a、或いはゲージ面23c及び面23bにそれぞれ歪みゲージ30を配置してもよい。又、歪みゲージ30を各薄肉部23において、外径側の面,及び面23a、或いは外径側の面及び面23bにそれぞれ歪みゲージ30を配置してもよい。
【0081】
○ 前記各実施形態ではロボットハンドに使用されるトルクセンサ及びトルクセンサ付モータに具体化したが、トルクセンサ及びトルクセンサ付モータはロボットハンド用に限定されるものではなく、他の用途に使用されるトルクセンサ及びトルクセンサ付モータとして使用してもよい。
【0082】
○ 第2実施形態では、ハウジング13に貫通孔13bを設けて、貫通孔13b内、すなわち、ハウジング13内を貫通するボルト32により、固定プレート12とトルクセンサ20とを締結した。これに代えて、固定プレート12を第2実施形態よりも幅広くするとともに、トルクセンサ20の外径を大きくして、ボルト32をハウジング13の外方に配置して、固定プレート12とトルクセンサ20とを締結するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施形態のトルクセンサ付モータの斜視図。
【図2】同じくトルクセンサの第1厚肉部と第2厚肉部の厚み方向の相違を示す模式図。
【図3】同じくトルクセンサ付モータの分解斜視図。
【図4】(a)〜(c)は第1実施形態のトルクセンサの作用の説明図。
【図5】第1実施形態のトルクセンサにおけるホイートストンブリッジ回路図。
【図6】第1実施形態のトルクセンサの出力特性図。
【図7】第2実施形態のトルクセンサ付モータの斜視図。
【図8】同じくトルクセンサの第1厚肉部と第2厚肉部の厚み方向の相違を示す模式図。
【図9】同じくトルクセンサ付モータの分解斜視図。
【図10】(a)〜(c)はそれぞれ他の実施形態のトルクセンサの平面図。
【図11】(a)〜(c)はそれぞれ他の実施形態のトルクセンサの平面図。
【図12】他の実施形態のトルクセンサの平面図。
【符号の説明】
【0084】
11…減速機付モータ、12…固定プレート(支持部材)、
13…ハウジング、14…回転出力軸、20…トルクセンサ、
21…第1厚肉部、21a…面、21b…面、
22…第2厚肉部、22a…面、22b…面、
23…薄肉部、23a…面、23b…面
23c…ゲージ面、30…歪みゲージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚肉部と弾性変形可能な薄肉部とが連結された連結体と、
前記薄肉部に配置された歪みゲージとを備え、
前記厚肉部は、回転出力軸を有する装置のハウジングに一体に連結可能に形成された第1厚肉部と、支持部材に一体に連結可能に形成された第2厚肉部を含み
前記第1厚肉部と前記第2厚肉部間に前記薄肉部が形成されて、第1厚肉部と第2厚肉部とが互いに並んだ方向に変位可能にされていることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
第1厚肉部と第2厚肉部とが交互に配置されるとともに互いに隣接する第1厚肉部と第2厚肉部間に弾性変形可能な薄肉部が連結された連結体と、
前記薄肉部のうち少なくとも1つの薄肉部に配置された歪みゲージとを備え、
前記第1厚肉部が、回転出力軸を有する装置に一体に連結可能に形成され、
前記第2厚肉部が、支持部材に一体に連結可能に形成され、
前記第1厚肉部と第2厚肉部とが並んだ方向に変位可能にされていることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項3】
前記連結体がリング状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記連結体が、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のトルクセンサが、回転出力軸を有する装置であるモータに対して第1厚肉部にて取付けされていることを特徴とするトルクセンサ付モータ。
【請求項6】
前記モータが減速機付モータであることを特徴とする請求項5に記載のトルクセンサ付モータ。
【請求項7】
前記減速機付モータがロボットハンド用のモータであることを特徴とする請求項6に記載のトルクセンサ付モータ。
【請求項8】
前記第2厚肉部が、支持部材に一体に連結されていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちいずれか1項に記載のトルクセンサ付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−58388(P2009−58388A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226236(P2007−226236)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(507294166)
【出願人】(396024901)
【出願人】(504331392)株式会社丸富精工 (11)
【出願人】(502000595)株式会社 ダイニチ (4)
【Fターム(参考)】